説明

温湯消毒装置

【課題】 温湯タンク全体に速やかに温水を攪拌し、消毒しようとする種籾に強力な温水の噴射を行い少ない温水量であっても多くの種籾に均一に温水を浴びせることを可能とすると共に、それぞれの装置に泥、埃等が付着しても容易に掃除を行えるようにそれぞれを個別に構成し、容易に着脱可能として掃除性と取扱性に優れる温湯消毒装置を提供する。
【解決手段】 温湯タンク内に加熱装置と攪拌装置と温度検知部を個別に備えて、それぞれの装置はタンクの上方からの差込式または吊り下げ式として容易に着脱できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種籾の表面に付着しまた籾殻と果皮との間に潜む病原菌に温水を浴びせて殺菌、減菌または除菌する種籾の温湯消毒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種子を所定温度の温水に所定時間浸すことによって、種子に付着している病原菌を殺菌する方法及びその装置は特許第287001号公報(特許文献1)に記載され、さらに種籾の堆積層にその下方から上方に向けて温水を噴射し、堆積する種籾に噴射温水圧による浮上作用を伴わせて攪拌しながら種籾に温水を浴びせて、種籾全表面や層全体にわたって均等温度の温水を浴びせて種籾を均一に消毒する温湯消毒装置も特開2000−316321号公報(特許文献2)に、そして特許文献2の構成に温水を循環させながらその過程で設定温度に加熱する方法の特開2000−342018号公報(特許文献3)も公知となっている。
【0003】
種籾を浸した際に低下した温水の温度を急速に温水消毒温度まで回復させるために温度調節温水を種籾を浸すタンクに注入する文献は、特開2002−330605号公報(特許文献4)に、さらにタンク内の種籾収納部とその下方に位置して温水を噴き上げる温水噴射部を配置し、加圧温水を供給する温水機とタンク底部の排温水の回収経路からなる温水循環経路を構成した温湯消毒装置は特開2004−000261号公報(特許文献5)に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特許第287001号公報
【特許文献2】特開2000−316321号公報
【特許文献3】特開2000−342018号公報
【特許文献4】特開2002−330605号公報
【特許文献5】特開2004−000261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の特許文献1では、温水を貯留する消毒槽の温水を汲み上げて、種子保持容器内の種子に対して所定の水圧を加えて散布しているので、温水の温度低下が激しいばかりか、消毒槽の設定温度の管理が要求されるものである。そこで特許文献2または特許文献3のように、種籾の堆積層の下方から上方に向けて温水を噴射し、堆積する種籾を浮上作用を伴わせて攪拌しながら種籾に循環しながら設定温度に加熱した温水を浴びせる構成としているが、多くの定量に袋詰された種籾を温水に浸した場合には急激な温度低下をまねき、加熱装置が循環経路に介在されていても急激な温度低下を回復させるまでの水温の循環を行うことは困難である。
【0006】
特許文献4においては、種籾を温水に浸した時の急激な温度低下を防止するために、温度調節温水、即ち給湯器から温水消毒温度またはそれよりやや高い温度の温水を温湯タンク内に注入することによって、速やかに温湯タンク内の温水を設定値になるような構成となっているが、温湯タンク内の温水が設定範囲となるまで、給湯器から供給される温水によって温湯タンクから溢れる温水を排出する必要があるばかりか、温水を温湯タンク内に供給してもその温水の攪拌は、種籾に浴びせる循環する温水だけであるので、温湯タンク内に供給された給湯器からの温水を速やかに温湯タンク内に均一に攪拌させることは困難である。
【0007】
また特許文献5においては、タンク内の温水噴射部と、温水噴射部に設定温度の加圧温水を供給する温水機を送水経路と、タンク内の底部から排温水を温水機に回収する回収経路で温水を循環させる、温水循環経路を構成している。ところで、種籾を約60℃の温水で消毒を行う場合に、前もって水(塩水等)を使用した比重選別を行っていない場合や、最近種子の選別で行われている、粒径の比較的大きい種子選別する方法においては、種籾の表面を水に浸していないため、泥や埃が付着しており、温水消毒のときに温水に浸した場合に種子の表面に付着した泥、埃が噴射される温水によって温湯タンク内に溶け出し、温水を濁らせることが多々発生している。
