説明

温水暖房装置

【課題】直流駆動の循環ポンプの空運転検知を利用した試運転を行うようにした温水暖房装置に関するものである。
【解決手段】水を加熱する熱交換器12と、該熱交換器12を加熱する燃焼部9と、加熱された温水を循環させる直流駆動の循環ポンプ14と、該循環ポンプ14の駆動を制御し空運転判定運転して循環ポンプ14の駆動を停止させると共に、放熱器3との間に温水循環回路5を形成し、前記熱交換器12にて加熱された温水を前記循環ポンプ14により前記温水循環回路5を循環させて暖房運転を行わせる制御部22とを備えたもので、前記制御部22は試運転持、前記空運転判定運転を利用して空運転で停止する循環ポンプ14を所定時間で再駆動させて、温水循環回路5の空気と循環水の置換を行うようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流駆動の循環ポンプの空運転自動停止制御を利用して、試運転時の温水循環回路の空気と循環水との置換を行う温水暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のものに於いては、試運転時に循環ポンプを連続駆動させて温水循環回路内の空気を追い出し、該温水循環回路を循環水で満たす初期運転モードを備えるものであった。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−222344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの従来のものでは、循環ポンプを連続駆動させるとあるが、空気がなかなか抜けず循環ポンプは循環水がない空運転状態となり、故障する危険があるので、一旦停止させて循環水を補給してから、再び循環ポンプを駆動させると言う作業を数回繰り返さないと完全に空気は抜けないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決するために、特にその構成を、水を加熱する熱交換器と、該熱交換器を加熱する燃焼部と、加熱された温水を循環させる直流駆動の循環ポンプと、該循環ポンプの駆動を制御し空運転を判断して循環ポンプの駆動を停止させるポンプ駆動部と、放熱器との間に温水循環回路を形成し、前記熱交換器にて加熱された温水を前記循環ポンプにより前記温水循環回路を循環させて暖房運転を行わせる制御部とを備えたものに於いて、前記制御部は試運転持、前記ポンプ駆動部を利用して空運転で停止する循環ポンプを所定時間で再駆動させて、温水循環回路の空気と循環水の置換を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、施工後の試運転時の空気抜き運転では、どうしても循環ポンプはエアーがみ運転となるが、循環ポンプは直流駆動で自ら空運転を検知して自動停止するもので、エアーがみを空運転として捉えて自動停止し、手動で停止する必要がなく煩わしい作業から解消されるものであり、又循環水補給後の所定時間後は再び駆動して、温水循環回路の空気と循環水の置換を使用勝手良く確実に行うことが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の一実施形態の温水暖房装置の概略構成図。
【図2】同一実施形態の要部電気回路のブロック図。
【図3】同循環ポンプの空運転判定運転のフローチャート。
【図4】同速度指令電圧と循環ポンプの回転数の関係を示す説明図。
【図5】同試運転時のフローチャート。
【図6】他の実施形態を示す循環ポンプの空運転判定運転のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次にこの発明の一実施形態の温水暖房装置を図1に基づき説明する。
1は本実施形態に於ける温水暖房装置本体で、この温水暖房装置本体1で熱交換して加熱した温水を、往き管2から床暖房パネルやパネルヒータや融雪用の融雪器等の放熱器3を通過させて放熱させた後、戻り管4から温水暖房装置本体1に戻す温水循環回路5を形成するものである。
