説明

測位システム及び測位方法

【課題】 精度が十分でない測位方法によって得られた測位結果の精度を向上させる。
【解決手段】 測位要求端末20の位置を推定する測位サーバ10は、リファレンス端末21についての同じ位置における低精度及び高精度の測位方法による測位結果を記憶するリファレンスデータベース11と、測位要求端末20の測位結果を取得する測位結果取得部13と、測位要求端末20の測位結果によって示される位置から所定の距離にあるリファレンス端末21の測位結果に係る情報を抽出する抽出部14と、抽出された情報に基づくリファレンス端末21の2つの測位結果間の差分を用いて測位要求端末20の測位結果を補正する補正部15と、補正された測位結果を出力する出力部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信端末の位置を推定する測位システム及び測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、移動通信端末の位置を推定する方法として、基地局から発信される電波の受信状況を利用するものがある。この方法では、移動通信端末と基地局との間で送受信される電波の伝送遅延(例えばRTT:Round Trip Time)や強度の減衰量から基地局からの距離を推定して、あるいは、電波に含まれる情報から基地局からの方向を推定して、移動通信端末の位置を推定する(例えば、非特許文献1及び2参照)。
【非特許文献1】Yulin Zhao,“Standardization of Mobile Phone Positioning for 3G Systems”,IEEE CommunicationsMagazine,p.p.108-116,July 2002.
【非特許文献2】Samir S.Soliman and Charles E. Wheatley,“Geolocation technologiesand applications for third generation wireless”,Wireless Communications and Mobile Computing,vol.2,p.p.229-251,2002.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の基地局からの電波を用いた測位(基地局測位)は、端末が移動体通信機能を有していれば実行可能であるので、比較的容易に実施することができる。しかしながら、基地局測位は、GPS(Global Positioning System)による測位等と比べて精度が十分でなく、精度の向上が求められていた。
【0004】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、精度が十分でない測位方法によって得られた測位結果の精度を向上させることができる測位システム及び測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る測位システムは、移動通信端末の位置を推定する測位システムであって、リファレンス用の通信端末についての同じ位置における低精度の測位方法による第1の測位結果と、高精度の測位方法による第2の測位結果とを対応付けて記憶するリファレンスデータベースと、測位対象の移動通信端末についての測位結果を取得する測位結果取得手段と、測位結果取得手段によって取得された測位結果によって示される位置から所定の距離にあるリファレンス用の通信端末についての第1の測位結果及び第2の測位結果に係る情報をリファレンスデータベースから抽出する抽出手段と、抽出手段によって抽出された情報に基づくリファレンス用の通信端末についての第1の測位結果よって示される位置と第2の測位結果によって示される位置との差分を用いて、測位結果取得手段によって取得された測位結果を補正する補正手段と、補正手段によって補正された測位結果を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。なお、上記の測位結果に係る精度は相対的なものである。即ち、第2の測位結果の精度が第1の測位結果の精度よりも高ければよい。
【0006】
本発明に係る測位システムでは、測位対象の移動通信端末の位置から所定の距離関係にあるリファレンス用の通信端末についての第1の測位結果よって示される位置と第2の測位結果によって示される位置との差分に基づいて、測位対象の移動通信端末についての測位結果が補正される。従って、測位対象の移動通信端末の実際の位置と測位対象の移動通信端末についての測位結果によって示される位置との差分が、上記の差分と同様の関係であれば、上記の補正によって測位対象の移動通信端末についての測位結果が実際の位置に近づいたものとなる。即ち、本発明に係る測位システムによれば、精度が十分でない測位方法によって得られた測位結果の精度を向上させることができる。
【0007】
本発明に係る測位システムは、リファレンス用の移動通信端末についての第1の測位結果と第2の測位結果とを取得して、リファレンスデータベースに格納する登録手段を更に備えることが望ましい。この構成によれば、確実にリファレンスデータベースを構成することができ、その結果、本発明を適切かつ確実に実施することができる。
【0008】
リファレンスデータベースは、第2の測位結果に対応付けて、第2の測位結果の精度を示す情報を記憶しており、測位結果取得手段は、測位対象の移動通信端末についての測位結果の精度を示す情報を取得し、抽出手段は、測位結果取得手段によって取得された測位対象の移動通信端末についての測位結果の精度を示す情報とリファレンスデータベースに記憶された第2の測位結果の精度を示す情報とを比較して、比較結果にも基づいて、第1の測位結果及び第2の測位結果に係る情報をリファレンスデータベースから抽出する、ことが望ましい。この構成によれば、確実に、測位対象の移動通信端末についての測位結果よりも精度が高い第1の測位結果のみを補正に用いることができるため、より適切に測位結果の精度を向上させることができる。
【0009】
低精度の測位方法は、電波の発信源とリファレンス用の通信端末との間で送受信された電波に基づいて当該リファレンス用の通信端末の位置を算出する方法であり、測位対象の移動通信端末についての測位の測位方法は、電波の発信源と当該測位対象の移動通信端末との間で送受信された電波に基づいて当該測位対象の移動通信端末の位置を算出する方法である、ことが望ましい。この構成によれば、上述した基地局から発信される電波の受信状況を利用するような測位方法による測位結果の精度の向上を、より確実に行うことができる。
【0010】
リファレンスデータベースは、記憶している第1の測位結果と、低精度の第1の測位結果によって示される位置の算出に用いられた発信源を示す情報を併せて記憶しており、測位結果取得手段は、測位対象の移動通信端末についての測位方法による測位結果と併せて、当該測位結果によって示される位置の算出に用いられた発信源を示す情報を取得し、抽出手段は、リファレンスデータベースによって記憶された発信源を示す情報と測位結果取得手段によって取得された発信源を示す情報とを比較し、比較結果に基づいて、第1の測位結果及び第2の測位結果に係る情報をリファレンスデータベースから抽出する、ことが望ましい。この構成によれば、補正に用いるリファレンス用の通信端末についての測位結果を適切に抽出することができ、測位結果の精度をより向上させることができる。
【0011】
