説明

温湿度処理装置

【課題】長期間の継続運転が可能であるとともに、省エネルギー化を図ることが可能な温湿度処理装置を提供する。
【解決手段】この温湿度処理装置2は、処理空間S1の温度を検出する空間温度センサ12aと、処理空間S1が外部空間よりも高温の場合に、ヒートパイプ現象を生じる湿度検出本体部12bと、その湿度検出本体部12bのうち作動流体が蒸発する部分の外面温度を検出する外面温度センサ12cと、空間温度センサ12aの検出温度と外面温度センサ12cの検出温度とに基づいて、処理空間S1の相対湿度を算出する演算部12dと、空間温度センサ12aによって検出される処理空間S1の温度に基づいて処理槽4内の空気を加熱可能な加熱部8と、演算部12dによって算出される処理空間S1の湿度に基づいて処理槽4内の空気を加湿可能な加湿部6とを備え、処理槽4には、その内外で換気を行うための換気口4wが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温湿度処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、処理空間が内部に設けられた処理槽を有するとともに、この処理槽内の処理空間を所定の温湿度条件に調節する調温調湿装置が知られており、このような調温調湿装置の一例が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された調温調湿装置では、試験槽内に処理対象物を収容する試験空間と、空気の温湿度を目標の温湿度に調整するための空調空間とが設けられており、その空調空間に加熱器と冷却器と加湿器とが設けられている。冷却器は、冷凍機の蒸発器からなり、除湿機を兼ねている。また、この調温調湿装置には、試験空間の乾球温度を検出する乾球温度センサと、試験空間の湿球温度を検出する湿球温度センサとが設けられており、これら両センサによって検出された試験空間の乾球温度と湿球温度とから試験空間の湿度が導出される。前記湿球温度センサの感部は、ウィックに包まれており、このウィックの下部が湿球温度センサの下方に配置された容器内の水に浸されている。これにより、容器内の水がウィックによって湿球温度センサの感部の周りまで吸い上げられて湿球温度センサが湿球温度を検出できるようになっている。そして、前記検出された試験空間の乾球温度に基づいて加熱器の加熱能力及び冷却器の冷却能力が制御されることにより空調空間の空気の温度が調整されるとともに、前記導出された試験空間の湿度に基づいて加湿器の加湿能力及び冷却器の除湿能力が制御されることにより空調空間の空気の湿度が調整される。そして、この温湿度が調整された空調空間の空気が送風機により試験空間へ送られることによって試験空間の温湿度が調整されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−106986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、製品の生産ラインに付設して、製造工程の一環として製品の耐湿性評価やエージングなどのために製品をある一定の温湿度条件の雰囲気に曝す処理を行うことが可能な処理装置が求められている。このような処理装置では、処理装置が停止すると製品の生産効率が低下するため、長期間の運転を継続可能であることが必要となる。そして、このような処理装置として、上記特許文献1の調温調湿装置と同様の構成の処理装置を用いることも考えられる。しかしながら、上記特許文献1の調温調湿装置では、ウィックが古くなって汚れてくると水を吸い上げる力が弱まるため、その度に装置の運転を停止してウィックの交換を行う必要がある。また、この調温調湿装置では、除湿及び冷却を行うための冷凍機が故障したり動作不良を生じた場合にも、装置の運転を停止せざるを得ない。また、上記調温調湿装置では、冷凍機を稼働させて除湿及び冷却を行うため、その冷凍機の稼働にエネルギーを要し、その結果、装置が使用するエネルギーが増大する。従って、上記特許文献1の調温調湿装置と同様の構成の処理装置を生産ラインに付設した温湿度処理用の処理装置として用いた場合には、長期間の継続運転ができないことに起因して製品の生産効率が低下するとともに、使用エネルギーが増大するという問題点が生じる。
【0006】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、長期間の継続運転が可能であるとともに、省エネルギー化を図ることが可能な温湿度処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の温湿度処理装置は、処理対象物を一定の温湿度条件の雰囲気に曝す処理工程に用いられる温湿度処理装置であって、前記処理対象物を搬入可能な処理空間が内部に設けられた処理槽と、前記処理空間の温度を検出する空間温度検出部と、前記処理空間と前記処理槽の外部空間とに跨って設けられ、前記処理空間が前記外部空間よりも高温の場合に、内部に封入された作動流体が前記処理空間に配置された側の内部で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が前記外部空間に配置された側の内部で凝縮するヒートパイプ現象を生じ得るように構成された湿度検出本体部と、前記湿度検出本体部のうち前記作動流体が蒸発する部分の温度を導出する本体部温度導出部と、前記空間温度検出部によって検出される前記処理空間の温度と前記本体部温度導出部によって導出される前記湿度検出本体部の温度とに基づいて、前記処理空間の湿度を算出する演算部と、前記処理槽内に設けられ、前記空間温度検出部によって検出される前記処理空間の温度に基づいて空気を加熱可能な加熱部と、前記処理槽内に設けられ、前記演算部によって算出される前記処理空間の湿度に基づいて空気を加湿可能な加湿部とを備え、前記処理槽には、その処理槽の内外で換気を行うための換気口が設けられている。
【0008】
この温湿度処理装置では、処理槽の内外で換気を行うための換気口が処理槽に設けられているため、処理槽内の処理空間が外部空間よりも高温高湿となっている場合に処理空間の除湿と冷却をこの換気口を通じて行うことができる。また、この温湿度処理装置では、ヒートパイプ現象を生じる湿度検出本体部のうち作動流体が蒸発する部分の温度が処理空間の露点に略等しくなる。このため、その作動流体が蒸発する部分の温度を導出する本体部温度導出部による導出温度と、空間温度検出部によって検出された処理空間の温度とに基づいて、演算部が処理空間の湿度を算出することができる。従って、この温湿度処理装置では、従来の乾球温度センサと湿球温度センサを用いて処理空間の湿度を導出する場合と異なり、湿球温度センサのウィックを必要としないので、ウィックの交換のために処理装置の運転を停止しなくてもよい。また、湿度検出本体部のうち処理空間に配置された側で作動流体が蒸発する部分の温度が処理空間の露点に略等しくなることから、その作動流体が蒸発する部分の外面では結露が生じる。このため、湿度検出本体部のうち作動流体が蒸発する部分の外面における結露を利用して処理空間の補助的な除湿を行うことができる。また、ヒートパイプ現象が生じている湿度検出本体部では、処理空間に配置されて作動流体が蒸発する部分から処理槽の外部空間に配置されて作動流体が凝縮する部分へ熱が搬送されるため、この湿度検出本体部による熱搬送を利用して処理空間の補助的な冷却を行うことができる。すなわち、この温湿度処理装置では、従来のような冷凍機の蒸発器からなる冷却器(除湿機)を用いることなく、換気口を通じての換気と湿度検出本体部における結露及び熱搬送とにより処理空間の除湿と冷却を行うことができるため、冷凍機の故障や動作不良に起因する処理装置の運転停止を防ぐことができるとともに、冷凍機の稼働に要するエネルギーを削減することができる。従って、この温湿度処理装置では、長期間の継続運転が可能となるとともに、省エネルギー化を図ることができる。
【0009】
上記温湿度処理装置において、前記加熱部による空気の加熱量と前記加湿部による空気の加湿量とに応じて前記換気口の開度を調整可能な開度調整装置を備えていることが好ましい。
【0010】
