説明

測位装置

【課題】位相差測位方式において、位相整数値を確実に確定することにより、高精度な測位が可能な測位装置を提供する。
【解決手段】異なる複数の周波数の電波を送信する電波源1と、前記電波源からの電波を受信する位置が既知の複数の受信機2,3,4と、受信機間毎の各周波数の受信した電波の位相差を算出する位相差算出手段5と、前記位相差算出手段で算出された各周波数の位相差から受信機間毎の到来時間差を算出する到来時間差算出手段6、7と、前記到来時間差算出手段で算出された到来時間差の組み合わせから前記電波源の測位計算を行う測位計算手段8と、を備え、前記電波源の異なる複数の送信周波数が、任意に選択した2周波の周波数差が最小周波数差の整数倍で、他の組合せの2周波の周波数差と重複せず、最大周波数差が最も狭くなるように配置した周波数からなる測位装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測位装置、特に電波の位相差を用いて測位を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
電波の位相差を用いて測位する技術は、信号帯域幅に依らずに、波長の数十分の1程度という高精度に測位できるという利点がある。しかし、波長周期に由来する位相整数値の不確定性があるため、何らかの方法により位相整数値を確定する必要がある。
【0003】
この方法として従来、例えばキネマティックGPS(電波の搬送波位相を用いたGPS)においては、最初に、変調信号の到来時間差を用いて概略位置を求め、位相整数値の候補を絞り込み、その後、衛星の移動に伴い、真の解は移動しないのに対し、偽の解は移動することを利用して最終的に真の解を求める方法が知られている。
【0004】
また、下記特許文献1では、他の方法を用いて初期位置を求めて位相整数値を確定しておき、その後、移動した分の位相差を前記の位相整数値に加えて測位計算する方法が示されている。また、2周波を用いて位相整数値の確定を容易にする方法も示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−272448号公報(第6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような従来の方式では、時間差測位を併用する方式は広帯域の送受信機が必要となり、複雑で高価なシステムになるという欠点があった。また、上記特許文献1のように別の方法で初期位置を計測する方式は、初期位置が計測できない場合には適用できず、初期位置計測そのものが煩わしいという問題があった。そして、2周波を用いる方式は、位相整数値の確定が行い易くはなるものの、この方式単体では位相整数値の確定が保証されるものではなく、他の方式との併用が必要であるという問題があった。
【0007】
この発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、位相差測位方式において、位相整数値を確実に確定することにより、高精度な測位が可能な測位装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、異なる複数の周波数の電波を送信する電波源と、前記電波源からの電波を受信する位置が既知の複数の受信機と、受信機間毎の各周波数の受信した電波の位相差を算出する位相差算出手段と、前記位相差算出手段で算出された各周波数の位相差から受信機間毎の到来時間差を算出する到来時間差算出手段と、前記到来時間差算出手段で算出された到来時間差の組み合わせから前記電波源の測位計算を行う測位計算手段と、を備え、前記電波源の異なる複数の送信周波数が、任意に選択した2周波の周波数差が最小周波数差の整数倍で、かつ、他の組合せの2周波の周波数差と重複せず、かつ、最大周波数差が最も狭くなるように配置した周波数からなることを特徴とする測位装置にある。
【発明の効果】
【0009】
この発明では、位相差測位方式において、位相整数値を確実に確定し、高精度な測位を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明による測位装置の構成の一例を示す構成図である。
【図2】この発明による送信周波数の組を探索するための動作フローチャートである。
【図3】この発明による送信周波数の組に関する最大周波数が最も小さくかつ全ての2周波の組合せの周波数差に重複が無い周波数の組を説明するための図である。
【図4】この発明による第1の評価関数を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の測位装置を各実施の形態に従って図面を用いて説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明による測位装置の構成の一例を示す構成図である。1は電波源である発信機、2a〜2dは受信アンテナ、3a〜3dはフィルタバンク、4a〜4dは切り替えスイッチ、5a〜5fは位相差算出器(位相差算出手段)、6a〜6fは到来時間差候補算出器(到来時間差候補算出手段)、7は到来時間差候補選択器(到来時間差候補選択手段)、8は測位計算器(測位計算手段)である。なお、到来時間差候補算出器6a〜6fと到来時間差候補選択器7で到来時間差算出部(到来時間差算出手段)を構成する。また図1では4つの受信機が設けられており、例えばそれぞれ受信アンテナ(2)、フィルタバンク(3)および切り替えスイッチ(4)を備えている。
【0013】
次に動作について説明する。測位対象である発信機1は、送信周波数を変更する機構を持ち、所定の時間ごとに、送信周波数を後述する方法で決められる所定の周波数に変更して電波を発信する。各受信機の受信アンテナ2a、2b、2c、2dは発信機1からの電波を受信し、フィルタバンク3a〜3dに入力する。フィルタバンク3a〜3dは、前記発信機1が発信する複数の各々の周波数を中心周波数とする複数のバンドパスフィルタ(f1,f2・・・で示す)から構成される。
【0014】
切り替えスイッチ4a〜4dは、前述のように発信機1が周波数を変更するたびに切り替えられて、当該周波数のバンドパスフィルタの出力を選択する。バンドパスフィルタにより発信機1からの信号成分のみが抽出された信号は、位相差算出器5a〜5fに入力され、全ての受信機対の受信位相差が計算される。また、この受信位相差は発信機1が周波数を変更するたびに計算され、発信機1が送信する全ての周波数について計算される。
【0015】
このように周波数を順次切り替えて複数周波数の位相差を取得することにより、電波の送受信機構の構造を簡略化できるというメリットがある。
【0016】
なお、複数周波数の位相差を取得する方法として、複数周波数を同時に送信する機構を持つ発信機と、複数周波数を同時に受信する機構を持つ受信機を用いて、複数周波数の位相差を同時に求める方法を用いてもよい。その場合、測位のための計測が短時間で済むという利点がある。
【0017】
いずれにせよ、所定の周波数間隔の複数周波数の位相差を用いることがこの発明の本質であり、その所定の周波数間隔の決定法は後述する。
【0018】
次に、到来時間差候補算出器6a〜6fは、各受信機対の受信位相差を全周波数について蓄積し、全周波数の受信位相差を用いて、その受信機間の到来時間差候補を複数個算出する。これは、例えば、各受信機対について、次の式(1)に示す第1の評価関数を最大化するt(推定到来時間差)を任意に設定して探索することで行う。
【0019】
【数1】

