説明

温熱装置

【課題】使用中の温熱装置の皮膚側に安定した(consistent)温度をもたらす装置および方法の提供。
【解決手段】熱源の皮膚側に配設された第1の断熱材を備え、安定した皮膚側温度をもたらす装置および方法であって、装置のもたらす温度変化率が約0.8未満である装置および方法が開示される。皮膚の健康向上をもたらす方法、および皮膚側温度の受動的制御を提供する方法をさらに含む。本発明は、さらに、熱による皮膚損傷の発生を皆無にするために、広範囲の使用条件にわたって約43℃未満の皮膚側温度をもたらし、この温度を維持する。本発明は、約36℃から約42℃の皮膚側温度をもたらし、この温度を最大約24時間維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用中の温熱装置の皮膚側に安定した(consistent)温度をもたらす装置および方法に関する。本発明の装置および方法がもたらす温度変化率は、約0.8未満である。
【背景技術】
【0002】
ヒートラップなどの使い捨ておよび再利用可能な装置は、一時的または慢性的な痛み、疼痛、および外傷からの不快感を軽減するために熱を加える方法として普及している。一般的なヒートラップは、例えば、熱を発生させる発熱組成物を含む熱源を一般に備え、この発熱組成物は、金属粉末、塩、および水を含み、金属粉末が酸化すると発熱組成物から熱を放出する。他の装置は再利用が可能であり、再加熱および再使用が可能な固体、粒子、またはゲル状の材料を含む。さらに他の装置は、電源に接続する方式または電池駆動式のどちらかの電気式であり得る。このような熱源を組み込んだ装置は、こわばった筋肉および関節、神経痛、背痛、リューマチ、関節炎、および外傷などに伴う痛みおよび疼痛の治療に適していることが一般に分かっている。
【0003】
このような装置は、持続的な熱を約1時間から約24時間もたらすことができ、例えば渦巻気泡浴槽、蒸しタオル、ハイドロコレータ、および電気加熱パッドよりも、一般に便利で、携帯可能であり、利用しやすく、価格が手頃である。
【0004】
現在入手可能な熱装置の大半は、一定の温度を生じさせるのではなく、一定の熱量を発生させるように設計されている。このような装置が安定した温度を発生または提供するのは、装置の発熱率と熱損失率とが一定に維持される場合に限られる。使用中、この装置の実際の熱源温度は変化しうるので、この装置の皮膚側の温度、ひいては利用者の皮膚上の温度、も変化しうる。このような熱装置の大半は、不変の条件下で特定の熱源温度を生じさせるように製造されている。これらの熱装置の試験は、一般に、不変の周囲温度において一定温度の板上に装置を配置して行われる。ただし、実際の使用条件は多くの場合異なる。特に、熱除去率は大きく異なりうる。使用中の熱除去は、使用者の体の放熱力(すなわち、血液潅流が悪ければ、体が取り去る熱量が減る)、および衣服、周囲温度、および装置上の空気流などの環境条件など、さまざまな要因によって影響される。さらに、発熱率は、着用中に、例えば、発熱組成物への通気を増加させる体の動きによって、増加しうる。この結果、熱源温度、装置の皮膚側温度、および使用者の皮膚上の温度が43℃を超える温度に達しうる。この温度では、皮膚が熱傷しうる。さらに、一般に、このような皮膚側温度の上昇は緩やかであるため、43℃に近付くか、または超えても、使用者によって知覚され難い。したがって、損傷がゆっくりと発生するため、手遅れになり、皮膚が熱傷されるまで使用者が気付かないこともある。
【0005】
したがって、このような熱傷を減らすか、または皆無にするための取り組みがなされてきた。このようなアプローチの大多数は、熱源温度の調整または発熱量の調整のどちらかに主眼をおいている。このような取り組みの多くは、発熱組成物の熱源温度を調整するために、余分な熱を吸収する相変化物質を発熱組成物の中に/と共に組み込んでいる。ただし、相変化物質は、熱吸収容量に限度があり、高価である。したがって、相変化物質は、8時間以上にわたって熱が必要とされる治療用の疼痛緩和に使用されるヒートラップには実用的でないであろう。したがって、発熱組成物の過度な高温化の防止は、困難および/または高価になりうる。
【0006】
発熱組成物を用いて一定温度を維持するための他のアプローチは、熱損失率が変化した場合にこの変化を補償するために反応速度を制御するアプローチを含む。これは、一般に、装置を通る空気流を調整することによって行われるか、あるいは反応媒質内の酸素到達可能性を下げるために過剰な水を発熱成分内に放出することによって行われる。ただし、実際には、空気流の制御による発熱制御は難しい。その理由は、空気流は、例えば体の動きによって影響されうるからである。別のアプローチは、温度が所与の最大値を超えたときに反応を抑制する助剤を追加することによって反応を制御するというものである。ただし、輸送中および保存状態で高温になると、装置の使用前に抑制剤が時期尚早に放出されて装置が無効になることもありうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、温かさを即座に感知したいという使用者の欲求を満たす十分な発熱をもたらす装置を提供するために、温熱装置の皮膚側温度を有効に調整できる装置および方法が依然として必要とされている。ただし、治療用の熱を送達しながら、皮膚の熱傷を減らすか、または皆無にする費用効率の高い手段も依然として必要とされている。最後に、より良くフィットし、圧力分布がより均一であり、使用者がより快適である、単一または複数の熱源を有する単回使用および/または再利用可能な温熱装置の提供も依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱源の皮膚側に配設された第1の断熱材を備え、安定した皮膚側温度をもたらす装置であって、装置がもたらす温度変化率が約0.8未満である装置を含む。
【0009】
本発明は、さらに、熱による皮膚損傷の発生を皆無にするために、広範囲の使用条件にわたって約43℃未満の皮膚側温度をもたらし、この温度を維持する。本発明は、約36℃から約42℃の皮膚側温度をもたらし、この温度を最大約24時間維持する。
【0010】
本発明は、熱源と使用者の皮膚との間に配置される第1の断熱材を備える装置を使用者の皮膚にあてがうことによって、安定した皮膚側温度をもたらす方法と、皮膚の健康向上をもたらす方法と、皮膚側温度の受動的制御を提供する方法と、をさらに含む。本装置は、熱源温度の変化に対する皮膚側温度の変化率として約0.8未満の変化率をもたらす。すなわち、熱源温度が1℃変化する毎に装置の皮膚側温度の変化は約0.8℃未満である。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
安定した皮膚側温度をもたらす装置であって、
熱源の皮膚側に配設された第1の断熱材を備え、
前記装置がもたらす温度変化率が約0.8未満である、装置。
(項目2)
前記装置がもたらす温度変化率が約0.7未満である、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記装置がもたらす温度変化率が約0.5未満である、項目2に記載の装置。
