説明

温水洗浄装置及び便器設備

【課題】電磁弁や漏出防止弁などの弁を用いることなく、サブタンク内の水が非使用時にノズルからリークすることが防止される温水洗浄装置と、この温水洗浄装置を備えた便器設備を提供する。
【解決手段】洗浄スイッチ12を押すと、制御器11はまず給水弁2を開とし、それから所定時間tが経過してからポンプ6を作動させる。その後、ストップスイッチ13が押されると、制御器11は、まず給水弁2を閉とし、それから所定時間tが経過してからポンプ6を停止する。この所定時間tの間にサブタンク3内の水はすべてポンプ6によって送出され、サブタンク3内は空となっている。そのため、サブタンク3から温水タンク7に水頭圧がかからず、温水洗浄装置の非使用時にノズル10から水がリークしない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器使用者の臀部に向けてノズルから温水を噴射して臀部を洗浄するための温水洗浄装置に係り、特にサブタンク内の水をポンプで送水し、加温してノズルに供給するよう構成された温水洗浄装置に関する。また、本発明は、この温水洗浄装置を備えた便器設備に関する。
【背景技術】
【0002】
温水洗浄装置として、大気に開放したサブタンク内に水道水を受け入れて貯留し、このサブタンク内の水をポンプによって温水タンクに送水し、温水タンク内の温水をノズルに導いて噴出させるよう構成したものがある(特許文献1〜3)。特許文献1では、サブタンクはロータンクに並設され、サブタンク内に余剰に供給された水をロータンクにオーバーフローさせるよう構成されている。
【0003】
特許文献2の図7には、ロータンクに並設されたサブタンク内の水を、ポンプ、温水タンク、バキュームブレーカを介してノズルに導くように構成した温水洗浄装置において、ポンプの下流側に電磁弁を設け、温水洗浄装置の非使用時には電磁弁を閉とし、サブタンク内の水がノズルから漏水することを防止したものが記載されている。
【0004】
特許文献2の図4及び0032段落には、サブタンクをロータンクよりも下位に設置すると共に、温水タンクとノズルとの間の管路に漏出防止弁を設け、非使用時にサブタンク内の水がノズルから漏出することを防止した温水洗浄装置が記載されている。
【0005】
特許文献3の第3頁左下欄8〜11行には、サブタンク内の水の凍結が予想されるときには、サブタンク内の水を排水することが記載されているが、サブタンク内の水がノズルから漏水することを防止することは、ノズルの手前に設けた電磁弁によって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平2−42978
【特許文献2】特開平7−189318
【特許文献3】特開平2−282533
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
サブタンク内の水をポンプによって送水し、温水タンク等で加温した温水をノズルから噴出させるよう構成した温水洗浄装置において、特許文献1のようにサブタンクがノズルよりも高位に設けられていると、温水洗浄装置の非使用時にもサブタンク内の水が水頭差によって徐々にノズルからリーク(漏水)する。特許文献2,3では、電磁弁や漏出防止弁によって、このポタ漏れと称されるリークが防止される。
【0008】
本発明は、このような電磁弁や漏出防止弁などの弁を用いるまでもなく、サブタンク内の水が非使用時にノズルからリークすることが防止される温水洗浄装置と、この温水洗浄装置を備えた便器設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(請求項1)の温水洗浄装置は、給水を貯留するサブタンクと、該サブタンクから水を送り出すポンプと、該ポンプからの水を加温する加温器と、該加温器からの温水を噴出するノズルと、スイッチからの洗浄開始信号と洗浄停止信号に基づいて該ポンプを制御する制御器と、を備え、該サブタンクが該ノズルよりも高位に設置されている温水洗浄装置において、サブタンクに給水する給水弁が設けられており、前記制御器は、洗浄停止信号が与えられたときに、該給水弁を閉弁し、それから所定時間経過後に該ポンプを停止させることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の温水洗浄装置は、請求項1において、前記所定時間は、前記サブタンク内の水を全量排出するのに要する時間以上であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の温水洗浄装置は、請求項1又は2において、前記制御器は、洗浄開始信号が与えられたときに、給水弁を開弁し、それから規定時間経過後に前記ポンプを作動させることを特徴とするものである。この規定時間は2〜3秒程度が好ましい。
