測定システムに用いられる表示装置、表示方法並びに表示プログラム
【課題】測定情報画像上において位置決めを行い易くすることができる測定システムに用いられる表示装置、表示方法並びに表示プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】測定対象の血液中に含まれているβ+線の測定情報を有したIP(イメージングプレート)画像を表示し、血液を収容する円板の設計情報に基づくガイドGをIP画像に付加して表示することで、本来であればガイドが反映されないIP画像にガイドGを付加して表示することにより、設計情報に基づく基準位置(例えば円板の中心位置)がIP画像上で視覚的にわかる。その結果、基準位置(円板の中心位置)を示すガイドGに基づいてIP画像上で位置決めを行い易くすることができる。
【解決手段】測定対象の血液中に含まれているβ+線の測定情報を有したIP(イメージングプレート)画像を表示し、血液を収容する円板の設計情報に基づくガイドGをIP画像に付加して表示することで、本来であればガイドが反映されないIP画像にガイドGを付加して表示することにより、設計情報に基づく基準位置(例えば円板の中心位置)がIP画像上で視覚的にわかる。その結果、基準位置(円板の中心位置)を示すガイドGに基づいてIP画像上で位置決めを行い易くすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定する測定システムに用いられる表示装置、表示方法並びに表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
測定システムは、例えば液体採取装置に用いられる。液体採取装置として、血液を採取する、すなわち採血する採血装置を例にとって説明する。採血装置は、核医学診断(例えば、PET(Positron Emission Tomography)、SPECT(Single Photon Emission CT)など)における定量解析で用いられ、特に小動物(例えばマウスやラットなど)の動脈血中の放射能濃度の測定に用いられている。
【0003】
具体的には、小動物に放射性薬剤を投与した後に血液を採取(採血)して、既定時間ごとの全採血終了後に遠心分離による血漿分離を行い、全血および血漿中の放射能濃度の時間変化を測定する(例えば、特許文献1、2参照)。より具体的に説明すると、血液中に含まれているβ+線に対して露光を行って放射能分布を可視化するイメージングプレート(IP: Imaging Plate)を用いて測定する。イメージングプレート(「IP」と適宜略記する)から得られたIP画像から放射線量の値を取得するソフトウェアとして、例えば富士フィルム社製のMulti Gaugeがある。このソフトウェアでは、IP画像を読み込んでソフトウェア上で関心領域を設定して、関心領域内の画素値を計算することで、単位面積当たりの放射線量を求めることができる。
【0004】
特許文献1では、所定の寸法で区切られた容器に放射能を放射する試料(ここでは血液)を入れ、IPで試料の放射線強度を測定し、スキャナで試料の面積を測定する。所定の寸法で容器が設計されていることから、測定結果の試料の面積から試料の体積を求める。そして、IPで取得された放射線強度のIP画像とスキャナで取得されたスキャナ画像とを合わせて、各試料の放射能濃度(=放射線強度/体積)を算出する技術が示されている。特許文献2では、所定の寸法で区切られた容器の例が示されており、平面状の円板に複数の試料を入れる流路が形成された容器が示されている。
【0005】
血中放射能濃度を求める際には、下記のような重畳処理を行う。すなわち、フラットヘッドスキャナで撮像された円板の画像(スキャナ画像)と、IPで得られた計数情報であるβ+線の分布像(IP画像)とを重ね合わせて重畳処理を行う。この重畳処理を上述したソフトウェアで行う場合、β+線の分布像上での円板中心位置に、円板の画像上での円板中心位置を合わせて重ね合わせすることで、円板の溝(流路)位置および血漿・血球の正確な位置合わせを行うことができる。
【0006】
血液を遠心分離して、血漿分離された血漿および血球に含まれている放射線をそれぞれ分離して計数しているので、血漿中放射能濃度を求めることができる。このようにして、β+線の分布像上での溝内部(流路内部)で分離された血漿および血球と重なる部分のβ+線の計数情報から、各部のβ+線の放射線強度から各部の体積をそれぞれ除算することで、単位体積当たりの血中放射能濃度をそれぞれ求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2009−093306号
【特許文献2】特開2011−075420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1、2でそれぞれ示されている技術を併せた場合、測定情報画像(例えばIP画像)上での位置決めが難しいという問題がある。
すなわち、IP画像であるβ+線の分布像上で円板の中心位置を決める際に、円板の形状が分布像上ではわからないので、円板の中心位置を決めるのが難しい。もし、円板の中心位置が正しくない場合には、スキャナ画像である円板の画像とIP画像であるβ+線の分布像との重畳処理を行う際に、円板上の複数の溝(流路)の位置を識別して位置を合わせる処理を行う必要があり、処理が複雑になる恐れがある。
【0009】
また、溝(流路)を間違えた場合には、求める流路とは異なる流路における放射線強度を体積で除算する、もしくは求める流路とは異なる流路における体積で放射線強度を除算してしまい、放射能濃度を間違えて求めてしまう恐れがある。このように、IPで取得されたIP画像などに代表される測定情報画像において、位置決めのための基準位置(例えば円板の中心位置)がわからないと、重畳処理が複雑になる、あるいは放射能濃度などのデータを間違えて求めてしまう。
【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、測定情報画像上において位置決めを行い易くすることができる測定システムに用いられる表示装置、表示方法並びに表示プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、次のような知見を得た。
【0012】
すなわち、固定冶具などによって容器を固定して位置決めを行いつつ支持する、あるいは容器に切り欠きや突起を容器に設ける、または(例えば容器とは別物質を貼り付ける、容器に記号や番号を刻印する、または容器に記号や番号の模様からなる部材を突起状に設けるなど)マーカを容器に付ければ、流路の位置を個々に識別することが可能である。実際に、スキャナで取得されたスキャナ画像は、試料を含め容器の形態情報を有した形態情報画像であるので、切り欠きや突起やマーカなどの情報は画像に反映される。しかし、IPで取得されたIP画像は、放射線の測定情報を有した測定情報画像であるので、切り欠きや突起やマーカなどの情報は画像に反映されないことが判明した。
【0013】
なお、固定冶具などによって容器を固定して位置決めを行いつつ支持した場合には、流路も固定されるので、IP画像・スキャナ画像間で流路を個別に識別することが可能である。
【0014】
一方、上述の特許文献1、2で用いられる容器は36本の流路を設けた円板であるので、互いに隣接する流路の角度は360°/36本=10°/本である。したがって、固定冶具と可視化して表示する技術とを組み合わせたとしても、角度が10°しかなく、36本も多数に設計された流路を個別に識別するのは容易でない。たとえ固定冶具と可視化して表示する技術とを組み合わせたとしても、表示の際に個々の画像間で角度がずれている場合には、角度に関する校正(キャリブレーション)を行わなければならない。また、個々の画像を重ね合わせて重畳表示したとしても、角度がずれて表示されていることに気づかずに、角度がずれた状態で互いに隣接する流路同士で重畳表示する可能性もある。
【0015】
また、固定冶具と可視化して表示する技術とを組み合わせたとしても、切り欠きや突起やマーカなどの情報(識別情報)はスキャナ画像に反映されるが、これらの識別情報がIP画像に反映されないことには変わりがない。してみれば、可視化して表示する技術の他に、特定位置あるいは基準位置を示すガイドを、IP画像などに代表される測定情報画像に付加して表示すれば、スキャナ画像などの形態情報画像以外にもIP画像などの測定情報画像上にガイドを表示することができ、固定冶具の有無に関係なく測定情報画像上において位置決めを行い易くすることができるという知見を得た。
【0016】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係る測定システムに用いられる表示装置は、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定する測定システムに用いられる表示装置であって、前記測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは前記測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、前記測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは前記測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを前記測定情報画像に付加して表示するガイド表示手段を備えることを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]この発明に係る測定システムに用いられる表示装置によれば、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを測定情報画像に付加して表示するガイド表示手段を備えることで、本来であればガイドが反映されない測定情報画像にガイドを付加して表示することにより、特定位置あるいは設計情報に基づく基準位置が測定情報画像上で視覚的にわかる。その結果、特定位置あるいは基準位置を示すガイドに基づいて測定情報画像上で位置決めを行い易くすることができる。
【0018】
また、この発明に係る表示方法は、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定して得られた測定データを表示する表示方法であって、前記測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは前記測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、前記測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは前記測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを前記測定情報画像に付加して表示するガイド表示工程を備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、この発明に係る表示プログラムは、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定して得られた測定データを表示する一連の処理をコンピュータに実行させるための表示プログラムであって、前記測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは前記測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、前記測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは前記測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを前記測定情報画像に付加して表示するガイド表示工程を備えることを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]この発明の表示方法および表示プログラムによれば、ガイド表示工程で、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを測定情報画像に付加して表示することで、特定位置あるいは設計情報に基づく基準位置が測定情報画像上で視覚的にわかる。その結果、特定位置あるいは基準位置を示すガイドに基づいて測定情報画像上で位置決めを行い易くすることができる。
【0021】
上述したこの表示装置において、測定情報画像、ガイドのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する画像・ガイド調整手段を備えるのが好ましい。また、上述したこの発明に係る表示方法において、測定情報画像、ガイドのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する画像・ガイド調整工程を備えるのが好ましい。表示画面上で調整することで、測定情報画像をガイドに対して相対的に位置合わせを行うことができ、上述した形態情報画像との重畳処理においても、位置合わせを行った上で重畳処理を正確に行うことができる。
【0022】
また、容器が円形の場合には、ガイドは、円形のガイドあるいは円形に相似な形状のガイドであるのが好ましい。円形の容器の形状に合わせたガイドを用いることで、測定情報画像上で位置決めをより一層行い易くすることができる。
【0023】
また、測定対象の液体を収容するために設けられた容器の溝(流路)が直線状に延びている場合には、ガイドは、当該容器の直線状の溝と同じ角度の直線状のガイドであるのが好ましい。容器の設計情報により、溝の本数や角度がわかっているので、直線状の溝の形状に合わせたガイドを用いることで、測定情報画像上で位置決めをより一層行い易くすることができる。
【0024】
また、ガイドは、測定対象の液体を収容するために設けられた容器の溝と同じ形状の輪郭線のガイドであってもよい。溝の輪郭線に合わせたガイドを用いることで、測定情報画像上で位置決めをより一層行い易くすることができる。また、ガイドは、容器の中心位置を通る直線状のガイドであってもよい。この場合には、中心位置を基準位置として測定情報画像上での位置決めを行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係る測定システムに用いられる表示装置によれば、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを測定情報画像に付加して表示するガイド表示手段を備えることで、特定位置あるいは基準位置を示すガイドに基づいて測定情報画像上で位置決めを行い易くすることができる。
