説明

測定ガス希釈装置およびその方法ならびに水銀分析装置およびその方法

【課題】希釈ガス設備を別途必要とせず、大容量の流量に対応する必要のない測定ガス希釈装置およびその方法ならびに水銀分析装置およびその方法により、装置の小型化とコストダウンを図ることを目的とする。
【解決手段】測定ガス希釈装置1は、試料ガスの所定量を測定用ガスとして導入する測定用ガス流路11と、試料ガスの所定量を希釈用ガスとして導入し希釈用ガスの流量を調節する希釈用ガス流量調節手段110および水銀を除去する水銀除去フィルタ120を有し、所定量の希釈ガスを生成する希釈ガス流路13と、測定用ガス流路11と希釈ガス流路13とが接続され、測定ガスを生成する測定ガス流路15と、測定用ガスの流量を調節する測定用ガス流量調節手段100と、希釈用ガス流量調節手段110および測定用ガス流量調節手段100を制御する流量制御手段130とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子吸光分析法または原子蛍光分析法によって、測定ガス中に含有される水銀を分析する場合に、測定ガスを希釈して測定する水銀分析装置およびその方法ならびに測定ガス希釈装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から原子吸光分析法による水銀分析は、長年にわたり環境分析や品質管理分析などで広く使用されている(特許文献1)。また、原子蛍光分析法による水銀分析もかなり以前から使用されている。ゴミ焼却炉などの排ガスのオンライン分析では、排ガス中に含有される成分の濃度が高い場合、測定前に空気や窒素ガスなどの希釈ガスで試料ガスを希釈して測定している。
【特許文献1】特開2001−33434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の装置や方法では、所定量の測定ガスに希釈倍率に応じた希釈ガスを混合させるため、別途、クリーンな希釈ガスを準備する必要があり、また希釈後の測定ガスの体積が数倍から数十倍に増加する。そのため、希釈ガス設備が別途必要であり、測定ガス流路、希釈ガス流路、流量調節手段などが大容量の流量に対応可能にしなければならず、装置が大型で装置の設置面積が大きくなり、また装置も高額になる。
【0004】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、希釈ガス設備を別途必要とせず、大容量の流量に対応する必要のない測定ガス希釈装置およびその方法ならびに測定ガスを希釈して測定する水銀分析装置およびその方法を提供し、装置の小型化とコストダウンを図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の第1構成にかかる測定ガス希釈装置は、試料ガスの所定量が測定用ガスとして導入される測定用ガス流路と、試料ガスの所定量が希釈用ガスとして導入される流路であって、前記希釈用ガスの流量を調節する希釈用ガス流量調節手段および前記希釈用ガス中に含有される水銀を除去する水銀除去フィルタを有し、所定量の希釈ガスを生成する希釈ガス流路と、前記測定用ガス流路と前記希釈ガス流路とが接続され前記測定用ガスおよび前記希釈ガスが混合され、測定ガスを生成する測定ガス流路と、前記測定用ガス流路の測定用ガスの流量を調節する測定用ガス流量調節手段、または前記測定ガスの流量を調節する測定ガス流量調節手段と、前記希釈用ガス流量調節手段と、前記測定用ガス流量調節手段または測定ガス流量調節手段とを制御する流量制御手段とを有する。
【0006】
本発明の第1構成の装置によれば、希釈ガス設備を別途必要とせず、大容量の流量に対応する必要のない測定ガス希釈装置を提供し、装置の小型化とコストダウンを図ることができる。
【0007】
本発明の第1構成の装置の好ましい実施形態では、前記希釈ガス流路が前記測定用ガス流路から分岐して前記測定ガス流路に接続する分岐流路である。
【0008】
この構成によれば、試料ガスの導入口が1箇所にすることができるので、さらに装置の小型化とコストダウンを図ることができる。
【0009】
本発明の第2構成にかかる水銀分析装置は、前記測定ガス希釈装置と、水銀の分析線を放射する水銀ランプと、前記測定ガスを内部に通過させるとともに、前記水銀の分析線を透過させる測定セルと、前記測定セルを透過した水銀の分析線強度または前記測定セル中に存在する水銀から発生する水銀の蛍光強度を検出する検出器と、前記検出器が検出した信号強度により測定ガス中の水銀の含有量を定量する定量手段とを有する。
