説明

測定値の判定方法

【課題】被測定対象物上のパターンの線幅あるいは線間隔などを測定した測定値の良否を判定する測定値の判定方法に関し、画像撮影時の焦点合わせの不良による画像の不明瞭、更にチャージによる画像ドリフトによる画像の不明瞭などによる、パターンの線幅などの測定不良を自動判定する。
【解決手段】被測定対象物上のパターンの信号強度分布を取得するステップと、取得した信号強度分布からパターンのエッジ位置を検出するステップと、エッジ位置の検出に用いたと同一の信号強度分布からパターンのエッジ部分のスロープ値を検出するステップと、検出したスロープ値が予め設定した所定範囲内のときに検出したエッジ位置をもとに算出した測定値が正しいと判定し、一方、所定範囲外のときに検出したエッジ位置をもとに算出した測定値が不良と判定するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定対象物上のパターンの線幅あるいは線間隔などを測定した測定値の良
否を判定する測定値の判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェハ上に微細パターンを転写するマスクに形成された微細パターンの線幅、線間隔などについてSEM(走査型電子顕微鏡)による自動測定では、いろいろな原因から測定に失敗することがある。ここで言う失敗は測定した結果の数値は得られるが、何らかの原因でその値が正しくないことを指す。オペレータ不在での自動測定ではその原因が簡単にはわからないことが多い。これは次のような理由によって発生する。
【0003】
(1)測定値そのものが分散を示すので、正しい値は一定ではないことによる。
【0004】
(2)何らかの原因によりSEMにおける自動フォーカス合わせの失敗によって、あるいはチャージアップによる画像のずれによって測定値が大幅にずれる場合がある。再度自動フォーカスを試みることによって正しい値がえられることがある。
【0005】
(3)パターン寸法が予想以上にずれている場合がある。これは測定としては正しく、異常個所としてマークされるべきものである。
【0006】
これらを自動的に判別し適切な処理ができるかどうかが自動測定装置として要求されている。
【0007】
ここで対象とする測定はパターンのある場所を、ある方向(たとえばX方向やY方向など)に沿って測った長さ(幅)である。パターンは、有限幅を有する線(線と線の間隙も含む、ライン、あるいはスペースと称す)、有限の面積を占める矩形パターン(通常この技術分野ではコンタクトホール、あるいはドットと称す)を基本としている。複雑な形状のパターンの場合には特定の線に沿ったパターンの幅になる。コンタクトホールの場合は面積を測定することも含まれる。
【0008】
測定したいパターンのSEM画像から指定方向に沿った信号強度分布を抽出し、この信号強度分布からパターンの両端エッジを検出して幅を求める。
【0009】
このときエッジの位置を決定する方法には幾つかある。
【0010】
(1)閾値法:エッジ近傍の強度分布を規格化し極小と極大の間を1としたとき閾値x(1.0≧x≧0)を持つ強度の点をエッジ位置とする。
【0011】
(2)直線回帰法:エッジ近傍の部分的強度分布と極小点近傍の部分的強度分布で、それぞれの回帰直線を求め、その交点をエッジ位置とする。
【0012】
(3)ピーク法:エッジ近傍の強度分布のピーク位置を仮のエッジとして線幅をもとめ、校正によって補正する。
【0013】
(4)その他(複合):エッジ強度分布を関数近似し、閾値法と組み合わせてエッジ位
置を決めるなどの種々の方法がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した(1)から(3)の方法で測定された寸法が正しいか否かの判定はこれまで次のような方法で行われていた。
【0015】
(a)測定対象の画像を人が見て測定が正しく行われたか否かを判定する。(自動化は不可能).