(項目4)
約43℃未満の皮膚側温度をもたらし、その温度を維持する、項目1に記載の装置。
(項目5)
約36℃と約42℃との間の皮膚側温度をもたらし、その温度を維持する、項目1に記載の装置。
(項目6)
約39℃と約42℃との間の皮膚側温度をもたらし、その温度を維持する、項目1に記載の装置。
(項目7)
加熱開始後約5分以内に前記装置の皮膚側温度として少なくとも約36℃をもたらす、項目1に記載の装置。
(項目8)
加熱開始後約30分未満以内に約39℃と約42℃との間の皮膚側温度をもたらす、項目1に記載の装置。
(項目9)
加熱開始後約15分未満以内に約39℃から約42℃との間の皮膚側温度をもたらす、項目1に記載の装置。
(項目10)
約39℃と約42℃との間の皮膚側温度をもたらし、その温度を最大約24時間維持する、項目1に記載の装置。
(項目11)
前記第1の断熱材が発泡体、不織布、スポンジ、グラスウール、ガラス繊維、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される、項目1に記載の装置。
(項目12)
前記第1の断熱材の厚みが約1/64インチから約1インチである、項目1に記載の装置。
(項目13)
前記第1の断熱材の厚みが約1/32インチから約1/2インチである、項目1に記載の装置。
(項目14)
前記第1の断熱材の厚みが約1/16インチから約3/8インチである、項目1に記載の装置。
(項目15)
前記熱源が単回使用熱源、再利用可能熱源、結晶化熱源、粒状発熱組成物、電気熱源、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、項目1に記載の装置。
(項目16)
前記熱源は粒状発熱組成物を備える少なくとも1つの熱セルを備える、項目1に記載の装置。
(項目17)
前記少なくとも1つの熱セルは少なくとも2つの対向面を備える一体構造に形成され、少なくとも一方の面が空気透過性であり、前記粒状発熱組成物が前記2つの対向面の間に配設される、項目16に記載の装置。
(項目18)
前記熱源の上側に配設される最上層をさらに備える、項目1に記載の装置。
(項目19)
前記最上層が不織布材料である、項目18に記載の装置。
(項目20)
前記最上層がナイロン、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体類、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリプロピレン、セルロース類、羊毛、絹、黄麻、麻、綿、リネン、サイザル麻、カラムシ、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される材料である、項目18に記載の装置。
(項目21)
皮膚側層をさらに備える、項目1に記載の装置。
(項目22)
前記皮膚側層が不織布材料である、項目21に記載の装置。
(項目23)
前記皮膚側層がナイロン、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体類、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリプロピレン、セルロース類、羊毛、絹、黄麻、麻、綿、リネン、サイザル麻、カラムシ、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される材料である、項目21に記載の装置。
(項目24)
前記第1の断熱材が前記熱源と前記皮膚側層との間に配設される、項目21に記載の装置。
(項目25)
前記熱源の上側に配設された第2の断熱材をさらに備える、項目1に記載の装置。
(項目26)
前記第2の断熱材の上側に配設された最上層をさらに備える、項目24に記載の装置。
(項目27)
前記第2の断熱材が発泡体、不織布、スポンジ、グラスウール、ガラス繊維、吹き付け材、エアーレイド材、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される、項目25に記載の装置。
(項目28)
芳香族化合物類、スキントリートメント化合物類、医薬化合物類、治療用化合物類、ビタミン類、およびこれらの組み合わせから成る群から選択された追加成分をさらに備える、項目1に記載の装置。
(項目29)
前記装置が使用者の体の外形に順応し、前記皮膚に一様な圧力とフィット性とをもたらす、項目1に記載の装置。
(項目30)
使用中の温熱装置の皮膚側温度を安定化させる方法であって、
熱源の皮膚側に配設された第1の断熱材を備える装置を使用者の皮膚にあてがうステップを含み、前記装置がもたらす温度変化率が約0.8未満である方法。
(項目31)
約0.7未満の温度変化率をもたらすステップを含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
約0.5未満の温度変化率をもたらすステップを含む、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記皮膚側温度を約43℃未満に維持するステップを含む、項目30に記載の方法。
(項目34)
前記皮膚側温度を約36℃と約42℃との間に維持するステップを含む、項目30に記載の方法。
(項目35)
前記皮膚側温度を約39℃と約42℃との間に維持するステップを含む、項目30に記載の方法。
(項目36)
前記皮膚側温度を約39℃と約42℃との間に最大約24時間維持するステップを含む、項目30に記載の方法。
(項目37)
加熱開始後約30分未満以内に前記装置の皮膚側温度として約39℃と約42℃との間の温度をもたらすステップを含む、項目30に記載の方法。
(項目38)
加熱開始後約15分未満で前記装置の皮膚側温度として約39℃と約42℃との間の温度をもたらすステップを含む、項目30に記載の方法。
(項目39)
加熱開始後約5分以内に前記装置の皮膚側温度として約36℃をもたらすステップを含む、項目30に記載の方法。
(項目40)
熱源の皮膚側に配設された第1の断熱材を備える装置を使用者の皮膚にあてがうステップを含み、前記装置がもたらす温度変化率が約0.8未満である、皮膚の健康向上をもたらす方法。
(項目41)
前記装置が使用者の体の外形に順応し、前記皮膚に一様な圧力とフィット性とをもたらす、項目40に記載の方法。
(項目42)
熱源の皮膚側に配設された第1の断熱材を備える装置を使用者の皮膚にあてがうステップを含み、前記装置がもたらす温度変化率が約0.8未満である、皮膚側温度の受動的制御を提供する方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の断熱材を熱源の皮膚側に有する本発明の一実施形態の概略図である。
【図2】熱源の皮膚側の第1の断熱材と、最上層と、皮膚側層とを有する本発明の一実施形態の概略図である。
【図3】熱源の皮膚側の第1の断熱材と、皮膚とは反対の側を向いた熱源の上側の第2の断熱材とを有する本発明の一実施形態の概略図である。
