説明

温水洗浄便座およびそのプログラム

【課題】温水洗浄便座においてたとえば着座検出を行うこと。
【解決手段】ひとつ以上の無線ICタグ11A〜Fが貼付、もしくは埋め込まれた便座12と、前記無線ICタグ11A〜Fからデータを読み取る読取手段16と、前記読取手段16より前記データを受信して処理を行う処理手段17とから構成され、前記無線ICタグ11A〜Fは、電池を必要としないパッシブ型であって、人体が近くにあると通信できなくなるという特性を持ち、全ての無線ICタグからデータを読み出せる時には便座12に人が座っていないと判断して、いずれかの無線ICタグが読み出せなくなったときには便座12に人が座っていると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICタグを用いた温水洗浄便座およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
温水洗浄便座において人が着座しているかどうかを検出することは重要である。例えば着座していないにも拘らず洗浄スイッチを押してしまうと洗浄水が噴出して周囲が濡れてしまうので、着座していない時には洗浄スイッチが押されても反応しないことが望ましい。このため、着座しているかどうかを検出する手法がいくつか考えられており、近年では赤外線を照射して、その反射光から着座を検出する方法が考案されてきた。赤外線放射、受光手段の設置場所に工夫をして使用者の衣服の色に影響されないようにしたものも存在する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−107991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この方法でも便器内の洗浄水噴出部付近に赤外線照射、受光手段を設置する必要があるので、洗浄水がかかって汚れることを完全には防げずに長期的に汚れによる感度低下が懸念される。さらに、電子回路を水の掛かりやすい位置に配置するため、防水処理、漏電防止処理など設計上、製造上での手間も掛かるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、前記従来の課題を解決するために、本発明の温水洗浄便座は、ひとつ以上の無線ICタグが貼付、もしくは埋め込まれた便座と、前記無線ICタグからデータを読み取る読取手段と、前記読取手段より前記データを受信して処理を行う処理手段とから構成されている。前記無線ICタグは、電池を必要としないパッシブ型であって、人体が近くにあると通信できなくなるという特性を持っている。この特性を用いて、無線ICタグからデータを読み出せる時には便座に人が座っていないと判断して、いずれかの無線ICタグが読み出せなくなったときには便座に人が座っていると判断する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の温水洗浄便座は、便座そのものに無線ICタグを貼付、あるいは埋め込んでしまうので水や汚れが付きにくく、また電池などの電源を一切必要としないパッシブ型の無線ICタグであるので特別な防水処理や、漏電防止処理は不要となる。構成要素としての読取手段や処理手段は電池などの電源を必要とする電子回路であるが、無線ICタグから非接触でデータを読み出すので、まったく水の掛からない安全な位置に設置することが容易に実現可能である。そのため、防水処理や漏電防止処理は不要となる。このように着座しているかどうかの判断を行うために無線ICタグ自身の特性を利用しているので、簡単な構成で着座検出を行い、長期的にも安定して着座検出を行う温水洗浄便座が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
第1の発明は、便座にひとつ以上の無線ICタグを貼付、もしくは埋め込み、読み取り手段で前記無線ICタグからデータを読み取り、処理手段により前記データに応じて処理を行う。前記無線ICタグは、電池を必要としないパッシブ型であって、水分の影響を受けやすく水分を含み人体に接するとデータが読み出せなくなるという特徴を持っている。このため、便座に人が座っていない時には全ての前記無線ICタグからデータを読み出すことが出来るが、人が座っている時には人の体に含まれる水分が影響していくつかの無線ICタグからデータが読み出せなくなる。これらにより、例えば、便座に人が着座しているかどうかを検知して、それに応じた処理を行う温水洗浄便座の提供が可能となる。
【0007】
第2の発明は、特に第1の発明の温水洗浄便座において、便座の座面もしくはその近傍に無線ICタグを貼付、もしくは埋め込んでいるので、人体により密接した位置に無線ICタグを設置するので、人体の影響をより強く受け、着座検出の精度を向上することが出来る。
