説明

測位装置、位置データの記録方法およびプログラム

【課題】現在位置を測定して位置データを記録していく測位装置において、一連の位置データにより詳細な移動軌跡を表すことができ、且つ、位置データの全体の記録量がさほど大きくならないようにする。
【解決手段】現在位置の測定を行う測位手段と、この測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データの記録制御を行う記録制御手段とを備えた測位装置、並びに、その位置データの記録方法およびプログラムにおいて、一連の位置データにより示される移動軌跡の曲り箇所(D2,D3,D4,D5)の判別を行って、曲り箇所と判別されない部分の位置データを省いて、曲り箇所と判別された部分の位置データのみを記録させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、現在位置を測定して位置データを記録していく測位装置、位置データの記録方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、現在位置を測定するとともに、測定された位置データを履歴として装置内に記録していく測位装置がある。記録された位置データにより過去に移動してきた経路を軌跡として表わすことができる。
【0003】
従来の測位装置では、所定時間ごとや所定距離ごとに現在位置を算出し、得られた位置データを全て記録していくのが通常であった(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2811520号公報
【特許文献2】特開平08−233584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一定間隔ごとに位置データを記録していく場合、位置データを取得する間隔を短くすると記録された位置データにより詳細な移動軌跡を表わすことができる反面、位置データの記録量が膨大になる。一方、位置データを取得する間隔を長くすると位置データの記録量が少なくなる反面、幾つも曲り箇所を移動してきた場合に、曲り箇所の位置データが飛ばされて位置データにより詳細な移動軌跡を表わすことができなくなるという課題が生じる。
【0006】
この発明の目的は、記録された位置データにより詳細な移動経路を表すことができるとともに、位置データの全体の記録量がさほど大きくならない測位装置、記録データの記録方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
現在位置の測定を行う測位手段と、
この測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データの記録制御を行う記録制御手段と、
を備え、
前記記録制御手段は、
前記一連の位置データのうち、ほぼ直線状に位置が変化していく部分の位置データの記録を省いて、前記一連の位置データにより示される移動軌跡の曲り箇所の部分の位置データを記録することを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記測位手段の測定に基づき移動方向の変化の有無を判別する曲り箇所判別手段を備え、
前記記録制御手段は、
前記曲り箇所判別手段により移動方向に所定量以上の変化が有ったと判別される地点を曲り箇所として当該曲り箇所の部分の位置データを記録することを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の測位装置において、
前記曲り箇所判別手段は、
前記測位手段の測定によって取得される1つの位置データと、当該1つの位置データより前および後にそれぞれ取得される複数の位置データとに基づき、前記1つの位置データの取得地点における移動方向の変化の有無を判別するとともに、
前記測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データに沿った各々の位置データに対して当該位置データの取得地点における移動方向の変化の有無を判別していくことを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の測位装置において、
前記曲り箇所判別手段は、
前記一連の位置データにより示される移動軌跡に沿って、曲り箇所であると判別された直近の地点或いは当該地点に後続する地点が固定的に設定される基準点の位置データと、前記基準点より後の地点で曲り箇所か否かの判別対象となる第1移動点の位置データと、前記第1移動点より後の地点で当該第1移動点から所定間隔離れた第2移動点の位置データとに基づいて、前記基準点から前記第1移動点の方向と、前記第1移動点から前記第2移動点の方向とに所定角度以上の差異があるかを判別し、
