説明

測光装置

【課題】薄明視における明るさの計測精度を向上する。
【解決手段】本実施形態の測光装置では、第1光学フィルタ4及び第1光電変換器5からなる第1輝度計測部で明所視輝度Lpを計測し、第2光学フィルタ6及び第2光電変換器7からなる第2輝度計測部で暗所視輝度Lsを計測している。そして、演算部8が、第1輝度計測部の計測値(明所視輝度Lp)と、第1輝度計測部の計測値(明所視輝度Lp)に対する第2輝度計測部の計測値(暗所視輝度Ls)の比率とから薄明視輝度Lmesを演算している。その結果、本実施形態の測光装置は、薄明視における明るさ(薄明視輝度)の計測精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗所視や薄明視における明るさを計測するための測光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の分光視感効率は明所視、暗所視、薄明視でそれぞれ異なっている。明所視では錐体細胞の働きで色の知覚が可能であり、暗所視では錐体細胞が機能しないために色の知覚はできないものの、桿体細胞の働きによって感度が向上する。また、薄明視は明所視と暗所視の中間の状態であって、錐体細胞と桿体細胞の双方が機能している。ここで、明所視における分光視感効率のピーク波長が約555nmであるのに対し、暗所視における分光視感効率のピーク波長が約507nmにシフトしている。このような現象は、プルキンエ現象としてよく知られている。
【0003】
人の目で感じられる明るさの指標として、一般に輝度や照度が利用される。しかしながら、従来の輝度計や照度計は、明所視における分光視感効率に基づいて輝度や照度を計測している。そのため、暗所視や薄明視における輝度計や照度計の計測値と、実際に人の目で感じられる明るさとの間に隔たりがあった。
【0004】
そこで、特許文献1記載の従来例では、光源の相関色温度および輝度(明所視における輝度:明所視等価輝度)と薄明視等価輝度との間に相関があるという知見に基づき、輝度および相関色温度の計測値から光源の薄明視等価輝度を演算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−205731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の従来例は、薄明視における分光視感効率と光源の色温度との関係が不明確であるため、計測値の妥当性が低いことから、殆ど普及していない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、薄明視における明るさの計測精度の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の測光装置は、明所視における輝度を計測する第1輝度計測部と、暗所視における輝度を計測する第2輝度計測部と、前記第1輝度計測部の計測値並びに前記第2輝度計測部の計測値から薄明視における輝度を演算する演算部とを備え、当該演算部は、前記第1輝度計測部の計測値と、当該第1輝度計測部の計測値に対する前記第2輝度計測部の計測値の比率とから前記薄明視における輝度を演算することを特徴とする。
【0009】
この測光装置において、入射光を分光する分光手段と、当該分光手段で分光された複数の波長域毎の光強度を計測する計測部とを備え、前記第1輝度計測部は、前記計測部の計測値を明所視での分光視感効率に応じて積算することで明所視における輝度を計測し、前記第2輝度計測部は、前記計測部の計測値を暗所視での分光視感効率に応じて積算することで暗所視における輝度を計測することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の測光装置は、薄明視における明るさの計測精度が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る測光装置の実施形態1を示すブロック図である。
【図2】同上におけるデータテーブルの説明図である。
【図3】本発明に係る測光装置の実施形態2を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
