説明

温水床暖房パネル

【課題】作業性よく、低コストで製造可能であり、外観性にも優れ、かつ相対的に強度低下しにくい温水床暖房パネルを提供することである。
【解決手段】短辺部32と長辺部31とを有する帯状長方形の床材3の裏面に収納凹溝2を縦横に形成するとともに、該収納凹溝2に温水パイプ1を収容した温水床暖房パネルにおいて、床材3の長辺部31に非平行に形成した非平行収納凹溝22の溝深さh2を、該長辺部31に平行に形成した平行収納凹溝21の溝深さh1よりも深く形成し、該非平行収納凹溝22に収容された温水パイプ1と該非平行収納凹溝22の天井部との間に均熱材6を充填してなる温水床暖房パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は床暖房パネルに関する。さらに詳しくは、床材の裏面に温水が循環する温水パイプが埋設された床暖房パネルの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、木質系材料等からなる床材基板の裏面に凹溝を形成し、この凹溝内に温水等の熱媒を循環させる温水パイプを収容し、さらに、上記床材基板の表面に化粧板を積層一体化してなる温水床暖房パネルが知られている。上記した温水床暖房パネルでは、温水パイプに温水を通したときに、床材の表面に温水パイプを収容した凹溝の位置に対応してその床材表面に凹みが生じる、いわゆる溝うつりが生じることがある。
【0003】
この溝うつり現象は、初期に温水パイプに温水を通したとき、凹溝のある部分の上方で表面に近い床材基板層の厚みが薄くなっているため、加温によって急速に含水率が低下し、また、その一方で、凹溝のない部分は温度が上昇しにくく、かつ床材の含水率も下がりにくいため、床材表面の凹溝の直上の表面化粧された部分のみに収縮等の寸法変化が生じて凹んだようになり、結果として溝うつり現象が生じてしまうと考えられている。
【0004】
上記床移り現象が生じることを防ぐため、例えば、特開2005−180863号公報には、床材裏面の凹溝に温水パイプを収めた温水床暖房パネルであって、凹溝内に凸部が設けられており、凹溝の天井部分と温水パイプとの間にこの凸部が介在して空気断熱層が形成されていることを特徴とする温水床暖房パネルが開示されている。
【0005】
上記凸部は同公報の図1に示されるように、凹溝と一体となった三角柱形状でもよく、また同公報の図3、図5に示されるように、別体に形成して溝方向に沿った三角柱形状、あるいは三角柱の各面が内方に反った弓状であってもよく、図4に示されているように、円柱形状であってもよいと記載されている。
【0006】
そして、上記のように構成することによって、上記公報記載の温水床暖房パネルは、凹溝の天井部分と温水パイプとの間に介在した凸部とそれにより形成された空気断熱層とによって、温水パイプ直上の床材の温度上昇が抑制され、床材表面の溝うつり現象が生じにくくなり、また床材表面の均一な暖めを図ることもできる、とその効果が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−180863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の発明に係る温水床暖房パネルにおいては、床材の裏面にすべての温水パイプを収容するための凹溝を蛇管状に設けるとともに、それらの凹溝の天井部分と凹溝を通るすべての温水パイプとの間に上記形状の凸部を介在させる必要がある。
【0009】
しかしながら、上記凹溝部分は、通常切削加工によって床材裏面を掘り込んで設けられるため手間がかかり、また凹溝の天井部分と温水パイプとの間に凸部を介在させる必要があるため、繁雑な作業を要するという問題がある。
【0010】
本願発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記した問題を解決して、作業性よく、かつ低コストで製造可能であり、外観性にも優れ、相対的に強度が低下しにくい温水床暖房パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の第1発明に係る温水床暖房パネルは、短辺部と長辺部とを有する帯状長方形の床材の裏面に収納凹溝を縦横に形成するとともに、該収納凹溝に温水パイプを収容した温水床暖房パネルにおいて、床材の長辺部に非平行に形成した非平行収納凹溝の溝深さを、該長辺部に平行に形成した平行収納凹溝の溝深さよりも深く形成し、該非平行収納凹溝に収容された温水パイプと該非平行収納凹溝の天井部との間に均熱材を充填してなることを特徴とする。
【0012】
本願請求項2に記載の第2発明に係る温水床暖房パネルは、短辺部と長辺部とを有する帯状長方形の床材の裏面に収納凹溝を縦横に形成するとともに、該収納凹溝に温水パイプを収容した温水床暖房パネルにおいて、床材の長辺部に非平行に形成した非平行収納凹溝の溝深さを、該長辺部に平行に形成した平行収納凹溝の溝深さよりも深く形成し、該非平行収納凹溝に収容された温水パイプと該非平行収納凹溝の天井部との間に断熱材を充填してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願請求項1記載の第1発明に係る温水床暖房パネルでは、裏面に収納凹溝が縦横に形成された帯状長方形の床材において、該床材の長辺部に平行に形成された平行収納凹溝の直上の床材の表面に、温水パイプによる加温によって溝うつり部が生じるが、例えば、化粧目地、木目模様等の床材の長手方向に沿うデザインと同じ方向に溝うつりが走るため、目立ちにくく溝うつり部自体をデザインに同化させることができる。
