説明

測位装置、測位装置の制御方法、測位装置の制御プログラム、測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】静止時における出力位置の精度を向上させることができる測位装置等を提供すること。
【解決手段】衛星信号S1等に基づいて、測位装置20の測位位置を算出する測位位置算出手段と、測位装置20の移動速度を算出する速度算出手段と、前回測位時からの経過時間が予め規定した許容時間範囲内であり、かつ、前回測位時の移動速度v0が予め規定した第1速度許容範囲内であり、かつ、現在の移動速度v1が予め規定した第2速度許容範囲内であるという静止状態条件βを満たすか否かを判断する静止状態判断手段と、前回測位時の測位位置P0と現在の測位位置P1とを平均化処理して平均位置Q1を算出する平均位置算出手段等を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位衛星からの信号を使用する測位装置、測位装置の制御方法、測位装置の制御プログラム、測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星航法システムである例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている。
GPS受信機は、例えば、3個以上のGPS衛星から信号を受信し、信号が各GPS衛星から発信された時刻とGPS受信機に到達した時刻との差(以後、遅延時間と呼ぶ)によって、各GPS衛星とGPS受信機との間の距離(以後、擬似距離と呼ぶ)を求める。そして、各GPS衛星から受信した信号に乗せられている各GPS衛星の衛星軌道情報と、上述の擬似距離を使用して、現在位置の測位演算を行うようになっている。
しかし、GPS衛星からの信号が建物等に反射してGPS受信機に到達したり、信号強度が弱かったり、天空におけるGPS衛星の配置(DOP:Dilution Of Precision)が悪い場合には、測位位置が真の位置と大きく乖離し、測位位置の精度が劣化する場合がある。
これに対して、前回の測位位置を基点として、速度ベクトルと経過時間から現在の予想位置(以下、「予想位置」という)を算出し、その予想位置と現在の測位位置を平均化処理する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平8―68651号公報(図5等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、GPS受信機が静止している場合であっても、GPS衛星はその衛星軌道上を移動しており、また、衛星信号の受信状態は時々刻々と変化するから、速度ベクトルに示される速度は、0になるとは限らない。
このため、上述の技術においては、GPS受信機が静止している場合であっても、例えば、経過時間が10秒(s)であれば10秒間に対応する距離だけ予想位置が前回位置から乖離する。この結果、平均化処理の後の位置の精度が劣化し、出力位置が真の位置と乖離する場合があるという問題がある。
そして、上述の技術においては、GPS受信機が停止している場合においては、前回測位時からの経過時間が長いほど、予想位置が前回位置から累積的に乖離し、この結果、出力位置が真の位置と乖離するという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、静止時における出力位置の精度を向上させることができる測位装置、測位装置の制御方法、測位装置の制御プログラム、測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、測位衛星からの信号である衛星信号に基づいて、測位を行う測位装置であって、前記衛星信号に基づいて、前記測位装置の測位位置を算出する測位位置算出手段と、前記衛星信号に基づいて、前記測位装置の移動速度を算出する速度算出手段と、前回測位時からの経過時間が、予め規定した許容時間範囲内か否かを判断する経過時間評価手段と、前回測位時の前記移動速度が、予め規定した第1速度許容範囲内か否かを判断する前回速度評価手段と、現在の前記移動速度が、予め規定した第2速度許容範囲内か否かを判断する現在速度評価手段と、前回測位時からの経過時間が前記許容時間範囲内であり、かつ、前回測位時の前記移動速度が前記第1速度許容範囲内であり、かつ、現在の前記移動速度が前記第2速度許容範囲内であるという静止状態条件を満たすか否かを判断する静止状態判断手段と、前記静止状態判断手段が前記静止状態条件を満たすと判断した場合に、前回測位時の前記測位位置と現在の前記測位位置とを平均化処理して平均位置を算出する平均位置算出手段と、前記平均位置を出力する位置出力手段と、
を有することを特徴とする測位装置により達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記平均位置算出手段を有するから、前記静止状態条件を満たす場合に、前記平均位置を算出することができる。すなわち、前記測位装置は、前回の測位位置と前回の速度ベクトル及び経過時間から推定した予想位置と、今回の測位位置との平均化(補正)をするのではい。前記測位装置は、前記静止状態条件を満たす場合には、前回の前記測位位置と現在の前記測位位置を平均化するのである。このため、現在の前記測位位置を補正するために、前回の速度ベクトルの精度の影響を受けない。