また、この発明の表示方法および表示プログラムによれば、ガイド表示工程で、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを測定情報画像に付加して表示することで、特定位置あるいは基準位置を示すガイドに基づいて測定情報画像上で位置決めを行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例に係る採血装置および測定装置の概略斜視図である。
【図2】実施例に係る測定装置のブロック図である。
【図3】測定装置の撮像部におけるスキャナの概略斜視図である。
【図4】実施例に係る円板の概略平面図である。
【図5】実施例に係る表示装置のブロック図である。
【図6】表示装置の出力モニタにおける表示形態の一例である。
【図7】実施例に係る固定治具の概略平面図である。
【図8】ガイドの各例をIP画像に付加した図である。
【図9】ガイドの各例をIP画像に付加した図である。
【図10】ガイドの各例をIP画像に付加した図である。
【図11】実施例に係る一連の処理の流れを示したフローチャートである。
【実施例】
【0027】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る採血装置および測定装置の概略斜視図であり、図2は、実施例に係る測定装置のブロック図であり、図3は、測定装置の撮像部におけるスキャナの概略斜視図である。本実施例では、測定対象の液体として血液を例に採って説明するとともに、測定システムとして採血装置および測定装置を備えたシステムを例に採って説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施例に係る採血装置10は、測定対象の血液を時系列に分離して採取する。また、採血装置10の周辺には、採血装置10で採取された血液中に含まれている放射線(例えばβ線やγ線など)を測定する測定装置30を備えている。
【0029】
採血装置10は、2枚のPDMS樹脂(Polydimethylsiloxane)からなるPDMS基板11,12を上下に重ねて構成された微小流体素子(液体分割デバイス)40を備えている。PDMS基板11,12に対して所定の寸法で溝加工を施しており、その溝加工の溝によって主流路13および側路41,42,43をそれぞれ形成している。ここで、採血装置10の素材はPDMSに限定されず、アクリル、ポリカーボネート、COP(シクロオレフィンポリマー)など樹脂光学的に透明なものであれば良い。
【0030】
主流路13の血液入口側にはカテーテル14を配設しており、主流路13とカテーテル14とを、コネクタ15を介して接続している。血液はカテーテル14から主流路13に連続的に送り込まれ、流入量はバルブ(図示省略)で制御される。主流路13の血液出口側には血液用配管16を配設しており、主流路13と血液用配管16とを、コネクタ17を介して接続している。
【0031】
主流路13を挟んで光源21およびフォトダイオード22を配設している。主流路13を流れる血液あるいは後述するヘパリン溶液に光源21から光を照射し、血液による遮光をフォトダイオード22が検知することで、その血液あるいはヘパリン溶液を光学的に監視(モニタ)しながら後述する血液あるいはヘパリン溶液の長さ情報を測定する。ここでは光学測定手段として光源21およびフォトダイオード22を例に採って説明したが、測定対象の液体を光学的に監視しながら液体の間隔を測定する手段であれば、光源21およびフォトダイオード22に限定されない。例えば、CCDカメラによって測定対象の液体の体積情報を取得してもよい。また、光源21およびフォトダイオード22は、図1に示すように主流路13を挟んで互いに対向配置される構成で、血液による遮光で検知する、いわゆる「透過型センサ」であったが、光源に対してフォトダイオードに代表される光検出手段を同じ側に配設し、血液による反射光で検知する、いわゆる「反射型センサ」であってもよい。
【0032】
一方、上述した血液用配管16の下流側にはノズル23を接続している。ノズル23としては、注射針やガラス管など毛細管を使用する。ここで、液体を吐出する吐出部としてノズル23を用いているが、ディスペンサを使用してもよい。このノズル23から滴下した血液を受け取って収容する円板(「CDウェル」とも呼ばれる)24を配設している。円板24の中央側には、滴下された血液を受け取る複数の開口部からなる流路入口25(図4も参照)を放射状に配設している。円板24に対しても、上述したPDMS基板11,12と同様に、溝加工を施しており、その溝加工の溝によってU字型の溝からなる複数本のU字流路26(図4も参照)を放射状に形成している。各々のU字流路26は、上述した流路入口25の外側一端に一対一でそれぞれ接続されており、各々のU字流路26は、円板24の径方向に延びて形成されている。このように、ノズル23を介在させることで、主流路13に対して血液が流通可能に円板24が形成されることになる。円板24は、この発明における容器に相当し、U字流路26は、この発明における溝に相当する。円板24の具体的な構成については、図4以降で後述する。
【0033】
一方、測定装置30は、読取部31を備えている。この読取部31には、露光後のイメージングプレートIPを挿入するためのカバー部を設けており、イメージングプレートIPから励起された光を読み取ることで血液中に含まれているβ+線を検出する。具体的には、図1(b)に示すように、読取部31は、レーザ光源32とフォトマルチプライヤチューブ(光電子増倍管)33とを備えており、レーザ光源32からイメージングプレートIPにレーザを照射して、イメージングプレートIPへのレーザ照射によって励起された光をフォトマルチプライヤチューブ33が電子に変換して増倍させることで、β+線を2次元的に同時に検出する。
【0034】
続いて、測定装置30のブロック図について説明する。図2に示すように、測定装置30は、上述した読取部31の他に、撮像部34と表示装置35とを備えている。表示装置35については、通常のパーソナルコンピュータで構成してもよい。表示装置35は、この発明における表示装置に相当する。表示装置35の具体的な構成については、図5以降で後述する。
【0035】
図3に示すように、撮像部34は円板24を撮像する。本実施例では、撮像部34としてフラットヘッドスキャナを採用する。円板24の直径分の長さを少なくとも有する線状の光源34aと円板24を挟んで光源34aに対して対向配置された線状のフォトダイオードアレイ(すなわちラインセンサ)34bでフラットヘッドスキャナを構成する。フラットヘッドスキャナで円板24上を走査(スキャン)することで円板24を撮像して、円板24の画像を取得する。
【0036】
図1の説明に戻り、上述したように、微小流体素子40は、血液を送り込む主流路13と、血液凝固の発生を防ぐための抗凝固剤の一種であるヘパリン溶液を送り込む側路41と、空気あるいはガスを送り込む側路42と、血液あるいはヘパリン溶液を排出する側路43とを備えている。
【0037】
側路41の溶液入口側には洗浄液用配管44を配設しており、側路41と洗浄液用配管44とを、コネクタ45を介して接続している。必要に応じて主流路13にヘパリン溶液を洗浄液用配管44から側路41を介して流し込むことで流路を洗浄する。ヘパリン溶液の流入量はバルブで制御される。抗凝固剤はヘパリン溶液に限定されない。
【0038】
側路42の気体入口側には気泡用配管46を配設しており、側路42と気泡用配管46とを、コネクタ47を介して接続している。圧力発生器(図示省略)で制御された空気あるいはガスの流入時間をバルブで調整して、側路42を通して主流路13に送り込む。この気泡によって血液の長さ情報に基づく血液の取り出しと微小流体素子40の流路に残留する廃液(血液、ヘパリン溶液あるいはこれらの混合液)の排出を行う。ここで、送り込まれるガスについては限定されず、ヘリウムやネオンやアルゴンなどの希ガス、あるいは窒素ガスに例示されるように、血液やヘパリン溶液と反応しないガスであれば良い。
【0039】
気泡用配管46は、側路14を通って主流路13に気体(例えば空気やガスなど)を送り込み、指定された所定の間隔でその気体を気泡として挿入することで、測定対象の血液を時系列的に分離して円板24に送り出す。つまり、気泡は、セパレータとしての機能を果たす。なお、セパレータとして気体を使用したが、気体に限定されずに、測定対象の液体(本実施例では血液)に対して混合する可能性が少ない、あるいは可能性がなければ、測定対象の液体とは別の液体をセパレータとして使用してもよい。本実施例のように測定対象の液体が血液の場合には、ミネラルオイルやフッ素系のオイルなどに代表されるように血液と相互に混ざり合わない液体をセパレータとして使用してもよい。但し、液体をセパレータとして使用する場合には、血液と接触するのでセパレータとして使用できるが、円板24に送り出して採取する点では望ましくない。
【0040】
側路43の廃液出口側には廃液用配管48を配設しており、側路43と廃液用配管48とを、コネクタ49を介して接続している。バルブで排出量を調整して採血されるべき血液以外の血液や、流路洗浄後のヘパリン溶液や、これらの混合液を廃液として排出する。
【0041】
また、主流路13のコネクタ15よりも下流にバルブを配設し、主流路13のコネクタ17、光源21およびフォトダイオード22よりも上流にバルブを配設している。側路41のコネクタ45よりも下流にバルブを配設し、側路42のコネクタ47よりも下流にバルブを配設している。また、側路43のコネクタ49よりも上流にバルブを配設している。
【0042】
次に、円板24の具体的な構成について、図1も含めて図4を参照して説明する。図4は、実施例に係る円板の概略平面図である。円板24のU字流路26は、図4に示すように、上述の流路入口25と空気穴27とをつないで形成されている。血液の導入口である流路入口26を血液の上流部、空気穴27を下流部としたときに、上流部から下流部へは、U字流路26は、円板24の径方向に内側から外側に向かって延びて、折り返して円板24の径方向に外側から内側に向かって延びて形成されたU字型となっている。かかるU字流路26を複数に備えている。
【0043】
U字流路26は、折り返し部分を除けば、円板24の径方向に内側から外側に向かって延びて形成された直線状の溝でもあり、円板24の径方向に外側から内側に向かって延びて形成された直線状の溝でもある。また、各々の折り返し部分は、円板24に相似な円形軌道上にそれぞれ位置し、当該円形軌道上が描く円は、円板24の中心から折り返し部分の端までの距離を半径とした円とみなすことができる。同様に、各々の流路入口25(開口部)も、円板24に相似な円形軌道上にそれぞれ位置し、当該円形軌道上が描く円は、円板24の流路入口25の内側端までの距離を半径とした円とみなすことができる。
【0044】
なお、円板24には2箇所の窪み24A,24Bがあり、後述する固定治具61(図7を参照)に嵌合される。固定冶具61については、図7以降で後述する。
【0045】
図1に示すように、円板24の中央に円板24を回転させるモータ28を備えている。モータ28の回転軸29を円板24に連結させることで、モータ28による円板24の遠心力を利用して、血液を遠心分離させて血漿および血球に分離する血漿分離を行う。
【0046】
本実施例では、円板24はアクリル板で形成されている。円板24の素材はアクリルに限定されず、上述のPDMS、その他、ポリカーボネート、COPなど樹脂光学的に透明なものであれば良い。
【0047】
次に、表示装置35の具体的な構成について、図5および図6を参照して説明する。図5は、実施例に係る表示装置のブロック図であり、図6は、表示装置の出力モニタにおける表示形態の一例である。図5に示すように、表示装置35は、第1読み込み部36Aと第2読み込み部36Bとメモリ部37とコントローラ38と入力部39と出力モニタ50とを備えている。コントローラ38は、この発明における重畳処理手段に相当し、入力部39は、この発明における画像・ガイド調整手段に相当する。
【0048】
第1読み込み部36Aおよび第2読み込み部36Bは、例えばI/O(Input/Output)デバイスなどの読み込みデバイスなどで構成されている。第1読み込み部36Aは、読取部31(図1や図2を参照)を介してイメージングプレートIP(図1を参照)で取得されたIP画像を読み込む。第2読み込み部36Bは、撮像部34で取得されたスキャナ画像を読み込む。IP画像は、この発明における測定情報画像に相当し、スキャナ画像は、この発明における形態情報画像に相当する。
【0049】
メモリ部37は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。本実施例では、図11に示す一連の処理をコンピュータ(本実施例ではコントローラ38)に実行させるための表示プログラム37Aと、測定対象の液体(本実施例では血液)を収容する容器(本実施例では円板24:図1や図3や図4を参照)の設計情報を記憶する設計情報メモリ部37Bとをメモリ部37は備えている。表示プログラム37AはROMで構成され、設計情報メモリ部37BはRAMで構成されている。本実施例では、設計情報として、円板24と同じサイズの円、上述した円板24の中心から折り返し部分の端までの距離を半径とした円、上述した円板24の流路入口25(図1や図4を参照)の内側端までの距離を半径とした円、2つの直線状の溝および折り返し部分からなるU字流路26(図1や図4を参照)の本数(本実施例では36本)・角度(本実施例では10°)、円板24の中心位置を通る線および当該線に対して直交し、かつ中心位置を通る線からなる十字線を例に採って説明する。表示プログラム37Aは、この発明における表示プログラムに相当する。
【0050】
コントローラ38は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。各種の画像処理を行うためのプログラムや、放射能濃度を算出するプログラムや、図5に示す表示プログラム37A等をコントローラ38が実行することでそのプログラムに応じた画像処理や表示プログラム37Aに応じた図11に示す一連の処理(第1/第2読み込み部36A,36Bへの読み込み制御、出力モニタ50における表示態様)を行う。各種の画像処理として、コントローラ38は、スキャナ画像を縮小処理、拡大処理する縮小・拡大処理の機能、あるいはスキャナ画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力する輪郭強調の機能を有している。
【0051】
