測位用信号の再送信装置
【課題】衛星からの信号が届きにくい環境において、GPS測位を可能にするために信号を再送信するにあたって、低コストであるとともに、変更が容易なシステムを実現する。
【解決手段】GPS衛星31からの信号をアンテナ32で受信し、伝送路34を介して、屋内のアンテナ38から再送信するようにした再送信装置において、伝送路34をLANなどの汎用のデジタル伝送路とし、このためアンテナ32の受信信号を信号変換部33でデジタル信号へ変換して伝送路34へ送信し、信号復元部36で伝送路34からのデジタル信号を受信してGPS信号を復元し、アンテナ38から再送信する。したがって、同軸ケーブルによる接続を、アンテナ32,38と、その近くに設けられる信号変換部33または信号復元部36との間だけとし、設計および施工の手間を削減でき、かつ材料費も削減することができ、低コストであるとともに、変更を容易にできる。
【解決手段】GPS衛星31からの信号をアンテナ32で受信し、伝送路34を介して、屋内のアンテナ38から再送信するようにした再送信装置において、伝送路34をLANなどの汎用のデジタル伝送路とし、このためアンテナ32の受信信号を信号変換部33でデジタル信号へ変換して伝送路34へ送信し、信号復元部36で伝送路34からのデジタル信号を受信してGPS信号を復元し、アンテナ38から再送信する。したがって、同軸ケーブルによる接続を、アンテナ32,38と、その近くに設けられる信号変換部33または信号復元部36との間だけとし、設計および施工の手間を削減でき、かつ材料費も削減することができ、低コストであるとともに、変更を容易にできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPSなどの測位用信号を、通常、GPS測位機能を備えた移動端末による測位不可能な、あるいは測位が困難な屋内や地下などへ再送信する測位用信号の再送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人や物の場所を検出する方法として、前記GPSを始めとする衛星測位システムが広く用いられている。これらの測位システムには、通常数GHzといった高周波が用いられ、かつ受信電波電力が低いため、障害物があると測位できないという問題がある。近年は、これらを解決するために、高感度GPSあるいはネットワーク支援型GPSといった技術が開発され、携帯電話等の機器に使用されている。
【0003】
前記高感度GPSでは、デジタル信号処理によってノイズを除去することで、微弱なGPS信号であっても信号を検出することが可能となっている。また、前記ネットワーク支援型GPSでは、信号検出に必要な情報をネットワークを介してサーバからGPS受信機側へ送信したり、あるいはGPS受信機側で検出した信号をサーバへ送信し、サーバ側で測位演算を行うなどの方法がとられている。これらの技術によって、微弱なGPS信号を受信できるものの、木造の住宅や、あるいは市街地の細い道路などで利用できるようになったのみであり、通常、人が社会生活を行う状況において多くの時間を割くビル等のコンクリートの建物の中や、地下街などでは、依然としてGPSによる測位が不可能な場所が数多くある。
【0004】
したがって、GPSを利用したシステムとして、たとえば子供や老人などの所在を確認するために利用されるヒューマンロケーションシステムでは、GPS受信機を所持している子供や老人が学校や病院などの建物内にいる場合には、居場所を確認できないなど、大きな問題がある。また、我が国では、2007年から、110番通報などで発信位置を特定できるように携帯電話の端末装置にはGPS受信機を搭載することが義務付けられており、測位不能な場所を減少することが望まれる。
【0005】
そこで、このような問題を解決するための従来技術が、特許文献1で提案されている。その従来技術によれば、図13で示すように、シールドされた環境内に複数の疑似衛星となるGPS信号の送信装置11を設け、コンピュータ処理装置から成るGPSシミュレータ12によって作成したその環境内で受信されるであろうGPS信号を各送信装置11へ配信することで、屋外と同様の環境で移動端末が使用可能となっている。
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、GPSシミュレータ12は、元々GPS受信機の開発に使用されるもので、数百〜数千万円もする程高価であるという問題がある。そこで、もっと簡単には、図14で示すように、GPS衛星21からの信号を屋上に設置したGPSアンテナ22で受信し、屋内に適宜設置したGPSアンテナa1〜a3から再送信するようにした構成が従来から用いられている。具体的には、前記GPSアンテナ22で受信した信号は、伝送路長や分配数などに応じて、アンプ23において、適宜増幅された後、同軸ケーブル24によって屋内や地下へ引き込まれ、分岐・分配器b1,b2によって適宜分配されて前記GPSアンテナa1〜a3に与えられる。
【0007】
このように構成することで、移動端末での測位結果としては、ビル屋上に設置したGPSアンテナ22の位置が得られることになり、多少の誤差はあるものの、安価な構成で、GPS測位が不可能であった場所においても測位を可能とすることができる。
【特許文献1】特許第3421790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の従来技術は、比較的規模が小さい場合は、安価に構成することができる。しかしながら、分岐・分配数が増えると、高価な高周波の部品が増加し、施工費用が増加するとともに、高周波信号を扱う専門知識が必要となり、設計も高価になる。また、一旦施工した後に、GPSアンテナa1〜a3を増設するなどの変更を行う場合、変更箇所以外の部分に影響が生じる可能性があり、変更のための設計が煩雑で、柔軟性に乏しいという問題もある。
【0009】
具体的には、GPSアンテナ22の近傍に設置されるアンプ23に対して、最上階に設置された直流電源p1から、バイアスターミナルと呼ばれる直流電源重畳器t1を介して前記同軸ケーブル24に電源供給を行い、前記アンプ23およびGPSアンテナ22のコンバータに電源供給を行う。一方、この直流電流が各GPSアンテナa1〜a3に漏れないように、分岐・分配器b1,b2の下流側に、各GPSアンテナa1〜a3に対応した直流電源カッターc1〜c3が設けられる。また、伝送路長が長くなると必要に応じてアンプ25が設けられ、そのアンプ25への電源供給を行う直流電源p2および直流電源重畳器t2が設けられる。
【0010】
これらの分岐・分配器b1,b2、直流電源重畳器t1,t2および直流電源カッターc1〜c3などの各種機器を接続するためには高周波用コネクタが必要となり、これらの高周波用の機器・部品は非常に高価である。また、アンプ24やそれに付随する直流電源p2ならびに直流電源重畳器t1,t2および直流電源カッターc1〜c3の配線・機器設計には、高周波信号を扱う専門知識が必要となり、設計も高価になる。
【0011】
本発明の目的は、低コストであるとともに、変更が容易な測位用信号の再送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の測位用信号の再送信装置は、測位用の信号を第1のアンテナで受信し、伝送路を介して、第2のアンテナから再送信することで、前記測位用の信号を受信し難い環境においても、測位機能を備えた移動端末による測位を可能にする測位用信号の再送信装置において、前記伝送路は汎用のデジタル伝送路から成り、前記第1のアンテナの受信信号をデジタル信号へ変換し、前記デジタル伝送路へ送信する信号変換部と、前記デジタル伝送路からのデジタル信号を受信し、そのデジタル信号から前記測位用の信号を復元し、前記第2のアンテナから放射させる信号復元部とを含むことを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、屋内や地下などのGPS衛星からの信号など測位用の信号が届きにくい環境において、測位機能を備えた移動端末による測位を可能にするために前記測位用の信号を再送信するにあたって、第1のアンテナで受信した前記測位用の信号をアンプで増幅して同軸ケーブル等で前記屋内や地下などに伝送するのではなく、受信した信号を信号変換部にて一旦デジタル信号に変換し、LANなどの汎用のデジタル伝送路を介して伝送する。このデジタル信号を受信した信号復元部は、そのデジタル信号から前記測位用の信号を復元し、1または複数の前記第2のアンテナから放射させる。
【0014】
したがって、前記測位用の信号を屋内や地下などに再送信するにあたって、同軸ケーブルによる接続を、アンテナと、その近くに設けられる信号変換部または信号復元部との間だけとし、設計および施工の手間を削減でき、かつ材料費も削減することができ、低コストであるとともに、変更が容易な再送信装置を実現することができる。
【0015】
