説明

測定システム

【課題】簡易な構成により試料液の採取、及び採取した試料液と試薬との混合を行うことができる測定システムを提供する。
【解決手段】駆動嵌合部110及び駆動軸部213と連結した回動用モータ219を用いて、測定セル100内に設けられた蓋部113及び攪拌子104を回転させながら引き上げることにより、測定セル100内に試料液を吸引するとともに試料液と試薬106とを撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に試薬が封入された測定セルを用いて、試料液の光学測定を行うための測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、臨床検査分野で血液や尿のような生体試料を測定する機器として、大規模自動化機器やPOCT(Point of Care Testing)機器などが主に使用されている。
【0003】
大規模自動化機器は、病院の中央臨床検査部門もしくは臨床検査受託業務を中心とする会社に設置されており、多数の患者の検体を多項目にわたり検査することができるものである。例えば、日立製作所製の大型自動化機器(型番7170)は最大36項目について毎時800テストの検査を完了することができる。従ってこれら大規模自動化機器は、多くの被験者を抱える病院などにおいて検査の効率化に大きく貢献している。
【0004】
一方、POCT機器とは、病院の検査室や検査センターを除く医療現場で行われる臨床検査において用いられる機器であり、在宅医療においても用いられる機器として開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
POCT機器の例としては、血糖センサ、妊娠診断薬、排卵検査薬、HbA1c−微量アルブミン測定機器(例えば、バイエル製DCA2000)などが挙げられる。これらのPOCT機器は、大規模自動化機器に比較して汎用性には乏しいが、ある病態に特異的なマーカー物質にフォーカスして、当該マーカー物質を簡易、迅速に測定することができるため、被験者のスクリーニングおよびモニタリングに効果的である。また、POCT機器は、小型であるため携帯性にすぐれて低コストで採取でき、さらに操作性においても特に専門性を必要とせず誰にでも使用することができる。これらの特徴からPOCT機器は病院の検査部門などを除く医療現場において広く用いられるようになってきた。
【0006】
これらの測定装置において用いられる測定セル内に試料液を採取する方法としては種々の方法が提案されている。例えば、特許文献3には、ロッドを固着したプランジャを測定セル内に設け、ロッドを測定セル外に延設し、測定セル外にロッドを押引する駆動機構を備える測定装置を用い、駆動機構によりプランジャを摺動させることにより測定セル内に試料液を採取する方法が開示されている。
【0007】
また、これらの測定機器においては、試料液を測定セルに導入したのち試薬と試料液とを混合することが行われている。一般に上記従来の大規模自動化機器およびPOCT機器では、測定セル内へ試料液を導入した後、振動や磁気等を利用した回転子などの混合手段を用いることにより、試薬と試料液との混合が行われている。
【特許文献1】特開平07−248310号公報
【特許文献2】特開平03−046566号公報
【特許文献3】特開昭52−082377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献3に記載の測定装置において試薬と試料液との混合を行う場合には、試料液採取手段とは別に混合手段をさらに設ける必要があるため、装置構成が複雑になるという問題点があった。
【0009】
そこで本発明は上記従来の問題点に鑑み、簡易な構成により試料液の採取、及び採取した試料液と試薬との混合を行うことができる測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために本発明の測定システムは、測定セル及び測定装置を備えた測定システムであって、
前記測定セルは、
試料液を収容するための試料液収容室、
前記試料液収容室と連通する開口部、及び
前記試料液収容室と連通し、前記開口部とは異なる位置に設けられた試料液導入口を有する測定セル本体と、
前記測定セル本体の前記開口部を塞ぐ位置に設けられ、回転しながら前記試料液収容室の内壁に沿って摺動可能な蓋部と、
前記蓋部と連結しており、前記試料液収容室内に設けられ、前記蓋部とともに回転可能な攪拌子と、
前記試料液収容室内に保持された試薬とを備え、
前記測定装置は、
前記測定セルが取付けられる測定セル取付け部と、