リファレンスデータベースは、第1及び第2の測位結果に対応付けて、リファレンス用の通信端末の移動速度を示す情報を記憶しており、測位結果取得手段は、測位対象の移動通信端末の移動速度を示す情報を取得し、抽出手段は、測位結果取得手段によって取得された測位対象の移動通信端末の移動速度を示す情報とリファレンスデータベースに記憶されたリファレンス用の通信端末の移動速度を示す情報とを比較して、比較結果にも基づいて、第1の測位結果及び第2の測位結果に係る情報をリファレンスデータベースから抽出する、ことが望ましい。この構成によれば、例えば、測位対象の移動通信端末と一定以内の差の移動速度のリファレンス用の通信端末についての測位結果を補正に用いることができ、適切な補正が可能になる。
【0012】
リファレンスデータベースは、第1及び第2の測位結果に対応付けて、それらの測位が行われた時刻を記憶しており、測位結果取得手段は、測位対象の移動通信端末の測位結果が取得された時刻を示す情報を取得し、抽出手段は、測位結果取得手段によって取得された測位対象の移動通信端末の測位結果が取得された時刻を示す情報とリファレンスデータベースに記憶されたリファレンス用の通信端末の測位が行われた時刻を示す情報とを比較して、比較結果にも基づいて、第1の測位結果及び第2の測位結果に係る情報をリファレンスデータベースから抽出する、ことが望ましい。この構成によれば、補正に用いるリファレンス用の通信端末についての測位結果を更に適切に抽出することができ、測位結果の精度を更に向上させることができる。
【0013】
補正手段は、抽出手段によって複数の第1の測位結果及び第2の測位結果が抽出された場合、第1の測位結果及び第2の測位結果の少なくとも何れかにより示される位置に応じて差分を重み付けして、測位結果取得手段によって取得された測位結果を補正することが望ましい。この構成によれば、例えば、測位対象の移動通信端末についての測位結果によって示される位置に近い第1の測位結果及び第2の測位結果をより重く補正に反映させることができ、より適切な補正が可能になる。
【0014】
ところで、本発明は、上記のように測位システムの発明として記述できる他に、以下のように測位方法の発明としても記述することができる。これはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0015】
即ち、本発明に係る測位方法は、リファレンス用の通信端末についての同じ位置における低精度の測位方法による第1の測位結果と、高精度の測位方法による第2の測位結果とを対応付けて記憶するリファレンスデータベースを備え、移動通信端末の位置を推定する測位システムによる測位方法であって、測位対象の移動通信端末についての測位結果を取得する測位結果取得ステップと、測位結果取得ステップにおいて取得された測位結果によって示される位置から所定の距離にあるリファレンス用の通信端末についての第1の測位結果及び第2の測位結果に係る情報をリファレンスデータベースから抽出する抽出ステップと、抽出ステップにおいて抽出された情報に基づくリファレンス用の通信端末についての第1の測位結果よって示される位置と第2の測位結果によって示される位置との差分を用いて、測位結果取得ステップにおいて取得された測位結果を補正する補正ステップと、補正ステップにおいて補正された測位結果を出力する出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
測位対象の移動通信端末の実際の位置と測位対象の移動通信端末についての測位結果によって示される位置との差分が、上記の差分と同様の関係であれば、本発明による補正によって測位対象の移動通信端末についての測位結果が実際の位置に近づいたものとなる。即ち、本発明によれば、精度が十分でない測位方法によって得られた測位結果の精度を向上させることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面とともに本発明に係る測位システム及び測位方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1に、本実施形態に係る測位システムである測位サーバ10を示す。測位サーバ10は、移動通信端末20の位置を推定する装置である。本実施形態では、移動通信端末20の測位は、移動通信端末20からの測位要求に応じて行われるため、測位対象の移動通信端末20を測位要求端末20と呼ぶ。測位サーバ10による測位要求端末20の測位(の制御)は、移動通信システム(セルラ通信システム)の枠組みを利用して行われる。測位サーバ10は、移動通信システムに含まれる複数の基地局(セルラ基地局)30と接続されており各基地局30との間で情報を送受信することができ、また、基地局30を介して測位要求端末20との間で通信を行うことができる。また、測位サーバ10は、移動通信システムに含まれていてもよい。ここで、基地局30は、移動通信端末20との間で電波を送受信する装置であり、それぞれが所定の位置に設けられている。この電波は、後述するように基地局測位に用いられる。即ち、基地局30は、電波の発信源である。
【0019】
測位要求端末20は、例えば、ユーザに携帯される携帯電話機等の装置である。測位要求端末20は、移動体通信網に接続して通信を行う移動体通信機能を有している。即ち、測位要求端末20は、移動体通信網に含まれる複数の基地局30との間で無線通信を行う。測位要求端末20は、ユーザの操作等をトリガとして測位サーバ10に測位要求を行うことによって、測位サーバ10に自端末20の測位を行わせる。測位要求端末20は、測位サーバ10における自端末20の測位のために用いられる移動体通信による情報を取得する。この情報は、測位サーバ10において基地局測位(演算)を行うための情報である。測位サーバ10に送信される測位要求には、この基地局測位用の情報が含められる。
【0020】
基地局測位とは、具体的には、以下に示すような処理である。測位サーバ10は、測位要求端末20から測位サーバ10に送信された、基地局測位用の情報を受信する。基地局測位測位用の情報は、例えば、測位要求端末20によって測定されて取得される、測位要求端末20と基地局30との間で送受信される電波の伝送遅延(例えばRTT)や電波の減衰量を示す情報(あるいはそれらの情報を算出するために測定された情報でもよい)、及び基地局30やセクタを特定する情報(基地局ID,セクタID)である。また、基地局測位測位用の情報として、TOA(Time of Arrival)及びAOA(Angle of Arrival)等が用いられてもよい。測位サーバ10は、上記の電波の伝送遅延等の情報に基づいて、測位要求端末20と基地局30との間の距離や方向を算出して、基地局30の位置情報等を参照して、測位要求端末20の位置を算出する。ここで、測位サーバ10には、基地局30の位置やセクタの方向を示す情報を予め記憶している。なお、上記の基地局測位の方法は、従来から利用されている方法を用いることができる。
【0021】
本実施形態では、上記の測位要求端末20以外にもリファレンス端末21が用いられる。リファレンス端末21は、測位要求端末20の位置の推定の際に用いられる情報を測位サーバ10に提供するリファレンス用の移動通信端末である。リファレンス端末21は、例えば、(例えば、測位要求端末20を所持するユーザとは別の)ユーザによって所持されていてもよいし、測位サーバ10の管理者等によって必要なデータを収集するために所持されていてもよい。リファレンス端末21は、測位要求端末20と同様に基地局測位用の情報を取得して、測位サーバ10に送信する機能を有する。
【0022】