【0009】
前記温水暖房装置本体1は、燃焼用空気を送風する送風機6と、灯油を常に一定量貯めている定油面器7と、この定油面器7の灯油を供給する燃料ポンプ8と、送風機6により送風された燃焼用空気と燃料ポンプ8により供給された灯油とによって燃焼を行う燃焼部としてのバーナ9と、温水循環回路5を循環する温水を貯湯する缶体10と、往き管2側の缶体10内の温水の温度を検出する温水温度検出手段としての温水サーミスタ11と、缶体10内に設けられ、バーナ9の燃焼炎及びバーナ9の燃焼により発生した燃焼排ガスにより加熱されて缶体10内の温水と熱交換する熱交換器12と、熱交換器12を通過した燃焼排ガスを温水暖房装置本体1の外部へと導く排気筒等の排気経路13と、缶体10内の温水を温水循環回路5に循環させる制御し易い直流駆動の循環ポンプ14と、該循環ポンプ14と缶体10との間に設けられ、温水中の空気を温水と分離する気水分離器15とが内蔵されているものである。
【0010】
16は温水暖房装置本体1を遠隔操作するリモコンで、リモコン16には、バーナ9の燃焼により熱交換器12を加熱し缶体10内の温水を加熱すると共に、缶体10内の温水を放熱器3に循環させて室内等の被空調空間の暖房を行わせる暖房運転の開始または停止を指示する運転スイッチ17と、熱交換器12で加熱する缶体10内の温水の温度を設定する温水温度設定手段としての温水温度設定スイッチ18と、温水温度設定スイッチ18で設定した温度を表示する表示部19とを備えているものである。なお、この実施形態では温水の設定温度は温水温度設定スイッチ18で20℃〜80℃の間で設定することができるものである。また、20は施工後に温水循環回路5の空気と循環水とを置換するための試運転を行わせる試運転スイッチ、21は温水暖房装置本体1に設けられた操作部で、前記リモコン16と同様、運転スイッチ、温水温度設定スイッチ、表示部を備えているものである。
【0011】
22はマイクロコンピュータを主体としてこの温水暖房装置本体1の制御を行う制御部で、図2に示すように、リモコン16または操作部21の各種スイッチの信号や温水サーミスタ11からの信号を受け、送風機6、燃料ポンプ8、循環ポンプ14の制御を行うものであり、更にこの制御部22には循環ポンプ14に所定の速度指令電圧を印加する速度指令電圧部23と、前記速度指令電圧部23からの速度指令電圧が印加された後の循環ポンプ14の回転数を検知する回転数検知部24とが備えられ、速度指令電圧部23は所定の第1速度指令電圧PV1を循環ポンプ14に印加し、5秒後に回転数検知部24がこの循環ポンプ14の回転数PN1を検知し、再び速度指令電圧部23が所定の第1速度指令電圧PV1より高い所定の第2速度指令電圧PV2を循環ポンプ14に印加し、同じく5秒後に回転数検知部24がこの循環ポンプ14の回転数PN2を検知することで、制御部22はこの2回目と1回目との差分が、予め試験によって決定しておいた既定値P1以上で、PN2−PN1≧P1の式となり空運転差分判定以上で水無の空運転と判断し、循環ポンプ14をロックアウトエラーとして、駆動禁止すると共に表示部19に水無の空運転で循環ポンプ14が駆動禁止状態である旨を表示して報知するものである。
【0012】
一方前記循環ポンプ14の回転数の2回検知で、2回目と1回目との差分が既定値P1未満で、PN2−PN1<P1の式となり空運転差分判定未満で水有りで空運転ではないと判断し、循環ポンプ14の駆動は禁止させないもので、表示部19への表示も行わないものであり、又この循環ポンプ14による水の有無を検知する空運転判定は、運転スイッチ17の押圧による運転開始前に自動的に行われるもので、運転を忘れて空運転を行う心配がなく使用勝手が良いものである。
【0013】
更にこの温水暖房装置では、試運転スイッチ20の押圧により直流駆動の循環ポンプ14を駆動させながら缶体10上部の注水口25から循環水となる水を注入することで、缶体10を含む温水循環回路5内の空気を抜きながら循環水を充満させる置換を行うものであり、この時前記の空運転判定の表示部19の表示を除いて作動させるもので、自動的に循環ポンプ14を一旦駆動停止させ、この間に循環水を補水して試運転を全自動で行うようにしたものである。