前記測定セル取付け部に取付けられた前記測定セルの前記蓋部と接合して、前記蓋部を回転しながら前記試料液収容室の内壁に沿って摺動させる蓋部駆動部と、
前記測定セル本体に入射する入射光を出射する光源と、
前記入射光に起因して前記測定セル本体から出射した出射光を受光する受光器と、
前記受光器によって受光された前記出射光を解析する解析部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成により試料液の採取、及び採取した試料液と試薬との混合を行うことが可能な測定システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の測定システムは、測定セル及び測定装置を備えた測定システムであって、
前記測定セルは、
試料液を収容するための試料液収容室、
前記試料液収容室と連通する開口部、及び
前記試料液収容室と連通し、前記開口部とは異なる位置に設けられた試料液導入口を有する測定セル本体と、
前記測定セル本体の前記開口部を塞ぐ位置に設けられ、回転しながら前記試料液収容室の内壁に沿って摺動可能な蓋部と、
前記蓋部と連結しており、前記試料液収容室内に設けられ、前記蓋部とともに回転可能な攪拌子と、
前記試料液収容室内に保持された試薬とを備え、
前記測定装置は、
前記測定セルが取付けられる測定セル取付け部と、
前記測定セル取付け部に取付けられた前記測定セルの前記蓋部と接合して、前記蓋部を回転しながら前記試料液収容室の内壁に沿って摺動させる蓋部駆動部と、
前記測定セル本体に入射する入射光を出射する光源と、
前記入射光に起因して前記測定セル本体から出射した出射光を受光する受光器と、
前記受光器によって受光された前記出射光を解析する解析部とを備える。
【0013】
本発明の測定システムは以下のように使用される。まず、測定装置の測定セル取付け部に測定セルが取付けられる。次に、測定セルが取付けられた状態で、測定セル本体の試料液導入口を試料液中に浸す。試料液導入口が試料液中に浸された状態で、測定装置の蓋部駆動部を駆動させることにより、測定セル本体の開口部を塞ぐ位置に設けられた蓋部を、回転させながら試料液収容室の内壁に沿って試料液導入口から遠ざかる方向に摺動させる。蓋部の摺動により、試料液導入口を通って試料液収容室内に試料液が導入される。蓋部が回転しながら摺動するのに伴い、蓋部と連結された攪拌子が、試料液収容室内において回転するので、試料液導入口から試料液収容室内に導入された試料液は、試料液収容室内において攪拌子により、試料液収容室内に保持されている試薬と撹拌及び混合される。
【0014】
したがって、本発明の測定システムによれば、測定セル内への試料液の導入及び試料液と試薬との混合を一つの手段によって行うことができるため、装置構成が簡易となる。
【0015】
また、測定セル本体の開口部を塞ぐ位置に蓋部が設けられているので、試料液を採取する際に測定装置内が試料液により汚染されることがない。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態)
図1〜図13は本発明の実施の形態における測定システムを説明するための図である。図1は測定システムにおける測定装置の外観を示す斜視図、図2は測定装置の断面図、図3は測定システムにおける測定セルの構成を示す図、図4は測定装置に設けられた駆動嵌合部の構成を示す図である。図5は図2におけるD方向から見た測定セル取付け部の平面図である。図6は図2におけるE−E線において断面にした駆動軸部と回転軸受部の部分を示す断面図、図7は測定装置の上部を除いた上面図である。図8は図2の断面と直角な面での測定装置の断面図、図9は測定装置における測定制御部のブロック図である。さらに、図10は測定セルを所定位置に係止する他の一例を示す断面図である。
【0018】
また、図11は測定開始時における測定装置の構成を示す断面図、図12は所定量の試料液が吸入された状態での測定装置を示す断面図、図13は図12と同じ状態における図12の断面と直角な面での測定装置の断面図である。
【0019】
本発明の測定システムは測定セル100と測定装置200を備えている。
【0020】
図1に示すように、測定装置200には、測定セル100を測定装置200に着脱するための取付け部となる測定セル取付け部202が突出して設けられている。また、測定を開始するための測定開始ボタン203、測定結果を表示する表示部204、測定セル100を測定装置から取外すための測定セル保持解除ボタン205が設けられている。また、測定セル取付け部202は摺動可能で、測定セル100の着脱に対応してスライドが可能なように構成されている。
【0021】