また、前記測位装置が静止している場合には、前回の前記測位位置と現在の前記測位位置は、真の位置の近傍の座標によって示される。これは、静止状態においては、前回の前記測位位置と現在の前記測位位置の近傍に真の位置が存在することを意味する。これに対して、予想位置の近傍に真の位置が存在するとは限らない。
このため、前回の前記測位位置と現在の前記測位位置を平均化して前記平均位置を出力することによって、予想位置と現在の前記測位位置を平均した位置を出力する場合よりも、出力位置が真の位置と近くなる。
これにより、静止時における出力位置の精度を向上させることができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記静止状態判断手段が前記静止状態条件を満たさないと判断した場合には、前記位置出力手段は、現在の前記測位位置を出力する構成となっていることを特徴とする測位装置である。
【0008】
第2の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記静止状態条件を満たさない場合には、前記測位位置を補正することなく、そのまま出力することができる。
このため、前記測位装置が移動している場合に、実際の移動状態を反映した位置を出力することができる。すなわち、前記測位装置は、移動時の追従性を向上させることができる。
【0009】
前記目的は、第3の発明によれば、測位装置が、測位衛星からの信号である衛星信号に基づいて、前記測位装置の測位位置を算出する測位位置算出ステップと、前記測位装置が、前回測位時からの経過時間が、予め規定した許容時間範囲内か否かを判断する経過時間評価ステップと、前記測位装置が、前回測位時の移動速度が、予め規定した第1速度許容範囲内か否かを判断する前回速度評価ステップと、前記測位装置が、現在の移動速度が、予め規定した第2速度許容範囲内か否かを判断する現在速度評価ステップと、前記測位装置が、前回測位時からの経過時間が前記許容時間範囲内であり、かつ、前回測位時の前記移動速度が前記第1速度許容範囲内であり、かつ、現在の前記移動速度が前記第2速度許容範囲内であると判断した場合に、前回測位時の前記測位位置と現在の前記測位位置とを平均化処理して平均位置を算出する平均位置算出ステップと、前記測位装置が、前記平均位置を出力する位置出力ステップと、を有することを特徴とする測位装置の制御方法によって達成される。
【0010】
第3の発明の構成によれば、静止時における出力位置の精度を向上させることができる。
【0011】
前記目的は、第4の発明によれば、コンピュータに、測位装置が、測位衛星からの信号である衛星信号に基づいて、前記測位装置の測位位置を算出する測位位置算出ステップと、前記測位装置が、前回測位時からの経過時間が、予め規定した許容時間範囲内か否かを判断する経過時間評価ステップと、前記測位装置が、前回測位時の移動速度が、予め規定した第1速度許容範囲内か否かを判断する前回速度評価ステップと、前記測位装置が、現在の移動速度が、予め規定した第2速度許容範囲内か否かを判断する現在速度評価ステップと、前記測位装置が、前回測位時からの経過時間が前記許容時間範囲内であり、かつ、前回測位時の前記移動速度が前記第1速度許容範囲内であり、かつ、現在の前記移動速度が前記第2速度許容範囲内であると判断した場合に、前回測位時の前記測位位置と現在の前記測位位置とを平均化処理して平均位置を算出する平均位置算出ステップと、前記測位装置が、前記平均位置を出力する位置出力ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムによって達成される。
【0012】
前記目的は、第5の発明によれば、コンピュータに、測位装置が、測位衛星からの信号である衛星信号に基づいて、前記測位装置の測位位置を算出する測位位置算出ステップと、前記測位装置が、前回測位時からの経過時間が、予め規定した許容時間範囲内か否かを判断する経過時間評価ステップと、前記測位装置が、前回測位時の移動速度が、予め規定した第1速度許容範囲内か否かを判断する前回速度評価ステップと、前記測位装置が、現在の移動速度が、予め規定した第2速度許容範囲内か否かを判断する現在速度評価ステップと、前記測位装置が、前回測位時からの経過時間が前記許容時間範囲内であり、かつ、前回測位時の前記移動速度が前記第1速度許容範囲内であり、かつ、現在の前記移動速度が前記第2速度許容範囲内であると判断した場合に、前回測位時の前記測位位置と現在の前記測位位置とを平均化処理して平均位置を算出する平均位置算出ステップと、前記測位装置が、前記平均位置を出力する位置出力ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る端末20等を示す概略図である。
