説明

測位システム及び測位方法

【課題】 マッチングによる無線機の位置の推定において、高い測位精度の測位結果を得る。
【解決手段】 測位サーバ10は、セルラ端末20の位置を推定する測位システムであって、位置と当該位置におけるセルラ基地局30に応じた当該電波の伝搬時間との関係を示す情報を保持する測位用データベース11と、セルラ端末20によって受信される、セルラ基地局30に応じた電波の伝搬時間を示す伝搬時間情報を取得する伝搬時間情報取得部12と、取得された伝搬時間情報と、測位用データベース11に保持されている情報とをマッチングする比較部13と、マッチング結果に基づいてセルラ端末20の位置を推定する位置推定部14と、推定されたセルラ端末20の位置を出力する出力部15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機の位置を推定する測位システム及び測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セルラ端末(移動通信端末)等の無線機が受信する電波の受信強度(受信レベル)に基づいて、当該無線機の位置を推定する技術が提案されている。特許文献1には、所定の基地局から受信される電波の受信強度と当該電波が受信される位置との関係を示す情報をデータベースに格納しておき、当該データベースを用いて受信強度とのマッチングを行い無線機の位置を推定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−231473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、マッチングによる無線機の位置の推定で受信強度を用いる場合、測位精度が十分でないことがある。例えば、この測位方法においては、セルラ端末の位置の推定対象となる地域をグリッドに区切り、グリッド毎に電波の受信強度をデータベースに格納しておく形態がある。この場合、無線機はどのグリッドに位置しているかが推定されるので、測位精度を上げるためにはグリッドサイズを小さくする必要がある。しかしながら、電波伝搬の特徴からグリッドサイズに限界があり、数10m程度のグリッド間では受信強度の特徴が出ずに、位置を特定できなくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、マッチングによる無線機の位置の推定において、高い測位精度の測位結果を得ることができる測位システム及び測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る測位システムは、無線通信機能を有する無線機の位置を推定する測位システムであって、位置と当該位置における電波の発信源に応じた当該電波の伝搬時間との関係を示す情報を保持するデータベースと、無線機によって受信又は送信される、発信源に応じた電波の伝搬時間を示す伝搬時間情報を取得する伝搬時間情報取得手段と、伝搬時間情報取得手段によって取得された伝搬時間情報と、データベースに保持されている情報とを比較する比較手段と、比較手段による比較結果に基づいて、無線機の位置を推定する位置推定手段と、位置推定手段によって推定された無線機の位置を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
電波の伝搬時間は電波の受信強度に比べて、位置の変化に応じた特徴が出やすい。従って、本発明に係る測位システムによれば、マッチングによる無線機の位置の推定において高い測位精度の測位結果を得ることができる。
【0008】
データベースは、無線機の位置の推定対象となる地域をグリッドに区切り、各グリッドと当該各グリッドにおける電波の発信源に応じた当該電波の伝搬時間との関係を示す情報を保持し、位置推定手段は、グリッドの何れかを無線機の位置として推定する、ことが望ましい。この構成によれば、容易かつ適切に無線機の位置を推定することができる。
【0009】
伝搬時間情報取得手段は、伝搬時間情報として複数の発信源からの電波の受信時刻の差を示す情報を取得することが望ましい。この構成によれば、容易に伝搬時間情報を取得することができ、その結果容易に本発明を実施することができる。
【0010】