まず測定セル100の構成について図3(a)および図3(b)を用いて説明する。図3(a)および図3(b)において、測定セル100は、透明のポリスチレンなどからなる角柱形状の中空の容器101と、蓋部113と、攪拌子104と、試薬106とを備える。容器101は、試料液を収容するための試料液収容室103と、蓋部113が移動するための断面が円形状である蓋部ガイド部107とにより構成され、試料液を吸入または排出するための試料液導入口105を有する。そして、容器101の外側には測定セル100を測定装置200(図示せず)に係止させるための突起部102が設けられている。また、容器101の内部の試料液収容室103には、試料液と反応する試薬106が設けられている。容器101は本発明における測定セル本体に相当する。また、測定セル100の上端面101aの開口が、本発明の開口部に相当する。
【0022】
また、図3(c)および図3(d)に示すように、蓋部113は駆動部結合部材111とパッキン112と攪拌子保持部118とを備えている。パッキン112は駆動部結合部材111の両側端面に設けられた鍔に挟み込まれた状態で固着されている。そして、蓋部113のパッキン112と容器101の蓋部ガイド部107との間が密着されて、蓋部113の部分において空気等の流体の流入あるいは流出のないようにしている。攪拌子保持部118内には、攪拌子104と連結された攪拌子支持部114と、バネ117とが設けられている。攪拌子支持部114には攪拌子突起部115が設けられているため、攪拌子支持部114が攪拌子保持部118内の切り欠き部116に挿入された際、攪拌子支持部114は切り欠き部116に沿って摺動する。
【0023】
また、図3(c)、図3(d)に示すように、駆動部結合部材111には、図2に示す測定装置200の駆動嵌合部110の円筒部110aが嵌合する駆動部嵌合穴部111aが形成されている。さらに、駆動部嵌合穴部111aの側面に中心軸Oの軸心方向に駆動嵌合部110の突起部110bが嵌り込む突起部嵌合縦溝111bが形成されている。さらに、駆動部嵌合穴部111aの側面周方向には突起部嵌合縦溝111bに連続し、かつ、駆動嵌合部110の回動に伴う突起部110bの回動に対応して突起部110bが嵌り込む突起部嵌合横溝111cが形成されている。ここで駆動嵌合部110は、本発明の蓋部駆動部に相当する。
【0024】
一方、試薬106は、試薬を含む溶液を凍結乾燥または自然乾燥により乾燥させることにより形成される。試薬106は、試料液収容室103内に試料液が供給されたときに試料液に溶解するように配置されている。なお、試料液収容室103を構成する壁面に試薬を含む溶液を直接塗布した後に乾燥させることによって試薬を配置してもよい。また、ガラス繊維あるいは濾紙などからなる多孔性の担体に試薬を含む溶液を含浸させて乾燥させることによって試薬を担持させたものを試料液収容室103内に配置してもよい。
【0025】
また、試薬106としては、試料液中の被検物質と特異的に反応する材料を用いる。試料液中の被検物質と特異的に反応する材料としては、酵素、抗体等が挙げられる。試料液に尿を用い、被検物質がヒトアルブミンである例について説明する。この場合、試薬106としてはヒトアルブミンに対する抗体を用いるのが有利である。ヒトアルブミンに対する抗体は従来公知の方法により得ることができる。例えば、ヒトアルブミンを免疫したウサギ抗血清を、プロテインAカラムクロマトグラフィーにより精製した後、透析チューブを用いて透析することにより、容易にヒトアルブミン抗体を得ることができる。その他の抗体としては、アルブミンなどの尿中に含まれるタンパクに対する抗体、hCG、LHなどの尿中に含まれるホルモンに対する抗体などが挙げられる。必要に応じて抗原と抗体による凝集反応を促進させるポリエチレングリコールなどの化合物を測定セル100内の試薬106近傍に共存させてもよい。また、その他の対象となる試料液としては、尿の他に血清、血糖、血液などの体液、あるいは、培地の上清液などの液体が挙げられ、被検物質としては、アルブミンの他に、hCG、LH、CRP、IgGなどが挙げられる。
【0026】
なお、容器101は、上述のように透明材料によって全体を構成する必要はないが、後述の測定装置200に設けられた光学測定部に対応する部分に透明材料を用いて透明部を設けてもよい。透明材料としては、ポリスチレンの他に、石英、ガラス、あるいは、ポリメタクリル酸メチルなどを用いることができるが、測定セル100を使い捨てにする場合には、コストの観点からポリスチレンが好ましい。
【0027】