(b)期待される寸法を中心とした測定値のある範囲を設定し、この範囲外のものを測定の失敗とみなしていた(自動化可能)。
【0016】
しかし、(a)の方法の場合には、自動化ができないだけでなく、判定者による個人差などを排除できないという問題があった。
【0017】
また、(b)の方法の場合には、自動化は可能であり、一定の判断基準が適用され、客観的なデータが得られる。しかし、測定対象のもつ分散、あるいはプロセスバイアスなど系統的な変化などに対しては単純な範囲設定では対応できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、これらの問題を解決するため、パターンの線幅などの測定値の判定の良否を測定値自体によらず、パターンのエッジ部分の信号強度分布のテーパ幅が所定範囲内のときに正しい測定値と判定するようにしている。
【0019】
従って、画像撮影時の焦点合わせの不良による画像の不明瞭、更にチャージによる画像ドリフトによる画像の不明瞭などによる、パターンの線幅などの測定不良を自動判定することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、画像撮影時の焦点合わせの不良による画像の不明瞭、更にチャージによる画像ドリフトによる画像の不明瞭などによる、パターンの線幅などの測定不良を自動判定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、パターンの線幅などの測定値の判定の良否を測定値自体によらず、パターンのエッジ部分の信号強度分布のテーパ幅が所定範囲内のときに正しい測定値と判定し、画像撮影時の焦点合わせの不良による画像の不明瞭、更にチャージによる画像ドリフトによる画像の不明瞭などによる、パターンの線幅などの測定不良を自動判定することを実現した。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明のシステム構成図を示す。
【0023】
図1において、画像取得装置1は、画像を取得するものであって、例えば加速された電子線ビームスポットを被測定サンプル2上に走査(X走査、Y走査)し、そのときに当該被測定サンプル2から放出された2次電子を収集して画像を生成するものであり、走査型電子顕微鏡(SEM)などである。
【0024】
被測定サンプル2は、パターンが形成されて当該パターンの線幅、線間隔、ホール寸法などを測定する対象のサンプル(例えばフォトマスク)である。
【0025】
走査系3は、画像取得装置1である例えば走査型電子顕微鏡で加速された電子線ビームスポットを、被測定サンプル2上でX走査、Y走査するものであって、走査偏向系である。
【0026】
信号アンプ4は、被測定サンプル2上を電子線ビームスポットで走査したときに放出された2次信号などを収集して増幅するものである。
【0027】
画像5は、信号アンプ4で増幅されたアナログの信号(画像信号)をA/D変換器でデジタルの画像に変換してメモリに記憶できるようにしたものである。
【0028】
コンピュータ6は、デジタルの画像5を取り込んで画像処理し、ここでは、被測定サンプル2のパターンの線幅、線間隔などを測定およびその測定値が正しいか否かを判定するものであって、測定パラメータ設定手段7、画像取得手段8、測定手段9、測定結果ファイル10、入力装置11、および表示装置12などから構成されるものである。
【0029】
測定パラメータ設定手段7は、被測定サンプル2上のパターンの線幅などを測定するための各種パラメータを設定するものであって、ここでは、例えば図6で後述する
(1)測定点座標:(x,y)
(2)測定種別:
・ライン
・スペース
・ホール
・ドット
・その他
(3)測定ボックス:
(4)テンプレート:
(5)その他:
を設定するものである。
【0030】
画像取得手段8は、画像取得装置1を制御し被測定サンプル2の該当場所のデジタルの画像5を取得するものである。
【0031】
