説明

測位装置、測位装置の制御方法、測位装置の制御プログラム、測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】記憶容量の負担を最小限度に止めつつ、簡易な構成によってマルチパス頻発地域において精度よく測位することができる測位装置等を提供すること。
【解決手段】測位衛星12a等からの信号である衛星信号S1等を受信する測位装置20であって、マルチパス頻発地域の高度を示すマルチパス頻発地域高度情報を、複数の分割領域の高度情報として格納するマルチパス頻発地域高度情報格納手段と、衛星信号S1等を受信して、高度情報を取得するための高度情報取得用位置情報156を生成する高度情報取得用位置情報生成手段と、マルチパス頻発地域高度情報格納手段から、高度情報取得用位置情報156に対応する分割領域の高度情報155cを取得する高度情報取得手段と、衛星信号S1等及び高度情報155c(158)に基づいて、現在位置を示す高度情報使用現在位置情報160を生成する高度情報使用現在位置情報生成手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位衛星からの信号に基づいて測位を行う測位装置、測位装置の制御方法、測位装置の制御プログラム、測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星航法システムである例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている。
GPS受信機は、例えば、3個以上のGPS衛星から信号電波(以後、衛星信号と呼ぶ)を受信し、衛星信号が各GPS衛星から発信された時刻とGPS受信機に到達した時刻との差(以後、遅延時間と呼ぶ)によって、各GPS衛星とGPS受信機との間の距離(以後、擬似距離と呼ぶ)を求める。そして、GPS受信機は、各GPS衛星の衛星軌道上の位置と、上述の擬似距離を使用して、GPS受信機の現在位置の測位演算を行うようになっている。
ところが、GPS受信機は、GPS衛星からの電波が建築物等に反射した間接波(以後、マルチパスと呼ぶ)を受信する場合がある。マルチパスは建築物等に反射する分、GPS受信機への到達が遅くなり、その結果として上述の擬似距離が長くなる方向にずれ、測位演算に大きな誤差が発生するという問題がある。
これに対して、マルチパスの信号強度が、直接波に比べて弱いことを利用して、マルチパスを排除して測位を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−272450号公報(図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、例えば、高層建築物が密に立ち並ぶ都市部においては、測位に必要な数のGPS衛星からの直接波を受信できない場合があり、マルチパスを排除すると測位ができなくなる場合があるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、記憶容量の負担を最小限度に止めつつ、簡易な構成によってマルチパス頻発地域において精度よく測位することができる測位装置、測位装置の制御方法、測位装置の制御プログラム、測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、測位衛星からの信号である衛星信号を受信する測位装置であって、マルチパス頻発地域の高度を示すマルチパス頻発地域高度情報を、複数の分割領域の高度情報として格納するマルチパス頻発地域高度情報格納手段と、前記衛星信号を受信して、前記高度情報を取得するための高度情報取得用位置情報を生成する高度情報取得用位置情報生成手段と、前記マルチパス頻発地域高度情報格納手段から、前記高度情報取得用位置情報に対応する前記分割領域の前記高度情報を取得する高度情報取得手段と、前記衛星信号及び前記高度情報に基づいて、現在位置を示す高度情報使用現在位置情報を生成する高度情報使用現在位置情報生成手段と、を有することを特徴とする測位装置により達成される。
【0006】
前記マルチパス頻発地域は、マルチパスが頻発する地域であるから、前記測位衛星である例えば、GPS衛星からの衛星信号の全部又は一部は、マルチパスとして前記測位装置に到達する。
ここで、マルチパスを排除すると、3個以上のGPS衛星からの衛星信号を使用することができず、測位ができなくなる場合がある。
一方、マルチパスを使用して測位すると、測位結果の誤差が極めて大きくなる場合がある。
ここで、前記測位装置の現在位置の高度が既知であれば、マルチパスを使用して測位したとしても、測位結果の誤差を最小限度にとどめることができる。
この点、第1の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記マルチパス頻発地域高度情報格納手段を有するから、マルチパス頻発地域の高度を示すマルチパス頻発地域高度情報を、複数の分割領域の高度情報として格納することができる。
