説明

温泉原水中の可燃性天然ガス分離装置

【課題】設置容積が少なく、汲み上げられた温泉原水から連続的に可燃性天然ガスを分離することができる温泉原水中の可燃性天然ガス分離装置を提供する。
【解決手段】地中から汲み上げられた温泉原水を分離塔体1の温泉原水導入口5に導入し、散布ノズル6から温泉原水散布室2内に散布する。散布された温泉原水は下部の充填室3内に流下し、充填材15の表面に沿って、または充填材15の表面に開口した孔17から中空部内を経て複雑な流れとなって流下する。そのため、送風機14からの送風により充填室3に吹き上がる空気流との接触面が多くなり、可燃性天然ガスは気相中に移行され、空気とともに排気口7から排気管8を経て排出される。また、可燃性天然ガスが分離されて流下した温泉原水は流出口10から分離塔体1の外方に流出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中より汲み上げられた温泉原水中に含まれているメタンなどの可燃性天然ガスを温泉原水から分離する温泉原水中の可燃性天然ガス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の温泉原水中の可燃性天然ガスを分離する装置は、例えば、温泉原水と可燃性天然ガスとの比重差を利用して温泉原水中から天然ガスを分離するガスセパレータが用いられていた。この装置はガスセパレーターに汲み上げられた温泉原水をガスセパレータ内に供給されると、ガスセパレーター内にて温泉原水に含まれている可燃性天然ガスが、温泉原水との比重差により分離し、可燃性天然ガスが分離された温泉原水はガスセパレーターから温泉原水貯留槽に供給され、可燃性天然ガスはガスセパレータから排出されるようになっている(特許文献1)。
【0003】
このように温泉原水に含まれている可燃性天然ガスを温泉原水との比重差により分離するガスセパレーターでは、汲み上げられた温泉原水を滞留させ、この滞留している温泉原水から可燃性天然ガスが分離されるようにするため、可燃性天然ガスが温泉原水から分離するまでに時間が掛かり、ガスセパレーター内に温泉原水を滞留させるための容積が必要となり、ガスセパレーターが大きくなり、ガスセパレーターを設置するための広い設置容積を必要とし、汲み上げた温泉原水を直ちに浴槽に供給できない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−285583号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、前記温泉原水と可燃性天然ガスとの比重差を利用して、温泉原水中から天然ガスを分離するガスセパレータを用いた温泉原水中の可燃性天然ガス分離装置では、ガスセパレーターは温泉原水から可燃性天然ガスが比重差で分離するまで、温泉原水を滞留させるための大きい容積を必要とし、ガスセパレーターの設置容積を必要とし、また、汲み上げられた温泉原水を直ちに浴槽に供給できない問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、設置容積が少なく、汲み上げられた温泉原水から連続的に可燃性天然ガスを分離することができる温泉原水中の可燃性天然ガス分離装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の温泉原水中の可燃性天然ガス分離装置は、温泉原水導入口に接続した散布ノズルを配設するとともに排気口を開口した温泉原水散布室と、この温泉原水散布室の下部にこの温泉原水散布室に散布された温泉原水が流下する充填室と、この充填室の下部に形成しこの充填室から流下した温泉原水を流出する流出口を有する温泉原水流出室と、この温泉原水流出室に形成した送風口に接続する送風機とを有する可燃性天然ガス分離塔体を備えている。また、前記充填室には内部の中空部に連通する孔を表面に複数開口した球状の充填材を多数充填したものである。
【0008】
そして、汲み上げられた温泉原水を分離塔体の温泉原水導入口に導入し、この温泉原水を散布ノズルから温泉原水散布室に散布する。この温泉原水散布室に散布された温泉原水は充填室に流下し、充填材の表面に沿って、または充填材の表面に開口した孔から中空部内を経て流下し、この充填室を流下する温泉原水は、温泉原水流出室には送風機から送風されているため、充填室に吹き上がる空気流が生じ、この充填室を流下する温泉原水は、充填材の表面に沿って、または充填材の表面に開口した孔から中空部内を経て流下しするため、充填室に吹き上がる空気流との接触面が多く、温泉原水は分子が細かくなって気液接触され、可燃性天然ガスは気相中に移行され、空気とともに温泉原水散布室に開口した排気口から可燃性天然ガス分離塔体の外部に排出される。また、可燃性天然ガスが分離された温泉原水は温泉原水流出室の流出口から可燃性天然ガス分離塔体の外方に流出される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の温泉原水中の可燃性天然ガス分離装置は、地中から汲み上げられた温泉原水は、分離塔体を流下しながら可燃性天然ガスが連続的に分離されて分離塔体から流出されるので、温泉原水を滞留させる必要がなく、設置容積が少なく、汲み上げられた温泉原水から連続的に可燃性天然ガスを分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】温泉原水中の可燃性天然ガス分離装置の一部を切り欠いた正面図である。