前記所定角度以上の差異があった場合に、前記第1移動点を曲り箇所として判別することを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の測位装置において、
前記曲り箇所判別手段と前記記録制御手段とは、前記測位手段の測定により位置データが取得されるのに伴いリアルタイムで、前記移動方向の変化の有無の判別と位置データの記録制御とを行うことを特徴としている。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記測位手段は、
絶対位置の測定を行う絶対測位手段と、
相対的な位置変動の測定を行う相対測位手段とから構成されることを特徴としている。
【0013】
請求項7記載の発明は、
測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データの記録方法であって、
前記一連の位置データにより示される移動軌跡の曲り箇所の判別を行う曲り箇所判別ステップと、
前記曲り箇所判別ステップにより前記曲り箇所と判別されない部分の位置データの記録を行わずに、前記曲り箇所と判別された部分の位置データを記録する記録ステップと、
を含んでいることを特徴としている。
【0014】
請求項8記載の発明は、
測位手段からデータが供給されるコンピュータに、前記測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データの記録制御を行わせるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記一連の位置データにより示される移動軌跡の曲り箇所の判別を行う曲り箇所判別機能と、
前記曲り箇所判別機能により前記曲り箇所と判別されない部分の位置データの記録を行わずに、前記曲り箇所と判別された部分の位置データを記録する記録機能と、
を実現させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従うと、測位によって取得される一連の位置データのうち、ほぼ直線状に位置が変化する部分の位置データが間引かれて、移動軌跡の曲り箇所の部分の位置データが記録されることになる。従って、位置データの記憶量はさほど大きくならずに、記録された位置データによって移動軌跡を詳細に表わすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態のナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】装置移動中に取得される一連の位置データの一例を示す説明図である。
【図3】装置移動中に記録される一連の位置データの一例を示す説明図である。
【図4】図1のCPUにより実行される測位制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】図1のCPUにより実行される測位制御処理の別の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の測位装置としてのナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【0019】
この実施の形態のナビゲーション装置1は、装置の移動中に連続的に測位処理を行って現在位置の表示を行うとともに、測位処理で取得された一連の位置データのうち必要な位置データを履歴として記録していく装置である。このナビゲーション装置1は、図1に示すように、装置の全体的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)10と、CPU10に作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)11と、CPU10が実行する制御プログラムや制御データを格納したROM(Read Only Memory)12と、GPS(全地球測位システム)衛星からの送信データを受信するためのGPS受信アンテナ13およびGPS受信部14と、自律航法用センサである3軸地磁気センサ15および3軸加速度センサ16と、各種の情報表示や画像表示を行う表示部18と、各部に動作電圧を供給する電源19と、自律航法用センサ(15,16)の計測データに基づいて自律航法の測位演算を行う自律航法制御処理部20と、自律航法制御処理部20により取得された位置データの補正演算を行う自律航法データ補正処理部21と、測位処理で取得された一連の位置データのうち必要な位置データが記憶される移動履歴データ記憶部22と、地図データが格納されている地図データベース23等を備えている。
【0020】