また、容器101は一体で形成することに限ることはなく、試料液収容室103の部分と、蓋部ガイド部107の部分とを接合して、測定セル100を組み立てても良い。各部材の接合は、エポキシ樹脂などの接着剤を接合部に塗布した後、各部材を貼り合わせて静置し接合部を乾燥させることによって接合する。あるいは、各部材を市販の溶着機を用いて熱または超音波によって溶着してもよい。
【0028】
次に、測定装置200内部の構成について図面を用いて説明する。図1および図2に示すように、測定セル100を測定装置200に着脱する際の取付け部となる角柱形状の測定セル取付け部202が測定装置筐体201から突出して設けられている。この測定セル取付け部202は、軸Oに垂直な平面によって断面にした外形形状の断面が四角形形状を有し、軸Oの軸心方向に摺動可能な状態で摺動軸受部207aに嵌合されている。摺動軸受部207aは、断面が四角形形状であり、測定装置筐体201に固定されたガイドブロック207を貫通している。
【0029】
測定セル取付け部202の内部には、測定セル100の外側側面と嵌合する形状を有した測定セル嵌合部202aが設けられ、測定セル嵌合部202aの壁面に沿って測定セル100がO軸軸心方向に摺動可能となるように構成されている。また、測定セル嵌合部202aを測定セル100が摺動する際、測定セル100の突起部102の移動部分に対応して逃げ溝202bが設けられ、さらに、測定セル100を所定の位置に保持する係止部材223との当接を避けるための逃げ穴部202cが設けられている。
【0030】
また、測定セル100を測定セル取付け部202に挿入した時、測定セル100の容器101の上端面101aが当接する当接部202dに貫通穴部202eが設けられ、図2中において当接部202dの上部に凹部202fが設けられている。また、測定セル取付け部202の上端面には鍔部202gが設けられ、押圧ばね209が鍔部202gをガイドブロック207の上端面207bに押圧している。
【0031】
測定セル取付け部202の上部には、回転基板206が取り付けられている。そして、送りネジとしての雄ネジ215aが形成された駆動ネジ部215の一方の端部が測定装置筐体201に固着され、駆動ネジ部215の他方の端部において、雌ネジ213aが中心軸部に形成された駆動軸部213の一方の端部に螺合している。そして、回転基板206に固着された回転軸受部208に設けられた軸受部208aによって駆動軸部213を軸支する。
【0032】
さらに、図6には駆動軸部213と回転軸受部208の軸受部208aとの断面を示す。図6に示すように、駆動軸部213の外周部の一部に軸心O方向にキー溝部213bが形成されている。また、回転軸受部208の軸受部208aの一部にはキー溝部213bに嵌合するキー部となる突起部208bが形成されている。
【0033】
回転軸受部208は測定装置筐体201に固着された軸受ブロック216の軸受部216aおよび216bによって軸支されている。また、回転基板206が軸受ブロック216から抜け出さないように、軸受押えリング217を軸受ブロック216に固着し、軸受ブロック216と軸受押えリング217との間で回転基板206及び回転軸受部208が回動自在となるように遊嵌させて挟み込む。
【0034】
図2および図7に示すように、回転基板206には扇状の回動ギア部206aが一体に設けられ、扇型の先端部にはウオームホイールギア部206bが形成されている。そして、ウオームホイールギア部206bにはウオームギア218が噛み合っており、そのウオームギア218は回動用モータ219の回転軸に固着されている。回動用モータ219は取付板(図示せず)を介して軸受ブロック216あるいは軸受押えリング217あるいは測定装置筐体201に取り付けられている。したがって、回動用モータ219の回転によって、ウオームギア218が回転し、ウオームホイールギア部206bを介して回転基板206が回動し、それに固着された回転軸受部208が駆動軸部213とともに駆動ネジ部215回りを回動する。
【0035】
図2に示すように、駆動軸部213において駆動ネジ部215に螺合した側とは反対側の端部には駆動嵌合部110が固着されている。図4(a)および図4(b)に示すように、駆動嵌合部110は中実円筒形の形状を有する円筒部110aと円筒部110aの外周面の対向する位置にそれぞれ形成された2つの円筒状の突起部110bとからなる。円筒部110aは測定セル100に配設された駆動部結合部材111の駆動部嵌合穴部111aに嵌合する。また、駆動嵌合部110の突起部110bは駆動部結合部材111に設けられた突起部嵌合縦溝111bに嵌合するような形状に形成される。
【0036】