【0014】
その一方、床材の長辺部に非平行に形成した非平行収納凹溝の溝深さを、平行収納凹溝の溝深さよりも深く形成し、該非平行収納凹溝に収容された温水パイプと該非平行収納凹溝の天井部との間に均熱材が充填されているため、温水パイプからの熱は、均熱材の周囲の床材にも平均して伝熱するため、非平行収納凹溝の直上の表面化粧板における収縮等の寸法変化が抑制されて溝うつり現象を抑制できる。
【0015】
したがって、床材の長辺部に平行に発生する溝うつりは、床材の長手方向に沿って走るため溝うつり部自体を目立ちにくくすることができるとともに、床材の長辺部に非平行で目立つ部分では溝うつりの発生が抑制されているため、床材全体として溝うつり現象が目立たなくなり、表面意匠性に優れた温水床暖房パネルとすることができる。
【0016】
本願請求項2記載の第2発明に係る温水床暖房パネルでは、第1発明においては、非平行収納凹溝に収容された温水パイプと該非平行収納凹溝の天井部との間に均熱材が充填されているが、この均熱材に替えて断熱材が充填されているため、温水パイプの熱が非平行収納凹溝上部の床材に集中的に伝熱することを該断熱材が抑制し、非平行収納凹溝の直上の表面化粧板における収縮等の寸法変化を抑制し、溝うつり現象を防ぐことができる。
【0017】
また、床材の長辺部に平行に発生する溝うつりは、床材の長手方向に沿うデザインと同化して溝うつり部自体を目立ちにくくすることができ、また、床材の長辺部に非平行の領域では溝うつりの発生が抑制されているため、床材全体として溝うつり現象が目立たなくなり、表面意匠性に優れた温水床暖房パネルとすることができる。
【0018】
また、第1、第2発明共に、温水パイプを収容する収納凹溝の全長に亘って溝を深く形成する必要がないため、床材の強度を相対的に低下させることなく温水床暖房パネルを製造することができる。さらに、溝うつり現象を抑制する対策を、床材の長辺部に平行ではない非平行収納凹溝のみに施すため、低コストで、簡単かつ効率よく温水床暖房パネルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願第1、第2発明に係る温水床暖房パネルの主構成要素を示す分解説明図。
【図2】(a)は床材の裏面に設けられた平行収納凹溝とこの平行収納凹溝に収容された温水パイプとを示す断面図、(b)は床材の裏面に設けられた本願第1発明に係る非平行収納凹溝とこの非平行収納凹溝に収容された温水パイプとを示す断面図。
【図3】(a)は床材の裏面に設けられた平行収納凹溝とこの平行収納凹溝に収容された温水パイプとを示す断面図、(b)は床材の裏面に設けられた本願第2発明に係る非平行収納凹溝とこの非平行収納凹溝に収容された温水パイプとを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願発明に係る温水床暖房パネルの実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、図示しない熱源で加温された水が通る温水パイプ1と裏面に収納凹溝2が縦横に形成された帯状長方形の床材3とからなる本願第1、第2発明に係る温水床暖房パネルAの主構成要素を示す分解説明図である。
【0021】
図1に示すように、上記帯状長方形の床材3は長辺部31と短辺部32とを有し、上記床材3の裏面には上記長辺部31に平行に形成された平行収納凹溝21と、床材3の長辺部31に非平行に形成された本願第1発明に係る非平行収納凹溝22(便宜上本願第2発明に係る非平行収納凹溝の符号23も同時に付記している)とが連続して設けられている。このとき、長辺部31に平行ではない斜線で示された非平行収納凹溝22、23の溝深さは、平行収納凹溝21の溝深さよりも深く形成されている(図2、図3参照)。
【0022】
図2(a)は床材3の裏面に設けられた平行収納凹溝21とこの平行収納凹溝21に収容された温水パイプ1とを示す断面図であり、図2(b)は、床材の裏面に設けられた本願第1発明に係る非平行収納凹溝22とこの非平行収納凹溝22に収容された温水パイプ1とを示す断面図である。ここで、非平行収納凹溝22の溝深さh2は、平行収納凹溝21の溝深さh1よりも深く形成されている。
【0023】
図2(a)において、施工後最初に温水パイプ1に温水を通したとき、床材3の温水パイプ1の周囲の部分の温度は上昇する。このとき、平行収納凹溝21の天井部直上の床材3はその厚みが薄くなっているため、温水パイプ1による加温によって該天井部直上の床材3の含水率が、その両側領域の含水率低下に比較して相対的に大きく低下する。
【0024】
一方、平行収納凹溝21のない部分は温度が上昇しにくく、かつ床材3の含水率も下がりにくいため、床材3の温水パイプ1を収容した平行収納凹溝21の直上部分のみに収縮等の寸法変化が生じて凹んだようになり、表面化粧板4も共に凹んで溝うつり部5が生じる。すなわち、帯状長方形の床材3の表面に長辺部31と平行して溝うつりが走る。