【0010】
本発明の第2構成の装置によれば、希釈ガス設備を別途必要とせず、大容量の流量に対応する必要はなく、測定ガスを希釈して測定する水銀分析装置を提供し、装置の小型化とコストダウンを図ることができる。
【0011】
本発明の第3構成にかかる測定ガス希釈方法は、試料ガス中に含有される水銀を水銀除去フィルタにより除去して希釈ガスを生成し、試料ガスの所定量を測定用ガスとし、この所定量の測定用ガスと前記希釈ガスとを混合して所定の希釈倍率の測定ガスを生成する。
【0012】
本発明の第3構成の方法によれば、希釈ガス設備を別途必要とせず、大容量の希釈ガスを取り扱うことがなく、操作が簡単で安価に試料ガスを希釈することができる。
【0013】
本発明の第4構成にかかる水銀分析方法は、前記の第3構成の方法によって生成された測定ガスが内部を通過する測定セルに水銀ランプから放射される水銀ランプの発光線である分析線を透過させ、前記測定セルを透過した水銀の分析線強度、または前記測定セル中に存在する水銀から発生する水銀の蛍光強度を検出器で検出し、前記検出器で検出した信号強度により試料中の水銀の含有量を定量する。
【0014】
本発明の第4構成の方法によれば、前記の第3構成の方法によって試料ガスを希釈して、生成した測定ガスを用いて水銀を分析するので、操作が簡単で安価に試料ガスを分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態である測定ガス希釈装置について説明する。図1に示すように、本測定ガス希釈装置1は、試料ガスの所定量を測定用ガスとして導入口10から導入する測定用ガス流路11と希釈ガス流路13とが分岐する分岐部12との間に測定用ガス流路11の測定用ガスの流量を調節する測定用ガス流量調節手段100、試料ガスの所定量を希釈用ガスとして分岐部12から導入する希釈ガス流路13に希釈用ガスの流量を調節する希釈用ガス流量調節手段110および希釈用ガス中に含有される水銀を除去する水銀除去フィルタ120を有し、測定用ガス流路11と希釈ガス流路13とが混合部14で接続され測定用ガスおよび希釈ガスが混合され、測定ガスを生成する測定ガス流路15を備え、導出口16から測定ガスを導出する。
【0016】
測定用ガス流路11は、導入口10→測定用ガス流量調節手段100→分岐部12→混合部14の流路で形成される。希釈ガス流路13は、分岐部12→水銀除去フィルタ120→希釈用ガス流量調節手段110→混合部14の流路で形成される。測定ガス流路15は、混合部14→導出口16の流路で形成される。
【0017】
測定用ガス流量調節手段100は、空気ポンプ101およびマスフローメータ102を備え、導入口10から試料ガスの所定量を導入するように流量制御手段130によって制御され試料ガス量を調節する。希釈用ガス流量調節手段110は、空気ポンプ111およびマスフローメータ112を備え、分岐部12から試料ガスを導入し、所定量の希釈ガス量になるように流量制御手段130によって制御され希釈ガス量を調節する。流量制御手段130は空気ポンプ101、マスフローメータ102、空気ポンプ111およびマスフローメータ112を制御して所定量の所定希釈倍率の測定ガスを生成する。測定用ガス流量調節手段100および希釈用ガス流量調節手段110は0.1〜10リットル/分、好ましくは0.1〜2リットル/分の流量を調節する。希釈倍率は1〜10倍、好ましくは2〜5倍に調節される。
【0018】
水銀除去フィルタ120は、例えば石英ガラスで形成された円筒容器の入口と出口に石英ウールが詰められ、これらの石英ウールの中間に20〜30メッシュの粒状の金コーティングされたクロモソルブが充填されている。水銀除去剤である金コーティングクロモソルブに希釈用ガス中の水銀が吸着され、水銀が除去された希釈ガスが生成される。クロモソルブの粒径については上記に限らず、適宜に選択すればよい。水銀除去剤として、金コーティングした海砂や水銀専用粒状活性炭などを用いてもよい。
【0019】
次に、本実施形態の測定ガス希釈装置1の動作について説明する。例えば、測定用ガス流量が1リットル/分、希釈ガス流量が0.8リットル/分の流量になるように流量制御手段130によって設定する。流量制御手段130によって、空気ポンプ101、マスフローメータ102、空気ポンプ111およびマスフローメータ112が稼動されると、例えば、ゴミ焼却炉の排気ガスである試料ガスが導入口10から導入される。流量制御手段130によって測定用ガス流量調節手段100が制御され、導入口10→測定用ガス流量調節手段100→分岐部12の測定用ガス流路11では、試料ガスである測定用ガスの流量が1リットル/分に調節される。