図1に示すように、端末20は、自動車18に搭載されている。端末20は、測位衛星である例えば、GPS衛星12a,12b,12c及び12dからの信号である信号S1,S2,S3及びS4を受信することができる。この信号S1等は、衛星信号の一例である。そして、端末20は、測位装置の一例である。
【0015】
自動車18は、道路R上に位置し、交通信号が赤信号なので、横断歩道の前の停止線近辺で停止している。このため、端末20は静止している。
端末20の真の位置は、位置r1である。
しかし、GPS衛星12a等はその衛星軌道上を移動し、信号S1等の受信状態は時々刻々と変動するから、測位位置も時々刻々と変動する。例えば、時間経過に従って、測位位置P0,P1,P2,P3,P4というように、変動する。しかし、端末20が静止している以上、真の位置r1は不動であるから、測位位置P0等はいずれも、真の位置r1の近傍の座標によって示される。
端末20は、以下に説明するように、静止状態の場合には、測位位置P0等が変動したとしても、出力位置の安定性を確保することができるようになっている。
【0016】
端末20は、例えば、道路R上において測位演算を連続的に実施し、取得した位置情報を地図情報とともに表示するカーナビゲーション装置である。
【0017】
なお、端末20は例えば、カーナビゲーション装置であるが、その他に、携帯電話機、PHS(Personal Handy−phone System)、PDA(Personal Digital Assistance等であってもよく、また、これらに限らない。
なお、本実施の形態とは異なり、GPS衛星12a等は4個に限らず例えば、3個でもよいし、5個以上でもよい。
【0018】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図2は端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図2に示すように、端末20は、コンピュータを有しており、コンピュータは、バス22を有する。
このバス22には、CPU(Central Processing Unit)24、記憶装置26、外部記憶装置28等が接続されている。記憶装置26は例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。外部記憶装置28は例えば、HDD(Hard Disk Drive)等である。
【0019】
また、このバス22には、各種情報等を入力するための入力装置30、GPS衛星12a等から信号S1等を受信するためのGPS装置32、各種情報を表示するための表示装置34、時計36、電源装置38が接続されている。
【0020】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図3は、端末20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図3に示すように、端末20は、各部を制御する制御部100、図2の端末GPS装置32に対応するGPS部102、時計36に対応する計時部104等を有する。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0021】
図3に示すように、端末20は、第2記憶部150に、衛星軌道情報152を格納している。衛星軌道情報152は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを含む。
アルマナック152aは、すべてのGPS衛星12a等(図1参照)の概略の軌道を、その取得時刻とともに示す情報である。アルマナック152aは、いずれのGPS衛星12a等の信号S1等からも、デコードして取得することができる。
エフェメリス152bは、各GPS衛星12a等(図1参照)の精密な軌道を示す情報である。例えば、GPS衛星12aのエフェメリス152bを取得するためには、GPS衛星12aからの信号S1を受信し、デコードして取得する必要がある。
端末20は、衛星軌道情報152を、測位のために使用する。
【0022】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、衛星信号受信プログラム112を格納している。衛星信号受信プログラム112は、制御部100が、GPS衛星12a等から、信号S1等を受信するためのプログラムである。
具体的には、制御部100は、アルマナック152aを参照して、現在時刻において観測可能なGPS衛星12a等を判断し、観測可能なGPS衛星12a等からの信号S1等を受信する。このとき、基準となる自己位置は、例えば、前回の測位位置を使用する。
【0023】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位プログラム114を格納している。測位プログラム114は、制御部100が、GPS部102によって受信した信号S1等に基づいて、現在の測位位置P1を算出するためのプログラムである。測位位置P1は、現在位置の一例である。測位プログラム114と制御部100は、測位位置算出手段の一例である。