このように構成すれば、処理槽の外部の温湿度が処理空間の温湿度よりも低いときに加熱部による空気の加熱量及び加湿部による空気の加湿量を増加させる場合には、開度調整装置が換気口の開度を小さくして換気量を低減させることができ、その結果、加熱部による空気の加熱効果及び加湿部による空気の加湿効果を高めることができる。これにより、加熱部による空気の加熱及び加湿部による空気の加湿に要するエネルギーを削減することができるため、より省エネルギー化を図ることができる。また、処理槽の外部の温湿度が比較的高いときに加熱部による空気の加熱量及び加湿部による空気の加湿量を減少させる場合には、開度調整装置が換気口の開度を大きくして換気量を増大させることができる。その結果、処理槽の外部の温湿度が比較的高くて、処理槽内の温湿度が下がりにくい場合でも、換気量の増大により処理空間の除湿と冷却を促進することができる。さらに、処理槽内の温湿度が安定した状態で温湿度処理装置を運転している時に、加熱部による空気の加熱量及び加湿部による空気の加湿量が共に所定の値よりも大きい場合には、開度調整装置により徐々に換気口の開度を小さくしていき、加熱部による加熱量及び/又は加湿部による加湿量が所定の値に近くなるようにすれば、より一層の省エネルギー化を図ることができる。
【0011】
上記温湿度処理装置において、前記処理槽内には、前記処理空間との間に仕切壁を隔てて配置され、前記加熱部及び前記加湿部が設置される空調空間が設けられているとともに、その空調空間と前記処理空間との間で空気を循環させる送風部が設けられ、前記換気口は、前記処理槽内において前記処理対象物が設置される位置よりも空気の流通方向において下流側で、かつ、前記送風部が設置される位置よりも空気の流通方向において上流側の位置に配設されていることが好ましい。
【0012】
処理槽内において処理対象物が設置される領域に換気口が設けられている場合や、空気の流通方向において処理対象物が設置される位置よりも上流側で、かつ、送風部が設置される位置よりも下流側の位置に換気口が設けられる場合には、換気口を通じて外部から処理槽内に取り込まれた空気の温湿度が周りの空気の温湿度に対して局所的に異なる状態でその空気が処理対象物に当たる虞があり、この場合には処理対象物の温湿度の処理条件に不均一が生じる虞がある。これに対して、本構成では、換気口を通じて外部から処理槽内に取り込まれた空気が送風部によって撹拌されてその温湿度が比較的均一化された後、処理対象物に当たるように送風されるため、上記のような温湿度の処理条件の不均一が生じるのを防ぐことができる。
【0013】
上記温湿度処理装置において、前記処理空間を形成する前記処理槽の壁部のうち互いに対向する位置には、前記処理対象物を一方向へ送る搬送装置によって前記処理空間への前記処理対象物の搬入及び前記処理空間からの前記処理対象物の搬出が可能なように搬入口と搬出口とが設けられていてもよい。
【0014】
このように一対の搬出口と搬入口が対向位置に設けられていれば、処理対象物を一方向へ送る搬送装置により、処理後の処理対象物を処理空間から搬出口を通じて搬出すると同時に、次に処理する処理対象物を搬入口を通じて前記搬出方向と同方向に処理空間に搬入することができる。すなわち、処理後の処理対象物を処理空間から取り出した後、次に処理する処理対象物を処理空間に搬入するバッチ式の処理工程に比べて、処理空間への処理対象物の入れ替えに要する時間を短縮することができ、処理効率の向上を図ることができる。また、この構成では、搬入口と搬出口のうち少なくとも一方を換気口として利用して処理槽の内外で換気を行うことができる。このため、処理空間が処理槽の外部空間よりも高温高湿となっている場合に搬入口又は搬出口を通じて処理空間の除湿と冷却を行うことができる。
【0015】
この場合において、前記搬入口を開閉可能に前記処理槽に設けられた搬入口シャッタ装置と、前記搬出口を開閉可能に前記処理槽に設けられた搬出口シャッタ装置とを備え、前記搬入口シャッタ装置と前記搬出口シャッタ装置のうち少なくとも一方のシャッタ装置は、そのシャッタ装置が開閉する前記搬入口又は前記搬出口の開度を、前記加熱部による空気の加熱量と前記加湿部による空気の加湿量とに応じて調整可能に構成されていてもよい。
【0016】
このように構成すれば、処理槽の外部の温湿度が処理空間の温湿度よりも低いときに加熱部による空気の加熱量及び加湿部による空気の加湿量を増加させる場合に、シャッタ装置が対応する搬出口又は搬入口の開度を小さくして換気量を低減することができ、その結果、加熱部による空気の加熱効果及び加湿部による空気の加湿効果を高めることができる。これにより、加熱部による空気の加熱及び加湿部による空気の加湿に要するエネルギーを削減することができるため、より省エネルギー化を図ることができる。また、処理槽の外部の温湿度が比較的高いときに加熱部による空気の加熱量及び加湿部による空気の加湿量を減少させる場合には、シャッタ装置が対応する搬出口又は搬入口の開度を大きくして換気量を増大させることができる。その結果、処理槽の外部の温湿度が比較的高くて、処理槽内の温湿度が下がりにくい場合でも、換気量の増大により処理空間の除湿と冷却を促進することができる。さらに、処理槽内の温湿度が安定した状態で温湿度処理装置を運転している時に、加熱部による空気の加熱量及び加湿部による空気の加湿量が共に所定の値よりも大きい場合には、シャッタ装置により対応する搬出口又は搬入口の開度を徐々に小さくしていき、加熱部による加熱量及び/又は加湿部による加湿量が所定の値に近くなるようにすれば、より一層の省エネルギー化を図ることができる。
【0017】
上記処理槽の壁部のうち互いに対向する位置に搬入口と搬出口とが設けられている構成において、前記湿度検出本体部のうち前記処理空間に配置された部分は、前記搬送装置による前記処理対象物の搬送経路の上方に配置されており、前記処理空間において、前記湿度検出本体部のうち当該処理空間に配置された部分の下方で、かつ、前記搬送装置による前記処理対象物の搬送経路の上方の位置には、前記湿度検出本体部から滴下する結露水を受けるための受け部が設けられていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、湿度検出本体部に上記のようなヒートパイプ現象が生じて当該湿度検出本体部のうち処理空間に配置された部分の外面に生じた結露が滴下した場合でも、その結露水を受け部によって受けて処理対象物にかかるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、長期間の継続運転が可能であるとともに、省エネルギー化を図ることが可能な温湿度処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による温湿度処理装置の構成を示す図である。
【図2】処理空間の温湿度が設定される高温高湿領域を示す図である。
【図3】ヒートパイプ現象が生じているヒートパイプにおいて作動流体が蒸発している箇所の外面温度がどのような温度となるかを実験した結果を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態の変形例による温湿度処理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0022】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態による温湿度処理装置2の構成について説明する。
【0023】
本実施形態による温湿度処理装置2は、製品の製造工程の一環として製品の耐湿性評価やエージングなどを行うために、製品(処理対象物W)を高温高湿(例えば、温度80℃以上、湿度80%以上)で一定の温湿度条件の雰囲気に曝す処理工程に用いられるものであり、製品の生産ラインに付設される。従って、この温湿度処理装置2では、試験用の調温調湿装置と異なり、処理対象物Wを処理する温湿度条件を種々の温湿度条件に繰り返し変化させることはなく、狭い温湿度範囲内で、ある一定の温湿度条件に設定して処理対象物Wの処理を行う。この温湿度処理装置2によって処理される処理対象物Wとしては、プリント基板、半導体、二次電池、各種電子部品、その他金属材料や高分子材料等が挙げられる。
【0024】
この処理対象物Wの処理工程では、処理対象物Wを一方向へ送るチェーンコンベア等の搬送装置100が用いられる。この搬送装置100は、コンベアチェーン等の無端の搬送体102と、その搬送体102が掛け渡される4つの回転体104と、それら4つの回転体104のうちの少なくとも1つを回転させる図略の駆動モータとを備えている。4つの回転体104は、水平方向と鉛直方向とに分かれて配置されている。すなわち、2つの回転体104が水平方向に互いに離間して配置されているとともに、その2つの回転体104のそれぞれの下方に対応する回転体104が離間して配置されており、その下側の2つの回転体104は、互いに水平方向に離間した位置に配置されている。搬送体102は、これら4つの回転体104の外側に掛け渡されている。そして、4つの回転体104のうちの少なくとも1つが駆動モータによって回転させられることにより、搬送体102が周回移動するようになっている。
