説明

温水洗浄装置

【課題】簡単な構造でありながら、電力消費を節減でき、しかも毎回の使用時に必要量の温水を使用可能とすること。
【解決手段】トイレ室への使用者の入退室を検知する人感センサ6と、使用者の入室を検知したときからタンク2内に貯蔵されている水の加熱を開始するようにヒータ8を通電制御するヒータ制御部14と、毎回の使用水量に対応する量の水をタンク2内に事前給水する給水制御部15とを備えた温水洗浄装置13である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水洗浄装置に関し、詳しくは例えば便器に設置され、局部洗浄に際してタンク内に貯水された水を温水化して人体局部に噴射させるための温水洗浄装置における給湯方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の温水洗浄装置の給湯方式として、貯湯式と瞬間式のいずれかが用いられている。
【0003】
貯湯式としては、例えば特許文献1の洗浄器が知られている。この洗浄器は、使用者の被洗浄部へ洗浄水を放出する洗浄水放出手段と、水タンク内の洗浄水を適宜に加熱する加熱手段と、洗浄器設置室内に使用者が入ったことを検出して前記加熱手段を付勢する人体検出付勢手段とを有している。
【0004】
瞬間式としては、例えば特許文献2のトイレ装置が知られている。このトイレ装置の給湯手段は、必要な洗浄水を瞬時に所定温度に沸かすことのできる瞬間式であり、本体制御手段は、受信手段からスイッチ識別信号と給湯温度設定信号の2つの信号を連続して受信した場合に洗浄手段を付勢するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−350573号公報
【特許文献2】特開平11−303183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に示された貯湯式では、満水としたタンク内の洗浄水を設定温度近傍の温度に維持するようにしているため、比較的長時間の出湯に有利である。その反面、待機時間中に貯湯部分からの放熱によるエネルギーロスが大きく、そのうえ使用のたびに加熱手段で満水全量を適温化するための電力(例えば、500W)と時間が必要であり、電力損失が大きくなるという課題を有している。
【0007】
一方、上記特許文献2に示された瞬間式では、待機時の電力ロス低減を図ることができ、貯湯式の欠点を解消或いは低減できる。その反面、瞬間式給湯装置の構造が貯湯式よりも複雑となり、高価で、そのうえ電気容量的にも1kW程度が必要で、配電面での制約があるという課題を有している。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、簡単な構造でありながら、電力消費を節減でき、しかも毎回の使用時に必要量の温水を使用可能とする温水洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明は、給水源から供給される水を貯蔵するタンクと、このタンク内の水を加熱するヒータと、このヒータで加熱された温水を局部洗浄水として人体局部に噴射させる洗浄ノズルとを備えた温水洗浄装置であって、トイレ室への使用者の入退室を検知する人感センサと、この人感センサで使用者の入室を検知したときから前記タンク内に貯蔵されている水の加熱を開始するように前記ヒータを通電制御するヒータ制御部と、毎回の使用水量に対応する量の水を前記タンク内に事前給水する給水制御部とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、毎回の使用水量を計測して記憶する水量記憶手段を備え、この水量記憶手段で記憶した水量を基準にして前記タンク内に事前給水される必要水量を決定する構成とすることが好ましい。
【0011】
また、前記人感センサで使用者の退室を検知したときから所定の時間内に、前記タンク内への事前給水を行う構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、簡単な構造でありながら、電力消費を節減でき、しかも毎回の使用時に必要量の温水を使用可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す温水洗浄装置の概略構成図である。
【図2】同上の温水洗浄装置の制御ブロック図である。
【図3】(a)は従来の貯湯式の給水加温フローであり、(b)は瞬間式の給水加温フローであり、(c)は図1の温水洗浄装置における給水加温フローである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は本実施形態の温水洗浄装置13の概略構成図を示している。
【0016】
給水源7からの水道水は、給水路9を介してタンク2内に給水されて局部洗浄水として貯蔵される。給水路9の途中には、タンク2内への給水量を調節する給水電磁弁5と定流量弁3とが設けられている。タンク2は、毎回の使用水量に必要な量の水を洗浄完了後に貯蔵できる容量を備えている。タンク2内には、水を加熱するための電気ヒータ8が内蔵されている。この電気ヒータ8は、後述のヒータ制御部14によって、予め設定された設定温度(例えば40℃程度)となるように通電される。この電気ヒータ8を通電制御は、例えば、タンク2内の水温を温度センサ(図示略)で検出し、この検出温度が予め設定された設定温度(例えば40℃程度)となるようにフィードバック制御することで行われる。