【0020】
但し、式(1)において、fはk番目の送信周波数、φk,m,nはk番目の周波数における受信機#mと受信機#n間の算出された受信位相差、Kは全周波数の数、Mは全受信機の数である。絶対値の中は位相ベクトル和を示す。
【0021】
式(1)の評価関数により到来時間差候補を求めることができるのは次の理由による。
【0022】
受信位相差に観測誤差が無ければ、φk,m,nは次の式(2)ように表される。
【0023】
【数2】

【0024】
但し、式(2)においてτm,nは受信機#mと受信機#n間の到来時間差である。
式(2)より、式(1)の第1の評価関数はt=τm,nにおいて最大値Kとなる。従って、測位範囲から予想される到来時間差の予測範囲内で評価関数が最大となるtを探索することにより、受信機#mと受信機#n間の到来時間差τm,nを求めることができる。しかし、実際には観測誤差により第1の評価関数は複数の極大を持つ場合があるので、一定の値より大きな極大値をとる複数のtを到来時間差候補とする。
【0025】
次に、到来時間差候補選択器7では、各受信機間の到来時間差候補から、適切な到来時間差候補の組合せを選択する。これは、例えば、次の式(3)に示す第2の評価関数に到来時間差候補を代入し、第2の評価関数を最小化する到来時間差候補の組合せを探索することで行う。
【0026】
【数3】

【0027】
式(3)の第2の評価関数が、適切な到来時間差候補の組合せ時に最小となる理由は、到来時間差τm,n、τn,p、τm,pの全てが真値の場合、次の式(4)の関係式が成り立つためである。
【0028】
【数4】

【0029】
従って、3個の受信機に関する式である式(4)の全ての組合せの二乗和である式(3)を最小とする到来時間差候補の組合せが、最も確からしい候補と推定することができる。
【0030】
次に、測位計算器8は、最も確からしい到来時間差候補の組み合わせを用いて測位計算を行い、発信機1の位置を求める。測位計算は、次の式(5)に示す、全受信機対の到来時間差についての連立方程式を解くことにより行う。
【0031】
【数5】