データベースは、関係を示す情報を時刻毎に保持し、伝搬時間情報取得手段は、伝搬時間情報に係る電波が無線機によって受信又は送信された時刻を示す時刻情報も取得して、比較手段は、伝搬時間情報取得手段によって取得された時刻情報により示される時刻に応じたデータベースに保持される関係を示す情報を比較に用いる、ことが望ましい。この構成によれば、例えば、時刻に応じて電波の発信源の位置が変わる場合であっても、正確に無線機の位置を推定することができる。
【0011】
ところで、本発明は、上記のように測位システムの発明として記述できる他に、以下のように測位方法としても記述することができる。これはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0012】
即ち、本発明に係る測位方法は、無線通信機能を有する無線機の位置を推定する、位置と当該位置における電波の発信源に応じた当該電波の伝搬時間との関係を示す情報を保持するデータベースを備える測位システムによる測位方法であって、無線機によって受信又は送信される、発信源に応じた電波の伝搬時間を示す伝搬時間情報を取得する伝搬時間情報取得ステップと、伝搬時間情報取得ステップにおいて取得された伝搬時間情報と、データベースに保持されている情報とを比較する比較ステップと、比較ステップにおける比較結果に基づいて、無線機の位置を推定する位置推定ステップと、位置推定ステップにおいて推定された無線機の位置を出力する出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マッチングによる無線機の位置の推定において高い測位精度の測位結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る測位システムである測位サーバの機能構成を示す図である。
【図2】基地局からの電波の受信時刻の差を示す図である。
【図3】測位用データベースに保持される情報の概念示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る測位サーバのハードウェア構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る測位サーバで実行される処理(測位方法)を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る測位サーバで実行される処理(測位方法)の別の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面と共に本発明に係る測位システム及び測位方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に本実施形態に係る測位システムである測位サーバ10を示す。測位サーバ10は、セルラ端末(移動通信端末)20の位置を推定する装置である。測位サーバ10によるセルラ端末20の測位は、電波の発信源であるセルラ基地局30を複数含んで構成されるセルラ通信システム(移動通信システム)の枠組みを利用して行われる。具体的には、セルラ基地局30から送信され、セルラ端末20によって受信される電波の伝搬時間に基づいて行われる。測位サーバ10は、セルラ基地局30等を介して、セルラ端末20との間で情報の送受信を行うことができる。なお、なお、測位サーバ10は、セルラ通信網(移動体通信網)に含まれていてもよい。
【0017】
セルラ端末20は、無線通信機能を有する無線機である。具体的には、セルラ端末20は、移動体通信を行うことができる移動通信端末である。セルラ端末20は、セルラ基地局30との間で無線通信を行う。即ち、セルラ端末20は、セルラ基地局30との間で電波の送受信を行う。セルラ端末20は、自端末20の測位のために、セルラ基地局30から受信された電波の伝搬時間を測定して、伝搬時間を示す伝搬時間情報を取得する。セルラ端末20は、伝搬時間情報を測位サーバ10に送信する。
【0018】