また、本発明の測位用信号の再送信装置では、前記測位用の信号はGPS衛星からの信号であり、前記信号変換部は、前記第1のアンテナの受信信号をデジタル信号へ変換するアナログ/デジタル変換部および変換されたデジタル信号を前記デジタル伝送路へ送信する通信インタフェイス部を備えるとともに、前記第1のアンテナの受信信号を予め定める周波数帯域にダウンコンバートした後、前記アナログ/デジタル変換部に与えるダウンコンバート部を備え、前記信号復元部は、前記デジタル伝送路からのデジタル信号を受信する通信インタフェイス部および受信されたデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換部を備えるとともに、復元されたアナログ信号を前記測位用の信号と同じ周波数へアップコンバートし、前記第2のアンテナに与えるアップコンバート部を備えて構成されることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、LANなどの汎用のデジタル伝送路で、GPS衛星からの高いキャリア周波数の信号をそのままデジタル変換した信号を伝送するのではなく、ダウンコンバート部で、ベースバンド成分を損なうことのないキャリア周波数に一旦ダウンコンバートして伝送し、アップコンバート部において、本来のGPS衛星からの高いキャリア周波数に復元する。
【0017】
したがって、ダウンコンバート部およびアップコンバート部が必要になるけれども、前記デジタル伝送路で伝送される信号のビットレートを低く抑えることができ、該デジタル伝送路、アナログ/デジタル変換部およびデジタル/アナログ変換部に低級なものを使用することができ、トータルコストを抑えることができる。
【0018】
さらにまた、本発明の測位用信号の再送信装置は、前記第1のアンテナを複数備えるとともに、前記信号変換部、信号復元部および第2のアンテナは、それに対応して複数系統設けられ、前記複数系統の信号変換部および信号復元部は、共通のデジタル伝送路に接続されることを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、移動端末による測位結果は第1のアンテナの位置となるので、その位置精度を高めるために、相互に対応付けられた再送信のための構成が複数系統設けられる場合、それら複数系統の信号変換部および信号復元部で共通のデジタル伝送路を使用することで、低コストにシステムを構築することができる。また、必要に応じて、適宜系統を増減することができ、柔軟にシステムを構築することができる。
【0020】
また、本発明の測位用信号の再送信装置では、前記第2のアンテナがエレベータ内に設置されることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、エレベータは、緯度、経度が一定で、高度だけが変化するので、そのエレベータの直上に第1のアンテナを設置することで、平面上の正確な位置を知ることができ、本発明が特に好適である。
【0022】
さらにまた、本発明の測位用信号の再送信装置は、前記第2のアンテナが地下街に設置されることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、地下街ではGPS信号を受信することは不可能であり、かつ、一般にかなり広いエリアに広がっているので、多くの受信用の第1のアンテナと、対応した再送信用の第2のアンテナを配置するにあたって、各系統の第1のアンテナに対応する信号変換部および信号復元部を共通のデジタル伝送路に接続することで、柔軟にシステム構成を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の測位用信号の再送信装置は、以上のように、屋内や地下などのGPS衛星からの信号など測位用の信号が届きにくい環境において、測位機能を備えた移動端末による測位を可能にするために前記測位用の信号を再送信するにあたって、第1のアンテナで受信した前記測位用の信号をアンプで増幅して同軸ケーブル等で前記屋内や地下などに伝送するのではなく、受信した信号を信号変換部にて一旦デジタル信号に変換し、LANなどの汎用のデジタル伝送路を介して伝送し、このデジタル信号を受信した信号復元部が前記測位用の信号を復元し、1または複数の前記第2のアンテナから放射させる。
【0025】
それゆえ、前記測位用の信号を屋内や地下などに再送信するにあたって、同軸ケーブルによる接続を、アンテナと、その近くに設けられる信号変換部または信号復元部との間だけとし、設計および施工の手間を削減でき、かつ材料費も削減することができ、低コストであるとともに、変更が容易な再送信装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の一形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図である。本再送信装置では、測位用信号として、GPS衛星31からの信号を用いるものとする。本再送信装置は、大略的に、前記GPS衛星31からの信号を第1のアンテナであるGPSアンテナ32で受信し、その受信信号を信号変換部33において一旦デジタル信号に変換して汎用のデジタル伝送路34へ送信することで任意に分配可能とし、前記GPS衛星31からの信号を受信できないビル35内の各フロアなどで、前記デジタル伝送路34に1または複数の信号復元部36をそれぞれ接続し、復元されたGPS信号を、同軸ケーブル37を介して、近接配置される第2のアンテナであるGPSアンテナ38から放射することで、GPS信号を受信し難い屋内に再送信し、GPS受信機を備えた移動端末による測位を可能にするものである。
【0027】
図2は、前記信号変換部33および信号復元部36の機能ブロック図である。ビル35の屋上の見晴らしの良い場所に設置されるGPSアンテナ32は、GPS衛星からの信号を受信し、その受信信号は信号変換部33に入力される。本実施の形態では、前記GPSアンテナ32は、民生用機器で広く利用されているL1波(1.57542GHz)を使用するものとする。これらGPSアンテナ32と信号変換部33とは、同一筐体で一体化されてもよく、あるいはコネクタを設けケーブルで接続される構成でもよい。
【0028】
信号変換部33に入力された受信信号は、必要に応じてアンプなどで適宜増幅が行われた後、ダウンコンバート部41によって中間周波信号へダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた信号は、アナログ/デジタル変換部42においてデジタル信号に変換され、通信インタフェイス部43から前記デジタル伝送路34へ送出される。
【0029】
図3は、前記ダウンコンバート部41の具体的構成を示すブロック図である。前記L1波には1.023MHzのCAコードが含まれるので、中間周波数はこれ以上の周波数に設定され、本実施の形態では、3.48MHzを用いる。このため、前記L1波は、先ず第1段目の混合器44において、局部発振器45からの1st LO(1533.6MHz)によって1st IF(41.82MHz)にダウンコンバートされ、中間周波フィルタ46を介して混合器47に入力される。続いて、第2段目の混合器47において、前記1st IFは、局部発振器48からの2nd LO(38.34MHz)によって2nd IF(前記3.48MHz)にダウンコンバートされ、中間周波フィルタ49を介して前記アナログ/デジタル変換部42へ出力される。これらは、一般にGPS受信機で利用されている構成と同一であり、市販のGPS受信機用RFICを使用して構成されてもよい。
【0030】
前記アナログ/デジタル変換部42は、前記3.48MHzの2nd IFを、2倍以上の周波数、たとえば7MHz、量子化ビット数が1ビットまたは2ビットでサンプリングして、デジタル信号に変換する。前記の2つのIF周波数やサンプリング周波数は、GPS信号(前記1.023MHzのL1波)を再生できる範囲で、適宜選択されればよい。
【0031】
一方、前記信号復元部36は、デジタル伝送路34からのデジタル信号を、通信インタフェイス部51で受信し、デジタル/アナログ変換部52においてアナログ信号に復元した後、さらにアップコンバート部53でアップコンバードして、L1波(前記1.57542GHz)を復元する。
【0032】
図4は、前記アップコンバード部53の具体的構成を示すブロック図である。前記デジタル伝送路34からのデジタル信号は、第1段目の混合器54において、局部発振器55からの1st LO(38.34MHz)によって1st IF(41.82MHz)にアップコンバートされ、中間周波フィルタ56を介して混合器57に入力される。続いて、第2段目の混合器57において、前記1st IFは、局部発振器58からの2nd LO(1533.6MHz)によってRF信号L1波(前記1.57542GHz)にアップコンバートされ、中間周波フィルタ59を介してGPSアンテナ38から放射される。これらは、一般的な送信機の構成と同一である。前記信号復元部36とGPSアンテナ38とは、同一筐体とされてもよく、コネクタを設け、前述のように同軸ケーブル37で接続される構成でもよい。