リファレンス端末21は、それに加えて、GPS衛星40から送信される、GPS測位に用いられる信号の受信機能を有する。リファレンス端末21には、GPS衛星40からの信号を受信するためのアンテナが設けられており、そのアンテナが用いられて受信が行われる。リファレンス端末21は、受信したGPS衛星40からの信号(GPS測位用の情報)を測位サーバ10に送信する。
【0023】
上記のGPS衛星40は、時刻に応じて所定の場所に位置しており、当該位置から測位に用いられる測位用の信号を送信している。具体的には、GPS衛星40は、高度約2万kmの6個の周回軌道上に4〜5個ずつ配置されており、時間の経過に伴って周回軌道上を移動する。GPS衛星40が送信する測位用の信号には、GPS衛星40を区別して特定するための識別情報、GPS衛星40の軌道を示す情報、及び信号を送信した時刻を示す情報が含まれている。
【0024】
リファレンス端末21は、同じ位置において、取得された基地局測位用の情報とGPS測位用の情報とを対応付けて測位サーバ10に送信する。リファレンス端末21からの情報の送信は、例えば、(リファレンス端末21の)移動体通信網への位置登録時に行われることとしてもよい。また、それ以外でも、例えば、リファレンス端末21から緊急通報が行われたときや、リファレンス端末21において位置検索サービスが用いられたときに行われてもよい。なお、リファレンス端末21からの当該情報の取得及び送信は、測位要求端末20の測位が行われえる場所(エリア)において、万遍なく行われているものとする。
【0025】
測位要求端末20及びリファレンス端末21は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ及び無線通信モジュール等のハードウェアによって構成されている。また、測位要求端末20及びリファレンス端末21は、複数存在していてもよい(通常、複数存在している)。
【0026】
ここで測位方式についての説明を行う。先に述べたように、基地局測位の精度は十分ではない。即ち、図2に示すように基地局測位による測位結果によって示される位置51,53は実際に端末が存在している位置52,54とのずれが発生する。その一方で、GPS測位は比較的正確に実際に端末が存在している位置52,54を得ることができる。即ち、上記2つの測位方法の比較においては、基地局測位は低精度の測位方法であり、GPS測位は高精度の測位方法である。
【0027】
基地局測位による測位結果の誤差は、図2に示すように基地局30の位置31との位置関係等に応じて偏りが発生する場合がある。例えば、図2に示す例では、基地局測位による測位結果によって示される位置51,53は、実際に端末が存在している位置52,54から基地局30の位置31から離れる方向にずれている。本発明では、基地局測位による測位要求端末20に対する測位結果に生じているずれを、リファレンス端末21に対する高精度の測位方法及び低精度の測位方法による2つの測位結果を用いて修正して、測位要求端末20に対する測位結果の精度の向上をさせようとするものである。
【0028】
引き続いて、測位サーバ10の機能について説明する。図1に示すように、測位サーバ10は、リファレンスデータベース11と、登録部12と、測位結果取得部13と、抽出部14と、補正部15と、出力部16とを備えて構成される。
【0029】
リファレンスデータベース11は、リファレンス端末21についての同じ位置における基地局測位による測位結果(第1の測位結果)と、GPS測位による測位結果(第2の測位結果)とを対応付けて記憶するデータベースである。具体的には、リファレンスデータベース11は、図3に示すテーブルにデータを格納することによって上記の情報を保持している。図3に示すテーブルでは、1つの行が1件分のデータ(レコード)を示している。
【0030】
図3に示すテーブルにおいて「データID」は、各データを一意に特定する情報である。「推定時刻」は、リファレンス端末21に対する測位を行った時刻を示す情報である。「高精度推定位置関係」は、リファレンス端末21に対する高精度の測位方法による測位結果の情報である。本実施形態では、高精度の測位方法はGPS測位であるので、GPS測位による測位結果の情報が格納される。測位演算によって求められた位置を示す情報として「緯度」、「経度」及び「高度」が格納される。
【0031】
また、当該高精度の測位方法の精度を示す情報である「確度」が格納される。図4に示すように、「確度」は、1から5までの5段階の整数で表され、数値が大きいほど精度がよい(測位の信頼性が高い)ことを示している。「確度」は測位方法(あるいは測位結果により示される情報)によって定められている。例えば、DOP(Dilution of Precision)が小さい(例えば、予め設定した閾値より小さい)GPS測位による測位結果は確度が5とされ、DOPが大きいGPS測位による測位結果は確度が4とされる。また、基地局測位による測位結果は確度が1とされる。
【0032】
「低精度推定位置関係」は、リファレンス端末21に対する低精度の測位方法による測位結果の情報である。本実施形態では、低精度の測位方法は基地局測位であるので、基地局測位による測位結果の情報が格納される。具体的には、「高精度推定位置関係」と同様に、測位演算によって求められた位置を示す情報として「緯度」、「経度」及び「高度」が格納される。また、位置を示す情報に対応付けられて「確度」が格納される。また、基地局測位を行うのに(電波を)用いた基地局30(リファレンス端末21が受信された電波を発信している基地局30)を特定する情報である基地局ID(「BS1ID」,「BS2ID」,「BS3ID」)を格納している。ここで、基地局測位に複数の基地局30の電波を利用した場合には、複数の基地局IDが格納される。また、上記の基地局30の情報は、リファレンス端末21における、測位時のDHO(Diversity Hand Over)状態又は報知情報が受信可能な基地局30の情報としてもよい。
【0033】
「補正値(x)(y)」は、測位要求端末20の測位結果の補正に用いるデータである。この値は、高精度の測位方法の測位結果によって示される位置からの、低精度の測位方法の測位結果によって示される位置との緯度及び経度の差分(低精度−高精度)であり、例えば直交座標系のデータとして算出される。この差分は、図2における基地局測位による測位結果によって示される位置51と、実際に端末が存在している位置52との差分55である(GPS測位によって示される位置が、実際に端末が存在している位置52とした場合)。
【0034】
更に具体的には例えば、以下の近似式から算出されえる。
x=AΔλcosφ1
y=AΔφ
ここで、Aは地球の赤道半径(=6378137m)であり、
Δλ=λ2−λ1
Δφ=φ2−φ1
であり、λ2,φ2は、それぞれ低精度の測位方法の測位結果の経度、緯度であり、λ1,φ1は、それぞれ高精度の測位方法の測位結果の経度、緯度である。図3に示すテーブルにおける補正値のデータの単位はmである。
【0035】
「移動速度」は、リファレンス端末21の移動速度を示す情報である。図3に示すテーブルにおける移動速度のデータの単位はkm/hである。「移動速度」の情報は、リファレンス端末21から測位結果(を得るため)の情報と共に測位サーバ10に受信される。「端末ID」は、リファレンス端末21を特定する情報である。図3に示すように、リファレンスデータベース11には多数の異なるリファレンス端末21のデータが格納される。但し、リファレンスデータベース11には1つのリファレンス端末21のデータのみが格納されていてもよい。また、図3に示す例では、リファレンスデータベース11には、複数組の基地局測位による測位結果及びGPS測位による測位結果が格納されているが、1組の基地局測位による測位結果及びGPS測位による測位結果のみが格納されていてもよい。