そして、前記測位装置は、前記高度情報取得用位置情報生成手段を有するから、前記高度情報取得用位置情報を生成することができ、前記高度情報取得手段を有するから、前記マルチパス頻発地域高度情報格納手段から、前記高度情報取得用位置情報に対応する前記分割領域の前記高度情報を取得することができる。
そして、前記測位装置は、前記高度情報使用現在位置情報生成手段によって、前記衛星信号及び前記高度情報に基づいて、前記高度情報使用現在位置情報を生成することができる。
【0007】
このため、前記測位装置は、前記マルチパス頻発地域においても、測位誤差の小さな前記高度情報使用現在位置情報を生成することができる。
しかも、前記測位装置が有する前記高度情報は、前記マルチパス頻発地域の高度情報に限定されているから、前記測位装置の記憶容量の負担は極めて小さい。
さらに、前記測位装置は、前記高度情報取得用位置情報に対応する前記高度情報を取得し、前記衛星信号と前記高度情報を使用して測位を行うことができるから、マルチパスを使用して測位を行うための構成が簡易である。
これにより、前記測位装置は、記憶容量の負担を最小限度に止めつつ、簡易な構成によって前記マルチパス頻発地域において精度よく測位することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記高度情報取得手段が前記高度情報を取得しなかった場合には、前記衛星信号のみに基づいて、現在位置を示す高度情報不使用現在位置情報を生成する高度情報不使用現在位置情報生成手段を有することを特徴とする測位装置である。
【0009】
前記高度情報取得手段が前記高度情報を取得したということは、前記測位装置の現在位置が前記マルチパス頻発地域であることを意味する。一方、前記高度情報取得手段が前記高度情報を取得しなかったということは、前記測位装置の現在位置が前記マルチパス頻発地域ではないことを意味する。
この点、第2の発明の構成によれば、前記マルチパス頻発地域においては、前記高度情報使用現在位置情報生成手段によって、前記位置関連信号及び前記高度情報を使用して測位誤差の小さな前記現在位置情報を生成することができる。
一方、前記マルチパス頻発地域以外においては、前記高度情報不使用現在位置情報生成手段によって、前記測位衛星からの直接波を使用して測位精度が良い前記高度情報不使用現在位置情報を生成することができる。
これにより、前記測位装置は、簡易な構成によって前記マルチパス頻発地域においても、前記マルチパス頻発地域外においても、精度よく測位することができる。
【0010】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のいずれかの構成において、前記高度情報は、都市部の前記高度情報であることを特徴とする測位装置である。
【0011】
第3の発明の構成によれば、前記高度情報は、都市部の前記高度情報に限定されているから、前記測位装置の記憶容量の負担は一層少なくて済む。
このため、前記測位装置は、記憶容量の負担を一層低減しつつ、簡易な構成によって都市部のマルチパス頻発地域において精度よく測位することができる。
【0012】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの構成において、前記高度情報は、前記分割領域を識別するための情報、前記分割領域の境界を示す情報、及び、前記分割領域に対応する高度を示す情報から構成されることを特徴とする測位装置である。
【0013】
第4の発明の構成によれば、前記高度情報は、前記分割領域の境界を示す情報、及び、前記分割領域に対応する高度を示す情報に限定されているから、その情報量は必要最小限度である。
このため、前記測位装置は、記憶容量の負担を必要最小限度にしつつ、簡易な構成によって都市部のマルチパス頻発地域において精度よく測位することができる。
【0014】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの構成において、前記高度情報取得用位置情報の測位精度は、前記マルチパス頻発地域の前記分割領域の大きさに基づいて規定されることを特徴とする測位装置である。
【0015】
各前記分割領域は、例えば、10キロメートル(km)四方の矩形の領域である。
そして、前記高度情報取得用位置情報の測位精度は、前記測位装置の位置に対応するいずれかの前記分割領域を特定できれば十分であるから、例えば、10キロメートル(km)の誤差があってもよい。
この点、第5の発明の構成によれば、前記高度情報取得用位置情報の測位精度は、前記マルチパス頻発地域の各前記分割領域の大きさに基づいて規定されるから、不必要に精度が高い前記高度情報取得用位置情報を生成することがない。
このため、前記測位装置は、迅速に前記高度情報取得用位置情報を生成することができる。
これにより、前記測位装置は、前記マルチパス頻発地域においても、迅速に前記高度情報使用現在位置情報を生成することができる。
【0016】
