説明

温熱材用包材、およびこれを用いた発熱体および温熱材

【課題】温熱材の温度変化に対して粘着力の変動が少なく、発熱前および使用中において十分な粘着力を有し、使用後も剥がしやすい粘着性の温熱材用包材を提供する。さらに、低温条件下においても温熱材を貼着するのに必要な粘着力を有する粘着性の温熱材用包材を提供する。また、時間が経過した温熱材においても発熱前および使用中において十分な粘着力を有し、使用後も剥がしやすい粘着性の温熱材用包材を提供する。さらに、これを用いた発熱体および温熱材を提供する。
【解決手段】温熱材を被着体に貼着固定するための包材であって、該包材を構成する基材が少なくとも低密度ポリエチレンフィルム層とバリアフィルム層とを有する積層フィルムからなり、該基材上に設けられた粘着剤層を構成する粘着剤が、スチレン系ブロック共重合体およびにこれらの水素化体からなる群から選ばれる1種以上の重合体(A)を含有することを特徴とする温熱材用包材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱材用粘着包材、およびこれを用いた発熱体および温熱材に関する。さらに詳しくは、例えば衣類や身体の任意の所定箇所に自在に貼着でき、使用中から使用後の接着力の変動が少なく、かつ使用後も剥がしやすい、温熱材用包材、発熱体および温熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣類や身体等に自在に貼着でき、温熱効果を与える温熱材用の粘着剤や粘着包材等には、発熱中に接着力が増大するため、発熱(使用)後に剥がす際に、剥がしにくい、衣類に粘着剤が残る、衣類を傷める等の欠点があった。これらの欠点を解決するために、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを主体とする特定の放射状ブロック共重合体から構成される粘着剤が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、特許文献1記載の粘着剤によれば発熱(50〜60℃)後、温度を常温(23℃)に下げた場合の粘着力を、発熱前の粘着力の4倍以下にすることができる旨の開示がある。しかし、この粘着剤では、逆に発熱中(温熱材使用中)の粘着力は、発熱前および発熱後初期の粘着力に比べて著しく低下して、接着している部位の一部または全部が使用中に剥がれるという不都合が生じる。これは、温熱材使用時の温度上昇によって、該包材の基材中へ粘着剤の低分子量成分の少なくとも一部分が移行することにより、粘着力が急激に低下することによるものである。
また、温熱材を使用することなく時間(1〜3年)が経過した後には、温熱材使用中に粘着力がさらに大きく低下し、接着している部位の一部または全部が使用中に剥がれるという不都合が生じる。これは、時間経過によって、該包材の基材中へ粘着剤の低分子量成分の少なくとも一部分が徐々に移行することにより、粘着力が低下することによるものである。
【0004】
また、フィルム、不織布、樹脂成形品等の接着に用いられるホットメルト粘着剤組成物として、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体またはスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体に、粘着付与樹脂成分およびプロセスオイル等の液状可塑剤その他の添加剤を配合してなるもの等が知られている(例えば、特許文献2)。
【0005】
しかし、特許文献2記載の組成物では、高温条件下(雰囲気温度60℃)では十分な粘着性が得られるが、低温条件下(雰囲気温度0℃)においては柔軟性が大きく低下し、十分な粘着性が得られないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平7−8517号公報
【特許文献2】特開2002−356665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、温熱材の温度変化に対して粘着力の変動が少なく、発熱前および使用中において十分な粘着力を有し、使用後も剥がしやすい粘着性の温熱材用包材、発熱体および温熱材の提供を目的とする。さらに、低温条件下(雰囲気温度0℃)においても温熱材を貼着するのに必要な粘着力を有する粘着性の温熱材用包材、発熱体および温熱材を提供することを目的とする。また、時間(1〜3年)が経過した温熱材においても発熱前および使用中において十分な粘着力を有し、使用後も剥がしやすい粘着性の温熱材用包材、発熱体および温熱材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
(1)温熱材を被着体に貼着固定するための包材であって、該包材を構成する基材が少なくとも低密度ポリエチレンフィルム層とバリアフィルム層とを有する積層フィルムからなり、該基材上に設けられた粘着剤層を構成する粘着剤が、スチレン系ブロック共重合体およびこれらの水素化体からなる群から選ばれる1種以上の重合体(A)を含有することを特徴とする温熱材用包材;
(2)前記(1)の温熱材用包材を備えたことを特徴とする発熱体;および
(3)前記(2)の発熱体を備えたことを特徴とする温熱材
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の温熱材用包材は、前記のような構成をとり、常温から高温だけでなく低温領域においても高い粘着性を発現することができる。したがって、本発明の温熱材用包材は、温熱材に起因する温度変化に対して粘着力の変動が少なく、発熱前および使用中において十分な粘着力を有し、使用後も剥がしやすい粘着剤を用いているので、温熱材用包材として発熱体および温熱材を製造するために使用するのに特に適している。また、本発明の温熱材用包材に用いられる粘着剤は、従来のホットメルト粘着剤に比べ、凝集力に優れ、低温条件下(雰囲気温度0℃)においても優れた粘着性を有するため、0〜60℃という幅広い温度範囲においてバランスのよい粘着性を示すので、本発明の包材は温熱材用として特に有用である。さらに、時間(1〜3年)が経過した温熱材においても発熱前および使用中において十分な粘着力を有し、使用後も剥がしやすい粘着性の温熱材用包材として特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の温熱材用包材は、基材とその上に設けられた粘着剤層とを有する。
【0011】