【0008】
上記のような泥、埃等が混ざって濁った温水を送水経路と回収経路の温水循環経路で循環した場合には、それぞれの経路と温水機に泥、埃等が付着し、掃除を行う必要が発生するが、それぞれの経路と温水機の内部の掃除を行うことは極めて困難であるため、それぞれの経路での付着物による破損や、温水機内の泥等の付着による温水機の故障が発生しやすい不具合がある。また本装置を使用しない期間にそれぞれの経路から水を完璧に排除することは困難で、病原菌の発生場所になりうるものである。
【0009】
さらに、温水機はタンクの外部に備えているので、使用しない時などでも取り外すことが困難で、収納性でも問題があるものである。
【0010】
そこで、本発明では、温湯タンク内に加熱装置と攪拌装置と温度検知部を備えて温湯タンク内で水を加熱し、さらには温湯タンク全体に速やかに温水を攪拌して温湯タンク内の温度を均一化すると共に、消毒しようとする種籾に強力な温水の噴射を攪拌装置によって行い、少ない温水量であっても多くの種籾に均一に温水を浴びせることを可能とすると共に、それぞれの装置に泥、埃等が付着しても容易に掃除を行えるようにそれぞれを個別に構成し、さらには加熱装置、攪拌装置および温度検知部を温湯タンクの上方からの差込式または、吊り下げ式として容易に着脱可能として掃除性と取扱性に優れる温湯消毒装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の請求項1ないし請求項9に係わる温湯消毒装置を提供する。
【0012】
即ち、請求項1に係わる温湯消毒装置は、種籾を温水に浸して消毒する種籾の温湯消毒装置であって、種籾を温水に浸す温湯タンク内には加熱装置と攪拌装置と温度検知部が備えられたことを、特徴とするものである。
【0013】
請求項2に係わる温湯消毒装置は、請求項1の温湯消毒装置において、温湯タンク内には加熱装置と攪拌装置と温度検知部が、若しくは温度検知部を備えた加熱装置と攪拌装置がそれぞれ個別に配置されたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に係わる温湯消毒装置は、請求項1または請求項2記載の温湯消毒装置において、温湯タンク内の備えられた加熱装置と攪拌装置と温度検知部は、温湯タンク内の壁面に隣接して設けられたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に記載の温湯消毒装置は、請求項1、2または請求項3記載の温湯消毒装置において、温湯タンクはその平面形状を四角とし、タンク内に備えられた加熱装置と攪拌装置と温度検知部はその四隅に設けることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5に係わる温湯消毒装置は、請求項1、2、3または請求項4記載の温湯消毒装置において、温湯タンク内の加熱装置によって温めた温水を、攪拌装置によって早急に温湯タンク内に攪拌するように、加熱装置と攪拌装置を配置したことを特徴とするものである。
【0017】
請求項6記載の温湯消毒装置は、請求項1、2、3、4または請求項5記載の温湯消毒装置において、攪拌装置は吸引した温水を圧力を加えて噴出す噴出口を有するものであって、加熱装置に向かって、攪拌装置の噴出口からの温水を噴きつけるように加熱装置と攪拌装置を配置したことを特徴とするものである。
【0018】
請求項7記載の温湯消毒装置は、請求項項1、2、3、4、5または請求項6記載の温湯消毒装置において、温湯タンク内に備えられる加熱装置と攪拌装置と温度検知部は、温湯タンク上方からの差込式または吊り下げ式として、容易に着脱可能であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項8に係わる温湯消毒装置は、請求項項1、2、3、4、5、6または請求項7記載の温湯消毒装置において、温湯タンク内に備えられた攪拌装置は、温湯タンク内の温水が平面状の一方向に回転するようにその噴出口の向きを配置されたことを特徴とするものである。
【0020】