具体的には、制御部100は、例えば、3個以上のGPS衛星12a等から信号S1等を受信し、信号S1等が各GPS衛星12a等から発信された時刻と端末20に到達した時刻との差である遅延時間によって、各GPS衛星12a等と端末20との間の距離である擬似距離を求める。そして、各GPS衛星12a等のエフェメリス152bと、上述の擬似距離を使用して、現在位置の測位演算を行う。
制御部100は、現在の測位位置P1を第2記憶部150のBuff1に格納する。
制御部100は、また、測位プログラム114に基づいて、測位位置P1を算出した時刻である現在測位時刻t1を第2記憶部150のBuff2に格納する。
なお、制御部100は、後述の平均位置Q1又は測位位置P1を出力した後(以後、「位置出力後」という)は、今回の測位位置P1を前回の測位位置P0として、第2記憶部150のBuff4に格納する。また、制御部100は、位置出力後に、現在測位時刻t1を前回測位時刻t0ととして第2記憶部150のBuff5に格納する。信号S1等の信号強度が弱い等の原因で、測位演算が収束せず、今回の測位位置P1が算出されない場合がある。この場合には、制御部100は、位置出力後に、測位位置の不存在を示すデータをBuff4に格納する。
【0024】
測位プログラム114はまた、制御部100が、信号S1等に基づいて、端末20の移動速度を算出するためのプログラムでもある。すなわち、測位プログラム114と制御部100は、速度算出手段の一例でもある。
具体的には、制御部100は、複数のGPS衛星12a等からの信号S1等のドップラー偏移等に基づいて、各GPS衛星12a等と端末20の相対速度を算出し、端末20の移動速度である現在速度v1を算出する(例えば、特開平8−68651の段落〔0016〕乃至〔0018〕参照)。
制御部100は、現在速度v1を第2記憶部150のBuff3に格納する。
なお、制御部100は、位置出力後に、現在速度v1を前回速度v0として第2記憶部150のBuff6に格納する。
【0025】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、前回測位位置有無判断プログラム116を格納している。前回測位位置有無判断プログラム116は、制御部100が、Buff4に、測位位置P0が格納されているか否かを判断するためのプログラムである。
【0026】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、経過時間評価プログラム118を格納している。経過時間評価プログラム118は、制御部100が、前回測位時からの経過時間が、60秒(s)以内か否かを判断するためのプログラムである。60秒(s)以内の時間範囲は、予め規定した許容時間範囲の一例である。経過時間評価プログラム118と制御部100は、経過時間評価手段の一例である。
具体的には、制御部100は、Buff5に格納されている前回測位時刻t0からの経過時間を、計時部104によって計測する。そして、制御部100は、その経過時間が60秒(s)以内か否かを判断する。
【0027】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、速度評価プログラム120を格納している。速度評価プログラム120は、制御部100が、前回速度v0が、毎秒2メートル(m/s)以下か否かを判断するためのプログラムである。毎秒2メートル(m/s)以下の速度範囲は、予め規定した第1速度許容範囲の一例である。速度評価プログラム120と制御部100は、前回速度評価手段の一例である。
【0028】
速度評価プログラム120はまた、制御部100が、現在速度v1が、毎秒2メートル(m/s)以下か否かを判断するためのプログラムでもある。毎秒2メートル(m/s)以下の速度範囲は、予め規定した第2速度許容範囲の一例である。速度評価プログラム120と制御部100は、現在速度評価手段の一例でもある。
【0029】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、静止状態判断プログラム122を格納している。静止状態判断プログラム122は、制御部100が、静止状態条件βを満たしているか否かを判断するためのプログラムである。静止状態条件βは静止状態条件の一例である。静止状態判断プログラム122と制御部100は、静止状態判断手段の一例である。
ここで、静止状態条件βは、端末20が静止状態であると判断するための条件である。具体的には、静止状態条件は、前回測位時からの経過時間が60秒(s)以内であり、かつ、前回速度v0が2m/s以内であり、かつ、現在速度v1が2m/s以内である状態である。
本発明の発明者は、端末20が実際に静止状態であっても、信号S1等に基づいて計測した端末20の移動速度は、2m/s以下の速度を示す場合があることを見出した。そこで、前回速度v0が2m/s以内であり、かつ、現在速度v1が2m/s以内であることを静止状態条件βの要素とした。そして、カーナビゲーション装置としての端末20においては、前回測位時からの経過時間が60秒(s)を越えていると、端末20が移動している可能性が大きいということを経験則上、発見した。そこで、前回速度v0が2m/s以内であり、かつ、現在速度v1が2m/s以内であって、さらに、前回測位時からの経過時間が60秒(s)以内であるという要素を、静止状態条件βに追加した。