本発明の包材を構成する基材は、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム層とバリアフィルム層とを有する積層フィルムである。
LDPEとしては、密度0.87以上0.94未満のものが用いられ、好ましくは0.88以上0.93未満である。ここで、密度はJIS K7112に基づき測定された値であり、単位はg/cmである。
【0012】
バリアフィルム層としては結晶性ポリオレフィン、エチレン共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等からなる群より選ばれる少なくとも1層のフィルムが挙げられる。
【0013】
結晶性ポリオレフィンとしては、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、結晶性ポリプロピレン等が挙げられる。
エチレン共重合体としては、例えばエチレン−ビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニルの共重合体(EVA)およびEVAの部分鹸化体等が挙げられる。
ポリエステルとしては、例えば炭素数2〜40のジカルボン酸(脂肪族、脂環式および芳香環含有ジカルボン酸等)とジオール(炭素数2〜8のアルキレングリコール等)との縮合物等が挙げられ、具体例としては[ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等]が挙げられる。
ポリアミドとしては、例えばラクタム開環重合体、アミノカルボン酸の自己重縮合体およびジアミンとジカルボン酸の脱水重縮合体、およびこれらの重(縮)合体を構成するモノマー単位が2種類以上である共重合ナイロンが挙げられ、具体例としては[6ナイロン、12ナイロン、6,6ナイロン等]が挙げられる。
ポリウレタンとしては、ポリオール(ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、重合体ポリオール等)とポリイソシアネート(炭素数6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート等)との重付加物が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、加工性、バリア性の観点から結晶性ポリオレフィン、ポリエステルであり、より好ましいものはHDPEである。
なお、HDPEとしては、密度0.94以上0.99未満のものが用いられ、好ましくは0.95以上0.98未満である。また、結晶性ポリプロピレンとしては、密度0.88以上0.95未満のものが用いられ、好ましくは0.89以上0.94未満である。
【0014】
LDPE層は、LDPEフィルム中へ粘着剤の低分子量成分の少なくとも一部分が移行することにより、粘着力を低下させ、使用後に温熱材を剥がしやすくするという効果をもたらす。
バリアフィルム層は粘着剤中の低分子量成分を通しにくい層であり、さらなる粘着力の低下を抑えて、温熱材を使用するのに最適な粘着力を保つ。
したがって、本発明の包材は、粘着剤をLDPEフィルム層に設け、次いでバリアフィルム層を設けることが好ましい。
【0015】
前記基材には、積層フィルム間の接着性を確保するため必要に応じて、フィルム上に接着性プライマー処理を施したり、接着性樹脂をフィルム間に積層したりすることができる。
さらに以下の一般的な汎用樹脂からなるフィルムを積層することができる。例えば、オレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン等)(共)重合体、アクリル樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。
また、基材は、粘着剤層の粘着強度、温度差安定性、耐久性、経時安定性等を考慮すると、種々のポリエチレン、例えばメタロセン系統のシングルサイト触媒によって重合されたポリエチレン等を適宜組み合わせて使用した積層フィルムが好ましい。
【0016】
本発明の基材には、2層の積層フィルム層(例えばLDPE/HDPE)、3層の積層フィルム層(例えば、LDPE/HDPE/LDPE)、4層の積層フィルム層(例えば、LDPE/結晶性ポリプロピレン/HDPE/LDPE)、5層以上の積層フィルム層(例えば、LDPE/結晶性ポリプロピレン/LDPE/HDPE/LDPE、LDPE/PET(ポリエチレンテレフタレート)/LDPE/HDPE/LDPE)を積層することができる。
基材は、さらにシーラントフィルム層を有することが好ましい。具体的には、LDPE、特に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)/HDPE/メタロセン系LLDPE(MLL)の3層積層フィルムやLLDPE/HDPE/LLDPE/MLLの4層積層フィルムが、粘着強度、温度差安定性、耐久性等の点で最も好ましい。ここで、MLLはシーラントフィルム層である。
【0017】
また、基材として使用される積層フィルムの厚さは20〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは30〜80μmで、特に好ましくは50〜70μmである。積層フィルムを構成するLDPEフィルム層の厚さは、通常1〜50μm、好ましくは3〜30μm、さらに好ましくは5〜20μm、である。また、HDPEフィルム層の厚さは、通常1〜50μm、好ましくは3〜45μm、さらに好ましくは5〜40μmである。
【0018】
粘着剤を構成するスチレン系ブロック共重合体の構成単量体としてはスチレンであり、
さらにスチレンと共にブロック共重合体を構成する単量体(a1)としては{炭素数4〜12のアルカジエン、(例えばブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエン、シクロペンタジエンおよびシクロヘキサジエン等)}、イソブチレン等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、凝集力の観点から、炭素数4〜8のもの、さらに好ましいのはブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエンおよびイソブチレンであり、特に好ましいのはブタジエン、イソプレンおよびイソブチレンである。
【0019】