【0032】
但し、式(5)において、X,Y,ZとX,Y,Zはそれぞれ受信機#mと受信機#nの位置であり、ともに既知の値である。また、cは光速であり、x,y,zが求めるべき発信機1の位置である。
【0033】
式(5)の方程式は非線形方程式であるので、逐次近似法などの数値計算により解く。未知変数の数がx,y,zの3個であるので、方程式が解けるためには3個以上の独立な方程式が必要であり、最低4個の受信機が必要となる。
【0034】
それ以上の受信機数がある場合は、最小二乗法を用いて方程式を解く。この場合、二乗残差も到来時間差候補選択の評価関数とすることができ、到来時間差候補選択器7において複数の到来時間差候補の組合せを残してそれぞれについて測位計算を行い、二乗残差が最も小さい到来時間差候補の組合せを用いて求めた発信機位置を、最も確からしい発信機位置とすることができる。さらに、方程式の二乗残差と、式(3)の和を到来時間差候補選択の評価関数とすることもできる。
【0035】
なお、必要とする測位結果が二次元平面内での位置でよい場合、発信機1の高さzに想定値を代入し、未知変数はx,yの2個となるので、3個の受信機のみで測位することができる。また、4個以上の受信機がある場合には、上記の三次元測位の場合と同様に、二乗残差を到来時間差候補選択の評価関数とすることができる。
【0036】
この発明の最大の特徴は、複数の送信周波数の周波数間隔の決定法にある。複数周波数を用いる理由は位相整数値を確定するためであるから、なるべく少ない計測時間で測位を行うために、最小限の周波数の数で位相整数値が確定できるのが望ましい。このような周波数配置は、式(1)の第1の評価関数が次の式(6)ように展開できることから示唆される。
【0037】
【数6】

【0038】
位相整数値の不確定性排除に適した評価関数は、
1)真の到来時間差以外に値の大きな極大が無いこと
2)真の到来時間差における極大のピーク幅が狭いこと
が上げられる。
上記2つの条件を理想的に満たす関数は、次の式(7)ように表現される、ディラックのデルタ関数である。
【0039】
【数7】

