説明

温水洗浄装置及び便器装置

【課題】大量の水でノズルを十分に洗浄することができる温水洗浄装置と、この温水洗浄装置を備えた便器装置を提供する。
【解決手段】ロータンクからのフラッシュ水を水路11によって便鉢に導く。第1の水路11にハウジング20が設置され、ノズル23,24がハウジング20から突出可能とされている。ノズル23,24はガイドパイプ25a,25bに外嵌し、引張コイルスプリングによって後退方向に付勢されている。ロータンク5内の水が水路11を介して便鉢に供給される場合、第1の水路11に流入した水はハウジング20を通過し、ノズル23,24を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器使用者の臀部に向って温水を噴出して洗浄する温水洗浄装置に係り、特にノズルの外周面を水で洗って汚れの除去を行うようにした温水洗浄装置に関する。また、本発明は、この温水洗浄装置を備えた便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体臀部洗浄用の温水洗浄装置において、ノズル外周面の汚れ除去のために温水洗浄動作中にノズルの外周面に水を供給することにより、汚物等がノズルに付着することを防止したり、付着汚物を洗い流すことが特開平11−193567号公報(特許文献1)及び特開2002−275993号公報(特許文献2)に記載されている。
【0003】
かかる特許文献1及び2の温水洗浄装置にあっては、ノズル洗浄はノズルに水を注ぎかけるものであり、洗浄力が弱い。なお、水をノズルに強く吹き付けた場合には、水が周囲に飛び散ってしまう。更に、排便がより付着しやすい便鉢内にノズルが配置されている。
【0004】
特開2005−83087号公報(特許文献3)には、突出した使用姿勢と、後退した退避姿勢とを採りうるように前後進するノズルを備えた温水洗浄装置において、該退避姿勢にあるノズルを囲むケースと、該ケース内に該ノズルの洗浄水を供給する洗浄水供給手段とを備えた温水洗浄装置が記載されている。この温水洗浄装置によれば、ケース内にノズルを退避させた状態でノズルを洗浄するので、ノズルを水に浸漬させたり、ノズルに強力に水を吹き付けたりすることにより、ノズルを洗浄することができ、周囲に水を飛散させることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−193567号公報
【特許文献2】特開2002−275993号公報
【特許文献3】特開2005−83087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献3では、ケース内に供給されるノズル洗浄水量が少ない。本発明は、大量の水でノズルを十分に洗浄することができる温水洗浄装置と、この温水洗浄装置を備えた便器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の温水洗浄装置は、人体臀部洗浄用のノズルを有する温水洗浄装置において、便器内の汚水を排出するためのフラッシュ水の少なくとも一部が通過する水路に該ノズルを配置したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、この水路の途中に、前記ノズルを収容したハウジングが設けられており、該ノズルは該ハウジングから人体臀部洗浄位置へ突出可能とされていることが好ましい。
【0009】
この場合、ノズルは、ガイドパイプに外嵌し、該ガイドパイプに沿ってガイドパイプ前方へ移動可能であり、該ガイドパイプを介して該ノズルに人体臀部洗浄用温水が供給されることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様では、フラッシュ水の全量が通過する水路の途中に前記ノズルが配置されている。
【0011】
本発明の別の一態様では、フラッシュ水源に連なる第1の水路及び第2の水路が設けられ、該第1の水路の途中に前記ノズルが配置されており、該第1の水路は全フラッシュ水量の10%以上の水が流通可能とされている。
【0012】
この場合、第1の水路への給水量と第2の水路への給水量とを調節するための流量調節手段を備えてもよい。
【0013】
本発明の便器装置は、洋風便器と、かかる本発明の温水洗浄装置とを備えたものである。
【0014】
この洋風便器のフラッシュ水源はタンクであってもよく、水道管であってもよい。
【0015】