通常、セルラ基地局30からの電波が送信された時刻(タイミング)が、セルラ端末20において把握できない。即ち、通常の場合、セルラ基地局30とセルラ端末20との間で時刻同期がなされていない。その場合、(相対的な)伝搬時間として、複数のセルラ基地局30からの電波の受信時刻の差を測定することとしてもよい。伝搬時間が測定される電波として、例えば、セルラ基地局30から送信されるパイロット信号(報知信号、報知情報)が用いられる。それぞれのセルラ基地局30からは、セルラ基地局30固有のスクランブルコードが用いられたパイロット信号が送信されている。セルラ端末20は、セルラ基地局30に対応するスクランブルコードを用いて受信信号の相関を取ることで、セルラ基地局30毎の受信フレームのタイミングを取ることができる。受信フレームとは、パイロット信号の構成要素である。タイミングを取る受信フレームは予め設定しておくことができる。
【0019】
図2に示すように、セルラ端末20は、複数のセルラ基地局30毎の受信フレームの受信時刻を取得し、それぞれのセルラ基地局30に対応する受信時刻から、いずれか一つのセルラ基地局30に対応する受信時刻(基準時刻)との差分を取る。例えば、図2に示すようにセルラ基地局30Aに対応する受信時刻t_Aと、セルラ基地局30Bに対応する受信時刻t_Bとが取得された場合、その差分Δt=t_A−t_Bを算出する。ここで、基準時刻とする受信時刻は、例えば最も受信強度が高い電波のセルラ基地局30に係るもの、あるいは、セルラ端末20が通信中のセルラ基地局30に係るものが用いられる。セルラ端末20は、上記の差分を示す情報を伝搬時間情報とする。この場合、伝搬時間情報には、何れのセルラ基地局30に対応する受信時刻間の差分かを示す情報(例えば、セルラ基地局30を示す基地局ID)と、差分の値とを含む。また、セルラ基地局30毎の受信時刻を測位サーバ10に送信して、測位サーバ10において受信時刻の差分が算出されてもよい。
【0020】
伝搬時間情報として、上記以外にも例えば、電波のRTT(Round Trip Time)を用いることとしてもよい。RTTを用いる場合、セルラ基地局30とセルラ端末20との間で時刻同期がなされていなくても、折り返しの伝搬時間をセルラ基地局30で測定できるためRTTの値を2で割った値を伝搬時間情報として用いることができる。RTTは、セルラ基地局30又はセルラ端末20等で測定される。この場合、伝搬時間情報には、セルラ基地局30と、伝搬時間(RTTの値を2で割った値)とが対応付けられた情報である。
【0021】
上記のセルラ端末20は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ及び無線通信モジュール等のハードウェアを備えて構成されている。
【0022】
各セルラ基地局30は、セルラ通信網における構成要素である一方で、上述した測位を行うための電波を発信する電波の発信源であり、それぞれ予め位置が決められて設置されている。また、各セルラ基地局30には、基地局ID等のセルラ基地局30を一意に特定するための情報が設定されており、測位サーバ10及びセルラ端末20は当該情報に基づいてセルラ基地局30を特定することができる。なお、セルラ基地局30は、CPU、メモリ及び無線通信モジュール等のハードウェアを備えて構成されている。
【0023】
引き続いて、測位サーバ10の機能的な構成を説明する。図1に示すように、測位サーバ10は、測位用データベース11と、伝搬時間情報取得部12と、比較部13と、位置推定部14と、出力部15とを備えて構成される。
【0024】
測位用データベース11は、セルラ端末20の測位に用いられる、位置と当該位置におけるセルラ基地局30に応じた当該電波の伝搬時間との関係を示す情報を保持するデータベースである。具体的には、測位用データベース11は、セルラ端末20の位置の推定対象となる地域をグリッドに区切り、グリッド毎に伝搬時間との関係を示す情報を記憶する。グリッド60とは、例えば、図3に示すように、上記の地域をメッシュ状に区切ったものである。また、測位用データベース11は、各グリッドの位置を示す情報、例えば、グリッドの位置を示す緯度及び経度の情報も記憶しておく。伝搬時間を示す情報は、例えば、μ秒といった単位のものである。
【0025】