【0025】
搬送体102のうち上側の2つの回転体104間に水平に張り渡された部分は、温湿度処理装置2内を通って延びており、この部分に処理対象物Wが載置される。搬送体102が周回移動させられることにより、搬送体102のうち上側の2つの回転体104間に水平に張り渡された部分が図1中の右から左へ一方向に移動し、それに伴って処理対象物Wが同方向に送られるようになっている。
【0026】
本実施形態の温湿度処理装置2は、上記のような搬送装置100に付設可能に構成されるものであり、処理槽4と、加湿部6と、加熱部8と、送風部10と、温湿度導出部12と、搬入口シャッタ装置14と、搬出口シャッタ装置16と、開度調整装置18と、制御装置20とを備える。
【0027】
処理槽4は、搬送装置100による処理対象物Wの搬送方向に延びる中空の箱状に形成されており、その内部に処理空間S1と空調空間S2とが設けられている。この処理空間S1と空調空間S2とは、処理槽4内に設けられた水平方向に延びる仕切壁4cによって仕切られており、この仕切壁4cの上側に処理空間S1が配置されているとともに仕切壁4cの下側に空調空間S2が配置されている。そして、仕切壁4cに対して前記処理対象物Wの搬送方向の下流側に流入側連通部4dが設けられているとともに、仕切壁4cに対して前記処理対象物Wの搬送方向の上流側に流出側連通部4eが設けられており、これら両連通部4d,4eにより処理空間S1と空調空間S2とが連通されている。流出側連通部4eは、空調空間S2から処理空間S1へ空気が送風される流出口となる部分であり、流入側連通部4dは、処理空間S1から空調空間S2へ空気が流れ込む流入口となる部分である。
【0028】
処理空間S1は、処理対象物Wを搬入可能な空間であり、この処理空間S1の雰囲気(空気)が所定の温湿度条件に調整されて処理対象物Wがその温湿度条件の雰囲気に曝される。空調空間S2は、処理空間S1の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するために設けられており、この空調空間S2に加湿部6、加熱部8及び送風部10が設置されている。
【0029】
そして、処理槽4は、内部に処理空間S1及び空調空間S2が配置され、上部が開口している処理槽本体4gと、その処理槽本体4gの上部の開口を覆う上蓋4hとを有する。
【0030】
上蓋4hは、処理槽本体4gの上端部に着脱可能に取り付けられており、当該上蓋4hを処理槽本体4gに対して着脱することによりその処理槽本体4gの上部の開口を開閉できるようになっている。処理槽本体4gの上端部には、封止部材4iが設けられており、処理槽本体4gの上端部とその上端部に取り付けられた上蓋4hとの間がこの封止部材4iによって封止されている。処理槽4内に配置された各構成部材をメンテナンスする際には、上蓋4hを取り外すことにより処理槽本体4gの開口を通じてそれらのメンテナンスが容易に実施可能となる。上蓋4hと処理槽本体4gを構成する各壁部とは、それぞれ断熱材を備えており、処理槽4内の空間が外部空間に対して断熱されている。
【0031】
処理空間S1を形成する処理槽本体4gの壁部のうち前記処理対象物Wの搬送方向において互いに対向する位置には、搬送装置100による処理空間S1への処理対象物Wの搬入及び処理空間S1からの処理対象物Wの搬出が可能なように搬入口4jと搬出口4kとが設けられている。
【0032】
具体的には、搬入口4jは、処理空間S1を形成する処理槽本体4gの四方の壁部のうち前記搬送方向において上流側に位置する壁部4mに形成されており、搬出口4kは、前記搬送方向において下流側に位置する壁部4nに形成されている。搬送体102のうち上側の2つの回転体104間に水平に張り渡された部分は、この搬入口4j及び搬出口4kを通って処理空間S1の内外に延びており、当該部分に載置された処理対象物Wが搬入口4jを通じて外部から処理空間S1に搬入されるとともに搬出口4kを通じて処理空間S1から外部へ搬出されるようになっている。
【0033】
また、処理槽4には、搬入口4jを開閉可能な搬入口シャッタ装置14が設けられているとともに、搬出口4kを開閉可能な搬出口シャッタ装置16が設けられている。
【0034】
搬入口シャッタ装置14は、搬入口4jを開閉するためのシャッタ14aと、そのシャッタ14aを動かす駆動部14bとを備えている。駆動部14bは、処理槽4の前記壁部4mの外面に取り付けられており、シャッタ14aを上下にスライドさせる。この駆動部14bには、制御装置20から制御信号が入力されるようになっており、駆動部14bは、その入力される制御信号に従ってシャッタ14aを上下にスライドさせて搬入口4jを開閉する。また、搬出口シャッタ装置16は、搬出口4kを開閉するためのシャッタ16aと、そのシャッタ16aを動かす駆動部16bとを備えている。駆動部16bは、処理槽4の前記壁部4nの外面に取り付けられており、シャッタ16aを上下にスライドさせる。この駆動部16bは、前記搬入口シャッタ装置14の駆動部14bと同様に、制御装置20から入力される制御信号に従ってシャッタ16aを上下にスライドさせ、それによって搬出口4kを開閉する。
【0035】
具体的には、制御装置20は、搬送体102の移動を停止させて処理空間S1で処理対象物Wの処理を行う際には、搬入口4jを閉じさせる制御信号を搬入口シャッタ装置14の駆動部14bに送るとともに、搬出口4kを閉じさせる制御信号を搬出口シャッタ装置16の駆動部16bに送る。これにより、搬入口シャッタ装置14の駆動部14bは、入力された制御信号に従ってシャッタ14aを下方に移動させて搬入口4jを閉じるとともに、搬出口シャッタ装置16の駆動部16bは、入力された制御信号に従ってシャッタ16aを下方に移動させて搬出口4kを閉じる。また、制御装置20は、搬送体102を移動させて処理空間S1への処理対象物Wの搬入及び処理空間S1からの処理対象物Wの搬出を行う際には、搬入口4jを開放させる制御信号を搬入口シャッタ装置14の駆動部14bに送るとともに、搬出口4kを開放させる制御信号を搬出口シャッタ装置16の駆動部16bに送る。これにより、搬入口シャッタ装置14の駆動部14bは、入力された制御信号に従ってシャッタ14aを上方に移動させて搬入口4jを開放するとともに、搬出口シャッタ装置16の駆動部16bは、入力された制御信号に従ってシャッタ16aを上方に移動させて搬出口4kを開放する。
【0036】
空調空間S2は、仕切壁4cから下方へ延びる仕切部4tによって、前記処理対象物Wの搬送方向の上流側に位置する第1空調空間S3と、前記搬送方向の下流側に位置する第2空調空間S4とに仕切られている。第1空調空間S3は、流出側連通部4eを通じて処理空間S1と連通しており、当該第1空調空間S3に送風部10が配置されている。第2空調空間S4は、細長い空間と、この空間よりも上下幅の広い空間とからなり、流入側連通部4dを通じて処理空間S1と連通している。処理槽本体4gの下部のうち前記流出側連通部4e近傍の部分は、他の部分に比べて下方に突出する突出部4sとなっており、第2空調空間S4のうちの前記上下幅の広い空間は、この突出部4sに対応する位置に配置されている。この上下幅の広い空間に加湿部6及び加熱部8が配置されている。そして、仕切部4tには、第1空調空間S3と第2空調空間S4とを連通させる開口部4uが設けられている。
【0037】
加湿部6は、温湿度導出部12の後述する演算部12dによって算出される処理空間S1の相対湿度に基づいて空調空間S2(第2空調空間S4)の空気を加湿可能に構成されている。この加湿部6は、加湿水収容部6aと、ヒータ6bと、加湿水の供給配管6cとを有する。
【0038】
加湿水収容部6aは、加湿水を溜める部分であり、前記突出部4sの底壁部4vの内面に形成された凹部からなる。
【0039】
ヒータ6bは、その発熱部が加湿水収容部6a内に設けられており、加湿水収容部6a内に溜められた加湿水を加熱して蒸発させ、第2空調空間S4の空気を加湿する。制御装置20は、後述する演算部12dによって算出される処理空間S1の相対湿度に基づいて空気の加湿量(空気を加湿する度合い)を決定するとともに、その加湿量を得るために必要な加熱能力を指示する制御信号をヒータ6bに送る。ヒータ6bは、制御装置20から送られた制御信号に従った加熱能力で加湿水を加熱し、それによって加湿部6による空気の加湿量が制御装置20によって決定された加湿量となる。
【0040】