【0033】
図5および図6は、前記デジタル伝送路34の具体的な構成例を示す図である。前記デジタル伝送路34としては、信号変換部33で変換されたデジタル信号を、遅滞なく、かつ途切れることなく伝送するものであればよく、これにはたとえば、専用の2線または3線の信号線などが利用可能である。あるいは、RS485などのシリアル通信規格を用いてもよい。
【0034】
しかしながら、最近では、ビル35内にはコンピュータネットワーク用のLANが敷設されることが多く、これを利用することによって、GPS信号の伝送用にデジタル配線を専用に敷設することなく、安価で容易にシステムを構築することができる。そこで、図5の例は有線LAN34aを使用しており、図6の例は無線LAN34bを使用している。
【0035】
また、無線LAN34bを用いる場合には、各部屋への信号復元部36およびGPSアンテナ38の設置がさらに容易となる。すなわち、LANターミナルは壁面や床面に設置されることが多く、部屋内で人が保持するGPS受信機40に対し、障害物を避けるためには、GPSアンテナ38は天井に設置されることが望ましい。そこで無線LAN34bを用いることで、アクセスポイント34cが前記壁面や床面などの任意の箇所に設置されても、そのアクセスポイント34cと無線通信機能を有する信号復元部36cは、GPSアンテナ38に近い前記天井に設置することができる。
【0036】
さらにまた、ビル35の屋上にアクセスポイント34cが設置されている場合には、GPSアンテナ32で受信された信号をデジタル変換する信号変換部33cも無線通信機能を有するものとすることで、該信号変換部33cへは、電源線だけ敷設すればよい。また、前記デジタル伝送路34としては、前記の周波数帯のデジタル信号を伝送可能で、トランスなどの障害が考慮されていれば、電力線が用いられてもよい。このように構成した場合、デジタル伝送路34において、各GPS衛星31からの信号は同じだけ遅延するので、測位結果に影響を与えることはない。
【0037】
ここで、アナログ/デジタル変換部42でデジタル化した信号を、デジタル/アナログ変換部52においてアナログ化して復元する際に、アナログ/デジタル変換部42での変換クロック速度と、デジタル/アナログ変換部52での変換クロック速度とを同一にする必要がある。伝送路として専用の線を用いる場合には、そのクロックをデータと共に転送することで容易に実現可能である。
【0038】
これに対して、伝送路として前記LANなどを用いる場合には、図15で示すように、前記通信インタフェイス部51に相当するLAN受信部101で受信したデータを一旦バッファ102に蓄積した後、前記デジタル/アナログ変換部52に入力するようにし、そのバッファ102でのデータ蓄積量を一定にするようにデジタル/アナログ変換のクロック103を制御することによって、前述のように復元速度を変換速度と同一にすることが可能となる。
【0039】
通常、民生用に使用されるGPS受信機では、数ppm(10−6)程度の精度のTCXO(温度補償型水晶発振器)が使用されており、このクロック自体のずれや、衛星および自身の移動によって発生するドップラーの影響などに対応できるように、数10kHz程度の周波数幅の変化に追従して動作するようになっている。したがって、デジタル/アナログ変換部52において使用するクロック103の精度は、10−7程度以下であればよく、一般のVCTCXO(電圧制御型温度補償型水晶発振器)またはVCOCXO(電圧制御型オーブン型水晶発振器)などを使用することができる。これらの電圧制御型水晶発振器を、前述のバッファ102によるクロック制御機構によって、数Hzから数100Hz程度以内の変動に抑えるように制御すればよい。なお、このデジタル/アナログ変換部52のクロック103は、アップコンバート部53のクロックと共用するようにしてもよい。
【0040】
これによって、測位用のGPS信号を再送信するにあたって、同軸ケーブルによる接続を、GPSアンテナ32,38と、その近くに設けられる信号変換部33または信号復元部36との間だけとし、設計および施工の手間を削減でき、かつ材料費も削減することができ、低コストであるとともに、変更が容易な再送信装置を実現することができる。
【0041】
また、デジタル伝送路34で、GPS衛星からの高いキャリア周波数の信号をそのままデジタル変換した信号を伝送するのではなく、信号変換部33のダウンコンバート41でベースバンド成分を損なうことのないキャリア周波数に一旦ダウンコンバートし、信号復元部36のアップコンバート部53において、本来のGPS衛星からの高いキャリア周波数に復元することで、これらダウンコンバート部41およびアップコンバート部53が必要になるけれども、前記デジタル伝送路34で伝送される信号のビットレートを低く抑えることができ、該デジタル伝送路34、アナログ/デジタル変換部42およびデジタル/アナログ変換部52に低級なものを使用することができ、トータルコストを抑えることができる。
【0042】
[実施の形態2]
図7は本発明の実施の他の形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図であり、図8はその機能ブロック図である。これらの図7および図8の構成は、前述の図1および図2の構成にそれぞれ類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、本実施の形態では、1台の信号復元部36において復元されたGPS信号は、分配器61を介して、隣接する別々の部屋62−1,62−2,・・・(総称するときは、以下参照符号62で示す)に設置されたGPSアンテナ38−1,38−2,・・・(総称するときは、以下参照符号38で示す)に送るような構成となっていることである。これによって、ビル35内の複数の部屋62に容易にGPS信号の受信エリアを拡張してゆくことが可能となる。
【0043】
この場合、信号復元部36からの同軸ケーブル37に前記分配器61が介在されるけれども、単純に部屋62の数だけ分配するのであれば、設計も容易であり、特に上述のように隣接する部屋62間であれば、各部屋62の条件は略等しく、複雑な利得の計算なども不要である。また、各部屋62間で、分配器61からGPSアンテナ38の距離に大きな差があったり、部屋62の広さの違いに対応して、GPSアンテナ38からの放射強度に差を持たせるときには、たとえば分配器61に近いGPSアンテナ、あるいは狭い部屋に設けられるGPSアンテナへの同軸ケーブルに、適宜減衰器を設けるようにすればよい。
【0044】
[実施の形態3]
図9は本発明の実施のさらに他の形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図であり、図10はその機能ブロック図である。これらの図9および図10の構成は、前述の図7および図8の構成に類似している。注目すべきは、本実施の形態では、GPS衛星31からの信号を受信するGPSアンテナ32−1,32−2・・・(総称するときは、以下参照符号32で示す)は、ビル3の屋上に相互に離間して複数台設置されており、それに対応する信号変換部33−1,33−2,・・・(総称するときは、以下参照符号33で示す)は、デジタル伝送路34として、共通に有線LAN34aに接続されていることである。そして、各フロアの各部屋62−11,62−12,・・・,62−21,62−22,・・・(総称するときは、以下参照符号62で示す)に設置された信号復元部36−11,36−12,・・・,36−21,36−22,・・・(総称するときは、以下参照符号36で示す)は、対を成すGPSアンテナ38−11,38−12,・・・,38−21,38−22,・・・(総称するときは、以下参照符号38で示す)と共に、上下の部屋(たとえば、62−11,62−21,62−31)が同一の系統となって、対応するGPSアンテナ(たとえば、38−11)での受信信号を再送信することである。
【0045】
各信号変換部33は前述の図2と同様の構成であり、各信号復元部36も前述の図2と同様の構成であり、図10では、部屋番号に対応する添え数字をそれぞれ付している。このように構成される再送信装置において、たとえばGPSアンテナ32−1で受信された信号は、信号変換部33−1においてデジタル信号に変換され、有線LAN34aを介して、同じ系統の各信号復元部36−11,36−21,36−31がアドレス指定されて同じデータが共通に伝送され、GPSアンテナ38−11,38−21,38−31から部屋62−11,62−21,62−31内に放射される。あるいは、各信号変換部33が送信する信号に、たとえば “A”,“B”,“C”,・・・のIDを付与して送信し、各部屋に設置された信号復元部36が、対応する系統のIDが付与された信号のみを選択して受信するようにしてもよい。
【0046】