入力部39は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスなどで構成されている。本実施例では、入力部39は、後述するメイン画面51(図6を参照)に拡大表示するために、後述する縮小画面52,53,54(図6を参照)に縮小表示された各画像を選択する画像選択の機能や、測定情報画像(本実施例ではIP画像)、後述するガイドG(図8〜図10を参照)のいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する画像・ガイド調整手段の機能を有している。
【0052】
出力モニタ50は、図6に示すように、メインとなる画像を拡大表示するメイン画面51と、IP画像を縮小表示する縮小画面52と、スキャナ画像を縮小表示する縮小画面53と、IP画像・スキャナ画像を重ね合わせて重畳処理した重畳処理後の画像を縮小表示する縮小画面54とを備えている。図6では、第1読み込み部36Aで読み込まれたIP画像、第2読み込み部36Bで読み込まれたスキャナ画像を重ね合わせてメイン画面51に重畳表示している。メイン画面51には、ガイドG(図8〜図10を参照)をIP画像に付加して表示する。メイン画面51は、この発明におけるガイド表示手段に相当する。
【0053】
次に、固定治具61の具体的な構成について、図7を参照して説明する。図7は、実施例に係る固定治具の概略平面図である。かかる円板24(図1や図3や図4を参照)を固定して位置決めを行いつつ支持するために、図7に示すように固定治具61を備えている。固定冶具61には、円板24が嵌合する開口部62が設けられており、その開口部62に2つの突起部62A,62Bが設けられている。突起部62Aに円板24の窪み24A(図4を参照)を嵌合し、突起部62Bに円板24の窪み24B(図4を参照)を嵌合することで、固定治具61は円板24を固定して位置決めを行いつつ支持する。
【0054】
本実施例では、図7に示すように開口部62を1つ設けて、1つの固定冶具61に対して1つの円板24が固定されるが、開口部62を複数(例えば2つ)設けて、1つの固定冶具61に対して当該複数の円板24が固定されるように構成してもよい。また、図面の左上には固定治具61に切り欠き61Aを設けている。
【0055】
なお、図7に示す固定治具61の場合には180°回転させると流路入口26(図1や図4を参照)の対称性から上下左右を間違える恐れがあるが、切り欠き61Aを図面の左上に設けることで、読取部31(図1や図2を参照)を介してイメージングプレートIP(図1を参照)で取得されたIP画像も、撮像部34で取得されたスキャナ画像も、切り欠き61Aを基準として向きをそろえることができる。
【0056】
モータ28(図1を参照)による円板24(図1や図3や図4を参照)の遠心力により、血漿および血球に血漿分離された円板24を固定治具61は固定して位置決めを行いつつ支持することで、円板24の各々の流路入口26(図1や図4を参照)の向きや位置も固定される。そして、向きや位置が固定された状態で、イメージングプレートIP(図1を参照)を用いて円板24の撮像を行ってIP画像を取得し、撮像部34(図2や図3や図5を参照)のフラットヘッドスキャナによる円板24の撮像を行ってスキャナ画像を取得する。なお、撮像の順番については特に限定されない。
【0057】
具体的に説明すると、円板24(図1や図3や図4を参照)および固定治具61をサンプルとして、図示を省略するカセッテを開いて収容して、その上にイメージングプレートIP(図1を参照)を収容して、カセッテを閉じて露光を行う。この露光によって、血液中に含まれているβ+線の電離能により、イメージングプレートIPの蛍光体(図示を省略)の格子欠陥に電子が捕獲される。一定時間の露光後にイメージングプレートIPをカセッテから取り出して、測定装置30(図1を参照)の読取部31(図1や図2を参照)のカバー部に挿入して、イメージングプレートIPに光を照射して露光を行う。
【0058】
読取部31(図1や図2を参照)のレーザ光源32(図1や図2を参照)からイメージングプレートIP(図1を参照)にレーザを照射する。捕獲された電子がこの照射によって伝導体に励起され正孔と再結合し、蛍光体から光として励起される。このイメージングプレートIPへのレーザ照射によって励起された光をフォトマルチプライヤチューブ33(図1や図2や図5を参照)が電子に変換して増倍させることで、電気パルスとして2次元的に同時に検出して計数する。なお、レーザ光源32からイメージングプレートIPへ照射した後には、再利用するために消去用光源(図示省略)から光をイメージングプレートIPへ照射することで、捕獲された電子を消去する。イメージングプレートIPと読取部31で求められたβ+線の計数情報に基づいて、β+線の計数情報である血中の放射線量を求める。このようにして、IP画像が取得される。
【0059】
一方、撮像部34(図2や図3や図5を参照)は、血漿分離された血漿および血球を円板24(図1や図3や図4を参照)およびそれを支持した固定治具61ごと撮像する。撮像部34のフラットヘッドスキャナの光源32a(図3を参照)から光を照射することで、吸光度の相違によって血漿および血球が撮像された画像上で濃淡差となって現れ、画像上で容易に識別可能である。このようにして、スキャナ画像が取得される。
【0060】
スキャナ画像は、血液や円板24(図1や図3や図4を参照)や切り欠き61Aを設けた固定冶具61を含んだ形態情報画像であるので、切り欠き61Aなどの情報も反映されるが、IP画像は、測定情報を有した測定情報画像であるので、切り欠き61Aなどの情報は画像に反映されない。しかし、固定冶具61によって各々の流路入口26(図1や図4を参照)の向きや位置が固定されるので、(円板24の固定位置である)円板24のU字流路26と固定治具61との相対位置も決定される。
【0061】
ただし、固定冶具61を備えていても、円板24(図1や図3や図4を参照)を撮像部34(図2や図3や図5を参照)のフラットヘッドスキャナで撮像する際に固定冶具61ごと円板24が傾いていたりすると、重畳処理の対象となるIP画像・スキャナ画像間で位置ズレが生じる。その結果、個々の画像を重ね合わせて重畳表示したとしても、角度がずれて表示される可能性がある。
【0062】
そこで、容器(ここでは円板24:図1や図3や図4を参照)の設計情報に基づくガイドを測定情報画像(ここではIP画像)に付加して表示する。ガイドの各例として、図8〜図10を参照して説明する。図8〜図10は、ガイドの各例をIP画像に付加した図である。図8では、ガイドGとして、円板24の中心位置を通る十字線ガイドをIP画像に付加している。図9では、ガイドGとして、上述の十字線ガイドの他に円形ガイド(円板24と同じサイズの円形ガイドおよび当該円形ガイドに相似な円形ガイド)をIP画像に付加している。図10では、ガイドGとして、上述の十字線ガイドおよび円形ガイドの他に直線状ガイドをIP画像に付加している。
【0063】
次に、一連の処理について、図11を参照して説明するとともに、上述の図8〜図10と併せて説明する。図11は、実施例に係る一連の処理の流れを示したフローチャートである。
【0064】
先ず、読取部31(図1や図2を参照)を介してイメージングプレートIP(図1を参照)からIP画像を取得するとともに、撮像部34(図2や図3や図5を参照)のフラットヘッドスキャナからスキャナ画像を取得する。また、容器(本実施例では円板24:図1や図3や図4を参照)の設計情報は予めわかっているので、当該設計情報を、ここでは、円板24と同じサイズの円、円板24の中心から折り返し部分の端までの距離を半径とした円、円板24の流路入口25(図1や図4を参照)の内側端までの距離を半径とした円、2つの直線状の溝および折り返し部分からなるU字流路26(図1や図4を参照)の本数(本実施例では36本)・角度(本実施例では10°)、円板24の中心位置を通る線および当該線に対して直交し、かつ中心位置を通る線からなる十字線として設計情報メモリ部37B(図5を参照)に書き込んで記憶する。
【0065】
(ステップS1)画像読み込み
第2読み込み部36B(図5を参照)は、撮像部34(図2や図3や図5を参照)で取得されたスキャナ画像を読み込む。
【0066】
また、必要に応じて、関心領域を抽出するために、ステップS1で読み込まれたスキャナ画像の輪郭をコントローラ38(図5を参照)は強調して輪郭強調画像を出力してもよい。輪郭強調処理としては、例えばゾーベルフィルタ(Sobel filter)処理やプレヴィットフィルタ(Prewitt filter)処理などに代表される、注目画素とその周辺画素との差分を求める一次微分による輪郭強調処理、ラプラシアンフィルタ(Laplacian filter)処理などに代表される、注目画素とその周辺画素との差分のさらなる差分を求める二次微分による輪郭強調処理などを行えばよい。これらの輪郭強調処理については公知の技術であるので、その説明を省略する。
【0067】
(ステップT1)画像読み込み
一方、第1読み込み部36A(図5を参照)は、読取部31(図1や図2を参照)を介してイメージングプレートIP(図1を参照)で取得されたIP画像を読み込む。上述のステップS1,このステップT1の順番については特に限定されず、ステップT1を先に行ってもよいし、ステップS1を先に行ってもよいし、ステップS1,T1を同時並行に行ってもよい。
【0068】
(ステップS2)画像表示
ステップS1で読み込まれたスキャナ画像を出力モニタ50(図6を参照)の各画面に表示する。なお、スキャナ画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力した場合には、スキャナ画像に替えて輪郭強調画像を出力モニタ50(図6を参照)の各画面に表示してもよい。その際に、スキャナ画像(輪郭強調画像も含む)を縮小処理して、縮小処理後のスキャナ画像を、図6に示す縮小画面53に表示した後に、図6に示すメイン画面51に拡大表示してもよい。
【0069】
(ステップT2)画像表示
一方、ステップT1で読み込まれたIP画像も出力モニタ50(図6を参照)の各画面に表示する。その際に、IP画像を縮小処理して、縮小処理後のIP画像を、図6に示す縮小画面52に表示した後に、図6に示すメイン画面51に拡大表示してもよい。
【0070】
(ステップT3)ガイド表示
ステップT2でIP画像を、図6に示すメイン画面に表示した場合には、図8〜図10に示すように設計情報に基づくガイドGをIP画像に付加してメイン画面51に表示する。図8に示すガイドGをメイン画面51に付加して表示するために、設計情報メモリ部37B(図5を参照)から設計情報を読み出して、図8に示すように設計情報に基づくガイドGとして十字線ガイドをIP画像に付加してメイン画面51に表示し、図9に示すように設計情報に基づくガイドGとして十字線ガイドおよび円形ガイドをIP画像に付加してメイン画面51に表示し、あるいは図10に示すように設計情報に基づくガイドGとして十字線ガイド,円形ガイドおよび直線状ガイドをIP画像に付加してメイン画面51に表示する。また、図8〜図10では図示していないが、円板24(図1や図3や図4を参照)の溝(ここではU字流路:図1や図4を参照)の形状も設計情報によりわかっているので、溝の形状と同じ輪郭線のガイド(ここではU字ガイド)を表示してもよい。このステップT3は、この発明におけるガイド表示工程に相当する。
【0071】
上述したように、フラットヘッドスキャナで撮像する際に傾いた結果、重畳処理の対象となるIP画像・スキャナ画像間で位置ズレが生じたとしても、ガイドGに基づいてIP画像の位置決めを行い易くすることができる。図8〜図10では、IP画像がガイドGに対して一致しているときの図であり、このときには、スキャナ画像を後述するステップU1,U2で重畳処理・重畳表示したとしても、位置ズレが生じないが、IP画像がガイドGに対して位置ズレを起こしている場合には、下記のステップT4のように調整を行う。
【0072】
(ステップT4)調整
IP画像がガイドGに対して位置ズレを起こしている場合には、IP画像、ガイドGのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する。入力部39(図5を参照)により調整する。図6に示す出力モニタ50から、各々のガイドGをグループ化して、グループ化されたガイド(の例えば中心位置あるいは輪郭部分)をドラッグしてIP画像に一致するように表示画面上で移動させて調整したり、各々のガイドGをグループ化させずに、個々にガイドGをドラッグしてIP画像に一致するように表示画面上で移動させて調整したり、あるいはガイドGの輪郭部分にポインタを合わせてガイドGを縮小あるいは拡大してガイドGの大きさを調整する。もちろん、IP画像の方を表示画面上で移動させて調整あるいはIP画像の大きさを表示画面上で調整してもよいし、両方を表示画面上で移動させて調整あるいは両方の大きさを表示画面上で調整してもよい。また、入力部39を出力モニタ50のタッチパネルで構成し、出力モニタ50のタッチパネルにおいて調整の対象となるIP画像あるいはガイドを直接に指で触れることにより、調整してもよい。このステップT4は、この発明における画像・ガイド調整工程に相当する。
【0073】
上述のステップS2,T2〜T4の順番についても特に限定されず、ステップT2〜T4を先に行ってもよいし、ステップS2を先に行ってもよいし、ステップS2,T2〜T4を同時並行に行ってもよい。
【0074】
(ステップU1)重畳処理
コントローラ38(図5を参照)は、ステップS2で表示されたスキャナ画像、ステップT4で調整されたIP画像を重ね合わせて重畳処理する。
【0075】
(ステップU2)重畳表示
重畳処理後の画像(図11では「重ね合わせ画像」で表記)を、出力モニタ50(図6を参照)の各画面に表示する。その際に、重畳処理後の画像を縮小処理して、重畳処理後で縮小処理後の画像を、図6に示す縮小画面54に表示した後に、図6に示すメイン画面に拡大表示してもよい。
【0076】
また、フラットヘッドスキャナで撮像する際に固定冶具61(図7を参照)ごと円板24(図1や図3や図4を参照)が傾いていたりすると、スキャナ画像の方もガイドGに対して位置ズレを起こしているので、重畳表示の際にステップT4と同様に調整を行えばよい。ステップT4でIP画像・ガイドG間では調整が既に行われているので、スキャン画像の方を表示画面上で移動させて調整あるいはスキャン画像の大きさを表示画面上で調整すればよい。このとき、IP画像の表示を消してガイドGとスキャン画像のみを表示して、調整後にIPの画像を再度表示して重畳表示を行ってもよい。なお、上述したステップS2の画像表示の段階で、ガイドG・スキャン画像間の調整を先に行えば、このステップU2の段階では調整を行う必要はない。
【0077】