【図4】熱源の皮膚側の第1の断熱材と、熱源の上側の最上層とを有する、本発明の一実施形態の概略図である。
【図5】第1の断熱材が複数の材料層によって形成された、本発明の一実施形態の概略図である。
【図6】本発明による温熱装置の一実施形態の平面図である。
【図7】図6に示す実施形態の部分断面側立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、熱源の皮膚側に配設された第1の断熱材を備え、安定した皮膚側温度をもたらす装置および方法を含み、この装置がもたらす温度変化率は約0.8未満である。すなわち、熱源温度が1℃変化する毎に装置の皮膚側温度の変化は約0.8℃未満である。
【0013】
装置
本発明の装置の非限定的な例として、首、肩、背中、腹部、手、手首、肘、腕、脚、膝、および足首用の単回使用、使い捨て、および再利用可能な、使用者の体の外形に順応するカバー、ラップ、および/または装置が挙げられる。本発明の装置は、使用者の皮膚に直接接触させて装着することも、あるいは衣服の上に装着することもできる。以下、述語「皮膚」は、使用者の皮膚に接触、隣接、または配設される装置に関して使用される場合、皮膚に直接接触させること、および/または、衣服の上に装着する場合は皮膚側に向けることを意味する。
【0014】
本発明の装置は、熱源温度に対する皮膚側温度の温度変化率として約0.8未満の温度変化率をもたらす。すなわち、熱源温度が1℃変化する毎に、上昇か下降かに拘らず、装置の皮膚側温度の変化は約0.8℃未満である。あるいは、これらの装置は、熱源温度の変化に対する装置の皮膚側温度の変化率として約0.7未満、あるいは約0.5未満の変化率をもたらす。温度変化率は、本願明細書に記載の方法により決められる。
【0015】
本発明の装置および方法は、さらに、約43℃未満の皮膚側温度を安定的に維持する。あるいは、本発明の装置および方法は、約36℃から約42℃まで、あるいは約37℃から約42℃まで、あるいは約39℃から約42℃までの安定した皮膚側温度を維持する。さらに、これらの装置および方法は、少なくとも約36℃の皮膚側温度に約5分間で達してこの温度をもたらす。
【0016】
本発明の各装置は、熱源の皮膚側に配設された第1の断熱材を備える。各装置は、熱源の上側に熱源を覆って配設される少なくとも1つの最上層と、第1の断熱材と使用者の皮膚または衣服との間に配設される少なくとも1つの任意使用の皮膚側層とをさらに備えることができる。このような最上層および/または任意使用の皮膚側層は、見た目、感触、快適さ、色、形状、フィット性、およびこれらの組み合わせなど、さまざまな理由および用途のために設けることができる。各装置は、使用者の皮膚とは反対側を向いた熱源の上側に、熱源と最上層との間に配設される第2の断熱材をさらに備えることができる。
【0017】
本発明の装置および方法は、以前可能であったよりさらに良好な皮膚側温度の制御を提供するほか、熱を送達するための装置のフィット性および順応性を向上させる。特に、下記のように複数の熱セルが使用される場合は、温熱装置がさまざまな方向または軸に沿って撓みやすく、かつ曲がりやすくなるため、温熱装置のフィット性が向上する。したがって、本発明は皮膚の熱傷ばかりでなく、装置が窮屈過ぎるか、または緩過ぎて装置が所定位置に正しく留まらないために起こる圧迫、摩擦、またはずれによる損傷を減らすか、または皆無にすることによって、総合的な皮膚の健康を向上させる。
【0018】
第1の断熱材
本願明細書で使用する第1の断熱材とは、装置を形成するために用いられる最上層、皮膚側層、および/または熱源に加えて用いられる断熱材を意味する。第1の断熱材は、本願明細書に記載の主たる温度変化効果をもたらす。
【0019】
皮膚側温度の制御は、熱による皮膚損傷を避けるために重要である。ただし、使用者に温熱装置の効果を感じさせるには、装置を使用者の皮膚にあてがった後に感知される温度上昇がなければならない。正常なヒトの体温は、約35℃である。したがって、約35℃を超える温度が一般に皮膚に温かいと感知される。ただし、約43℃を超える温度は、皮膚を熱傷させうる。温熱装置の使用条件は可変であり、したがって温熱装置の皮膚側温度に影響を及ぼすので、使用条件によっては、一部の装置の熱源温度および皮膚側温度が43℃を優に超えることもありうる。
【0020】
本発明では、装置の使用者は、温かさを即座に感じることができる。その理由は、本発明は、加熱開始後約5分以内に約36℃の皮膚側温度に達し、この温度をもたらすからである。ただし、温熱装置の熱源の皮膚側に第1の断熱材を使用すると、目標の皮膚側温度である約39℃から約42℃に達しても使用者の皮膚を熱傷させない。本発明で使用可能な熱源温度は、所望される皮膚側温度より約2℃から約3℃高ければよい。さらに、約43℃を超える熱源温度および使用条件に拘らず、本発明の装置の皮膚側温度は使用中に約43℃を超えない。本発明の装置の皮膚側温度は、加熱開始後約30分以内に、あるいは加熱開始後約15分以内に、目標の皮膚側温度である約39℃から約42℃に温まる。
【0021】
皮膚側温度を目標の温度範囲内に約1時間以上、あるいは約4時間以上、あるいは約8時間以上、あるいは約12時間以上、あるいは約16時間以上、あるいは約24時間維持することができる。本発明の装置および方法は、装置を使用者から取り外した後、少なくとも約2時間、あるいは約8時間、あるいは約16時間、あるいは約1日、あるいは約3日間、持続的な疼痛緩和をもたらすことができる。
【0022】
したがって、第1の断熱材を熱源の皮膚側に追加することによって、熱源温度の変化(上昇または下降)の影響が抑えられ、装置が安定した皮膚側温度を長時間にわたって所望の温度範囲内でもたらすようになる。
【0023】
本発明の第1の断熱材は、その断熱特性をもたらすために空気を内蔵する。空気は、天然の最も効果的な断熱材である。その断熱特性を使用中維持するために望ましい断熱材の別の特性は、バックラップを装着したまま仰向けになるなど、通常、使用中に遭遇する圧力を受けたときにつぶれないことである。
【0024】
第1の断熱材に適した材料の非限定的な例として、連続気泡発泡体および/または独立気泡発泡体などの発泡体、不織布、スポンジ、グラスウール、ガラス繊維などが挙げられる。これらの材料は、当業者には理解されるように、スパンボンド、メルトブロー、カーディング、ハイドロフォーミング、発泡、熱成形、吹き付け、エアーレイ、およびこれらの組み合わせによって作製できる。特に有用な断熱材として、例えばPregis Corp., Deerfield, IL, USAから入手可能なポリプロピレンマイクロフォームMF060、およびこれもPregisから入手可能なポリエチレンアストロフォーム−1/32”(AF030)、1/16”(AF060)、1/32”(AF090)が挙げられる。
【0025】