このように構成することで、GPS受信機40による測位結果は、所在の部屋(図9では62−21)の直上のGPSアンテナ(図9では32−1)の位置となるので、同じビル35内にあっても、GPSアンテナ32の台数分、位置精度を高めることができ、比較的大きなビルの場合に好適である。また、各信号変換部33および各信号復元部36は、デジタル伝送路として有線LAN34aを共用するので、低コストにシステムを構築することができる。また、必要に応じて、適宜系統を増減することができ、柔軟にシステムを構築することができる。
【0047】
また、これら図9および図10で示す構成は、エレベータや地下街で特に好適に実施することができる。すなわち、エレベータは、緯度、経度が一定で、高度だけが変化するので、そのエレベータの直上にGPSアンテナ32を設置することで平面上の正確な位置を知ることができ、また閉じ込めなどの緊急事態発生の時に位置情報は有用であり、本発明が特に好適である。さらにまた、地下街は、一般にかなり広いエリアに広がっているので、多くの受信用のGPSアンテナ32と、対応した再送信用のGPSアンテナ38とを配置することで、精度の高い測位を行うことができ、目印の少ない地下において、使用者を正確に誘導することができる。
【0048】
また、前記図9および図10で示す構成は、電車内で実施されてもよい。電車内は、金属製の車体に元々遮蔽されており、さらに車内にはGPSなどの高周波信号が影響を受け易い人が多数存在するので、好適である。
【0049】
[実施の形態4]
図11は、本発明の実施の他の形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図である。本実施の形態は、上述の各実施の形態に類似している。上述の各実施の形態では、信号復元部36において、GPS信号と同じ1.57542GHzにアップコンバートした信号を再送信しているのに対して、注目すべきは、本実施の形態では、信号復元部36’は、GPSアンテナ32で受信した信号とは別の周波数へアップコンバートし、GPSアンテナ38から再送信することである。
【0050】
この場合、端末側は、一般に使用される汎用GPS受信機では測位は不可能であるので、別のRF周波数で受信可能なGPS受信機70を用意しなければならない。しかしながら、たとえば前記信号復元部36’を実GPS衛星31からの信号が受信できるような場所に設置した場合にも、混信をなくすることが可能になるというメリットがある。
【0051】
さらに、図12で示すように、GPS受信機70に、1.57542GHzのRFを受信する通常のGPSアンテナ71およびRF部72と、本特定の別の周波数を受信する別のGPSアンテナ73およびRF部74を設けるようにすることも可能である。各RF部72,74で増幅などが行われた受信信号は、ベースバンドチップ75に入力されて前記CAコードなどのベースバンド成分が抽出され、CPU76に入力されて測位演算に使用される。
【0052】
このように構成されるGPS受信機70は、実GPS衛星31からの信号を受信して測位できる場所では、1.57542GHz対応のGPSアンテナ71およびRF部72で受信した信号で測位するようにし、そうでない場合には、別の周波数を受信する別のGPSアンテナ73およびRF部74で受信した信号で測位を行う。これによって、図11に示すように、本GPS受信機70が実GPS衛星31からの信号を受信でき、かつ信号復元部36’からの信号も受信できるようなエリアにおかれた場合でも、混信することなく受信し、測位が可能となる。
【0053】
更なる別の実施の形態として、このような2つのRF部72,74を有するGPS受信機70を内蔵する端末が、どちらの信号で測位したのかを明示的に出力するようにする機能を設けるようにしてもよい。このように構成することで、たとえば図示されていない管理センターから、当該端末を所持する人の場所を検索した場合に、当該端末は実GPS衛星31からの信号で測位したのか、それとも信号復元部36’からの信号で測位したのかを管理センターに伝えることができる。管理センターでは、実GPS衛星31での測位であれば、該当する人は屋外におり、かつ測位データの精度は高く、また信号復元部36’からの信号での測位であれば、該当する人物は屋内におり、また測位結果にもある程度の誤差(GPSアンテナ32の位置とずれている可能性がある為)が含まれているといったことを知ることができる。これによって、該当人物を探し出すときなどに、適切な対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の一形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図である。
【図2】図1で示す測位用信号の再送信装置における信号変換部および信号復元部の機能ブロック図である。
【図3】図2で示す信号変換部におけるダウンコンバート部の具体的構成を示すブロック図である。
【図4】図2で示す信号復元部におけるアップコンバート部の具体的構成を示すブロック図である。
【図5】図1で示す測位用信号の再送信装置におけるデジタル伝送路の具体的な構成例を示す図である。
【図6】図1で示す測位用信号の再送信装置におけるデジタル伝送路の具体的な他の構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施の他の形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図である。
【図8】図7で示す再送信装置の機能ブロック図である。
【図9】本発明の実施のさらに他の形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図である。
【図10】図9で示す再送信装置の機能ブロック図である。
【図11】本発明の実施の他の形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図である。
【図12】図9で示す再送信装置に適応したGPS受信機の機能ブロック図である。
【図13】典型的な従来技術を説明するための図である。
【図14】他の従来技術を説明するための図である。
【図15】伝送路としてLANを用いる場合の信号復元部におけるデジタル/アナログ変換のための構成を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
31 GPS衛星
32;32−1,32−2・・・ GPSアンテナ
33;33c;33−1,33−2,・・・ 信号変換部
34 デジタル伝送路
34a 有線LAN
34b 無線LAN
34c アクセスポイント
35 ビル
36;36c;36’ 信号復元部
36−11,36−12,・・・,36−21,36−22,・・・ 信号復元部
37 同軸ケーブル
38;38−1,38−2,・・・ GPSアンテナ
38−11,38−12,・・・,38−21,38−22,・・・ GPSアンテナ
41 ダウンコンバート部
42 アナログ/デジタル変換部
43,51 通信インタフェイス部
44,47;54,57 混合器
45,48;55,58 局部発振器
46,49;56,59 中間周波フィルタ
52 デジタル/アナログ変換部
53 アップコンバート部
40,70 GPS受信機
61 分配器
62;62−1,62−2,・・・ 部屋
62−11,62−12,・・・,62−21,62−22,・・・ 部屋
71,73 GPSアンテナ
72,74 RF部
75 ベースバンドチップ
76 CPU
101 LAN受信部
102 バッファ
103 クロック
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPSなどの測位用信号を、通常、GPS測位機能を備えた移動端末による測位不可能な、あるいは測位が困難な屋内や地下などへ再送信する測位用信号の再送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人や物の場所を検出する方法として、前記GPSを始めとする衛星測位システムが広く用いられている。これらの測位システムには、通常数GHzといった高周波が用いられ、かつ受信電波電力が低いため、障害物があると測位できないという問題がある。近年は、これらを解決するために、高感度GPSあるいはネットワーク支援型GPSといった技術が開発され、携帯電話等の機器に使用されている。
【0003】
前記高感度GPSでは、デジタル信号処理によってノイズを除去することで、微弱なGPS信号であっても信号を検出することが可能となっている。また、前記ネットワーク支援型GPSでは、信号検出に必要な情報をネットワークを介してサーバからGPS受信機側へ送信したり、あるいはGPS受信機側で検出した信号をサーバへ送信し、サーバ側で測位演算を行うなどの方法がとられている。これらの技術によって、微弱なGPS信号を受信できるものの、木造の住宅や、あるいは市街地の細い道路などで利用できるようになったのみであり、通常、人が社会生活を行う状況において多くの時間を割くビル等のコンクリートの建物の中や、地下街などでは、依然としてGPSによる測位が不可能な場所が数多くある。
【0004】
