説明

測定データ同期システムおよび測定データ同期方法

【課題】特別なハードウェア及び特別な仕組みがなくても測定データの同期処理ができる測定データ同期システムおよび方法を提供する。
【解決手段】本発明は、複数の測定機器からの測定データに対し同期処理を行う測定データ同期システムを提供し、信号線と、測定データと、測定時刻と、測定機器IDとからなる組データを、信号線に出力する複数の測定機器と、組データを前記信号線から取得し、組データにおける測定機器IDに基づき、予め格納された当該測定機器IDに対応する測定時刻校正値を取得してから、当該測定時刻校正値により組データにおける測定時刻を校正するデータ処理装置とを備える。本発明は、各測定機器への同期信号の提供が不要のため、これ用の特別なハードウェアは不要である。また、測定機器が基準時刻を記録して再びデータ処理装置に送り返す必要がないため、これ用の特別な仕組みが不要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定器やセンサ等の複数の測定機器(以下ユニットと称する)と、コンピュータ等のデータ処理装置とが接続される測定データ同期システムおよび測定データ同期方法に関し、詳しくは、測定機器の数に制限されずに、各測定機器間における測定データの同期を確保できる測定データ同期システムおよび測定データ同期方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被測定対象の様々な物理量、例えば温度や電圧等を複数のユニットを用いて測定する場合や、被測定対象の物理量を複数箇所で測定する場合等は、複数のユニット間における測定結果の同期を確保する必要がある。測定データ同期システムは、複数のユニットのそれぞれで測定される測定データの同期を確保することができるものである。データ同期には、大きく分けてハードウェア側からとソフトウェア側からの2つの方法がある。
【0003】
従来のハードウェア技術では、複数ユニット間のデータの同期を行う場合は、データの同期を確保するための同期信号を各ユニットに供給し、その同期信号に従ってデータの収集を行うことでデータの同期を確保していた。当該方法では、同期信号を各ユニットに供給する必要があるため、ハードウェアに特別な仕掛けが必要であった。しかし、特別なハードウェアの仕掛けを追加すると単にコストアップ要因となるだけでなく、システム全体が複雑になり、開発工数も増大する。また、ハードウェアの制限(接続するユニットの数、同期信号線の長さなど)も発生するため、さらなる高速化、多チャンネル化を実現することは困難であった。
【0004】
ハードウェアによってデータの同期を行う方法に存在する上記課題を解消するために、下記の特許文献1ではソフトウェアによってデータの同期を行う方法が提示されている。当該方法において、図7に示すように、データ処理装置300が基準時刻を信号線100に出力し、測定機器であるユニット401〜40nが当該信号線から当該基準時刻を取得し、少なくとも当該基準時刻と被測定対象を測定した測定データとからなる組データを信号線100に出力し、データ処理装置300がユニット401〜40nにより出力された組データを信号線から取得し、当該組データにおける基準時刻によってユニット間のデータ同期を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−242583
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1のデータ同期方法では、各ユニットに同期信号を供給するための特別なハードウェアの仕掛けは必要なかったものの、ユニットはデータ処理装置の基準時刻を記録して再びデータ処理装置に送り返さなければならないので、当該機能を実現できる仕組みがユニットのハードウェアに必要であった。つまり、この仕組みがあるユニットは同期処理することができるが、この仕組みのないそのほかのユニットでは同期処理が不可能である。
【0007】
本発明は、上記特許文献1に存在する課題に鑑みてなされたものであり、特別なハードウェア仕掛けおよび特別な仕組みがなくても測定データの同期処理ができる測定データ同期システムおよび測定データ同期方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の測定機器からの測定データに対し同期処理を行う測定データ同期システムを提供しており、それは、信号線と、少なくとも被測定対象を測定した測定データと、前記測定を行う測定時刻と、当該測定機器を標記するための測定機器IDとからなる組データを、前記信号線に出力する複数の測定機器と、前記複数の測定機器からの前記組データを前記信号線から取得し、前記組データにおける前記測定機器IDに基づき、予め格納された当該測定機器IDに対応する測定時刻校正値を取得してから、当該測定時刻校正値により前記組データにおける前記測定時刻を校正するデータ処理装置とを備えることを特徴とする。