あるいは、例えば、1種類以上の不織布材料から成る複数の層を第1の断熱材として使用できる。不織布材料自体が熱源と使用者の皮膚または衣服との間に配設される第1の断熱材になるように、複数の不織布材料層を折り畳み、二次成形し、または積み重ねて、互いに接着して厚みを増すことができる。これらの層の接着には、当業者には理解されるように非限定的な例として、National Starch & Chemical Company, Bridgewater, NJ, USAから入手可能な#70−4589などの構造用接着材を用いることができる。あるいは、不織布材料を互いに超音波または熱によって接着することも、あるいは不織布材料の接着技術の当業者には公知の他の手段によって接着することもできる。適した不織布材料の非限定的な例として、ナイロン、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体類、ポリオレフィン類、ポリアミド類またはポリエステル類、ポリプロピレン、銅アンモニアセルロース(Asahi Kasei America Inc., New York, NY, USAから入手可能)、および他の高分子化合物類、さらには羊毛、絹、黄麻、麻、綿、リネン、サイザル麻、およびカラムシなどの天然材料が挙げられる。適した不織布材料の非限定的な具体例として、PGI,Inc., Waynesboro, VA, USAから入手可能なポリプロピレンカーディング不織布#6780、1平方メートル当たり22グラム(gsm)、またはFiberweb, Simpsonville, SC, USAから入手可能な高延伸カーディング不織布、またはFirst Quality Nonwovens,Inc.(FQN), Great Neck, NY, USAなどから入手可能な30gsm SMMS(スパンボンド、メルトブロー、メルトブロー、スパンボンド)ラミネートなどが挙げられる。不織布材料は、当業者には理解されるように、スパンボンド、メルトブロー、カーディング、高延伸カーディング、エアーレイ、およびこれらの組み合わせで作製することができる。このような不織布材料は、Riedel著「Nonwoven Bonding Methods and Materials)」Nonwoven World(1987年)に概説されている。
【0026】
第1の断熱材の厚みは、必要な断熱特性をもたらすために、第1の断熱材の種類と、使用する熱源の種類と、所望される皮膚側温度とに応じて約1/64インチから約1インチである。あるいは、第1の断熱材の厚みは、約1/32インチから約1/2インチ、または約1/16インチから約3/8インチである。特に有用な厚みおよび種類の第1の断熱材は、Pregis Corp., Deerfield, IL, USAから入手可能な1/16インチ厚のポリプロピレンマイクロフォームMF060である。
【0027】
発泡体を第1の断熱材および/または第2の断熱材として、例えば熱源の皮膚側および/または上側に使用すると、このような発泡体が使用者の体の外形に順応し、ひいては熱の送達を向上させる。したがって、複数の熱セルを備える熱源と第1の断熱材とを組み合わせると、温熱装置を体の外形に容易に合わせることができるため、装置を過度に締め付けなくとも確実にフィットする。
【0028】
主断熱層は、非限定的な例として、発熱組成物を含む熱源に接着することができる。このような接着には、当業者には理解されるように非限定例として、National Starch & Chemical Company, Bridgewater, NJ, USAから入手可能な#70−4589などの構造用接着材を使用できる。あるいは、このような接着は、超音波または熱によって行うことも、あるいは当業者には公知の他の手段によって行うことができる。
【0029】
第1の断熱材は、第1の断熱材と使用者の皮膚または衣服との間に使用可能な皮膚側材料層によって覆うことができる。
【0030】
熱源
本発明と組み合わせて使用可能な熱源として、単回使用熱源、再利用可能すなわち繰り返し使用可能な熱源、電気熱源、発熱組成物熱源、結晶化熱による組成物熱源、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
本発明において有用な熱源の一例は、発熱組成物を含む熱セルを少なくとも1つ備える。この少なくとも1つの熱セルは、少なくとも2つの対向面を備える一体構造に形成され、少なくとも一方の面は空気透過性であり、この2つの対向面の間に発熱組成物が充填される。
【0032】
熱セルの一実施形態においては、薄膜層支持体の表面をこの2つの対向面にすることができる。薄膜層支持体の表面は、複数の薄膜から作製することも、あるいは不織布材料に積層された複数の薄膜から作製することもできる。一般に好適な薄膜は、ヒートシール可能で、熱溶着を容易に行える薄膜である。不織布材料を使用すると、不織布材料によって支持と一体性とを薄膜層支持体にもたらすことができる。
【0033】
適した薄膜の非限定的な例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレン・エチレン・酢酸ビニル系共重合体ケン化物、エチレン酢酸ビニル共重合体、天然ゴム、再生ゴム、および合成ゴムが挙げられる。好適な薄膜層は、厚みが約1μmから約300μmの範囲内であり、空気透過性にすることも不透過性にすることもできる。
【0034】
好適な不織布材料の特徴的性質は、軽量であり、高抗張力を有することである。非限定的な例として、ナイロン、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体類、ポリオレフィン類、ポリアミド類またはポリエステル類、ポリプロピレン、銅アンモニアセルロース(Asahi Kasei America Inc., New York, NY, USAから入手可能)、および他の高分子化合物類、さらには羊毛、絹、黄麻、麻、綿、リネン、サイザル麻、およびカラムシなどの天然材料が挙げられる。適した不織布材料の非限定的な具体例として、PGI,Inc., Waynesboro, VA,
USAから入手可能なポリプロピレンカーディング不織布#6780、1平方メートル当たり22グラム(gsm)、またはFiberweb, Simpsonville,
SC, USAから入手可能な高延伸カーディング不織布、またはFirst Quality Nonwovens,Inc.(FQN), Great Neck, NY, USAなどから入手可能な30gsm SMMS(スパンボンド、メルトブロー、メルトブロー、スパンボンド)ラミネートなどが挙げられる。これらの不織布材料は、当業者には理解されるように、スパンボンド、メルトブロー、カーディング、高延伸カーディング、エアーレイ、およびこれらの組み合わせによって作製することができる。このような不織布材料は、Riedel著「Nonwoven Bonding Methods
and Materials」Nonwoven World(1987年)に概説されている。
【0035】