本実施例に係る測定システムに用いられる表示装置35によれば、測定対象の液体(本実施例では血液)中に含まれている放射線(本実施例ではβ+線)の測定情報を有した測定情報画像(本実施例ではIP画像)を表示し、測定対象の液体(血液)を収容する容器(本実施例では円板24)の設計情報に基づくガイドGを測定情報画像(IP画像)に付加して表示するガイド表示手段(本実施例ではメイン画面51)を備えることで、本来であればガイドが反映されない測定情報画像(IP画像)にガイドGを付加して表示することにより、設計情報に基づく基準位置(本実施例では円板24の中心位置)が測定情報画像(IP画像)上で視覚的にわかる。その結果、基準位置(円板24の中心位置)を示すガイドGに基づいて測定情報画像(IP画像)上で位置決めを行い易くすることができる。
【0078】
また、本実施例に係る表示方法および表示プログラム37Aによれば、ステップT3で、測定対象の液体(本実施例では血液)中に含まれている放射線(本実施例ではβ+線)の測定情報を有した測定情報画像(本実施例ではIP画像)を表示し、測定対象の液体(血液)を収容する容器(本実施例では円板24)の設計情報に基づくガイドGを測定情報画像(IP画像)に付加して表示することで、設計情報に基づく基準位置(本実施例では円板24の中心位置)が測定情報画像(IP画像)上で視覚的にわかる。その結果、基準位置(円板24の中心位置)を示すガイドGに基づいて測定情報画像(IP画像)上で位置決めを行い易くすることができる。
【0079】
本実施例に係る表示装置35において、測定情報画像(本実施例ではIP画像)、測定対象の液体(本実施例では血液)の形態情報を有した形態情報画像(本実施例ではスキャナ画像)を重ね合わせて重畳処理する重畳処理手段(本実施例ではコントローラ38)を備え、ガイド表示手段(本実施例ではメイン画面51)は、ガイドGを当該重畳処理前の画像に付加して表示するのが好ましい。ガイドGを当該重畳処理前の画像に付加して表示することで、測定情報画像(IP画像)および形態情報画像(スキャナ画像)の重畳処理をガイドGに基づいて正確に行うことができる。
【0080】
本実施例に係る表示装置35において、測定情報画像(本実施例ではIP画像)、ガイドGのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する画像・ガイド調整手段(実施例では入力部39)を備えるのが好ましい。
【0081】
また、本実施例に係る表示方法において、測定情報画像(本実施例ではIP画像)、ガイドGのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整するステップT4を備えるのが好ましい。表示画面上で調整することで、測定情報画像(IP画像)をガイドGに対して相対的に位置合わせを行うことができ、上述した形態情報画像(本実施例ではスキャナ画像)との重畳処理においても、位置合わせを行った上で重畳処理を正確に行うことができる。
【0082】
また、本実施例のように、容器が円形(本実施例では円板24)の場合には、ガイドGは、図9や図10に示すように、円形のガイドあるいは円形に相似な形状のガイド(総称して「円形ガイド」)であるのが好ましい。円形の容器(ここでは円板24)の形状に合わせたガイド(円形ガイド)を用いることで、測定情報画像(本実施例ではIP画像)上で位置決めをより一層行い易くすることができる。
【0083】
また、図4に示すように、測定対象の液体(本実施例では血液)を収容するために設けられた容器(本実施例では円板24)の溝(流路:本実施例ではU字流路26)が直線状に延びている場合には、ガイドGは、図10に示すように、当該容器(円板24)の直線状の溝と同じ角度の直線状のガイド(直線状ガイド)であるのが好ましい。容器(円板24)の設計情報により、溝(U字流路26)の本数(図4では36本)や角度(図4では10°)がわかっているので、直線状の溝(U字流路26)の形状に合わせたガイド(直線状ガイド)を用いることで、測定情報画像(IP画像)上で位置決めをより一層行い易くすることができる。
【0084】
また、ガイドGは、測定対象の液体(本実施例では血液)を収容するために設けられた容器(本実施例では円板24)の溝(本実施例ではU字流路26)と同じ形状の輪郭線のガイド(ここではU字ガイド)であってもよい。溝(U字流路26)の輪郭線に合わせたガイドGを用いることで、測定情報画像(IP画像)上で位置決めをより一層行い易くすることができる。
【0085】
また、ガイドGは、図8〜図10に示すように、容器(本実施例では円板24)の中心位置を通る直線状のガイド(ここでは十字線ガイド)であってもよい。この場合には、中心位置を基準位置として測定情報画像(IP画像)上での位置決めを行うことができる。
【0086】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0087】
(1)上述した実施例では、測定対象の液体として血液を例に採って説明したが、測定対象の液体であれば、血液に限定されずに、放射性物質や発光物質や蛍光剤が含まれた液体や、分析装置に用いられる混合液などであってもよい。また、測定対象の液体は、遠心分離の対象となる液体でなくともよい。
【0088】
(2)上述した実施例では、測定情報画像は、イメージングプレートIPから取得された放射線(本実施例ではβ+線)の測定情報を有したIP画像であったが、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像であれば、例えば光(フォトン:光子)や放射線を直接的に計数することで取得された測定情報画像などのように、必ずしもIP画像に限定されない。
【0089】
(3)上述した実施例では、形態情報画像は、撮像部34のフラットヘッドスキャナから取得されたスキャナ画像であったが、測定対象の液体の形態情報を有した形態情報画像であれば、例えば放射線照射手段および放射線検出手段で構成される放射線撮像手段で取得された形態情報画像などのように、必ずしもスキャナ画像に限定されない。
【0090】
(4)上述した実施例では、ガイドは容器(実施例では円板24)の設計情報に基づくものであったが、測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報に基づくものであってもよい。例えば、測定対象の液体(実施例では血液)を収容した液体の領域情報を撮像部34のフラットヘッドスキャナで読み込んで撮像し、当該領域情報に基づくガイドを測定情報画像(実施例ではIP画像)に付加して表示してもよい。測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報に基づくガイドを測定情報画像(IP画像)に付加して表示することで、特定位置(例えば液体の収容位置)が測定情報画像上で視覚的にわかる。その結果、特定位置を示すガイドに基づいて測定情報画像(IP画像)上で位置決めを行い易くすることができる。また、特定位置および設計情報に基づく基準位置を組み合わせてガイドを表示してもよい。
【0091】
(5)上述した実施例では、基準位置は容器(実施例では円板24)の中心位置であったが、中心位置に限定されない。例えば容器の溝(流路)の端の点などように、任意の位置であってもよい。
【0092】
(6)上述した実施例では、測定情報画像(実施例ではIP画像)と形態情報画像(実施例ではスキャナ画像)とを重ね合わせて重畳処理したが、必ずしも形態情報画像は必要ではない。測定情報画像(IP画像)の単独の画像にガイドを付加して表示してもよい。
【0093】
(7)上述した実施例では、測定情報画像(実施例ではIP画像)、ガイドのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整したが、測定情報画像とガイドとの位置が相対的に一致している場合には、必ずしも調整する必要はない。
【0094】
(8)上述した実施例では、容器は遠心分離を行う円板であったが、測定対象の液体が、遠心分離の対象となる液体でない場合には、液体を収容する容器であれば、円板に限定されない。方形の板や多角形の板などであってもよい。
【0095】
(9)上述した実施例では、円板24の径方向に沿って溝加工を放射状に施すことで、径方向に形成されたU字流路26を複数に設けたが、必ずしも放射状に配設する必要はない。例えば、互いに平行に配設してもよい。
【0096】
(10)上述した変形例(8)のように容器が円形以外の形状である場合には、形状に合わせたガイドを用いてもよい。例えば、容器が方形の板の場合には、方形のガイドあるいは方形に相似な形状のガイドを用いてもよいし、容器が多角形の板の場合には、多角形のガイドあるいは多角形に相似な形状のガイドを用いてもよい。また、容器の形状に合わせたガイドを用いる必要はなく、容器の溝(流路)の輪郭線に合わせたガイド、各々の溝(流路)の端部を結んだ線に合わせたガイドを用いてもよい。例えば変形例(9)のように平行に配設された溝(流路)の輪郭線に合わせたガイドを用いてもよいし、平行に配設された各々の溝(流路)の端部を結んだ線に合わせたガイドを用いてもよい。
【0097】
(11)上述した実施例では、容器の溝(流路)が直線状に延びたU字流路であったが、溝(流路)の形状に合わせたガイドを用いてもよい。例えば、溝(流路)が曲線状に延びている場合には、曲線状のガイドを用いてもよい。
【0098】
(12)上述した実施例では、容器(実施例では円板24)の中心位置を通る直線状のガイドとして互いに直交する2本の直線状のガイドからなる十字線ガイドを用いたが、必ずしも十字線ガイドを用いる必要はない。1本の直線状のガイドであってもよいし、3本以上の直線状のガイドであってもよいし、互いに斜めに直交する2本の直線状のガイドであってもよい。また、各々の溝(流路)が非対称に設けられている場合には、必ずしも容器の中心位置を通る直線状のガイドでなくてもよい。
【0099】
(13)上述した実施例では、容器(実施例では円板24)を固定して位置決めを行いつつ支持する固定治具61を備えたが、必ずしも固定冶具61を備える必要はない。例えば、図4に示すように窪みを円板24自体に設ける、あるいは切り欠きや突起部を円板24自体に設けることで、その窪みや切り欠きや突起部などを基準として重畳の対象となる画像の向きを揃えてもよい。また、円板24の所定の箇所に光や放射線の透過性の異なる部材をマーカとして貼り付けて、撮像された画像でマーカ部分を基準として向きを揃えて重畳処理を行ってもよい。
【0100】
(14)上述した実施例では、測定システムにおいて、採血装置10による自動採血を例に採って説明したが、液体の採取方法は自動的な液体採取装置に限定されない。液体は円板24のU字流路26に作業者の手技で滴下する方法でもよい。
【0101】
(15)上述した実施例では、ガイドGを重畳処理前の(測定情報)画像(IP画像)に付加して表示したが、ガイドGを重畳処理前の画像に付加して表示した後にガイドGを消さずにそのまま形態情報画像(スキャナ画像)に重ね合わせて表示してもよい。
【符号の説明】
【0102】
24 … 円板
26 … U字流路
35 … 表示装置
37A … 表示プログラム
38 … コントローラ
39 … 入力部
51 … メイン画面
G … ガイド
【技術分野】
【0001】
この発明は、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定する測定システムに用いられる表示装置、表示方法並びに表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
測定システムは、例えば液体採取装置に用いられる。液体採取装置として、血液を採取する、すなわち採血する採血装置を例にとって説明する。採血装置は、核医学診断(例えば、PET(Positron Emission Tomography)、SPECT(Single Photon Emission CT)など)における定量解析で用いられ、特に小動物(例えばマウスやラットなど)の動脈血中の放射能濃度の測定に用いられている。
【0003】
具体的には、小動物に放射性薬剤を投与した後に血液を採取(採血)して、既定時間ごとの全採血終了後に遠心分離による血漿分離を行い、全血および血漿中の放射能濃度の時間変化を測定する(例えば、特許文献1、2参照)。より具体的に説明すると、血液中に含まれているβ+線に対して露光を行って放射能分布を可視化するイメージングプレート(IP: Imaging Plate)を用いて測定する。イメージングプレート(「IP」と適宜略記する)から得られたIP画像から放射線量の値を取得するソフトウェアとして、例えば富士フィルム社製のMulti Gaugeがある。このソフトウェアでは、IP画像を読み込んでソフトウェア上で関心領域を設定して、関心領域内の画素値を計算することで、単位面積当たりの放射線量を求めることができる。
【0004】
特許文献1では、所定の寸法で区切られた容器に放射能を放射する試料(ここでは血液)を入れ、IPで試料の放射線強度を測定し、スキャナで試料の面積を測定する。所定の寸法で容器が設計されていることから、測定結果の試料の面積から試料の体積を求める。そして、IPで取得された放射線強度のIP画像とスキャナで取得されたスキャナ画像とを合わせて、各試料の放射能濃度(=放射線強度/体積)を算出する技術が示されている。特許文献2では、所定の寸法で区切られた容器の例が示されており、平面状の円板に複数の試料を入れる流路が形成された容器が示されている。
【0005】
血中放射能濃度を求める際には、下記のような重畳処理を行う。すなわち、フラットヘッドスキャナで撮像された円板の画像(スキャナ画像)と、IPで得られた計数情報であるβ+線の分布像(IP画像)とを重ね合わせて重畳処理を行う。この重畳処理を上述したソフトウェアで行う場合、β+線の分布像上での円板中心位置に、円板の画像上での円板中心位置を合わせて重ね合わせすることで、円板の溝(流路)位置および血漿・血球の正確な位置合わせを行うことができる。
【0006】
血液を遠心分離して、血漿分離された血漿および血球に含まれている放射線をそれぞれ分離して計数しているので、血漿中放射能濃度を求めることができる。このようにして、β+線の分布像上での溝内部(流路内部)で分離された血漿および血球と重なる部分のβ+線の計数情報から、各部のβ+線の放射線強度から各部の体積をそれぞれ除算することで、単位体積当たりの血中放射能濃度をそれぞれ求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2009−093306号
【特許文献2】特開2011−075420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1、2でそれぞれ示されている技術を併せた場合、測定情報画像(例えばIP画像)上での位置決めが難しいという問題がある。