本発明の便器装置は、フラッシュ水を圧送するためのポンプを備えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の温水洗浄装置及び便器装置にあっては、便器を洗浄すべくフラッシュ水を流すと、少なくともその一部(好ましくは10%)以上がノズルと接触してこれを洗浄する。通常の洋風便器では、大使用時のフラッシュ水量は4〜8L程度であり、従来のノズル洗浄水に比べると大量であるので、ノズルが十分に洗浄される。
【0017】
本発明では、フラッシュ水路の途中にハウジングを設置し、ノズルを該ハウジングに配置しておくことにより、ハウジング内を通過するフラッシュ水によってノズルが十分に洗浄される。
【0018】
このノズルをガイドパイプに外嵌させておくと、ハウジング内を通過するフラッシュ水がノズルの外面全体と十分に接触し、ノズルが十分に洗浄される。
【0019】
本発明では、ノズルをフラッシュ水の全量が流れる水路に配置してもよく、このようにすればノズルが多量の水で洗浄されることになる。
【0020】
本発明では、全フラッシュ水量の10%以上が流通可能な第1の水路にノズルを配置してもよい。この場合もノズルは十分な量の水で洗浄される。第2の水路にはノズルが配置されないので、フラッシュ水がスムーズに流れ、高流速にてフラッシュ水を便器へ流出させることができる。この場合、第1の水路及び第2の水路の水量を調節する流量調節手段を設けてもよい。このように構成すると、便器の使用形態に応じてノズル洗浄水量を調節することができる。
【0021】
本発明では、フラッシュ水の水源はロータンクなどのタンクであってもよい。ロータンクの場合であれば、大流量のロータンク放出水によってノズルが十分に洗浄される。
【0022】
本発明では、フラッシュ水をポンプで圧送してもよい。このようにすれば、ノズルを強力に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係る便器装置の側面図である。
【図2】洋風便器におけるフラッシュ水の流れを説明する斜視図である。
【図3】ハウジングの斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿うハウジング断面図である。
【図5】ノズル突出時のハウジング断面図である。
【図6】別の実施の形態を示すハウジング断面図である。
【図7】別の実施の形態に係る便器装置の模式的な断面図である。
【図8】別の実施の形態に係る便器装置の模式的な断面図である。
【図9】別の実施の形態に係る便器装置の模式的な断面図である。
【図10】別の実施の形態に係る便器装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0025】
図1は第1の実施の形態に係る便器装置の側面図であり、洋風便器1の後部上面にロータンクカバー2が設置され、該ロータンクカバー2の前面に便座3及び便蓋4が起倒方向回動可能に取り付けられている。タンクカバー2内にロータンク5が設置されており、ボールタップ(図示略)によって給水が行われる。
【0026】
このロータンク5の底部にフラッシュ弁装置6が設置されている。このフラッシュ弁装置6の流出部にディストリビュータ7が接続され、管状の第1の水路11及び第2の水路12が構成されている。この第1の水路11及び第2の水路12からは、図2の通り洋風便器1の鉢部13の上縁部に同一周回方向にフラッシュ水が供給される。
【0027】
図3の通り、ハウジング20は箱状であり、一方の側面に流入口21が設けられ、他方の側面に流出口22が設けられている。この実施の形態では、ハウジング20の前端面20a側が低位となっており、洋風便器1の鉢部13に臨んでいる。流入口21はこの前端面20aの近傍に設けられ、流出口22は高位の後端面20bの近傍に配置されている。これにより、ハウジング20内に水が溜まり、ノズル23,24が水に浸漬されるよう構成されている。ただし、寒冷地等に設置される場合を考慮して、流入口21を高位側とし、流出口22を低位側とし、ハウジング20内に水が残らないように構成してもよい。
【0028】
この実施の形態では、ノズルとしてシャワーノズル23とビデノズル24とが設置されている。シャワーノズル23及びビデノズル24は、ハウジング20の後端面を貫通したガイドパイプ25a,25bに外嵌している。各ガイドパイプ25a,25bの後端に温水供給配管26a,26bが接続されている。図4,5に示す通り、ガイドパイプ25a,25bの先端はハウジング前端面20aから離隔している。
【0029】