測定手段9は、画像取得手段8で取得したデジタルの画像をもとに、パターンの線幅、線間隔などの値を測定すると共に、当該測定時のエッジ部分のテーパ幅を求めて所定範囲内のときに測定値が正しい、所定範囲外のときに測定値が不良の旨を判定するものである(図2から図8を用いて後述する)。
【0032】
測定結果ファイル10は、画像5をもとに指定されたパターンの線幅、線間隔などの測定値およびテーパ幅をもとに判定した測定値の正否を格納するものである(図5参照)。
【0033】
入力装置11は、各種指示やデータを入力するものであって、例えばキーボードやマウスなどである。
【0034】
表示装置12は、画像、測定結果などを表示する表示装置である。
【0035】
次に、図2のフローチャートの順番に従い、図1の構成の全体の動作を詳細に説明する。
【0036】
図2は、本発明の動作説明フローチャート(全体)を示す。
【0037】
図2において、Slは、準備:測定ジョブの入力とサンプルのロードを行う。これは、被測定サンプル2上のパターンの測定ジョブとして、
(1)測定点座標:(x,y)
(2)測定種別:
・ライン
・スペース
・ホール
・ドット
・その他
(3)測定ボックス:
(4)テンプレート:
を指定入力、および被測定サンプル2を画像取得装置1にロード(装着)する。ここで、(1)測定点座標は被測定サンプル2上の測定する対象となるパターンの位置の座標(X
,Y)(被測定サンプル2上の座標、あるいはCADデータ上の測定対象のパターンの位置(点))である。(2)測定種別は(1)で指定された測定点座標に対する、ライン(線幅)、スペース(線と線の間隔)、ホール(矩形の内側の相対する辺間の距離)、ドット(矩形の外側の相対する辺間の距離)である。(3)測定ボックスは、矩形内について所定本数のライン(線幅)を測定するための当該矩形(測定ボックス)である。(4)テンプレート(ビットマップ)は、CAD上の測定対象のパターンについて、画像上でパターンマッチングして一致したパターンについて測定するためのテンプレートである。
【0038】
S2は、グローバルアライメントを行う。これは、画像取得装置1にロードした被測定サンプル2の画像上の複数のアライメントマークをもとに当該画像の座標系と、CADデータ上の座標系との変換式(行列式)を決定するものである。以降は、通常、CADデータ上の測定対象のパターンの位置(中心位置)、測定種別などに従い当該CADデータ上の位置などの座標を、変換式で画像上の座標系に変換してステージを移動させて所定の位置に被測定サンプル2を移動させて画像を取得などする。
【0039】
S3は、第1の測定点へ移動する。これは、Slで指定された第1の測定点へ移動する。具体的には、指定されたCADデータ上の第1の測定点を、行列式で画像上の測定点に変換して当該変換した測定点がほぼ画像の中央に位置するように画像取得装置1の図示外のステージ(X,Y)で被測定サンプル2を移動する。
【0040】
S4は、画像取得する。これは、画像取得装置1の走査系3が電子線ビームスポットで被測定サンプル2を面走査してそのときに放出された2次電子信号を信号アンプ4で検出・増幅し、更に、デジタルの画像5を生成し、コンピュータ6の画像取得手段8がデジタルの当該画像を取り込む。
【0041】
S5は、画像取得の先行か測定か判別する。画像取得が先行の場合には、S10に進む。測定が先行の場合には、S6に進む。
【0042】
S10は、画像取得が先行と判明(予め指定されていると判明)したので、次の測定点があるか判別し、有りのときはS9で次の測定点へ移動し、S4以降を繰り返し、無しのときはSllで測定実行(図3で後述)し、S12で次の画像があるか判別し、有りのときはSllを繰り返し、無しのときはS13で後処理で結果出力とサンプルアンロード(被測定サンプル2を画像取得装置1から外部に排出)する。
【0043】
S6は、測定が先行と判明(予め指定されていると判明)したので、測定実行(図3で後述)し、S7で次の測定点があるか判別し、有りのときはS9で次の測定点へ移動し、S4以降を繰り返し、無しのときはS8で後処理で結果出力とサンプルアンロード(被測定サンプル2を画像取得装置1から外部に排出)する。