【0036】
なお、本実施形態では、リファレンスデータベース11に格納されるデータは、実際の(実在の)リファレンス端末21としているが、必ずしも実際のリファレンス端末21のデータでなくてもよく、例えば、シミュレーション等で得られたデータでもよい。
【0037】
登録部12は、リファレンス端末21についての高精度の測位方法の測位結果と低精度の測位方法の測位結果とを取得して、リファレンスデータベース11に格納する登録手段である。登録部12は、高精度の測位方法の測位結果の取得のためにGPS測位(演算)を行う。具体的には、登録部12は、リファレンス端末21から測位サーバ10に送信された、リファレンス端末21がGPS衛星40から受信した信号の情報を受信する。続いて、登録部12は、その情報からGPS衛星40の位置、リファレンス端末21からGPS衛星40までの距離等を算出して、リファレンス端末21の位置を算出する。また、この算出には、リファレンス端末21によってセルラ通信システムから取得されて測位サーバ10に送信された、GPS衛星40の位置等を示すアシストデータが用いられてもよい。なお、上記のGPS測位演算は、従来のGPS測位演算と同様のものである。また、GPS測位演算は必ずしも登録部12で行われなくてもよく、リファレンス端末21においてGPS測位演算が行われて、登録部12は、その測位結果の情報を受信してもよい。
【0038】
また、登録部12は、低精度の測位方法の測位結果の取得のために基地局測位(演算)を行う。具体的には、登録部12は、リファレンス端末21から測位サーバ10に送信された、上述した基地局測位用の情報を受信して、その情報を基にリファレンス端末21の位置を算出する。また、基地局測位演算は必ずしも登録部12で行われなくてもよく、リファレンス端末21において基地局測位演算が行われて、登録部12はその測位結果の情報を受信してもよい。
【0039】
登録部12は、これらの測位結果の情報を、測位演算を行った測位時刻と共にそれぞれ対応付けて、新たなデータとしてリファレンスデータベース11に登録する。また、基地局測位に係る情報については、基地局測位用の情報に含まれる、基地局測位を行うのに用いた基地局30を特定する情報をリファレンスデータベース11に登録する。また、登録部12は、各測位結果の情報に対して、確度を上述したように測位方法(あるいは測位結果により示される情報)によって定め、測位結果の情報に対応付けてリファレンスデータベース11に登録する。また、登録部12は、上記のように算出された2つの測位結果から、上述したように補正値を算出して、測位結果の情報に対応付けてリファレンスデータベース11に登録する。
【0040】
また、登録部12は、リファレンス端末21からリファレンスデータベース11に測位結果に対応付けて登録される情報である端末ID、移動速度の情報等も取得して、測位結果の情報に対応付けてリファレンスデータベース11に登録する。また、登録部12は、各測位を行った時刻をリファレンスデータベース11に登録する。なお、端末IDは、リファレンス端末21によって予め記憶されており、各測位を行うための情報と併せて測位サーバ10に送信され、登録部12によって受信される。また、移動速度の情報は、例えば、リファレンス端末21が自端末21の移動速度を検出するセンサを備えており、(各測位を行うための情報が取得されたタイミングで)当該センサによって検出された情報がリファレンス端末21から測位サーバ10に送信され、登録部12によって受信される。移動速度の情報については、上記以外でも、例えば、測位サーバ10あるいはリファレンス端末21自身において、測位によって得られた位置の変化に基づいて算出されてもよい。
【0041】
なお、登録部12は、測位演算を行うための情報、補正値を算出するための情報を予め記憶しており、その情報に基づいて演算や算出を行う。
【0042】
測位結果取得部13は、測位要求端末20についての測位結果を取得する測位結果取得手段である。測位結果取得部13によって受信される測位結果を示す情報は、基地局測位による測位結果、即ち、リファレンス端末21に対する低精度の測位方法の測位結果に相当するものである(但し、必ずしも測位方法が一致している必要は無い)。測位結果取得部13は、リファレンス端末21の基地局測位の測位結果の取得と同様に、測位要求として、測位要求端末20から測位サーバ10に送信された上述した基地局測位用の情報を受信して、その情報を基に測位要求端末20の位置を算出する。また、基地局測位演算は必ずしも測位結果取得部13で行われなくてもよく、測位要求端末20において基地局測位演算が行われて、測位結果取得部13はその測位結果の情報を受信してもよい。
【0043】
また、測位結果取得部13は、(リファレンス端末21からの登録部12の取得と同様に)基地局測位を行うのに用いた基地局30を特定する情報、測位要求端末20の測位結果の確度の情報、及び測位要求端末20の移動速度の情報(これらは、リファレンスデータベース11から測位要求端末20の測位結果を補正するために用いられるリファレンス端末21の測位結果のデータを抽出するための情報である)を、測位要求端末20から受信することによって取得する。測位結果取得部13は、取得した測位要求端末20についての測位結果を抽出部14及び補正部15に出力する。また、測位結果取得部13は、測位要求端末20についての測位結果に付随する情報(上記の確度等の情報)、及び測位要求端末20の測位を行った時刻を示す情報(測位要求が行われた時刻としてもよい)を抽出部14に出力する。
【0044】
抽出部14は、リファレンスデータベース11から、測位結果取得部13によって取得された測位要求端末20の測位結果を補正するために用いられるリファレンス端末21の測位結果のデータを抽出する抽出手段である。抽出部14は、リファレンスデータベース11に記憶されたリファレンス端末21の(全ての)測位結果のデータが抽出部14に記憶されている所定の条件を満たすか否かを判断して、当該条件を満たすリファレンス端末21の測位結果を抽出する。
【0045】
抽出部14は、測位要求端末20の測位結果によって示される位置から所定の距離にあるリファレンス端末21の測位結果を取得する。具体的には、抽出部14は、測位要求端末20の測位結果によって示される位置と、リファレンス端末21のGPS測位あるいは基地局測位の測位結果によって示される位置との差分(距離)を取って、当該差分(距離)が予め定められた所定の距離(x[m])以内か否かを判断する。所定の距離以内でないと判断されたリファレンス端末21の測位結果は、条件を満たさないものと判断される。ここで、上記の所定の距離は、具体的には、測位方式間の測位結果の誤差(大きさや方向等の傾向)がほぼ同様なものとみなせる範囲(誤差が同様の傾向を示す範囲)で適宜定められる。また、比較対象のリファレンス端末21の測位結果は、GPS測位及び基地局測位のいずれのものを用いるのか予め定めておく(以下、比較が行われるものについて同様)。
【0046】