【0025】
他方、図2(b)に示すように、長辺部31に平行でない非平行収納凹溝22の溝深さh2は、平行収納凹溝21の溝深さh1よりも深く形成されており、温水パイプ1と上記非平行収納凹溝22の天井部との間には、アルミ等の熱伝導率の高い均熱材6が充填されている。
【0026】
上記均熱板6が充填されることにより、温水パイプ1からの熱は非平行収納凹溝22の直上のみならず、均熱板6の周囲の床材3にも平均して伝熱するため、非平行収納凹溝22の直上の表面化粧板4における収縮等の寸法変化は抑制され、溝うつり現象を抑制できる。
【0027】
図3(a)は、本願第2発明に係る床材3の裏面に設けられた平行収納凹溝21(溝深さh1)とこの平行収納凹溝21に収容された温水パイプ1とを示す断面図を示す断面図であり、本願第1発明と同じ構成要素を有している。
【0028】
図3(b)は、床材3の裏面に設けられた本願第2発明に係る非平行収納凹溝22(溝深さh3)とこの非平行収納凹溝22に収容された温水パイプ1とを示す断面図である。本願第1発明と同様に非平行収納凹溝23の溝深h3は平行収納凹溝21の溝深h1さよりも深く形成されている。
【0029】
本願第2発明においては、本願第1発明において充填されたアルミ等の均熱材6に替えて、温水パイプ1と上記非平行収納凹溝23の天井部との間には発泡ウレタンフォーム等の断熱材7が充填されている。
【0030】
上記断熱材7は温水パイプ1の熱が非平行収納凹溝23上部の床材3に伝熱することを抑制し、非平行収納凹溝23の直上の表面化粧板4における収縮等の寸法変化を抑制し、溝うつり現象を防止する。
【0031】
上記したように、本願第1、第2発明に係る温水床暖房パネルAにおいては、床材3の長辺部31に平行に走る表面化粧板4上の溝移りは、表面化粧板4の、例えば化粧目地、木目模様等の帯状長方形の床材3の長手方向に沿うデザインと同じ方向に沿って走るため、溝うつり自体を目立ちにくくすることができる。
【0032】
一方、床材3の長辺部31に非平行に形成された非平行収納凹溝22、23には、均熱材6や断熱材7が充填されているため、非平行収納凹溝22、23の直上の表面化粧板4における収縮等の寸法変化が抑制されて溝うつり現象を抑制できる。したがって、床材3の長辺部31に沿わない部分では溝うつり部5の発生を抑制されているため、床材3全体として溝うつり現象が目立たなくなり、表面意匠性に優れた温水床暖房パネルとすることができる。
【0033】
また、温水パイプ1を収容する収納凹溝2の全長に亘って溝を深く形成する必要がないため、床材の強度を相対的に低下させることなく温水床暖房パネルAを製造することができる。さらに、溝うつり現象を抑制する対策を、床材3の長辺部31に平行ではない非平行収納凹溝22、23のみに施したため、低コストで、簡単かつ効率よく温水床暖房パネルAを製造することができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、収納凹溝2として断面略U字形の凹溝を例示したが、これに限られず断面略コ字形としてもよい。また、凹溝の底部分を面取り加工してもよい。また、短辺部32に沿い、近接して延出された非平行収納凹溝22、23のみを深く形成して均熱材6或いは断熱材7を充填しても良い。このように本願発明は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
A 本願発明に係る温水床暖房パネル
h1 平行収納凹溝の溝深さ
h2 第1発明における非平行収納凹溝の溝深さ
h3 第2発明における非平行収納凹溝の溝深さ
1 温水パイプ
2 収納凹溝
21 平行収納凹溝
22 第1発明における非平行収納凹溝
23 第2発明における非平行収納凹溝
3 床材
31 長辺部
32 短辺部
4 表面化粧板
5 溝うつり部
6 均熱材
7 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短辺部と長辺部とを有する帯状長方形の床材の裏面に収納凹溝を縦横に形成するとともに、該収納凹溝に温水パイプを収容した温水床暖房パネルにおいて、床材の長辺部に非平行に形成した非平行収納凹溝の溝深さを、該長辺部に平行に形成した平行収納凹溝の溝深さよりも深く形成し、該非平行収納凹溝に収容された温水パイプと該非平行収納凹溝の天井部との間に均熱材を充填してなる温水床暖房パネル。
【請求項2】
短辺部と長辺部とを有する帯状長方形の床材の裏面に収納凹溝を縦横に形成するとともに、該収納凹溝に温水パイプを収容した温水床暖房パネルにおいて、床材の長辺部に非平行に形成した非平行収納凹溝の溝深さを、該長辺部に平行に形成した平行収納凹溝の溝深さよりも深く形成し、該非平行収納凹溝に収容された温水パイプと該非平行収納凹溝の天井部との間に断熱材を充填してなる温水床暖房パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−108674(P2013−108674A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253985(P2011−253985)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】