【0040】
式(6)と式(7)を比較すると、式(6)の評価関数は、任意の2周波の周波数差f−fがなるべく多数の周波数成分を含み、それらが均一に分布していることが望ましいことがわかる。すなわち、全ての2周波の組合せの周波数差f−fを昇順に並べたとき、それらがある周波数fの整数倍、すなわちkf(kは整数)になるような周波数の組が、位相整数値の不確定性排除に適した周波数の組である。
【0041】
このような周波数の組の探索法を以下に示す。図2に、周波数の数がK個の場合におけるこのような周波数の組f,f,…,f(但し、f<f<…<fとする)を探索するための動作フローチャートを示す。なおこの周波数の組の探索は、例えば別途設けられたコンピュータ、又は発信機1が制御用のコンピュータを備え(共に図示省略)、これらのコンピュータによって実行される。
【0042】
ステップ21から開始し、まずステップ22においてfとfの初期値をセットする。周波数の間隔のみに意味があるので、最も低い周波数fは0とする。また、任意の2周波の組合せ数はK(K−1)/2通りであるから、最も理想的、すなわち、1からK(K−1)/2までの全ての周波数差が得られる場合、最大の周波数差はK(K−1)/2となり、それはfとfとの間で生じる。そこで、fはK(K−1)/2にセットする。
【0043】
次に、ステップ23において、f〜fK−1が取り得る最も小さい値をセットする。これは、セットする周波数fを、となりの周波数fk−1より1ずつ大きい値とすることで実現する。
【0044】
このように全ての周波数f,f,…,fをセットした後、ステップ24では、全ての2周波の組合せの周波数差f−fを計算する。
【0045】
ステップ25では、それらの周波数差に重複が無いかチェックし、もし重複が無ければ、その周波数の組f,f,…,fが、求めるべき周波数間隔であるから、ステップ34に進み、計算を終了する。
【0046】
また、ステップ25においてもし周波数差に重複があれば、ステップ26〜28に進み、周波数f〜fK−1のうちのいずれかを変える。ステップ26では、fK−1がより大きな値を取れるかチェックする。fK−1がf−1より小さければより大きな値が取れるので、ステップ29に進み、fK−1に1を加算する。このような新たな周波数の組f,f,…,fでステップ24に戻り、再び全ての2周波の組合せの周波数差を計算し、ステップ25にて周波数差に重複があるかどうかチェックする。
【0047】
このように、周波数差に重複があるかぎりfK−1は1ずつ増加し、いずれf−1に等しくなってしまう。そこでステップ26からステップ27に進み、次はfK−2がより大きな値を取れるかチェックする。fK−2がf−2より小さければより大きな値が取れるので、ステップ30に進み、fK−2に1を加算する。次にステップ31にて、fK−1が取れる最も小さな値であるfK−2+1にfK−1をセットし、これを新たな周波数の組f,f,…,fとする。このような新たな周波数の組で再びステップ24に戻り、再び全ての2周波の組合せの周波数差を計算し、ステップ25にて周波数差に重複があるかどうかチェックする。
【0048】
このように、周波数差に重複があるかぎりfK−2も1ずつ増加し、いずれf−2に等しくなってしまう。そこで次はfK−3がより大きな値を取れるかチェックし、同様にして新たな周波数の組の探索を行う。このようにしてfも1ずつ増加するので、ステップ28にてfがより大きな値を取れるかチェックし、もしf−K+2よりも小さいならばステップ32に進み、fに1を加算する。次にステップ33にて、f〜fK−1がそれぞれ取れる最も小さな値であるf+k−2(k=3,4,…,K−1)にf〜fK−1をそれぞれセットし、この周波数の組f,f,…,fでステップ24に戻り、再び全ての2周波の組合せの周波数差を計算し、ステップ25にて周波数差に重複があるかどうかチェックする。
【0049】
最終的にfがf−K+2となり、より大きな値が取れなくなる時点でステップ28からステップ34に進み、最大周波数であるfを1増加させて、ステップ23に戻り、同様の探索を繰り返す。
【0050】
このような探索により、最大周波数fが最も小さく、かつ全ての2周波の組合せの周波数差に重複が無い周波数の組f,f,…,fを見つけることができる。その一例を図3に示す。例えば4波の場合、f=0、f=1、f=4、f=6とすることで、1〜6の6通りの周波数差が得られる。Kが5以上では、欠落する周波数差が生じるが、後に述べるように大きな問題とはならない。
【0051】
以上では、説明の簡単化のため、最も単純な全件探索する方式について述べたが、f〜fの探索範囲を工夫するなどして、探索時間を高速化することもできる。しかし、得られる結果は探索方法によらず図3に示すものと同じになる。従って、探索方法そのものはどのような方法を用いてもよい。
【0052】
次に、これらの周波数の組を用いて得られる、観測位相に誤差は無いものとし、真の到来時間差は0として計算した式(1)の第1の評価関数を図4の(a)〜(i)に示す。図4の(a)〜(i)の縦軸は評価関数、横軸は正規化遅延時間を示す。前述のようにKが5以上では欠落する周波数差があるが、図4の(a)〜(i)に示すように、周波数の数を増やすほど真の到来時間差のピーク幅が狭くなり、真の到来時間差以外の極大値も小さくなることがわかる。従って、周波数の数が多い方が不確定性を排除しやすく測位精度も高くなる。
【0053】
図3に示した周波数の組は周波数の間隔のみを意味するので、実際の周波数は、例えば周波数の数が4、最低の搬送周波数を300MHz、最小周波数差を1MHzとする場合、f=300MHz、f=301MHz、f=304MHz、f=306MHzと設定する。
【0054】
ここで、最小周波数差の逆数が、不確定性が生じないことが保証される到来時間差範囲となることに注意する。例えば最小周波数差が1MHzの場合、不確定性が生じない到来時間差範囲は0〜1μ秒(距離換算0〜300m)、または0を中心とすると±0.5μ秒(距離換算±150m)となる。すなわち、最小周波数差が小さいほど不確定性が生じない到来時間差範囲が大きくなる。従って、測位エリアの大きさから予想される到来時間差範囲を決め、それに従って最小周波数差を決めることにより、測位エリア内において不確定性が生じないことを保証することができる。
【0055】
一方、到来時間差の計測精度は、真の到来時間差におけるピーク幅が狭いほど高精度が得られ、ピーク幅は最大周波数差の逆数にほぼ比例する。すなわち計測精度の点からは最大周波数差が大きいほうが望ましい。つまり、測位エリアを広くしつつ高い計測精度を得るには、周波数の数を増やし、最小周波数差を小さく、最大周波数差を大きくすることにより実現できる。また、必要な測位範囲と必要な計測精度が決まっている場合、必要な最大周波数差と最小周波数差を求めて、最小限の周波数の数を決定することができる。
【0056】
なお、特殊な例として実周波数においてf=0Hzとしてもよい。この場合、fの観測位相差φ1,m,nは0とすればよく、実際に観測する必要はない。また、その他の周波数は、f=0Hzでない場合と同様に、最小周波数差を不確定性が生じないように定め、最大周波数差f−f、すなわち最大周波数fを所要の測位精度が得られるように定める。
【0057】
このように、この実施の形態は、測位エリア内において位相不確定性が生じない最小周波数差と、所要の計測精度を得るのに必要な最大周波数差を持ち、かつ、任意の2周波の周波数差に重複が無い周波数間隔の複数周波数の位相差を用いて測位計算を行うので、最低限の周波数を用いて、位相不確定性の少ない高精度な測位装置を実現することができる。
【0058】
また、上記の特殊な周波数間隔を用いると共に、式(3)の第2の評価関数を用いて到来時間差候補を選別するので、さらに位相確定を誤る可能性を少なくすることができる。
【0059】
実施の形態2.
実施の形態1は、周波数差の位相差に感度がある式(1)を評価関数として到来時間差を推定したが、この実施の形態では、式(1)に代わり、次の式(8)を第1の評価関数として到来時間差を推定する。
【0060】
【数8】