【0044】
以上のようにして、測定ジョブ((1)から(4)のパラメータ)を設定、被測定サンプル2をロードし、当該被測定サンプル2の複数のアライメントマークの画像をもとに画像の座標系と、CADデータの座標系とを変換する行列式を求めた後、指定された測定点に移動して画像を取得し当該画像をもとに測定点の位置のエッジ位置を求めると共にテーパ幅を求めて当該テーパ幅が所定範囲内に入ったときにエッジ位置から算出した線幅などの測定値が正しいと判定し、これら測定結果(測定値と当該測定値が正しい、不良の区別
)を自動的に出力することが可能となる。以下順次詳細に説明する。
【0045】
図3は、本発明の動作説明フローチャート(測定)を示す。これは、既述した図2のS6、Sllの測定実行の詳細フローチャートを示す。
【0046】
図3において、S21は、測定対象の画像データ、および測定条件を読み出す。これは、図1の画像取得手段8が画像データ(画像5)を読み出すと共に、入力(指定)された測定条件(既述した(1)から(4)の測定条件)を読み出す。
【0047】
S22は、測定条件に従って画像データから信号強度分布を読み出す。これは、S21で読み出した測定条件のうちの、例えば指定された測定点を通るラインの信号強度分布を読み出す(図4の(a−2)信号強度分布を参照)。
【0048】
S23は、測定条件で指定された測定範囲内で信号強度分布上のエッジ位置を求める。これは、例えば図4の(a−3)のエッジ部分の画像上で、最大ピークPlの値xplと最小ピークP2の値xplとの間の値xe(=(xpl−xp2)/2)をエッジ位置として求める。
【0049】
S24は、エッジ位置を含む信号強度分布上のテーパ幅を求める。これは、例えば図4の(a−3)のエッジ部分の画像上で、最大ピークP1の値xplと最小ピークP2の値xp2との差をテーパ幅xt(=xpl−xp2)として求める。
【0050】
S25は、テーパ幅をあらかじめ設定された参照値と比較し、比較結果は「OK」あるいは「NG」など符号化し、寸法測定値などと共通の測定結果ファイルに保存する。これは、S24で求めたテーパ幅xtが予め実験で求めた、例えば図4の(c)のテーパ幅22nm〜33nmの範囲内に入るときはOK、範囲内に入らないときはNGと判定し、S23で求めたエッジ位置から算出した線幅と一緒にして後述する図5の(a)の測定結果ファイルに保存する。
【0051】
S26は、比較判定の結果は測定結果とともに表示出力する。例えば後述する図5の(b)に示すように、測定結果(線幅などの測定値)と判定(OKあるいはNG)を一緒に表示する。
【0052】
以上によって、測定対象の画像および測定条件をもとに、信号強度分布を生成し(図4の(a−2))、当該信号強度分布上でエッジ部分の最大ピークPlと最小ピークP2を求めてこれらからエッジ位置xe,およびテーパ幅を求め、当該テーパ幅が予め設定した所定範囲内に入るときはOK、入らないときはNGと判定し、エッジ位置から求めた線幅などの測定値と判定結果を一緒にして保存、表示することが自動的に可能となる。
【0053】
図4は、本発明の説明図(その1)を示す。
【0054】
図4の(a−1)は被測定サンプル2上のパターンの例を示す。これは、図1の被測定サンプル2上に形成されたパターンの例であって、ここでは、基板上に形成された凸状のパターン(手前から向こう側に向かうライン(線)を横切るパターン)を示す。
【0055】
図4の(a−2)は図4の(a−1)のパターンの信号強度分布の正常時の波形の例を示す。ここでは、加速された電子線ビームスポットで図4の(a−1)のパターンを左右方向に走査してそのときに放出された2次電子を収集・検出・増幅して生成した画像5のうちの、図4の(a−1)のパターンに対応する部分の信号強度分布であって、パターンのエッジ部分で上方向の最大ピークPlと下方向の最小ピークP2とが図示のように表れる分布となる(パターンから放出された2次電子検出による特有の周知の分布となる)。この場合には、電子ビームスポットがパターン上に正確にフォーカスされ、かつ電子ビームスポットを左右方向に走査しているときにドリフトが発生していない場合のものであって、後述する測定値の判定がOKとなる場合である。このとき、パターンの左側のエッジ部分を拡大すると、図4の(b)に示す信号強度分布となる。