好適な薄膜層支持体表面として、ポリ(エチレン酢酸ビニル)(EVA)または低密度ポリエチレン(LDPE)薄膜に積層されたポリプロピレン(PP)不織布シートで、薄膜などのすべての積層材料を合わせた厚みに何れかの構造用接着材と不織布とを加えた合計厚が約400μmから約1500μmのものが挙げられる。本発明と組み合わせると有用な市販の不織布シートの一例は、PGI(Polymer Group International), Waynesboro, VA, USAから入手可能な材料番号W502FWHである。本発明と組み合わせると有用な市販のポリプロピレン/エチレン酢酸ビニル(PP/EVA)薄膜材料の一例は、Clopay Plastics, Cincinnati, OH, USAから入手可能な製品番号DH245である。
【0036】
2つの対向面は、2つの薄膜層支持体表面の外周部を貼り合わせて小袋、窪み、囲い、ポケット、または室を形成することによって作成することができる。各材料の薄膜側を小袋、窪み、囲い、ポケット、または室の内側(すなわち充填される側)に向け、不織布側を外側に向ける。熱成形、メカニカルエンボス加工、真空エンボス加工、または他の手段によって薄膜層支持体の表面に小袋を作ることもできる。好適な方法は、Marilyn
Bakker他編「Thermoforming」Wiley Encyclopedia of Packaging Technology、pp.668−675(1986年)に記載されているような熱成形によるものである。
【0037】
作成される熱セルは何れの幾何学的形状でもよく、例えば円板状、三角形、角錐形、円錐形、球状、正方形、立方体、矩形、直方体、円筒形、および楕円形が挙げられるが、これだけに限定されるものではない。
【0038】
熱セルの空気透過性は、小袋、窪み、囲い、ポケット、または室を形成および/または被覆する薄膜層支持体表面用の薄膜または膜被膜を選択することによってもたらすことができる。所望の透過性は、微孔フィルムによってもたらすことも、あるいは微細孔または穴が形成された不透過性フィルムによってもたらすこともできる。このような微細孔または穴の形成は、押し出しキャスト/真空成形によって、または高温針による穴開けによって行うことができる。空気透過性は、例えば少なくとも1本のピンを用いて、好ましくは約20〜約60本のピンの配列を用いて、少なくとも一方の薄膜層支持体表面に通気穴を開けることによってもたらすこともできる。通気穴は薄膜層支持体の上面に設けることが好ましいが、薄膜層支持体の下面および/または両面に通気穴を設けることもできる。
【0039】
本発明と組み合わせると有用な透過性の非限定的な例として、(ASTM法D737−96に記載されている方法を用いて測定された値が)約4cfm未満、あるいは約3cfm未満、あるいは約2cfm未満、あるいは約1.5cfm未満、あるいは約0.8cfm未満の空気透過性が挙げられる。
【0040】
発熱組成物を収容する熱セルを作製するには、一般に、ポリプロピレン/エチレン酢酸ビニル層などの薄膜層支持体表面にポケットを作り、粒状発熱プレミックスを構成し、一定量の粒状発熱プレミックスを各ポケットに加え、粒状発熱プレミックスにブライン溶液を素早く加えて発熱組成物を形成し、充填されたポケットの上に、ポリプロピレン/エチレン酢酸ビニル薄膜層支持体表面の平らなシートを、エチレン酢酸ビニル側を予備成形されたポケット収容層のエチレン酢酸ビニル側に向けて、配置する。2つの薄膜層支持体表面を低熱で互いに接着することによって、複数の熱セルを収容した一体構造が形成される。一方または両方の薄膜層支持体表面が空気透過性になるように、充填されたポケットを形成および/または被覆するポリプロピレン/エチレン酢酸ビニル薄膜層支持体表面に複数の開口を形成することができる。本発明と組み合わせると有用な粒状発熱プレミックス組成物の成分の非限定的な例として、鉄粉、カーボン、吸収性ゲル化材料、および水が挙げられる。ブライン溶液の成分の非限定的な例として、金属塩、水、および場合によってはチオ硫酸ナトリウムなどの水素ガス抑制剤、が挙げられる。
【0041】
発熱組成物の熱を発生させる酸化反応の速度、持続期間、および温度は、発熱組成物の酸化反応に利用可能な空気の量を調節することによって、望みどおりに制御することができる。より具体的には、薄膜層支持体の一面または両面の穿孔の度合いを変えること、および薄膜層支持体の一面または両面を貫通する複数の開口を設けることなどによって、空気透過性の薄膜層支持体の一面または両面による空気透過性および/または空気拡散を変えることができる。発熱反応を変える他の方法として、例えば、特定成分の選択または成分の粒径変更による熱源成分の選択が挙げられるが、これだけに限定されるものではない。さらに、空気拡散のための発熱組成物の空隙率を変えることもできる。例えば、バーミキュライトなどの水管理資材および/またはポリアクリル酸ナトリウムなどの吸水性ゲル化剤を含めることによって、およびブライン溶液の追加量を変えることによって、空隙率を変えることができる。
【0042】
こうして得られた複数の熱セルを含む単一構造は、単体で使用することも、あるいは使い捨てラップおよび再利用可能ラップなど、さまざまな大きさおよび形状の温熱装置に組み込むこともできる。一般的なラップ装置は、装置を体の所望の位置に保持するための手段を備えることができる。このような手段の非限定的な例として、フックおよびループ型クロージャ付きストラップおよび/または接着剤が挙げられる。
【0043】
上記のように空気によって活性化される発熱組成物の熱セルを備える熱源は、必要になるまで酸化反応の発生を防止するために、二次的な空気不透過性パッケージに包装されることが好ましい。
【0044】
あるいは、接着片などの取り外し可能な空気不透過性条片等で空気透過性の薄膜層支持体表面の穴を覆い、条片が除去されたときに、空気が熱セルに進入して酸化反応を活性化させるようにすることもできる。あるいは、熱セルを温熱装置の一部として組み込む代わりに、再利用可能なラップ装置に解放可能に取り付けることができる使い捨て可能なシートまたは積層構造体などの独立した熱源構造体に熱セルを形成することもできる。
【0045】
最上層
本発明の複数の実施形態による任意使用の最上層は、不織布材料にすることができる。最上層に適した材料の非限定的な例として、ナイロン、レーヨン、セルロースエステル、ポリプロピレン、ポリビニル誘導体類、ポリオレフィン類、ポリアミド類、またはポリエステル類、銅アンモニアセルロース系繊維(Asahi Kasei America Inc., New York, NY, USAから入手可能)、および他の高分子化合物類、さらには羊毛、絹、黄麻、麻、綿、リネン、サイザル麻、およびカラムシなどの天然材料が挙げられる。適した不織布材料の非限定的な具体例として、PGI, Inc., Waynesboro, VA, USAから入手可能なポリプロピレンカーディング不織布#6780、1平方メートル当たり22グラム(gsm)、またはFiberweb, Simpsonville, SC, USAから入手可能な、高延伸カーディング不織布、またはFirst Quality Nonwovens,Inc.(FQN), Great Neck, NY, USAなどから入手可能な30gsm SMMS(スパンボンド、メルトブロー、メルトブロー、スパンボンド)ラミネートなどが挙げられる。不織布材料は、当業者には理解されるように、カーディング、高延伸カーディング、スパンボンド、メルトブロー、エアーレイおよびこれらの組み合わせにより作製できる。このような不織布材料は、Riedel著「Nonwoven Bonding