GPS受信部14は、CPU10からの動作指令に基づいて、GPS受信アンテナ13を介して受信される信号の復調処理を行って、GPS衛星の各種送信データや測位用コードをCPU10に送る。CPU10は、このGPS衛星の送信データや測位用コードに基づいて所定の測位演算を行うことで、現在位置を表わす位置データを取得することができる。
【0021】
3軸地磁気センサ15は3軸方向の地磁気の大きさをそれぞれ検出するセンサであり、3軸加速度センサ16は3軸方向の加速度をそれぞれ検出するセンサである。
【0022】
自律航法制御処理部20は、CPU10の演算処理を補助するためのものであり、所定のサンプリング周期で3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16の計測データをCPU10を介して入力し、これらの計測データからナビゲーション装置1の移動方向と移動量とを算出していく。さらに、CPU10から供給される基準地点の位置データに、上記算出された移動方向および移動量からなるベクトルデータを積算していくことで、移動地点の位置データを求めてCPU10に供給する。
【0023】
自律航法データ補正処理部21は、CPU10の演算処理を補助するためのものであり、自律航法制御処理部20によって算出されて移動履歴データ記憶部22に記憶された位置データ、或いは、RAM11に一時的に記憶されている位置データに対して、GPSの測位により得られる正確な位置データに基づき、所定の補正処理を行って、位置データの精度を向上させるものである。
【0024】
移動履歴データ記憶部22は、例えばRAMまたは不揮発性メモリなどにより構成され、装置移動中の測位処理によって取得された一連の位置データのうちCPU10により選択された位置データが記録されるものである。位置データは、例えば、測位時刻とともに時系列に記録され、これらの位置データから装置の移動軌跡が表わされるようになっている。
【0025】
ROM12には、GPSを利用した現在位置の測定、或いは、自律航法機能による現在位置の測定を行いながら、装置の移動軌跡を詳細に表わすことのできる位置データの選択を行って移動履歴データ記憶部22へ記憶させていく測位制御処理のプログラムが格納されている。このプログラムは、ROM12に格納するほか、例えば、データ読取装置を介してCPU10が読み取り可能な、例えば、光ディスク等の可搬型記憶媒体、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに格納しておくことが可能である。また、このようなプログラムがキャリアウェーブ(搬送波)を媒体として通信回線を介してナビゲーション装置1にダウンロードされる形態を適用することもできる。
【0026】
次に、上記構成のナビゲーション装置1において実行される測位制御処理について説明する。
【0027】
図2には、装置の移動中に取得される一連の位置データの一例を表わした説明図を、図3には、装置の移動中に記録される一連の位置データの一例を表わした説明図を、それぞれ示す。図2は、取得された位置データを黒丸と白丸で地図上に示したもの、図3は記録する位置データを黒丸で地図上に示したものである。
【0028】
この実施形態の測位制御処理では、例えばユーザがナビゲーション装置1を携帯して道なりに移動すると、所定間隔ごとに測位処理が行われて、移動経路中の各地点の位置データが順次取得される。
【0029】
ここで、測位処理が行われる間隔は、一定時間の経過ごと、一定距離の移動ごと、1回の測位処理に掛かる時間ごと、或いは、任意の短い時間ごとなど、特に制限されるものではない。また、測位処理の方式についても、GPSによる測位が連続的に行われる方式、自律航法制御処理部20による自律航法に基づく測位が連続的に行われる方式、GPSによる測位が間欠的に行われるとともにGPSの測位の間に自律航法に基づく測位が連続的に行われる方式など、特に制限されるものではない。
【0030】
各地点の位置データが取得される際、CPU10は、取得された一連の位置データのうち、ほぼ直線状に位置が変化する部分の位置データ(例えば図2の白丸の位置データ)を間引くとともに、移動経路の始端と終端および曲り箇所の部分の位置データ(例えば図2の黒丸の位置データ)のみを選別して移動履歴データ記憶部22へ記録していく。
【0031】
曲り箇所の検出は、一連の位置データに沿って順次選択される第1移動点(例えば地点X1)の位置データに対して、この第1移動点X1の前後で移動方向に所定量以上の変化が有ったか否かを判別することで行う。そして、所定量以上の変化が有ったと判別されればこの第1移動点X1に移動軌跡の曲り箇所があると判断し、無ければ第1移動点X1はほぼ直線状に位置が変化している地点であると判断する。
【0032】