前記目的は、第6の発明によれば、マルチパス頻発地域の高度を示すマルチパス頻発地域高度情報を、複数の分割領域の高度情報として格納するマルチパス頻発地域高度情報格納手段を有する測位装置が、測位衛星からの信号である衛星信号を受信して、前記高度情報を取得するための高度情報取得用位置情報を生成する高度情報取得用位置情報生成ステップと、前記測位装置が、前記マルチパス頻発地域高度情報格納手段から、前記高度情報取得用位置情報に対応する前記分割領域の前記高度情報を取得する高度情報取得ステップと、前記測位装置が、前記衛星信号及び前記高度情報に基づいて、現在位置を示す高度情報使用現在位置情報を生成する高度情報使用現在位置情報生成ステップと、を有することを特徴とする測位装置の制御方法によって達成される。
【0017】
第6の発明の構成によれば、第1の発明の構成と同様に、前記測位装置は、記憶容量の負担を最小限度に止めつつ、簡易な構成によって前記マルチパス頻発地域において精度よく測位することができる。
【0018】
前記目的は、第7の発明によれば、コンピュータに、マルチパス頻発地域の高度を示すマルチパス頻発地域高度情報を、複数の分割領域の高度情報として格納するマルチパス頻発地域高度情報格納手段を有する測位装置が、測位衛星からの信号である衛星信号を受信して、前記高度情報を取得するための高度情報取得用位置情報を生成する高度情報取得用位置情報生成ステップと、前記測位装置が、前記マルチパス頻発地域高度情報格納手段から、前記高度情報取得用位置情報に対応する前記分割領域の前記高度情報を取得する高度情報取得ステップと、前記測位装置が、前記衛星信号及び前記高度情報に基づいて、現在位置を示す高度情報使用現在位置情報を生成する高度情報使用現在位置情報生成ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムによって達成される。
【0019】
前記目的は、第8の発明によれば、コンピュータに、マルチパス頻発地域の高度を示すマルチパス頻発地域高度情報を、複数の分割領域の高度情報として格納するマルチパス頻発地域高度情報格納手段を有する測位装置が、測位衛星からの信号である衛星信号を受信して、前記高度情報を取得するための高度情報取得用位置情報を生成する高度情報取得用位置情報生成ステップと、前記測位装置が、前記マルチパス頻発地域高度情報格納手段から、前記高度情報取得用位置情報に対応する前記分割領域の前記高度情報を取得する高度情報取得ステップと、前記測位装置が、前記衛星信号及び前記高度情報に基づいて、現在位置を示す高度情報使用現在位置情報を生成する高度情報使用現在位置情報生成ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態の端末20等を示す概略図である。
端末20は、測位装置の一例である。
図1に示すように、端末20は、GPS装置30を有する。端末20は、GPS装置30によって、複数の測位衛星である例えば、GPS衛星12a,12b,12c,12d,12e,12f及び12gからの信号である衛星信号である例えば、信号S1,S2,S3,S4,S5,S6及びS7を受信することができる。
端末20は、例えば、東京都の都心部に位置する道路14の近傍に位置する。この道路14の近傍には、高層建築物である建物16a,16b,16c,16d,16e,16f及び16gが立ち並んでいる。このため、GPS衛星12a等からの信号S1等は、端末20には直接波としては到達せず、建物16a等に反射してマルチパスとして到達する。
端末20は、後述のように、このマルチパスを使用して現在位置を測位することができるように構成されている。
【0022】
図1に示すように、端末20は、通信装置32を有する。端末20は、通信装置32によって、図示しない通信基地局及びインターネット網を介して、他の端末等と通信可能になっている。
端末20は例えば、携帯電話機、PHS(Personal Handy−phone System)、PDA(Personal Digital Assistance等であるが、これらに限らない。
【0023】
なお、本実施の形態とは異なり、GPS衛星12a等は7個に限らず、6個以下でもよいし、8個以上でもよい。
なお、測位装置の一例としては、端末20等の端末装置ではなくて、端末20等の端末装置を構成する例えば、測位モジュールあるいは測位チップであってもよい。
【0024】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図2は端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図2に示すように、端末20は、コンピュータを有しており、コンピュータは、バス22を有する。
このバス22には、CPU(Central Processing Unit)24、記憶装置26等が接続されている。記憶装置26は例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。
【0025】
また、このバス22には、各種情報や命令の入力を受けるための入力装置28、GPS装置30、通信装置32、各種情報を表示するための表示装置34、及び、電池36が接続されている。