【0009】
当該測定データ同期システムのデータ処理装置は、校正後の測定時刻に基づいて前記組データにおける測定データに対しリサンプリング処理を行うことができる。
【0010】
当該測定データ同期システムのデータ処理装置は、前記複数の測定機器から信号線を介して入力される前記組データを格納する組データ格納部と、測定機器IDと当該測定機器IDに対応する測定時刻校正値とを関連付けて格納する校正値格納部と、前記組データ格納部から前記組データを取得し、前記組データにおける前記測定機器IDに基づき、前記校正値格納部から当該測定機器IDに対応する測定時刻校正値を取得してから、当該測定時刻校正値により前記組データにおける前記測定時刻を補正し、前記リサンプリング処理を行う同期演算部とを備えることができる。
【0011】
当該測定データ同期システムの同期演算部は、前記組データ格納部から前記組データを取得し、前記組データにおける前記測定機器IDに基づき、前記校正値格納部から当該測定機器IDに対応する測定時刻校正値を取得してから、当該測定時刻校正値により前記組データにおける前記測定時刻を補正する測定時刻校正部と、前記測定時刻校正部により時刻補正が行われた組データを格納する時刻校正後データ格納部と、時刻校正後データ格納部に格納された組データに対しリサンプリング処理を行うリサンプリング処理部とを備え、前記測定データ同期システムは、同期演算部により同期処理が行われた組データを格納する同期後データ格納部をさらに備えることができる。
【0012】
当該測定データ同期システムの測定時刻校正部は、校正後の測定時刻=測定時刻/測定時刻校正値という式に基づいて測定時刻を校正することができる。
【0013】
以上の測定データ同期システムによれば、各測定機器に同期信号を提供する必要がないため、これに用いられる特別なハードウェア仕掛けは必要としない。また、測定機器が基準時刻を記録して再びデータ処理装置に送り返す必要がないため、これに用いられる特別な仕組みを測定機器のハードウェアに設ける必要はない。
【0014】
また、当該測定データ同期システムによれば、測定機器IDにより各測定機器を識別し、それぞれ同期処理を行うため、ユーザの要求に合致した同期処理を行うことができる。
【0015】
本発明の測定データ同期システムのデータ処理装置は、前記測定時刻を校正するための基準時刻を提供するリアルタイムクロック部と、所定の更新周期で定期的に前記組データ格納部から前記組データを取得し、前記リアルタイムクロック部から前記基準時刻を取得してから、当該組データにおける測定時刻および前記基準時刻により前記測定時刻校正値を計算し、計算した前記測定時刻校正値を対応する測定機器IDと関連付けて前記補正値格納部に格納する校正値演算部とをさらに備えることができる。当該リアルタイムクロック部は、前記データ処理装置自体のクロック時刻を前記基準時刻として取得することもでき、外部クロックから前記基準時刻を取得することもできる。
【0016】
当該測定データ同期システムの校正値演算部は、測定時刻校正値=(tUNIT1-tUNIT0)/(tRTC1-tRTC0)という式に基づいて測定時刻校正値を計算することができる。
tRTC0は前記更新周期を開始するときの基準時刻であり、tUNIT0は前記更新周期を開始するときの前記組データにおける測定時刻であり、tRTC1は前記更新周期に達するときの基準時刻であり、tUNIT1は前記更新周期に達するときの前記組データにおける測定時刻である。
【0017】
当該測定データ同期システムの校正値演算部は、測定時刻校正値=(tUNIT1-tUNIT00)/(tRTC1-tRTC00)という式に基づいて測定時刻校正値を計算することもできる。
tRTC00は同期を開始するときの基準時刻であり、tUNIT00は同期を開始するときの前記組データにおける測定時刻であり、tRTC1は前記更新周期に達するときの基準時刻であり、tUNIT1は前記更新周期に達するときの前記組データにおける測定時刻である。
【0018】
以上の測定データ同期システムによれば、予め校正値格納部に格納された測定時刻校正値により測定時刻校正処理を行うため、測定開始直後から同期処理を行うことができる。また、所定の更新周期で当該測定時刻校正値を更新するため、当該更新周期内における測定機器のクロックの変動状況を測定時刻校正値に反映して、同期結果の誤差を減らすことができる。
【0019】