移動方向の変化の有無の判別は、詳細には次のようにして行う。すなわち、図2に示すように、判別対象の第1移動点(例えば地点X1)の位置データ、移動軌跡に沿って第1移動点X1より以前の地点に設定された基準点D4の位置データ、第1移動点X1の次の地点である第2移動点X2の位置データの、3地点の位置データに基づき、基準点D4から第1移動点X1へ向う方向と、第1移動点X1から第2移動点X2へ向う方向とに、所定角度以上の変化があるか否かを比較する。そして、所定角度以上の変化が有れば移動方向が変化したと判別する。
【0033】
上記の基準点は、移動軌跡に沿って判別対象の第1移動点X1より前方にあり且つ曲り箇所と判別された一番近い地点D4が設定される。測定開始から未だ1回も曲り箇所が検出されていない区間を判別対象とする際には、基準点として測定開始点D1が設定される。なお、基準点の設定内容は、上記のものに限られず、例えば、判別対象の地点(例えば地点X2)と直近の曲り箇所(例えば地点D4)の間にある各地点(例えば地点W1,W2)を基準点として設定することもできる。
【0034】
また、移動方向の変化の判断基準となる上記所定角度には、移動方向の測定誤差よりも大きな角度で、且つ、直線状の変化と見なされない最小の角度(例えば5°〜15°など)が予め設定されている。なお、この所定角度は、ユーザが要望する移動履歴データの詳細度の違いに応じて、ユーザにより所定の範囲内(例えば5°〜45°など)で調整可能にしても良い。
【0035】
上記のような判別方法によれば、図2に示すように、例えば、直線状に位置が変化する地点X1を判別対象とした場合、基準点D4から第1移動点X1までの方向と、第1移動点X1と第2移動点X2までの方向の変化量が所定角度より小さくなるので、第1移動点X1は曲り箇所でないと判別される。一方、曲り箇所である地点D5を判別対象とした場合、基準点D4から地点(第1移動点)D5までの方向と、地点D5から第2移動点X6までの方向の変化量が所定角度より大きくなるので、地点D5は曲り箇所であると判別される。
【0036】
そして、上記の判別方法により曲り箇所と判定された地点D2,D3,D4,D5、および、測位制御処理を開始した地点D1と終了した地点D6が移動履歴データ記憶部22に記録される。図3に示すように、これらの地点D1〜D6が記録されていることで、これらの地点間を時系列順に直線で結ぶことにより、正確な移動軌跡を示すことが可能となる。
【0037】
次に、上記の測位処理および位置データの記録が行われる測位制御処理の制御手順についてフローチャートに従って説明する。
【0038】
図4には、CPU10により実行される測位制御処理のフローチャートを示す。
【0039】
この測位制御処理は、例えばGPSの測位処理を連続的に実行させる制御指令が入力されたことに基づいてCPU10により開始される。この測位制御処理が開始されると、先ず、CPU10は、GPS受信部14を作動させてGPS衛星からの信号の受信処理を行わせ(ステップS1)、GPS衛星の測位コードに基づき測位演算を行って現在位置の位置データを確定する(ステップS2)。
【0040】
位置データが確定したら、次に、RAM11の所定領域に基準点の位置データが登録されているか確認し(ステップS3)、無ければ直前に確定した位置データを基準点の位置データとしてRAM11の所定領域に登録する(ステップS4)。そして、ステップS1に戻って、GPSによる測位処理(ステップS1,S2)を再び実行する。一方、基準点の位置データが登録済みであれば、RAM11の所定領域に移動点の位置データが登録されているか確認し(ステップS5)、なければ直前に確定した位置データを第1移動点の位置データとしてRAM11の所定領域に登録する(ステップS6)。そして、ステップS1に戻って、GPSによる測位処理(ステップS1,S2)を再び実行する。
【0041】
これら、ステップS3〜S6の処理は、測位制御処理の開始時に、移動経路の始端を基準点に設定し、次に位置データが取得される地点を第1移動点に設定するための処理である。
【0042】
基準点と第1移動点の位置データが登録済みとなって、次にGPSによる測位(ステップS1,S2)が行われて位置データが確定したら、次にステップS7に移行して、この位置データを第2移動点の位置データとしてRAM11の所定領域に登録する(ステップS7)。
【0043】
第2移動点の位置データが登録されたら、次に、基準点、第1移動点、第2移動点の各位置データを用いて、第1基準点の前後で移動方向に変化があるか否かの判別処理を行う(ステップS8)。詳細には、基準点から第1移動点の方向と、第1移動点から第2移動点の方向とを各位置データから算出し、これらの方向の差が所定角度(例えば5°〜15°)以上あるか否かを判別する。
【0044】
その結果、所定角度以上の変化がないと判別されたら、“No”の方へ分岐して、第2移動点として登録されている位置データを、RAM11の第1移動点の記憶領域へ移動させ、第1移動点の位置データとして登録しなおす(ステップS9)。そして、再び、ステップS1に戻る。この位置データをずらす処理により、測定により取得された最新の位置データが第2移動点の位置データとなり、その1つ前に取得された位置データが第1移動点の位置データとして登録されていくことになる。