(A)はスチレンおよびブロック共重合体を構成する単量体(a1)以外の単量体(a2)を構成単量体として含有してもよい。(a2)としては、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体〔(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、スルホン酸含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸塩等〕、その他の不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体〔クロトン酸、桂皮酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびこれらのエステル、アミド等〕、その他のビニル系モノマー〔硫酸エステル基含有ビニル系モノマー、リン酸基含有ビニル系モノマー、アミド基含有ビニル系モノマー、ヒドロキシル基含有ビニル系モノマー、ポリオキシアルキレン鎖含有ビニル系モノマー、エポキシ基含有ビニル系モノマー、ハロゲン元素含有ビニル系モノマー〕等が挙げられる。
(a2)を含有する市販品としては、クレイトンポリマー社製の「クレイトンFG1901X」(スチレン割合28%、(a2)成分としてマレイン酸を含有、線状)等が使用できる。
【0020】
(A)の構成単量体のうち、(a2)の質量割合は、通常50%以下であり、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下である。
(A)の構成単量体のうち、スチレンの質量割合は、風合いの観点から(A)の全質量を基準として50質量%以下が好ましい。また粘着性能の観点から5%(以下において特に限定しない限り、%は質量%を表す。)以上が好ましい。
【0021】
(A)として好ましいのは、{スチレンとブタジエンのブロック共重合体、スチレンとイソプレンのブロック共重合体、スチレンと(イソプレン−ブタジエン)のブロック共重合体}およびこれらの水素化体、スチレンとイソブチレンのブロック共重合体であり、より好ましいのは水素化体、スチレンとイソブチレンのブロック共重合体である。
本発明における(A)のうちの「水素化体」とは、アルカジエンブロックのみが水素化されたものである。
【0022】
ブロック共重合体の形態としては、ジブロックまたはトリブロック、マルチブロック等が挙げられる。これらのうち、好ましいのは、凝集力の観点からトリブロックである。
また、(A)としては線状ポリマーおよび放射状ポリマーがあるが、特に限定されるものではない。
【0023】
(A)の市販品としては、クラレ社製の「セプトン2063」(スチレン割合13%、トリブロック、線状)、クレイトンポリマー社製の「クレイトンG1652」(スチレン割合29%、トリブロック、線状)、カネカ社製「シブスター102T」(スチレン割合15%、トリブロック、線状)等が使用できる。
(A)の40℃における粘度は、凝集力の観点から、好ましくは1×10Pa・sを超える粘度である。
40℃における粘度は、島津製 島津フローテスターCFT−500Dを使用し、荷重2.16kgにて測定した値である。ただし、該フローテスターの測定上限は、1×10Pa・sであり、測定値が測定上限以上の場合は、1×10Pa・sを超える粘度とした。
(A)の重量平均分子量(以下Mwと記す)は、好ましくは10,000〜1,000,000であり、より好ましくは20,000〜500,000である。Mwは、ポリスチレンを標準としてゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法で求められる値である。以下に記載する数平均分子量(以下Mnと記す)も同様である。
粘着剤は、さらに、軟化点が75〜120℃である粘着付与樹脂(B)、軟化点が50℃以下である粘着付与樹脂(C)ならびに芳香族含有モノマーを必須構成単量体とし、ガラス転移温度が30℃以下である単独重合体および/またはランダム共重合体(D)を含有することができる。
【0024】
(B)の例としては、ロジン、ロジン誘導体樹脂(例えば、重合ロジン、ロジンエステル等)、テルペン系樹脂〔例えば、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等の重合体および共重合体、ならびにこれらのフェノ−ル変性体等〕、クマロン−インデン樹脂等の石油樹脂〔例えば、C5留分、C9留分、C5/C9留分、ジシクロペンタジエン等の重合体および共重合体〕、およびこれらの樹脂の水素化体から選ばれる1種以上の樹脂であって、そのような軟化点を有するものが挙げられる。
【0025】
これらの粘着付与樹脂は、凝集力および高温での良好な粘着性能という観点からすると、軟化点が75℃以上であることが好ましい。また、柔軟性、低温での良好な粘着性能という観点からは、軟化点が120℃以下であることが好ましい。特に好ましくは軟化点は80〜115℃である。軟化点はJIS K6863の方法で測定できる。
【0026】
使用できる市販品の例としては、イーストマンケミカルジャパン社製の「リガライトR−1100」(C−9系水添石油樹脂)、「リガライトR−1090」(C−9系水添石油樹脂)、「イーストタックC100」(C−5系水添石油樹脂)、「フォーラルAXE」(水添ロジン);荒川化学社製の「アルコンP−90」(水添石油樹脂)、「アルコンP−100」(水添石油樹脂)、「パインクリスタルKE−311」(ロジン誘導体)、「パインクリスタルKE−359」(ロジン誘導体)等が挙げられる。
【0027】
(C)の例としては、ロジン、ロジン誘導体樹脂(例えば、重合ロジン、ロジンエステル等)、テルペン系樹脂〔例えば、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等の重合体および共重合体、およびこれらのフェノール変性体等〕、クマロン−インデン樹脂等の石油樹脂〔例えば、C5留分、C9留分、C5/C9留分、ジシクロペンタジエン等の重合体および共重合体〕、およびこれらの樹脂の水素化体から選ばれる1種以上の樹脂であって、そのような軟化点を有するものが挙げられる。
【0028】
これらのうち、極性基材(ポリエステル、ナイロン等)への密着性向上の観点から、好ましいものは、ロジン、ロジン誘導体樹脂、テルペン系樹脂およびこれらの水素化体であり、より好ましいものはテルペン系樹脂のフェノール変性体、テルペン系樹脂のフェノール変性体の水素化体であり、特に好ましいものはテルペン系樹脂のフェノール変性体である。
【0029】
使用できる市販品の例としては、イーストマンケミカルジャパン社製「リガライトR−1010」(C−9系水添石油樹脂);ヤスハラケミカル社製の「YSポリスタ−T−30」(テルペンフェノ−ル樹脂)等が挙げられる。