本発明は、複数の測定機器からの測定データに対し同期処理を行う測定データ同期方法も提供しており、複数の測定機器が、少なくとも被測定対象を測定した測定データと、前記測定を行う測定時刻と、当該測定機器を標記するための測定機器IDとからなる組データを、信号線に出力し、データ処理装置が、前記複数の測定機器からの前記組データを前記信号線から取得し、前記組データにおける前記測定機器IDに基づき、予め格納された当該測定機器IDに対応する測定時刻校正値を取得してから、当該測定時刻校正値により前記組データにおける前記測定時刻を校正することを特徴とする。
【0020】
当該測定データ同期方法では、前記データ処理装置は、校正後の測定時刻に基づいて前記組データにおける測定データに対しリサンプリング処理を行い、リサンプリング処理された組データを格納することができる。
【0021】
当該測定データ同期方法では、校正後の測定時刻=測定時刻/測定時刻校正値という式に基づいて測定時刻を校正することができる。
【0022】
当該測定データ同期システムの測定時刻校正部は、校正後の測定時刻=測定時刻/測定時刻校正値という式に基づいて測定時刻を校正することができる。
【0023】
以上の測定データ同期方法によれば、各測定機器に同期信号を提供する必要がないため、これに用いられる特別なハードウェア仕掛けは必要としない。また、測定機器が基準時刻を記録して再びデータ処理装置に送り返す必要がないため、これに用いられる特別な仕組みを測定機器のハードウェアに設ける必要はない。
【0024】
また、当該測定データ同期システムによれば、測定機器IDにより各測定機器を識別し、それぞれ同期処理を行うため、ユーザの要求に合致した同期処理を行うことができる。
【0025】
本発明の測定データ同期方法では、前記データ処理装置は、所定の更新周期で定期的に基準時刻および前記組データにおける測定時刻により前記測定時刻校正値を計算し、計算した前記測定時刻校正値を対応する測定機器IDと関連付けて格納することができる。
【0026】
当該測定データ同期方法では、前記基準時刻は、前記データ処理装置自体のクロックによって生成することもでき、外部クロックによって生成することもできる。
【0027】
当該測定データ同期方法では、測定時刻校正値=(tUNIT1-tUNIT0)/(tRTC1-tRTC0)という式に基づいて測定時刻校正値を計算することができる。
tRTC0は前記更新周期を開始するときの基準時刻であり、tUNIT0は前記更新周期を開始するときの前記組データにおける測定時刻であり、tRTC1は前記更新周期に達するときの基準時刻であり、tUNIT1は前記更新周期に達するときの前記組データにおける測定時刻である。
【0028】
当該測定データ同期方法では、測定時刻校正値=(tUNIT1-tUNIT00)/(tRTC1-tRTC00)という式に基づいて測定時刻校正値を計算することができる。
tRTC00は同期を開始するときの基準時刻であり、tUNIT00は同期を開始するときの前記組データにおける測定時刻であり、tRTC1は前記更新周期に達するときの基準時刻であり、tUNIT1は前記更新周期に達するときの前記組データにおける測定時刻である。
【発明の効果】
【0029】
以上の測定データ同期方法によれば、予め格納された測定時刻校正値により測定時刻校正処理を行うため、測定開始直後から同期処理が可能となる。また、所定の更新周期で当該測定時刻校正値を更新するため、当該更新周期内における測定機器のクロックの変動状況を測定時刻校正値に反映して、同期結果の誤差を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の全体構成を示す図である。
【図2】データ処理装置30の具体的な構成を示す図である。
【図3】同期演算部35の具体的な構成を示す図である。
【図4】測定データ同期処理のフローチャートを示す図である。
【図5】時刻校正処理(S10)の具体的な処理フローを示す図である。
【図6】校正値更新処理のフローを示す図である。
【図7】従来の、ソフトウェアによってデータの同期を行うシステム全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下図面を用いて本発明の具体的な実施の形態を詳しく説明する。
【0032】
図1は、本発明の全体構成を示す図である。データ処理装置30は、例えば、コンピュータ等のデータ処理能力を有する装置であり、汎用信号線10に接続される。測定部40は、複数の測定器やセンサ等である測定機器(以下ユニットと称する)41〜4n(ただし、nは自然数)からなり、各ユニット41〜4nは、汎用信号線10に接続され、データ処理装置30と信号の授受が行われる。また、データ処理装置30と各ユニット41〜4nは、汎用通信回路10Aを有し、この汎用通信回路10Aでデータの入出力を行う。
【0033】