【0045】
一方、ステップS8の判別処理で、所定角度以上の変化があると判別されたら、“Yes”の方へ分岐して、先ず、RAM11の基準点の記憶領域に登録されている位置データを、履歴(ログ)として移動履歴データ記憶部22に記録する(ステップS10)。移動方向が変化するたびに、このステップS10の処理が実行されることで、移動経路の始端、ならびに、基準点に設定された曲り箇所の位置データが移動履歴データ記憶部22に記録されていく。
【0046】
続いて、上記の判別結果により第1移動点が曲り箇所であると判断できることから、この第1移動点の位置データを、RAM11の基準点の記憶領域へ移動させて次の基準点の位置データとして登録する(ステップS11)。さらに、この時点で第2移動点として登録されている位置データを、RAM11の第1移動点の記憶領域へ移動させて第1移動点の位置データとして登録する(ステップS12)。そして、再び、ステップS1に戻ってGPSによる測位処理を実行する。
【0047】
以上のような測位制御処理によれば、ステップS1,S2のGPSによる測位処理が繰り返し実行されることで一連の位置データが順次取得されていく。さらに、測定開始点や直近に検出された曲り箇所が基準点として設定される一方(ステップS11)、位置データが取得されるたびに、最新の位置データが第2移動点の位置データに、1つ前に取得された位置データが第1移動点の位置データにそれぞれ登録されて(ステップS7,S9,S12)、第1移動点の前後で移動方向に所定量以上に変化が生じていないか判別されるようになっている(ステップS8)。
【0048】
そして、移動方向に所定量以上の変化があれば(ステップS8で“YES”)、第1移動点が曲り箇所であると判別されて、この第1移動点が新たな基準点に設定され(ステップS11)、その後に移動履歴データ記憶部22に記録されていくようになっている(ステップS10)。
【0049】
図5には、CPU10により実行される測位制御処理の他のフローチャートを示す。
【0050】
この図5の測位制御処理は、例えば自律航法の測位処理を連続的に実行させる制御指令が入力されたことに基づき、CPU10により開始されるものである。処理の内容は、図4の測位制御処理と測位処理の方式が異なるのみである。すなわち、図4の測位制御処理では、ステップS1,S2でGPSの測位により位置データを取得していたのに対して、図5の測位制御処理では、ステップS21,S22,S23により3軸加速度センサ16と3軸地磁気センサ15のセンサ出力に基づき自律航法制御処理部20が自律航法の測位処理を実行することで位置データを取得している。その他の処理は図4の測位制御処理と同様であるので説明は省略する。
【0051】
図5の測位制御処理によれば、自律航法による測位が連続的に実行される際にも、移動経路に沿って曲り箇所の検出が順次行われて、この曲り箇所の位置データが移動履歴データ記憶部22に記録されていくようになっている。
【0052】
なお、自律航法の測位の際、以前にGPSの測位が行われて絶対座標の位置データが既知となっている場合には、自律航法の測位で取得される位置データは絶対座標の位置データとなる。しかし、絶対座標の位置データが既知でない場合には、自律航法の測位で取得される位置データは相対座標の位置データとなる。しかしながら、曲り箇所の判別は、基準点、第1移動点、第2移動点の各位置データの相対的な関係に基づき行っているので、相対座標の位置データであっても何ら問題なく曲り箇所の判別を行って、曲り箇所の位置データを記録していくことが可能になっている。
【0053】
さらに、自律航法の測位により相対座標の位置データの取得が続いた後に、GPSによる測位が行われて絶対座標の位置データが既知となった場合には、自律航法データ補正処理部21により、相対座標と絶対座標とのズレが算出されて、このズレが相対座標で取得された過去の全ての位置データに反映されることで、RAM11や移動履歴データ記憶部22に記録されている相対座標の位置データを絶対座標の位置データに補正するようにしても良い。
【0054】
また、過去の自律航法の測位により取得されてきた複数の位置データの誤差を、GPSの測位結果に基づき修正する場合にも、自律航法データ補正処理部21が、RAM11や移動履歴データ記憶部22に記録されてきた過去の位置データに対して所定の補正演算を行うことで、これらの位置データの誤差を修正するようにしても良い。
【0055】