【0030】
(C)の軟化点は、50℃以下であり、好ましくは−40〜45℃であり、さらに好ましくは−35〜40℃である。軟化点が50℃を超えると粘着剤の柔軟性が低下し、優れた粘着性能を発現しない。
(C)の軟化点の測定法は(B)の軟化点の測定法に準じて行うが、25℃以下の軟化点の測定においては、熱媒体としてエチレングリコールまたはメタノールまたはこれらの混合物を用い、温度計はJIS B7410のFP71を用いることができる。
【0031】
前記の、「軟化点が75〜120℃である粘着付与樹脂」と「軟化点が50℃以下である粘着付与樹脂」との違いは軟化点である。すなわち、本発明の温熱材用包材の粘着剤層を構成する接着剤は、粘着付与樹脂として軟化点が相違する二種の粘着付与樹脂を使用するものである。軟化点は、樹脂の種類、分子量、構成成分、化学構造等によって決まるので、両粘着付与樹脂の種類は異なっていてもよく、また、種類は同じであって、分子量、構成成分、化学構造等が相違するために軟化点が相違するものであってもよい。
【0032】
(D)としては、付加重合体(D1)および重縮合体(D2)が使用できる。
(D1)の必須構成単量体である芳香環含有モノマー(d1)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンおよびスチレン誘導体〔例えばアルキル基の炭素数1〜4またはそれ以上のアルキルスチレン(ビニルトルエン、エチルスチレン、t−ブチルスチレン等)、ハロゲン化スチレン(例えばクロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン等)、アミノ基含有スチレン(例えばN,N−ジエチルアミノスチレン等)、ニトリル基含有スチレン(例えばシアノスチレン等)、および多官能芳香族ビニルモノマー(ジビニルベンゼン等)等〕が挙げられる。これらのうち好ましいものはα−メチルスチレンおよびスチレン、より好ましいものはスチレンである。
【0033】
(d1)と共重合する他のモノマーとして好ましいものは、ニトリル基含有ビニルモノマー((メタ)アクリロニトリル等)、ヒドロキシル基含有ビニルモノマー〔2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシ(重合度2〜10)アルキレン(炭素数2〜4)モノ(メタ)アクリレート等〕、脂肪族不飽和炭化水素(1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンおよび3−ブチル−1,3−オクタジエン等)、(無水)不飽和カルボン酸およびそのアルキル(炭素数1〜12)エステル〔(メタ)アクリル酸、(イソ)クロトン酸、桂皮酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、(無水)イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルおよびフマール酸モノオレイルエステル〕、アルキル基の炭素数が1〜24のアルキル若しくはシクロアルキル若しくはアミノアルキルの(メタ)アクリレート〔メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシル(メタ)アクリレート等〕、不飽和ジカルボン酸ジアルキル(炭素数1〜20)エステル(ジエチルマレートおよびジブチルフマレート等)であり、より好ましいものは(メタ)アクリロニトリル、ブタジエン、(メタ)アクリル酸およびアルキル(メタ)アクリレート(炭素数が12〜18)である。
(D1)の構成単量体のうち、(d1)の質量割合は、(D1)の全質量を基準にして通常50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。
【0034】
(D1)の具体例としては、Mnが200〜10,000で且つTgが30℃以上のスチレン系樹脂〔例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の(共)重合体〕等)から選ばれる1種以上の樹脂が挙げられる。これらのうち好ましいものはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの(共)重合体であり、より好ましいものはスチレンの(共)重合体である。
市販品としては三洋化成工業社製「レジットS−94」(スチレン重合体、Tg=40℃、Mn=4,000);イーストマンケミカルジャパン社製「エンデックス155」(α−メチルスチレン共重合体、Tg=100℃、Mn=6,000)等が使用できる。
Tgは示差走査熱量測定(DSC)によって測定できる。
【0035】
(D2)としてはポリフェニレンオキサイドおよびこれらの変性体等、キシレン系樹脂(例えば、キシレンホルムアルデヒド樹脂)が挙げられる。
(D2)のうち好ましいものはポリフェニレンオキサイドおよびその変性体である。好ましいMnは500〜10,000である。
市販品としては日本ジーイープラスチックス社製の「ノリルPPO SA−120」(ポリフェニレンオキサイド、Tg=160℃、Mn=2,400)等が使用できる。
【0036】
(D)のTgが30℃未満であると凝集力が不足しがちである。
また、(D)のTgは、塗工性の観点から200℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以下である。
(D)の芳香環含量は好ましくは40〜95%である。芳香環含量が40%以上であると凝集力に優れ、粘着力が向上する傾向にある。芳香環含量は以下の式で計算する。
芳香環含量=(芳香環に含まれる元素の質量/分子全体の質量)×100
(D)のMnは、凝集力および塗工性の観点から、好ましくは500〜10,000であり、より好ましくは1,000〜8,000である。
(D)の製造方法としては特に限定されるものではないが、必須構成単量体および必要によりその他のモノマーを公知の重合方法(ラジカル重合またはカチオン重合、脱水縮合、熱重合等)で重合することにより得ることができる。(D)のTgの設計については、Tgの予測計算式(例えば、藤本武彦監修「高分子薬剤入門 第2版」916頁)を利用することにより、構成単量体の組成、組成比を設定することができる。
【0037】