すなわち、IP画像であるβ+線の分布像上で円板の中心位置を決める際に、円板の形状が分布像上ではわからないので、円板の中心位置を決めるのが難しい。もし、円板の中心位置が正しくない場合には、スキャナ画像である円板の画像とIP画像であるβ+線の分布像との重畳処理を行う際に、円板上の複数の溝(流路)の位置を識別して位置を合わせる処理を行う必要があり、処理が複雑になる恐れがある。
【0009】
また、溝(流路)を間違えた場合には、求める流路とは異なる流路における放射線強度を体積で除算する、もしくは求める流路とは異なる流路における体積で放射線強度を除算してしまい、放射能濃度を間違えて求めてしまう恐れがある。このように、IPで取得されたIP画像などに代表される測定情報画像において、位置決めのための基準位置(例えば円板の中心位置)がわからないと、重畳処理が複雑になる、あるいは放射能濃度などのデータを間違えて求めてしまう。
【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、測定情報画像上において位置決めを行い易くすることができる測定システムに用いられる表示装置、表示方法並びに表示プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、次のような知見を得た。
【0012】
すなわち、固定冶具などによって容器を固定して位置決めを行いつつ支持する、あるいは容器に切り欠きや突起を容器に設ける、または(例えば容器とは別物質を貼り付ける、容器に記号や番号を刻印する、または容器に記号や番号の模様からなる部材を突起状に設けるなど)マーカを容器に付ければ、流路の位置を個々に識別することが可能である。実際に、スキャナで取得されたスキャナ画像は、試料を含め容器の形態情報を有した形態情報画像であるので、切り欠きや突起やマーカなどの情報は画像に反映される。しかし、IPで取得されたIP画像は、放射線の測定情報を有した測定情報画像であるので、切り欠きや突起やマーカなどの情報は画像に反映されないことが判明した。
【0013】
なお、固定冶具などによって容器を固定して位置決めを行いつつ支持した場合には、流路も固定されるので、IP画像・スキャナ画像間で流路を個別に識別することが可能である。
【0014】
一方、上述の特許文献1、2で用いられる容器は36本の流路を設けた円板であるので、互いに隣接する流路の角度は360°/36本=10°/本である。したがって、固定冶具と可視化して表示する技術とを組み合わせたとしても、角度が10°しかなく、36本も多数に設計された流路を個別に識別するのは容易でない。たとえ固定冶具と可視化して表示する技術とを組み合わせたとしても、表示の際に個々の画像間で角度がずれている場合には、角度に関する校正(キャリブレーション)を行わなければならない。また、個々の画像を重ね合わせて重畳表示したとしても、角度がずれて表示されていることに気づかずに、角度がずれた状態で互いに隣接する流路同士で重畳表示する可能性もある。
【0015】
また、固定冶具と可視化して表示する技術とを組み合わせたとしても、切り欠きや突起やマーカなどの情報(識別情報)はスキャナ画像に反映されるが、これらの識別情報がIP画像に反映されないことには変わりがない。してみれば、可視化して表示する技術の他に、特定位置あるいは基準位置を示すガイドを、IP画像などに代表される測定情報画像に付加して表示すれば、スキャナ画像などの形態情報画像以外にもIP画像などの測定情報画像上にガイドを表示することができ、固定冶具の有無に関係なく測定情報画像上において位置決めを行い易くすることができるという知見を得た。
【0016】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係る測定システムに用いられる表示装置は、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定する測定システムに用いられる表示装置であって、前記測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは前記測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、前記測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは前記測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを前記測定情報画像に付加して表示するガイド表示手段を備えることを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]この発明に係る測定システムに用いられる表示装置によれば、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを測定情報画像に付加して表示するガイド表示手段を備えることで、本来であればガイドが反映されない測定情報画像にガイドを付加して表示することにより、特定位置あるいは設計情報に基づく基準位置が測定情報画像上で視覚的にわかる。その結果、特定位置あるいは基準位置を示すガイドに基づいて測定情報画像上で位置決めを行い易くすることができる。
【0018】
また、この発明に係る表示方法は、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定して得られた測定データを表示する表示方法であって、前記測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは前記測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、前記測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは前記測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを前記測定情報画像に付加して表示するガイド表示工程を備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、この発明に係る表示プログラムは、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定して得られた測定データを表示する一連の処理をコンピュータに実行させるための表示プログラムであって、前記測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは前記測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、前記測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは前記測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを前記測定情報画像に付加して表示するガイド表示工程を備えることを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]この発明の表示方法および表示プログラムによれば、ガイド表示工程で、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを測定情報画像に付加して表示することで、特定位置あるいは設計情報に基づく基準位置が測定情報画像上で視覚的にわかる。その結果、特定位置あるいは基準位置を示すガイドに基づいて測定情報画像上で位置決めを行い易くすることができる。
【0021】
上述したこの表示装置において、測定情報画像、ガイドのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する画像・ガイド調整手段を備えるのが好ましい。また、上述したこの発明に係る表示方法において、測定情報画像、ガイドのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する画像・ガイド調整工程を備えるのが好ましい。表示画面上で調整することで、測定情報画像をガイドに対して相対的に位置合わせを行うことができ、上述した形態情報画像との重畳処理においても、位置合わせを行った上で重畳処理を正確に行うことができる。
【0022】
また、容器が円形の場合には、ガイドは、円形のガイドあるいは円形に相似な形状のガイドであるのが好ましい。円形の容器の形状に合わせたガイドを用いることで、測定情報画像上で位置決めをより一層行い易くすることができる。
【0023】
また、測定対象の液体を収容するために設けられた容器の溝(流路)が直線状に延びている場合には、ガイドは、当該容器の直線状の溝と同じ角度の直線状のガイドであるのが好ましい。容器の設計情報により、溝の本数や角度がわかっているので、直線状の溝の形状に合わせたガイドを用いることで、測定情報画像上で位置決めをより一層行い易くすることができる。
【0024】
また、ガイドは、測定対象の液体を収容するために設けられた容器の溝と同じ形状の輪郭線のガイドであってもよい。溝の輪郭線に合わせたガイドを用いることで、測定情報画像上で位置決めをより一層行い易くすることができる。また、ガイドは、容器の中心位置を通る直線状のガイドであってもよい。この場合には、中心位置を基準位置として測定情報画像上での位置決めを行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係る測定システムに用いられる表示装置によれば、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを測定情報画像に付加して表示するガイド表示手段を備えることで、特定位置あるいは基準位置を示すガイドに基づいて測定情報画像上で位置決めを行い易くすることができる。
また、この発明の表示方法および表示プログラムによれば、ガイド表示工程で、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを測定情報画像に付加して表示することで、特定位置あるいは基準位置を示すガイドに基づいて測定情報画像上で位置決めを行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例に係る採血装置および測定装置の概略斜視図である。
【図2】実施例に係る測定装置のブロック図である。
【図3】測定装置の撮像部におけるスキャナの概略斜視図である。
【図4】実施例に係る円板の概略平面図である。
【図5】実施例に係る表示装置のブロック図である。
【図6】表示装置の出力モニタにおける表示形態の一例である。
【図7】実施例に係る固定治具の概略平面図である。
【図8】ガイドの各例をIP画像に付加した図である。
【図9】ガイドの各例をIP画像に付加した図である。
【図10】ガイドの各例をIP画像に付加した図である。
【図11】実施例に係る一連の処理の流れを示したフローチャートである。
【実施例】
【0027】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る採血装置および測定装置の概略斜視図であり、図2は、実施例に係る測定装置のブロック図であり、図3は、測定装置の撮像部におけるスキャナの概略斜視図である。本実施例では、測定対象の液体として血液を例に採って説明するとともに、測定システムとして採血装置および測定装置を備えたシステムを例に採って説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施例に係る採血装置10は、測定対象の血液を時系列に分離して採取する。また、採血装置10の周辺には、採血装置10で採取された血液中に含まれている放射線(例えばβ線やγ線など)を測定する測定装置30を備えている。
【0029】
採血装置10は、2枚のPDMS樹脂(Polydimethylsiloxane)からなるPDMS基板11,12を上下に重ねて構成された微小流体素子(液体分割デバイス)40を備えている。PDMS基板11,12に対して所定の寸法で溝加工を施しており、その溝加工の溝によって主流路13および側路41,42,43をそれぞれ形成している。ここで、採血装置10の素材はPDMSに限定されず、アクリル、ポリカーボネート、COP(シクロオレフィンポリマー)など樹脂光学的に透明なものであれば良い。
【0030】
主流路13の血液入口側にはカテーテル14を配設しており、主流路13とカテーテル14とを、コネクタ15を介して接続している。血液はカテーテル14から主流路13に連続的に送り込まれ、流入量はバルブ(図示省略)で制御される。主流路13の血液出口側には血液用配管16を配設しており、主流路13と血液用配管16とを、コネクタ17を介して接続している。
【0031】
主流路13を挟んで光源21およびフォトダイオード22を配設している。主流路13を流れる血液あるいは後述するヘパリン溶液に光源21から光を照射し、血液による遮光をフォトダイオード22が検知することで、その血液あるいはヘパリン溶液を光学的に監視(モニタ)しながら後述する血液あるいはヘパリン溶液の長さ情報を測定する。ここでは光学測定手段として光源21およびフォトダイオード22を例に採って説明したが、測定対象の液体を光学的に監視しながら液体の間隔を測定する手段であれば、光源21およびフォトダイオード22に限定されない。例えば、CCDカメラによって測定対象の液体の体積情報を取得してもよい。また、光源21およびフォトダイオード22は、図1に示すように主流路13を挟んで互いに対向配置される構成で、血液による遮光で検知する、いわゆる「透過型センサ」であったが、光源に対してフォトダイオードに代表される光検出手段を同じ側に配設し、血液による反射光で検知する、いわゆる「反射型センサ」であってもよい。
【0032】
一方、上述した血液用配管16の下流側にはノズル23を接続している。ノズル23としては、注射針やガラス管など毛細管を使用する。ここで、液体を吐出する吐出部としてノズル23を用いているが、ディスペンサを使用してもよい。このノズル23から滴下した血液を受け取って収容する円板(「CDウェル」とも呼ばれる)24を配設している。円板24の中央側には、滴下された血液を受け取る複数の開口部からなる流路入口25(図4も参照)を放射状に配設している。円板24に対しても、上述したPDMS基板11,12と同様に、溝加工を施しており、その溝加工の溝によってU字型の溝からなる複数本のU字流路26(図4も参照)を放射状に形成している。各々のU字流路26は、上述した流路入口25の外側一端に一対一でそれぞれ接続されており、各々のU字流路26は、円板24の径方向に延びて形成されている。このように、ノズル23を介在させることで、主流路13に対して血液が流通可能に円板24が形成されることになる。円板24は、この発明における容器に相当し、U字流路26は、この発明における溝に相当する。円板24の具体的な構成については、図4以降で後述する。