【0012】
請求項4の温水洗浄装置は、請求項3において、ポンプの単位時間当りの送水量は、前記給水弁の単位時間当りの通過水量よりも少ないことを特徴とするものである。
【0013】
本発明(請求項5)の便器設備は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の温水洗浄装置を備えたものである。
【0014】
請求項6の便器設備は、請求項5において、該便器設備は、便器と、該便器に便鉢洗浄水を供給するためのロータンクを備えており、前記サブタンクからのオーバーフロー水が該ロータンク内に導入されるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の温水洗浄装置及び便器設備にあっては、サブタンク内の水がポンプで送水され、加温器で加温され、ノズルから噴出する。洗浄停止信号が制御器に与えられると、制御器は給水弁を閉弁し、それから所定時間経過後にポンプを停止する。これにより、サブタンク内の水の全量又は大部分が排出されるので、その後におけるノズルからのリークが防止される。
【0016】
本発明では、このリーク防止用の弁を管路に設けるまでもなく非洗浄動作中におけるノズルからの漏水を防止することができ、コストダウンを図ることができる。
【0017】
請求項2のように、サブタンク内の水の全量を排出することにより、温水洗浄装置の非使用時におけるノズルからの水のリークが防止される。
【0018】
請求項3,4のように、洗浄開始に際して、まず給水弁を開弁し、サブタンク内に水を貯留してからポンプを作動させることにより、ポンプがエアを噛み込むことが防止され、ノズルからの噴出流が安定したものとなる。
【0019】
請求項4によれば、ポンプの作動中にサブタンクが空となることがなく、ノズルからの噴出流が安定する。
【0020】
請求項6にあっては、サブタンクのオーバーフロー水をロータンクに導いて便鉢洗浄水として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る温水洗浄装置の通水系統図である。
【図2】図1の温水洗浄装置の作動を示すタイミングチャートである。
【図3】実施の形態に係る便器設備の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0023】
第1図の通り、この実施の形態に係る温水洗浄装置では、給水管1からの水は電磁弁よりなる給水弁2を介してサブタンク3に導入可能とされている。サブタンク3にはオーバーフロー部4が設けられている。サブタンク3は上部が大気に開放している。給水管1の末端は、サブタンク3内のオーバーフロー水面位WLよりも上方に位置しており、給水管1とサブタンク3内の水とは完全に縁切りされている。サブタンク3内の水は、サブタンク3の下部に接続された配管5及びポンプ6を介して温水タンク7内に導入可能とされている。温水タンク7には、水を加温するためのヒータ8と、水温検知用サーミスタ(図示略)が設けられており、温水タンク7内の水温が所定温度となるようにヒータ8への通電がヒータ制御回路(図示略)によって制御される。
【0024】
温水タンク7内の温水は、ホース等よりなる配管9を介して洗浄ノズル10に供給される。この洗浄ノズル10は、シリンダ部10aとノズル部10bとを備えており、シリンダ部10aに温水が供給されると、ノズル部10bが前進し、その先端から温水が便座着座者の臀部に向けて噴出する。ノズル部10bはモータ等によって前後進するよう構成されてもよい。
【0025】
給水弁2及びポンプ6は制御器11によって制御される。この制御器11には、洗浄開始用の洗浄スイッチ12と洗浄停止用のストップスイッチ13から信号が入力される。これらのスイッチ12,13は、リモコン等に設置されている。
【0026】
第3図は、この温水洗浄装置を備えた便器設備の斜視図である。
【0027】
便器20の前部は便鉢21となっている。便器20の後部上面にロータンクカバー22が設置されており、このロータンクカバー22の前部に対し便座23及び便蓋24が上下方向回動可能に取り付けられている。
【0028】
このロータンクカバー22内には、ロータンク25が設置されており、便鉢21にロータンク25内の水を供給するための洗浄レバーハンドル26がロータンクカバー22の側面に設けられている。ロータンク25には、水を一定に貯留するためのボールタップ(図示略)が設けられている。
【0029】
このロータンク25の上側にサブタンク3が設置され、オーバーフロー部4からの水がロータンク25内に落下するよう構成されている。
【0030】
トイレルームの壁面からは給水配管27が突出しており、この給水配管27の先端に止水栓28が取り付けられている。この止水栓28にフレキシブルホース等よりなる室内配管29を介して、ロータンクカバー22内の前記給水配管1(第2図では図示略)が接続されている。