請求項9に係わる温湯消毒装置は、請求項1、2、3、4、5、6、7または請求項8記載の温湯消毒装置において、攪拌装置はその温水の噴出口を前後左右の何れかにその向きを変更できるように構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、温湯タンク内に加熱装置と攪拌装置と温度検知部を備えているので、温湯タンク内で加熱した温水を速やかに温湯タンク内に攪拌装置によって均一に攪拌することが出来ると共に、消毒しようとする種籾に強力に温水を噴射することが出来るので、種籾に対してもその攪拌を強力に行い、しかも少ない温水量であっても多くの種籾に均一に温水を浴びせることが可能となる。
【0022】
さらには、温湯タンク内に加熱装置と攪拌装置と温水検知部、または温水検知部を備えた加熱装置と攪拌装置を別々に配置して、しかもそれぞれの装置は温湯タンクの上方からの差込式または、吊り下げ式として容易に着脱可能としているので取扱性に優れると共に、それらの装置に泥、埃等が付着しても容易に掃除が行え、温湯消毒装置を使用しない期間であってもその装置を清潔に保ち温湯消毒装置内での雑菌の発生を防止すると共に、それらの装置が故障しても、容易にしかも低価格で交換または修理を可能とする効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は本発明に係わる温湯消毒装置を示す第一の実施の形態を示した側面断面略図である。図2は図1の実施の形態の平面図、図3には本発明に係わる温湯消毒装置を示す第一の実施の形態の他例を示す側面断面略図、図4は図3の実施の形態の平面図、図5は本発明に係わる温湯消毒装置の第二の実施の形態を示す平面図、図6は温湯タンク内にそれぞれの装置の着脱方法を示す側面略図である。
【0024】
図1及び図2に示す温湯消毒装置1は本発明の第一の実施の形態を示したものであって、温湯タンク2内に加熱装置3と攪拌装置4と温度検知部5が配置され、温湯タンク2の上端の縁面19より突出しない範囲でその内部に収納されている。15は制御盤であって温湯タンク2の外部に隣接して、その上面は縁面19と同等の高さか、それより低く備えられている。温湯タンク2は平面形状を四角として、その底面に作業終了後に排水を行うための排水口8を備え、縁面より若干下方の側面には作業時に温湯タンク2内の温湯βがその縁面19からあふれ出ないようにオーバーフロー7を備えている。また移動を容易に行うためにタンク裏面にはキャスター9が備えられている。
【0025】
加熱装置3は電気によって水を加熱する方式のものであって、加熱装置3のヒータ17を水中に投入し、ヒータ付近の水を加熱することによって水温を上昇させるようになっている。攪拌装置4は温湯βを吸水口12から吸引して、噴出口11から高圧をかけて噴出す水中ポンプ10であって、その吸水口12は水中ポンプ10の脚によって生じる空間から温湯βを吸引して強力な圧力を加えて噴出口11から温湯タンク2内に噴射させている。なお、噴出口11は水平方向に温水を噴射する噴射口20が縦方向に複数設けられており、その噴射口20はそれぞれ個別に左右方向、上下方向及びその両方向にその向きを変更できるようになっていると良い。
【0026】
温度検知部5は電気的な信号を出力できるデジタル式若しくはアナログ式の温度計であり、18は保温蓋であって、加熱装置3で温湯βを温湯消毒の温度(60℃)まで加温を行う時や、種籾消毒中に縁面19を全て覆うように掛けられるようになっている。
【0027】
13は種籾容器であって、温湯タンク2の略中央に位置してその高さは縁面19より突出しない高さで、そして図2ではその平面断面形状を円としているが、四角の形状であってもよく、その内部には種籾αを十分余裕を持たせて収納した種籾袋6が複数収納できるようになった多孔箱状で、その全面が多孔面若しくは格子状にして各孔を大きく形成しており、温湯βの流通を極力妨げない形状である。なお種籾袋6には種籾αを3分の1を目安にして収納する。
【0028】
図示はしていないが、種籾容器13の上面には作業者が握って種籾容器13を引き上げられる取っ手と、底面には複数の脚を備えていると良く、その脚によって温湯タンク2の底面と種籾容器13の底面までの間に、温湯βを流通させる空間を形成させている。
【0029】
図2では、加熱装置3と攪拌装置4を二個、温度検知部5を一個配置しているが、それぞれは一個や二個または4個配置されていてもよく、それぞれの配置場所は温湯タンク2の壁面に配置され、温湯タンク2の平面形状が四角である時は、その四隅に加熱装置3と攪拌装置4を一対として配置されている。なお、温度検知部は複数配置されていても良いが、温湯タンク2内の温湯βが常に流通して、温湯βの温度を的確に検知できる場所の一箇所であっても差し支えない。