供給配管6cは、その一端部が図略の加湿水供給源に繋がっているとともに、他端部が加湿水収容部6aに繋がっており、加湿水供給源から供給される加湿水が当該供給配管6cを通じて加湿水収容部6aへ補給されるようになっている。この供給配管6cは、処理槽本体4gの外部からその内部へ処理槽本体4gの壁部を貫通して延びているとともに、その大部分が第2空調空間S4において処理槽本体4g内の床面に沿って配設されている。これにより、処理槽4内の空間を外部空間よりも高温高湿に設定する場合に、供給配管6cのうち第2空調空間S4に配設された部分において加湿水収容部6aへ供給される加湿水がある程度温められる。このため、加湿水収容部6aにおいて加湿水の温度の変動が小さくなるとともに、加湿水を蒸発させやすくなり、その結果、空気の加湿量の乱れが小さくなる。
【0041】
加熱部8は、温湿度導出部12の後述する空間温度センサ12aによって検出される処理空間S1の温度に基づいて空調空間S2(第2空調空間S4)の空気を加熱可能に構成されている。制御装置20は、空間温度センサ12aによって検出される処理空間S1の温度に基づいて空気の加熱量(空気を加熱する度合い)を決定するとともに、その加熱量を得るために必要な加熱能力を指示する制御信号を加熱部8に送る。加熱部8は、制御装置20から送られた制御信号に従った加熱能力で空気を加熱する。それによって、加熱部8による空気の加熱量が制御装置20によって決定された加熱量となる。
【0042】
送風部10は、空気を送風するファンからなり、空調空間S2(第1空調空間S3)と処理空間S1との間で空気を循環させる。この送風部10は、第1空調空間S3においてその仕切部4tの開口部4uに面して配置されており、この送風部10を駆動させるモータ10aが処理槽4の外部に設けられている。モータ10aによって送風部10が駆動されることにより、加湿部6及び加熱部8により温湿度が調整された第2空調空間S4の空気がファンで撹拌された後、仕切部4tの開口部4uを通じて第1空調空間S3に流れ込むとともに、その空気が流出側連通部4eを通じて処理空間S1へ送風され、さらに、その処理空間S1から流入側連通部4dを通じて第2空調空間S4へ空気が流れる。このように、空調空間S2と処理空間S1との間で空気が循環されながら処理空間S1の温湿度が調整されるようになっている。そして、処理空間S1では、前記搬送装置100による処理対象物Wの搬送方向と同じ方向に空気が流れるようになっている。
【0043】
なお、処理空間S1において処理対象物Wの搬送方向とは逆方向に空気が流れるようになっていてもよい。すなわち、処理対象物Wの搬送方向の上流側に流入側連通部4dを配置するとともにその搬送方向の下流側に流出側連通部4eを配置し、送風部10もその搬送方向下流側の流出側連通部4e近傍の位置に配置してその送風部10によって送風される空調空間S2の空気が搬送方向下流側の流出側連通部4eから処理空間S1を経て搬送方向上流側の流入側連通部4dを通り、空調空間S2に戻るように循環させる構成としてもよい。
【0044】
処理槽本体4gには、処理槽4の内外で換気を行うための換気口4wが設けられている。この換気口4wは、処理槽本体4gのうち空調空間S2(第2空調空間S4)を形成する壁部に設けられ、流入側連通部4d近傍の位置に配置されている。すなわち、換気口4wは、処理槽4内において処理対象物Wが設置される位置よりも空気の流通方向において下流側で、かつ、送風部10が設置された位置よりも空気の流通方向において上流側の位置に配設されている。そして、この換気口4wを通じて空調空間S2と処理槽4の外部空間とが連通している。空調空間S2が外部空間よりも高温高湿である場合に、この換気口4wを通じて換気されることにより、空調空間S2の除湿及び冷却が行われる。
【0045】
そして、処理槽4には、加熱部8による空気の加熱量と加湿部6による空気の加湿量とに応じて換気口4wの開度を調整可能な開度調整装置18が設けられている。
【0046】
開度調整装置18は、換気口4wの開度を調整するための調整板18aと、その調整板18aを動かす調整板駆動部18bとを備えている。調整板駆動部18bは、処理槽4の壁部に取り付けられており、その処理槽4の壁部に沿って調整板18aをスライドさせる。この調整板駆動部18bには、制御装置20から加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量に応じた換気口4wの開度を指示する制御信号が入力されるようになっており、調整板駆動部18bは、その入力される制御信号に従って調整板18aをスライドさせて換気口4wの開度を変更する。
【0047】
温湿度導出部12は、処理空間S1の温度及び湿度を導出するものである。この温湿度導出部12は、空間温度センサ12aと、湿度検出本体部12bと、外面温度センサ12cと、演算部12dとを有する。
【0048】
空間温度センサ12aは、処理空間S1の温度を検出するものであり、処理空間S1のうち流出側連通部4eに面した位置に配設されている。この空間温度センサ12aは、本発明の空間温度検出部の概念に含まれるものである。
【0049】
湿度検出本体部12bは、直棒状のヒートパイプからなり、処理空間S1と処理槽4の外部空間とに跨るように処理槽4の上蓋4hに設けられている。
【0050】
具体的には、上蓋4hのうち流出側連通部4e近傍の位置に上下に貫通する貫通孔4xが設けられており、この貫通孔4xに湿度検出本体部12bのヒートパイプが挿嵌されている。湿度検出本体部12bは、処理空間S1に配置された側が処理槽4の外部空間に配置された側に対して下側に位置する姿勢で設けられている。そして、この湿度検出本体部12bのうち処理空間S1に配置された部分は、搬送体102による処理対象物Wの搬送経路の上方に配置されている。なお、この湿度検出本体部12bは、鉛直方向に延びる姿勢で配設されるのみならず、ヒートパイプ現象が発生可能な範囲であれば、鉛直方向からある程度傾斜した姿勢で配設されていてもよい。また、湿度検出本体部12bのヒートパイプは、必要に応じて複数設けられていてもよい。
【0051】
湿度検出本体部12bのヒートパイプの内部には、純水からなる作動流体が封入されている。温湿度処理装置2の通常運転中は処理空間S1が処理槽4の外部空間よりも高温であり、そのことに起因して、この湿度検出本体部12bのヒートパイプは、処理空間S1に配置された側の内部で作動流体が蒸発するとともにその蒸発した作動流体が前記外部空間に配置された側の内部で凝縮するヒートパイプ現象を生じる。また、処理空間S1において湿度検出本体部12bの下方で、かつ、搬送体102による処理対象物Wの搬送経路の上方の位置には、受け部4yが設けられている。この受け部4yは、後述するように湿度検出本体部12bのうち処理空間S1に配置された部分の外面に結露が生じてその結露が滴下した場合に、それを受けるものである。この受け部4yによって受けられた水は、当該受け部4yに接続された図略の排出管を通じて処理槽4の外部へ排出される。なお、湿度検出本体部12bが搬送体102による処理対象物Wの搬送経路上から側方にずらして配置されている場合には、受け部4yは省略可能である。
【0052】
外面温度センサ12cは、湿度検出本体部12bのうち処理空間S1に配置されて作動流体が蒸発する部分の外面温度を導出するためのものであり、この外面温度センサ12cは、本発明の本体部温度導出部の概念に含まれる。
【0053】
具体的には、外面温度センサ12cは、湿度検出本体部12bにおいて完全にヒートパイプ現象が生じているときに、当該湿度検出本体部12bのうち処理空間S1に配置された側において液体状の作動流体が溜まる部分の外面に取り付けられている。すなわち、湿度検出本体部12bでヒートパイプ現象が生じ始めた時点では、処理空間S1に配置された側の内部に溜まった液体状の作動流体が徐々に蒸発していき、それに伴って作動流体の液面が低下していく。そして、湿度検出本体部12bでヒートパイプ現象が完全に生じた状態になると、作動流体の液面が最も低下する。外面温度センサ12cは、湿度検出本体部12bのうちこの最も低下した場合の液面よりも下側で液体状の作動流体が溜まっている範囲に取り付けられており、その取り付けられた箇所の外面温度を検出する。そして、外面温度センサ12cが取り付けられた箇所の外面温度は、作動流体が蒸発する部分の外面温度と等しい温度であり、この箇所の外面温度は、後述するように処理空間S1の露点に略等しくなる。このため、外面温度センサ12cからは処理空間S1の露点に略等しい検出温度のデータが出力される。換言すると、本実施形態の湿度検出本体部12b及び外面温度センサ12cは、従来のウィックを用いた湿球温度センサの代替として機能し得る。