【0026】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図3は、端末20の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。
図3に示すように、端末20は、図2の通信装置32に対応する通信部102、図2のGPS装置30に対応するGPS部104等を有する。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0027】
図3に示すように、端末20は、第2記憶部150に、都市部高度情報データベース152を格納している。都市部高度情報データベース152には、都市部高度情報154が格納されている。
都市部高度情報154は、都心部の高度情報に限定されており、例えば、東京都の都心部の高度情報である。図1に示すように、東京都の都心部は高層建築物16a等が立ち並んでおり、GPS衛星12a等からの信号S1等は、マルチパスとして端末20に到達する。すなわち、東京都の都心部はマルチパス頻発地域の一例である。そして、都心部は都市部の一例である。そして、都市部高度情報154はマルチパス頻発地域高度情報の一例であり、都市部高度情報データベース152はマルチパス頻発地域高度情報格納手段の一例である。
図3に示すように都市部高度情報154は、複数のメッシュ情報155A乃至155Iから構成されている。各メッシュ情報155A等は以下に説明するメッシュ領域の高度を示す情報である。各メッシュ領域は分割領域の一例であり、各メッシュ情報155A等は高度情報の一例である。
以下に説明するように、都市部高度情報データベース152は、都市部高度情報154を、複数のメッシュ情報155A等として格納している。
【0028】
図4は、都市部高度情報154等の説明図である。
図4(a)に示すように、例えば、東京都の都心部は四辺が30キロメートル(km)の矩形の領域のデータとして規定されており、1辺が10キロメートル(km)の正方形の9個のメッシュ領域から構成される。
ここで、東京都の都心部を9個のメッシュ領域で構成することにしたのは、東京都の都心部は標高差が少ないため、標高がほぼ等しい領域で区分すると、9個のメッシュ領域で足りることを見出したことによる。
図4(b)に示すように、メッシュ情報155Aは、メッシュID155a、メッシュ領域155b及び高度155cの3種類の項目から構成される。なお、メッシュ情報155B乃至155Iも同様の構成である。
メッシュID155aは、各メッシュ領域を識別するための例えば、0001という4ビット(bit)のデータサイズの情報である。
メッシュ領域155bは、各メッシュ領域の境界を示す情報であり例えば、メッシュ領域の中心点sを示す中心座標155b1及びメッシュ領域の一辺の長さ10キロメートル(km)を示す情報である。中心座標155b1を、例えば、北緯35度40分34秒09、東経139度44分14秒47という、100分の1秒の精度の数値データとし、一辺の長さ10キロメートル(km)を200という数値で表示すると、55ビット(bit)のデータサイズで足りる。
高度155cは、各メッシュ領域に対応する高度を示す情報である。高度155cは、例えば、55メートル(m)という1メートル(m)の精度の数値データとすれば、3ビット(bit)のデータサイズである。
【0029】
上述のように、都市部高度情報154を構成する各メッシュ情報155A等は、4ビット(bit)のメッシュID155a、55ビット(bit)のメッシュ領域155b及び3ビットの高度155cからなるから、各メッシュ情報155A等のデータサイズは、62ビット(bit)である。
そして、都市部高度情報154は、9個のメッシュ情報155A等から構成されるから、都市部高度情報154のデータサイズは、558ビット(bit)である。
このデータサイズは、例えば、一般的な日本全国の高度情報を使用する場合に比較して極めて小さい。例えば、国土地理院の数値標高モデル(DEM:Digital Elavation Model)を例にすると、2万5千分の1地形図(2次メッシュ)を経度方向及び緯度方向に、それぞれ200等分して得られる各方眼(1/20メッシュ、2万5千分の1地形図上約2mm×2mm)の中心の標高が記録されている。メッシュ領域は日本全国で6,040,000(151×200×200)であり、その高度情報のデータサイズは極めて大きくなる。東京に限定しても、各方眼が細分されているため、40000(200×200)のメッシュ領域数となり、その高度情報のデータサイズは端末20のデータサイズよりもはるかに大きい。