そして、図4(c)に示すように、駆動嵌合部110が駆動部結合部材111に嵌合した状態で、駆動嵌合部110が反時計方向に回動した時、駆動嵌合部110の突起部110bが駆動部結合部材111に設けられた突起部嵌合横溝111cに嵌合し、突起部嵌合横溝111cに入り込むような形状に形成される。なお、駆動部結合部材の駆動部嵌合穴部の内周部に突起部を設け、駆動嵌合部に突起部嵌合縦溝および突起部嵌合横溝を設けた構成としてもよい。また、駆動部結合部材に円筒部とその円筒部の外周面に突起部を設け、駆動嵌合部に駆動部嵌合穴部、突起部嵌合縦溝および突起部嵌合横溝を設けた構成としてもよい。
【0037】
次に、測定セル100を測定装置200に装着した時、測定セル100を所定の位置に保持するための測定セル保持機構の構成について説明する。
【0038】
図2に示すように、回動ピン211aを植設した回動ピン取付け部材211が測定装置筐体201に取り付けられ、一方の端部に押圧ピン210aを植設した回動レバー210が回動ピン211aにより回動自在に軸支されている。そして、一方の端部に長穴部223aが形成され、他方の端部に爪部223bを有する係止部材223がその長穴部223aにおいて回動レバー210の押圧ピン210aと嵌合されている。係止部材223は、押圧ピン210aの周りに回動自在に、かつ、押圧ピン210aと長穴部223aとの間で摺動可能なように回動レバー210と連結されている。また、係止部材223は測定装置筐体201に固着された支持ガイド部224に支えられており、その先端部の爪部223bの近傍においては、支持ガイド部224に摺動可能に挟み込まれて、係止部材223は支持ガイド部224に沿って直線的に摺動移動する。そして、回動レバー210は復帰ばね212によって中心軸O方向に押圧され、押圧ピン210aによって係止部材223も中心軸O方向に押圧されている。なお、測定装置筐体201に固着されたストッパ部201aによって復帰ばね212の押圧による回動レバー210の回動を制限している。
【0039】
また、測定装置筐体201には摺動可能に測定セル保持解除ボタン205の操作部205aが取付けられ、操作部205aが回動レバー210の他方の端部に当接している。測定セル保持解除ボタン205を操作、即ち押した時には、測定セル保持解除ボタン205の操作部205aが回動レバー210の他方の端部を押圧し、復帰ばね212のばね力に抗して回動レバー210を回動させ、係止部材223の爪部223bを側方に移動させる。即ち、測定セル保持解除ボタン205の操作により、測定セル取付け部202を挟んで両側にある係止部材223の爪部223bの間隔が広がるように構成されている。
【0040】
図8に示すように、測定装置筐体201内には、試料液の被検物質量を測定するための光学測定部222が配設されている。光学測定部222は、測定セル取付け部202に取り付けられた測定セル100の試料液収容室103に入射する入射光を出射する光源220と、試料液収容室103内を透過した後に試料液収容室103から出射した出射光の量を検知して、その光量に応じた電気信号を出力する光検知器221とからなり、測定セル100(図示せず)を挟むように配置される。光源220としては、例えば650nmの波長を有する光を出射する半導体レーザを用いる。半導体レーザを用いる替わりに、同じ波長を有するLEDを用いてもよい。また、光検知器221として、例えばフォトダイオードを用いる。或いは、電荷結合型素子(CCD)、フォトマルチメータ等を用いても良い。なお、本実施の形態においては、免疫比濁法による測定を適用し、650nmの照射および受光波長を選択したが、測定法や測定対象に応じて適宜適切な波長を選択してもよい。ここで光検知器221は、本発明の受光器に相当する。
【0041】
さらに、測定装置200の正面外側には測定結果を表示するための表示部204および測定を開始するための測定開始ボタン203が測定装置筐体201に設けられている。また、測定装置200の動作と試料測定を制御するための測定制御部500を内蔵している。
【0042】
次に、上述のように構成された測定セル100および測定装置200を備える測定システムの動作および測定方法について説明する。
【0043】
まず、図2に示すように、使用者が測定セル100を測定装置筐体201における測定セル取付け部202の測定セル装着口202hに挿入し、測定セル100における容器101の上端面101aを測定セル取付部202の当接部202dに当接させる。さらに、使用者が押圧ばね209の押圧力に抗して矢印D方向に測定セル100を挿入すると、測定セル100によって測定セル取付け部202が押圧される。したがって、測定セル取付け部202は鍔部202gによって押圧ばね209を圧縮しながらガイドブロック207の摺動軸受部207aに沿って移動し、測定セル100の突起部102が測定装置200の係止部材223の爪部223bに当接する。