【0054】
演算部12dは、制御装置20に含まれており、この演算部12dには、空間温度センサ12aによって検出された処理空間S1の温度のデータと、外面温度センサ12cによって検出された湿度検出本体部12bの外面温度のデータとが入力される。この演算部12dは、入力された処理空間S1の温度のデータと湿度検出本体部12bの外面温度のデータとに基づいて、処理空間S1の相対湿度を算出する。
【0055】
制御装置20は、上記したように温湿度処理装置2の各部の動作制御を行うものである。
【0056】
次に、本実施形態の温湿度処理装置2を用いた処理対象物Wの処理工程について説明する。
【0057】
この処理工程では、温湿度処理装置2において図2の太線内の領域で示す高温高湿領域内の温湿度条件に処理空間S1の温湿度を設定し、その設定した温湿度条件の雰囲気に処理対象物Wを曝す処理を行う。
【0058】
まず、温湿度処理装置2の加湿部6においてヒータ6bにより加湿水が加熱されて蒸発し、空調空間S2の空気が加湿されるとともに、加熱部8により空調空間S2の空気が加熱される。この加湿及び加熱された空気は、送風部10が駆動することにより流出側連通部4eを通じて処理空間S1へ送風されるとともに、その処理空間S1の空気は、流入側連通部4dを通じて空調空間S2に流れ込む。このようにして、空調空間S2と処理空間S1との間で空気が循環し、処理空間S1の温湿度が上昇する。
【0059】
そして、処理空間S1の温度が処理槽4の外部空間の温度よりも高くなると、湿度検出本体部12bではヒートパイプ現象が生じる。具体的には、湿度検出本体部12bのうち処理空間S1に配置された側の内部で液体状の作動流体が蒸発するとともに、その蒸発した作動流体は、湿度検出本体部12bのうち処理槽4の外部空間に配置された部分へ流れ、その部分で冷却されて凝縮する。この凝縮して液体状となった作動流体は、湿度検出本体部12bのうち処理空間S1に配置された側へ流れ、再び蒸発する。このように湿度検出本体部12b内において、作動流体の蒸発と凝縮の循環が生じる。
【0060】
そして、ヒートパイプ現象が完全に生じている湿度検出本体部12bにおいて、外面温度センサ12cによって検出される外面温度、すなわち作動流体が蒸発している箇所の外面温度に等しい温度は、処理空間S1の空気の露点に略等しくなる。
【0061】
この現象は、本願発明者が行った実験の結果から判明したものである。この実験では、恒温恒湿槽において、ヒートパイプを断熱壁で仕切られた槽内の空間と槽外の空間とに跨るようにその断熱壁を貫通させて設置し、槽内の空間を槽外の空間よりも高温にしてヒートパイプに完全にヒートパイプ現象を生じさせるとともに、その状態でヒートパイプのうち前記外面温度センサ12cと同じ箇所に取り付けた温度センサによってその箇所の外面温度を実測した。また、恒温恒湿槽の装置側で槽内の温度及び相対湿度を測定し、さらに、この測定した槽内の温度及び相対湿度から槽内の空気の露点を算出した。これらの測定結果及び算出結果の経時変化が図3に示されている。この図3の結果では、温度センサによる検出温度が、槽内の空気の露点(高温側の空間の露点)に略等しくなることが判る。すなわち、ヒートパイプ現象が完全に生じているヒートパイプにおいて、作動流体が蒸発する箇所の外面温度と同等と見なせる液体状の作動流体が溜まる部分の外面温度は、高温側の空間の露点に略等しくなることが判明した。そして、この結果から、本実施形態において、ヒートパイプ現象が生じている湿度検出本体部12bのうち外面温度センサ12cによって検出される部分の外面温度は、処理空間S1の露点に略等しくなることが見出された。
【0062】
そして、演算部12dでは、外面温度センサ12cによる検出温度、すなわち処理空間S1の露点に略等しい温度のデータと、空間温度センサ12aによる検出温度のデータとが入力され、それらのデータに基づいて処理空間S1の相対湿度が算出される。制御装置20は、空間温度センサ12aの検出温度に基づいて加熱部8による空気の加熱量を制御するとともに、演算部12dが算出した処理空間S1の相対湿度に基づいて加湿部6による空気の加湿量を制御する。
【0063】
具体的には、制御装置20は、空間温度センサ12aによって検出された処理空間S1の温度が目標の温度よりも低い場合には、加熱部8の加熱能力を強くして空気の加熱を促進させる一方、空間温度センサ12aによって検出された処理空間S1の温度が目標の温度以上になっている場合には、加熱部8の加熱能力を弱くして空気の加熱を抑制させる。また、制御装置20は、演算部12dが算出した処理空間S1の相対湿度が目標の相対湿度よりも低い場合には、加湿部6のヒータ6bの加熱能力を強くして加湿水の蒸発量を増やし、空気の加湿を促進させる一方、演算部12dが算出した処理空間S1の相対湿度が目標の相対湿度以上になっている場合には、加湿部6のヒータ6bの加熱能力を弱くして加湿水の蒸発量を低減し、空気の加湿を抑制させる。
【0064】
そして、制御装置20は、加熱部8による空気の加熱量と加湿部6による空気の加湿量とに応じて換気口4wの開度を決定し、その開度を指示する制御信号を開度調整装置18の調整板駆動部18bに送る。調整板駆動部18bは、制御装置20から送られた制御信号に従って調整板18aを移動させて換気口4wの開度を制御装置20によって決定された開度に調整する。この際、制御装置20が加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量を増加させるように加熱部8及び加湿部6を制御している場合には、制御装置20は、換気口4wの開度を下げるように開度調整装置18を制御する一方、制御装置20が加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量を減少させるように加熱部8及び加湿部6を制御している場合には、制御装置20は、換気口4wの開度を上げるように開度調整装置18を制御する。そして、換気口4wを通じて、その開度に応じた換気量で空調空間S2(第2空調空間S4)の換気が行われる。この換気によって空調空間S2の除湿と冷却が行われる。この除湿及び冷却された空調空間S2の空気は、加湿部6で加湿されるとともに加熱部8で加熱された後、送風部10によって撹拌されながら処理空間S1へ送られる。
【0065】
また、上記のようなヒートパイプ現象が生じている湿度検出本体部12bでは、処理空間S1に配置された側で作動流体が蒸発する部分の外面温度が処理空間S1の露点に略等しくなることから、その作動流体が蒸発する部分の外面に結露が生じる。この結露は、湿度検出本体部12bの下端部から滴下し、その滴下した水は受け部4yにより受けられて排出管を通じて外部に排出される。すなわち、この湿度検出本体部12bのうち作動流体が蒸発する部分の外面における結露を利用して、処理空間S1の補助的な除湿が行われる。さらに、上記のようなヒートパイプ現象が生じている湿度検出本体部12bでは、処理空間S1に配置されて作動流体が蒸発する部分から処理槽4の外部空間に配置されて作動流体が凝縮する部分へ熱が搬送され、この熱搬送により処理空間S1の補助的な冷却が行われる。
【0066】
本実施形態では、加湿部6による空気の加湿と、換気口4wを通じての換気に伴う空調空間S2の除湿と、ヒートパイプ現象が生じている湿度検出本体部12bによる処理空間S1の補助的な除湿とのバランスにより、処理槽4内の処理空間S1の湿度が目標の湿度に設定されるとともにその湿度に維持される。また、加熱部8による空気の加熱と、換気口4wを通じての換気に伴う空調空間S2の冷却と、ヒートパイプ現象が生じている湿度検出本体部12bによる処理空間S1の補助的な冷却とのバランスにより、処理槽4内の処理空間S1の温度が目標の温度に設定されるとともにその温度に維持される。このようにして、処理空間S1の温湿度が目標の温湿度(高温高湿条件)に調整されて維持される。
【0067】
さらに、本実施形態では、処理槽4内の温湿度が安定した状態で温湿度処理装置2を運転している時に、加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量が共に所定の値よりも大きい場合には、制御装置20は、換気口4wの開度を徐々に小さくするように駆動部16bを制御する。そして、それに伴って、制御装置20は、加熱部8による加熱量及び加湿部6による加湿量を徐々に低減させていき、加熱部8による加熱量及び加湿部6による加湿量を前記所定の値に近くなるようにしてその加熱量及び/又は加湿量の最小化を図る。なお、加熱量及び加湿量の前記所定の値は、制御可能な範囲でゼロに近いことが望ましい。