【0014】
又前記制御部22はその他に、送風機6及び燃料ポンプ8をそれぞれ能力制御して、予め設定された下限燃焼量以上且つ上限燃焼量以下の範囲内で燃焼量を可変できるものであり、前記暖房運転の際は、温水サーミスタ11の検出する缶体10内の温水温度がリモコン16の温水温度設定スイッチ18で設定された設定温度付近の温度になるよう燃焼量を制御するものであり、前記暖房運転開始時は、缶体10内の温水温度が温水温度設定スイッチ18で設定された設定温度に素早く上昇するように、バーナ9の燃焼量を上限燃焼量にし、その後、缶体10内の温水温度が設定温度に近づいてきたらバーナ9の燃焼量を徐々に下げていき、缶体10内の温水温度を設定温度に維持するのが可能であれば予め設定された下限燃焼量まで燃焼量を下げて燃焼を行い、缶体10内の温水温度が設定温度より所定温度高い温度に達したら、バーナ9の燃焼を停止し、缶体10内の温水温度が設定温度より所定温度低い温度に達したら、バーナ9の燃焼を開始させ、缶体10内の温水温度を設定温度に近づけるべく燃焼量を適宜制御するものである。
【0015】
次に、循環ポンプ14の空運転判定について説明する。
今運転スイッチ17を押圧すると、図3に示すフローチャートの循環ポンプ14の空運転判定が開始されるもので、ステップS1で速度指令電圧部23から循環ポンプ14に所定の第1速度指令電圧PV1を印加し、ステップS2に進んで5秒の経過を判断して、YESでステップS3に進み回転数検知部24により第1速度指令電圧PV1を印加後の循環ポンプ14の回転数を検知し記憶して、ステップS4で再び速度指令電圧部22から循環ポンプ14に第1速度指令電圧PV1より高い所定の第2速度指令電圧PV2を印加し、ステップS5に進んで5秒の経過を判断して、YESでステップS6に進み回転数検知部24により第2速度指令電圧PV2を印加後の循環ポンプ14の回転数を検知し記憶する。
【0016】
そしてステップS7に進んで第1速度指令電圧PV1の印加持の回転数PN1と、第2速度指令電圧PV2の印加持の回転数PN2との差分を、予め決定されている既定値P1と比較演算し、PN2−PN1≧P1の式で既定値P1以上かを判断し、既定値P1以上ではYESでステップS8に進んで温水循環回路5に水無であり、循環ポンプ14の駆動禁止し、この駆動禁止状態を表示部19に表示させるものであり、既定値P1未満ではNOでステップS9に進み温水循環回路5には水有りの通常状態で循環ポンプ14の駆動可能と言うことで空運転判定運転を終了する。
【0017】
このように、直流駆動の循環ポンプ14を利用して水の有無の検知を行う空運転判定運転では、判定値を2つの回転数の既定値P1の差としたので、モータの駆動電源電圧の変動、水の温度や粘性、制御基板の駆動回路を構成する電子部品のバラツキ等の影響を受けることなく、確実に水の有無を検知することが出来、フローセンサを設けることなく安価でありながら、精度良く安心して使用出来るものである。
【0018】
次に温水循環回路5内の空気抜きを行う試運転について図5のフローチャートで説明すれば、ステップS10で試運転スイッチ20が押圧されたかを判定し、YESでステップ11に進み試運転が開始されて直流駆動の循環ポンプ14が駆動開始され、注水口25から循環水となる水を注水しながら循環ポンプ14を駆動して、温水循環回路5内の空気を抜きながら循環水を満たして行くものであるが、途中でどうしても循環ポンプ14がエアーがみ運転となるものであるが、この時ステップS12で前記した空運転判定運転が行われ、エアーがみ運転では空運転と判定して、YESでステップS13に進み循環ポンプ14を一旦OFFし、この間に注水を十分行っておくことで、ステップS14の所定時間ここでは5秒経過をカウントして、YESでステップS15の試運転スイッチ20のOFFかを見て、NOでステップ11に戻り循環ポンプ14を継続して駆動させて、温水循環回路5全体に循環水を充満させることが出来るものであり、そしてステップS15の試運転スイッチ20のOFFで、YESとなってステップS16で循環ポンプ14の駆動をOFFして試運転を終了させるものである。