【0030】
攪拌装置4の噴射口20は、温湯タンク2の壁面方向から内側に向けて配置されており、加熱装置3は噴射口20からの温水噴射線上付近にヒータ17が配置されるように固定されている。噴射口20がその位置を左右に振ることによって、加熱装置3も左右にその位置を変更すようになっている。
【0031】
加熱装置3や攪拌装置4や温度検知部5は配線16によって制御盤15と繋がれ、それぞれが制御されている。
【0032】
温湯タンク2内にオーバーフロー7付近まで給水を行い、加熱装置3によって水が温水になるように加熱を開始する。その直後から若しくはある程度時間が経過してタンク内に吸水した水の温度が上昇してから攪拌装置4を稼動させて加熱装置3付近に加熱された温湯βを温湯タンク2内に略均一に行きわたるようそして、水温が均一になるように、温湯タンク2の底面付近の水を水中ポンプ10の吸水口12から吸引し、噴出口11からそれぞれの噴射口20によって温湯タンク2の内部方向に向かって噴射される。噴射口20は攪拌装置4の上下方向に対して複数設けられているので、温湯タンク内の貯水の層の略全域に対してその噴射流が流通するようになっている。そして、噴射口20から噴射される噴流線上に加熱装置3のヒータ17がその付近に配置されているので、加熱装置3付近で加熱された温湯βをいち早く温湯タンク2内の全域に均等に攪拌することが出来る。
【0033】
温湯タンク2内の温湯βはその温度が60℃(低くても57℃)になるように加熱装置3を温度検知部5で検出したデータを元に、制御部で制御して加熱装置3を作動させるようになっている。噴射口20の向きは、それぞれが左右方向に調節できるものであるが、温湯βが温湯タンク2内で一定方向に回転するように噴射されるようにすると、種籾袋6が種籾容器13内を攪拌しながら回転するので、より均一に種籾に温湯消毒温度の温水をあてることが可能となる。図2では温湯タンク2の平面の中央点を中心として攪拌装置4を180°の対称位置に二台配置して、温水を左方向に回転するように噴射しているので、種籾袋6に噴射される温水の位置を変化させ、そしてタンク内の温水を効率よく攪拌しながら旋回させることが可能である。
【0034】
図1及び図2では、種籾容器13はタンク内に吸水する段階から温湯タンク内に備えておいて、温湯βが60℃に達してから、種籾袋6を個々に温湯βに投入するか、種籾容器13をタンク外部に置いた状態でその内部に種籾袋6を積載してから、温湯βが60℃に達したタンク内に投入してもよい。
【0035】
温湯β内に投入された種籾袋6は、種籾αを余裕を持って収納しているので、噴射口20から圧力を持って噴射される温水によってその形状を変形させて種籾αの収納位置が常に移動し、さらに種籾袋6がタンク内を旋回することによって均一に温水をそれぞれの種籾αにあてることが可能となる。なお、60℃までの温水に加熱中や温湯消毒中の10分間には、保温蓋18を縁面19を覆うように掛け、温湯タンク2内の上方の空気と温湯タンク2の外部の空気を遮断すると、放熱を防止できるので種籾を浸した時の温度低下の防止と、より早く加温してその回復を促す効果がる。
【0036】
60℃の温湯βを10分間浸した種籾αは、早急に機外に取り出して冷却水内に投入してその温度を冷やす必要があるので、種籾容器13ごと早急に引き上げてそのまま冷却水に投入するか、種籾容器13を温湯タンク2上方に引き上げた状態で保持し、種籾袋6だけを個々に取り出して、冷却水に投入しても良い。
【0037】
図3又は図4に示す温湯消毒装置1は、本発明の第一の実施の他例を示したものであって、図1及び図2で示した構成に、種籾容器13をスノコ14と仕切板21に変更したものである。
【0038】
スノコ14は温湯タンク2の底面から若干の空間をもって温湯タンク2底面の全体を覆うように設けられている。このスノコ14は、その全面を多孔板か、格子状にしたものであって、その一部には水中ポンプ10の吸水口12と同径かそれ以上の径の開口部を有していて、水中ポンプ10の吸水口12と合致するようになっている。
【0039】