測位用データベース11によって保持される伝搬時間の情報は、伝搬時間情報として用いられる情報に対応するものである。即ち、伝搬時間情報として、セルラ基地局30間の受信時刻の差の情報を用いる場合には、測位用データベース11によって保持される伝搬時間の情報もセルラ基地局30間の受信時刻の差を用いる。その場合、例えば、セルラ端末20の位置の推定対象となる地域において電波を受信しうる全てのセルラ基地局30の組み合わせについて、測位用データベース11に受信時刻の差の情報を保持させておく。図3に示すように、セルラ基地局30の組み合わせ70毎に受信時刻の差の情報を保持する。例えば、セルラ基地局30A−セルラ基地局30Bの受信時刻の差、セルラ基地局30A−セルラ基地局30Cの受信時刻の差等毎に受信時刻の差の情報といったように、全てのセルラ基地局30の組み合わせ70毎の情報を保持する。また、伝搬時間情報として、RTTを用いる場合には、測位用データベース11によって保持される伝搬時間の情報もセルラ基地局30毎の電波の伝搬時間を用いる。
【0026】
セルラ端末20の測位時には、測位用データベース11には予め上記の情報が格納されている。測位用データベース11の格納される情報は、例えば、以下のように2つの方法の何れかにより(あるいは両方を併用して)得ることができる。
【0027】
一つは、伝搬モデルによる予測による方法である。具体的には、レイトレース等を用いて、セルラ基地局30と測定位置(グリッドの位置に対応)との間の伝搬経路及び受信強度を推定する。そして、複数存在する伝搬経路の中から最大の受信強度のパスから、−XdB以内(ここで、Xは例えば予め設定された閾値)の伝搬経路のものに絞り込む。この中から最も経路の短いものを選択し、この経路の長さから、この場所におけるセルラ基地局30からの電波の伝搬時間を算出する。この演算を全てのセルラ基地局30及び全ての測定位置(全てのグリッド)に対して行う。なお、受信時刻の差は、2つのセルラ基地局30の伝搬時間及びセルラ基地局30からの電波の送信時刻(送信時間間隔)からも求められる。
【0028】
もう一つは、測定器等による事前測定による方法である。測定車等にGPS(Global Positioning System、全地球測位システム)等の位置座標を取得できる測定器と、セルラ基地局30からの電波の伝搬時間(二つのセルラ基地局30間の電波の受信時刻の差を含む)を測定できる測定器を搭載し、道路上を走行してデータを収集する。電波の伝搬時間は、測定できる全てのセルラ基地局30に対して取得してGPS等から得られる位置座標に対応付ける。データが取得できない場所に関しては、前後左右のデータから補間(例えば、線形補間)する。
【0029】
測位用データベース11に保持される情報は、比較部13及び位置推定部14によって必要に応じて取得されて参照される。
【0030】
伝搬時間情報取得部12は、測位対象であるセルラ端末20によって受信又は送信される電波に係る電波伝搬時間情報を取得する伝搬時間情報取得手段である。具体的には、伝搬時間情報取得部12は、セルラ端末20又はセルラ基地局30から送信された伝搬時間情報を受信することによって、伝搬時間情報を受信する。また、それ以外でも、伝搬時間情報取得部12は、セルラ端末20からセルラ基地局30毎の電波の受信時刻を示す情報を受信して、それらの受信時刻の2つのセルラ基地局30の間の差分を算出して伝搬時間情報を取得することとしてもよい。伝搬時間情報取得部12は、取得した電波伝搬時間情報を比較部13に出力する。
【0031】
比較部13は、伝搬時間情報取得部12によって取得された伝搬時間情報と、測位用データベース11に保持されている情報とを比較する比較手段である。具体的には、比較部13は、測位用データベース11に保持されているグリッド毎の伝搬時間を示す情報と、伝搬時間情報取得部12によって取得された伝搬時間情報とのマッチング(照合)を行う。比較部13によるマッチング処理の結果、グリッド毎に測位用データベース11に保持されている伝搬時間を示す情報と伝搬時間情報取得部12によって取得された伝搬時間情報との類似度(尤度)が算出される。
【0032】
比較部13は、具体的には、以下の式を記憶しており、各グリッドnにおける尤度Pを算出する。この算出方法はユークリッド距離を用いた方法である。
【数1】


ここで、上記の式において、Dn,bは測位用データベース11に保持されている伝搬時間を示す情報である。nはグリッドを示す添え字であり、bは伝搬時間の情報に対応するセルラ基地局30の添え字である。即ち、bは、伝搬時間情報がセルラ基地局30間の受信時刻の差である場合には受信時刻の差に係るセルラ基地局30の組み合わせを示す添え字であり、伝搬時間情報がセルラ基地局30毎の伝搬時間である場合にはセルラ基地局30を示す添え字である。Tn,bは、伝搬時間情報取得部12によって取得された伝搬時間情報である。Pは値が大きいほど尤度が高いことを示している。即ち、Pnの値が大きいほど、グリッドnにおける測位用データベース11に保持されている情報に係る伝搬時間と、伝搬時間情報取得部12によって取得された伝搬時間情報に係る伝搬時間とが類似していることを示している。