【0019】
このように、空気抜きの試運転に循環ポンプ14の空運転判定を利用したことで、エアーがみ運転時にわざわざ手動で循環ポンプ14を一旦停止させる煩わしい作業を自動的に行うことが出来、使用勝手が極めて良く、確実に空気抜きが行え安心して使用出来るものである。
【0020】
そして、再度リモコン16の運転スイッチ17が操作されれば、暖房運転開始の指示がなされると、制御部22は送風機6及び燃料ポンプ8を駆動させバーナ9での燃焼を開始させ、熱交換器12を加熱し缶体10内の温水を加熱すると共に、水有り検知で循環ポンプ14を駆動させて温水循環回路5に温水を循環させ、放熱器3に温水を供給して被空調空間の暖房を行う暖房運転が実行される。
【0021】
次に循環ポンプ14の駆動禁止条件に上限回転数以上を追加した新たな空運転判定運転について、図6に示すフローチャートで説明するが、前記した一実施形態と同一部分には同一記号を付し説明を省略し、相違部分のみ説明する。
空運転判定運転が開始され、ステップS3で回転数検知部24により第1速度指令電圧PV1を印加後の循環ポンプ14の回転数を検知し記憶した後、ステップS17で回転数検知部24で検知した第1速度指令電圧PV1を印加後の循環ポンプ14の回転数PN1が上限回転数P2以上かを判断し、ステップS8に進んで温水循環回路5に水無であり、循環ポンプ14の駆動禁止し、この駆動禁止状態を表示部19に表示させるものであり、NOではステップS4に進むものである。
【0022】
次にステップS6の回転数検知部24による第2速度指令電圧PV2を印加後の循環ポンプ14の回転数の検知、記憶後に、ステップS18で第2速度指令電圧PV2を印加後の循環ポンプ14の回転数PN2が上限回転数P2以上か、または、第1速度指令電圧PV1の印加持の回転数PN1と、第2速度指令電圧PV2の印加持の回転数PN2との差分を、予め決定されている既定値P1と比較演算し、PN2−PN1≧P1の式で既定値P1以上かを判断し、どちらかが該当すれば、先のステップS8に進み温水循環回路5に水無であり、循環ポンプ14の駆動禁止し、この駆動禁止状態を表示部19に表示させるものであり、どちらも該当しなければ、NOではステップS9に進み温水循環回路5には水有りの通常状態で循環ポンプ14の駆動可能と言うことで空運転判定運転を終了するものである。
【0023】
このように水の有無の判定値を、2つの回転数の差分と既定値との比較の他に上限回転数P2以上でも判定するので、判定が更に正確となり誤検知の心配もなく、しかも異常時は即上限回転数P2以上となって循環ポンプが直ぐに停止され、更に安心、安全で使用することが出来るものである。
【符号の説明】
【0024】
3 放熱器
5 温水循環回路
9 燃焼部
12 熱交換器
14 循環ポンプ
22 制御部
23 速度指令電圧部
24 回転数検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱する熱交換器と、該熱交換器を加熱する燃焼部と、加熱された温水を循環させる直流駆動の循環ポンプと、該循環ポンプの駆動を制御し空運転判定運転して循環ポンプの駆動を停止させると共に、放熱器との間に温水循環回路を形成し、前記熱交換器にて加熱された温水を前記循環ポンプにより前記温水循環回路を循環させて暖房運転を行わせる制御部とを備えたものに於いて、前記制御部は試運転持、前記空運転判定運転を利用して空運転で停止する循環ポンプを所定時間で再駆動させて、温水循環回路の空気と循環水の置換を行うようにした事を特徴とする温水暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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