粘着剤における(A)〜(D)の含有比率は、(A)〜(D)の合計質量に基づき、好ましくは(A)が2〜53%、(B)が3〜70%、(C)が2〜60%、(D)が0.1〜30%である。より好ましくは(A)が3〜50%、(B)が5〜65%、(C)が3〜55%、(D)が0.2〜25%である。特に好ましくは、(A)が5〜45%、(B)が10〜60%、(C)が5〜50%、(D)が0.5〜20%である。
(A)が2%以上であると凝集力が良好であり、53%以下であると塗工性が良好である。(B)が3%以上であると高温での粘着性が良好であり、70%以下であると柔軟性が良好である。(C)が2%以上であると柔軟性および低温での粘着性が良好であり、60%以下であると凝集力が良好である。(D)が0.1%以上であると凝集力が良好であり、30%以下であると柔軟性が良好である。
【0038】
また、粘着剤は、必要に応じて不飽和オレフィン重合体(E)、可塑剤(F)およびその他の添加剤(G)を含有することができる。
粘着剤において上記(A)の40℃における粘度が1×10Pa・sを超える場合には、さらに40℃における粘度が1×10Pa・s以下、好ましくは1〜5×10Pa・s、より好ましくは2〜1×10Pa・s、特に好ましくは3〜5×10Pa・sの不飽和オレフィン重合体(E)を含有することが好ましい。
(E)を加えると樹脂の柔軟性と凝集力とがともに向上し、より望ましい粘着性能を得ることができる。
(E)としては例えばポリα−オレフィン{ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンおよび/またはプロピレンを必須構成単量体とする(共)重合体}、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB、SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI、SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIB、SIBS)、スチレン−イソブチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)およびこれらの水素化体が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、ポリイソプレン、ポリブタジエン、SB、SBS、SI、SIS、SIB、SIBS、スチレン−イソブチレンブロック共重合体、SBRおよびこれらの水素化体であり、より好ましいものは、SB、SBS、SI、SISおよびこれらの水素化体である。粘着剤における(E)の含有比率は、粘着剤の総質量に基づき、通常30%以下、好ましくは0.1〜30%であり、さらに好ましくは1〜20%である。
【0039】
可塑剤(F)としては、例えばパラフィン系、ナフテン系若しくは芳香族系のプロセスオイル、天然若しくは合成ワックス〔パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量ポリオレフィンワックス等〕およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、熱安定性および耐光性に優れた粘着剤が得られる観点からパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルおよびこれらの2種以上の混合物である。市販品としては、出光興産社製の「ダイアナプロセスオイルPW−90」(パラフィン系)、「ダイアナプロセスオイルNS−100」(ナフテン系)が挙げられる。粘着剤における(F)の含有比率は、粘着剤の総質量に基づき、通常30%以下、好ましくは0.1〜30%であり、より好ましくは1〜20%である。
【0040】
その他の添加剤(G)としては、酸化防止剤{ヒンダードフェノール系化合物(ペンタエリスチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等)、リン系化合物(トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等)、イオウ系化合物(ペンタエリスチル−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート等)等}、紫外線吸収剤{ベンゾトリアゾール系化合物(2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等)}、光安定剤{ヒンダードアミン系化合物((ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等)}、吸着剤(アルミナ、シリカゲル、モレキュラーシーブ等)、有機もしくは無機充填剤(タルク、マイカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化カルシウム等)、顔料、染料および香料等が挙げられる。
【0041】
(G)のそれぞれの添加量は、粘着剤の質量に基づいて、酸化防止剤、紫外線吸収剤または光安定剤については、通常5%以下、好ましくは0.005〜4%、さらに好ましくは0.1〜3%であり、吸着剤または充填剤については、通常40%以下、好ましくは0.1〜30%、さらに好ましくは0.5〜15%であり、顔料、染料または香料は、通常2%以下、好ましくは0.0015〜1.5%、さらに好ましくは0.015〜1%である。
【0042】
本発明の温熱材用包材の粘着剤層を構成する粘着剤の製造方法としては、(i)粘着剤を構成する各成分を加熱溶融混合する方法、(ii)前記各成分を有機溶剤(トルエンまたはキシレン等)とともに加熱溶融して均一に混合した後に溶剤を留去する方法、等を適用することができる。好ましくは(i)の方法である。
【0043】
また、混合装置としては、公知の加熱溶融混合機等を用いることができる。加熱溶融混合機としては、圧縮性の高いスクリュー状またはリボン状の攪拌機を装備する、混合機、反応混合槽、ニーダー、一軸もしくは多軸押出機またはミキサー等が挙げられるが、その様式や形状等は特に限定されるものではない。混合温度は、80〜200℃が好ましい。また、樹脂劣化を防ぐため、混合は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0044】
このようにして得られる粘着剤において、180℃における溶融粘度は、好ましくは1〜100Pa・sであり、より好ましくは2〜80Pa・sであり、特に好ましくは3〜50Pa・sである。180℃における溶融粘度が1Pa・s以上であると凝集力に優れ、100Pa・s以下であると塗工性が良好となる。
【0045】