【0008】
第3の発明は、特に第1の発明の温水洗浄便座において、便座に貼付、もしくは埋め込んだ無線ICタグのいずれかひとつ以上の前記無線ICタグからデータが読み出せない場合、人が着座していると判断するので、人体が覆い隠せていない無線ICタグが存在した場合でも、より確実に着座検出することが出来る。特に小柄な子供などの場合に効果的である。
【0009】
第4の発明は、特に第1の発明の温水洗浄便座において、処理手段より赤外線を用いて洗浄機能を制御するので、処理手段、読取手段、赤外LEDを含む制御装置の設置自由度が高くなり、水が全く掛からない位置に設置することで信頼性を向上させるとともに、前記制御装置に対する防水処理、漏電防止処理などを簡易化することができるのでコスト的に有利となる。
【0010】
第5の発明は、特に第1の発明の温水洗浄便座において、便蓋に電磁波透過性物質を用いたので、便座が閉まっている状態でも無線ICタグのデータを読み出せる。これにより、便座が閉まっている状態を着座と判断するような誤動作を防止して、より確実な着座検出が可能となる。
【0011】
第6の発明は、特に第1の発明の温水洗浄便座において、2.45GHz付近の周波数帯を用いる無線ICタグを使用したので、他の周波数帯を用いた無線ICタグよりもより顕著に水分の影響を受けるため、より確実な着座検出が可能となる。
【0012】
第7の発明は、第1〜6の発明の温水洗浄便座において、少なくともひとつの機能をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、CPU、RAM、ROM、記憶装置、I/Oなどを備えた電気情報機器、コンピュータ等のハードリソースを協働させて本発明の一部あるいは全てをプログラムとして容易に実現することができる。また記録媒体に記録あるいは、通信回線を用いてプログラム配信することにより、プログラム配布が他の手段に比べて極めて簡単に実現できる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて一実施形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は第1の発明の温水暖房便座のシステム構成一例を示す図であり、便座12にひとつ以上の無線ICタグ11A、11B、11C、11D、11E、11Fを貼付し、この無線ICタグのデータを読取手段16が読み出し、読み込んだデータは処理手段17にて処理される。なお、無線ICタグ11A、11B、11C、11D、11E、11Fはいずれも互いに異なる独自のIDをデータとして持っている。
【0015】
後ほど詳しく述べるが、処理手段17にて処理された結果、赤外LED18から赤外線でコマンドが送信される。赤外線のコマンドは便座直近に設けられた赤外受光手段13にて受信され、温水洗浄の制御に用いられる。温水洗浄の制御とは具体的には洗浄水の噴出を許可するか、禁止するかといった温水洗浄便座本来の機能に関することである。
【0016】
なお、図においては読取手段16、処理手段17、赤外LED18を一体化して制御装置15としているが、必ずしもこの形態でなくても構わないし、赤外LED18、あるいは赤外受光手段13を無くして便座側に制御装置15を組み込んで一体化して処理手段17が温水洗浄の制御を行っても構わない。
【0017】
ただし、赤外LED18と赤外線受光手段13を使用すると、制御装置15が洗浄便座と別筐体として独立して、その設置自由度が著しく向上する。その結果、赤外線が届く範囲ならば何処に設置しても構わないので、水や汚れが付きにくいような場所を選んで設置するといったことが可能となる。これにより制御装置15の防水処理、漏電防止処理が簡略あるいは省略できる。
【0018】
無線ICタグにはいろいろな周波数帯のものがあるが、その中でも2.45GHz帯の周波数帯を使ったものが最も水分の影響を受けやすいので、本発明のような使い方には最適である。また、水分に近いほど影響を受けやすいので、便座の座面に最も近い、人に最も接している位置に無線ICタグを貼付、あるいは埋め込むことが望ましい。貼付の場合には便座が電磁誘導を妨げるような金属などを含まないことが要求される。埋め込む場合には便座が電磁波透過物質で出来ていることが要求される。
【0019】
便蓋14についても、電磁波透過物質であれば便蓋14が閉じている、つまり便座12を覆い隠している時でも無線ICタグ11A〜11Fのデータを読み出すことが可能となり、便座が閉まっている状態を着座状態と誤検出してしまうことを回避できるので、便蓋14は電磁波透過物質であることが望ましい。