【0030】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、高度情報取得用位置情報生成プログラム112を格納している。高度情報取得用位置情報生成プログラム112は、制御部100が、GPS部104によって受信した信号S1等に基づいて、都市部高度情報データベース152から、端末20の現在位置に対応するメッシュ領域の高度155c(図4参照)を取得するための高度情報取得用位置情報156を生成するためのプログラムである。すなわち、高度情報取得用位置情報生成プログラム112と制御部100は、高度情報取得用位置情報生成手段の一例である。
【0031】
高度情報取得用位置情報156は端末20の現在位置の座標を緯度及び経度で示す情報である。この高度情報取得用位置情報156を生成する目的は、端末20が位置するいずれかのメッシュ領域(図4(a)参照)を特定し、そのメッシュ領域の高度155cを取得することであるから、その測位精度はメッシュ領域の大きさによって規定されており、例えば、メッシュ領域の一辺と同じ10キロメートル(km)である。
制御部100は、生成した高度情報取得用位置情報156を端末第2記憶部150に格納する。
【0032】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、高度情報取得プログラム114を格納している。高度情報取得プログラム114は、制御部100が、都市部高度情報データベース152から、高度情報取得用位置情報156に対応するメッシュ領域の高度155cを取得するためのプログラムである。すなわち、高度情報取得プログラム114と制御部100は、高度情報取得手段の一例である。
制御部100は、例えば、高度情報取得用位置情報156が示す座標が、メッシュ情報155Aが示すメッシュ領域(図4(a)参照)内の座標である場合には、55メートル(m)を示す高度155cを取得し、高度情報158として第2記憶部150に格納する。
【0033】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、高度情報使用現在位置情報生成プログラム116を格納している。高度情報使用現在位置情報生成プログラム116は、制御部100が、GPS部104によって受信した信号S1等及び、高度情報158に基づいて、端末20の現在位置を示す高度情報使用現在位置情報160を生成するためのプログラムである。すなわち、高度情報使用現在位置情報生成プログラム116と制御部100は、高度情報使用現在位置情報生成手段の一例である。
制御部100は、生成した高度情報使用現在位置情報160を第2記憶部150に格納する。
高度情報使用現在位置情報160が、マルチパスの影響を軽減して生成されていることを、図5を使用して以下説明する。
【0034】
図5は、マルチパスの影響の軽減についての説明図である。
端末20の真の位置は、既知の地点Pであるとする。
地点Pにおいては、建物16a及び16bに阻害されて、GPS衛星12a等からの信号S1等は、端末20に直接波としては到達しない。例えば、GPS衛星12eからの信号S5は、マルチパスS5aとして端末20に到達する。このため、本来の擬似距離d1は得られず、擬似距離d1に擬似距離誤差d2が付加された擬似距離dが得られる。擬似距離誤差d2は極めて大きく、例えば、端末20への到達が1マイクロ秒(μs)遅れれば、約300メートル(m)の誤差となる。これは、他のGPS衛星12a等からの信号についても同様である。
一方、地点Pにおける都市部高度情報154の高度155cの誤差は、地表200の真実の高度hと高度誤差h1があるとしても、都市部はほぼ平坦であって、端末20のメッシュ領域は平坦な地域の広がりを前提として例えば、四辺が10キロメートル(km)の矩形と規定されているから、高度誤差h1はごくわずかであり、例えば、50メートル(m)以内である。
すなわち、高度誤差h1は、擬似距離誤差d2よりもはるかに小さい。
このため、GPS衛星12a等からの信号と都市部高度情報154を使用して測位地点Rを算出した場合の測位誤差PosRerrorは、GPS衛星12a等からの信号のみに基づいて、測位地点Qを算出した場合の測位誤差PosQerrorよりも小さい。
図5では、PosQerror=f1(errori)、PosRerror=f2(errori,alttableerror)という数式を使用しているが、erroriは、各GPS衛星12a等からの信号S1等に基く擬似距離誤差d2を示す変数である。alttableerrorは、高度誤差h1を示す変数である。f1及びf2は、誤差を演算する関数であり、例えば、位置精度低下率PDOP(Posion Dilution Of Precision)と測位精度measErrorによって規定される。
【0035】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、高度情報不使用現在位置情報生成プログラム118を格納している。高度情報不使用現在位置情報生成プログラム118は、制御部100が高度情報取得プログラム114によって高度情報158を取得しなかった場合に、GPS部104によって受信した信号S1等のみに基づいて、端末20の現在位置を示す高度情報不使用現在位置情報162を生成するためのプログラムである。すなわち、高度情報不使用現在位置情報生成プログラム118と制御部100は、高度情報不使用現在位置情報生成手段の一例である。