また、抽出部14は、測位要求端末20の測位結果の確度とリファレンス端末21のGPS測位による測位結果の確度を比較して、比較結果にも基づいて所定の条件を満たすか否かを判断する。ここで、抽出部14は、リファレンス端末21のGPS測位の確度が測位要求端末20の測位結果の確度以下と判断した場合、リファレンス端末21の測位結果は、条件を満たさないものと判断される。これは、リファレンス端末21のGPS測位の確度が測位要求端末20の測位結果の確度以下であった場合、リファレンス端末21の測位結果を測位要求端末20の測位結果の補正に用いるのは適当ではないからである。本実施形態においては、基地局測位である測位要求端末20の測位結果の確度がリファレンス端末21のGPS測位による測位結果の確度以上となることは実質的にない。しかしながら、測位要求端末20の測位の測位方式、及びリファレンス端末21の測位の2つの測位方式のいずれかを任意の測位方式とした場合、測位要求端末20の測位結果の確度がリファレンス端末21の高精度の測位方式による測位結果の確度以上となることがあるので、上記の判断を行うことが望ましい。
【0047】
また、抽出部14は、測位要求端末20に対する基地局測位を行うのに用いた基地局30を示す情報と、リファレンス端末21に対する基地局測位を行うのに用いた基地局30を示す情報とを比較して、比較結果にも基づいて所定の条件を満たすか否かを判断する。ここで、抽出部14は、測位要求端末20に対する基地局測位を行うのに用いた基地局30と、リファレンス端末21に対する基地局測位を行うのに用いた基地局30を示す情報とが一致していないと判断した場合、リファレンス端末21の測位結果は、条件を満たさないものと判断される。これは、基地局測位に同じ基地局30を用いている場合、測位結果の誤差がほぼ同様になると考えられ、リファレンス端末21のそのような測位結果を、測位要求端末20の測位結果の補正に用いるのが適切であると考えられるからである。
【0048】
また、抽出部14は、測位要求端末20の移動速度を示す情報と、リファレンス端末21の移動速度を示す情報とを比較して、比較結果にも基づいて所定の条件を満たすか否かを判断する。ここで、抽出部14は、測位要求端末20の移動速度とリファレンス端末21の移動速度との差分を取って、当該差分が予め定められた所定の値以内か否かを判断する。所定の値以内でないと判断されたリファレンス端末21の測位結果は、条件を満たさないものと判断される。測位要求端末20の移動速度とリファレンス端末21の移動速度との差分が大きすぎる場合、リファレンス端末21の測位結果を測位要求端末20の測位結果の補正に用いるのは適当ではないからである。
【0049】
また、抽出部14は、測位要求端末20の測位時刻(測位結果が取得された時刻)を示す情報と、リファレンス端末21の測位時刻を示す情報とを比較して、比較結果にも基づいて所定の条件を満たすか否かを判断する。ここで、抽出部14は、測位要求端末20の測位時刻とリファレンス端末21の測位時刻との差分を取って、当該差分が予め定められた所定の値以内か否かを判断する。所定の値以内でないと判断されたリファレンス端末21の測位結果は、条件を満たさないものと判断される。測位時刻が大きく離れている場合、リファレンス端末21の測位結果を測位要求端末20の測位結果の補正に用いるのは適当ではないからである。
【0050】
抽出部14は、上記の何れの判断によっても条件を満たさないと判断されなかった(個々の条件全てを満たすと判断された)リファレンス端末21の測位結果のデータを、上記の所定の条件を満たすものとして測位要求端末20の測位結果を補正するために用いられるリファレンス端末21の測位結果として、リファレンスデータベース11から抽出する。抽出部14は、抽出したデータを補正部15に出力する。
【0051】
なお、抽出部14による上記の判断は、必ずしも全て行われる必要は無い。用いられるリファレンス端末21の測位の測位方式や測位を行うエリアの環境等に応じて、上述した判断から適当なものを用いることができる。例えば、移動速度及び測位時刻の情報を用いた判断を省略することとしてもよい。
【0052】
更に、抽出部14は、上記の判断以外でも、例えば、予めリファレンスデータベース11から抽出するリファレンス端末21の測位結果のデータの数を設定しておき、抽出部14は、測位要求端末20の測位結果によって示される位置からリファレンス端末21のGPS測位あるいは基地局測位の測位結果によって示される位置が近い順にリファレンス端末21の測位結果のデータを抽出することとしてもよい。上記の数が1であれば、図2に示すように、最も近いリファレンス端末21の測位結果のデータを抽出する。
【0053】
補正部15は、抽出部14から入力された情報に基づいて、測位結果取得部13によって取得された測位要求端末20の測位結果を補正する補正手段である。この補正は、抽出部14によって抽出されたリファレンス端末21の高精度の測位方法の測位結果によって示される位置からの、低精度の測位方法の測位結果によって示される位置との緯度及び経度の差分(即ち、リファレンスデータベース11に記憶される補正値)に基づいて行われる。
【0054】
具体的には、補正部15は、測位結果取得部13から入力された測位要求端末20の測位結果により示される位置から、補正値(X,Y)を減算することによって、補正後の測位要求端末20の位置を算出する。抽出部14によって抽出されたリファレンス端末21の測位結果のデータが1つであれば、そのデータの補正値を用いて補正を行う。この補正は、図2に示すように(補正前)測位要求端末20の測位結果によって示される位置53から、リファレンス端末21の測位結果の差分55に対応する補正値56を減算することによって、補正後の測位要求端末20の位置54を算出するものである。
【0055】
一方、抽出部14によって抽出されたリファレンス端末21の測位結果のデータが複数であれば、それらのデータの補正値から補正を行うための補正値を算出する。例えば、それらの補正値の平均を求めて、補正を行うための補正値を算出してもよい。具体的には、図5に示すように、抽出部14によって抽出されたリファレンス端末21の測位結果のデータが3つ(リファレンス端末21−1,リファレンス端末21−2,リファレンス端末21−3)であり、それぞれの補正値(x,y)が(α1,β1)、(α2,β2)、(α3,β3)であれば、補正を行うための補正値(xa,ya)は以下の式により求める。
xa=(α1+α2+α3)/3
ya=(β1+β2+β3)/3
【0056】
あるいは、各リファレンス端末21のGPS測位及び基地局測位の少なくとも何れかの測位結果により示される位置に応じて、補正値を重み付けして、補正を行うための補正値を算出することが好ましい。これは、(補正前の)測位要求端末20の測位結果によって示される位置により近いリファレンス端末21の測位結果によって示される位置の方が誤差の傾向が近くなると考えられるためである。従って、測位要求端末20の測位結果によって示される位置により近いリファレンス端末21の測位結果の補正値の重みを大きくする。具体的には、例えば、図5に示すように、抽出部14によって抽出されたリファレンス端末21の測位結果のデータが3つであれば、以下の式に基づいて補正を行うための補正値(xa,ya)を算出する。なお、図5において示される3つのリファレンス端末21は、リファレンス端末21のGPS測位及び基地局測位の何れかの測位結果により示される位置である。
xa=(α1×a2+α2×a1+α3×b1×a2/b2)/(a2+a1+b1×a2/b2)
ya=(β1×a2+β2×a1+β3×b1×a2/b2)/(a2+a1+b1×a2/b2)
【0057】
なお、図5に示すように辺aは、リファレンス端末21−1の位置とリファレンス端末21−2の位置とを結ぶ辺であり、a1:a2はその辺aが測位要求端末20の位置とリファレンス端末21−3の位置とを結ぶ直線で辺aが内分されるときの割合である(a1がリファレンス端末21−1側でa2がリファレンス端末21−2側)。辺bは、リファレンス端末21−1の位置とリファレンス端末21−3の位置とを結ぶ辺であり、b1:b2はその辺bが測位要求端末20の位置とリファレンス端末21−2の位置とを結ぶ直線で辺bが内分されるときの割合である(b1がリファレンス端末21−1側でb2がリファレンス端末21−3側)。リファレンス端末21−1の重みはa2、リファレンス端末21−2の重みはa1、リファレンス端末21−3の重みはb1×a2/b2となる。なお、上記は内分点の定理(メネラウスの定理)に基づいている。