【0020】
図2は処理手段17にて行う処理のフローを示している。S20において初期化処理として無線ICタグ11A、11B、11C、11D、11E、11Fが持っている互いに異なる独自のIDを記憶しておく。
【0021】
次にS21で無線ICタグのデータを一括読み出して、S22A〜S22Fで前記記憶したデータと比較していき、ひとつでも読めないデータが存在した場合は、S24にて着座を検出したものとして洗浄動作可能状態とする。逆にすべての無線ICタグからデータが正しく読み出せた場合はS23にて着座未検出として洗浄動作不可能状態とする。
【0022】
以後、S21の無線ICタグの一括読み出し動作から繰り返して動作を継続する。これにより、常時便座に着座しているかどうかを検出することが可能となり、着座している時にだけ洗浄水を噴射するといった制御が可能となる。
【0023】
ここでは洗浄機能のみを取り上げたが、洗浄便座には便座暖房機能がついていることが多く、着座検出時に便座の暖房を介する、あるいは強化するといった用途に用いても構わない。
【0024】
なお、本実施の形態では無線ICタグが6個の場合を示したが、これに限らず1つまたは複数あればよい。それに対応して図2のS22のステップ数は変更される。
【0025】
なお、本実施の形態で説明した手段は、CPU(またはマイコン)、RAM、ROM、記憶・記録装置、I/Oなどを備えた電気・情報機器、コンピュータ等のハードリソースを協働させるプログラムの形態で実施してもよい。プログラムの形態であれば、磁気メディアや光メディアなどの記録媒体に記録、もしくはインターネットなどの通信回線を用いて配信することで新しい機能の配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明にかかる温水洗浄便座およびそのプログラムは、無線ICタグと、そのタグからデータを読み取る読取装置と、前記読取装置より前記データを受信する処理装置から構成され、前記無線ICタグは電池を必要としないパッシブ型であって、人体の近くあるいは、人体で覆うとデータが読み出せないという特性を利用して、非常に簡単な構成で温水洗浄便座への着座を検出している。
【0027】
また、本実施の形態では非常に限られた用途だけを例として用いているが、便座に限らず着座しているかどうかが人体に非接触かつ容易に検知できるので、人が座るようなもので着座しているかどうかのよって動作を変えるようなもの、例えばシートヒータ付き自動車用シートの温度制御や助手席エアバッグの動作制御のようなものでも本発明は適用可能であり、いずれの場合にも効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の温水洗浄便座のシステム構成の一例図
【図2】本発明の温水洗浄便座の着座検出フローの一例図
【符号の説明】
【0029】
11A〜F 無線ICタグ
12 便座
13 赤外受光手段
14 便蓋
15 制御装置
16 読取手段
17 処理手段
18 赤外LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座にひとつ以上の無線ICタグを貼付、もしくは埋め込んでおき、読み取り手段で前記無線ICタグからデータを読み取り、処理手段により前記データに応じて処理を行うことを特徴とする温水洗浄便座。
【請求項2】
便座の座面もしくはその近傍に無線ICタグを貼付、もしくは埋め込んだことを特徴とする請求項1記載の温水洗浄便座。
【請求項3】
便座に貼付、もしくは埋め込んだ無線ICタグのいずれかひとつ以上の前記無線ICタグからデータが読み出せない場合、人が着座していると判断することを特徴とする請求項1記載の温水洗浄便座。
【請求項4】
処理手段より赤外線を用いて洗浄機能を制御することを特徴とする請求項1記載の温水洗浄便座。
【請求項5】
便蓋に電磁波透過性物質を用いたことを特徴とする請求項1記載の温水洗浄便座。
【請求項6】
2.45GHz付近の周波数帯を用いる無線ICタグを使用したことを特徴とする請求項1記載の温水洗浄便座。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の温水洗浄便座において少なくともひとつの機能をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−70566(P2006−70566A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255222(P2004−255222)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】