【0056】
図4の(a−3)は図4の(a−1)のパターンで、焦点ずれによる信号分布の変化の例を示す。この場合には、電子ビームスポットが焦点ずれしており、大きなサイズで図4の(a−1)のパターンを左右方向に走査し、そのときに放出された2次電子を収集・検
出・増幅して生成した画像5のうちの、図4の(a−1)のパターンに対応する部分の信号強度分布であって、パターンのエッジ部分の上方向の最大ピークPlと下方向の最小ピークP2とがなだらか、かつその位置がずれており(その結果、測定値が不正確となる場合であって)、焦点すれしている様子が判る信号強度分布である。この場合には、後述する図4の(c)のテーパ幅が所定範囲外となり、測定値がNGと判定される場合の信号強度分布の例を示す。
【0057】
図4の(b)は、エッジ部分の拡大図を示す。これは、図4の(a−2)の信号強度分布の左側のエッジ部分の拡大図を示す。ここで、最大ピークPlの位置をxpl,最小ピークP2の位置をxp2とすると、
・エッジ位置xe=(xpl−xp2)/2
と定義する。同様に、図4の(a−2)の右側のエッジ部分についても、エッジ位置とテーパ幅を測定する。そして、パターンの幅(線幅)は2つのエッジ位置の間隔(差)であり、テーパ幅は左側および右側の2つのテーパ幅となる。
【0058】
図4の(c)は、ラインエッジテーパ幅の分布例を示す。これは、フォトマスク上のラインパターンを実際に計測し、エッジのテーパ幅を求めてプロットした例であって、ライン幅160nm〜600nmで合計900本のラインを測定したものであり、最大ピークPlと最小ピークP2の位置の差(間隔)である。この図4の(c)から判明するように、テーパ幅は22nm〜33nmの範囲、ほぼ±5nmの範囲に入っている。図中の3点のみがこの範囲外にでており、これらの点の測定値は、焦点ずれ、あるいはドリフトによるエッジ部分のボケ(図4の(a−3)参照)による当該エッジ部分の信号強度分布の変化(ずれ)によるものである。
【0059】
従って、測定値自身により当該測定値の良否を判定するのではなく、エッジ部分のテーパ幅が所定範囲内(図4の(c)の例では、22nm〜33nmの範囲内)のときに焦点ずれがなく、更に、ドリフトがなく正常な信号強度分布と判定でき、そのときのエッジ位置をもとに算出した測定値が正常OKと判定できることとなる。
【0060】
図5は、本発明のファイル/表示例を示す。
【0061】
図5の(a)は、測定結果ファイルの例を示す。これは、既述した図3のS25で測定結果および判定結果を保存する測定結果ファイル10であって、図示の下記の情報を対応づけて保存するものである。
【0062】
・サンプルNo:
・種別:
・測定点:
・X
・Y
・測定値Wt:
・テーパ幅:
・左Wt(L)
・右Wt(R)
・判定(OKあるいはNG)
・その他:
ここで、サンプルNoは被測定サンプル2の一意の番号である。種別は測定種別であって、ライン、スペース、ホール、ドットなどである。測定点は測定指示する点(座標)である。測定値Wtは測定した線幅、線間隔などの測定値である。テーパ幅はエッジ部分のテーパ幅(図4の(b)参照)である。判定はテーパ幅が所定範囲内のときにOK、所定範囲外のときにNGとして設定したものである。
【0063】
図5の(b)は、結果の表示例を示す。これは、図5の(a)の測定結果ファイル10に保存された結果の表示例であって、ここでは、サンプルNo,測定値、判定を対応づけてリスト表示する。
【0064】
以上のように、測定値に対応づけて判定(テーパ幅による判定)を併せて表示することにより、測定値について当該測定値自身ではなく、焦点ずれあるいはドリフトによりテーパ幅が変化して所定範囲外となったときに当該測定値をNGと判定して表示することが可能となる。