【0020】
流量制御手段130によって希釈用ガス流量調節手段110が制御され、希釈ガス流路13では、水銀除去フィルタ120を通過した希釈用ガスから水銀が除去され、生成された希釈ガスが0.8リットル/分の流量に調節される。このとき、分岐部12→混合部14の測定用ガス流路中の測定用ガス流量は0.2リットル/分の流量に調節される。0.8リットル/分の流量の希釈ガスと0.2リットル/分の流量の測定用ガスが混合部14に導入、混合され、測定用ガスが5倍に希釈された測定ガスが生成される。生成された測定ガスは測定ガス流路15を通り、導出口16から導出する。
【0021】
本実施形態では、測定用ガス流量調節手段100は導入口10と分岐部12の間の流路に備えられているが、図2に示す測定ガス希釈装置2のように、混合部24と導出口26の間の測定ガス流路25に測定ガス流量調節手段140と流量制御手段150を備えてもよい。また、図3に示す測定ガス希釈装置3のように、分岐部32と混合部34の間の測定用ガス流路31に測定用ガス流量調節手段100を備えてもよい。
【0022】
本実施形態によれば、希釈ガス設備を別途必要とせず、大容量の流量に対応する必要のない測定ガス希釈装置を提供すると共に、試料ガスの導入口を1箇所にすることができるので、装置の小型化と大幅なコストダウンを図ることができる。
【0023】
以下、本発明の第2実施形態である測定ガス希釈装置について説明する。図4に示すように、本測定ガス希釈装置4は、試料ガスの所定量を測定用ガスとして導入口40から導入する測定用ガス流路41と混合部44との間に測定用ガス流路41の測定用ガスの流量を調節する測定用ガス流量調節手段100、試料ガスの所定量を希釈用ガスとして導入口42から導入する希釈ガス流路43に希釈用ガスの流量を調節する希釈用ガス流量調節手段110および希釈用ガス中に含有される水銀を除去する水銀除去フィルタ120を有し、測定用ガス流路41と希釈ガス流路43とが混合部44で接続され測定用ガスおよび希釈ガスが混合され、測定ガスを生成する測定ガス流路45を備え、導出口46から測定ガスを導出する。
【0024】
測定用ガス流路41は、導入口40→測定用ガス流量調節手段100→混合部44の流路で形成される。希釈ガス流路43は、導入口42→水銀除去フィルタ120→希釈用ガス流量調節手段110→混合部44の流路で形成される。測定ガス流路45は、混合部44→導出口46の流路で形成される。本実施形態では、試料ガスの導入口が測定用ガス導入口40と希釈用ガス導入口42の2箇所備えられている点で第1実施形態と異なっているが、測定用ガス流量調節手段100、希釈用ガス流量調節手段110、流量制御手段130、水銀除去フィルタ120は、前記の第1実施形態と同様の構成である。
【0025】
次に、本実施形態の測定ガス希釈装置4の動作について説明する。例えば、測定用ガス流量が0.2リットル/分、希釈ガス流量が0.8リットル/分の流量になるように流量制御手段130によって設定する。流量制御手段130によって、空気ポンプ101、マスフローメータ102、空気ポンプ111およびマスフローメータ112が稼動されると、例えば、ゴミ焼却炉の排気ガスである試料ガスが導入口40および42から導入される。流量制御手段130によって測定用ガス流量調節手段100が制御され、導入口40→測定用ガス流量調節手段100→混合部44の測定用ガス流路41では、測定用ガス流量が0.2リットル/分に調節される。
【0026】
流量制御手段130によって希釈用ガス流量調節手段110が制御され、希釈ガス流路43では、水銀除去フィルタ120を通過した希釈用ガスから水銀が除去され、生成された希釈ガスが0.8リットル/分の流量に調節される。0.2リットル/分の流量の測定用ガスと0.8リットル/分の流量の希釈ガスが混合部44に導入、混合され、測定用ガスが5倍に希釈された1リットル/分の流量の測定ガスが生成される。生成された測定ガスは測定ガス流路45を通り、導出口46から導出する。
【0027】