【0017】
前記タンク2の出口は、給湯路10を介して、先端に噴射口を有する洗浄ノズル1に接続されている。給湯路10の途中にはポンプ4が設けられ、ポンプ4の駆動によってタンク2内の温水が給湯路10に引き出されて洗浄ノズル1から人体局部に向かって噴射されるようになっている。
【0018】
図2は温水洗浄装置13の制御ブロック図を示している。温水洗浄装置13が設置されたトイレ室には、使用者が入室・退室したことを検知するための人感センサ6が設けられている。人感センサ6としては、例えば、トイレ入口に設けた透過型・反射型の光センサ、或いは、ドアの開閉を検知する開閉センサ等が挙げられるが、特に限定されず、人の入退室を検出できるものであればよい。なお便座への着座を検知して、使用者の入退室を検知するものでもよい。人感センサ6からの検知信号は制御回路12に入力される。
【0019】
制御回路12は、ヒータ制御部14とポンプ制御部16と給水制御部15を備えている。
【0020】
ヒータ制御部14は、人感センサ6からの入室検知信号に応答して電気ヒータ8への通電を開始し、洗浄開始時まで通電を継続する。そして、洗浄開始後以降から次回のトイレ使用時の入室が検知されるまの間は、電気ヒータ8への通電を停止する。
【0021】
ポンプ制御部16は、局部洗浄スイッチ11からの操作信号に応答してポンプ4を駆動してタンク2内の温水を、給湯路10から洗浄ノズル1を介して人体局部に向かって噴射させる。
【0022】
給水制御部15は、毎回の使用水量に対応する量の水がタンク2内に貯蔵されるようにタンク2への事前給水を行う。本例の給水制御部15は、人感センサ6からの退室検知信号が入力されたときから所定の時間内に、給水電磁弁5を開放し、毎回の使用水量に対応する必要量の水がタンク2内に貯蔵された段階で給水電磁弁5を閉じる。なお退室後の所定時間内としては、次回の温水使用が想定されるとき迄であれば問題はないが、タンク2内の加温状態が維持されている時間内が好ましく、これにより、新たに事前給水される水をタンク2内の余熱で加温できるようになる。
【0023】
本例の制御回路12は、毎回の使用水量を計測して記憶する水量記憶手段20を備えている。この水量記憶手段20は、過去の使用水量を直前の使用水量に書き換えて記憶する学習機能を有しており、学習した使用水量を基準にしてタンク2内に事前に給水される必要な水量を決定する。
【0024】
ここで、毎回の使用水量の計測方法としては、例えば、ポンプ4の動作時間から算出する方法や、給湯路10に流量センサ(図示略)を設けて計測する方法、或いは、タンク2内に水位センサ(図示略)を設けて、タンク2内の水位を水位センサによりセンシングする方法等が挙げられる。
【0025】
一方、水量記憶手段20で記憶された水量と同じ量の水をタンク2内に事前供給する際に、その給水量を測定する方法としては、例えば、電磁弁5と定流量弁3とによる調節量と通水時間とから算出する方法が挙げられる。他の方法として、給水源7側に設けられる給水ポンプ(図示略)の動作時間から算出する方法や、タンク2内の水位を水位センサ(図示略)によりセンシングする方法等でも良い。
【0026】
図3(a)は従来の貯湯式の給水加温フローを示し、(b)は瞬間式の給水加温フローを示し、(c)は本実施形態の方式の給水加温フローを示している。
【0027】
従来の貯湯式は、図3(a)のように、待機時にタンク内を満水全量を適温化するために電気ヒータに通電する。つまり、電気ヒータに断続的に通電することでタンク内の湯温を一定温度に維持し、洗浄時に給水と500Wの加温とを同時実施する。
【0028】
瞬間式(タンクレス式)は、図3(b)のように、待機時は電気ヒータの通電はせず、洗浄時のみに給水と1200Wの加温とを同時実施する。
【0029】
これに対し、本実施形態の方式では、図3(c)のように、タンク2内に事前給水しておき、入室を検知したときから電気ヒータ8に通電してタンク2内に貯蔵されている水を加熱する。また、洗浄開始から次回の入室検知までの待機時は電気ヒータ8の通電を停止する。
【0030】
以下の表1は、従来の貯湯式と瞬間式と、本実施形態の方式との差異を示している。この表1から、本実施形態の方式では、従来の貯湯式と瞬間式のそれぞれの短所が解消されていることが分かる。
【0031】
【表1】

【0032】
本実施形態の動作を、図3(c)を参照して説明する。
【0033】
使用者がトイレ室に入ると、人感センサ6からの入室検知信号が制御回路12に入力され、ヒータ制御部14が電気ヒータ8への通電(例えば、500W程度)を開始する(図3(c)の時刻t)。これにより、タンク2内に事前給水されて貯蔵されている必要量の水の加熱が開始される。そして、脱衣〜排便後に使用者が局部洗浄スイッチ11を操作すると(図3(c)の時刻t)、ポンプ制御部16がポンプ4を駆動させ、タンク2内の加温完了した温水が洗浄ノズル1から局部に向けて噴射される。この洗浄開始時に電気ヒータ8への通電が停止され、この停止状態は次回の入室検知まで維持される。洗浄完了後(図3(c)の時刻t)に、使用者がトイレ室から退室すると、人感センサ6からの退室検知信号が制御回路12に入力される。この退室検知から所定時間が経過するまでに、給水制御部15が給水電磁弁5を開放してタンク2内への事前給水を開始する。このとき前回の使用水量と同じ必要量の水をタンク2内に給水する。つまり、使用水量は毎回異なるため、前回使用して減った分だけタンク2内に補給するものであり、タンク2内に必要量の水が貯まった段階で給水電磁弁5を閉じて給水を停止する。