図2は、データ処理装置30の具体的な構成を示す図である。データ処理装置30は、汎用通信回路10Aで入力されるデータである、ユニット41〜4nを識別するためのユニットID、ユニット41〜4nの測定データおよび当該測定データの時刻(以下測定時刻と称する)を少なくとも含むユニット41〜4nのデータを格納する、つまり、当該ユニットID、測定データおよび測定時刻に対応関連する組データを格納する組データ格納部31と、データ処理装置30のクロックの現在時刻を時刻校正処理の基準として取得するRTC(Real Time Clock、リアルタイムクロック)33と、所定の更新周期で定期的に組データ格納部31から組データを取得し、RTCからデータ処理装置30の時刻を取得してから、組データにおける測定時刻およびRTCの時刻により時刻校正処理に用いられる校正値を計算する校正値演算部32と、校正値演算部32により計算された校正値とユニットIDとからなる組データを対応付けて格納する校正値格納部34と、組データ格納部31から組データを取得し、組データにおけるユニットIDに基づき、校正値格納部34から当該ユニットに対応する校正値を取得し、当該校正値により組データにおける測定時刻を補正してから、測定時刻が校正された組データに対しリサンプリング処理を行うことで、組データに対し同期処理を行う同期演算部35と、同期演算部35により同期処理がなされた後の組データを格納する同期後データ格納部36とを有する。
【0034】
図3は、同期演算部35の具体的な構成を示す図である。同期演算部35は、校正値格納部34からの校正値により、組データ格納部31からの組データにおける測定時刻を校正する測定時刻校正部351と、測定時刻校正部351により時刻校正された後の組データを格納する時刻校正後データ格納部352と、時刻校正後データ格納部352に格納される組データに対しリサンプリング処理を行ってから、同期後データ格納部36に出力するリサンプリング処理部353とを有する。
【0035】
以下本発明の処理フローについて詳しく説明する。
【0036】
図4は、本発明の測定データ同期処理のフローチャートを示す図である。具体的に、同期処理を開始すると、ステップS10で組データに対し時刻校正処理を行い、ステップS20で時刻校正処理がなされた組データに対しリサンプリング処理を行い、ステップS30でリサンプリング処理がなされた後のデータ(即ち、同期処理後の組データ)を格納し、ステップS40でその後の組データに対し引き続き同期処理を行うかどうかを判断する。続ける(「Y」)場合は、ステップS10に戻り、続けない(「N」)場合は、同期処理を終了する。同期処理後の組データは、同期後データ格納部36に格納され、後続処理や表示に用いられる。リサンプリング処理には、従来の線形内挿(Linear-Interpolation)、ニアレストポイント(Nearest-Point)、積分平均(Integral-Average)、最小最大平均(Min-Max-Average)等、様々な計算方法を用いることができ、ここでは詳しい説明を省略する。以下本発明の要点となる時刻校正処理に絞って詳しく説明する。
【0037】
図5は、時刻校正処理(S10)の具体的な処理フローを示す図である。時刻校正処理を開始すると、ステップS101において、ユニット41〜4nがそれぞれ、少なくとも被測定対象を測定した測定データと、測定を行う測定時刻と、当該ユニットを標記するためのユニットIDとからなる組データを、データ線10に出力し、データ処理装置30が、ユニット41〜4nからの組データをデータ線10から取得し、組データ格納部31に格納し、同期演算部35の測定時刻校正部351が組データ格納部31から順に当該組データに読み込まれる。
【0038】
ステップS102において、測定時刻校正部351は校正値格納部から時刻校正するための校正値を取得する。具体的に、測定時刻校正部351は、読み込まれた組データにおけるユニットIDに基づき、校正値格納部34に格納された当該ユニットIDに対応する校正値を検索する。初めて当該ユニットIDに対応するユニットに対し同期処理を行う場合、校正値格納部34には当該ユニットIDに対応する校正値がない。このとき、校正値を1として設定する。即ち、最初は当該ユニットの測定時刻に誤差がないと認められ、校正する必要はない。
【0039】
組データおよび対応する校正値を取得した後、ステップS103において、測定時刻校正部351により組データにおける測定時刻が校正される。具体的に、次の式(1)で計算する。
校正後の測定時刻=測定時刻/校正値 …(1)
これで校正後の測定時刻が得られる。
【0040】
ステップS104において、測定時刻が校正された組データを時刻校正後データ格納部352に格納する。その後、時刻校正処理を終了する。
【0041】