本実施形態の測光装置は、図1に示すように光学部1、ハーフミラー2、ミラー3、第1光学フィルタ4、第1光電変換器5、第2光学フィルタ6、第2光電変換器7、演算部8、表示部9、ハウジング10を備えている。
【0013】
ハウジング10は合成樹脂製又は金属製の箱体からなり、左側面に開口した孔から光を取り込む。光学部1は、複数枚の凸レンズ100と、これら複数枚の凸レンズ100を支持してハウジング10の前記孔を塞ぐ筒状の胴部101とで構成されている。したがって、前記孔から取り込まれる光は、光学部1の凸レンズ100によって集光される。
【0014】
ハーフミラー2は光学部1の光路上に設置されており、光学部1で集光された光を2方向に分岐する。ハーフミラー2で分岐された一方の光路上に第1光学フィルタ4が設置されている。この第1光学フィルタ4は、人の明所視における分光視感効率(以下、「明所視分光視感効率」と呼ぶ。)に合致したフィルタ特性を有するものであって、例えば、誘電体多層膜で形成されている。
【0015】
ハーフミラー2で分岐された他方の光路は、ミラー3によって90度曲げられている。そして、ミラー3で曲げられた光路上に第2光学フィルタ6が設置されている。この第2光学フィルタ6は、人の暗所視における分光視感効率(以下、「暗所視分光視感効率」と呼ぶ。)に合致したフィルタ特性を有するものであって、例えば、誘電体多層膜で形成されている。
【0016】
第1光電変換器5は、第1光学フィルタ4を通過した光を電気信号に変換する光電変換素子(図示せず)や、光電変換素子の出力電圧を増幅する増幅器(図示せず)などで構成されている。すなわち、第1光電変換器5の出力電圧が明所視における輝度(明所視輝度)Lpを示している。
【0017】
第2光電変換器7は、第1光電変換器5と同様に、第2光学フィルタ6を通過した光を電気信号に変換する光電変換素子(図示せず)や、光電変換素子の出力電圧を増幅する増幅器(図示せず)などで構成されている。すなわち、第2光電変換器7の出力電圧が暗所視における輝度(暗所視輝度)Lsを示している。
【0018】
演算部8は、第1光電変換器5及び第2光電変換器7の出力電圧をそれぞれ量子化(A/D変換)するA/D変換器、後述する演算を行うためのプログラムが格納されたメモリ、当該メモリに格納されているプログラムを実行するCPUなどで構成されている。この演算部8は、CPUで前記プログラムが実行されることにより、以下のようにして薄明視における輝度(薄明視輝度)Lmesを演算している。具体的には、演算部8は、明所視輝度Lpに対する暗所視輝度Lsの比率(=Ls/Lp)を算出し、明所視輝度Lpと当該比率とから、図2に示すデータテーブルを参照して薄明視輝度Lmesを求める。例えば、明所視輝度Lp=0.1、比率(Ls/Lp)=0.85であれば、図2のデータテーブルから薄明視輝度Lmes=0.0947と求められる。
【0019】
表示部9は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスと、当該表示デバイスを駆動するドライバ回路とで構成されている。そして、演算部8から出力される表示信号により、ドライバ回路が表示デバイスを駆動して、薄明視輝度Lmesの値(上記例であれば、Lmes=0.0947)を表示デバイスに表示する。
【0020】
なお、図2に示すデータテーブルは予め実験によって求められるものであって、演算部8のメモリに格納されている。但し、このデータテーブルは一例に過ぎず、これに限定されるものではない。また、明所視輝度Lp又は比率の値がデータテーブルにない場合、演算部8は最も近い値を使用して内挿することにより、薄明視輝度Lmesを算出する。ここで、データテーブルを用いる代わりに、予め求めた計算式を用いて薄明視輝度Lmesを算出するようにしても構わない。
【0021】
このように本実施形態の測光装置では、第1光学フィルタ4及び第1光電変換器5からなる第1輝度計測部で明所視輝度Lpを計測し、第2光学フィルタ6及び第2光電変換器7からなる第2輝度計測部で暗所視輝度Lsを計測している。そして、演算部8が、第1輝度計測部の計測値(明所視輝度Lp)と、第1輝度計測部の計測値(明所視輝度Lp)に対する第2輝度計測部の計測値(暗所視輝度Ls)の比率とから薄明視輝度Lmesを演算している。その結果、本実施形態の測光装置は、薄明視における明るさ(薄明視輝度)の計測精度を向上させることができる。