【0065】
図6は、本発明の説明図(その2)を示す。
【0066】
図6の(a)は、測定点の指定例を示す。ここでは、被測定サンプル2上の測定点を指定した様子を示す(CADデータ上で指定)。
【0067】
図6の(b)は、図6の(a)で指定された点を拡大した様子を示す。ここでは、配線の線の幅を測定する点(点とライン)を指定したものである。また、下方に、線と線との間隔を指定する点(点とスペース)の例を示す。
【0068】
図6の(c)は、図6の(a)で指定された点を拡大した様子を示す。ここでは、矩形内に指定した複数本の線の幅を測定する点(点とボックス(幅と高さ))を指定したものである。
【0069】
図6の(d)は、図6の(a)で指定された点を拡大した様子を示す。ここでは、矩形内の縦と横の幅を測定する点(点とホール)を指定したものである。
【0070】
図6の(e)は、図6の(a)で指定された点を拡大した様子を示す。ここでは、矩形外の縦と横の幅を測定する点(点とドット)を指定したものである。
【0071】
図7は、本発明の説明図(その3)を示す。
【0072】
図7の(a)は、テーパ幅とエッジ位置の例を示す。これは、既述した図4の(b)と同じものであって、パターンの左側のエッジ部分の信号強度波形の例であり、最大ピークPlの位置と最小ピークP2の位置との間隔がテーパ幅Wtであり、最大ピークPlの位置と最小ピークP2の位置との中間点(直線近似してt h r(閾値)が0.5の点)の位置がエッジ位置xtである。
【0073】
図7の(b)は、t h r(閾値)とそのときの幅(測定値)の例を示す。パターンの左側のエッジ部分と、右側のエッジ部分とで図示のt h r(閾値)=0.2、0.5,0.8の場合のそれぞれの線幅W0.2,W0.5,W0.8を示す。いずれの線幅を採用するかは、実験でパターンの線幅を測定して決定する。通常は、t h r=0.5のときの測定値(線幅)W0.5を使用する。
【0074】
図7の(c)は、ボックスの測定例を示す。点とボックス(縦と横のサイズ)で図示のような矩形が指定されたとすると、当該指定された矩形内について指定された本数(例えば10本)のライン(例えば等間隔のライン)について、それぞれ線幅(例えば図7の(b)のthr(開催)=0.5のときのW0.5)を測定する。
【0075】
図7の(d)は、テーパ幅例を示す。ここでは、パターンの左側のエッジ部分と、右側のエッジ部分とのthr(閾値)=0.2、0.5、0.8の値W0.2、W0.5、W
0.8をそれぞれ測定する。そして、
・テーパ幅=(W0.8−W0.2)/2
・測定値(線幅)=W0.5
とする。
【0076】
以上のようにして、異なる3つのthr(閾値)のときのパターンの左側と右側のエッジ部分の間の値(距離)を測定し、これらから上述したように、テーパ幅、測定値(線幅など)を算出することが可能となる。
【0077】
図8は、本発明の説明図(その4)を示す。これは、直線回帰法を説明するものであって、パターンの左側のエッジ部分の信号強度分布を例に抽出したものであって、エッジ部分の最大ピークPlと最小ピークP2の間のデータを
データi(n)=i(xn)
として所定個数抽出する。そして、α(x−x0)となる係数α、x0を公知の最小自乗法で決める。そして、
Ipl=α(xpl−x0)
Ip2=α(xp2−x0)
It=thr(Ipl−Ip2)+Ip2=α(xt−x0)
と表されるので、このうちのxtを求め、当該xt(エッジ位置)をもとに線幅などの測定値を算出する。
【0078】
また、テーパ幅=|xpl−xp2|として算出する。
【0079】
図9は、本発明の説明図(スロープ値)を示す。
【0080】