【0033】
一方、測定装置30は、読取部31を備えている。この読取部31には、露光後のイメージングプレートIPを挿入するためのカバー部を設けており、イメージングプレートIPから励起された光を読み取ることで血液中に含まれているβ+線を検出する。具体的には、図1(b)に示すように、読取部31は、レーザ光源32とフォトマルチプライヤチューブ(光電子増倍管)33とを備えており、レーザ光源32からイメージングプレートIPにレーザを照射して、イメージングプレートIPへのレーザ照射によって励起された光をフォトマルチプライヤチューブ33が電子に変換して増倍させることで、β+線を2次元的に同時に検出する。
【0034】
続いて、測定装置30のブロック図について説明する。図2に示すように、測定装置30は、上述した読取部31の他に、撮像部34と表示装置35とを備えている。表示装置35については、通常のパーソナルコンピュータで構成してもよい。表示装置35は、この発明における表示装置に相当する。表示装置35の具体的な構成については、図5以降で後述する。
【0035】
図3に示すように、撮像部34は円板24を撮像する。本実施例では、撮像部34としてフラットヘッドスキャナを採用する。円板24の直径分の長さを少なくとも有する線状の光源34aと円板24を挟んで光源34aに対して対向配置された線状のフォトダイオードアレイ(すなわちラインセンサ)34bでフラットヘッドスキャナを構成する。フラットヘッドスキャナで円板24上を走査(スキャン)することで円板24を撮像して、円板24の画像を取得する。
【0036】
図1の説明に戻り、上述したように、微小流体素子40は、血液を送り込む主流路13と、血液凝固の発生を防ぐための抗凝固剤の一種であるヘパリン溶液を送り込む側路41と、空気あるいはガスを送り込む側路42と、血液あるいはヘパリン溶液を排出する側路43とを備えている。
【0037】
側路41の溶液入口側には洗浄液用配管44を配設しており、側路41と洗浄液用配管44とを、コネクタ45を介して接続している。必要に応じて主流路13にヘパリン溶液を洗浄液用配管44から側路41を介して流し込むことで流路を洗浄する。ヘパリン溶液の流入量はバルブで制御される。抗凝固剤はヘパリン溶液に限定されない。
【0038】
側路42の気体入口側には気泡用配管46を配設しており、側路42と気泡用配管46とを、コネクタ47を介して接続している。圧力発生器(図示省略)で制御された空気あるいはガスの流入時間をバルブで調整して、側路42を通して主流路13に送り込む。この気泡によって血液の長さ情報に基づく血液の取り出しと微小流体素子40の流路に残留する廃液(血液、ヘパリン溶液あるいはこれらの混合液)の排出を行う。ここで、送り込まれるガスについては限定されず、ヘリウムやネオンやアルゴンなどの希ガス、あるいは窒素ガスに例示されるように、血液やヘパリン溶液と反応しないガスであれば良い。
【0039】
気泡用配管46は、側路14を通って主流路13に気体(例えば空気やガスなど)を送り込み、指定された所定の間隔でその気体を気泡として挿入することで、測定対象の血液を時系列的に分離して円板24に送り出す。つまり、気泡は、セパレータとしての機能を果たす。なお、セパレータとして気体を使用したが、気体に限定されずに、測定対象の液体(本実施例では血液)に対して混合する可能性が少ない、あるいは可能性がなければ、測定対象の液体とは別の液体をセパレータとして使用してもよい。本実施例のように測定対象の液体が血液の場合には、ミネラルオイルやフッ素系のオイルなどに代表されるように血液と相互に混ざり合わない液体をセパレータとして使用してもよい。但し、液体をセパレータとして使用する場合には、血液と接触するのでセパレータとして使用できるが、円板24に送り出して採取する点では望ましくない。
【0040】
側路43の廃液出口側には廃液用配管48を配設しており、側路43と廃液用配管48とを、コネクタ49を介して接続している。バルブで排出量を調整して採血されるべき血液以外の血液や、流路洗浄後のヘパリン溶液や、これらの混合液を廃液として排出する。
【0041】
また、主流路13のコネクタ15よりも下流にバルブを配設し、主流路13のコネクタ17、光源21およびフォトダイオード22よりも上流にバルブを配設している。側路41のコネクタ45よりも下流にバルブを配設し、側路42のコネクタ47よりも下流にバルブを配設している。また、側路43のコネクタ49よりも上流にバルブを配設している。
【0042】
次に、円板24の具体的な構成について、図1も含めて図4を参照して説明する。図4は、実施例に係る円板の概略平面図である。円板24のU字流路26は、図4に示すように、上述の流路入口25と空気穴27とをつないで形成されている。血液の導入口である流路入口26を血液の上流部、空気穴27を下流部としたときに、上流部から下流部へは、U字流路26は、円板24の径方向に内側から外側に向かって延びて、折り返して円板24の径方向に外側から内側に向かって延びて形成されたU字型となっている。かかるU字流路26を複数に備えている。
【0043】
U字流路26は、折り返し部分を除けば、円板24の径方向に内側から外側に向かって延びて形成された直線状の溝でもあり、円板24の径方向に外側から内側に向かって延びて形成された直線状の溝でもある。また、各々の折り返し部分は、円板24に相似な円形軌道上にそれぞれ位置し、当該円形軌道上が描く円は、円板24の中心から折り返し部分の端までの距離を半径とした円とみなすことができる。同様に、各々の流路入口25(開口部)も、円板24に相似な円形軌道上にそれぞれ位置し、当該円形軌道上が描く円は、円板24の流路入口25の内側端までの距離を半径とした円とみなすことができる。
【0044】
なお、円板24には2箇所の窪み24A,24Bがあり、後述する固定治具61(図7を参照)に嵌合される。固定冶具61については、図7以降で後述する。
【0045】
図1に示すように、円板24の中央に円板24を回転させるモータ28を備えている。モータ28の回転軸29を円板24に連結させることで、モータ28による円板24の遠心力を利用して、血液を遠心分離させて血漿および血球に分離する血漿分離を行う。
【0046】
本実施例では、円板24はアクリル板で形成されている。円板24の素材はアクリルに限定されず、上述のPDMS、その他、ポリカーボネート、COPなど樹脂光学的に透明なものであれば良い。
【0047】
次に、表示装置35の具体的な構成について、図5および図6を参照して説明する。図5は、実施例に係る表示装置のブロック図であり、図6は、表示装置の出力モニタにおける表示形態の一例である。図5に示すように、表示装置35は、第1読み込み部36Aと第2読み込み部36Bとメモリ部37とコントローラ38と入力部39と出力モニタ50とを備えている。コントローラ38は、この発明における重畳処理手段に相当し、入力部39は、この発明における画像・ガイド調整手段に相当する。
【0048】
第1読み込み部36Aおよび第2読み込み部36Bは、例えばI/O(Input/Output)デバイスなどの読み込みデバイスなどで構成されている。第1読み込み部36Aは、読取部31(図1や図2を参照)を介してイメージングプレートIP(図1を参照)で取得されたIP画像を読み込む。第2読み込み部36Bは、撮像部34で取得されたスキャナ画像を読み込む。IP画像は、この発明における測定情報画像に相当し、スキャナ画像は、この発明における形態情報画像に相当する。
【0049】
メモリ部37は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。本実施例では、図11に示す一連の処理をコンピュータ(本実施例ではコントローラ38)に実行させるための表示プログラム37Aと、測定対象の液体(本実施例では血液)を収容する容器(本実施例では円板24:図1や図3や図4を参照)の設計情報を記憶する設計情報メモリ部37Bとをメモリ部37は備えている。表示プログラム37AはROMで構成され、設計情報メモリ部37BはRAMで構成されている。本実施例では、設計情報として、円板24と同じサイズの円、上述した円板24の中心から折り返し部分の端までの距離を半径とした円、上述した円板24の流路入口25(図1や図4を参照)の内側端までの距離を半径とした円、2つの直線状の溝および折り返し部分からなるU字流路26(図1や図4を参照)の本数(本実施例では36本)・角度(本実施例では10°)、円板24の中心位置を通る線および当該線に対して直交し、かつ中心位置を通る線からなる十字線を例に採って説明する。表示プログラム37Aは、この発明における表示プログラムに相当する。
【0050】
コントローラ38は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。各種の画像処理を行うためのプログラムや、放射能濃度を算出するプログラムや、図5に示す表示プログラム37A等をコントローラ38が実行することでそのプログラムに応じた画像処理や表示プログラム37Aに応じた図11に示す一連の処理(第1/第2読み込み部36A,36Bへの読み込み制御、出力モニタ50における表示態様)を行う。各種の画像処理として、コントローラ38は、スキャナ画像を縮小処理、拡大処理する縮小・拡大処理の機能、あるいはスキャナ画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力する輪郭強調の機能を有している。
【0051】
入力部39は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスなどで構成されている。本実施例では、入力部39は、後述するメイン画面51(図6を参照)に拡大表示するために、後述する縮小画面52,53,54(図6を参照)に縮小表示された各画像を選択する画像選択の機能や、測定情報画像(本実施例ではIP画像)、後述するガイドG(図8〜図10を参照)のいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する画像・ガイド調整手段の機能を有している。
【0052】
出力モニタ50は、図6に示すように、メインとなる画像を拡大表示するメイン画面51と、IP画像を縮小表示する縮小画面52と、スキャナ画像を縮小表示する縮小画面53と、IP画像・スキャナ画像を重ね合わせて重畳処理した重畳処理後の画像を縮小表示する縮小画面54とを備えている。図6では、第1読み込み部36Aで読み込まれたIP画像、第2読み込み部36Bで読み込まれたスキャナ画像を重ね合わせてメイン画面51に重畳表示している。メイン画面51には、ガイドG(図8〜図10を参照)をIP画像に付加して表示する。メイン画面51は、この発明におけるガイド表示手段に相当する。
【0053】
次に、固定治具61の具体的な構成について、図7を参照して説明する。図7は、実施例に係る固定治具の概略平面図である。かかる円板24(図1や図3や図4を参照)を固定して位置決めを行いつつ支持するために、図7に示すように固定治具61を備えている。固定冶具61には、円板24が嵌合する開口部62が設けられており、その開口部62に2つの突起部62A,62Bが設けられている。突起部62Aに円板24の窪み24A(図4を参照)を嵌合し、突起部62Bに円板24の窪み24B(図4を参照)を嵌合することで、固定治具61は円板24を固定して位置決めを行いつつ支持する。
【0054】
本実施例では、図7に示すように開口部62を1つ設けて、1つの固定冶具61に対して1つの円板24が固定されるが、開口部62を複数(例えば2つ)設けて、1つの固定冶具61に対して当該複数の円板24が固定されるように構成してもよい。また、図面の左上には固定治具61に切り欠き61Aを設けている。
【0055】
なお、図7に示す固定治具61の場合には180°回転させると流路入口26(図1や図4を参照)の対称性から上下左右を間違える恐れがあるが、切り欠き61Aを図面の左上に設けることで、読取部31(図1や図2を参照)を介してイメージングプレートIP(図1を参照)で取得されたIP画像も、撮像部34で取得されたスキャナ画像も、切り欠き61Aを基準として向きをそろえることができる。
【0056】
モータ28(図1を参照)による円板24(図1や図3や図4を参照)の遠心力により、血漿および血球に血漿分離された円板24を固定治具61は固定して位置決めを行いつつ支持することで、円板24の各々の流路入口26(図1や図4を参照)の向きや位置も固定される。そして、向きや位置が固定された状態で、イメージングプレートIP(図1を参照)を用いて円板24の撮像を行ってIP画像を取得し、撮像部34(図2や図3や図5を参照)のフラットヘッドスキャナによる円板24の撮像を行ってスキャナ画像を取得する。なお、撮像の順番については特に限定されない。
【0057】
具体的に説明すると、円板24(図1や図3や図4を参照)および固定治具61をサンプルとして、図示を省略するカセッテを開いて収容して、その上にイメージングプレートIP(図1を参照)を収容して、カセッテを閉じて露光を行う。この露光によって、血液中に含まれているβ+線の電離能により、イメージングプレートIPの蛍光体(図示を省略)の格子欠陥に電子が捕獲される。一定時間の露光後にイメージングプレートIPをカセッテから取り出して、測定装置30(図1を参照)の読取部31(図1や図2を参照)のカバー部に挿入して、イメージングプレートIPに光を照射して露光を行う。
【0058】
読取部31(図1や図2を参照)のレーザ光源32(図1や図2を参照)からイメージングプレートIP(図1を参照)にレーザを照射する。捕獲された電子がこの照射によって伝導体に励起され正孔と再結合し、蛍光体から光として励起される。このイメージングプレートIPへのレーザ照射によって励起された光をフォトマルチプライヤチューブ33(図1や図2や図5を参照)が電子に変換して増倍させることで、電気パルスとして2次元的に同時に検出して計数する。なお、レーザ光源32からイメージングプレートIPへ照射した後には、再利用するために消去用光源(図示省略)から光をイメージングプレートIPへ照射することで、捕獲された電子を消去する。イメージングプレートIPと読取部31で求められたβ+線の計数情報に基づいて、β+線の計数情報である血中の放射線量を求める。このようにして、IP画像が取得される。
【0059】
一方、撮像部34(図2や図3や図5を参照)は、血漿分離された血漿および血球を円板24(図1や図3や図4を参照)およびそれを支持した固定治具61ごと撮像する。撮像部34のフラットヘッドスキャナの光源32a(図3を参照)から光を照射することで、吸光度の相違によって血漿および血球が撮像された画像上で濃淡差となって現れ、画像上で容易に識別可能である。このようにして、スキャナ画像が取得される。
