説明

温水洗浄便座装置

【課題】 シャッターの裏側と噴出口周辺を含むノズル先端面からベースプレート先端までの全体を洗浄でき、ベースプレートのノズルが収容される部位に洗浄時の汚水が飛び散って汚れることを防止する温水洗浄便座装置を提供すること。
【解決手段】 温水洗浄便座装置1は、人体局部に向けて洗浄水を噴出する噴出口22、23を有するノズル20、21と、ノズル20、21に洗浄水を供給する給水源6と、ノズル20、21の進退に伴って開閉するシャッター30と、ノズル20、21を設置させるベースプレート40と、ベースプレート40に設置されたノズル20、21を進退させる駆動手段と、を備え、シャッター30には、噴出口22、23から噴出した洗浄水をノズル側に向けて跳ね返す返し部32が設けられており、噴出口22、23の洗浄は、ノズルを前進させて、噴出口22、23からの洗浄水を返し部32に当たる位置で行う構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルを有する温水洗浄便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の図5の温水洗浄便座装置60は、先端部61に人体の局部に向けて洗浄水を噴出する噴出口62を有するノズル63を備えている。そして、そのノズル63を進退可能に設置し、ノズル63を収容するベースプレート64を備え、ベースプレート64の先端部65には、尿はねや汚水の飛び散りを遮蔽するためのシャッター66を備えている。そのシャッター66は、ノズル63の進退に伴って開閉する構造である。ノズル63は、掃除用洗浄水通路67からノズル63に向かって噴出する掃除用洗浄水68により洗浄される。ノズル63を洗浄する場合には、ノズル63をベースプレート64に収容して、シャッター66が開いた状態で行う(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−240403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の温水洗浄便座装置60では、ノズル63を洗浄すると、シャッター66の裏側(ノズル側)やベースプレート64のノズル63が収容される部位に汚水が飛び散り、この汚れは、掃除用洗浄水通路67からの掃除用洗浄水68では洗浄することができない問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて成されたものであり、温水洗浄便座装置において、シャッターの裏側を洗浄でき、ベースプレートのノズルが収容される部位の汚れを防止する温水洗浄便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の課題解決手段は、人体局部に向けて洗浄水を噴出する噴出口を有するノズルと、前記ノズルに洗浄水を供給する給水源と、前記ノズルの進退に伴って開閉するシャッターと、前記ノズルを設置させるベースプレートと、前記ベースプレートに設置された前記ノズルを進退させる駆動手段と、を備える温水洗浄便座装置であって、前記シャッターには、前記噴出口から噴出した洗浄水を前記ノズル側に向けて跳ね返す返し部が設けられており、前記ノズルは、前記シャッターが開き前記噴出口からの洗浄水が前記返し部に当たる前記ベースプレートから前進した位置で、前記返し部に跳ね返された洗浄水により洗浄されるものである。
【0007】
また、本発明の第2の課題解決手段は、前記返し部は、前記噴出口から噴出する洗浄水を前記ノズルの前記噴出口に導く湾曲形状である。
【0008】
また、本発明の第3の課題解決手段は、前記シャッターは、前記ノズルの進退に伴って回動し、前記シャッターの開閉が自在である。
【0009】
また、本発明の第4の課題解決手段は、前記ベースプレートは、前記シャッターが配設される前記ベースプレートの先端に設けられる遮蔽板を備え、前記遮蔽板は、前記返し部からの洗浄水が前記ベースプレート内に侵入することを防ぐものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の温水洗浄便座装置では、シャッターに、ノズル噴出口から噴出した洗浄水をノズル側に向けて跳ね返すための返し部が設けられている。そして、ノズルの洗浄は、シャッターが開き、噴出口からの洗浄水が返し部に当たるベースプレートから前進した位置で、返し部に跳ね返された洗浄水により洗浄されることにより、シャッターの裏側とノズル噴出口周辺を含むノズル先端面からベースプレート先端までの全体を洗浄することができ、かつ、ベースプレートのノズルが収容される部分に汚水が飛び散って汚れることを防止できる。