【0034】
しかして、本実施形態の温水洗浄装置によれば、使用者が入室したときには、タンク2内には、既に、使用に適した必要量の水が予め貯蔵されており、この水を電気ヒータ8で加熱する。これにより、脱衣〜排便終了までの間に、タンク2内の水を速やかに昇温させることができ、必要な最適量の温水を確保しやすくなる。つまりタンク2内には従来の貯湯式のように満水状態ではなく、使用に適した必要量の水だけが貯蔵されている。このため電気ヒータ8への通電が入室検知から洗浄開始までの比較的短時間(図3(c)のt〜t)であっても、上記[表1]で示したように沸上時間が1分程度で済む。この結果、従来の貯湯式と同等の比較的簡易な構成としながら、従来の貯湯式の課題であった保温時に満水状態にあるタンク内の水全体を加熱・保温する必要がなく、待機時の電力損失をなくして、トータルの電気使用量を削減できる。そのうえ従来の貯湯式のように電気ヒータの断続的な通電制御が不要となるので、開閉接点部材を設ける必要もなく、部品代の低減化を図りやすくなる。また、給水源7とタンク2間に定流量弁3を介在させ、タンク2と洗浄ノズル1間にポンプ4を介在させているので、タンク2の強度を水道圧に耐えるレベルとする必要がなく、タンク2の構造の簡略化、低コスト化が図りやすくなる。
【0035】
また本例では、退室を検知したときから所定時間内に、タンク2内に必要水量の事前給水を実施するので、タンク2内の余熱を利用して新たに溜められる水を加温でき、熱の無駄をなくすことができる。しかも、次の入室を検知するまでタンク2内に貯蔵された状態で維持されるため、タンク2内の水がトイレ室内の室温になじみやすくなり、使用時に給水する方式と比べて洗浄開始時の温水化の効率を上げることができる。特に冬の冷水時期では、使用時給水と比較して使用電力量を一層低減できる利点がある。
【0036】
また本例では、毎回の使用水量を計測して記憶する書換可能な水量記憶手段20を備えているので、学習した使用水量を基準にしてタンク2内に事前給水する水量を決定できる。これにより、毎回の洗浄完了ごとに、より最適な必要水量を正確に把握でき、洗浄完了後における事前給水を正確に実施できる利点もある。なお、タンク2内に事前給水する水量は、毎回の使用水量を計測して記憶することに限定するものではなく、所定の回数(例えば20回)の使用水量を計測して適性値を決定し、それ以降はこの適正値を用いるようにしてもよい。
【0037】
なお、使用者の入室検知から洗浄開始までの時間が比較的短い場合や、冬場のように水温が上昇しにくい環境下にあっては、タンク2内の水の昇温が不十分になる事態が予想される。このような場合を考慮して、昇温中〜完了の報知手段(図示略)を設けることで、冷水による不快使用を回避するようにしてもよい。報知手段は、例えば音、ランプ表示等が挙げられる。更に他の方策として、水温に応じて電気ヒータ8の加熱能力を高める制御を行うようにしてもよい。
【0038】
一方、使用者の入室検知から洗浄開始までの時間が比較的長い場合や、夏場のように水温が上昇しやすい環境下にあっては、タンク2内の水温が必要以上に高温になる事態が予想される。このような場合を考慮して、タンク2内の貯水量を計測して、一定量給水までは電気ヒータ8による加温を行わないように制御する方法が考えられる。これにより、空焚き防止や高温水による不快使用防止にそれぞれ有効となる。
【符号の説明】
【0039】
1 洗浄ノズル
2 タンク
3 定流量弁
4 ポンプ
5 給水電磁弁
6 人感センサ
7 給水源
8 ヒータ
9 給水路
10 給湯路
11 局部洗浄スイッチ
12 制御回路
13 温水洗浄装置
14 ヒータ制御部
15 給水制御部
16 ポンプ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源から供給される水を貯蔵するタンクと、このタンク内の水を加熱するヒータと、このヒータで加熱された温水を局部洗浄水として人体局部に噴射させる洗浄ノズルとを備えた温水洗浄装置であって、トイレ室への使用者の入退室を検知する人感センサと、この人感センサで使用者の入室を検知したときから前記タンク内に貯蔵されている水の加熱を開始するように前記ヒータを通電制御するヒータ制御部と、毎回の使用水量に対応する量の水を前記タンク内に事前給水する給水制御部とを備えることを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項2】
毎回の使用水量を計測して記憶する水量記憶手段を備え、この水量記憶手段で記憶した水量を基準にして前記タンク内に事前給水される必要水量を決定することを特徴とする請求項1記載の温水洗浄装置。
【請求項3】
前記人感センサで使用者の退室を検知したときから所定の時間内に、前記タンク内への事前給水を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の温水洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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