【0022】
(実施形態2)
本実施形態の測光装置は、図3に示すように入射光を分光する分光フィルタ11と、分光フィルタ11で分光された複数の波長域毎の光強度(輝度)を計測する計測部12と、薄明視輝度を演算する演算部13とを備えている。但し、実施形態1の測光装置と共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0023】
分光フィルタ11はプリズムからなり、波長毎の屈折率の違いを利用して入射光を複数の波長域の光に分離(分光)する。計測部12は、分光フィルタ11で分光された各波長域と対応する複数の光電変換素子(図示せず)と、それぞれの光電変換素子の出力電圧を増幅する複数の増幅器(図示せず)とを有している。
【0024】
演算部13は、計測部12の出力電圧を量子化(A/D変換)するA/D変換器、後述する演算を行うためのプログラムが格納されたメモリ、当該メモリに格納されているプログラムを実行するCPUなどで構成されている。この演算部13は、CPUで前記プログラムが実行されることにより、以下のようにして明所視輝度Lp、暗所視輝度Ls、薄明視輝度Lmesを演算している。
【0025】
ここで、演算部13は、計測部12で計測される各波長域毎の計測値を、明所視感効率に対応した重み付け、例えば、ピーク波長(555nm)を含む波長域を1としたときに当該波長域から離れるに従って1よりも小さくなる重み付け係数を乗算した後に積算することで明所視輝度Lpを算出する。同様に、演算部13は、計測部12で計測される各波長域毎の計測値を、暗所視感効率に対応した重み付け、例えば、ピーク波長(507nm)を含む波長域を1としたときに当該波長域から離れるに従って1よりも小さくなる重み付け係数を乗算した後に積算することで暗所視輝度Lsを算出する。すなわち、本実施形態の測光装置では、演算部13が第1輝度計測部並びに第2輝度計測部に相当する。
【0026】
さらに演算部13は、実施形態1と同様に、明所視輝度Lpに対する暗所視輝度Lsの比率(=Ls/Lp)を算出し、明所視輝度Lpと当該比率とから、図2に示すデータテーブルを参照して薄明視輝度Lmesを求める。
【0027】
上述のように本実施形態の測光装置も実施形態1と同様に、薄明視における明るさ(薄明視輝度)の計測精度を向上させることができる。また、実施形態1の測光装置では第1光学フィルタ4と第2光学フィルタ6の2枚のフィルタが用いられているのに対し、本実施形態の測光装置では分光フィルタ11のみが用いられている。そのため、本実施形態の測光装置は、フィルタの精度に依存した計測誤差が実施形態1の測光装置に比べて小さくなるという利点を有している。しかも、本実施形態の測光装置では、複数の波長域毎の光強度(輝度)を計測しているので、演色評価数などの別の指標を演算部13で算出することもできる。
【符号の説明】
【0028】
4 第1光学フィルタ(第1輝度計測部)
5 第1光電変換器(第1輝度計測部)
6 第2光学フィルタ(第2輝度計測部)
7 第2光電変換器(第2輝度計測部)
8 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明所視における輝度を計測する第1輝度計測部と、暗所視における輝度を計測する第2輝度計測部と、前記第1輝度計測部の計測値並びに前記第2輝度計測部の計測値から薄明視における輝度を演算する演算部とを備え、当該演算部は、前記第1輝度計測部の計測値と、当該第1輝度計測部の計測値に対する前記第2輝度計測部の計測値の比率とから前記薄明視における輝度を演算することを特徴とする測光装置。
【請求項2】
入射光を分光する分光手段と、当該分光手段で分光された複数の波長域毎の光強度を計測する計測部とを備え、前記第1輝度計測部は、前記計測部の計測値を明所視での分光視感効率に応じて積算することで明所視における輝度を計測し、前記第2輝度計測部は、前記計測部の計測値を暗所視での分光視感効率に応じて積算することで暗所視における輝度を計測することを特徴とする請求項1記載の測光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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