【0068】
そして、処理空間S1が目標の温湿度に調整された後、搬入口シャッタ装置14の駆動部14bによりシャッタ14aが上方へスライドされるとともに、搬出口シャッタ装置16の駆動部16bによりシャッタ16aが上方へスライドされる。これにより、搬入口4j及び搬出口4kが開けられ、その後、搬送装置100の駆動モータが駆動して搬送体102を周回移動させることにより搬送体102上に載置された処理対象物Wが搬入口4jを通って処理空間S1に搬入される。搬送装置100の駆動モータは、搬送体102のうち処理すべき処理対象物Wが載置された部分が処理空間S1に収まるまで搬送体102を周回移動させ、その後、駆動を停止して搬送体102の移動を停止させる。この後、搬入口シャッタ装置14の駆動部14bによりシャッタ14aが下方へスライドされるとともに、搬出口シャッタ装置16の駆動部16bによりシャッタ16aが下方へスライドされる。これにより、搬入口4j及び搬出口4kが閉じられる。
【0069】
この状態で処理対象物Wが処理空間S1の一定の温湿度条件(高温高湿条件)の雰囲気に一定時間曝される。その後、再び搬入口シャッタ装置14により搬入口4jが開けられるとともに搬出口シャッタ装置16により搬出口4kが開けられた後、搬送装置100の駆動モータが駆動して搬送体102を周回移動させ、処理後の処理対象物Wが処理空間S1から搬出口4kを通って搬出される。そして、この処理後の処理対象物Wの搬出と同時に、次に処理すべき処理対象物Wが搬入口4jを通って処理空間S1に搬入され、その後、同様にして処理空間S1における処理対象物Wの処理が行われる。
【0070】
本実施形態による処理工程では、以上のような処理対象物Wの処理空間S1への搬入と、処理空間S1における処理対象物Wの処理と、処理後の処理対象物Wの処理空間S1からの搬出とが順次流れ作業で行われる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態では、処理槽4の内外で換気を行うための換気口4wが処理槽4に設けられているため、処理槽4内の処理空間S1及び空調空間S2が外部空間よりも高温高湿となっている場合に処理空間S1の除湿と冷却をこの換気口4wを通じて行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では、処理対象物Wを処理槽4の外部空間よりも高い温湿度条件の雰囲気に曝すために処理空間S1の温度を処理槽4の外部空間よりも高い温度まで上昇させるので、その際、湿度検出本体部12bにヒートパイプ現象が発生して当該湿度検出本体部12bのうち処理空間S1に配置された側の内部で作動流体が蒸発し、この作動流体が蒸発する部分の外面温度が処理空間S1の露点に略等しくなる。そして、この作動流体が蒸発する部分の外面温度が外面温度センサ12cによって検出されるので、その検出された外面温度と、空間温度センサ12aによって検出された処理空間S1の温度とに基づいて、演算部12dにより処理空間S1の相対湿度を算出することができる。従って、本実施形態では、従来の乾球温度センサと湿球温度センサを用いて処理空間の相対湿度を導出する場合と異なり、湿球温度センサのウィックを必要としないので、ウィックが古くなって水の吸い上げが悪くなる毎に、ウィックの交換のために温湿度処理装置2の運転を停止しなくてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、湿度検出本体部12bのうち処理空間S1に配置された側で作動流体が蒸発する部分の外面温度が処理空間S1の露点に略等しくなることから、その作動流体が蒸発する部分の外面では結露が生じる。このため、湿度検出本体部12bのうち作動流体が蒸発する部分の外面における結露を利用して処理空間S1の補助的な除湿を行うことができる。また、ヒートパイプ現象が生じている湿度検出本体部12bでは、処理空間S1に配置されて作動流体が蒸発する部分から処理槽4の外部空間に配置されて作動流体が凝縮する部分へ熱が搬送されるため、この湿度検出本体部12bによる熱搬送を利用して処理空間S1の補助的な冷却を行うことができる。すなわち、本実施形態では、従来のような冷凍機の蒸発器からなる冷却器(除湿機)を用いることなく、換気口4wを通じての換気と湿度検出本体部12bにおける結露及び熱搬送とにより処理空間S1の除湿と冷却を行うことができるため、冷凍機の故障や動作不良に起因する温湿度処理装置2の運転停止を防ぐことができるとともに、冷凍機の稼働に要するエネルギーを削減することができる。従って、本実施形態では、長期間の継続運転が可能となるとともに、省エネルギー化を図ることができる。
【0074】
また、本実施形態では、加熱部8による空気の加熱量と加湿部6による空気の加湿量とに応じて換気口4wの開度を調整可能な開度調整装置18が処理槽4に設けられているため、処理槽4の外部の温湿度が処理空間S1の温湿度よりも低いときに加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量を増加させる場合には、開度調整装置18が換気口4wの開度を小さくして換気量を低減させることができ、その結果、加熱部8による空気の加熱効果及び加湿部6による空気の加湿効果を高めることができる。これにより、加熱部8による空気の加熱及び加湿部6による空気の加湿に要するエネルギーを削減することができるため、より省エネルギー化を図ることができる。また、処理槽4の外部の温湿度が比較的高いときに加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量を減少させる場合には、開度調整装置18が換気口4wの開度を大きくして換気量を増大させることができる。その結果、処理槽4の外部の温湿度が比較的高くて、処理槽4内の温湿度が下がりにくい場合でも、換気量の増大により処理空間S1の除湿と冷却を促進することができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、処理槽4内の温湿度が安定した状態で温湿度処理装置2を運転している時に、加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量が共に所定の値よりも大きい場合には、開度調整装置18が徐々に換気口4wの開度を小さくさせていき、それに伴って加熱部8による加熱量及び加湿部6による加湿量が徐々に低減されて所定の値に近くなるので、より一層の省エネルギー化を図ることができる。
【0076】
また、本実施形態では、換気口4wが、処理槽4内において処理対象物Wが設置される位置よりも空気の流通方向において下流側で、かつ、送風部10が設置された位置よりも空気の流通方向において上流側の位置に配設されている。このため、換気口4wを通じて外部から処理槽4内の空調空間S2に取り込まれた空気は、送風部10によって撹拌されてその温湿度が比較的均一化された後、処理対象物Wに当たるように処理空間S1へ送風されるため、処理対象物Wに対する温湿度の処理条件の不均一が生じるのを防ぐことができる。
【0077】
また、本実施形態では、処理空間S1を形成する処理槽本体4gの壁部4m,4nのうち互いに対向する位置に搬入口4jと搬出口4kとが設けられているため、処理対象物Wを一方向へ送る搬送装置100により、処理後の処理対象物Wを処理空間S1から搬出口4kを通じて搬出すると同時に、次に処理する処理対象物Wを搬入口4jを通じて前記搬出方向と同方向に処理空間S1に搬入することができる。すなわち、処理後の処理対象物Wを処理空間から取り出した後、次に処理する処理対象物Wを処理空間に搬入するバッチ式の処理工程に比べて、処理空間S1への処理対象物Wの入れ替えに要する時間を短縮することができ、処理効率の向上を図ることができる。
【0078】
また、本実施形態では、処理空間S1において、湿度検出本体部12bのうち当該処理空間S1に配置された部分の下方で、かつ、搬送体102による処理対象物Wの搬送経路の上方の位置には、湿度検出本体部12bから滴下する結露水を受けるための受け部4yが設けられているので、湿度検出本体部12bにヒートパイプ現象が生じて当該湿度検出本体部12bのうち処理空間S1に配置された部分の外面に生じた結露が滴下した場合でも、その結露水を受け部4yによって受けて処理対象物Wにかかるのを防ぐことができる。
【0079】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0080】