スノコ14の上面には垂直方向で縁面19と同等かそれ以下の高さを持つ仕切板21が備えられている。この仕切板21もその全面が液体の流通性の高い多孔状をなしているか、格子状のものであってその位置を温湯タンク2の四隅にそなえられた加熱装置3、攪拌装置4、温度検知部5とタンクの内部中央付近とを仕切るように備えられている。
【0040】
温湯タンク2内にスノコ14を配置してから仕切板21を設置し、加熱装置3、攪拌装置4、温度検知部5を仕切板21で仕切られた温湯タンク2の隅の空間に設置する。タンク内に吸水して加熱装置3を稼動させタンク内の水に加熱を開始するか、ある程度タンク内に吸水された水の温度が上昇してから攪拌装置4の水中ポンプ10の稼動を行う。水中ポンプ10の吸水口12ではスノコ14とタンク底面の空間を流通する温湯βを吸引し、噴出口11に備えられた複数の噴射口20から圧力を加えた温水の噴射を行う。噴射口20の略前方には加熱装置3のヒータ17が備えられているので、ヒータ17で加熱されたその付近の温湯βをタンク内に拡散できるようになっている。噴射口20からの温水は、仕切板21の多孔か格子状の開口面を通過してタンクの中央付近に噴射される。噴射口20の向きは、図1及び図2に示す温湯消毒装置1と同様に温湯βが一定回転方向になるようにその向きを定めている。
【0041】
温湯タンク2内に投入した水は、加熱装置3で加熱を続け攪拌装置4を作動させながら温度検知部5で水温60℃を検知するまで加熱を行う。この場合、保温蓋18で縁面19を全て覆うようにして、温湯タンク2内部と外部を遮断するようにすると、放熱を防いで設定温度まで速やかに達することが出来る。温湯βが60℃に達したならば制御盤15の指令によって加熱装置3による加温を停止する。その後温湯タンク2の中央部へ種籾袋6の投入を行い、温湯β内に浸された種籾袋6は噴射口20から噴射された強力な温水によって種籾袋6内での種籾αの攪拌を行うと共に、タンク内を種籾袋6が旋回を行って、常に噴射口20から噴射される温水のあたる面が変化するので、全ての種籾αに均一に設定温の温水をあてることが可能となる。なお、温湯消毒中においても保温蓋18でタンク上面と縁面19を覆うことによって、種籾を浸す温湯の温度低下が発生しても、加熱装置3の加熱効果をより効率的に行うことが出来るので、速やかに設定温度までに温湯を回復することを可能とする。
【0042】
10分間、種籾袋6を60℃の温湯βに浸した後、直ちに種籾袋6を個別に引き上げ、冷水に浸し、その温度を低下させることで温湯消毒を終了するものである。
【0043】
図5に示す温湯消毒装置は、本発明の第二の実施の形態を示したものであって、第一の実施の形態の加熱装置3に温度検知部5を備え、加熱装置独自で温度設定を可能として、水温が設定温度に達した場合にヒータ17に通電を停止し、設定温度以下となると再度ヒータ17に通電を行って、設定温度を保つように働くものである。また加熱装置3と攪拌装置4にはそれぞれがスイッチを備えて単独に稼動できる構成であり、配線16も個々にコンセント22と接続されるようになっている。
【0044】
図5の第二の実施の形態においても、第一の実施の形態と同様に、攪拌装置4の水中ポンプ10の噴射口20の前方方向に加熱装置3のヒータ17を備えて成り、この加熱装置3にはこの付近の水温を検出する温度検知部5を備えている。噴射口20から噴射して温度検知部5付近を流通する温湯βの温度を検知し、その温度が設定温度(60℃)に達したならば、ヒータ17の通電を停止し、設定温度以下となったらヒータ17に通電を開始して温湯を設定温度まで加熱しようとするものである。
【0045】
加熱装置3と攪拌装置4はそれぞれスイッチを備えているので、温湯消毒作業者は必要に応じてそれぞれの装置の稼動の可否を選択することが出来る。
【0046】
第一及び第二の実施の形態であっては、噴射口20はその水平方向に回転できるようになっているので、時間の経過と共に噴射口20の向きを定期的に変更して、一定方向に回転する水流から、逆方向に回転する方向に向けてその水流を変更できるようにするとさらに種籾αに均一に温湯βを浴びせることが可能となり、より温湯βの消毒効果の均一性を計ることができる。
【0047】
さらに図6に示すように、スノコ14と種籾容器13若しくは仕切板21は、温湯タンク2の上方からタンク内に投入し、その高さはタンクの縁面19より高くなることがない。また加熱装置3と温度検知部5と制御部15は引っ掛け材23を有していて、加熱装置3と温度検知部5はタンク内にその装置を収めるように、そして制御部15はタンクの外部に配置できるように、引っ掛け材23を縁面19に引っかけ固定されている。