上記ステップS102において、校正値格納部34に格納される、時刻校正処理するための校正値を取得する。当該校正値に対しては、校正値演算部32が所定の更新周期で定期的に更新を行う。以下、当該校正値の更新処理について詳しく説明する。
【0042】
図6は、校正値更新処理のフローを示す図である。同期処理の開始と同時に、当該校正値更新処理を開始する。まず、ステップS510において、校正値演算部32はRTC33からの時刻tRTC0および組データ格納部31からの組データにおける測定時刻tUNIT0を取得する。それから、ステップS520において所定の更新周期に達するか否かを判断する。当該更新周期はユーザによって予め設定されることが可能で、例えば6時間(即ち、同期処理開始から6時間毎に校正値更新処理を行う)として設定することができる。
【0043】
ステップS520において所定の更新周期に達していない(「N」)と判断する場合、ステップS520の判断を繰り返す。ステップS520において所定の更新周期に達する(「Y」)と判断する場合、ステップS530に進む。ステップS530において、現在のRTCの時刻tRTC1および組データにおける測定時刻tUNIT1を再び取得する。それから、ステップS540において、取得された時刻情報tRTC0、tUNIT0、tRTC1、tUNIT1により、次の式(2)で校正値を計算する。
校正値=(tUNIT1-tUNIT0)/(tRTC1-tRTC0) …(2)
即ち、校正値=ユニットの経過時間/RTCの経過時間。
【0044】
新たな校正値が計算された後、ステップS550において、当該新たな校正値とそれに対応するユニットIDとからなる組データでもともと校正値格納部34に格納されてあったデータを更新する。それから、ステップS560において、次回の校正値更新処理に使用されるよう、tRTC1の値をtRTC0に付与し、tUNIT1の値をtUNIT0に付与する。即ち、次回の校正値更新処理では、前回取得されたRTC時刻および測定時刻を基準に経過時間を計算する。
【0045】
以上、更新周期を開始する時刻(基準時刻および測定時刻)および更新周期に達する時刻(基準時刻および測定時刻)によって校正値を計算する方法を例示しているが、本発明の校正値計算方法はこれに限られるものではない。例えば、同期を開始する時刻(基準時刻および測定時刻)および更新周期に達する時刻(基準時刻および測定時刻)によって校正値を計算することができる。即ち、ステップS510で取得された同期開始時のRTC33の基準時刻がtRTC00であり、組データにおける測定時刻がtUNIT00である場合、ステップS540では、校正値=(tUNIT1- tUNIT00)/(tRTC1- tRTC00)となる。校正値を計算する際は常に同期開始時の時刻tRTC00およびtUNIT00が使用されることから、時刻に値を新たに付与するステップS560は必要としない。
【0046】
本発明への理解を促すために、本発明の処理フローについて例を挙げて説明する。なお、ユニット41〜4nのいずれのユニットの組データに施す処理も同一であるため、ユニット41だけを例にとって説明する。
【0047】
例えば、測定データ同期システムが時刻10:00:00から同期処理を開始するとき、RTC33の時刻tRTC0は10:00:00である。データ処理装置30は、このときユニット41から汎用信号線10に供給される組データを汎用通信回路10Aを介して組データ格納部31に格納し、当該組データにおける測定時刻tUNIT0は9:58:00と仮定される。同期演算部35は、当該組データにおけるユニットID(ユニット41のID)に基づき、当該ユニットIDに対応する校正値が校正値格納部34に格納されているかどうかを検索する。対応する校正値がある場合は、当該校正値を読み込み、対応する校正値がない場合は、校正値に1の値を付与する。その後、同期演算部35は当該校正値を利用してユニット41の組データに対し時刻校正を行う。
【0048】
同期処理を開始する時刻10:00:00に、校正値更新処理も開始する。なお、処理開始から未だ間もなく、未だ所定の更新周期(例えば6時間)に達していないので、このときは校正値の更新を行わない。測定データ同期システムが時刻16:00:00まで動作するとき、所定の更新周期に達する。このとき、RTC33の時刻tRTC1は16:00:00である。このときのユニット41の組データにおける測定時刻tUNIT1を15:58:01とすると、校正値=(tUNIT1- tUNIT0)/(tRTC1- tRTC0)=6時間1秒/6時間=1+5×10-5である。その後の同期処理において、同期演算部35は当該更新後の校正値を使用して校正を行う。
【0049】