【0011】
また、返し部は、噴出口から噴出する洗浄水をノズルの噴出口に導く湾曲形状であるため、洗浄水の跳ね返りがスムーズであり、汚水が飛び散らず、噴出口を効率的に洗浄することができる。
【0012】
また、シャッターは、ノズルの進退に伴って回動することで開閉するため、ノズルの進退によって開閉状態を任意に設定できるので、洗浄水の跳ね返り方向を微調整でき、シャッターの裏側と噴出口を効率的に洗浄できる。
【0013】
また、遮蔽板を設けることにより、洗浄水の跳ね返りがベースプレート内に入ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における温水洗浄便座装置の平面図
【図2】本発明の実施の形態におけるお尻洗浄ノズルおよびビデ洗浄ノズル周辺部の斜視図
【図3】本発明の実施の形態におけるお尻洗浄ノズルを、ベースプレートに収容させた状態の説明図
【図4】本発明の実施の形態におけるお尻洗浄ノズルを便器内に前進させて、お尻洗浄ノズル噴出口より洗浄水を噴出している状態の説明図
【図5】従来のお尻洗浄ノズルをベースプレートに収容させた状態で、お尻洗浄ノズルを洗浄している状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態による温水洗浄便座装置1を説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態における温水洗浄便座装置1の平面図である。温水洗浄便座装置1は、便器2と便座3と便蓋4と便器2の後部上面に固定されるケース5と洗浄水の給水源6と温水タンク10と洗浄水を噴出するためのお尻洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル21とを備えている。そして、お尻洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル21を便器内に前進させた状態である。また、給水源6は、ホース7を介して電磁弁8と連結され、その電磁弁8は、ホース9を介して温水タンク10と連結されている。すなわち、電磁弁8は、給水源6と温水タンク10との間に介装されている。また、洗浄水の選択や噴出の指令等を行うスイッチ(図示せず)を持つ操作部11を備える。また、温水タンク10は、ケース9
の内部に配置される。温水タンク10内の水は、ヒータ(図示せず)により加熱される。
【0017】
図2は、本実施の形態におけるお尻洗浄ノズル20およびビデ洗浄ノズル21周辺部の斜視図である。お尻洗浄ノズル20およびビデ洗浄ノズル21は、ノズルガイドベース41上を進退する構造であり、お尻洗浄ノズル20およびビデ洗浄ノズル21は、便器2内に前進しておらず、ベースプレート40に収容させた状態である。お尻洗浄ノズル20およびビデ洗浄ノズル21は、遮蔽板43(図3参照)と同一面、あるいは内部後方に位置する。そして、お尻洗浄ノズル20およびビデ洗浄ノズル21の先端前部にシャッター30が備えられ、そのシャッター30は、ヒンジ31とアーム(図示せず)により開閉自在に取り付けられている。そして、お尻洗浄ノズル20およびビデ洗浄ノズル21を設置させるベースプレート40を備えており、駆動モーター50(駆動手段)とギヤ(図示せず)とラック24(図3参照)によって進退自在に設置されている。そして、お尻洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル21には、洗浄水を噴出するためのお尻洗浄ノズル噴出口22とビデ洗浄ノズル噴出口23を備える。
【0018】