【0058】
また、上記のような方法以外でも、測位要求端末20の測位結果によって示される位置と、リファレンス端末21の基地局測位又はGPS測位による測位結果により示される位置との距離に応じて、距離が大きくなると重みが小さくなるように重み付けされてもよい。更に、上記の重み付けは、リファレンス端末21の各測位結果の確度を用いて行なうこととしてもよい。この場合は、確度が大きいリファレンス端末21の測位結果の補正値の重みを大きくするように重み付けする。なお、上述した補正の処理の具体例では、補正値として直交座標系の(X,Y)を用いていた。補正値としては、直交座標系以外でも、例えば、極座標系の補正値=(距離,方向)を用いることも可能である。
【0059】
補正部15は、補正後の測位要求端末20の測位結果を出力部16に出力する。また、抽出部14から入力された情報が無かった場合、即ち条件を満たすデータが無く抽出部14によってリファレンス端末21の測位結果のデータが抽出されなかった場合、測位結果取得部13から入力された測位要求端末20の測位結果を補正せずに出力部16に出力する。
【0060】
出力部16は、補正部15によって補正された測位結果を出力する出力手段である。具体的には、出力部16は、測位要求端末20に対して測位結果の情報を送信することによって出力を行う。なお、出力は必ずしも測位要求端末20に対して行われる必要はなく、別の装置等に出力が行われてもよい。以上が、測位サーバ10の機能構成である。
【0061】
図6に測位サーバ10のハードウェア構成を示す。図6に示すように測位サーバ10は、CPU101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、通信を行うための通信モジュール104、並びにハードディスク等の補助記憶装置105等のハードウェアを備えるコンピュータを含むものとして構成される。これらの構成要素がプログラム等により動作することにより、上述した測位サーバ10の機能が発揮される。
【0062】
引き続いて、図7のフローチャートを用いて、本実施形態に係る測位サーバ10で実行される測位処理(測位方法)を説明する。この処理は、例えば、測位サーバ10によって、測位要求端末20から移動体通信網を介して測位要求が受信されることによって開始される。なお、上記以外をトリガとして測位処理が開始されてもよい。
【0063】
また、本処理に先立って、リファレンス端末21から測位サーバ10に測位要求端末20の位置の推定の際に用いられる情報が提供されており、測位サーバ10では登録部12によってその情報が受信されてリファレンスデータベース11への登録が行われている。
【0064】
本処理では、まず、測位結果取得部13によって、測位要求端末20からの測位要求が受信される。続いて、測位結果取得部13によって、測位要求に含まれる基地局測位用の情報に基づいて測位要求端末20の基地局測位(演算)が行われ、測位要求端末20についての測位結果が取得される(S01、測位結果取得ステップ)。取得された測位結果の情報は、測位結果取得部13から抽出部14及び補正部15に出力される。また、リファレンスデータベース11から測位要求端末20の測位結果を補正するために用いられるリファレンス端末21の測位結果のデータを抽出するための情報である、測位要求端末20の測位結果の確度の情報等が測位結果取得部13から抽出部14に出力される。
【0065】
続いて、抽出部14によって、以下のようにリファレンスデータベース11からリファレンス端末21の測位結果のデータの抽出が行われる、まず、抽出部14によって、測位要求端末20の測位結果によって示される位置と、リファレンス端末21の測位結果によって示される位置との差分(距離)を取って、当該差分(距離)が予め定められた所定の距離(x[m])以内か否かが判断される(S02、抽出ステップ)。上記の判断で、所定の距離以内の位置であるリファレンス端末21の測位結果があるとされた場合、続いて、抽出部14によって、そのリファレンス端末21のGPS測位による測位結果の確度と測位要求端末20の測位結果の確度が比較される(S03、抽出ステップ)。
【0066】
当該比較によって、GPS測位の確度が測位要求端末20の測位結果の確度よりも高いリファレンス端末21の測位結果があるとされた場合(S04、抽出ステップ)、続いて、抽出部14によって、そのリファレンス端末21の基地局測位に用いられた基地局30を示す情報と、測位要求端末20に対する基地局測位を行うのに用いた基地局30を示す情報とが比較される(S05、抽出ステップ)。ここで、当該比較によって、リファレンス端末21に対する基地局測位を行うのに用いた基地局30を示す情報と、測位要求端末20に対する基地局測位を行うのに用いた基地局30とが一致しているとされた(そのようなリファレンス端末21の測位結果があるとされた)場合には、そのリファレンス端末21の測位結果のデータが抽出されるデータとして特定される。
【0067】
S02において所定の距離以内の位置であるリファレンス端末21の測位結果がないとされた場合、S04においてGPS測位の確度が測位要求端末20の測位結果の確度よりも高いリファレンス端末21の測位結果がないとされた場合、及びS05においてリファレンス端末21に対する基地局測位を行うのに用いた基地局30を示す情報と測位要求端末20に対する基地局測位を行うのに用いた基地局30とが、いずれのリファレンス端末21の測位結果においても一致してないとされた場合の3つの場合には、抽出すべきリファレンス端末21の測位結果のデータがない旨が抽出部14から補正部15に通知される。
【0068】
その場合、補正部15によって、測位要求端末20の測位結果の補正は行われず、補正部15から出力部16に測位要求端末20の測位結果が出力される。続いて、出力部16によって測位要求端末20の測位結果の測位要求端末20への送信等の出力が行われる(S06)。
【0069】
一方で抽出が行われる場合は、抽出部14によって、特定されたデータがリファレンスデータベース11から抽出されて補正部15に出力される(S07、抽出ステップ)。続いて、補正部15によって、抽出されて入力されたリファレンス端末21の測位結果のデータが1つであるか判断される(S08、補正ステップ)。リファレンス端末21の測位結果のデータが1つであると判断された場合、続いて、補正部15によって、その一つのデータの補正値が用いられて、測位要求端末20の測位結果の補正が行われる(S09、補正ステップ)。リファレンス端末21の測位結果のデータが複数であると判断された場合、続いて、補正部15によって、その複数のデータの補正値に対して、リファレンス端末21の測位結果により示される位置に応じた重み付けを行い、補正を行うための補正値が算出される。続いて、補正部15によって、算出された補正値が用いられて、測位要求端末20の測位結果の補正が行われる(S10、補正ステップ)。
【0070】
S09又はS10において補正が行われた測位要求端末20の測位結果は、補正部15から出力部16に出力される。続いて、出力部16によって、補正された測位要求端末20の測位結果の測位要求端末20への送信等の出力が行われる(S11、出力ステップ)。以上が本実施形態に係る測位サーバ10で実行される測位処理である。S06又はS11で出力された測位結果は、測位要求端末20において表示されてユーザに参照される等して利用される。