以上の測定データ同期システムによれば、各ユニット(測定機器)に同期信号を提供する必要がないため、これに用いられる特別なハードウェア仕掛けは必要としない。また、ユニットが基準時刻を記録して再びデータ処理装置に送り返す必要がないため、これに用いられる特別な仕組みをユニットのハードウェアに設ける必要はない。
【0050】
また、当該測定データ同期システムによれば、ユニットIDにより各ユニットを識別し、それぞれ同期処理を行うため、ユーザの要求に合致した同期処理を行うことができる。
【0051】
また、以上の測定データ同期システムによれば、予め校正値格納部に格納された測定時刻校正値により測定時刻校正処理を行うため、測定開始直後から同期処理を行うことができる。また、所定の更新周期で当該測定時刻校正値を更新するため、当該更新周期内におけるユニットのクロックの変動状況を測定時刻校正値に反映して、同期結果の誤差を減らすことができる。
【0052】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明は以上の実施の形態に限られるものではない。本発明の主旨から離れない限り、種々の変形が可能である。例えば、以上の説明において、RTC33はデータ処理装置30自体のクロックの時刻を基準時刻として取得しているが、外部クロックから基準時刻を取得してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 汎用信号線
10A 汎用通信回路
31 組データ格納部
32 校正値演算部
33 RTC(Real Time Clock、リアルタイムクロック)
34 校正値格納部
35 同期演算部
36 同期後データ格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定機器からの測定データに対し同期処理を行う測定データ同期システムにおいて、
信号線と、
少なくとも被測定対象を測定した測定データと、前記測定を行う測定時刻と、当該測定機器を標記するための測定機器IDとからなる組データを、前記信号線に出力する複数の測定機器と、
前記複数の測定機器からの前記組データを前記信号線から取得し、前記組データにおける前記測定機器IDに基づき、予め格納された当該測定機器IDに対応する測定時刻校正値を取得してから、当該測定時刻校正値により前記組データにおける前記測定時刻を校正するデータ処理装置とを備えることを特徴とする測定データ同期システム。
【請求項2】
前記データ処理装置は、校正後の測定時刻に基づいて前記組データにおける測定データに対しリサンプリング処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の測定データ同期システム。
【請求項3】
前記データ処理装置は、
前記複数の測定機器から信号線を介して入力される前記組データを格納する組データ格納部と、
測定機器IDと当該測定機器IDに対応する測定時刻校正値とを関連付けて格納する校正値格納部と、
前記組データ格納部から前記組データを取得し、前記組データにおける前記測定機器IDに基づき、前記校正値格納部から当該測定機器IDに対応する測定時刻校正値を取得してから、当該測定時刻校正値により前記組データにおける前記測定時刻を補正し、前記リサンプリング処理を行う同期演算部とを備えることを特徴とする請求項2に記載の測定データ同期システム。
【請求項4】
前記同期演算部は、
前記組データ格納部から前記組データを取得し、前記組データにおける前記測定機器IDに基づき、前記校正値格納部から当該測定機器IDに対応する測定時刻校正値を取得してから、当該測定時刻校正値により前記組データにおける前記測定時刻を補正する測定時刻校正部と、
前記測定時刻校正部により時刻補正が行われた組データを格納する時刻校正後データ格納部と、
時刻校正後データ格納部に格納された組データに対しリサンプリング処理を行うリサンプリング処理部とを備え、
前記同期演算部によりリサンプリング処理が行われた組データを格納する同期後データ格納部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の測定データ同期システム。
【請求項5】
前記測定時刻校正部は、校正後の測定時刻=測定時刻/測定時刻校正値という式に基づいて測定時刻を校正することを特徴とする請求項4に記載の測定データ同期システム。
【請求項6】
前記データ処理装置は、
前記測定時刻を校正するための基準時刻を提供するリアルタイムクロック部と、
所定の更新周期で定期的に前記組データ格納部から前記組データを取得し、前記リアルタイムクロック部から前記基準時刻を取得してから、当該組データにおける測定時刻および前記基準時刻により前記測定時刻校正値を計算し、計算した前記測定時刻校正値を対応する測定機器IDと関連付けて前記補正値格納部に格納する校正値演算部とをさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の測定データ同期システム。