【0044】
さらに、測定セル100の挿入を継続すると、突起部102によって係止部材223が押圧され、突起部102の傾斜に沿って係止部材223は支持ガイド部224に支持されながら、中心軸Oから離れる方向に直線移動し、その係止部材223に連結された回動レバー210は復帰ばね212のばね力に抗して回動する。さらに、測定セル100を挿入し続けると、測定セル100の突起部102が係止部材223の爪部223bの位置を越え、係止部材223は復帰ばね212のばね力により元の位置に復帰する。
【0045】
さらに、その位置よりも少し挿入を続けると、測定セル100に当接して押圧された測定セル取付け部202の鍔部202gが軸受ブロック216の下端面に当接する。この時、使用者が測定セル100の挿入動作を停止し、測定セル100から手を離すと、押圧ばね209の押圧力により測定セル取付け部202は図2中下方に移動するが、係止部材223の爪部223bによって、測定セル100はそれ以上の移動が阻止される。したがって、測定セル取付け部202の下方への移動も停止し、図11に示すように、測定セル100は所定の位置に係止されることになり、測定セル100は高い精度で位置決めされる。
【0046】
なお、以上の説明においては、測定セル100に突起部102を設け、係止部材223によって測定セル100を所定位置に係止する例を記述したが、図10に示すように、測定セル100の容器101に楔型の凹部225を形成し、その凹部225に係止部材223が入り込むことによって、測定セル100を所定位置に係止するようにしてもよい。
【0047】
次に、図9および図11を用いて、測定セル100内に試料液を採取する方法について説明する。なお、図9は測定制御部のブロック図である。図11には測定装置筐体201の所定の位置に測定セル100を挿入した状態を示し、さらに便器内に設けられた受尿容器或いは紙コップ等の運搬可能なコップ302内に採取された試料液である尿301中に測定セル100の一部を浸漬している状態を示す。
【0048】
使用者が測定セル100の試料液導入口105をコップ302内の尿301に浸漬した後、使用者が測定開始ボタン203を押して測定を開始する。図9に示すように、測定開始ボタン203が押され、測定開始の信号が測定開始ボタン203から出力される。測定開始ボタン203からの出力信号が測定制御部500のCPU501に入力された後、中央演算処理装置(Central Processing Unit,以下、CPUと略称する)501から回動用モータ219に信号が出力されることにより、回動用モータ219が回転する。
【0049】
CPU501からの指示を受け、回動用モータ219は回転基板206を所定回転数だけ回転させる。回転基板206の回転に伴い、駆動軸部213に固着された駆動嵌合部110が測定セル100の蓋部113に向かって回転移動する。そして、駆動嵌合部110の円筒部110aおよび突起部110bが蓋部113における駆動部結合部材111に設けられた駆動部嵌合穴部111aおよび突起部嵌合縦溝111bに嵌合した時、回動用モータ219の回転を停止させる。
【0050】
次に、CPU501は回動用モータ219にさらに所定回転数だけ回転するように指示する。回動用モータ219に固定されたウオームギア218の回転に伴い、ウオームホイールギア部206bを介して回転基板206が軸受ブロック216の軸受部216aおよび216bの周りに所定角度だけ回動する。そして、駆動軸部213に取り付けられた駆動嵌合部110が回転軸受部208とともに図4(c)において反時計方向に回動し、駆動嵌合部110の突起部110bが駆動部結合部材111の突起部嵌合横溝111cに入り込む。それと同時に攪拌子保持部118内にある切り欠き部116へ攪拌子突起部115が入り込み、バネ117の力により攪拌子支持部114を押すことで攪拌子104と攪拌子保持部118の回転方向を固定する。
【0051】
突起部110bが突起部嵌合横溝111cに入り込んだ状態になった時、CPU501は回動用モータ219の回転を逆回転即ち駆動嵌合部110を駆動ネジ部215側に向かうように指示を出す。CPU501からの指示を受け、回動用モータ219は、駆動嵌合部110とともに蓋部113を測定セル100の試料液導入口105から遠ざかる方向に回転移動させる。蓋部113が回転移動することによって、測定セル100内の試料液導入口105から蓋部113までの空間が負圧となり、コップ302内の尿301が試料液導入口105を通して測定セル100の試料液収容室103内に吸入及び採取される。また、蓋部113の回転移動と共に攪拌子保持部118に固定された攪拌子104の回転により、試料液収容室103内に収容された尿301と試薬106とが攪拌及び混合される。