したがって、GPSを利用したシステムとして、たとえば子供や老人などの所在を確認するために利用されるヒューマンロケーションシステムでは、GPS受信機を所持している子供や老人が学校や病院などの建物内にいる場合には、居場所を確認できないなど、大きな問題がある。また、我が国では、2007年から、110番通報などで発信位置を特定できるように携帯電話の端末装置にはGPS受信機を搭載することが義務付けられており、測位不能な場所を減少することが望まれる。
【0005】
そこで、このような問題を解決するための従来技術が、特許文献1で提案されている。その従来技術によれば、図13で示すように、シールドされた環境内に複数の疑似衛星となるGPS信号の送信装置11を設け、コンピュータ処理装置から成るGPSシミュレータ12によって作成したその環境内で受信されるであろうGPS信号を各送信装置11へ配信することで、屋外と同様の環境で移動端末が使用可能となっている。
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、GPSシミュレータ12は、元々GPS受信機の開発に使用されるもので、数百〜数千万円もする程高価であるという問題がある。そこで、もっと簡単には、図14で示すように、GPS衛星21からの信号を屋上に設置したGPSアンテナ22で受信し、屋内に適宜設置したGPSアンテナa1〜a3から再送信するようにした構成が従来から用いられている。具体的には、前記GPSアンテナ22で受信した信号は、伝送路長や分配数などに応じて、アンプ23において、適宜増幅された後、同軸ケーブル24によって屋内や地下へ引き込まれ、分岐・分配器b1,b2によって適宜分配されて前記GPSアンテナa1〜a3に与えられる。
【0007】
このように構成することで、移動端末での測位結果としては、ビル屋上に設置したGPSアンテナ22の位置が得られることになり、多少の誤差はあるものの、安価な構成で、GPS測位が不可能であった場所においても測位を可能とすることができる。
【特許文献1】特許第3421790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の従来技術は、比較的規模が小さい場合は、安価に構成することができる。しかしながら、分岐・分配数が増えると、高価な高周波の部品が増加し、施工費用が増加するとともに、高周波信号を扱う専門知識が必要となり、設計も高価になる。また、一旦施工した後に、GPSアンテナa1〜a3を増設するなどの変更を行う場合、変更箇所以外の部分に影響が生じる可能性があり、変更のための設計が煩雑で、柔軟性に乏しいという問題もある。
【0009】
具体的には、GPSアンテナ22の近傍に設置されるアンプ23に対して、最上階に設置された直流電源p1から、バイアスターミナルと呼ばれる直流電源重畳器t1を介して前記同軸ケーブル24に電源供給を行い、前記アンプ23およびGPSアンテナ22のコンバータに電源供給を行う。一方、この直流電流が各GPSアンテナa1〜a3に漏れないように、分岐・分配器b1,b2の下流側に、各GPSアンテナa1〜a3に対応した直流電源カッターc1〜c3が設けられる。また、伝送路長が長くなると必要に応じてアンプ25が設けられ、そのアンプ25への電源供給を行う直流電源p2および直流電源重畳器t2が設けられる。
【0010】
これらの分岐・分配器b1,b2、直流電源重畳器t1,t2および直流電源カッターc1〜c3などの各種機器を接続するためには高周波用コネクタが必要となり、これらの高周波用の機器・部品は非常に高価である。また、アンプ24やそれに付随する直流電源p2ならびに直流電源重畳器t1,t2および直流電源カッターc1〜c3の配線・機器設計には、高周波信号を扱う専門知識が必要となり、設計も高価になる。
【0011】
本発明の目的は、低コストであるとともに、変更が容易な測位用信号の再送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の測位用信号の再送信装置は、測位用の信号を第1のアンテナで受信し、伝送路を介して、第2のアンテナから再送信することで、前記測位用の信号を受信し難い環境においても、測位機能を備えた移動端末による測位を可能にする測位用信号の再送信装置において、前記伝送路は汎用のデジタル伝送路から成り、前記第1のアンテナの受信信号をデジタル信号へ変換し、前記デジタル伝送路へ送信する信号変換部と、前記デジタル伝送路からのデジタル信号を受信し、そのデジタル信号から前記測位用の信号を復元し、前記第2のアンテナから放射させる信号復元部とを含むことを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、屋内や地下などのGPS衛星からの信号など測位用の信号が届きにくい環境において、測位機能を備えた移動端末による測位を可能にするために前記測位用の信号を再送信するにあたって、第1のアンテナで受信した前記測位用の信号をアンプで増幅して同軸ケーブル等で前記屋内や地下などに伝送するのではなく、受信した信号を信号変換部にて一旦デジタル信号に変換し、LANなどの汎用のデジタル伝送路を介して伝送する。このデジタル信号を受信した信号復元部は、そのデジタル信号から前記測位用の信号を復元し、1または複数の前記第2のアンテナから放射させる。
【0014】
したがって、前記測位用の信号を屋内や地下などに再送信するにあたって、同軸ケーブルによる接続を、アンテナと、その近くに設けられる信号変換部または信号復元部との間だけとし、設計および施工の手間を削減でき、かつ材料費も削減することができ、低コストであるとともに、変更が容易な再送信装置を実現することができる。
【0015】
また、本発明の測位用信号の再送信装置では、前記測位用の信号はGPS衛星からの信号であり、前記信号変換部は、前記第1のアンテナの受信信号をデジタル信号へ変換するアナログ/デジタル変換部および変換されたデジタル信号を前記デジタル伝送路へ送信する通信インタフェイス部を備えるとともに、前記第1のアンテナの受信信号を予め定める周波数帯域にダウンコンバートした後、前記アナログ/デジタル変換部に与えるダウンコンバート部を備え、前記信号復元部は、前記デジタル伝送路からのデジタル信号を受信する通信インタフェイス部および受信されたデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換部を備えるとともに、復元されたアナログ信号を前記測位用の信号と同じ周波数へアップコンバートし、前記第2のアンテナに与えるアップコンバート部を備えて構成されることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、LANなどの汎用のデジタル伝送路で、GPS衛星からの高いキャリア周波数の信号をそのままデジタル変換した信号を伝送するのではなく、ダウンコンバート部で、ベースバンド成分を損なうことのないキャリア周波数に一旦ダウンコンバートして伝送し、アップコンバート部において、本来のGPS衛星からの高いキャリア周波数に復元する。
【0017】
したがって、ダウンコンバート部およびアップコンバート部が必要になるけれども、前記デジタル伝送路で伝送される信号のビットレートを低く抑えることができ、該デジタル伝送路、アナログ/デジタル変換部およびデジタル/アナログ変換部に低級なものを使用することができ、トータルコストを抑えることができる。
【0018】
さらにまた、本発明の測位用信号の再送信装置は、前記第1のアンテナを複数備えるとともに、前記信号変換部、信号復元部および第2のアンテナは、それに対応して複数系統設けられ、前記複数系統の信号変換部および信号復元部は、共通のデジタル伝送路に接続されることを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、移動端末による測位結果は第1のアンテナの位置となるので、その位置精度を高めるために、相互に対応付けられた再送信のための構成が複数系統設けられる場合、それら複数系統の信号変換部および信号復元部で共通のデジタル伝送路を使用することで、低コストにシステムを構築することができる。また、必要に応じて、適宜系統を増減することができ、柔軟にシステムを構築することができる。
【0020】
また、本発明の測位用信号の再送信装置では、前記第2のアンテナがエレベータ内に設置されることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、エレベータは、緯度、経度が一定で、高度だけが変化するので、そのエレベータの直上に第1のアンテナを設置することで、平面上の正確な位置を知ることができ、本発明が特に好適である。
【0022】