180℃における溶融粘度は、以下の方法で測定する。内径16mm×高さ105mmの試験管に約8gのサンプルを投入し、オイルバス中で180℃に20分温調し、SB型粘度計(JIS K7117−1987、SB4号スピンドル、例えば、東機産業社製のBL型粘度計および4号ローター)をセットしてさらに10分温調した後、ローターを回転させ10分後の溶融粘度を読み取る。
【0046】
粘着剤層は、発熱組成物を収容する包材を構成する基材上に粘着剤を適用することにより形成することができる。適用方法としては、例えば(i)溶融して基材に塗工する方法、(ii)粘着剤のフィルム等を基材に接触させてから溶融する方法等が挙げられる。(i)の例としては、スパイラル塗工、ロール塗工、スロットコート塗工、コントロールシーム塗工、ビード塗工等の方法が例示できるが、これらに限定されるものではない。また、全面塗工か部分塗工かにかかわらず、塗工量としては、全面塗工に換算して0.1〜500g/mが好ましく、より好ましくは1〜300g/mである。全面塗工換算での塗工量が0.1g/m以上であると十分な粘着力が得られ、500g/m以下であると粘着体の風合いを損なわない。
【0047】
(ii)のフィルムの厚みとしては1〜1,000μmが好ましく、より好ましくは5〜500μmである。フィルムの厚みが1μm以上であると十分な粘着力が得られ、1,000μm以下であると粘着体の風合いを損なわない。
【0048】
塗布温度(℃)は、90℃以上が好ましく、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上であり、また、220℃以下が好ましく、さらに好ましくは200℃以下、特に好ましくは180℃以下である。粘着剤層の形成は、発熱体を形成した後でもよく、発熱体を形成する前でもよい。後者の場合、例えば発熱組成物を収容する包材を構成する基材上に予め粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、これを後述のように充填機で熱シールして袋状にし、そこに発熱組成物を充填して発熱体を形成することができる。また、粘着剤を、離型紙または別のフィルム等の離型材の上に予め塗布した後、これを基材上に圧着転写して粘着層を設けることもできる。
【0049】
本発明の発熱体は、フィルム等の包材およびこれに内包される発熱組成物から構成され、少なくとも片面に本発明の包材を備えている。そして、少なくとも片面が通気性フィルムで構成された袋体の内部に発熱組成物が収納されたものであることが好ましい。通気性フィルムとしては、一般に単層または多層の多孔質フィルム等が用いられ、多孔質フィルム等と不織布等とのラミネートフィルムも好適に用いられる。多孔質フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリフッ化エチレン等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンが好ましく、中でもLLDPEが加工性等の点からより好ましい。これらは単独でまたは組み合わせて用いることができる。多孔質フィルムの孔径は、必要通気量に応じて適宜定められるが、100〜0.01μm以下が好ましく、さらに好ましくは10〜0.05μm以下である。通気性フィルムの厚さは、10〜1,000μmが好ましく、さらに好ましくは20〜500μmである。
【0050】
発熱組成物としては、空気と接触して発熱するものであればどのようなものでもよく、鉄粉等の主剤に、食塩水、活性炭、吸水性樹脂および/またはバーミキュライト等の補助剤を添加した公知の材料が用いられる。
【0051】
本発明の温熱材は、そのほぼ全面に発熱体が配置されていてよく、あるいは、その内部に1以上の発熱体を含んでいてもよい。後者の場合、温熱材には1以上の発熱体を包含する別の支持体(伸縮性不織布等)が用いられる。
【0052】
本発明の温熱材の非限定的な製造方法の例を以下に示す。発熱体を構成する通気性フィルムおよび非通気性フィルム(本発明の温熱材用包材)を長方形(縦10〜20cm、横5〜10cm)等の所定形状に裁断する。裁断された非通気性フィルム上に、予め作製しておいた離型フィルムに塗布された粘着剤を圧着転写して粘着層を設ける。次に、粘着層の離型フィルムが外側にくるようにして、非通気性フィルムを通気性フィルムと重ね合わせ、その周辺部の3つの辺を熱圧着等の手段でシールすることによって袋体を得る。この際、熱圧着に替えて、各フィルムの周辺部にホットメルト剤または通常の粘着剤からなる層を設け、ラミネート等の手段によっても袋体を製造することができる。次に、開口部(まだシールされていない一辺)から発熱組成物を入れた後、開口部を熱圧着等によりシールすること等により、粘着層が設けられた発熱体(即ち、温熱材)が製造される。この場合も、熱圧着に替えて、予め開口部にホットメルト剤または通常の粘着剤からなる層を設けておき、ラミネート等の手段によってシールすることもできる。
【0053】
本発明の温熱材は、衣類や身体の任意の所定個所に自在に貼着できる温熱材(カイロ等)として最適である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
<粘着剤1の調製>
水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合ゴム「セプトン2063」(クラレ社製、スチレン割合13%、トリブロック、線状、40℃で固状)を30重量部、C−9系水添石油樹脂「リガライトR−1100」(イーストマンケミカルジャパン社製、軟化点100℃)を40重量部、テルペンフェノール樹脂「YSポリスタ−T−30」(ヤスハラケミカル社製、軟化点30℃)を15重量部、ポリスチレン樹脂「レジットS−94」(三洋化成工業社製、芳香環含量70%)を2重量部、水添ポリスチレン−イソプレン樹脂「LIR−230」(クラレ社製、40℃粘度10,000Pa・s)を5重量部、ナフテン系プロセスオイル「NS−100」(出光興産社製)を5重量部、ヒンダ−ドフェノール系酸化防止剤「イルガノックス1010」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)を0.5重量部、および、リン系酸化防止剤「アデカスタブ2112」(旭電化工業社製)を0.5重量部、を混合して得た混合物をステンレス製加圧反応容器に投入し、容器内を窒素置換した後、密閉下で160℃まで昇温し、4時間攪拌下で溶融混合を行うことにより、本発明の粘着剤1を得た。
【0056】
<粘着剤2の調製>