【0030】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、平均位置算出プログラム124を格納している。平均位置算出プログラム124は、上述の静止状態条件βを満たす場合に、制御部100が、前回の測位位置P0と現在の測位位置P1とを平均化処理して平均位置Q1を算出するためのプログラムである。平均位置Q1は平均位置の一例である。平均位置算出プログラム124と制御部100は、平均位置算出手段の一例である。
【0031】
図4は、平均位置算出プログラム124の説明図である。
図4に示すように、制御部100は、前回の測位位置P0と現在の測位位置P1と、緯度、経度及び高度において中間の位置である平均位置Q1を算出する。
端末20は、実際には静止しているから、測位位置P0と測位位置P1とは、真の位置r1の周辺の座標で示される位置である。これは、真の位置r1は、測位位置P0と測位位置P1の近傍に存在することを意味する。このため、測位位置P0と測位位置P1との平均位置Q1は、真の位置r1に近い可能性が大きい。
【0032】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、位置出力プログラム126を格納している。位置出力プログラム126は、制御部100が、平均位置Q1又は測位位置P1のいずれかを出力するためのプログラムである。位置出力プログラム126と制御部100は、位置出力手段の一例である。
具体的には、制御部100は、上述の静止状態条件βを満たす場合には平均位置Q1を表示装置34(図2参照)に表示する。
これに対して、制御部100は、上述の静止状態条件βを満たさない場合には測位位置P1を表示装置34に表示する。
【0033】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に参照情報更新プログラム128を格納している。参照情報更新プログラム128は、制御部100が、現在の測位位置P1を測位位置P0としてBuff4に格納し、現在測位時刻t1を前回測位時刻t0としてBuff5に格納し、現在速度v1を前回速度v0としてBuff6に格納するためのプログラムである。
【0034】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に測位回数評価プログラム130を格納している。測位回数評価プログラム130は、制御部100が、予め規定した回数であるγ回の測位を行ったか否かを判断するためのプログラムである。γ回は、予め規定した回数の一例である。γ回は、例えば、10回である。端末20は、1秒(s)間に、10回測位し、測位位置P1を10回算出するようになっている。
制御部100は、γ回の測位を行ったと判断すると、測位動作を終了する。
【0035】
端末20は上述のように構成されている。
上述のように、端末20は、静止状態条件βを満たす場合に、平均位置Q1を算出することができる。すなわち、端末20は、前回の測位位置P0と前回の速度ベクトルから推定した予想位置と、今回の測位位置P1との平均化(補正)をするのではい。端末20は、静止状態条件βを満たす場合には、前回の測位位置P0と現在の測位位置P1を平均化するのである。このため、現在の測位位置P1を補正するために、前回の速度ベクトルの精度の影響を受けない。
また、端末20が静止している場合には、前回の測位位置P0と現在の測位位置P1は、真の位置r1(図4参照)の近傍の座標によって示される。これは、真の位置r1は、前回の測位位置P0と現在の測位位置P1の近傍に存在することを意味する。このため、前回の測位位置P0と現在の測位位置P1を平均化して平均位置Q1を出力することによって、予想位置と現在の測位位置P1を平均した位置を出力する場合よりも、出力位置(平均位置Q1)は真の位置と近くなる。
これにより、静止時における出力位置(平均位置Q1)の精度を向上させることができる。
【0036】
また、端末20は、静止状態条件βを満たさない場合には、現在の測位位置P1を出力する構成となっている。すなわち、過去の測位位置P0等によって、現在の測位位置P1を補正することはない。
このため、端末20が移動している場合に、実際の移動状態を反映した位置を出力することができる。すなわち、端末20は、移動時の追従性を向上させることができる。
【0037】
以上が本実施の形態に係る端末20の構成であるが、以下、その動作例を主に図5を使用して説明する。
図5は本実施の形態に係る端末20の動作例を示す概略フローチャートである。
【0038】
まず、端末20は、衛星軌道情報152を読み込む(図5のステップST1)。
続いて、端末20は、現在時刻t1における測位位置P1を算出する(ステップST2)。このステップST2は、測位位置算出ステップの一例である。
【0039】
続いて、端末20は、前回の測位位置P0があるか否かを判断する(ステップST3)。