【0033】
比較部13は、全てのグリッドnに対してPを算出する。上記の式において、(Dn,b−Tn,b)の項については、Tn,bが存在しているbに関してのみ算出が行われる。また、伝搬時間情報がセルラ基地局30間の受信時刻の差である場合、測位用データベース11に保持されている情報と、伝搬時間情報取得部12によって取得された伝搬時間情報との方向が逆になっている場合は、方向を揃える。即ち、例えば、測位用データベース11に保持されている情報がセルラ基地局30A−セルラ基地局30Bの受信時刻の差であり、伝搬時間情報取得部12によって取得された伝搬時間情報がセルラ基地局30B−セルラ基地局30Aの受信時刻の差である場合、伝搬時間情報取得部12によって取得された伝搬時間情報に−1をかけて方向を揃える。比較部13は、算出したPを示す情報を、グリッドnを特定する情報と共に位置推定部14に出力する。
【0034】
位置推定部14は、比較部13による比較結果に基づいて、セルラ端末20の位置を推定する位置推定手段である。具体的には、位置推定部14は、比較部13から入力されたPを参照して、最も大きい値のPのグリッドnの位置を示す情報をセルラ端末20の位置として測位用データベース11から取得する。位置推定部14は、セルラ端末20の位置として取得したグリッドnの位置を示す情報を出力部15に出力する。なお、位置推定部14は、必ずしも一つのグリッドnの位置をセルラ端末20の位置とするのではなく、例えば、Pの値が大きい順に複数のグリッドnの位置をセルラ端末20の位置の候補とすることとしてもよい。また、位置推定部14が予め記憶した閾値よりもPが大きかった場合のみ、グリッドnの位置を示す情報をセルラ端末20の位置とすることしてもよい。
【0035】
なお、比較部13によるマッチング処理、及び位置推定部14による位置推定の処理については、必ずしも上記のものでなくてもよく、例えば、受信強度の情報を用いたパターンマッチングによる測位演算と同様のものが用いることができる場合にはそれを用いてもよい。
【0036】
出力部15は、位置推定部14によって推定されたセルラ端末20の位置を出力する出力手段である。出力部15は、位置推定部14から入力されたセルラ端末20の位置を示す情報を、セルラ端末20に送信する等、使用内容に応じて出力する。以上が、測位サーバ10の機能構成である。
【0037】
図4に測位サーバ10のハードウェア構成を示す。図4に示すように測位サーバ10は、CPU101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、通信を行うための通信モジュール104、並びにハードディスク等の補助記憶装置105等のハードウェアを備えるコンピュータを含むものとして構成される。これらの構成要素がプログラム等により動作することにより、上述した測位サーバ10の機能が発揮される。
【0038】
引き続いて、図5のフローチャートを用いて、本実施形態に係る測位サーバ10で実行される測位処理(測位方法)を説明する。この処理は、例えば、測位サーバ10によって、セルラ端末20からセルラ通信網を介して測位要求が受信されることによって開始される。なお、上記以外をトリガとして測位処理が開始されてもよい。
【0039】
まず、セルラ端末20において測定されて取得された、セルラ端末20において受信された電波のセルラ基地局30間の受信時刻の差分の情報が、伝搬時間情報としてセルラ端末20から測位サーバ10に送信される。測位サーバ10では、伝搬時間情報取得部12によって電波伝搬時間情報が受信される(S01、伝搬時間情報取得ステップ)。取得された電波伝搬時間情報は、伝搬時間情報取得部12から比較部13に出力される。
【0040】
続いて、比較部13によって、グリッド毎の測位用データベース11に保持されている伝搬時間を示す情報と、伝搬時間情報取得部12によって取得された伝搬時間情報とがマッチングされる。具体的には、比較部13によって各グリッドnにおける尤度Pが算出される(S02、比較ステップ)。算出されたPを示す情報は、比較部13から位置推定部14に出力される。