Methods and Materials」Nonwoven World(1987年)に概説されている。最上層は、熱源の上側に熱源を覆って配設することができ、当業者であれば理解されるように、熱溶融性構造用接着材を1平方メートル当たり15グラム(gsm)の割合で渦巻状に塗布することによって、積層することができる。この熱溶融性構造用接着材の非限定的な例として、National Starch & Chemical Company, Bridgewater, NJ, USAから入手可能な#70−4589などが挙げられる。あるいは、このような接着は、超音波または熱によって行うことも、あるいは当業者に公知の他の手段によって行うこともできる。
【0046】
任意使用の皮膚側層
本発明の装置は、第1の断熱材と使用者の皮膚または衣服との間に配置されるように、第1の断熱材の上に配設される任意使用の皮膚側層をさらに備えることができる。任意使用の皮膚側層の取り付けは、当業者には理解される非限定的な例として、National Starch & Chemical Company, Bridgewater, NJ, USAから入手可能な#70−4589などの熱溶融性構造用接着材を1平方メートル当たり15グラム(gsm)の割合で渦巻状に塗布することによって行うことができる。あるいは、このような接着は、超音波または熱によって行うことも、あるいは当業者には公知の他の手段によって行うこともできる。
【0047】
任意使用の皮膚側層は、例えば不織布材料の層にすることができる。任意使用の皮膚側層に適した材料の非限定的な例として、ナイロン、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体類、ポリオレフィン類、ポリプロピレン、ポリアミド類またはポリエステル類、銅アンモニアセルロース(Asahi Kasei America Inc., New York, NY, USAから入手可能)、および他の高分子化合物類、並びに羊毛、絹、黄麻、麻、綿、リネン、サイザル麻、およびカラムシなどの天然材料が挙げられる。適した不織布材料の非限定的な具体例として、PGI, Inc., Waynesboro, VA, USAから入手可能な、1平方メートル当たり22グラム(gsm)のポリプロピレンカーディング不織布#6780、Fiberweb, Simpsonville, SC, USAから入手可能な高延伸カーディング不織布、またはFirst Quality Nonwovens,Inc.(FQN), Great
Neck, NY, USAから入手可能な30gsm SMMS(スパンボンド、メルトブロー、メルトブロー、スパンボンド)ラミネートなどのSMMSラミネートなどが挙げられる。不織布材料は、当業者には理解されるように、カーディング、高延伸カーディング、スパンボンド、メルトブロー、エアーレイ、およびこれらの組み合わせで作製できる。このような不織布材料は、Riedel著「Nonwoven Bonding Methods and Materials)」Nonwoven World(1987年)に概説されている。
【0048】
第2の断熱材
第1の断熱材に加え、第2の断熱材を熱源と最上層との間に配設することができる。第2の断熱材は、第1の断熱材と同じ材料にしても異なる材料にしてもよく、第1の断熱材用の上記の材料から選択できる。ただし、空気によって活性化される発熱組成物を装置の熱源として用い、装置の上側が空気透過性である場合に第2の断熱材を装置の上側に使用する場合は、空気が装置に進入して発熱組成物を活性化するように第2の断熱材は空気透過性であるか、または空気透過性にしなければならない。第2の断熱材の取り付けは、非限定的な例として、発熱性熱源の薄膜支持体の上面および/または最上層に、当業者には理解されるような非限定的な例として、National Starch & Chemical Company, Bridgewater, NJ, USAから入手可能な#70−4589などの熱溶融性構造用接着材を1平方メートル当たり15グラム(gsm)の割合で渦巻状に塗布することによって行うことができる。あるいは、このような接着を超音波または熱によって行うことも、あるいは当業者には公知の他の手段によって行うこともできる。
【0049】
取り付け手段
本発明の装置は、首、肩、背中、腹部、手、手首、腕、肘、脚、膝、および足首などのさまざまな身体部分に、またはこれらの周囲に、装置を保持するためのさまざまな手段を有することができる。このような手段の非限定的な例として、少なくとも1つの可撓性および/または弾性ストラップ、接着材、フックおよびループ締結システム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
任意使用の成分
本発明の皮膚温度を調整するための装置は、装置から放出される成分を随意に組み込むために特に好都合である。このような成分の非限定的な例として、芳香族化合物類、スキントリートメント化合物類、医薬品類または治療薬類、およびこれらの混合物が挙げられる。任意使用の成分は、別個の層として熱セルに組み込むことも、少なくとも1つの熱セルの少なくとも1つの薄膜層支持体(上記)に組み込むことも、第1の断熱材に組み込むことも、および/または最上層および/または皮膚側層に組み込むこともできる。このような成分の非限定的な例として、メントール、樟脳、ユーカリ油、およびこれらの組み合わせ、さらにはベンズアルデヒド、シトラール、デカナール、アルデヒド、およびこれらの組み合わせ、さらには抗生物質、ビタミン類、スキントリートメントおよび/または軟化用および/または状態調整用組成物類、坑ウイルス薬類、抗菌剤類、鎮痛薬類、抗炎症薬類、止痒薬類、解熱薬、麻酔剤、抗微生物剤、およびこれらの組み合わせが挙げられる。装置は、別個の層として組み込まれた、または1つ以上の熱セルの薄膜層支持体のうちの少なくとも1つに組み込まれた、粘着成分および/または吸汗成分をさらに備えることができる。
【0051】
温度変化率方式
装置によってもたらされる「温度変化率」とは、本願明細書で使用する場合、下記のように不変のテスト条件で測定された、熱源温度に対する装置の皮膚側温度の変化率である。本発明の装置および方法がもたらす温度変化率は、約0.8未満である。すなわち、熱源温度が1℃変化する毎に装置の皮膚側温度の変化は約0.8℃未満である。
【0052】
測定対象の装置は、23℃+/−0.2℃に維持された恒温室で測定される。この室内では温度の測定場所全体に気流が一切ないものとする。
【0053】
装置の測定時、温度変化率は、熱源を除く装置全体からもたらされる。上記のような最上層および皮膚側層の材料など、温熱装置に存在する大半の材料は、何らかの断熱特性を有する。温熱装置の温度変化率の測定時は、装置を切り開いて熱源を取り除く必要がある。すなわち、あらゆる発熱組成物、粒状組成物、ゲル状組成物、または電気素子をテスト対象装置から取り除く必要がある。