制御部100が高度情報取得プログラム114によって高度情報158を取得しなかった場合には、端末20の位置は、マルチパス頻発地域ではないことを意味する。この場合、GPS衛星12a等から信号S1等の直接波を受信することができるから、精度良く現在位置を測位することができる。
【0036】
上述のように、端末20は、高度情報使用現在位置情報生成プログラム116と高度情報不使用現在位置情報生成プログラム118を有している。そして、制御部100は、高度情報取得プログラム114によって高度情報158を取得した場合には、高度情報使用現在位置情報生成プログラム116によって高度情報使用現在位置情報160を生成し、高度情報取得プログラム114によって高度情報158を取得しなかった場合には、高度情報不使用現在位置情報生成プログラム118によって高度情報不使用現在位置情報162を生成するように構成されている。
このため、端末20は、簡易な構成によってマルチパス頻発地域においても、マルチパス頻発地域外においても、精度よく測位することができる。
【0037】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、現在位置情報表示プログラム120を格納している。現在位置情報表示プログラム120は、制御部100が、高度情報使用現在位置情報160又は高度情報不使用現在位置情報162を表示装置34(図2参照)に表示するための情報である。
【0038】
以上で説明したように、マルチパス頻発地域である例えば、東京都の都心部では、GPS衛星12a等からの信号S1等の全部又は一部は、マルチパスとして端末20に到達する。
ここで、マルチパスを排除すると、3個以上のGPS衛星12a等からの信号を使用することができず、測位ができなくなる場合がある。
一方、マルチパスを使用して測位すると、測位結果の誤差が極めて大きくなる場合がある。
この点、端末20は、都市部高度情報データベース152に、都市部高度情報154を格納することができる。
そして、端末20は、高度情報取得用位置情報156を生成することができ、都市部高度情報データベース152から、高度情報取得用位置情報156に対応するメッシュ領域の高度情報155cを取得することができる。
そして、端末20は、信号S1等及び高度情報155cに基づいて、高度情報使用現在位置情報160を生成することができる。
【0039】
このため、端末20は、マルチパス頻発地域においても、測位誤差の小さな高度情報使用現在位置情報160を生成することができる。
しかも、端末20が有する都市部高度情報154は、マルチパス頻発地域である都市部の高度情報に限定されているから、端末20の記憶容量の負担は極めて小さい。
さらに、端末20は、高度情報取得用位置情報156に対応するメッシュ情報155Aから高度155cを取得し、信号S1等と併せて測位を行うことができるから、マルチパスを使用して測位を行うための構成が簡易である。
これにより、端末20は、記憶容量の負担を最小限度に止めつつ、簡易な構成によってマルチパス頻発地域において精度よく測位することができる。
【0040】
また、上述のように、都市部高度情報154は、マルチパス頻発地域を構成する複数のメッシュ領域を識別するための情報、メッシュ領域の境界を示す情報、及び、メッシュ領域に対応する高度を示す情報に限定されているから、その情報量は必要最小限度である。
このため、端末20は、記憶容量の負担を必要最小限度にしつつ、簡易な構成によって都市部のマルチパス頻発地域において精度よく測位することができる。
【0041】
また、上述のように、各メッシュ領域は、高度が一定な範囲である例えば、四辺が10キロメートル(km)の矩形の領域である。
そして、高度情報取得用位置情報156の測位精度は、端末20の位置に対応するいずれかのメッシュ領域を特定できれば十分であるから、例えば、10キロメートル(km)の誤差があってもよい。
この点、高度情報取得用位置情報156の測位精度は、マルチパス頻発地域の各メッシュ領域の大きさに基づいて規定されるから、不必要に精度が高い高度情報取得用位置情報156を生成することがない。
このため、端末20は、迅速に高度情報取得用位置情報156を生成することができる。
これにより、端末20は、マルチパス頻発地域においても、迅速に高度情報使用現在位置情報160を生成することができる。
【0042】
なお、本実施の形態とは異なり、例えば、東京都の山の手線の内部の領域を示すメッシュ情報155Aだけで都市部高度情報154を構成するようにしてもよい。これにより、端末20の使用者の活動領域が東京都の山の手線の近辺に限定される場合には、本実施の形態と同様の効果を提供しつつ、端末20の記憶容量の負担を一層軽減することができる。
【0043】