【0041】
続いて、位置推定部14によって、比較部13から入力されたPに基づいてセルラ端末20の位置が推定される(S03、位置推定ステップ)。推定されたセルラ端末20の位置を示す情報は、位置推定部14から出力部15に出力される。
【0042】
続いて、出力部15によって、位置推定部14によって推定されたセルラ端末20の位置が例えばセルラ端末20に出力されて(S04、出力ステップ)、測位処理が終了する。以上が本実施形態に係る測位サーバ10で実行される測位処理である。
【0043】
上述したように、本実施形態によれば、セルラ端末20の位置に応じた電波の伝搬時間のパターンのマッチングにより、セルラ端末20の位置が推定される。電波の伝搬時間は電波の受信強度に比べて、位置の変化に応じた特徴が出やすい。従って、本実施形態によれば、マッチングによるセルラ端末20の位置の推定において高い測位精度の測位結果を得ることができる。
【0044】
また、本実施形態のようにグリッドを用いてセルラ端末20の位置の推定を行うこととすれば、容易かつ適切にセルラ端末20の位置を推定することができる。
【0045】
また、本実施形態のように、伝搬時間情報をセルラ基地局30間の受信時刻の差分の情報にすることとすれば、各セルラ基地局30からの電波の発信のタイミング等を把握することなく伝搬時間情報を得ることができる。従って、容易に伝搬時間情報を取得することができ、その結果容易に本発明を実施することができる。
【0046】
なお、上述したように、本実施形態では、測位演算を行う主体が測位サーバ10であったが、測位演算を行う主体がセルラ端末20であってもよい。即ち、その場合、本発明の機能をセルラ端末20が全て備えている構成であってもよい。その場合、判定等に必要な情報を予めセルラ端末20に送信しておく。また、セルラ端末20が備えるICチップに全ての機能が備えられていてもよい。また、上述した機能の何れかをセルラ端末20が備える構成としてもよい。
【0047】
また、上述したように測位対象となるセルラ端末20は、必ずしもセルラ通信が行えるものでなくてもよく、無線通信が行えるものであればよい。具体的には例えば、上述したように無線タグから情報の読出しができたり、無線LANが行えたりするものであればよい。即ち、伝搬時間情報に係る電波は、必ずしも、セルラ通信に係る電波である必要はない。
【0048】
上述した実施形態では、伝搬時間情報に係る電波はセルラ通信に係るものであった。以下に説明するように伝搬時間情報に係る電波は、GPSに係るものであってもよい。
【0049】
その場合、セルラ端末20は、GPS測位に用いられる信号の受信機能を有する。具体的には、セルラ端末20は、GPS衛星から送信される、測位に用いられる信号(電波)を受信する手段を備える。セルラ端末20には、GPS衛星からの信号を受信するためのアンテナが設けられており、そのアンテナが用いられて受信が行われる。セルラ端末20は、GPS衛星からの電波について上述した実施形態と同様に伝搬時間情報を取得する。
【0050】
上記のGPS衛星は、時刻に応じて所定の場所に位置しており、当該位置から測位に用いられる測位用の信号を送信している。具体的には、GPS衛星は、高度約2万kmの6個の周回軌道上に4〜5個ずつ配置されており、時間の経過に伴って周回軌道上を移動する。GPS衛星が送信する測位用の信号には、GPS衛星を区別して特定するための識別情報、GPS衛星の軌道を示す情報(アルマナック又はエフェメリス)、及び信号を送信した時刻を示す情報が含まれている。
【0051】
上記のようにGPSにおける電波の発信源であるGPS衛星は、セルラ通信システムにおける電波の発信源とは異なり、時刻に応じて位置が異なることとなる。従って、測位サーバ10におけるセルラ端末20の位置の推定も、電波の発信源が時刻に応じたものになることを考慮されて行われる必要がある。例えば、以下のような構成をとることができる。
【0052】
測位用データベース11は、位置と当該位置におけるGPS衛星に応じた電波の伝搬時間との関係を示す情報を時刻毎に保持する。即ち、測位用データベース11は、当該関係を示す情報を時刻に応じたGPS衛星の位置毎に保持する。具体的には、図3を用いて上述した当該関係を示す情報を、一定間隔の時刻(例えば、30分毎)を示す情報に対応付けて保持する。