図3は、本実施の形態におけるお尻洗浄ノズル20を、ベースプレート40に収容させた状態の説明図である。お尻洗浄ノズル20は、ベースプレート40に収容されており、お尻洗浄ノズル20の下部にラック24が形成されている。そして、ラック24は、ギヤ(図示せず)と係合する。ラック24は、ギヤからの動力を受けて、お尻洗浄ノズル20を進退させる。また、お尻洗浄ノズル20は、便器2内に前進していない収容状態である。お尻洗浄ノズル噴出口22は、閉じたシャッター30の後方に位置する。またシャッター30は、ばね(図示せず)により閉方向に付勢されている。遮蔽板43は、シャッター30の後方で、お尻洗浄ノズル噴出口22より前方に位置する。
【0019】
図4は、本実施の形態におけるお尻洗浄ノズル20を便器2内に前進させて、お尻洗浄ノズル噴出口22より洗浄水を噴出している状態の説明図である。シャッター30の裏側には、ヒンジ31側の位置に返し部32が形成され、ヒンジ31側と反対方向に突起部33を有している。また、お尻洗浄ノズル噴出口22は、返し部32より前部に位置する。
【0020】
お尻洗浄ノズル20の先端上部には、斜面25が設けられている。お尻洗浄ノズル20が前進すると、お尻洗浄ノズル20の斜面25とシャッター30の突起部33が当接することにより、シャッター30を開方向に押し上げて、シャッター30を閉状態から半開状態(開き)にする。上記方法により、お尻洗浄ノズル噴出口22と返し部32を所望の位置関係に調整することができる。したがって、お尻洗浄ノズル噴出口22から噴出する洗浄水は、シャッター30の裏側で跳ね返り、跳ね返された洗浄水は、お尻洗浄ノズル噴出口22周辺を洗浄するのに十分な量を当てることができ、また、お尻洗浄ノズル噴出口22から噴出された洗浄水が、シャッター30の外側(前部)に飛び散ることを抑制することができる。また、お尻洗浄ノズル20の先端上部に斜面25が設けられていることにより、お尻洗浄ノズル20のノズル先端面26の洗浄も容易にできる。なお、シャッター30に設けられた突起部33やお尻洗浄ノズル20の先端上部に設けられた斜面25については、これらの形状に限定するものではない。返し部32は、洗浄水をお尻洗浄ノズル噴出口22と及びベースプレート40の先端前部に跳ね返すように湾曲形状を呈している。そして、お尻洗浄ノズル噴出口22とシャッター30の間には、略三角形状の空間が設けられている。また、シャッター30が配設されるベースプレート先端42には、シャッター30に向けられた洗浄水の跳ね返りがベースプレート40の内部へ浸入するのを防止する遮蔽板43が設けられている。
【0021】
そして、遮蔽板43は、お尻洗浄ノズル20の進退方向に対して垂直になるようにベースプレート40と一体で形成される。遮蔽板43は、お尻洗浄ノズル20の進退方向に対して垂直になるようにベースプレート40と一体で形成される。ただし、遮蔽板43は、お尻洗浄ノズル20の進退方向に対して垂直のみに限定されるものではない。
【0022】
つぎに、本発明の実施形態による温水洗浄便座1の作用(動作)を説明する。
【0023】
操作部11のスイッチが操作されると、制御回路12により、電磁弁8が開き、洗浄水が給水源6から温水タンク10内に導入される。温水タンク10で加熱された洗浄水は、切替弁(図示せず)を介してお尻洗浄ノズル20に導かれる。そして、お尻洗浄ノズル20は、ベースプレート40から便器2内に前進することで、シャッター30と当接し、シャッター30を押し上げて半開状態に保持する。この半開状態に保持されて、お尻洗浄ノズル噴出口22から、シャッター30の裏側の返し部32に向けて、洗浄水を噴出する。
【0024】
噴出した洗浄水は、返し部32の湾曲形状に沿って流動し、その洗浄水の一部は、シャッター30の裏側の返し部32からシャッター30の突起部33方向まで洗浄水が流れることにより、シャッター30の裏側全体を洗浄できる。さらに、噴出した洗浄水の一部は、お尻洗浄ノズル噴出口22周辺に向けて跳ね返り、お尻洗浄ノズル噴出口22周辺を含むノズル先端面26からベースプレート先端42までの全体を洗浄し、便器2内に流れ落ちる。なお、ビデ洗浄ノズル21を洗浄する際も、上記のお尻洗浄ノズル20と同様である。
【0025】
つぎに、本発明の実施形態による温水洗浄便座装置1の効果を説明する。
【0026】