【0060】
スキャナ画像は、血液や円板24(図1や図3や図4を参照)や切り欠き61Aを設けた固定冶具61を含んだ形態情報画像であるので、切り欠き61Aなどの情報も反映されるが、IP画像は、測定情報を有した測定情報画像であるので、切り欠き61Aなどの情報は画像に反映されない。しかし、固定冶具61によって各々の流路入口26(図1や図4を参照)の向きや位置が固定されるので、(円板24の固定位置である)円板24のU字流路26と固定治具61との相対位置も決定される。
【0061】
ただし、固定冶具61を備えていても、円板24(図1や図3や図4を参照)を撮像部34(図2や図3や図5を参照)のフラットヘッドスキャナで撮像する際に固定冶具61ごと円板24が傾いていたりすると、重畳処理の対象となるIP画像・スキャナ画像間で位置ズレが生じる。その結果、個々の画像を重ね合わせて重畳表示したとしても、角度がずれて表示される可能性がある。
【0062】
そこで、容器(ここでは円板24:図1や図3や図4を参照)の設計情報に基づくガイドを測定情報画像(ここではIP画像)に付加して表示する。ガイドの各例として、図8〜図10を参照して説明する。図8〜図10は、ガイドの各例をIP画像に付加した図である。図8では、ガイドGとして、円板24の中心位置を通る十字線ガイドをIP画像に付加している。図9では、ガイドGとして、上述の十字線ガイドの他に円形ガイド(円板24と同じサイズの円形ガイドおよび当該円形ガイドに相似な円形ガイド)をIP画像に付加している。図10では、ガイドGとして、上述の十字線ガイドおよび円形ガイドの他に直線状ガイドをIP画像に付加している。
【0063】
次に、一連の処理について、図11を参照して説明するとともに、上述の図8〜図10と併せて説明する。図11は、実施例に係る一連の処理の流れを示したフローチャートである。
【0064】
先ず、読取部31(図1や図2を参照)を介してイメージングプレートIP(図1を参照)からIP画像を取得するとともに、撮像部34(図2や図3や図5を参照)のフラットヘッドスキャナからスキャナ画像を取得する。また、容器(本実施例では円板24:図1や図3や図4を参照)の設計情報は予めわかっているので、当該設計情報を、ここでは、円板24と同じサイズの円、円板24の中心から折り返し部分の端までの距離を半径とした円、円板24の流路入口25(図1や図4を参照)の内側端までの距離を半径とした円、2つの直線状の溝および折り返し部分からなるU字流路26(図1や図4を参照)の本数(本実施例では36本)・角度(本実施例では10°)、円板24の中心位置を通る線および当該線に対して直交し、かつ中心位置を通る線からなる十字線として設計情報メモリ部37B(図5を参照)に書き込んで記憶する。
【0065】
(ステップS1)画像読み込み
第2読み込み部36B(図5を参照)は、撮像部34(図2や図3や図5を参照)で取得されたスキャナ画像を読み込む。
【0066】
また、必要に応じて、関心領域を抽出するために、ステップS1で読み込まれたスキャナ画像の輪郭をコントローラ38(図5を参照)は強調して輪郭強調画像を出力してもよい。輪郭強調処理としては、例えばゾーベルフィルタ(Sobel filter)処理やプレヴィットフィルタ(Prewitt filter)処理などに代表される、注目画素とその周辺画素との差分を求める一次微分による輪郭強調処理、ラプラシアンフィルタ(Laplacian filter)処理などに代表される、注目画素とその周辺画素との差分のさらなる差分を求める二次微分による輪郭強調処理などを行えばよい。これらの輪郭強調処理については公知の技術であるので、その説明を省略する。
【0067】
(ステップT1)画像読み込み
一方、第1読み込み部36A(図5を参照)は、読取部31(図1や図2を参照)を介してイメージングプレートIP(図1を参照)で取得されたIP画像を読み込む。上述のステップS1,このステップT1の順番については特に限定されず、ステップT1を先に行ってもよいし、ステップS1を先に行ってもよいし、ステップS1,T1を同時並行に行ってもよい。
【0068】
(ステップS2)画像表示
ステップS1で読み込まれたスキャナ画像を出力モニタ50(図6を参照)の各画面に表示する。なお、スキャナ画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力した場合には、スキャナ画像に替えて輪郭強調画像を出力モニタ50(図6を参照)の各画面に表示してもよい。その際に、スキャナ画像(輪郭強調画像も含む)を縮小処理して、縮小処理後のスキャナ画像を、図6に示す縮小画面53に表示した後に、図6に示すメイン画面51に拡大表示してもよい。
【0069】
(ステップT2)画像表示
一方、ステップT1で読み込まれたIP画像も出力モニタ50(図6を参照)の各画面に表示する。その際に、IP画像を縮小処理して、縮小処理後のIP画像を、図6に示す縮小画面52に表示した後に、図6に示すメイン画面51に拡大表示してもよい。
【0070】
(ステップT3)ガイド表示
ステップT2でIP画像を、図6に示すメイン画面に表示した場合には、図8〜図10に示すように設計情報に基づくガイドGをIP画像に付加してメイン画面51に表示する。図8に示すガイドGをメイン画面51に付加して表示するために、設計情報メモリ部37B(図5を参照)から設計情報を読み出して、図8に示すように設計情報に基づくガイドGとして十字線ガイドをIP画像に付加してメイン画面51に表示し、図9に示すように設計情報に基づくガイドGとして十字線ガイドおよび円形ガイドをIP画像に付加してメイン画面51に表示し、あるいは図10に示すように設計情報に基づくガイドGとして十字線ガイド,円形ガイドおよび直線状ガイドをIP画像に付加してメイン画面51に表示する。また、図8〜図10では図示していないが、円板24(図1や図3や図4を参照)の溝(ここではU字流路:図1や図4を参照)の形状も設計情報によりわかっているので、溝の形状と同じ輪郭線のガイド(ここではU字ガイド)を表示してもよい。このステップT3は、この発明におけるガイド表示工程に相当する。
【0071】
上述したように、フラットヘッドスキャナで撮像する際に傾いた結果、重畳処理の対象となるIP画像・スキャナ画像間で位置ズレが生じたとしても、ガイドGに基づいてIP画像の位置決めを行い易くすることができる。図8〜図10では、IP画像がガイドGに対して一致しているときの図であり、このときには、スキャナ画像を後述するステップU1,U2で重畳処理・重畳表示したとしても、位置ズレが生じないが、IP画像がガイドGに対して位置ズレを起こしている場合には、下記のステップT4のように調整を行う。
【0072】
(ステップT4)調整
IP画像がガイドGに対して位置ズレを起こしている場合には、IP画像、ガイドGのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する。入力部39(図5を参照)により調整する。図6に示す出力モニタ50から、各々のガイドGをグループ化して、グループ化されたガイド(の例えば中心位置あるいは輪郭部分)をドラッグしてIP画像に一致するように表示画面上で移動させて調整したり、各々のガイドGをグループ化させずに、個々にガイドGをドラッグしてIP画像に一致するように表示画面上で移動させて調整したり、あるいはガイドGの輪郭部分にポインタを合わせてガイドGを縮小あるいは拡大してガイドGの大きさを調整する。もちろん、IP画像の方を表示画面上で移動させて調整あるいはIP画像の大きさを表示画面上で調整してもよいし、両方を表示画面上で移動させて調整あるいは両方の大きさを表示画面上で調整してもよい。また、入力部39を出力モニタ50のタッチパネルで構成し、出力モニタ50のタッチパネルにおいて調整の対象となるIP画像あるいはガイドを直接に指で触れることにより、調整してもよい。このステップT4は、この発明における画像・ガイド調整工程に相当する。
【0073】
上述のステップS2,T2〜T4の順番についても特に限定されず、ステップT2〜T4を先に行ってもよいし、ステップS2を先に行ってもよいし、ステップS2,T2〜T4を同時並行に行ってもよい。
【0074】
(ステップU1)重畳処理
コントローラ38(図5を参照)は、ステップS2で表示されたスキャナ画像、ステップT4で調整されたIP画像を重ね合わせて重畳処理する。
【0075】
(ステップU2)重畳表示
重畳処理後の画像(図11では「重ね合わせ画像」で表記)を、出力モニタ50(図6を参照)の各画面に表示する。その際に、重畳処理後の画像を縮小処理して、重畳処理後で縮小処理後の画像を、図6に示す縮小画面54に表示した後に、図6に示すメイン画面に拡大表示してもよい。
【0076】
また、フラットヘッドスキャナで撮像する際に固定冶具61(図7を参照)ごと円板24(図1や図3や図4を参照)が傾いていたりすると、スキャナ画像の方もガイドGに対して位置ズレを起こしているので、重畳表示の際にステップT4と同様に調整を行えばよい。ステップT4でIP画像・ガイドG間では調整が既に行われているので、スキャン画像の方を表示画面上で移動させて調整あるいはスキャン画像の大きさを表示画面上で調整すればよい。このとき、IP画像の表示を消してガイドGとスキャン画像のみを表示して、調整後にIPの画像を再度表示して重畳表示を行ってもよい。なお、上述したステップS2の画像表示の段階で、ガイドG・スキャン画像間の調整を先に行えば、このステップU2の段階では調整を行う必要はない。
【0077】
本実施例に係る測定システムに用いられる表示装置35によれば、測定対象の液体(本実施例では血液)中に含まれている放射線(本実施例ではβ+線)の測定情報を有した測定情報画像(本実施例ではIP画像)を表示し、測定対象の液体(血液)を収容する容器(本実施例では円板24)の設計情報に基づくガイドGを測定情報画像(IP画像)に付加して表示するガイド表示手段(本実施例ではメイン画面51)を備えることで、本来であればガイドが反映されない測定情報画像(IP画像)にガイドGを付加して表示することにより、設計情報に基づく基準位置(本実施例では円板24の中心位置)が測定情報画像(IP画像)上で視覚的にわかる。その結果、基準位置(円板24の中心位置)を示すガイドGに基づいて測定情報画像(IP画像)上で位置決めを行い易くすることができる。
【0078】
また、本実施例に係る表示方法および表示プログラム37Aによれば、ステップT3で、測定対象の液体(本実施例では血液)中に含まれている放射線(本実施例ではβ+線)の測定情報を有した測定情報画像(本実施例ではIP画像)を表示し、測定対象の液体(血液)を収容する容器(本実施例では円板24)の設計情報に基づくガイドGを測定情報画像(IP画像)に付加して表示することで、設計情報に基づく基準位置(本実施例では円板24の中心位置)が測定情報画像(IP画像)上で視覚的にわかる。その結果、基準位置(円板24の中心位置)を示すガイドGに基づいて測定情報画像(IP画像)上で位置決めを行い易くすることができる。
【0079】
本実施例に係る表示装置35において、測定情報画像(本実施例ではIP画像)、測定対象の液体(本実施例では血液)の形態情報を有した形態情報画像(本実施例ではスキャナ画像)を重ね合わせて重畳処理する重畳処理手段(本実施例ではコントローラ38)を備え、ガイド表示手段(本実施例ではメイン画面51)は、ガイドGを当該重畳処理前の画像に付加して表示するのが好ましい。ガイドGを当該重畳処理前の画像に付加して表示することで、測定情報画像(IP画像)および形態情報画像(スキャナ画像)の重畳処理をガイドGに基づいて正確に行うことができる。
【0080】
本実施例に係る表示装置35において、測定情報画像(本実施例ではIP画像)、ガイドGのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する画像・ガイド調整手段(実施例では入力部39)を備えるのが好ましい。
【0081】
また、本実施例に係る表示方法において、測定情報画像(本実施例ではIP画像)、ガイドGのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整するステップT4を備えるのが好ましい。表示画面上で調整することで、測定情報画像(IP画像)をガイドGに対して相対的に位置合わせを行うことができ、上述した形態情報画像(本実施例ではスキャナ画像)との重畳処理においても、位置合わせを行った上で重畳処理を正確に行うことができる。
【0082】
また、本実施例のように、容器が円形(本実施例では円板24)の場合には、ガイドGは、図9や図10に示すように、円形のガイドあるいは円形に相似な形状のガイド(総称して「円形ガイド」)であるのが好ましい。円形の容器(ここでは円板24)の形状に合わせたガイド(円形ガイド)を用いることで、測定情報画像(本実施例ではIP画像)上で位置決めをより一層行い易くすることができる。
【0083】
また、図4に示すように、測定対象の液体(本実施例では血液)を収容するために設けられた容器(本実施例では円板24)の溝(流路:本実施例ではU字流路26)が直線状に延びている場合には、ガイドGは、図10に示すように、当該容器(円板24)の直線状の溝と同じ角度の直線状のガイド(直線状ガイド)であるのが好ましい。容器(円板24)の設計情報により、溝(U字流路26)の本数(図4では36本)や角度(図4では10°)がわかっているので、直線状の溝(U字流路26)の形状に合わせたガイド(直線状ガイド)を用いることで、測定情報画像(IP画像)上で位置決めをより一層行い易くすることができる。
【0084】
また、ガイドGは、測定対象の液体(本実施例では血液)を収容するために設けられた容器(本実施例では円板24)の溝(本実施例ではU字流路26)と同じ形状の輪郭線のガイド(ここではU字ガイド)であってもよい。溝(U字流路26)の輪郭線に合わせたガイドGを用いることで、測定情報画像(IP画像)上で位置決めをより一層行い易くすることができる。
【0085】
また、ガイドGは、図8〜図10に示すように、容器(本実施例では円板24)の中心位置を通る直線状のガイド(ここでは十字線ガイド)であってもよい。この場合には、中心位置を基準位置として測定情報画像(IP画像)上での位置決めを行うことができる。
【0086】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0087】