本実施形態では、測定用ガス流量調節手段100は導入口40と混合部44の間の流路に備えられているが、図5に示す測定ガス希釈装置2の変形例である測定ガス希釈装置5のように、混合部54と導出口56の間の測定ガス流路55に測定ガス流量調節手段140と流量制御手段150を備えてもよい。
【0028】
本実施形態によれば、希釈ガス設備を別途必要とせず、大容量の流量に対応する必要のない測定ガス希釈装置を提供するので、装置の小型化とコストダウンを図ることができる。
【0029】
以下、本発明の第3実施形態である水銀分析装置について説明する。図6に示すように、本水銀分析装置6は、第1実施形態の変形例である測定ガス希釈装置2と水銀測定部8とを備え、水銀測定部8は、水銀の分析線である253.7nmの紫外線を放射する水銀ランプ61、測定ガスを導入する測定セル62、水銀ランプ61と測定セル62の間にハーフミラー67、ハーフミラー67で反射した水銀ランプ61からの253.7nmの紫外線を検出する参照側検出器65、測定セル62を透過した水銀ランプ61からの253.7nmの紫外線を検出する試料側検出器63、および検出器63と65で検出された信号を比較し、処理することにより測定ガス中の水銀濃度を定量する定量手段64を備えており、測定ガス希釈装置2の測定ガス流量調節手段140は測定セル62から測定ガスが導出する後段に備えられている。したがって、混合部24→測定セル62→測定ガス流量調節手段140→導出口26の流路が測定ガス流路25を形成する。
【0030】
測定ガス希釈装置2の流量制御手段150と定量手段64は電気的に接続されており、定量手段64から測定ガスの測定値の信号が流量制御手段150に送信される。例えば、測定ガスの測定値が、フルスケールの90%以上の値を示す場合には、流量制御手段150によって自動的に希釈倍率を大きくされる。
【0031】
次に、本実施形態の水銀分析装置6の動作について説明する。例えば、測定ガス流量が1リットル/分、希釈ガス流量が0.8リットル/分の流量になるように流量制御手段150によって設定する。流量制御手段150によって、空気ポンプ101、マスフローメータ102、空気ポンプ141およびマスフローメータ142が稼動されると、例えば、ゴミ焼却炉の排気ガスである試料ガスが導入口20から導入される。流量制御手段150によって測定ガス流量調節手段140が制御され、測定ガス流量が1リットル/分に調節される。
【0032】
流量制御手段150によって希釈用ガス流量調節手段100が制御され、希釈ガス流路23では、水銀除去フィルタ120を通過した希釈用ガスから水銀が除去され、生成された希釈ガスが0.8リットル/分の流量に調節される。この流量制御により、導入口20→分岐部22の測定用ガス流路21では、測定用ガス流量が1リットル/分に調節され、分岐部22→混合部24の測定用ガス流路21では、0.2リットル/分の流量に調節される。0.8リットル/分の流量の希釈ガスと0.2リットル/分の流量の測定用ガスが混合部24に導入、混合され、測定用ガスが5倍に希釈された測定ガスが生成される。生成された測定ガスは測定ガス流路25を通り、測定セル62に入る。
【0033】
測定セル62の入射窓に水銀ランプ61から分析線である253.7nmの紫外線が照射され、測定セル62を透過し出射窓より出射した分析線強度を検出器63が検出すると同時に、参照光が検出器65によって検出されており、測定を開始すると、定量手段64が信号処理を開始し、測定ガス中の水銀を定量する。本実施形態の水銀分析装置は原子吸光方式であり、水銀ランプ61から照射される253.7nmの紫外線は、測定セル62中に存在する水銀量に応じて減光され分析線強度が減少する、その分析線強度の減少量に応じて水銀量を定量する。
【0034】
前記では、測定ガス流量が1リットル/分、希釈ガス流量が0.8リットル/分の流量になるように流量制御手段150によって設定したが、測定ガス流量または測定用ガス流量と希釈倍率を設定してもよい。
【0035】
測定値がフルスケールの90%以上になった場合には、流量制御手段150によって、測定ガスが現在の希釈倍率の2倍になるように自動的に設定、希釈され、測定される。測定された結果、また測定値がフルスケールの90%以上になる場合には、さらに例えば、3倍、5倍、10倍などの希釈倍率に順次増大させて測定する。測定値がフルスケールの90%未満になると、その希釈倍率が流量制御手段150により定量手段64に送られ、その希釈倍率と測定値とを演算して試料ガス中の水銀量が定量される。
【0036】