水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合ゴム「セプトン2063」(クラレ社製、スチレン割合13%、トリブロック、線状、40℃で固状)を35重量部、C−9系水添石油樹脂「リガライトR−1100」(イーストマンケミカルジャパン社製、軟化点100℃)を35重量部、C−9系水添石油樹脂「リガライトR−1010」(イーストマンケミカルジャパン社製、軟化点10℃)を10重量部、テルペンフェノール樹脂「YSポリスタ−T−30」(ヤスハラケミカル社製、軟化点30℃)を10重量部、ポリスチレン樹脂「エンデックス155」(イーストマンケミカルジャパン社製、芳香環含量70%)を2部、ナフテン系プロセスオイル「NS−100」(出光興産社製)を5重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤「イルガノックス1010」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)を0.5重量部、および、リン系酸化防止剤「アデカスタブ2112」(旭電化工業社製)0.5重量部、を混合して得た混合物を調製例1と同様の方法で溶融混合を行うことにより、本発明の粘着剤2を得た。
【0057】
<粘着剤3の調製>
C−9系水添石油樹脂「リガライトR−1100」(イーストマンケミカルジャパン社製、軟化点100℃)40重量部を45重量部、C−9系水添石油樹脂「リガライトR−1010」(イーストマンケミカルジャパン社製、軟化点10℃)15重量部をテルペンフェノール樹脂「YSポリスタ−T−30」(ヤスハラケミカル社製、軟化点30℃)10重量部用いること以外は粘着剤の調製例1と同様の方法で本発明の粘着剤3を得た。
【0058】
<粘着剤4の調製>
水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体「セプトン2063」(クラレ社製、スチレン割合13%、トリブロック、線状、40℃で固状)を35重量部、C−9系水添石油樹脂「リガライトR−1100」(イーストマンケミカルジャパン社製、軟化点110℃)を50重量部、ナフテン系プロセスオイル「NS−100」(出光興産社製)を15重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤「イルガノックス1010」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)を0.5重量部、およびリン系酸化防止剤「アデカスタブ2112」(旭電化工業社製)を0.5重量部、用いたこと以外は粘着剤の調製例1と同様の方法で本発明の粘着剤4を得た。
【0059】
<粘着剤5の調製>
比較のため、市販の2液溶剤型アクリル系感圧性粘着剤(「オリバイン BPS5213K OP」および対応する硬化剤「オリバイン BHS8515」、東洋インキ製造社製)を商品説明書に記載の指示のとおりに用いて比較のための粘着剤5を得た。
【0060】
<包材の製造例>
基材として、本発明の(1)LLDPE/HDPE/MLL(15/30/15μm)からなる積層フィルム(フィルム1)と(2)LLDPE/HDPE/LLDPE/MLL(10/10/25/15μm)からなる積層フィルム(フィルム2)および比較のための(3)LLDPE/MLL(55/15μm)からなる積層フィルム(フィルム3)を使用して、各々の粘着剤1〜5からなる粘着剤層を有する、本発明の温熱材用包材1〜6と比較のための包材7〜10を製造した。なお、使用したLLDPEの密度は0.925、HDPEの密度は0.960、MLLの密度は0.901(g/cm)であった。
粘着剤と基材との組み合わせを表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
<180°剥離強度による包材の評価>
上記の粘着性包材1〜10の所定温度における180°剥離強度は以下のようにして測定した。
・被着体 :金巾3号
・試験片寸法:巾25mm×長さ150mm
・測定方法 :以下1)〜4)の方法で測定した。
1)0℃剥離強度:JIS Z0237−2000「粘着テープ、粘着シート試験方法」に基づき、粘着剤を施工したポリエチレンフィルム(粘着フィルム)とSUS板に固定した金巾3号とを0℃の雰囲気下、2kgローラーの1往復で貼り合わせ、30分後に0℃における180°剥離強度を測定する。
2)60℃剥離強度:上記1)と同様にして23℃の雰囲気下で貼り合わせた後、測定環境温度を60℃とし、30分後に60℃における180°剥離強度を測定する。
3)60℃→5℃剥離強度:上記1)と同様にして23℃の雰囲気下で貼り合わせた後、環境温度を60℃とし、30分後に60℃の雰囲気下で2kgローラーの1往復で荷重を加える。次いで、測定環境温度を5℃とし、30分後に180°剥離強度を5℃で測定する。
4)60℃剥離強度(50℃×1ヵ月保管):粘着フィルムを50℃で1ヵ月間保管した後、上記2)と同様にして測定する。50℃×1ヵ月保管は、常温で1年以上経過したものに相当する。
【0063】
結果を表2に示す。なお、単位はN/25mmである。
【0064】
【表2】

【0065】
<剥離強度の評価基準>
・0℃剥離強度は1以上が最適である。1N/25mm未満では温熱材の初期落下が生じる可能性がある。
・60℃剥離強度は3.5〜4.5N/25mmが最適である。3N未満では温熱材の剥がれ、または使用中落下が生じる可能性がある。
・60℃→5℃剥離強度は3.5〜5.5N/25mmが最適である。6N/25mmを超えると温熱材使用後剥がしにくく感じたり、衣類を傷めたりする可能性がある。
【0066】
<温熱材の製造例>
上記で製造した各包材を用いて、温熱材を製造した包材上の粘着層は離型紙でカバーされたものを用いた。また、離型紙は表面にシリコーン塗工(2g/m)したポリエチレンフィルム(20μm厚)を積層した上質紙(65μm厚)を使用した。
通気性包材としては、ナイロン不織布(35g/m)とポリエチレン多孔質フィルム(50μm厚)との積層シート(通気度(旭精工社製の王研式デジタル標本型透湿度・平滑度試験機、形式EG.6(JIS P8117を参考とした試験法)により測定)20,000秒/100cc、透湿度(JIS K7129により測定)300g/m・day)を使用した。