また、本実施の形態とは異なり、都市部高度情報154は、東京都の都心部のみならず、例えば、大阪府の中心部等他のマルチパス頻発地域も含むようにしてもよい。これにより、端末20の使用者の活動領域が日本全国に及ぶ場合には、端末20の記憶容量の負担を過大にすることなく、本実施の形態と同様の効果を提供することができる。
【0044】
以上が本実施の形態の端末20の構成であるが、以下、その動作例を主に図6を使用して説明する。
図6は本実施の形態の端末20の動作例を示す概略フローチャートである。
端末20が、メッシュ情報155A(図4(a)参照)が示すメッシュ領域に位置するものとして、以下説明する。
【0045】
まず、端末20は、GPS衛星12a等から信号S1等を受信する(図6のステップST1)。
続いて、端末20は、高度情報取得用位置情報156(図3参照)を生成する(ステップST2)。このステップST2は、高度情報取得用位置情報生成ステップの一例である。ここでは、高度情報取得用位置情報156は、メッシュ情報155Aが示すメッシュ領域のいずれかの座標を示している。
【0046】
続いて、端末20は、都市部高度情報データベース152に、高度情報取得用位置情報156に対応するメッシュ情報155Aがあるかどうかを判断する(ステップST3)。
端末20は、都市部高度情報データベース152に、高度情報取得用位置情報156に対応するメッシュ情報155Aがあると判断した場合には、端末20は、都市部高度情報データベース152から高度情報取得用位置情報156に対応するメッシュ情報155Aの高度155cを取得する(ステップST4)。ステップST3及びステップST4は、高度情報取得ステップの一例である。
【0047】
続いて、端末20は、高度情報使用現在位置情報160を生成する(ステップST5)。
続いて、端末20は、高度情報使用現在位置情報160を出力し、例えば、表示装置34(図2参照)に表示する(ステップST6)。
【0048】
これに対して、上述のステップST3において、端末20は、都市部高度情報データベース152に、高度情報取得用位置情報156に対応するメッシュ情報155Aがないと判断した場合には、端末20は、高度情報不使用現在位置情報162を生成する(ステップST41)。
続いて、端末20は、高度情報不使用現在位置情報162を出力し、例えば、表示装置34(図2参照)に出力する(ステップST42)。
【0049】
このため、端末20は、簡易な構成によってマルチパス頻発地域においてはマルチパスを排除せずに精度よく測位することができ、マルチパス頻発地域外においても、精度よく測位することができる。
【0050】
(プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等について)
コンピュータに上述の動作例の高度情報取得用位置情報生成ステップと、高度情報取得ステップと、高度情報使用現在位置情報生成ステップ等を実行させるための測位装置の制御プログラムとすることができる。
また、このような測位装置の制御プログラム等を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等とすることもできる。
【0051】
これら測位装置の制御プログラム等をコンピュータにインストールし、コンピュータによって実行可能な状態とするために用いられるプログラム格納媒体は、例えばフロッピー(登録商標)のようなフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc−Recordable)、CD−RW(Compact Disc−Rewriterble)、DVD(Digital Versatile Disc)などのパッケージメディアのみならず、プログラムが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリ、磁気ディスクあるいは光磁気ディスクなどで実現することができる。
【0052】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。さらに、上述の各実施の形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態の端末等を示す概略図である。
【図2】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図3】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図4】都市部高度情報等の説明図である。
【図5】マルチパスの影響の軽減についての説明図である。
【図6】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g・・・GPS衛星、14・・・道路、16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g・・・建物、20・・・端末、30・・・GPS装置、112・・・高度情報取得用位置情報生成プログラム、114・・・高度情報取得プログラム、116・・・高度情報使用現在位置情報生成プログラム、118・・・高度情報不使用現在位置情報生成プログラム、120・・・現在位置情報表示プログラム、152・・・都市部高度情報データベース、154・・・都市部高度情報、156・・・高度情報取得用位置情報、158・・・高度情報、160・・・高度情報使用現在位置情報、162・・・高度情報不使用現在位置情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星からの信号である衛星信号を受信する測位装置であって、