【0031】
なお、この配管1は途中で分岐し、一方は前記給水弁2に連なり、他方はロータンク25のボールタップに接続されている。
【0032】
第3図の通り、サブタンク3から配管5が下方に延在し、ポンプ6を介して、ロータンクカバー22内の下側の温水タンク7内に水が導入可能となっている。ロータンク22内の下部前縁のうち、便器幅方向の中央付近に洗浄ノズル10が設置されている。洗浄ノズル10にホース状配管9を介して温水が供給されると、ノズル部10bは、ロータンク22から前方に突出し、その前端から斜め上方に温水を噴出する。
【0033】
このように構成された温水洗浄装置及び便器設備の作動について第2図を参照して説明する。洗浄スイッチ12を押すと、洗浄信号が制御器11に与えられる。制御器11は、まず給水弁2を開とし、それから所定時間tが経過してからポンプ6を作動させる。所定時間tの間にサブタンク3内には十分な量の水が貯留されるので、ポンプ6の始動時にエアがポンプ6に噛み込まれることがなく、ノズル10からの噴出水流が安定したものとなる。このtは2〜3秒であることが好ましい。
【0034】
その後、ストップスイッチ13が押され、洗浄停止信号が与えられると、制御器11は、まず給水弁2を閉とし、それから所定時間tが経過してからポンプ6を停止する。この所定時間tの間にサブタンク3内の水はすべてポンプ6によって送出され、サブタンク3内は空となっている。そのため、サブタンク3から温水タンク7に水頭圧がかからず、温水洗浄装置の非使用時にノズル10から水がリークすることがない。このtは2〜3秒程度であることが好ましい。
【0035】
本発明では、ポンプ6の単位時間当りの送水量を給水弁2の単位時間当りの通過水量よりも少なくし、洗浄動作中にサブタンク3内が空にならないようにするのが好ましい。なお、給水弁2からの導入水によってサブタンク3内の水位が上昇したときのオーバーフロー水は、ロータンク25内に導入され、次回の便器洗浄に有効に利用される。
【0036】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明はこれに限定されない。例えば、温水タンクの代りに瞬間加熱式のヒータを設けてもよい。
【符号の説明】
【0037】
2 給水弁
3 サブタンク
4 オーバーフロー部
6 ポンプ
7 温水タンク
10 洗浄ノズル
20 便器
21 便鉢
22 ロータンクカバー
25 ロータンク
26 レバーハンドル
28 止水栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水を貯留するサブタンクと、
該サブタンクから水を送り出すポンプと、
該ポンプからの水を加温する加温器と、
該加温器からの温水を噴出するノズルと、
スイッチからの洗浄開始信号と洗浄停止信号に基づいて該ポンプを制御する制御器と、
を備え、該サブタンクが該ノズルよりも高位に設置されている温水洗浄装置において、
サブタンクに給水する給水弁が設けられており、
前記制御器は、洗浄停止信号が与えられたときに、該給水弁を閉弁し、それから所定時間経過後に該ポンプを停止させることを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、前記所定時間は、前記サブタンク内の水を全量排出するのに要する時間以上であることを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記制御器は、洗浄開始信号が与えられたときに、給水弁を開弁し、それから規定時間経過後に前記ポンプを作動させることを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項4】
請求項3において、ポンプの単位時間当りの送水量は、前記給水弁の単位時間当りの通過水量よりも少ないことを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の温水洗浄装置を備えた便器設備。
【請求項6】
請求項5において、該便器設備は、便器と、該便器に便鉢洗浄水を供給するためのロータンクを備えており、
前記サブタンクからのオーバーフロー水が該ロータンク内に導入されるように構成されていることを特徴とする便器設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−94419(P2011−94419A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250714(P2009−250714)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】