端末20は、ステップST3において、端末20が、前回の測位位置P0があると判断した場合には、前回測位時刻t0からの経過時間が60秒(s)以内か否かを判断する(ステップST4)。このステップST4は、経過時間評価ステップの一例である。
【0040】
端末20は、ステップST4において、前回測位時刻t0からの経過時間が60秒(s)以内であると判断した場合には、前回速度v0と現在速度v1が、ともに2m/s以内か否かを判断する(ステップT5)。このステップST5は、前回速度評価ステップの一例であり、現在速度評価ステップの一例でもある。
【0041】
上述のステップST5において、端末20が、前回速度v0と現在速度v1が、ともに2m/s以内であると判断した場合には、前回の測位位置P0と今回の測位位置P1を平均して平均位置Q1を算出する(ステップST6)。このステップST6は、平均位置算出ステップの一例である。
【0042】
続いて、端末20は、平均位置Q1を表示する(ステップST7)。このステップST7は、位置出力ステップの一例である。
続いて、端末20は、測位位置P0、前回測位時刻t0及び前回速度v0を更新する(ステップST8)。具体的には、端末20は、現在の測位位置P1を前回の測位位置P0としてBuff4に格納し、現在測位時刻t1を前回測位時刻t0としてBuff5に格納し、現在速度v1を前回速度v0として、Buff6に格納する。
【0043】
続いて、端末20は、測位が、規定回数であるγ回に達したか否かを判断する(ステップST9)。
端末20は、ステップST9において、測位がγ回に達していないと判断すると、再びステップST2に戻る。
【0044】
端末20が、上述のステップST3において、前回の測位位置P0がないと判断した場合には、測位位置P1を表示する(ステップST10)。
また、端末20が、ステップST4において、前回測位時刻t0からの経過時間が60秒(s)以内ではないと判断した場合にも、測位位置P1を表示する(ステップST10)。
また、端末20が、ステップST5において、前回速度v0と現在速度v1が、ともに2m/s以内ではないと判断した場合にも、測位位置P1を表示する(ステップST10)。
【0045】
上述のステップによって、静止時における出力位置(平均位置Q1)の精度を向上させることができる。
また、端末20が静止していない場合に、実際の移動状態を反映した位置を出力することができる。すなわち、端末20は、移動時の追従性を向上させることができる。
【0046】
(プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等について)
コンピュータに上述の動作例の測位位置算出ステップと、経過時間評価ステップと、前回速度評価ステップと、現在速度評価ステップと、平均位置算出ステップと、位置出力ステップ等を実行させるための測位装置の制御プログラムとすることができる。
また、このような測位装置の制御プログラム等を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等とすることもできる。
【0047】
これら測位装置の制御プログラム等をコンピュータにインストールし、コンピュータによって実行可能な状態とするために用いられるプログラム格納媒体は、例えばフロッピー(登録商標)のようなフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc−Recordable)、CD−RW(Compact Disc−Rewritable)、DVD(Digital Versatile Disc)などのパッケージメディアのみならず、プログラムが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリ、磁気ディスクあるいは光磁気ディスクなどで実現することができる。
【0048】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。さらに、上述の各実施の形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る端末等を示す概略図である。
【図2】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図3】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図4】平均位置算出プログラムの説明図である。
【図5】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
12a,12b,12c,12d・・・GPS衛星、20・・・端末、112・・衛星信号受信プログラム、114・・・測位プログラム、116・・・前回測位位置有無判断プログラム、118・・・経過時間評価プログラム、120・・・速度評価プログラム、122・・・静止状態判断プログラム、124・・・平均位置算出プログラム、126・・・位置出力プログラム、128・・・参照情報更新プログラム、130・・・測位回数評価プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星からの信号である衛星信号に基づいて、測位を行う測位装置であって、