【0053】
この場合、測位用データベース11の格納される情報は、例えば、上述したセルラ基地局30からの電波の伝搬時間と同様に、伝搬モデルによる予測による方法により得ることができる。その際、時刻毎のGPS衛星の位置(位置座標)は、GPS衛星の軌道を示す情報を用いて計算することができる。
【0054】
伝搬時間情報取得部12は、伝搬時間情報に係る電波がセルラ端末20によって受信された時刻を示す時刻情報も取得する。具体的には例えば、セルラ端末20から伝搬時間情報と併せて時刻情報も受信することで取得してもよい。また、それ以外にも、例えば、セルラ端末20が電波を受信してすぐに当該電波に係る伝搬時間情報を送信することとすれば、伝搬時間情報取得部12は、伝搬時間情報を受信した時刻を時刻情報として用いてもよい。
【0055】
測位用データベース11の格納される位置と伝搬時間との関係を示す情報のうち、比較部13は、伝搬時間情報取得部12によって取得された時刻情報により示される時刻に応じた関係を示す情報を上記の比較に用いる。具体的には例えば、比較部13は、時刻情報によって示される時刻Tuと、測位用データベース11に格納された上記の関係を示す情報に対応付けられた時刻Tdの情報とを比較する。測位用データベース11に格納された時刻の情報のうち、時刻Tuと最も近い時刻Tdの情報を取得する。
【0056】
ここで、時刻Tuと時刻Tdとの差がΔT以上離れている場合には、マッチング処理を行わない。ここで、ΔTは予め比較部13に記憶されている値である。即ち、比較部13は、時刻Tdと時刻Tuとが以下の式を満たすか否かを判断する。
|Tu−Td|<ΔT
この式を満たすと判断した場合、時刻Tdに対応付けられた、位置と伝搬時間との関係を示す情報を用いてマッチング処理(上記のPの算出)を行う。一方、
この式を満たさないと判断した場合、マッチング処理は行わずセルラ端末20の測位が失敗したものとして処理を終了する。なお、上記の判断を行わず、単に時刻Tuと最も近い時刻Tdに対応付けられた関係を用いてマッチングを行うこととしてもよい。
【0057】
引き続いて、図6のフローチャートを用いて、GPS衛星からの電波を用いる場合の測位サーバ10で実行される測位処理(測位方法)を説明する。この処理は、例えば、測位サーバ10によって、セルラ端末20からセルラ通信網を介して測位要求が受信されることによって開始される。なお、上記以外をトリガとして測位処理が開始されてもよい。
【0058】
まず、セルラ端末20において測定されて取得された、セルラ端末20において受信された電波のGPS衛星間の受信時刻の差分の情報が、伝搬時間情報としてセルラ端末20から測位サーバ10に送信される。また、セルラ端末20
から伝搬時間情報と併せて時刻情報が測位サーバ10に送信される。測位サーバ10では、伝搬時間情報取得部12によって電波伝搬時間情報及び時刻情報が受信される(S11、伝搬時間情報取得ステップ)。取得された電波伝搬時間情報は、伝搬時間情報取得部12から比較部13に出力される。
【0059】
続いて、比較部13によって、測位用データベース11に格納された時刻の情報のうち、時刻情報により示される時刻Tuと最も近い時刻Tdの情報が取得される(S12、比較ステップ)。続いて、比較部13によって、時刻Tdと時刻Tuとが以下の式を満たすか否かが判断される(S13、伝搬時間情報取得ステップ)。
|Tu−Td|<ΔT
【0060】
この式を満たすと判断された場合、グリッド毎の測位用データベース11に保持されている時刻Tdに対応付けられた伝搬時間を示す情報と、伝搬時間情報取得部12によって取得された伝搬時間情報とがマッチングされる。具体的には、比較部13によって各グリッドnにおける尤度Pが算出される(S14、比較ステップ)。算出されたPを示す情報は、比較部13から位置推定部14に出力される。
【0061】
続いて、位置推定部14によって、比較部13から入力されたPに基づいてセルラ端末20の位置が推定される(S15、位置推定ステップ)。推定されたセルラ端末20の位置を示す情報は、位置推定部14から出力部15に出力される。
【0062】