【0048】
以上のように温湯消毒装置1のそれぞれの装置又は部品は、タンクの上方から個別に抜き差しが出来るようになっているのでそれぞれの部品を容易に掃除を可能として、装置内での雑菌の繁殖を防止することを可能とするほか、装置の故障をきたしても容易にしかも簡単、低価格で修理を行うことを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係わる温湯消毒装置を示す第一の実施の形態を示した側面断面略図である。
【図2】図1の実施の形態の平面図である。
【図3】本発明に係わる温湯消毒装置を示す第一の実施の形態の他例を示す側面断面略図である。
【図4】図3の実施の形態の平面図である。
【図5】本発明に係わる温湯消毒装置の第二の実施の形態を示す平面図である。
【図6】温湯タンク内 にそれぞれの装置の着脱方法を示す側面略図である。
【符号の説明】
【0050】
1 温湯消毒装置
2 温湯タンク
3 加熱装置
4 攪拌装置
5 温度検知部
6 種籾袋
7 オーバーフロー
8 排水口
9 キャスター
10 水中ポンプ
11 噴出口
12 吸水口
13 種籾容器
14 スノコ
15 制御盤
16 配線
17 ヒータ
18 保温蓋
19 縁面
20 噴射口
21 仕切板
22 コンセント
23 引っ掛け材
α 種籾
β 温湯



【特許請求の範囲】
【請求項1】
種籾を温水に浸して消毒する種籾の温湯消毒装置であって、種籾を温水に浸す温湯タンク内には加熱装置と攪拌装置と温度検知部が備えられたことを特徴とする、温湯消毒装置。
【請求項2】
温湯タンク内には加熱装置と攪拌装置と温度検知部が、若しくは温度検知部を備えた加熱装置と攪拌装置がそれぞれ個別に配置されたことを特徴とする、請求項1記載の温湯消毒装置。
【請求項3】
温湯タンク内の備えられた加熱装置と攪拌装置と温度検知部は、温湯タンク内の壁面に隣接して設けられたことを特徴とする、請求項1または請求項2記載の温湯消毒装置。
【請求項4】
温湯タンクはその平面形状を四角とし、タンク内に備えられた加熱装置と攪拌装置と温度検知部はその四隅に設けられたことを特徴とする、請求項1、2または請求項3記載の温湯消毒装置。
【請求項5】
温湯タンク内の加熱装置によって温めた温水を、攪拌装置によって早急に温湯タンク内に攪拌するように、加熱装置と攪拌装置を配置したことを特徴とする、請求項1、2、3または請求項4記載の温湯消毒装置。
【請求項6】
攪拌装置は吸引した温水を圧力を加えて噴出す噴出口を有するものであって、加熱装置に向かって、攪拌装置の噴出口からの温水を噴きつけるように加熱装置と攪拌装置を配置したことを特徴とする請求項1、2、3、4または請求項5記載の温湯消毒装置。
【請求項7】
温湯タンク内に備えられる加熱装置と攪拌装置と温度検知部は、温湯タンク上方からの差込式または吊り下げ式として、容易に着脱可能であることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5または請求項6記載の温湯消毒装置。
【請求項8】
温湯タンク内に備えられた攪拌装置は、温湯タンク内の温水が平面状の一方向に回転するようにその噴出口の向きを配置されたことを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6または請求項7記載の温湯消毒装置。
【請求項9】
攪拌装置はその温水の噴出口を前後左右の何れかにその向きを変更できるように構成されたことを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7または請求項8記載の温湯消毒装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−289109(P2007−289109A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122474(P2006−122474)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000001465)金子農機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】