【0052】
図12に示すように、尿301が試料液収容室103内あるいは吸入量によっては試料液収容室103と蓋部ガイド部107の一部に所定量吸入された時、CPU501は回動用モータ219に回転停止の指示を出し、駆動嵌合部110に連結された蓋部113および攪拌子104の移動を停止する。尿301が測定セル100内に吸入されると、試薬106である抗ヒトアルブミン抗体が尿301中に溶解し、抗ヒトアルブミン抗体と尿301中のヒトアルブミンとが反応を起こす。その後、所定時間(約3分程度)放置し、反応を充分に進行させる。
【0053】
次に、図13に示すように、測定セル100中の尿301と抗ヒトアルブミン抗体とを所定時間反応させた後、CPU501は光学測定部222に動作指示を出力し、光学測定部222の光源220から光を出射するよう指示を出す。光源220から出射された光は測定セル100の透明な容器101を透過し、試薬106と共に攪拌された試料液即ち尿に照射される。試薬106と共に攪拌された試料液を透過した光を光検知器221で受光し、光検知器221は受光した光の量に応じた電気信号を出力する。なお、上述の説明においては、測定セル100の容器101全体を透明な材料にて形成するように記述したが、これに限ることはなく、図示しないが、容器101において光源220からの出射光の透過部分および試料液を透過した光の透過部分に対応する部分にのみ透明な材料で形成し、他の部分は不透明な材料で形成してもよい。
【0054】
このようにして得られた電気信号を測定制御部500のCPU501に出力する。測定制御部500におけるCPU501のメモリ502には、試料液中に存在する被検物質の量と光検出器から出力される電気信号との関係を示す検量データが予め記憶されている。CPU502はメモリ502に記憶された検量データを読み出し、この検量データを参照することにより、CPU501は光検出器221からの電気信号を試料液中の被検物質の量に換算し、その結果を表示部204に表示する。また、測定データは必要に応じてCPU501を通して半導体メモリなどの外部記憶媒体503に保存される。ここでCPU501は、本発明の解析部に相当する。
【0055】
測定が終了すると、CPU501は回動用モータ219に指示を出し、蓋部113に連結された駆動嵌合部110が図12中下方に移動するように、回動用モータ219を所定回転数だけ回転させる。蓋部113が下方に移動することにより、測定セル100内の試料液である尿301は測定セル100の試料液導入口105から便器内や紙コップ等の容器内に排出される。
【0056】
測定セル100内の尿301が排出された後、CPU501は回動用モータ219の回転を逆回転するように指示する。CPU501からの指示を受け、回動用モータ219は、駆動嵌合部110とともに蓋部113を測定セル100の試料液導入口105から遠ざかる方向に回転移動させる。駆動部結合部材111の上端部が測定セル取付け部202の当接部202dと接触する位置に到達した後も、CPU501は回動用モータ219の回転を逆回転するように指示する。この指令により、回動用モータ219は駆動嵌合部110を図4(c)において時計方向に回動させ、駆動嵌合部110の突起部110bを蓋部113の突起部嵌合横溝111cから脱出させる。
【0057】
その後、CPU501は、駆動嵌合部110の突起部110bが蓋部113の突起部嵌合縦溝111bから脱出し、さらに、駆動嵌合部110が蓋部113から離れる方向に移動するように、回動用モータ219に逆回転の指示をする。CPU501の指示により回動用モータ219は所定回転数だけ逆回転する。
【0058】
次に、使用者が測定装置筐体201の両側に設けられた測定セル保持解除ボタン205を指で挟み込むようにして押すと、測定セル保持解除ボタン205の操作部205aに押されて回動レバー210が回動する。そして、回動レバー210に連結された係止部材223はその爪部223bが測定セル100の突起部102から外れる方向に直線移動し、測定セル100の係止状態を解除する。測定セル100の突起部102から係止部材223の爪部223bが外れると、測定装置200の押圧ばね209の付勢力により、測定セル取付け部202が測定装置201の外側方向に移動すると同時に、測定セル100は測定装置200から取外される。
【0059】