例えば、上記実施形態では、処理対象物Wが処理空間S1に収まるまで搬送体102を周回移動させた後、一定時間停止させ、その後、再び搬送体102を周回移動させる例を示したが、本発明はこのような構成に限定されない。すなわち、搬送装置100の駆動モータが搬送体102を連続的に周回移動させることにより、処理対象物Wを所定時間かけて処理空間S1を通過させながらその処理空間S1の所定の温湿度条件の雰囲気に曝してもよい。
【0081】
そして、この場合には、前記搬入口シャッタ装置14及び前記搬出口シャッタ装置16を設けなくてもよく、搬入口4j及び搬出口4kは常に開放された状態であってもよい。この構成では、搬入口4j及び搬出口4kを換気口として利用して処理空間S1の空気を換気することができるため、処理空間S1が処理槽4の外部空間よりも高温高湿となっている場合にこれらの搬入口4j及び搬出口4kを通じて処理空間S1の除湿と冷却を行うことができる。
【0082】
また、上記実施形態において、換気口4wの代わりに、処理槽4内の処理空間S1において処理対象物Wが設置される位置よりも空気の流通方向において下流側に位置する搬出口4kを換気口として用いて処理槽4の内外での換気を行ってもよい。この場合には、搬出口シャッタ装置16が、加熱部8による空気の加熱量と加湿部6による空気の加湿量とに応じて搬出口4kの開度を調整可能とすることが好ましい。
【0083】
具体的には、搬出口シャッタ装置16の駆動部16bは、シャッタ16aを搬出口4kが全開状態となる位置と搬出口4kが全閉状態となる位置との間で任意の位置に動かせるように構成されている。そして、搬送装置100により処理槽4内の処理空間S1に処理対象物Wが搬入された状態で、搬出口シャッタ装置16の駆動部16bには、制御装置20から加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量に応じた搬出口4kの開度を指示する制御信号が入力されるようになっている。すなわち、制御装置20は、加熱部8による空気の加熱量と加湿部6による空気の加湿量とに応じて搬出口4kの開度を決定し、その開度を指示する制御信号を搬出口シャッタ装置16の駆動部16bに送る。その駆動部16bは、制御装置20から送られた制御信号に従ってシャッタ16aを移動させて搬出口4kの開度を制御装置20によって決定された開度に調整する。
【0084】
この際、制御装置20が加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量を増加させるように加熱部8及び加湿部6を制御している場合には、制御装置20は、搬出口4kの開度を下げるように駆動部16bを制御する一方、制御装置20が加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量を減少させるように加熱部8及び加湿部6を制御している場合には、制御装置20は、搬出口4kの開度を上げるように駆動部16bを制御する。
【0085】
また、処理槽4内の温湿度が安定した状態で温湿度処理装置2を運転している時に、加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量が共に所定の値よりも大きい場合には、制御装置20は、搬出口4kの開度を徐々に小さくするように駆動部16bを制御する。そして、それに伴って、制御装置20は、加熱部8による加熱量及び加湿部6による加湿量を徐々に低減させていき、加熱部8による加熱量及び加湿部6による加湿量を前記所定の値に近くなるようにしてその加熱量及び/又は加湿量の最小化を図る。なお、加熱量及び加湿量の前記所定の値は、制御可能な範囲でゼロに近いことが望ましい。
【0086】
そして、搬出口4kを通じて、その開度に応じた換気量で処理空間S1のうち処理対象物Wが設置された領域よりも下流側の領域の空気が換気され、その領域の空気の除湿と冷却が行われる。この除湿及び冷却された処理対象物Wの下流側の領域の空気は、空調空間S2に流入し、加湿部6で加湿されるとともに加熱部8で加熱され、その後、送風部10によって撹拌されながら処理空間S1へ送られる。
【0087】
なお、このように搬出口4kを換気口として用いた処理槽4内の換気は、処理対象物Wが処理空間S1に収められた状態でのみ行われる。すなわち、処理槽4内からの処理対象物Wの搬出時には、制御装置20は、搬送装置100による搬送体102の移動・停止に応じた搬出口シャッタ装置16による搬出口4kの開閉を優先して行わせる。
【0088】
このように搬出口シャッタ装置16により搬出口4kの開度調整をしながらその搬出口4kを換気口として利用して処理槽4内の空気の換気を行えば、処理槽4の外部の温湿度が処理空間S1の温湿度よりも低いときに加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量を増加させる場合に、搬出口シャッタ装置16が搬出口4kの開度を小さくして換気量を低減することができる。その結果、加熱部8による空気の加熱効果及び加湿部6による空気の加湿効果を高めることができる。これにより、加熱部8による空気の加熱及び加湿部6による空気の加湿に要するエネルギーを削減することができるため、より省エネルギー化を図ることができる。
【0089】
また、処理槽4の外部の温湿度が比較的高いときに加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量を減少させる場合には、搬出口シャッタ装置16が搬出口4kの開度を大きくして換気量を増大させることができる。その結果、処理槽4の外部の温湿度が比較的高くて、処理槽4内の温湿度が下がりにくい場合でも、換気量の増大により処理空間S1の除湿と冷却を促進することができる。
【0090】
さらに、処理槽4内の温湿度が安定した状態で温湿度処理装置2を運転している時に、加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量が共に所定の値よりも大きい場合には、搬出口シャッタ装置16が徐々に搬出口4kの開度を小さくさせていき、それに伴って加熱部8による加熱量及び加湿部6による加湿量が徐々に低減されて所定の値に近くなるので、より一層の省エネルギー化を図ることができる。
【0091】
なお、上記のように処理槽4内で処理対象物Wが設置される位置よりも空気の流通方向において下流側に位置する搬出口4kを換気口として利用することが好ましいが、搬入口4jを換気口として利用するとともに、搬入口シャッタ装置14を上記した搬出口シャッタ装置16と同様に、加熱部8による空気の加熱量及び加湿部6による空気の加湿量に応じて搬入口4jの開度を調整できるように構成してもよい。
【0092】
なお、処理対象物Wの搬送方向が上記実施形態と逆方向となっている場合には、前記搬出口4kの位置に設けられる搬入口を換気口として利用して処理槽4内の換気を行うことが好ましい。すなわち、常に、処理空間S1において処理対象物Wが設置される位置よりも空気の流通方向において下流側に位置する搬入口又は搬出口を換気口として利用してその開度調整をすることが好ましく、その際、処理対象物Wよりも空気の流通方向において上流側に位置する搬入口又は搬出口は対応するシャッタ装置によって閉じておくことが好ましい。
【0093】
空気の流通方向において処理対象物Wが設置される位置よりも上流側に位置する搬入口又は搬出口を通じて処理槽4内の換気を行う場合には、その搬入口又は搬出口を通じて外部から処理槽4内に取り込まれた空気の温湿度が局所的に異なる状態でその空気が処理対象物Wに当たる虞があり、この場合には、処理対象物Wの温湿度の処理条件に不均一が生じる虞がある。これに対して、上記のように搬入口と搬出口のうち処理槽4内に処理対象物Wが設置される位置よりも空気の流通方向において下流側に位置する方を換気口として利用して処理槽4内の換気を行えば、その搬入口又は搬出口を通じて外部から処理槽4内に取り込まれた空気が送風部10によって撹拌されてその温度が比較的均一化された後、処理対象物Wに当たるように送風されるため、上記のような処理対象物Wの温湿度の処理条件の不均一が生じるのを防ぐことができる。
【0094】
そして、以上のように搬入口と搬出口のうち少なくとも一方を換気口として利用して処理槽4内の換気を行う場合には、前記換気口4w及び前記開度調整装置18を省略することが可能であり、その場合には、温湿度処理装置2の構成を簡素化することができる。
【0095】