【請求項7】
前記リアルタイムクロック部は、前記データ処理装置自体のクロック時刻を前記基準時刻として取得することを特徴とする請求項6に記載の測定データ同期システム。
【請求項8】
前記リアルタイムクロック部は、外部クロックから前記基準時刻を取得することを特徴とする請求項6に記載の測定データ同期システム。
【請求項9】
前記校正値演算部は、測定時刻校正値=(tUNIT1-tUNIT0)/(tRTC1-tRTC0)という式に基づいて測定時刻校正値を計算し、tRTC0は前記更新周期を開始するときの基準時刻であり、tUNIT0は前記更新周期を開始するときの前記組データにおける測定時刻であり、tRTC1は前記更新周期に達するときの基準時刻であり、tUNIT1は前記更新周期に達するときの前記組データにおける測定時刻であることを特徴とする請求項6に記載の測定データ同期システム。
【請求項10】
前記校正値演算部は、測定時刻校正値=(tUNIT1-tUNIT00)/(tRTC1-tRTC00)という式に基づいて測定時刻校正値を計算し、tRTC00は同期を開始するときの基準時刻であり、tUNIT00は同期を開始するときの前記組データにおける測定時刻であり、tRTC1は前記更新周期に達するときの基準時刻であり、tUNIT1は前記更新周期に達するときの前記組データにおける測定時刻であることを特徴とする請求項6に記載の測定データ同期システム。
【請求項11】
複数の測定機器からの測定データに対し同期処理を行う測定データ同期方法において、
複数の測定機器が、少なくとも被測定対象を測定した測定データと、前記測定を行う測定時刻と、当該測定機器を標記するための測定機器IDとからなる組データを、前記信号線に出力し、
データ処理装置が、前記複数の測定機器からの前記組データを前記信号線から取得し、前記組データにおける前記測定機器IDに基づき、予め格納された当該測定機器IDに対応する測定時刻校正値を取得してから、当該測定時刻校正値により前記組データにおける前記測定時刻を校正することを特徴とする測定データ同期方法。
【請求項12】
前記データ処理装置は、校正後の測定時刻に基づいて前記組データにおける測定データに対しリサンプリング処理を行い、リサンプリング処理された組データを格納することを特徴とする請求項11に記載の測定データ同期方法。
【請求項13】
校正後の測定時刻=測定時刻/測定時刻校正値という式に基づいて測定時刻を校正することを特徴とする請求項11に記載の測定データ同期方法。
【請求項14】
前記データ処理装置は、所定の更新周期で定期的に基準時刻および前記組データにおける測定時刻により前記測定時刻校正値を計算し、計算した前記測定時刻校正値を対応する測定機器IDと関連付けて格納することを特徴とする請求項11に記載の測定データ同期方法。
【請求項15】
前記基準時刻は前記データ処理装置自体のクロックから生成されるものであることを特徴とする請求項14に記載の測定データ同期方法。
【請求項16】
前記基準時刻は外部クロックから生成されるものであることを特徴とする請求項14に記載の測定データ同期方法。
【請求項17】
測定時刻校正値=(tUNIT1-tUNIT0)/(tRTC1-tRTC0)という式に基づいて測定時刻校正値を計算し、tRTC0は前記更新周期を開始するときの基準時刻であり、tUNIT0は前記更新周期を開始するときの前記組データにおける測定時刻であり、tRTC1は前記更新周期に達するときの基準時刻であり、tUNIT1は前記更新周期に達するときの前記組データにおける測定時刻であることを特徴とする請求項11に記載の測定データ同期方法。
【請求項18】
測定時刻校正値=(tUNIT1-tUNIT00)/(tRTC1-tRTC00)という式に基づいて測定時刻校正値を計算し、tRTC00は同期を開始するときの基準時刻であり、tUNIT00は同期を開始するときの前記組データにおける測定時刻であり、tRTC1は前記更新周期に達するときの基準時刻であり、tUNIT1は前記更新周期に達するときの前記組データにおける測定時刻であることを特徴とする請求項11に記載の測定データ同期方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−76607(P2011−76607A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216793(P2010−216793)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】