さらにまた、本発明の測位用信号の再送信装置は、前記第2のアンテナが地下街に設置されることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、地下街ではGPS信号を受信することは不可能であり、かつ、一般にかなり広いエリアに広がっているので、多くの受信用の第1のアンテナと、対応した再送信用の第2のアンテナを配置するにあたって、各系統の第1のアンテナに対応する信号変換部および信号復元部を共通のデジタル伝送路に接続することで、柔軟にシステム構成を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の測位用信号の再送信装置は、以上のように、屋内や地下などのGPS衛星からの信号など測位用の信号が届きにくい環境において、測位機能を備えた移動端末による測位を可能にするために前記測位用の信号を再送信するにあたって、第1のアンテナで受信した前記測位用の信号をアンプで増幅して同軸ケーブル等で前記屋内や地下などに伝送するのではなく、受信した信号を信号変換部にて一旦デジタル信号に変換し、LANなどの汎用のデジタル伝送路を介して伝送し、このデジタル信号を受信した信号復元部が前記測位用の信号を復元し、1または複数の前記第2のアンテナから放射させる。
【0025】
それゆえ、前記測位用の信号を屋内や地下などに再送信するにあたって、同軸ケーブルによる接続を、アンテナと、その近くに設けられる信号変換部または信号復元部との間だけとし、設計および施工の手間を削減でき、かつ材料費も削減することができ、低コストであるとともに、変更が容易な再送信装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の一形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図である。本再送信装置では、測位用信号として、GPS衛星31からの信号を用いるものとする。本再送信装置は、大略的に、前記GPS衛星31からの信号を第1のアンテナであるGPSアンテナ32で受信し、その受信信号を信号変換部33において一旦デジタル信号に変換して汎用のデジタル伝送路34へ送信することで任意に分配可能とし、前記GPS衛星31からの信号を受信できないビル35内の各フロアなどで、前記デジタル伝送路34に1または複数の信号復元部36をそれぞれ接続し、復元されたGPS信号を、同軸ケーブル37を介して、近接配置される第2のアンテナであるGPSアンテナ38から放射することで、GPS信号を受信し難い屋内に再送信し、GPS受信機を備えた移動端末による測位を可能にするものである。
【0027】
図2は、前記信号変換部33および信号復元部36の機能ブロック図である。ビル35の屋上の見晴らしの良い場所に設置されるGPSアンテナ32は、GPS衛星からの信号を受信し、その受信信号は信号変換部33に入力される。本実施の形態では、前記GPSアンテナ32は、民生用機器で広く利用されているL1波(1.57542GHz)を使用するものとする。これらGPSアンテナ32と信号変換部33とは、同一筐体で一体化されてもよく、あるいはコネクタを設けケーブルで接続される構成でもよい。
【0028】
信号変換部33に入力された受信信号は、必要に応じてアンプなどで適宜増幅が行われた後、ダウンコンバート部41によって中間周波信号へダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた信号は、アナログ/デジタル変換部42においてデジタル信号に変換され、通信インタフェイス部43から前記デジタル伝送路34へ送出される。
【0029】
図3は、前記ダウンコンバート部41の具体的構成を示すブロック図である。前記L1波には1.023MHzのCAコードが含まれるので、中間周波数はこれ以上の周波数に設定され、本実施の形態では、3.48MHzを用いる。このため、前記L1波は、先ず第1段目の混合器44において、局部発振器45からの1st LO(1533.6MHz)によって1st IF(41.82MHz)にダウンコンバートされ、中間周波フィルタ46を介して混合器47に入力される。続いて、第2段目の混合器47において、前記1st IFは、局部発振器48からの2nd LO(38.34MHz)によって2nd IF(前記3.48MHz)にダウンコンバートされ、中間周波フィルタ49を介して前記アナログ/デジタル変換部42へ出力される。これらは、一般にGPS受信機で利用されている構成と同一であり、市販のGPS受信機用RFICを使用して構成されてもよい。
【0030】
前記アナログ/デジタル変換部42は、前記3.48MHzの2nd IFを、2倍以上の周波数、たとえば7MHz、量子化ビット数が1ビットまたは2ビットでサンプリングして、デジタル信号に変換する。前記の2つのIF周波数やサンプリング周波数は、GPS信号(前記1.023MHzのL1波)を再生できる範囲で、適宜選択されればよい。
【0031】
一方、前記信号復元部36は、デジタル伝送路34からのデジタル信号を、通信インタフェイス部51で受信し、デジタル/アナログ変換部52においてアナログ信号に復元した後、さらにアップコンバート部53でアップコンバードして、L1波(前記1.57542GHz)を復元する。
【0032】
図4は、前記アップコンバード部53の具体的構成を示すブロック図である。前記デジタル伝送路34からのデジタル信号は、第1段目の混合器54において、局部発振器55からの1st LO(38.34MHz)によって1st IF(41.82MHz)にアップコンバートされ、中間周波フィルタ56を介して混合器57に入力される。続いて、第2段目の混合器57において、前記1st IFは、局部発振器58からの2nd LO(1533.6MHz)によってRF信号L1波(前記1.57542GHz)にアップコンバートされ、中間周波フィルタ59を介してGPSアンテナ38から放射される。これらは、一般的な送信機の構成と同一である。前記信号復元部36とGPSアンテナ38とは、同一筐体とされてもよく、コネクタを設け、前述のように同軸ケーブル37で接続される構成でもよい。
【0033】
図5および図6は、前記デジタル伝送路34の具体的な構成例を示す図である。前記デジタル伝送路34としては、信号変換部33で変換されたデジタル信号を、遅滞なく、かつ途切れることなく伝送するものであればよく、これにはたとえば、専用の2線または3線の信号線などが利用可能である。あるいは、RS485などのシリアル通信規格を用いてもよい。
【0034】
しかしながら、最近では、ビル35内にはコンピュータネットワーク用のLANが敷設されることが多く、これを利用することによって、GPS信号の伝送用にデジタル配線を専用に敷設することなく、安価で容易にシステムを構築することができる。そこで、図5の例は有線LAN34aを使用しており、図6の例は無線LAN34bを使用している。
【0035】
また、無線LAN34bを用いる場合には、各部屋への信号復元部36およびGPSアンテナ38の設置がさらに容易となる。すなわち、LANターミナルは壁面や床面に設置されることが多く、部屋内で人が保持するGPS受信機40に対し、障害物を避けるためには、GPSアンテナ38は天井に設置されることが望ましい。そこで無線LAN34bを用いることで、アクセスポイント34cが前記壁面や床面などの任意の箇所に設置されても、そのアクセスポイント34cと無線通信機能を有する信号復元部36cは、GPSアンテナ38に近い前記天井に設置することができる。
【0036】
さらにまた、ビル35の屋上にアクセスポイント34cが設置されている場合には、GPSアンテナ32で受信された信号をデジタル変換する信号変換部33cも無線通信機能を有するものとすることで、該信号変換部33cへは、電源線だけ敷設すればよい。また、前記デジタル伝送路34としては、前記の周波数帯のデジタル信号を伝送可能で、トランスなどの障害が考慮されていれば、電力線が用いられてもよい。このように構成した場合、デジタル伝送路34において、各GPS衛星31からの信号は同じだけ遅延するので、測位結果に影響を与えることはない。
【0037】
ここで、アナログ/デジタル変換部42でデジタル化した信号を、デジタル/アナログ変換部52においてアナログ化して復元する際に、アナログ/デジタル変換部42での変換クロック速度と、デジタル/アナログ変換部52での変換クロック速度とを同一にする必要がある。伝送路として専用の線を用いる場合には、そのクロックをデータと共に転送することで容易に実現可能である。
【0038】
これに対して、伝送路として前記LANなどを用いる場合には、図15で示すように、前記通信インタフェイス部51に相当するLAN受信部101で受信したデータを一旦バッファ102に蓄積した後、前記デジタル/アナログ変換部52に入力するようにし、そのバッファ102でのデータ蓄積量を一定にするようにデジタル/アナログ変換のクロック103を制御することによって、前述のように復元速度を変換速度と同一にすることが可能となる。
【0039】