以上のように本発明によれば、測定セル100の容器101内に蓋部113が設けられているため、試料液採取時に測定装置200内が試料液により汚染されることを防止することができる。また、回動用モータ219の回転に伴う駆動軸部213の動作により測定セル100内への試料液の導入及び試料液と試薬106との混合を同時に行うことができるため、装置構成が簡易となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明による測定システムは、測定セルを用いた光学測定による試料液の分析、特に生体試料液の分析に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態における測定システムを構成する測定装置の外観を示す斜視図
【図2】同測定装置の構成を示す断面図
【図3】同測定システムを構成する測定セルの構成を示す図
【図4】同測定装置に設けられた駆動嵌合部の構成を示す図
【図5】図2におけるD方向から見た測定セル取付け部の平面図
【図6】図2のE−E線断面図
【図7】同測定装置の測定装置筐体の上部を除いた平面図
【図8】同測定装置の図2の断面と直角な面での断面図
【図9】同測定装置における測定制御部のブロック図
【図10】同測定セルを所定位置に係止する他の一例を示す断面図
【図11】測定開始時における同測定装置の構成を示す断面図
【図12】所定量の試料液が吸入された状態での測定装置の構成を示す断面図
【図13】図12と同じ状態における図12の断面と直角な面での測定装置の断面図
【符号の説明】
【0062】
100 測定セル
101 容器
101a,207b 上端面
102,110b,208b 突起部
103 試料液収容室
104 攪拌子
105 試料液導入口
106 試薬
107 蓋部ガイド部
110 駆動嵌合部
110a 円筒部
111 駆動部結合部材
111a 駆動部嵌合穴部
111b 突起部嵌合縦溝
111c 突起部嵌合横溝
112 パッキン
113 蓋部
114 攪拌子支持部
115 攪拌子突起部
116 切り欠き部
117 バネ
118 攪拌子保持部
200 測定装置
201 測定装置筐体
201a ストッパ部
202 測定セル取付け部
202a 測定セル嵌合部
202b 逃げ溝
202c 逃げ穴部
202d 当接部
202e 貫通穴部
202f 凹部
202g 鍔部
202h 測定セル装着口
203 測定開始ボタン
204 表示部
205 測定セル保持解除ボタン
205a 操作部
206 回転基板
206a 回動ギア部
206b ウオームホイールギア部
207 ガイドブロック
207a 摺動軸受部
208 回転軸受部
208a,216a,216b 軸受部
209 押圧ばね
210 回動レバー
210a 押圧ピン
211 回動ピン取付け部材
211a 回動ピン
212 復帰ばね
213 駆動軸部
213a 雌ネジ
213b キー溝部
215 駆動ネジ部
215a 雄ネジ
216 軸受ブロック
217 軸受押えリング
218 ウオームギア
219 回動用モータ
220 光源
221 光検知器
222 光学測定部
223 係止部材
223a 長穴部
223b 爪部
224 支持ガイド部
225 凹部
301 尿
302 コップ
500 測定制御部
501 CPU
502 メモリ
503 外部記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定セル及び測定装置を備えた測定システムであって、
前記測定セルは、
試料液を収容するための試料液収容室、
前記試料液収容室と連通する開口部、及び
前記試料液収容室と連通し、前記開口部とは異なる位置に設けられた試料液導入口を有する測定セル本体と、
前記測定セル本体の前記開口部を塞ぐ位置に設けられ、回転しながら前記試料液収容室の内壁に沿って摺動可能な蓋部と、
前記蓋部と連結しており、前記試料液収容室内に設けられ、前記蓋部とともに回転可能な攪拌子と、
前記試料液収容室内に保持された試薬とを備え、
前記測定装置は、
前記測定セルが取付けられる測定セル取付け部と、
前記測定セル取付け部に取付けられた前記測定セルの前記蓋部と接合して、前記蓋部を回転しながら前記試料液収容室の内壁に沿って摺動させる蓋部駆動部と、
前記測定セル本体に入射する入射光を出射する光源と、
前記入射光に起因して前記測定セル本体から出射した出射光を受光する受光器と、
前記受光器によって受光された前記出射光を解析する解析部とを備える測定システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−8466(P2009−8466A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168444(P2007−168444)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】