具体的には、前記の各包材と通気性包材とを各々9.5cm×13cmの大きさにして、各包材のMLLフィルム側と通気性包材のポリエチレン多孔質フィルム側とを内側にして重ね合わせて三辺をヒートシールし、一辺が開口した袋を形成した。この袋に発熱組成物(鉄粉55重量部、活性炭10重量部、高吸水性樹脂(ポリアクリル酸ナトリウム)2重量部、塩化ナトリウム3重量部、水30重量部の混合物)を1袋あたり20g入れ、開口部をヒートシールして発熱体を得た。この発熱体をガスバリア性の外袋中に密封し、使用時まで保存した。
以上から、本発明の包材1〜6は比較のための包材7〜10に対して、各温度条件における剥離強度のバランスが優れていることが分かる。
【0067】
<使用試験における粘着性の評価>
上記で製造した各温熱材を、被験者男性が着用している綿100%の肌着(丸首シャツ)の腹部に貼付し、その上から綿100%のトレーナーを重ね着した状態で発熱を開始させた。温熱材は約12時間発熱し、粘着剤と肌着との間の温度を測定したところ、最高温度は平均52℃であった。その後、発熱が終了し、発熱体が室温まで冷えてから、温熱材を肌着から剥がした。この実験室は室温23℃であった。発熱開始から温熱材を剥がすまでの間、被験者は、室内で、立つ、座る、歩く、本を読む等の通常の日常的動作をし、以下の基準にしたがって粘着力を評価した。
【0068】
評価基準
初期粘着力:良=◎、不良=×
使用中の粘着力:良=◎、わずかに剥がれあり=○、剥がれあり=△、落下=×
使用後:剥がしやすい=◎、剥がしにくい=×
結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
以上から、本発明の温熱材1〜6は比較のための温熱材7〜10に対して、温熱材として使用したとき使用初期から使用後にいたるまで優れた性能を示すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温熱材を被着体に貼着固定するための包材であって、該包材を構成する基材が少なくとも低密度ポリエチレンフィルム層とバリアフィルム層とを有する積層フィルムからなり、該基材上に設けられた粘着剤層を構成する粘着剤が、スチレン系ブロック共重合体およびこれらの水素化体からなる群から選ばれる1種以上の重合体(A)を含有することを特徴とする温熱材用包材。
【請求項2】
前記バリアフィルム層が、結晶性ポリオレフィン、エチレン共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1層のフィルムである請求項1記載の温熱材用包材。
【請求項3】
該積層フィルムが、該粘着剤層に接した低密度ポリエチレンフィルム層とシーラントフィルム層との間にバリアフィルム層を含む少なくとも1層のフィルムを有する構造からなる積層フィルムである請求項1または2記載の温熱材用包材。
【請求項4】
該シーラントフィルム層が、シングルサイト触媒によって重合されたポリエチレンフィルムからなる請求項3記載の温熱材用包材。
【請求項5】
該粘着剤が、さらに下記(B)〜(D)を含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の温熱材用包材。
(B)軟化点が75〜120℃である粘着付与樹脂
(C)軟化点が50℃以下である粘着付与樹脂
(D)芳香環含有モノマーを必須構成単量体とし、ガラス転移温度が30℃以上である単独重合体および/またはランダム共重合体。
【請求項6】
前記(A)の重合体の40℃における粘度が1×10Pa・sを超え、さらに、40℃における粘度が1×10Pa・s以下のオレフィン重合体(E)を含有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の温熱材用包材。
【請求項7】
前記(C)の粘着付与樹脂がフェノールを必須構成単量体として含む粘着付与樹脂である、請求項5または6記載の温熱材用包材。
【請求項8】
粘着剤層が、離型材で覆われている、請求項1〜7のいずれか1項記載の温熱材用包材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の温熱材用包材を備えたことを特徴とする発熱体。
【請求項10】
発熱体が、その片面が通気性フィルムで構成された袋体に発熱組成物が収容されていることを特徴とする発熱体である、請求項9記載の発熱体。
【請求項11】
請求項9または10記載の発熱体を備えたことを特徴とする温熱材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温熱材を被着体に貼着固定するための包材であって、該包材を構成する基材が少なくとも低密度ポリエチレンフィルム層とバリアフィルム層とを有する積層フィルムからなり、該基材上に設けられた粘着剤層を構成する粘着剤が、スチレン系ブロック共重合体およびこれらの水素化体からなる群から選ばれる1種以上の重合体(A)を含有することを特徴とする温熱材用包材。
【請求項2】
該積層フィルムが、該粘着剤層に接した低密度ポリエチレンフィルム層とシーラントフィルム層との間にバリアフィルム層を含む少なくとも1層のフィルムを有する構造からなる積層フィルムである請求項記載の温熱材用包材。
【請求項3】
該粘着剤が、さらに下記(B)〜(D)を含有する、請求項1または2記載の温熱材用包材。
(B)軟化点が75〜120℃である粘着付与樹脂
(C)軟化点が50℃以下である粘着付与樹脂
(D)芳香環含有モノマーを必須構成単量体とし、ガラス転移温度が30℃以上である単独重合体および/またはランダム共重合体
【請求項4】
前記(A)の重合体の40℃における粘度が1×10Pa・sを超え、さらに、40℃における粘度が1×10Pa・s以下のオレフィン重合体(E)を含有する、請求項1〜のいずれか1項記載の温熱材用包材。
【請求項5】
粘着剤層が、離型材で覆われている、請求項1〜のいずれか1項記載の温熱材用包材。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の温熱材用包材を備えたことを特徴とする発熱体。
【請求項7】
発熱体が、その片面が通気性フィルムで構成された袋体に発熱組成物が収容されていることを特徴とする発熱体である、請求項記載の発熱体。
【請求項8】
請求項または記載の発熱体を備えたことを特徴とする温熱材。



【公開番号】特開2006−241441(P2006−241441A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20651(P2006−20651)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(000112509)フェリック株式会社 (14)
【Fターム(参考)】