通常、民生用に使用されるGPS受信機では、数ppm(10−6)程度の精度のTCXO(温度補償型水晶発振器)が使用されており、このクロック自体のずれや、衛星および自身の移動によって発生するドップラーの影響などに対応できるように、数10kHz程度の周波数幅の変化に追従して動作するようになっている。したがって、デジタル/アナログ変換部52において使用するクロック103の精度は、10−7程度以下であればよく、一般のVCTCXO(電圧制御型温度補償型水晶発振器)またはVCOCXO(電圧制御型オーブン型水晶発振器)などを使用することができる。これらの電圧制御型水晶発振器を、前述のバッファ102によるクロック制御機構によって、数Hzから数100Hz程度以内の変動に抑えるように制御すればよい。なお、このデジタル/アナログ変換部52のクロック103は、アップコンバート部53のクロックと共用するようにしてもよい。
【0040】
これによって、測位用のGPS信号を再送信するにあたって、同軸ケーブルによる接続を、GPSアンテナ32,38と、その近くに設けられる信号変換部33または信号復元部36との間だけとし、設計および施工の手間を削減でき、かつ材料費も削減することができ、低コストであるとともに、変更が容易な再送信装置を実現することができる。
【0041】
また、デジタル伝送路34で、GPS衛星からの高いキャリア周波数の信号をそのままデジタル変換した信号を伝送するのではなく、信号変換部33のダウンコンバート41でベースバンド成分を損なうことのないキャリア周波数に一旦ダウンコンバートし、信号復元部36のアップコンバート部53において、本来のGPS衛星からの高いキャリア周波数に復元することで、これらダウンコンバート部41およびアップコンバート部53が必要になるけれども、前記デジタル伝送路34で伝送される信号のビットレートを低く抑えることができ、該デジタル伝送路34、アナログ/デジタル変換部42およびデジタル/アナログ変換部52に低級なものを使用することができ、トータルコストを抑えることができる。
【0042】
[実施の形態2]
図7は本発明の実施の他の形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図であり、図8はその機能ブロック図である。これらの図7および図8の構成は、前述の図1および図2の構成にそれぞれ類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、本実施の形態では、1台の信号復元部36において復元されたGPS信号は、分配器61を介して、隣接する別々の部屋62−1,62−2,・・・(総称するときは、以下参照符号62で示す)に設置されたGPSアンテナ38−1,38−2,・・・(総称するときは、以下参照符号38で示す)に送るような構成となっていることである。これによって、ビル35内の複数の部屋62に容易にGPS信号の受信エリアを拡張してゆくことが可能となる。
【0043】
この場合、信号復元部36からの同軸ケーブル37に前記分配器61が介在されるけれども、単純に部屋62の数だけ分配するのであれば、設計も容易であり、特に上述のように隣接する部屋62間であれば、各部屋62の条件は略等しく、複雑な利得の計算なども不要である。また、各部屋62間で、分配器61からGPSアンテナ38の距離に大きな差があったり、部屋62の広さの違いに対応して、GPSアンテナ38からの放射強度に差を持たせるときには、たとえば分配器61に近いGPSアンテナ、あるいは狭い部屋に設けられるGPSアンテナへの同軸ケーブルに、適宜減衰器を設けるようにすればよい。
【0044】
[実施の形態3]
図9は本発明の実施のさらに他の形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図であり、図10はその機能ブロック図である。これらの図9および図10の構成は、前述の図7および図8の構成に類似している。注目すべきは、本実施の形態では、GPS衛星31からの信号を受信するGPSアンテナ32−1,32−2・・・(総称するときは、以下参照符号32で示す)は、ビル3の屋上に相互に離間して複数台設置されており、それに対応する信号変換部33−1,33−2,・・・(総称するときは、以下参照符号33で示す)は、デジタル伝送路34として、共通に有線LAN34aに接続されていることである。そして、各フロアの各部屋62−11,62−12,・・・,62−21,62−22,・・・(総称するときは、以下参照符号62で示す)に設置された信号復元部36−11,36−12,・・・,36−21,36−22,・・・(総称するときは、以下参照符号36で示す)は、対を成すGPSアンテナ38−11,38−12,・・・,38−21,38−22,・・・(総称するときは、以下参照符号38で示す)と共に、上下の部屋(たとえば、62−11,62−21,62−31)が同一の系統となって、対応するGPSアンテナ(たとえば、38−11)での受信信号を再送信することである。
【0045】
各信号変換部33は前述の図2と同様の構成であり、各信号復元部36も前述の図2と同様の構成であり、図10では、部屋番号に対応する添え数字をそれぞれ付している。このように構成される再送信装置において、たとえばGPSアンテナ32−1で受信された信号は、信号変換部33−1においてデジタル信号に変換され、有線LAN34aを介して、同じ系統の各信号復元部36−11,36−21,36−31がアドレス指定されて同じデータが共通に伝送され、GPSアンテナ38−11,38−21,38−31から部屋62−11,62−21,62−31内に放射される。あるいは、各信号変換部33が送信する信号に、たとえば “A”,“B”,“C”,・・・のIDを付与して送信し、各部屋に設置された信号復元部36が、対応する系統のIDが付与された信号のみを選択して受信するようにしてもよい。
【0046】
このように構成することで、GPS受信機40による測位結果は、所在の部屋(図9では62−21)の直上のGPSアンテナ(図9では32−1)の位置となるので、同じビル35内にあっても、GPSアンテナ32の台数分、位置精度を高めることができ、比較的大きなビルの場合に好適である。また、各信号変換部33および各信号復元部36は、デジタル伝送路として有線LAN34aを共用するので、低コストにシステムを構築することができる。また、必要に応じて、適宜系統を増減することができ、柔軟にシステムを構築することができる。
【0047】
また、これら図9および図10で示す構成は、エレベータや地下街で特に好適に実施することができる。すなわち、エレベータは、緯度、経度が一定で、高度だけが変化するので、そのエレベータの直上にGPSアンテナ32を設置することで平面上の正確な位置を知ることができ、また閉じ込めなどの緊急事態発生の時に位置情報は有用であり、本発明が特に好適である。さらにまた、地下街は、一般にかなり広いエリアに広がっているので、多くの受信用のGPSアンテナ32と、対応した再送信用のGPSアンテナ38とを配置することで、精度の高い測位を行うことができ、目印の少ない地下において、使用者を正確に誘導することができる。
【0048】
また、前記図9および図10で示す構成は、電車内で実施されてもよい。電車内は、金属製の車体に元々遮蔽されており、さらに車内にはGPSなどの高周波信号が影響を受け易い人が多数存在するので、好適である。
【0049】
[実施の形態4]
図11は、本発明の実施の他の形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図である。本実施の形態は、上述の各実施の形態に類似している。上述の各実施の形態では、信号復元部36において、GPS信号と同じ1.57542GHzにアップコンバートした信号を再送信しているのに対して、注目すべきは、本実施の形態では、信号復元部36’は、GPSアンテナ32で受信した信号とは別の周波数へアップコンバートし、GPSアンテナ38から再送信することである。
【0050】
この場合、端末側は、一般に使用される汎用GPS受信機では測位は不可能であるので、別のRF周波数で受信可能なGPS受信機70を用意しなければならない。しかしながら、たとえば前記信号復元部36’を実GPS衛星31からの信号が受信できるような場所に設置した場合にも、混信をなくすることが可能になるというメリットがある。
【0051】
さらに、図12で示すように、GPS受信機70に、1.57542GHzのRFを受信する通常のGPSアンテナ71およびRF部72と、本特定の別の周波数を受信する別のGPSアンテナ73およびRF部74を設けるようにすることも可能である。各RF部72,74で増幅などが行われた受信信号は、ベースバンドチップ75に入力されて前記CAコードなどのベースバンド成分が抽出され、CPU76に入力されて測位演算に使用される。
【0052】
このように構成されるGPS受信機70は、実GPS衛星31からの信号を受信して測位できる場所では、1.57542GHz対応のGPSアンテナ71およびRF部72で受信した信号で測位するようにし、そうでない場合には、別の周波数を受信する別のGPSアンテナ73およびRF部74で受信した信号で測位を行う。これによって、図11に示すように、本GPS受信機70が実GPS衛星31からの信号を受信でき、かつ信号復元部36’からの信号も受信できるようなエリアにおかれた場合でも、混信することなく受信し、測位が可能となる。