以上のように、この実施形態のナビゲーション装置1、その位置データの記録方法、および測位制御処理のプログラムによれば、測位によって取得される一連の位置データのうち、直線状に位置が変化する部分の位置データが省かれて、移動軌跡の曲り箇所の部分の位置データのみが移動履歴データ記憶部22に記録されていく。従って、移動履歴の位置データにより移動軌跡を詳細に表わすことができるとともに、移動履歴のデータ量を少なく抑えることができる。
【0056】
また、この実施形態では、移動履歴データ記憶部22に記録される曲り箇所の部分の位置データが、曲り箇所を示す1地点の位置データのみなので、移動履歴のデータ量をさらに少なく抑えることができる。
【0057】
また、この実施形態では、測位処理の結果に基づいて曲り箇所を判別するので、地図データなどを参照しながら曲り箇所を判別する方式と比較して、絶対位置が既知となってなく相対座標の位置データが取得されている状態でも、曲り箇所の判別を行って位置データの記録制御を行うことができる。
【0058】
また、この実施形態では、移動経路中の曲り箇所を判別するのに、基準点、第1移動点、第2移動点の位置データなど、判別対象地点の位置データと前後複数の位置データを用いて判別を行っているので、曲り箇所を判別するために一次的に保持しなければならない位置データの数も少なくできる。
【0059】
また、この実施形態では、曲り箇所を判別するために設定される上記の基準点として、前回に曲り箇所と判別された地点が固定的に設定されるので、例えば、なだらかなカーブがずっと続くような移動経路であっても、適宜な間隔で曲り箇所であると判別して適宜な間隔で位置データを記録していくことが可能になっている。例えば、基準点として、第1移動点の1つ前に取得された地点(第0移動点と記す)を設定した場合、なだらかなカーブがずっと続く移動経路では、第0移動点から第1移動点の方向と、第1移動点から第2移動点の方向とが、ずっと小さな角度のままとなって、1地点も曲り箇所として記録されることがなくなってしまう。一方、なだらかなカーブがずっと続く移動経路でも、基準点として固定的な地点を設定しておくことで、第1移動点が基準点から離れていくことで、基準点から第1移動点の方向と、第1移動点から第2移動点の方向とが、適宜な間隔を進んだときに所定角度を超えることとなる。従って、基準点を第1移動点の移動に伴って変化しない固定的な地点に設定しておくことで、なだらかなカーブがずっと続く移動経路においても適宜な間隔で位置データが記録されていく。
【0060】
また、この実施形態では、位置データが取得されるごとにリアルタイムで、この取得された位置データを第2移動点の位置データに登録して、第1移動点の前後の移動方向の変化を判別し、その結果、第1移動点が曲り箇所であるはと判別されれば、基準点の位置データを記録していくので、取得された多数の位置データをバッファに一旦蓄積しておく必要もない。
【0061】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、位置データが取得されるごとに、即時に、この取得された位置データを用いて曲り箇所の判別や位置データの記録制御を行うようにしているが、取得された位置データをある程度バッファに溜めておき、バッファに蓄積された位置データに対して曲り箇所の判別や記録制御を行うようにしても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、現在位置の測定によって取得された複数の位置データを用いて、移動方向の変化の有無を判別して曲り箇所を検出する構成としているが、例えば、3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16とを用いた移動方向の計測により、直接的に移動方向の変化を判別したり、所定間隔で移動方向の計測量を比較したりして、曲り箇所の検出を行うようにしても良い。
【0063】
また、上記実施形態では、1つの曲り箇所につき1地点の位置データを移動履歴データ記憶部22に記録するようにしているが、1つの曲り箇所につき3点など複数地点の位置データを記録するようにしても良い。
【0064】
また、上記実施形態では、現在位置の測定により取得される位置データの全てについて曲り箇所の判別や記録するか否かの判別を行っているが、非常に細かい間隔で位置データが取得される場合には、全ての位置データについて上記判別の処理を行うのではなく、所定間隔を開けて順次取得される位置データについてのみ上記判別の処理を行うようにしても良い。
【0065】
また、現在位置を測定する測位手段の構成は、GPS受信部14や自律航法センサ(3軸地磁気センサ15および3軸加速度センサ16)の構成に限られないし、その他、実施の形態で示した細部構成および細部方法は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 ナビゲーション装置
10 CPU(記録制御手段、曲り箇所判別手段)