本発明の温水洗浄便座装置1では、シャッター30に、お尻洗浄ノズル噴出口22から噴出した洗浄水をお尻洗浄ノズル20側に向けて跳ね返すための返し部32が設けられている。そして、お尻洗浄ノズル20の洗浄は、シャッター30が開きお尻洗浄ノズル噴出口22からの洗浄水が返し部32に当たるベースプレート40から前進した位置で、返し部32に跳ね返された洗浄水により洗浄される。したがって、噴出口22、23からの洗浄水を返し部32に当てることができ、シャッター30の裏側を洗浄することができ、かつ、ベースプレート40のノズルが収容される部分に汚水が飛び散って汚れることを防止できる。さらに、ベースプレート先端42を洗浄することができる。
【0027】
また、返し部32は、お尻洗浄ノズル噴出口22から噴出する洗浄水を、お尻洗浄ノズル20のお尻洗浄ノズル噴出口22に導く湾曲形状であるため、洗浄水の跳ね返りがスムーズであり、汚水が飛び散らない。そして、お尻洗浄ノズル噴出口22を効率的に洗浄することができる。
【0028】
また、シャッター30の開閉状態を任意に設定できるので、洗浄水の跳ね返り方向を微調整でき、シャッター30の裏側と噴出口22、23を効率的に洗浄できる。
【0029】
また、ベースプレート40に備える遮蔽板43により、洗浄水の跳ね返りがベースプレート40内に入ることを防止できる。
【0030】
上記洗浄方法は、噴出口22、23周辺の汚れを洗浄でき、従来と同等の洗浄効果も得られるため、従来の温水洗浄便座装置に洗浄機能のために設けられていた掃除用洗浄水を供給するための掃除用洗浄水供給口67や給水ホースや流路切替えが不要となり、温水洗浄便座装置1のコストダウンと小型化ができる。
【0031】
なお、ノズル20、21を進退させるための駆動手段は、実施例の駆動モーター以外に水圧応答式も適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 温水洗浄便座装置
6 給水源
20 お尻洗浄ノズル(ノズル)
21 ビデ洗浄ノズル(ノズル)
22 お尻洗浄ノズル噴出口(噴出口)
23 ビデ洗浄ノズル噴出口(噴出口)
25 斜面
26 ノズル先端面
30 シャッター
32 返し部
40 ベースプレート
42 ベースプレート先端
43 遮蔽板
50 駆動モーター(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体局部に向けて洗浄水を噴出する噴出口を有するノズルと、
前記ノズルに洗浄水を供給する給水源と、
前記ノズルの進退に伴って開閉するシャッターと、
前記ノズルを設置するベースプレートと、
前記ベースプレートに設置された前記ノズルを進退させる駆動手段と、
を備える温水洗浄便座装置であって、
前記シャッターには、前記噴出口から噴出した洗浄水を前記ノズル側に向けて跳ね返す返し部が設けられており、
前記ノズルは、前記シャッターが開き前記噴出口からの洗浄水が前記返し部に当たる前記ベースプレートから前進した位置で、前記返し部に跳ね返された洗浄水により洗浄される
温水洗浄便座装置。
【請求項2】
前記シャッターの返し部は、前記噴出口から噴出する洗浄水を前記ノズルの前記噴出口に導く湾曲形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の温水洗浄便座装置。
【請求項3】
前記シャッターは、前記ノズルの進退に伴って回動することで開閉する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の温水洗浄便座装置。
【請求項4】
前記ベースプレートは、前記シャッターが配設される前記ベースプレートの先端に設けられる遮蔽板を備え、
前記遮蔽板は、前記返し部からの洗浄水が前記ベースプレート内に侵入するのを抑制する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の温水洗浄便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28902(P2013−28902A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163873(P2011−163873)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】