【0054】
装置の温度変化率を測定するには、装置を(その熱源を取り除いた状態で)熱板の表面に、装置の皮膚側を熱板の表面とは反対側に向けて、テープで留める。使用する熱板は、Barstead/Thermolyne, Dubuque, IA, USA製の温度制御設定が可変の実験用熱板、型式SP49625(または同等の型式)である。熱板の加熱制御量を増加させるには、熱板をWerner Electric,Bristol, CT, USA製のPowerstat可変単巻変圧器に接続する。
【0055】
3M Company, St. Paul, MN, USA製の3M6200テープを用いてテスト対象の装置を熱板に留める。重要な点は、装置と熱板の表面との均一な接触を良好に維持することである。したがって、装置の各縁端部を熱板の表面にテープで留める。装置を決して伸長または変形させないように注意する。3M6200テープを使用する理由は、可撓性および伸縮性があり、装置を平らに、かつ装置を伸長または変形させずに熱板の表面に良好かつ均一に接触させた状態で確実に維持するために必要な張力がもたらされるからである。
【0056】
熱板の表面温度を測定するには、Omega Engineering,Inc., Stamford, CT, USAから入手可能な熱電対、部品番号SCGG−K−30−36、直径0.010インチのType−K絶縁ビードワイヤ熱電対を使用する。この熱電対を温熱装置がテープ留めされている位置に隣接する熱板表面位置に3M6200テープで留める。
【0057】
装置の皮膚側温度を測定するには、Type−K熱電対を装置の皮膚側に3M6200テープで留める。
【0058】
両方の熱電対をOmega Engineering,Inc.,Stamford,
CT, USA製の1つの手持ち式温度計、型式HH84に取り付ける。
【0059】
装置の温度変化率をテストするには、熱板表面にテープ留めした熱電対で測定した50℃の安定温度に熱板を設定する。熱板は、製造元によって較正されている。熱板を15分間安定化させる。熱板の温度が安定化したら、テスト対象装置を熱板にテープで留める。次に、第2の熱電対を上記のように装置にテープで留め、HH84温度計に接続する。両方の熱電対をHH84温度計に取り付ける。HH84はデュアルチャネルメータであるので、1台の温度計で足りる。HH84温度計は、製造元によって予め較正され、「オン」ボタンを押すとデータを取得および記録するように設定されている。次に、熱板への電力供給をオフにし、HH84温度計のデータ取得機能をオンにする。HH84温度計は、データ取得能力を有し、取り付けられた2つの熱電対の温度測定値を3秒毎に少なくとも1時間記録するようにプログラムされている。次に、HH84温度計からのデータがコンピュータに転送され、Excel表計算ソフト(Microsoft Corporation, Redmond, WA, USAから入手可能なExcelソフトウェア)で表形式にされる。熱板が冷えるに伴い、熱板の表面と温熱装置の皮膚側表面との間の温度差が経時的に記録される。熱板の熱質量により冷却速度は緩慢であるため、熱板表面および温熱装置上で定常温度を読み取ることができる。
【0060】
計算
本発明の装置および方法は、熱源温度の上昇または下降による温熱装置の皮膚側温度の上昇または下降をより小さく(1対1未満に)することができる。温度測定値が記録されたら、Systat Software Inc, San Jose, CA, USAのSigma Plotソフトウェアを用いて、式TTD=m×THP+bに合うように、対応する熱板温度に対する温熱装置の皮膚側温度の最小二乗線形回帰分析を行う。変数TTDおよびTHPは、温熱装置の皮膚側温度(TD)および熱板の表面温度(HP)をそれぞれ表し、mは線の傾きであり、bはTHPがゼロに等しい点におけるTTD軸の交点である。テストされた装置の温度変化率は、線の傾きmに反映される。線の傾きmは、装置の皮膚側温度が熱源温度の変化に対して如何に変化するかを表す。本発明の装置および方法は、傾きmを約0.8未満にする。最小二乗分析は、直線を複数のデータポイントに合わせるためにデータポイントに対して行われる標準的な統計分析である。このような分析は、George E.P.Box、William G.Hunter、J. Stuart Hunter共著「Statistics for Experimenters」John Wiley & Sons,Inc.発行(1978年)、p.453−455に説明されている。
【0061】
作製方法
本発明による装置は、いくつかの異なる実施形態を含むことができる。
【0062】
本発明の装置の一実施形態は、上記のように熱源として作製された複数の熱セルを有する単一のシート構造を形成し、このシート構造を所望の装置形状に切断し、次に、構造用接着材を用いて、第1の断熱材、最上層、および/または任意使用の皮膚側層などの1つ以上の層を取り付けることによって作製できる。第1の断熱材は、上記のように、熱源と任意使用の皮膚側層との間に配置することも、あるいは使用者の皮膚または衣服に直接接触させることもできる。
【0063】
発熱組成物を熱源として使用する場合は、発熱組成物を封入する薄膜層支持体の少なくとも一方の表面が空気透過性であることが好ましく、さらにはこの表面が、装置の皮膚側とは反対の側に向いた熱源の上部に配設されることが好ましい。ただし、薄膜層支持体の一方の面だけが空気透過性であり、熱源の空気透過面が使用者の皮膚側に配置される場合でも、空気が発熱組成物に到達できるように、空気透過性を調節することができる。例えば、熱源への空気流が律速にならないように通気穴を十分大きなサイズに調節することができる。あるいは、発熱組成物の空隙率を、律速段階になるように変更することができる。ただし、空気透過性の薄膜層支持体面は、装置の皮膚側とは反対の側に向いた熱源の上側に配置することが好ましい。
【実施例】
【0064】
実施例
以下の非限定的な例は、本発明の範囲内の複数の実施形態をさらに説明および例示する。本発明の範囲および精神から逸脱することなく本発明の多くの変形例が可能であるので、これらの例は、例示のためにのみ示されており、本発明の限定事項として解釈されないものとする。
【0065】
図1〜5の概略図は、本発明の装置を形成することができる構成要素の配置および順序を示すためにのみ使用される。これらは、一定の比率で描かれたものではない。図1〜5のすべての熱源は楕円形領域として示されているが、これらは例示のためにのみ用いられ、何れか具体的な熱源を表すものでも、このような何れかの熱源の比例サイズまたは形状を表すものでもない。
【0066】
図1は、第1の断熱材2が熱源の皮膚側4に配設され、構造用接着材6によってそこに取り付けられた、本発明の一実施形態の概略図である。
【0067】