【図2】同上温泉原水中の可燃性天然ガス分離装置の側面図である。
【図3】同上温泉原水中の可燃性天然ガス分離装置の充填室に充填される充填材の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の温泉原水中の可燃性天然ガス分離装置の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
分離塔体1内には、上部から下方に向かって温泉原水散布室2、充填室3及び温泉原水流出室4が順次形成されている。
【0013】
前記温泉原水散布室2に形成した温泉原水導入口5に接続した散布ノズル6が温泉原水散布室2内の上部に配設されている。また、この温泉原水散布室2には上面に排気口7が開口され、この排気口7に連通する排気管8が前記分離塔体1の上方に向かって延設されている。
【0014】
次に、この分離塔体1内には、前記温泉原水散布室2の下部に、上下部をそれぞれ網状体または多数の孔を開口した多孔板などの通気、通液性を有する仕切り体9にて前記温泉原水散布室2と温泉原水流出室4とに仕切られた前記充填室3が形成されている。
【0015】
また、前記分離塔体1内の温泉原水流出室4の下部には、前記充填室3から流下した温泉原水を流出する流出口10がホッパー状に形成され、この流出口10に温泉原水の流出管11が接続されている。
【0016】
さらに、この温泉原水流出室4には、側方に送風口12が開口され、この送風口12に電動機13にて駆動される送風機14の吐出側か接続されている。
【0017】
また、前記充填室3には多数の球状の充填材15が多数充填されている。この各充填材15は内部は中空部16に形成され、この中空部16に連通する孔17が充填材15の表面に複数開口されている。
【0018】
次に、この実施の形態の作用を説明する。
【0019】
地中から汲み上げられた温泉原水を分離塔体1の温泉原水導入口5に導入管から導入すると、温泉原水は温泉原水散布室2の散布ノズル6から温泉原水散布室2内に散布される。この温泉原水散布室2に散布された温泉原水は下部の充填室3内に流下し、充填材15の表面に沿って、または充填材15の表面に開口した孔17から中空部16内を経て流下する。
【0020】
この充填室3を流下する温泉原水は、この温泉原水流出室4に送風機14からの送風により、充填室3に吹き上がる空気流が生じ、この充填室3を流下する温泉原水は、充填材15の表面に沿って、または充填材15の表面に開口した孔17から中空部16内を経て複雑な流れとなって流下するため、充填室3に吹き上がる空気流との接触面が多く、温泉原水は分子が細かくなって気液接触され、可燃性天然ガスは気相中に移行され、空気とともに温泉原水散布室2に開口した排気口7から排気管8を経て分離塔体1の外部に排出される。
【0021】
また、温泉原水流出室4に可燃性天然ガスが分離されて流下した温泉原水は温泉原水流出室4の流出口10から分離塔体1の外方に流出され、図示しない浴槽または温泉原水貯留槽に流入される。
【0022】
地中から汲み上げられた温泉原水は、分離塔体1を流下しながら可燃性天然ガスが連続的に分離されて分離塔体1から流出されるので、温泉原水を滞留させる必要がなく、汲み上げられた温泉原水から連続的に可燃性天然ガスを分離することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は地中より汲み上げられた温泉原水中に含まれているメタンなどの可燃性天然ガスを温泉原水から分離することにより天然温泉浴場などに利用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 分離塔体
2 温泉原水散布室
3 充填室
4 温泉原水流出室
5 温泉原水導入口
6 散布ノズル
7 排気口
10 流出口
12 送風口
14 送風機
15 充填材
16 中空部
17 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温泉原水導入口に接続した散布ノズルを配設するとともに排気口を開口した温泉原水散布室と、この温泉原水散布室の下部にこの温泉原水散布室に散布された温泉原水が流下する充填室と、この充填室の下部に形成しこの充填室から流下した温泉原水を流出する流出口を有する温泉原水流出室と、この温泉原水流出室に形成した送風口に接続する送風機とを有する可燃性天然ガス分離塔体を備え、
前記充填室には内部の中空部に連通する孔を表面に複数開口した球状の充填材を多数充填した
ことを特徴とする温泉原水中の可燃性天然ガス分離装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−254843(P2010−254843A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107851(P2009−107851)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(509120207)パール工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】