マルチパス頻発地域の高度を示すマルチパス頻発地域高度情報を、複数の分割領域の高度情報として格納するマルチパス頻発地域高度情報格納手段と、
前記衛星信号を受信して、前記高度情報を取得するための高度情報取得用位置情報を生成する高度情報取得用位置情報生成手段と、
前記マルチパス頻発地域高度情報格納手段から、前記高度情報取得用位置情報に対応する前記分割領域の前記高度情報を取得する高度情報取得手段と、
前記衛星信号及び前記高度情報に基づいて、現在位置を示す高度情報使用現在位置情報を生成する高度情報使用現在位置情報生成手段と、
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記高度情報取得手段が前記高度情報を取得しなかった場合には、前記衛星信号のみに基づいて、現在位置を示す高度情報不使用現在位置情報を生成する高度情報不使用現在位置情報生成手段を有することを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記高度情報は、都市部の前記高度情報であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の測位装置。
【請求項4】
前記高度情報は、前記分割領域を識別するための情報、前記分割領域の境界を示す情報、及び、前記分割領域に対応する高度を示す情報から構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の測位装置。
【請求項5】
前記高度情報取得用位置情報の測位精度は、前記マルチパス頻発地域の前記分割領域の大きさに基づいて規定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の測位装置。
【請求項6】
マルチパス頻発地域の高度を示すマルチパス頻発地域高度情報を、複数の分割領域の高度情報として格納するマルチパス頻発地域高度情報格納手段を有する測位装置が、測位衛星からの信号である衛星信号を受信して、前記高度情報を取得するための高度情報取得用位置情報を生成する高度情報取得用位置情報生成ステップと、
前記測位装置が、前記マルチパス頻発地域高度情報格納手段から、前記高度情報取得用位置情報に対応する前記分割領域の前記高度情報を取得する高度情報取得ステップと、
前記測位装置が、前記衛星信号及び前記高度情報に基づいて、現在位置を示す高度情報使用現在位置情報を生成する高度情報使用現在位置情報生成ステップと、
を有することを特徴とする測位装置の制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
マルチパス頻発地域の高度を示すマルチパス頻発地域高度情報を、複数の分割領域の高度情報として格納するマルチパス頻発地域高度情報格納手段を有する測位装置が、測位衛星からの信号である衛星信号を受信して、前記高度情報を取得するための高度情報取得用位置情報を生成する高度情報取得用位置情報生成ステップと、
前記測位装置が、前記マルチパス頻発地域高度情報格納手段から、前記高度情報取得用位置情報に対応する前記分割領域の前記高度情報を取得する高度情報取得ステップと、
前記測位装置が、前記衛星信号及び前記高度情報に基づいて、現在位置を示す高度情報使用現在位置情報を生成する高度情報使用現在位置情報生成ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
マルチパス頻発地域の高度を示すマルチパス頻発地域高度情報を、複数の分割領域の高度情報として格納するマルチパス頻発地域高度情報格納手段を有する測位装置が、測位衛星からの信号である衛星信号を受信して、前記高度情報を取得するための高度情報取得用位置情報を生成する高度情報取得用位置情報生成ステップと、
前記測位装置が、前記マルチパス頻発地域高度情報格納手段から、前記高度情報取得用位置情報に対応する前記分割領域の前記高度情報を取得する高度情報取得ステップと、
前記測位装置が、前記衛星信号及び前記高度情報に基づいて、現在位置を示す高度情報使用現在位置情報を生成する高度情報使用現在位置情報生成ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−177783(P2006−177783A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371510(P2004−371510)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】