図3〜5の通り、シャワーノズル23及びビデノズル24は先端面が閉じ、後端面が開放した筒形状であり、ハウジング20の前端面20aに設けられたノズル挿通口27に挿通されている。ノズル23,24の先端には外周に張り出すように鍔部28が設けられている。ノズル23,24の先端部の裏面とガイドパイプ25a,25bの先端との間に引張コイルバネ29が架設されている。このコイルバネ29は、ノズル23,24の先端部裏面及びガイドパイプ25a,25bの先端にそれぞれ設けられた係止部(図示略)に係止されており、ノズル23,24をハウジング20内に引き込むように付勢している。コイルバネ29に引っ張られてノズル23,24が後退した場合、鍔部28がノズル挿通口27の外面縁部に押し付けられるので、ノズル挿通口27からハウジング20内の水が漏出しない。但し、一部漏出しても、大きな支障はない。
【0030】
ノズル23,24の先端からは摘み部31が突設されている。この摘み部31を摘んでノズル23,24を引き出して清掃することが可能である。ノズル23,24の後端側の外周面にはフランジ状のストッパ部32が突設されている。図5の通り、温水供給配管26a又は26bからガイドパイプ25a又は25b内に温水を供給すると、この水圧によってノズル23又は24はこのストッパ部32がハウジング前端面20aに当接するまで前進する。前進したノズル23又は24の先端部上面に設けられた噴出口30から温水が斜め上方に噴出し、人体臀部の洗浄が行われる。
【0031】
この洋風便器1の使用者がフラッシュハンドル(図示略)を操作するか、又はリモコン(図示略)等に設けられたフラッシュスイッチを操作すること等によってロータンク5内の水が水路11,12を介して便鉢13に供給される場合、第1の水路11に流入した水はハウジング20を通過し、ノズル23,24を洗浄する。大便使用時の便器洗浄水量は4〜8L程度であるので、洗浄水量の10%以上例えば30〜70%程度を第1の水路に流すことにより、大量の水がハウジング20を通過することになり、ノズル23,24が十分に洗浄される。
【0032】
この実施の形態では、ロータンク5からの水の放出が停止した後もハウジング20内に水が残り、ノズル23,24が水に浸漬されるので、この浸漬中にノズル23,24の付着物が剥離ないし溶解する効果も得られる。
【0033】
この実施の形態では、ノズル23,24はガイドパイプ25a,25bに外嵌しており、ハウジング20内に後退したノズル23,24の外周面の全体が水によって十分に洗浄される。
【0034】
上記実施の形態では、ノズル23,24が温水の水圧によって前進するように構成されているが、その他の前後進機構によって前後進するものであってもよい。図6はその一例を示すものであり、ノズル23Aの外周面に長手方向に延在するラック34が設けられ、該ラックにピニオン35が噛合している。ピニオン35は、ハウジング20の側面を貫通する駆動軸の先端に固着されており、該駆動軸をモータ(図示略)で正転又は反転することにより、ノズル23Aが前後進する。図6のその他の構成は図4と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0035】
上記実施の形態ではロータンク5からのフラッシュ水を第1の水路11及び第2の水路12の2水路に分流しているが、3以上の水路に分流させ、そのうちの1つの水路にハウジング20を設けてもよい。また、水路は1つだけ設けられてもよい。図7は、第1の水路11のみを設けた便器装置の模式的な前後方面の縦断面図である。図7は、上記図1〜5の実施の形態において第2の水路12を設けないものであり、それ以外の構成は図1〜5の実施の形態と同一である。
【0036】
上記実施の形態では、洋風便器1の後部上面にロータンク5を配置しているが、図8のようにタンク38を洋風便器1とは別位置に配置し、ポンプ39によってタンク38内の水を水路11に圧送してもよい。このようにポンプ39によってフラッシュ水を加圧した場合、ハウジング20内を水が高速で通過し、ノズル23が十分に洗浄される。なお、タンク38にはボールタップ(図示略)によって給水が行われる。
【0037】
図8では、第1の水路11のみを設けているが、図9のように第1の水路11及び第2の水路12を設け、フラッシュ水をポンプ39から各水路11,12に圧送してもよい。この場合、水路11,12に流量調節弁11V,12Vを設け、各水路11,12に通水するフラッシュ水量を調節してもよい。
【0038】