(1)上述した実施例では、測定対象の液体として血液を例に採って説明したが、測定対象の液体であれば、血液に限定されずに、放射性物質や発光物質や蛍光剤が含まれた液体や、分析装置に用いられる混合液などであってもよい。また、測定対象の液体は、遠心分離の対象となる液体でなくともよい。
【0088】
(2)上述した実施例では、測定情報画像は、イメージングプレートIPから取得された放射線(本実施例ではβ+線)の測定情報を有したIP画像であったが、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像であれば、例えば光(フォトン:光子)や放射線を直接的に計数することで取得された測定情報画像などのように、必ずしもIP画像に限定されない。
【0089】
(3)上述した実施例では、形態情報画像は、撮像部34のフラットヘッドスキャナから取得されたスキャナ画像であったが、測定対象の液体の形態情報を有した形態情報画像であれば、例えば放射線照射手段および放射線検出手段で構成される放射線撮像手段で取得された形態情報画像などのように、必ずしもスキャナ画像に限定されない。
【0090】
(4)上述した実施例では、ガイドは容器(実施例では円板24)の設計情報に基づくものであったが、測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報に基づくものであってもよい。例えば、測定対象の液体(実施例では血液)を収容した液体の領域情報を撮像部34のフラットヘッドスキャナで読み込んで撮像し、当該領域情報に基づくガイドを測定情報画像(実施例ではIP画像)に付加して表示してもよい。測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報に基づくガイドを測定情報画像(IP画像)に付加して表示することで、特定位置(例えば液体の収容位置)が測定情報画像上で視覚的にわかる。その結果、特定位置を示すガイドに基づいて測定情報画像(IP画像)上で位置決めを行い易くすることができる。また、特定位置および設計情報に基づく基準位置を組み合わせてガイドを表示してもよい。
【0091】
(5)上述した実施例では、基準位置は容器(実施例では円板24)の中心位置であったが、中心位置に限定されない。例えば容器の溝(流路)の端の点などように、任意の位置であってもよい。
【0092】
(6)上述した実施例では、測定情報画像(実施例ではIP画像)と形態情報画像(実施例ではスキャナ画像)とを重ね合わせて重畳処理したが、必ずしも形態情報画像は必要ではない。測定情報画像(IP画像)の単独の画像にガイドを付加して表示してもよい。
【0093】
(7)上述した実施例では、測定情報画像(実施例ではIP画像)、ガイドのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整したが、測定情報画像とガイドとの位置が相対的に一致している場合には、必ずしも調整する必要はない。
【0094】
(8)上述した実施例では、容器は遠心分離を行う円板であったが、測定対象の液体が、遠心分離の対象となる液体でない場合には、液体を収容する容器であれば、円板に限定されない。方形の板や多角形の板などであってもよい。
【0095】
(9)上述した実施例では、円板24の径方向に沿って溝加工を放射状に施すことで、径方向に形成されたU字流路26を複数に設けたが、必ずしも放射状に配設する必要はない。例えば、互いに平行に配設してもよい。
【0096】
(10)上述した変形例(8)のように容器が円形以外の形状である場合には、形状に合わせたガイドを用いてもよい。例えば、容器が方形の板の場合には、方形のガイドあるいは方形に相似な形状のガイドを用いてもよいし、容器が多角形の板の場合には、多角形のガイドあるいは多角形に相似な形状のガイドを用いてもよい。また、容器の形状に合わせたガイドを用いる必要はなく、容器の溝(流路)の輪郭線に合わせたガイド、各々の溝(流路)の端部を結んだ線に合わせたガイドを用いてもよい。例えば変形例(9)のように平行に配設された溝(流路)の輪郭線に合わせたガイドを用いてもよいし、平行に配設された各々の溝(流路)の端部を結んだ線に合わせたガイドを用いてもよい。
【0097】
(11)上述した実施例では、容器の溝(流路)が直線状に延びたU字流路であったが、溝(流路)の形状に合わせたガイドを用いてもよい。例えば、溝(流路)が曲線状に延びている場合には、曲線状のガイドを用いてもよい。
【0098】
(12)上述した実施例では、容器(実施例では円板24)の中心位置を通る直線状のガイドとして互いに直交する2本の直線状のガイドからなる十字線ガイドを用いたが、必ずしも十字線ガイドを用いる必要はない。1本の直線状のガイドであってもよいし、3本以上の直線状のガイドであってもよいし、互いに斜めに直交する2本の直線状のガイドであってもよい。また、各々の溝(流路)が非対称に設けられている場合には、必ずしも容器の中心位置を通る直線状のガイドでなくてもよい。
【0099】
(13)上述した実施例では、容器(実施例では円板24)を固定して位置決めを行いつつ支持する固定治具61を備えたが、必ずしも固定冶具61を備える必要はない。例えば、図4に示すように窪みを円板24自体に設ける、あるいは切り欠きや突起部を円板24自体に設けることで、その窪みや切り欠きや突起部などを基準として重畳の対象となる画像の向きを揃えてもよい。また、円板24の所定の箇所に光や放射線の透過性の異なる部材をマーカとして貼り付けて、撮像された画像でマーカ部分を基準として向きを揃えて重畳処理を行ってもよい。
【0100】
(14)上述した実施例では、測定システムにおいて、採血装置10による自動採血を例に採って説明したが、液体の採取方法は自動的な液体採取装置に限定されない。液体は円板24のU字流路26に作業者の手技で滴下する方法でもよい。
【0101】
(15)上述した実施例では、ガイドGを重畳処理前の(測定情報)画像(IP画像)に付加して表示したが、ガイドGを重畳処理前の画像に付加して表示した後にガイドGを消さずにそのまま形態情報画像(スキャナ画像)に重ね合わせて表示してもよい。
【符号の説明】
【0102】
24 … 円板
26 … U字流路
35 … 表示装置
37A … 表示プログラム
38 … コントローラ
39 … 入力部
51 … メイン画面
G … ガイド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定する測定システムに用いられる表示装置であって、
前記測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは前記測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、前記測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは前記測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを前記測定情報画像に付加して表示するガイド表示手段
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記測定情報画像、前記ガイドのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する画像・ガイド調整手段を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表示装置において、
前記容器は円形であって、
前記ガイドは、前記円形のガイドあるいは円形に相似な形状のガイドであることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の表示装置において、
前記ガイドは、前記測定対象の液体を収容するために設けられた前記容器の直線状の溝と同じ角度の直線状のガイドであることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の表示装置において、
前記ガイドは、前記測定対象の液体を収容するために設けられた前記容器の溝と同じ形状の輪郭線のガイドであることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の表示装置において、
前記ガイドは、前記容器の中心位置を通る直線状のガイドであることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定して得られた測定データを表示する表示方法であって、
前記測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは前記測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、前記測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは前記測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを前記測定情報画像に付加して表示するガイド表示工程
を備えることを特徴とする表示方法。
【請求項8】
請求項7に記載の表示方法において、
前記測定情報画像、前記ガイドのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する画像・ガイド調整工程を備えることを特徴とする表示方法。
【請求項9】
測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定して得られた測定データを表示する一連の処理をコンピュータに実行させるための表示プログラムであって、
前記測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは前記測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、前記測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは前記測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを前記測定情報画像に付加して表示するガイド表示工程
を備えることを特徴とする表示プログラム。
【請求項1】
測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定する測定システムに用いられる表示装置であって、
前記測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは前記測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、前記測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは前記測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを前記測定情報画像に付加して表示するガイド表示手段
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記測定情報画像、前記ガイドのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する画像・ガイド調整手段を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表示装置において、
前記容器は円形であって、
前記ガイドは、前記円形のガイドあるいは円形に相似な形状のガイドであることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の表示装置において、
前記ガイドは、前記測定対象の液体を収容するために設けられた前記容器の直線状の溝と同じ角度の直線状のガイドであることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の表示装置において、
前記ガイドは、前記測定対象の液体を収容するために設けられた前記容器の溝と同じ形状の輪郭線のガイドであることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の表示装置において、
前記ガイドは、前記容器の中心位置を通る直線状のガイドであることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定して得られた測定データを表示する表示方法であって、
前記測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは前記測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、前記測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは前記測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを前記測定情報画像に付加して表示するガイド表示工程
を備えることを特徴とする表示方法。
【請求項8】
請求項7に記載の表示方法において、
前記測定情報画像、前記ガイドのいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは一方の大きさを表示画面上で調整する画像・ガイド調整工程を備えることを特徴とする表示方法。
【請求項9】
測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定して得られた測定データを表示する一連の処理をコンピュータに実行させるための表示プログラムであって、
前記測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは前記測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像を表示し、前記測定対象の特定位置となる測定対象の領域情報あるいは前記測定対象の液体を収容する容器の設計情報に基づくガイドを前記測定情報画像に付加して表示するガイド表示工程
を備えることを特徴とする表示プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【公開番号】特開2013−101029(P2013−101029A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244454(P2011−244454)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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