【0071】
なお、上記の処理の説明では、リファレンス端末21の測位結果のデータの抽出の際に、上述したような移動速度及び測位時刻の情報を用いた判断を含めていないがこれらを含めることとしてもよい。また、S02〜S05の判断に代えて、測位要求端末20の測位結果によって示される位置からリファレンス端末21の測位結果によって示される位置が近い順にリファレンス端末21の測位結果のデータを抽出することとしてもよい。
【0072】
上述したように本実施形態では、測位要求端末20の位置から所定の位置関係にあるリファレンス端末21についての基地局測位による測位結果よって示される位置とGPS測位による測位結果によって示される位置との差分に基づいて、測位要求端末20についての測位結果が補正される。上述したように、測位要求端末20の実際の位置と測位要求端末20についての測位結果によって示される位置との差分は、リファレンス端末21における2つの測位結果間の差分と同様の関係となる。従って、上記の補正によって測位要求端末20についての測位結果が実際の位置に近づいたものとなる。即ち、本実施形態によれば、例えば基地局測位等の精度が十分でない測位方法によって得られた測位結果の精度を向上させることができる。具体的には、基地局測位をGPS測位並の精度に向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、測位要求端末20の測位は、GPS測位を行っていないにもかかわらずGPS測位と同様の精度とすることができるが、GPS測位と比べて簡易な方法であるため測位時間を低減することもできる。
【0074】
また、本実施形態のようにリファレンス端末21から実測データを受け付けてリファレンスデータベース11への登録を行うこととすれば、確実かつデータの豊富なリファレンスデータベース11を構成することができ、その結果、本発明を適切かつ確実に実施することができる。
【0075】
また、本実施形態のように、リファレンス端末21の位置に加えて、測位結果の確度、移動速度、基地局30の情報及び測位時刻等をリファレンスデータベース11からのデータの抽出の判断に用いることによって、より適切な補正を行うことでき、その結果、測位結果の精度を更に向上させることができる。但し、これらの判断を全て行う必要は無く、状況や環境等に応じて適宜用いることとすることができる。
【0076】
また、補正のためにリファレンスデータベース11から抽出されたデータが複数であった場合、リファレンス端末21における2つの測位結果間の差分に適当な重み付けをすることによって、より適切な補正が可能になる。例えば、測位要求端末20についての測位結果によって示される位置に近いリファレンス端末21の測位結果をより強く補正に反映させることができる。
【0077】
なお、上述した実施形態では、高精度の測位方式をGPS測位、低精度の測位方式を基地局測位としたが、必ずしもこのような組み合わせでなくてもよく、同じ位置における2種類の測位精度の異なる測位結果が用いられて補正されればよい。具体的には、例えば、図4に示した各種測位技術のハイブリッド、UWB(Ultra Wide Band)、自立航法系、RFID(Radio Frequency IDentification)及び無線LAN(Local Area Network)等による測位結果が、上記の異なる測位結果に含まれていてもよい。また、本実施形態では、測位方法の精度を示す情報として、測位方法によって定められる確度を用いたが、測位毎に得られる測位の精度を示す情報(例えば、上記のDOP等)が用いられてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、測位要求端末20の測位は、測位要求端末20からの測位要求を受信することにより開始されていたが、別の装置からの要求により測位要求端末20の測位が開始されてもよい。その場合、測位サーバ10は、測位要求端末20に対して測位演算に必要な情報を要求する。
【0079】
続いて、本発明の実施形態の測位方法によるシミュレーションの結果について説明する。本シミュレーションでは、図2に示すように基地局30の通信エリアであるセルにおいて、測位要求端末20が当該基地局30からの電波を用いて基地局測位を行う。本シミュレーションの基地局測位は、AOA及びTOAを用いて位置推定をすると仮定し、AOA及びTOAには一定の誤差が発生するものとする。また、リファレンス端末21についての2つの測位結果のデータは予めリファレンスデータベース11に格納されているものとする(本シミュレーションでは、リファレンスデータベース11に格納されるリファレンス端末21についての測位結果のデータの数を1,10,100,500の4パターンとした)。また、図8に示すように、セル内に7個の円状のエリア60を設定して、それぞれのエリア60内においてAOA/TOA誤差に相関があるものとした。なお、エリア60間及びエリア60外では相関がないものとした。補正に用いられるデータ(リファレンスデータベース11から抽出されるデータ)は、リファレンス端末21の高精度の測位方法により示される位置(GPS測位を仮定して数m程度の誤差を付与)が、測位要求端末20の測位結果により示される位置に最も近いもの1つであるとした。
【0080】
図9にシミュレーションの結果を示すグラフを示す。図9(a)は上記の相関値が0.7の場合、図9(b)は上記の相関値が1の場合である。図9において横軸は、測位誤差[m]であり、縦軸は累積分布関数(CDF:Cumulative Distribution Function)である。この時の確率は、測位結果の測位誤差がグラフで示される値以下になる確率である。具体的には、図9(a)のグラフでは、リファレンスデータベース11に格納されるリファレンス端末21についての測位結果のデータの数が1のとき、測位誤差が50m以下のなる確率はおよそ0.6となる。
【0081】
また、グラフ中に示される表は、リファレンスデータベース11に格納されるリファレンス端末21についての測位結果のデータの数毎に、CDFが67%及び95%になるときの測位誤差[m]を示している。図9のグラフで示すように、本実施形態に係る方法が、従来の基地局測位と比べて大幅に測位誤差を低減させていることがわかる。具体的には、相関値が1、リファレンス端末21のデータ数が100の場合(図9(b)に対応)のCDFが67%において、92%の改善効果が見られた。この場合、測位精度は7mでありシミュレーションで仮定したGPS測位の誤差とほぼ同等となる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態に係る測位システムである測位サーバの機能構成を示す図である。
【図2】基地局測位の誤差について示した図である。
【図3】リファレンスデータベースに記憶される情報を示すテーブルである。
【図4】測位方法と確度との対応を示す図である。
【図5】測位結果を補正するための補正値の重み付けを説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に係る測位サーバのハードウェア構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る測位サーバで実行される処理(測位方法)を示すフローチャートである。
【図8】実施形態の測位方法によるシミュレーションの条件を示した図である。