また、弁11V,12Vを弁駆動装置によって開度調節可能とし、便器の使用形態等に対応して水路11,12への供給水量を制御してもよい。例えば、便器を男子小用に使用した場合には第2の水路12に全量又は大部分のフラッシュ水を供給し、便器を大使用した場合には第1の水路11に十分な水量にてフラッシュ水を流すように流量制御することができる。ノズルを特に十分に洗浄する必要がある場合には、フラッシュ水の全量又は大部分を第1の水路11に流すようにしてもよい。なお、図示は省略するが、図1〜5の態様においても水路11,12にそれぞれ同様の流量調節弁及び流量制御機構を設けてもよい。
【0039】
本発明は、サイホンゼット式洋風便器にも適用できる。図10はその一例を示すものであり、便器洗浄時には、水道配管から止水栓及び配管40を経て供給されるフラッシュ水を第1の水路41と第2の水路42とに分流させ、第1の水路41からの水を便鉢13のリム部に供給する。また、第2の水路42からの水をゼットノズル43から便器トラップ部の1次側44に向って噴出し、サイホン起動を促進する。このような水の供給を行わせるために、各水路41,42に弁41V,42Vが設けられており、コンピュータ制御方式の制御装置によって弁41V,42Vの開閉が制御される。
【0040】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、図示以外の形状のハウジングを用いてもよい。また、ハウジングから突出したノズルに水を注ぎ掛ける従来方式のノズル洗浄機構を併設してもよい。フラッシュ動作は、便器から人体が遠ざかったり、便座から人体が立ち上がってから所定時間(例えば数秒)経過すると自動的に行われてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 洋風便器
2 タンクカバー
5 ロータンク
11,41 第1の水路
12,42 第2の水路
20 ハウジング
23,24 ノズル
25a,25b ガイドパイプ
29 引張コイルスプリング
38 タンク
43 ゼットノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体臀部洗浄用のノズルを有する温水洗浄装置において、便器内の汚水を排出するためのフラッシュ水の少なくとも一部が通過する水路に該ノズルを配置したことを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、前記水路の途中に、前記ノズルを収容したハウジングが設けられており、該ノズルは該ハウジングから人体臀部洗浄位置へ突出可能とされていることを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項3】
請求項2において、前記ノズルはガイドパイプに外嵌し、該ガイドパイプに沿ってガイドパイプ前方へ移動可能であり、
該ガイドパイプを介して該ノズルに人体臀部洗浄用温水が供給されることを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、フラッシュ水の全量がフラッシュする水路の途中に前記ノズルが配置されていることを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項において、フラッシュ水源に連なる第1の水路及び第2の水路が設けられ、該第1の水路の途中に前記ノズルが配置されており、
該第1の水路は全フラッシュ水量の10%以上の水が流通可能であることを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項6】
請求項5において、第1の水路への給水量と第2の水路への給水量とを調節するための流量調節手段を備えたことを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項7】
洋風便器と、該洋風便器に設置された請求項1ないし6のいずれか1項に記載の温水洗浄装置とを有する便器装置。
【請求項8】
請求項7において、前記洋風便器は、フラッシュ水源としてタンクを備えていることを特徴とする便器装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、フラッシュ水を圧送するためのポンプを備えたことを特徴とする便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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