前記衛星信号に基づいて、前記測位装置の測位位置を算出する測位位置算出手段と、
前記衛星信号に基づいて、前記測位装置の移動速度を算出する速度算出手段と、
前回測位時からの経過時間が、予め規定した許容時間範囲内か否かを判断する経過時間評価手段と、
前回測位時の前記移動速度が、予め規定した第1速度許容範囲内か否かを判断する前回速度評価手段と、
現在の前記移動速度が、予め規定した第2速度許容範囲内か否かを判断する現在速度評価手段と、
前回測位時からの経過時間が前記許容時間範囲内であり、かつ、前回測位時の前記移動速度が前記第1速度許容範囲内であり、かつ、現在の前記移動速度が前記第2速度許容範囲内であるという静止状態条件を満たすか否かを判断する静止状態判断手段と、
前記静止状態判断手段が前記静止状態条件を満たすと判断した場合に、前回測位時の前記測位位置と現在の前記測位位置とを平均化処理して平均位置を算出する平均位置算出手段と、
前記平均位置を出力する位置出力手段と、
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記静止状態判断手段が前記静止状態条件を満たさないと判断した場合には、前記位置出力手段は、現在の前記測位位置を出力する構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
測位装置が、測位衛星からの信号である衛星信号に基づいて、前記測位装置の測位位置を算出する測位位置算出ステップと、
前記測位装置が、前回測位時からの経過時間が、予め規定した許容時間範囲内か否かを判断する経過時間評価ステップと、
前記測位装置が、前回測位時の移動速度が、予め規定した第1速度許容範囲内か否かを判断する前回速度評価ステップと、
前記測位装置が、現在の移動速度が、予め規定した第2速度許容範囲内か否かを判断する現在速度評価ステップと、
前記測位装置が、前回測位時からの経過時間が前記許容時間範囲内であり、かつ、前回測位時の前記移動速度が前記第1速度許容範囲内であり、かつ、現在の前記移動速度が前記第2速度許容範囲内であると判断した場合に、前回測位時の前記測位位置と現在の前記測位位置とを平均化処理して平均位置を算出する平均位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記平均位置を出力する位置出力ステップと、
を有することを特徴とする測位装置の制御方法。
【請求項4】
コンピュータに、
測位装置が、測位衛星からの信号である衛星信号に基づいて、前記測位装置の測位位置を算出する測位位置算出ステップと、
前記測位装置が、前回測位時からの経過時間が、予め規定した許容時間範囲内か否かを判断する経過時間評価ステップと、
前記測位装置が、前回測位時の移動速度が、予め規定した第1速度許容範囲内か否かを判断する前回速度評価ステップと、
前記測位装置が、現在の移動速度が、予め規定した第2速度許容範囲内か否かを判断する現在速度評価ステップと、
前記測位装置が、前回測位時からの経過時間が前記許容時間範囲内であり、かつ、前回測位時の前記移動速度が前記第1速度許容範囲内であり、かつ、現在の前記移動速度が前記第2速度許容範囲内であると判断した場合に、前回測位時の前記測位位置と現在の前記測位位置とを平均化処理して平均位置を算出する平均位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記平均位置を出力する位置出力ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラム。
【請求項5】
コンピュータに、
測位装置が、測位衛星からの信号である衛星信号に基づいて、前記測位装置の測位位置を算出する測位位置算出ステップと、
前記測位装置が、前回測位時からの経過時間が、予め規定した許容時間範囲内か否かを判断する経過時間評価ステップと、
前記測位装置が、前回測位時の移動速度が、予め規定した第1速度許容範囲内か否かを判断する前回速度評価ステップと、
前記測位装置が、現在の移動速度が、予め規定した第2速度許容範囲内か否かを判断する現在速度評価ステップと、
前記測位装置が、前回測位時からの経過時間が前記許容時間範囲内であり、かつ、前回測位時の前記移動速度が前記第1速度許容範囲内であり、かつ、現在の前記移動速度が前記第2速度許容範囲内であると判断した場合に、前回測位時の前記測位位置と現在の前記測位位置とを平均化処理して平均位置を算出する平均位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記平均位置を出力する位置出力ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−232458(P2007−232458A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52215(P2006−52215)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】