【図9】実施形態の測位方法によるシミュレーションの結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0083】
10…測位サーバ、11…リファレンスデータベース、12…登録部、13…測位結果取得部、14…抽出部、15…補正部、16…出力部、101…CPU、102…RAM、103…ROM、104…通信モジュール、105…補助記憶装置、20…測位要求端末(移動通信端末)、21…リファレンス端末、30…基地局、40…GPS衛星。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信端末の位置を推定する測位システムであって、
リファレンス用の通信端末についての同じ位置における低精度の測位方法による第1の測位結果と、高精度の測位方法による第2の測位結果とを対応付けて記憶するリファレンスデータベースと、
測位対象の移動通信端末についての測位結果を取得する測位結果取得手段と、
前記測位結果取得手段によって取得された測位結果によって示される位置から所定の距離にある前記リファレンス用の通信端末についての前記第1の測位結果及び前記第2の測位結果に係る情報を前記リファレンスデータベースから抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された情報に基づく前記リファレンス用の通信端末についての前記第1の測位結果よって示される位置と前記第2の測位結果によって示される位置との差分を用いて、前記測位結果取得手段によって取得された測位結果を補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された測位結果を出力する出力手段と、
を備える測位システム。
【請求項2】
前記リファレンス用の移動通信端末についての前記第1の測位結果と前記第2の測位結果とを取得して、前記リファレンスデータベースに格納する登録手段を更に備える請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記リファレンスデータベースは、前記第2の測位結果に対応付けて、前記第2の測位結果の精度を示す情報を記憶しており、
前記測位結果取得手段は、前記測位対象の移動通信端末についての測位結果の精度を示す情報を取得し、
前記抽出手段は、前記測位結果取得手段によって取得された前記測位対象の移動通信端末についての測位結果の精度を示す情報と前記リファレンスデータベースに記憶された前記第2の測位結果の精度を示す情報とを比較して、比較結果にも基づいて、前記第1の測位結果及び前記第2の測位結果に係る情報を前記リファレンスデータベースから抽出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の測位システム。
【請求項4】
前記低精度の測位方法は、電波の発信源と前記リファレンス用の通信端末との間で送受信された電波に基づいて当該リファレンス用の通信端末の位置を算出する方法であり、
前記測位対象の移動通信端末についての測位の測位方法は、電波の発信源と当該測位対象の移動通信端末との間で送受信された電波に基づいて当該測位対象の移動通信端末の位置を算出する方法である、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項5】
前記リファレンスデータベースは、記憶している前記第1の測位結果と、前記低精度の第1の測位結果によって示される位置の算出に用いられた前記発信源を示す情報を併せて記憶しており、
前記測位結果取得手段は、測位対象の移動通信端末についての測位方法による測位結果と併せて、当該測位結果によって示される位置の算出に用いられた前記発信源を示す情報を取得し、
前記抽出手段は、前記リファレンスデータベースによって記憶された前記発信源を示す情報と前記測位結果取得手段によって取得された前記発信源を示す情報とを比較し、比較結果に基づいて、前記第1の測位結果及び前記第2の測位結果に係る情報を前記リファレンスデータベースから抽出する、
ことを特徴とする請求項4に記載の測位システム。
【請求項6】
前記リファレンスデータベースは、前記第1及び前記第2の測位結果に対応付けて、前記リファレンス用の通信端末の移動速度を示す情報を記憶しており、
前記測位結果取得手段は、前記測位対象の移動通信端末の移動速度を示す情報を取得し、
前記抽出手段は、前記測位結果取得手段によって取得された前記測位対象の移動通信端末の移動速度を示す情報と前記リファレンスデータベースに記憶された前記リファレンス用の通信端末の移動速度を示す情報とを比較して、比較結果にも基づいて、前記第1の測位結果及び前記第2の測位結果に係る情報を前記リファレンスデータベースから抽出する、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項7】
前記リファレンスデータベースは、前記第1及び前記第2の測位結果に対応付けて、それらの測位が行われた時刻を記憶しており、
前記測位結果取得手段は、前記測位対象の移動通信端末の測位結果が取得された時刻を示す情報を取得し、
前記抽出手段は、前記測位結果取得手段によって取得された前記測位対象の移動通信端末の測位結果が取得された時刻を示す情報と前記リファレンスデータベースに記憶された前記リファレンス用の通信端末の測位が行われた時刻を示す情報とを比較して、比較結果にも基づいて、前記第1の測位結果及び前記第2の測位結果に係る情報を前記リファレンスデータベースから抽出する、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項8】
前記補正手段は、前記抽出手段によって複数の前記第1の測位結果及び前記第2の測位結果が抽出された場合、前記第1の測位結果及び前記第2の測位結果の少なくとも何れかにより示される位置に応じて前記差分を重み付けして、前記測位結果取得手段によって取得された測位結果を補正することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項9】
リファレンス用の通信端末についての同じ位置における低精度の測位方法による第1の測位結果と、高精度の測位方法による第2の測位結果とを対応付けて記憶するリファレンスデータベースを備え、移動通信端末の位置を推定する測位システムによる測位方法であって、
測位対象の移動通信端末についての測位結果を取得する測位結果取得ステップと、
前記測位結果取得ステップにおいて取得された測位結果によって示される位置から所定の距離にある前記リファレンス用の通信端末についての前記第1の測位結果及び前記第2の測位結果に係る情報を前記リファレンスデータベースから抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにおいて抽出された情報に基づく前記リファレンス用の通信端末についての前記第1の測位結果よって示される位置と前記第2の測位結果によって示される位置との差分を用いて、前記測位結果取得ステップにおいて取得された測位結果を補正する補正ステップと、
前記補正ステップにおいて補正された測位結果を出力する出力ステップと、
を含む測位方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−151629(P2010−151629A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330297(P2008−330297)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】