本実施形態によれば、希釈ガス設備を別途必要とせず、大容量の流量に対応する必要がなくなるので、水銀分析装置の小型化と大幅なコストダウンを図ることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、ダブルビーム方式の水銀分析装置について説明したが、本発明の信号処理手段はシングルビーム方式の水銀分析装置にも使用することができ、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
以下、本発明の第4実施形態である水銀分析装置について説明する。図7に示すように、本水銀分析装置7は第3実施形態の変形例であり、水銀分析装置6に、還元反応器70を測定ガス希釈装置2の導入口20の前段階にさらに備えている。還元反応器70は還元剤が容器内に充填されている。この還元剤の作用により試料ガス中に含有されている塩化第二水銀中の2価水銀を0価水銀(金属水銀)に還元する。したがって、本水銀分析装置7の場合の水銀除去フィルタは金属水銀を除去できる粒状活性炭や金コーティングされた海砂などの水銀除去剤が好ましい。
【0039】
本実施形態の水銀分析装置7は、還元反応器70によって試料ガス中の2価水銀が金属水銀に還元される作用以外は第3実施形態の水銀分析装置6と同様であるので、装置の動作説明は省略する。
【0040】
第4実施形態によれば、第3実施形態と同様の作用効果を有するとともに、試料ガス中に2価水銀および0価水銀が含有されていても全水銀量を測定することができる。なお、流量制御手段130と150は装置と一体化されていても、外部コンピュータであってもよい。
【0041】
次に、第5実施形態の測定ガス希釈方法について説明する。例えば、ゴミ焼却炉の排気ガスである試料ガスを空気ポンプやマスフローメータなどを用いて所定量を希釈ガス流路に導入し、試料ガス中に含有される水銀を第1実施形態で記載した金コーティングされたクロモソルブが充填されている水銀除去フィルタにより除去して希釈ガスを生成する。試料ガスの所定量を空気ポンプやマスフローメータなどを用いて測定用ガスとして測定用ガス流路に導入する。この所定量の測定用ガスと所定量の希釈ガスとを混合して所定の希釈倍率の測定ガスを生成する。
【0042】
本実施形態によれば、希釈ガス設備を別途必要とせず、大容量の流量に対応する必要がなくなるので、操作が簡単になり大幅なコストダウンを図ることができる。
【0043】
次に、第6実施形態の水銀分析方法について説明する。本実施形態の水銀分析方法は、第5実施形態の測定ガス希釈方法によって生成された測定ガスを、図6または図7に記載する水銀測定部8の測定セル62に水銀ランプから放射される水銀ランプ61の発光線である分析線を透過させ、測定セル62を透過した水銀の分析線の強度を検出器63で検出すると同時に、試料参照光が検出器65によって検出されており、測定を開始すると、定量手段64が信号処理を開始し、測定ガス中の水銀を定量する。
【0044】
第6実施形態によれば、希釈ガス設備を別途必要とせず、大容量の流量に対応する必要がなくなるので、操作が簡単で大幅なコストダウンを図ることができる。
【0045】
本発明において、測定ガスや測定用ガスが接触する各流路の配管内面やガス流量調節手段のガス流路内面については水銀が吸着しない材料で形成される必要がある。各流路の配管内面やガス流量調節手段のガス流路内面に水銀が吸着される場合には、図6〜8に示すように、測定セルの後段に測定ガス流量調節手段を配置する必要がある。
【0046】
第3〜第6実施形態では、原子吸光方式の分析装置や分析方法について説明したが、原子蛍光方式の分析装置や分析方法であってもよい。水銀原子蛍光分析装置は、例えば、図6および7に示す水銀分析装置の水銀測定部8と異なり、図8の水銀測定部9に示すように、水銀ランプ81から放射される分析線が入射しない位置であり、かつ測定セル82に導入された測定ガス中に存在する水銀から発生する水銀の蛍光を検出できる位置に配置された検出器83と、検出器83が検出した水銀の蛍光強度により測定ガス中の水銀の含有量を定量する定量手段84とを有している。原子蛍光分析方式の装置では、水銀ランプ81から照射される253.7nmの紫外線を測定セル82中に存在する水銀に照射すると、測定セル82中の水銀から蛍光が発生する。この発生した蛍光強度を検出する検出器83の信号強度に応じて測定セル82中の水銀量を定量する。水銀原子蛍光分析方法はこのような水銀原子蛍光分析装置を用いて分析する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態である測定ガス希釈装置の概略ブロック図である。