【0061】
到来時間差推定以外の部分は全て実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0062】
次に、この実施の形態による効果を示す。式(8)は次の式(9)ように展開できる。
【0063】
【数9】

【0064】
上記式(9)を式(6)と比較すると、式の右辺第3項、第4項の周波数差成分f−f(k,l=1,2,…,K)のみならず、第5項、第6項の直接の搬送波周波数成分f(k=1,2,…,K)も含まれることがわかる。
【0065】
このように、この実施の形態によると、評価関数に、周波数差成分に加えて直接の搬送波周波数成分が加わり、より多数の周波数成分が含まれるため、位相不確定性の排除により有利になり、より高精度に到来時間差を推定できることが期待できる。
【0066】
実施の形態3.
実施の形態1は、周波数差の位相差に感度がある式(1)を評価関数として到来時間差を推定したが、この実施の形態では、式(1)に代わり、次の式(10)を評価関数として到来時間差を推定する。
【0067】
【数10】

【0068】
到来時間差推定以外の部分は全て実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
次に、この実施の形態による効果を示す。式(10)は次の式(11)ように展開できる。
【0070】
【数11】

【0071】
上記式(11)を式(6)と比較すると、式の右辺第2項、第3項の周波数差成分f−f(k,l=1,2,…,K)のみならず、第5項、第6項の周波数和成分f+f(k,l=1,2,…,K)も含まれることがわかる。
【0072】
このように、この実施の形態によると、評価関数に、周波数差成分に加えて周波数和成分が加わり、より多数の周波数成分が含まれるため、位相不確定性の排除により有利になり、より高精度に到来時間差を推定できることが期待できる。
【0073】
実施の形態4.
実施の形態1は、周波数差の位相差に感度がある式(1)を評価関数として到来時間差を推定したが、この実施の形態では、式(1)に代わり、次の式(12)を評価関数として到来時間差を推定する。
【0074】
【数12】

【0075】
到来時間差推定以外の部分は全て実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0076】
次に、この実施の形態による効果を示す。式(12)は次の式(13)ように展開できる。
【0077】
【数13】