図2は、第1の断熱材が皮膚側層と熱源との間に配置された、本発明の一実施形態の概略図である。熱源と温熱装置の皮膚側層との間の第1の断熱材として、発泡体、不織布、スパンボンド、カーディング、ハイドロフォーミング、またはエアーレイによる断熱材の層が使用されている。この実施形態は、構造用接着材10(すなわち、National
Starch & Chemical Company, Bridgewater,
NJ, USAから入手可能な熱溶融性の構造用接着材#70−4589)を1平方メートル当たり15グラム(gsm)の割合で渦巻状に塗布することによって熱源12に取り付けられた上側の層8を有する。第1の断熱材14は熱源12および皮膚側層16に構造用接着材10によって取り付けられている。
【0068】
図3は、第1の断熱材が皮膚側層と熱源との間に組み込まれ、第2の断熱材が上側の層と熱源との間に組み込まれた、本発明の一実施形態の概略図である。熱源の皮膚側および上側に用いられる断熱材は、同じ材料にすることも、異なる材料にすることもできる。この装置は、最上層18と、発泡体、不織布、スパンボンド、カーディング、ハイドロフォーミング、またはエアーレイによる断熱材などの第2の断熱材20とを有する。第2の断熱材20は最上層18に、構造用接着材22(すなわち、National Starch & Chemical Company, Bridgewater, NJ, USAから入手可能な#70−4589)を用いて取り付けられる。第2の断熱材20は熱源24に、構造用接着材22を用いて取り付けられる。第1の断熱材26は熱源の皮膚側24に、構造用接着材22を用いて取り付けられる。第1の断熱材26は皮膚側層28に、構造用接着材22(すなわち、National Starch & Chemical Company, Bridgewater, NJ, USAから入手可能な#70−4589)を用いて取り付けられる。
【0069】
図4は、第1の断熱材が熱源の皮膚側に取り付けられ、温熱装置の皮膚側層をも形成する一実施形態の概略図である。最上層30は熱源34に、構造用接着材32(すなわち、National Starch & Chemical Company, Bridgewater, NJ, USAから入手可能な#70−4589)を用いて取り付けられる。第1の断熱材36は熱源34の皮膚側に、構造用接着材32を用いて取り付けられ、温熱装置の皮膚側層を形成する。
【0070】
図5は、不織布材料が第1の断熱材を形成するように複数層の不織布材料層を折り畳むか、二次成形するか、または積み重ねて互いに接着して厚くすることによって第1の断熱材とし、かつ第1の断熱材が温熱装置の皮膚側層を形成する概略図である。これらの層の接着には、構造用接着材(すなわち、National Starch & Chemical Company, Bridgewater, NJ, USAから入手可能な#70−4589)が用いられる。この装置は、最上層38と、構造用接着材42を用いてその上側に取り付けられた熱源40とを有する。構造用接着材42は、第1の断熱材44を熱源の皮膚側40に取り付ける。
【0071】
図6は、使用者の背中および/または臀部領域向けの本発明の温熱装置の一実施形態の平面図である。装置46は、複数の熱セル48を有し、さらに使用者の胴および/または臀部に巻き付け可能な延長ストラップ部50a、50bを有する。取り付け手段52(すなわち、フックおよびループ締結システムの一部)がストラップ部50aの一端に示されている。取り付け手段52は、装置を使用者の胴および/または臀部の周囲に保持するために、ストラップ部50a、50b同士を留めるために用いられる。対応する取り付け手段がストラップ50bにも配設されているがこの図には見えない。
【0072】
図7は、図6に示す実施形態の部分断面図である。装置46は、発熱組成物62を封入する第1および第2の薄膜層58および60で構成された熱源に構造用接着材56によって取り付けられた最上層54を備える。主断熱層64が膜層60に、構造用接着材66によって取り付けられている。皮膚側層68が主断熱層64に、構造用接着材70によって取り付けられている。
【0073】
図示はされていないが、当業者には理解可能な他の複数の実施形態においては、安定した皮膚側温度をもたらす装置を、使用する熱源に応じて、繰り返し使用可能な装置および使い捨て装置内に形成することも、繰り返し使用可能な装置および使い捨て装置として形成することもできる。再利用可能な、および/または繰り返し使用可能な、装置の非限定的な例として、熱源を保持する再利用可能なポケット内に少なくとも1つの第1の断熱材の層を少なくとも1つ有し、使用時に使用者の皮膚または衣服と熱源との間に第1の断熱材が配設される装置が挙げられる。
【0074】
さらに他の複数の実施形態においては、1つ以上の第1の断熱材を、使用者の皮膚に直接あてがわれる装置またはシステムから分離可能な、および/または取り外し可能な、部分として積層することも、あるいは、例えば第1の断熱材を熱源と使用者の皮膚との間の所定位置に保持するラップ装置を有するシステムの一部として使用することもできる。
【0075】
本願明細書に開示されている寸法および値は、記載どおりの数値に厳密に限定されるものとは理解されないものとする。代わりに、特に明記されていない限り、このような各寸法は記載されている値と、その値を囲む機能的に同等な範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示されている寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0076】
発明を実施するための形態に記載されている全ての文献は、参照により本願明細書の該当箇所に組み込まれたものとし、何れの文献であってもその引用は、本発明に対する従来技術であると認めているとは解釈されないものとする。本文献内の述語の何れかの意味または定義が参照により組み込まれた文献内の同じ述語の何れかの意味または定義と食い違う限りにおいては、本文献内でその述語に割り当てられた意味または定義が優先されるものとする。
【0077】
本発明の特定の実施形態を図示および説明してきたが、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、他のさまざまな変更及び修正を行いうることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲内にあるこのような変更および修正の全ては、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−13786(P2013−13786A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−232879(P2012−232879)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2009−554745(P2009−554745)の分割
【原出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】