また、処理工程に用いる搬送装置は、上記したような処理対象物Wを一方向へ送るコンベアのようなものでなくてもよい。
【0096】
例えば、図4に示す上記実施形態の一変形例のように、搬送装置は、処理対象物Wを載せて運搬するための台車112等であってもよい。この変形例の構成では、処理槽24は、中空の箱形に構成されており、その処理槽24の正面側(図4中の左側)の壁部24aには、搬入口と搬出口とを兼ねる開口部24bが形成されているとともに、その開口部24bを開閉するための扉24dが取り付けられている。この扉24dは、手前に開くことが可能となっており、この扉24dを開けて、台車112上に載せられた処理対象物W入りのラック26を開口部24bを通じて処理槽4内の処理空間S1に搬入できる一方、処理空間S1に収められて温湿度処理が行われた後の処理対象物Wがセットされたラック26を開口部24bを通じて処理空間S1から搬出できるようになっている。
【0097】
また、上記実施形態では、処理槽4内のメンテナンスを容易にするために上蓋4h全体を処理槽本体4gに対して着脱可能としたが、処理槽を構成するいずれかの壁部にメンテナンス用の開口が設けられているとともに、その開口を開閉するための扉部が設けられていてもよい。
【0098】
また、換気口4wの位置は、上記実施形態で示した位置以外の種々の位置に設定してもよい。例えば、換気口を処理槽4のうち処理空間S1を形成する壁部に設けてもよい。
【0099】
また、処理槽4内において処理空間S1と空調空間S2とが上下逆に配置されていてもよい。それに伴って、温湿度処理装置2の各構成部の処理槽4に対する設置位置を適宜変更してもよい。
【0100】
また、外面温度センサ12cを上記実施形態で示した湿度検出本体部12bのうち処理空間S1に配置された側の端部以外の部分の外面に取り付けて、その部分の外面温度を検出するようにしてもよい。この場合には、外面温度センサ12cの検出温度と、湿度検出本体部12bのうち作動流体が蒸発する部分の外面温度、すなわち処理空間S1の露点との間に温度差が生じる。このため、外面温度センサ12cに加えて補正手段を設けるとともに、前記温度差を予め測定しておき、補正手段により外面温度センサ12cの検出温度を前記測定した温度差の分補正することによって処理空間S1の露点を求めることができる。この態様では、外面温度センサ12cと補正手段とによって本発明による本体部温度導出部が構成される。
【0101】
また、外面温度センサ12cとして、湿度検出本体部12bの外面温度を非接触で検出するような温度センサを用いてもよい。
【0102】
また、外面温度センサ12cによって湿度検出本体部12bの外面温度を検出する代わりに、湿度検出本体部12bの内面の所定位置に温度センサを取り付けてその湿度検出本体部12bの内面温度を検出してもよい。この場合も、湿度検出本体部12bの内面に取り付ける温度センサと、その温度センサの検出温度を補正して処理空間S1の露点を求める補正手段とによって本発明の本体部温度導出部を構成することが好ましい。
【0103】
また、空間温度センサ12a、湿度検出本体部12b及び外面温度センサ12cを配設する位置は、空調空間S2から処理空間S1への空気の吹き出し口(流出側連通部4e)の近傍の位置に限定されない。
【0104】
また、上記実施形態では、湿度検出本体部12bを直棒状のヒートパイプによって構成したが、これ以外の種々の形状のヒートパイプを湿度検出本体部12bとして用いてもよい。また、湿度検出本体部12bをヒートレーン(登録商標)として知られている蛇行細管型ヒートパイプ又は自励振動式ヒートパイプによって構成してもよい。
【0105】
また、湿度検出本体部12b内に封入された作動流体は、純水以外の液体であってもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、供給配管6cが処理槽4の内部を通るように構成したが、この構成に限定されない。すなわち、処理槽4の外部を通るように供給配管6cを配置するとともに、別途その供給配管6cを加熱する加熱装置を設けて、その加熱装置により供給配管6c内を流れる加湿水を温めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0107】
2 温湿度処理装置
4、24 処理槽
4a 処理空間
4b 空調空間
4c 仕切壁
4j 搬入口
4k 搬出口
4w 換気口
4y 受け部
6 加湿部
8 加熱部
10 送風部
12a 空間温度センサ(空間温度検出部)
12b 湿度検出本体部
12c 外面温度センサ(本体部温度導出部)
12d 演算部
14 搬入口シャッタ装置
16 搬出口シャッタ装置
18 開度調整装置
W 処理対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を一定の温湿度条件の雰囲気に曝す処理工程に用いられる温湿度処理装置であって、
前記処理対象物を搬入可能な処理空間が内部に設けられた処理槽と、
前記処理空間の温度を検出する空間温度検出部と、
前記処理空間と前記処理槽の外部空間とに跨って設けられ、前記処理空間が前記外部空間よりも高温の場合に、内部に封入された作動流体が前記処理空間に配置された側の内部で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が前記外部空間に配置された側の内部で凝縮するヒートパイプ現象を生じ得るように構成された湿度検出本体部と、
前記湿度検出本体部のうち前記作動流体が蒸発する部分の温度を導出する本体部温度導出部と、
前記空間温度検出部によって検出される前記処理空間の温度と前記本体部温度導出部によって導出される前記湿度検出本体部の温度とに基づいて、前記処理空間の湿度を算出する演算部と、
前記処理槽内に設けられ、前記空間温度検出部によって検出される前記処理空間の温度に基づいて空気を加熱可能な加熱部と、
前記処理槽内に設けられ、前記演算部によって算出される前記処理空間の湿度に基づいて空気を加湿可能な加湿部とを備え、
前記処理槽には、その処理槽の内外で換気を行うための換気口が設けられている、温湿度処理装置。
【請求項2】
前記加熱部による空気の加熱量と前記加湿部による空気の加湿量とに応じて前記換気口の開度を調整可能な開度調整装置を備える、請求項1に記載の温湿度処理装置。
【請求項3】
前記処理槽内には、前記処理空間との間に仕切壁を隔てて配置され、前記加熱部及び前記加湿部が設置される空調空間が設けられているとともに、その空調空間と前記処理空間との間で空気を循環させる送風部が設けられ、
前記換気口は、前記処理槽内において前記処理対象物が設置される位置よりも空気の流通方向において下流側で、かつ、前記送風部が設置される位置よりも空気の流通方向において上流側の位置に配設されている、請求項1又は2に記載の温湿度処理装置。
【請求項4】
前記処理空間を形成する前記処理槽の壁部のうち互いに対向する位置には、前記処理対象物を一方向へ送る搬送装置によって前記処理空間への前記処理対象物の搬入及び前記処理空間からの前記処理対象物の搬出が可能なように搬入口と搬出口とが設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の温湿度処理装置。
【請求項5】
前記搬入口を開閉可能に前記処理槽に設けられた搬入口シャッタ装置と、
前記搬出口を開閉可能に前記処理槽に設けられた搬出口シャッタ装置とを備え、
前記搬入口シャッタ装置と前記搬出口シャッタ装置のうち少なくとも一方のシャッタ装置は、そのシャッタ装置が開閉する前記搬入口又は前記搬出口の開度を、前記加熱部による空気の加熱量と前記加湿部による空気の加湿量とに応じて調整可能に構成されている、請求項4に記載の温湿度処理装置。
【請求項6】
前記湿度検出本体部のうち前記処理空間に配置された部分は、前記搬送装置による前記処理対象物の搬送経路の上方に配置されており、
前記処理空間において、前記湿度検出本体部のうち当該処理空間に配置された部分の下方で、かつ、前記搬送装置による前記処理対象物の搬送経路の上方の位置には、前記湿度検出本体部から滴下する結露水を受けるための受け部が設けられている、請求項4又は5に記載の温湿度処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−223789(P2010−223789A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71950(P2009−71950)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】