【図2】同装置の変形例の概略ブロック図である。
【図3】同装置の他の変形例の概略ブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態である測定ガス希釈装置の概略ブロック図である。
【図5】同装置の変形例の概略ブロック図である。
【図6】本発明の第3実施形態である水銀分析装置の概略ブロック図である。
【図7】本発明の第4実施形態である水銀分析装置の概略ブロック図である。
【図8】本発明の第3実施形態である水銀分析装置の変形例の概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
1、2、3、4、5 測定ガス希釈装置
6、7 水銀分析装置
11、21、31、41 測定用ガス用流路
12、22、32 分岐部
13、23、43 希釈ガス流路
14、24、34、44、54 混合部
15、25、45、55、 測定ガス流路
61、81 水銀ランプ
62、82 測定セル
63、83 試料側検出器
65 参照側検出器
64 定量手段
100 測定ガス用流量調節手段
110 希釈ガス流量調節手段
140 測定ガス流量調節手段
120 水銀除去フィルタ
130、150 流量制御手段























【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスの所定量が測定用ガスとして導入される測定用ガス流路と、
試料ガスの所定量が希釈用ガスとして導入される流路であって、前記希釈用ガスの流量を調節する希釈用ガス流量調節手段および前記希釈用ガス中に含有される水銀を除去する水銀除去フィルタを有し、所定量の希釈ガスを生成する希釈ガス流路と、
前記測定用ガス流路と前記希釈ガス流路とが接続され前記測定用ガスおよび前記希釈ガスが混合され、測定ガスを生成する測定ガス流路と、
前記測定用ガス流路の測定用ガスの流量を調節する測定用ガス流量調節手段、または前記測定ガスの流量を調節する測定ガス流量調節手段と、
前記希釈用ガス流量調節手段と、前記測定用ガス流量調節手段または測定ガス流量調節手段とを制御する流量制御手段と、
を有する測定ガス希釈装置。
【請求項2】
請求項1において、前記希釈ガス流路が前記測定用ガス流路から分岐して前記測定ガス流路に接続する分岐流路である測定ガス希釈装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の測定ガス希釈装置と、
水銀の分析線を放射する水銀ランプと、
前記測定ガスを内部に通過させるとともに、前記水銀の分析線を透過させる測定セルと、
前記測定セルを透過した水銀の分析線強度または前記測定セル中に存在する水銀から発生する水銀の蛍光強度を検出する検出器と、
前記検出器が検出した信号強度により測定ガス中の水銀の含有量を定量する定量手段と、
を有する水銀分析装置。
【請求項4】
試料ガス中に含有される水銀を水銀除去フィルタにより除去して希釈ガスを生成し、
試料ガスの所定量を測定用ガスとし、この所定量の測定用ガスと前記希釈ガスを混合して所定の希釈倍率の測定ガスを生成する測定ガス希釈方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法によって生成された測定ガスが内部を通過する測定セルに水銀ランプから放射される水銀ランプの発光線である分析線を透過させ、
前記測定セルを透過した水銀の分析線強度、または前記測定セル中に存在する水銀から発生する水銀の蛍光強度を検出器で検出し、
前記検出器で検出した信号強度により試料中の水銀の含有量を定量する水銀分析方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−292215(P2008−292215A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136129(P2007−136129)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(599102310)日本インスツルメンツ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】