【0053】
更なる別の実施の形態として、このような2つのRF部72,74を有するGPS受信機70を内蔵する端末が、どちらの信号で測位したのかを明示的に出力するようにする機能を設けるようにしてもよい。このように構成することで、たとえば図示されていない管理センターから、当該端末を所持する人の場所を検索した場合に、当該端末は実GPS衛星31からの信号で測位したのか、それとも信号復元部36’からの信号で測位したのかを管理センターに伝えることができる。管理センターでは、実GPS衛星31での測位であれば、該当する人は屋外におり、かつ測位データの精度は高く、また信号復元部36’からの信号での測位であれば、該当する人物は屋内におり、また測位結果にもある程度の誤差(GPSアンテナ32の位置とずれている可能性がある為)が含まれているといったことを知ることができる。これによって、該当人物を探し出すときなどに、適切な対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の一形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図である。
【図2】図1で示す測位用信号の再送信装置における信号変換部および信号復元部の機能ブロック図である。
【図3】図2で示す信号変換部におけるダウンコンバート部の具体的構成を示すブロック図である。
【図4】図2で示す信号復元部におけるアップコンバート部の具体的構成を示すブロック図である。
【図5】図1で示す測位用信号の再送信装置におけるデジタル伝送路の具体的な構成例を示す図である。
【図6】図1で示す測位用信号の再送信装置におけるデジタル伝送路の具体的な他の構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施の他の形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図である。
【図8】図7で示す再送信装置の機能ブロック図である。
【図9】本発明の実施のさらに他の形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図である。
【図10】図9で示す再送信装置の機能ブロック図である。
【図11】本発明の実施の他の形態に係る測位用信号の再送信装置の概略的構成を示す図である。
【図12】図9で示す再送信装置に適応したGPS受信機の機能ブロック図である。
【図13】典型的な従来技術を説明するための図である。
【図14】他の従来技術を説明するための図である。
【図15】伝送路としてLANを用いる場合の信号復元部におけるデジタル/アナログ変換のための構成を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
31 GPS衛星
32;32−1,32−2・・・ GPSアンテナ
33;33c;33−1,33−2,・・・ 信号変換部
34 デジタル伝送路
34a 有線LAN
34b 無線LAN
34c アクセスポイント
35 ビル
36;36c;36’ 信号復元部
36−11,36−12,・・・,36−21,36−22,・・・ 信号復元部
37 同軸ケーブル
38;38−1,38−2,・・・ GPSアンテナ
38−11,38−12,・・・,38−21,38−22,・・・ GPSアンテナ
41 ダウンコンバート部
42 アナログ/デジタル変換部
43,51 通信インタフェイス部
44,47;54,57 混合器
45,48;55,58 局部発振器
46,49;56,59 中間周波フィルタ
52 デジタル/アナログ変換部
53 アップコンバート部
40,70 GPS受信機
61 分配器
62;62−1,62−2,・・・ 部屋
62−11,62−12,・・・,62−21,62−22,・・・ 部屋
71,73 GPSアンテナ
72,74 RF部
75 ベースバンドチップ
76 CPU
101 LAN受信部
102 バッファ
103 クロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位用の信号を第1のアンテナで受信し、伝送路を介して、第2のアンテナから再送信することで、前記測位用の信号を受信し難い環境においても、測位機能を備えた移動端末による測位を可能にする測位用信号の再送信装置において、
前記伝送路は汎用のデジタル伝送路から成り、
前記第1のアンテナの受信信号をデジタル信号へ変換し、前記デジタル伝送路へ送信する信号変換部と、
前記デジタル伝送路からのデジタル信号を受信し、そのデジタル信号から前記測位用の信号を復元し、前記第2のアンテナから放射させる信号復元部とを含むことを特徴とする測位用信号の再送信装置。
【請求項2】
前記測位用の信号はGPS衛星からの信号であり、
前記信号変換部は、前記第1のアンテナの受信信号をデジタル信号へ変換するアナログ/デジタル変換部および変換されたデジタル信号を前記デジタル伝送路へ送信する通信インタフェイス部を備えるとともに、前記第1のアンテナの受信信号を予め定める周波数帯域にダウンコンバートした後、前記アナログ/デジタル変換部に与えるダウンコンバート部を備え、
前記信号復元部は、前記デジタル伝送路からのデジタル信号を受信する通信インタフェイス部および受信されたデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換部を備えるとともに、復元されたアナログ信号を前記測位用の信号と同じ周波数へアップコンバートし、前記第2のアンテナに与えるアップコンバート部を備えて構成されることを特徴とする請求項1記載の測位用信号の再送信装置。
【請求項3】
前記第1のアンテナを複数備えるとともに、前記信号変換部、信号復元部および第2のアンテナは、それに対応して複数系統設けられ、前記複数系統の信号変換部および信号復元部は、共通のデジタル伝送路に接続されることを特徴とする請求項1または2記載の測位用信号の再送信装置。
【請求項4】
前記第2のアンテナがエレベータ内に設置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の測位用信号の再送信装置。
【請求項5】
前記第2のアンテナが地下街に設置されることを特徴とする請求項3記載の測位用信号の再送信装置。
【請求項1】
測位用の信号を第1のアンテナで受信し、伝送路を介して、第2のアンテナから再送信することで、前記測位用の信号を受信し難い環境においても、測位機能を備えた移動端末による測位を可能にする測位用信号の再送信装置において、
前記伝送路は汎用のデジタル伝送路から成り、
前記第1のアンテナの受信信号をデジタル信号へ変換し、前記デジタル伝送路へ送信する信号変換部と、
前記デジタル伝送路からのデジタル信号を受信し、そのデジタル信号から前記測位用の信号を復元し、前記第2のアンテナから放射させる信号復元部とを含むことを特徴とする測位用信号の再送信装置。
【請求項2】
前記測位用の信号はGPS衛星からの信号であり、
前記信号変換部は、前記第1のアンテナの受信信号をデジタル信号へ変換するアナログ/デジタル変換部および変換されたデジタル信号を前記デジタル伝送路へ送信する通信インタフェイス部を備えるとともに、前記第1のアンテナの受信信号を予め定める周波数帯域にダウンコンバートした後、前記アナログ/デジタル変換部に与えるダウンコンバート部を備え、
前記信号復元部は、前記デジタル伝送路からのデジタル信号を受信する通信インタフェイス部および受信されたデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換部を備えるとともに、復元されたアナログ信号を前記測位用の信号と同じ周波数へアップコンバートし、前記第2のアンテナに与えるアップコンバート部を備えて構成されることを特徴とする請求項1記載の測位用信号の再送信装置。
【請求項3】
前記第1のアンテナを複数備えるとともに、前記信号変換部、信号復元部および第2のアンテナは、それに対応して複数系統設けられ、前記複数系統の信号変換部および信号復元部は、共通のデジタル伝送路に接続されることを特徴とする請求項1または2記載の測位用信号の再送信装置。
【請求項4】
前記第2のアンテナがエレベータ内に設置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の測位用信号の再送信装置。
【請求項5】
前記第2のアンテナが地下街に設置されることを特徴とする請求項3記載の測位用信号の再送信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−218651(P2007−218651A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37591(P2006−37591)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]