【0078】
上記式(13)を式(6)と比較すると、式の右辺第3項、第4項の周波数差成分f−f(k,l=1,2,…,K)のみならず、第5項、第6項の周波数和成分f+f(k,l=1,2,…,K)、および第7項、第7項の直接の搬送波周波数成分f(k=1,2,…,K)も含まれることがわかる。
【0079】
このように、この実施の形態によると、評価関数に、周波数差成分に加えて周波数和成分と直接の搬送波周波数成分が加わり、より多数の周波数成分が含まれるため、位相不確定性の排除により有利になり、より高精度に到来時間差を推定できることが期待できる。
【符号の説明】
【0080】
1 発信機、2a〜2d 受信アンテナ、3a〜3d フィルタバンク、4a〜4d 切り替えスイッチ、5a〜5f 位相差算出器(手段)、6a〜6f 到来時間差候補算出器(手段)、7 到来時間差候補選択器(手段)、8 測位計算器(手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の周波数の電波を送信する電波源と、
前記電波源からの電波を受信する位置が既知の複数の受信機と、
受信機間毎の各周波数の受信した電波の位相差を算出する位相差算出手段と、
前記位相差算出手段で算出された各周波数の位相差から受信機間毎の到来時間差を算出する到来時間差算出手段と、
前記到来時間差算出手段で算出された到来時間差の組み合わせから前記電波源の測位計算を行う測位計算手段と、
を備え、
前記電波源の異なる複数の送信周波数が、任意に選択した2周波の周波数差が最小周波数差の整数倍で、かつ、他の組合せの2周波の周波数差と重複せず、かつ、最大周波数差が最も狭くなるように配置した周波数からなることを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記電波源が複数の送信周波数を順次切り替えて送信することを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記到来時間差算出手段において、受信機間毎に、各送信周波数の算出された位相差と、任意に設定される推定到来時間差と送信周波数の積で求められる位相差との差分の、位相ベクトル和の絶対値の二乗を第1の評価関数とし、前記第1の評価関数を最大化する前記推定到来時間差を到来時間差として算出することを特徴とする請求項1または2に記載の測位装置。
【請求項4】
前記到来時間差算出手段において、受信機間毎に、各送信周波数の算出された位相差と、任意に設定される推定到来時間差と送信周波数の積で求められる位相差との差分の、位相ベクトル和と1の和の、絶対値の二乗を第1の評価関数とし、前記第1の評価関数を最大化する前記推定到来時間差を到来時間差として算出することを特徴とする請求項1または2に記載の測位装置。
【請求項5】
前記到来時間差算出手段において、受信機間毎に、各送信周波数の算出された位相差と、任意に設定される推定到来時間差と送信周波数の積で求められる位相差との差分の、位相ベクトル和と、前記位相ベクトル和の複素共役の和の、絶対値の二乗を第1の評価関数とし、前記第1の評価関数を最大化する前記推定到来時間差を到来時間差として算出することを特徴とする請求項1または2に記載の測位装置。
【請求項6】
前記到来時間差算出手段において、受信機間毎に、各送信周波数の算出された位相差と、任意に設定される推定到来時間差と送信周波数の積で求められる位相差との差分の、位相ベクトル和と、前記位相ベクトル和の複素共役と1の和の絶対値の二乗を第1の評価関数とし、前記第1の評価関数を最大化する前記推定到来時間差を到来時間差として算出することを特徴とする請求項1または2に記載の測位装置。
【請求項7】
前記到来時間差算出手段において、前記第1の評価関数の複数の極大から複数の到来時間差候補を算出し、3個の受信機間の到来時間差の関係において、第1の受信機と第2の受信機の到来時間差候補と第2の受信機と第3の受信機の到来時間差候補との和と、第1の受信機と第3の受信機の到来時間差候補との差分を求め、全ての3個の受信機の組合せにおける前記差分の二乗和を第2の評価関数として、前記第2の評価関数を最小化する到来時間差候補の組み合わせを算出し、前記測位計算手段が前記到来時間差候補の組み合わせから前記電波源の測位計算を行うことを特徴とする請求項3から6までのいずれか1項に記載の測位装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−203849(P2010−203849A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48175(P2009−48175)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】