11 RAM
12 ROM
13 GPS受信アンテナ
14 GPS受信部(絶対測位手段)
15 3軸地磁気センサ(相対測位手段)
16 3軸加速度センサ(相対測位手段)
20 自律航法制御処理部(測位手段)
22 移動履歴データ記憶部
D1〜D5 基準点
X1 第1移動点
X2 第2移動点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置の測定を行う測位手段と、
この測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データの記録制御を行う記録制御手段と、
を備え、
前記記録制御手段は、
前記一連の位置データのうち、ほぼ直線状に位置が変化していく部分の位置データの記録を省いて、前記一連の位置データにより示される移動軌跡の曲り箇所の部分の位置データを記録することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記測位手段の測定に基づき移動方向の変化の有無を判別する曲り箇所判別手段を備え、
前記記録制御手段は、
前記曲り箇所判別手段により移動方向に所定量以上の変化が有ったと判別される地点を曲り箇所として当該曲り箇所の部分の位置データを記録することを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
前記曲り箇所判別手段は、
前記測位手段の測定によって取得される1つの位置データと、当該1つの位置データより前および後にそれぞれ取得される複数の位置データとに基づき、前記1つの位置データの取得地点における移動方向の変化の有無を判別するとともに、
前記測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データに沿った各々の位置データに対して当該位置データの取得地点における移動方向の変化の有無を判別していくことを特徴とする請求項2記載の測位装置。
【請求項4】
前記曲り箇所判別手段は、
前記一連の位置データにより示される移動軌跡に沿って、曲り箇所であると判別された直近の地点或いは当該地点に後続する地点が固定的に設定される基準点の位置データと、前記基準点より後の地点で曲り箇所か否かの判別対象となる第1移動点の位置データと、前記第1移動点より後の地点で当該第1移動点から所定間隔離れた第2移動点の位置データとに基づいて、前記基準点から前記第1移動点の方向と、前記第1移動点から前記第2移動点の方向とに所定角度以上の差異があるかを判別し、
前記所定角度以上の差異があった場合に、前記第1移動点を曲り箇所として判別することを特徴とする請求項3記載の測位装置。
【請求項5】
前記曲り箇所判別手段と前記記録制御手段とは、前記測位手段の測定により位置データが取得されるのに伴いリアルタイムで、前記移動方向の変化の有無の判別と位置データの記録制御とを行うことを特徴とする請求項2記載の測位装置。
【請求項6】
前記測位手段は、
絶対位置の測定を行う絶対測位手段と、
相対的な位置変動の測定を行う相対測位手段とから構成されることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項7】
測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データの記録方法であって、
前記一連の位置データにより示される移動軌跡の曲り箇所の判別を行う曲り箇所判別ステップと、
前記曲り箇所判別ステップにより前記曲り箇所と判別されない部分の位置データの記録を行わずに、前記曲り箇所と判別された部分の位置データを記録する記録ステップと、
を含んでいることを特徴とする位置データの記録方法。
【請求項8】
測位手段からデータが供給されるコンピュータに、前記測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データの記録制御を行わせるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記一連の位置データにより示される移動軌跡の曲り箇所の判別を行う曲り箇所判別機能と、
前記曲り箇所判別機能により前記曲り箇所と判別されない部分の位置データの記録を行わずに、前記曲り箇所と判別された部分の位置データを記録する記録機能と、
を実現させるプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−69622(P2011−69622A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218388(P2009−218388)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】