続いて、出力部15によって、位置推定部14によって推定されたセルラ端末20の位置が例えばセルラ端末20に出力されて(S16、出力ステップ)、測位処理が終了する。
【0063】
S13において、式を満たさないと判断された場合、マッチング処理は行われずセルラ端末20の測位が失敗したものとして処理を終了する。例えば、測位が失敗した旨の情報がセルラ端末20に出力されて(S17)、測位処理が終了する。以上がGPS衛星からの電波を用いる場合の測位サーバ10で実行される測位処理である。
【0064】
上記のような構成によれば、GPS衛星のように時刻に応じて電波の発信源の位置が変わる場合であっても、正確にセルラ端末20の位置を推定することができる。
【符号の説明】
【0065】
10…測位サーバ、11…測位用データベース、12…伝搬時間情報取得部、13…比較部、14…位置推定部、15…出力部、20…セルラ端末、30…セルラ基地局、101…CPU、102…RAM、103…ROM、104…通信モジュール、105…補助記憶装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機能を有する無線機の位置を推定する測位システムであって、
位置と当該位置における電波の発信源に応じた当該電波の伝搬時間との関係を示す情報を保持するデータベースと、
無線機によって受信又は送信される、前記発信源に応じた電波の伝搬時間を示す伝搬時間情報を取得する伝搬時間情報取得手段と、
前記伝搬時間情報取得手段によって取得された伝搬時間情報と、前記データベースに保持されている情報とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、前記無線機の位置を推定する位置推定手段と、
前記位置推定手段によって推定された前記無線機の位置を出力する出力手段と、
を備える測位システム。
【請求項2】
前記データベースは、前記無線機の位置の推定対象となる地域をグリッドに区切り、各グリッドと当該各グリッドにおける電波の発信源に応じた当該電波の伝搬時間との関係を示す情報を保持し、
前記位置推定手段は、前記グリッドの何れかを前記無線機の位置として推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記伝搬時間情報取得手段は、前記伝搬時間情報として複数の発信源からの電波の受信時刻の差を示す情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の測位システム。
【請求項4】
前記データベースは、前記関係を示す情報を時刻毎に保持し、
前記伝搬時間情報取得手段は、前記伝搬時間情報に係る電波が前記無線機によって受信又は送信された時刻を示す時刻情報も取得して、
前記比較手段は、前記伝搬時間情報取得手段によって取得された時刻情報により示される時刻に応じた前記データベースに保持される前記関係を示す情報を比較に用いる、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の測位システム。
【請求項5】
無線通信機能を有する無線機の位置を推定する、位置と当該位置における電波の発信源に応じた当該電波の伝搬時間との関係を示す情報を保持するデータベースを備える測位システムによる測位方法であって、
無線機によって受信又は送信される、前記発信源に応じた電波の伝搬時間を示す伝搬時間情報を取得する伝搬時間情報取得ステップと、
前記伝搬時間情報取得ステップにおいて取得された伝搬時間情報と、前記データベースに保持されている情報とを比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおける比較結果に基づいて、前記無線機の位置を推定する位置推定ステップと、
前記位置推定ステップにおいて推定された前記無線機の位置を出力する出力ステップと、
を含む測位方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−133331(P2011−133331A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292655(P2009−292655)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】