図9において、横軸はパターンの線幅を測定するための所定の閾値を表し、縦軸はパターンの線幅(閾値間の線幅)を表す。スロープ値は、閾値を変えたときの線幅をプロットした線分(スロープを持つ線分)であって、閾値が大きくなるに従いパターンの線幅が狭くなることが判明する。ここで、測長するSEMのビームスポットの焦点が被測定試料(例えばマスク上の測定対象のパターン)に合っている状態では、図示の下段のスロープ値となってスロープの全体が小さくなる。一方、焦点ズレの場合には、図示の上段のスロープ値となってスロープの全体が大きくなる。
【0081】
従って、閾値を変えたときの線幅を図9のようにプロットすることで、焦点が合っている、あるいは焦点があっていない(焦点ズレ)を判り易く表示すると共に、焦点の合っているあるいは合っていない状態を予め実験で求めた値と比較し自動判定することが可能となる。
【0082】
図10は、本発明の説明図(テーパ幅)を示す。
【0083】
図10において、横軸はパターンの測定位置を表し、縦軸はテーパ幅を表す。図示のプロットは、パターンの測定位置に対応づけてテーパ幅(例えば既述した図7参照)をプロットした様子を示す。テーパ幅が所定の範囲内(実験で予め求めた正常とする範囲内)を正しい測定データと判定し、それ以外を正しくない測定データと判定する。
【0084】
従って、パターンの測定位置に対応づけてテーパ幅を図10のようにプロットし、所定の範囲内のときに正しい測定データと判定し、それ以外を正しくない測定データを自動的に判定することが可能となる。
【0085】
図11は、本発明の説明図(スロープ値)を示す。スロープ値は、任意の閾値2点におけるパターンの線幅の値の差を閾値で除算した値であって、例えば下記の式で求める(閾値0.9、0.1などは任意の値でよいが、ここでは、例として0.9と0.1を用いる)。 リ
スロープ値=((閾値0.9のときのパターン幅)−(閾値0.1のときのパターン
幅))/(0.9−0.1)
スロープ値は、マスクのパターン上に照射するビームスポットの焦点がずれてくると、スロープ値が大きくなる(図9の焦点があっている状態から焦点ズレの状態のようにスロープ値が大きくなる)。スロープ値は、焦点ズレの他に、測定対象のマスクのパターンの形成時の電子ビームの描画条件でも異なってくるので、当該影響をも併せて評価できる。
【0086】
図11の(a)は、パターンの測定位置に対応づけてスロープ位置をプロットした1例を示す。ここで、スロープ値について測定データが図示の点線の設定値(実験で求めた値)の範囲内のときに正しいと判定し、範囲外のときに異常と自動判定できる。
【0087】
図11の(b)は、描画露光量の小さい場合と大きい場合のスロープ値をプロットした例を示す。図中の上段のスロープ値は、パターンの描画時の露光量が大きいときの測定値に対するスロープ値をプロットしたものであり、設定値範囲内を正しい測定データと判定し、設定値範囲外を正しくない測定データと判定する。また、図中の下段のスロープ値は、パターンの描画時の露光量が小さいときの測定値に対するスロープ値をプロットしたものであり、設定値範囲内を正しい測定データと判定し、設定値範囲外を正しくない測定データと判定する。
【0088】
以上のように、スロープ値は、パターンの描画時の条件(描画条件)、ここでは、描画時の電子ビームの露光量の大小によってスロープ値の正しい範囲が図示のように異なるので、描画条件などに対応づけた設定値(実験で予め求めた設定値)を設定し、測定データが正しい、正しくないを自動判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明のシステム構成図である。
【図2】本発明の動作説明フローチャート(全体)である。
【図3】本発明の動作説明フローチャート(測定)である。
【図4】本発明の説明図(その1)である。
【図5】本発明のファイル/表示例である。
【図6】本発明の説明図(その2)である。
【図7】本発明の説明図(その3)である。
【図8】本発明の説明図(その4)である。
【図9】本発明の説明図(スロープ値)である。
【図10】本発明の説明図(テーパ幅)である。
【図11】本発明の説明図(スロープ値)である。
【符号の説明】
【0090】
1:画像取得装置
2:被測定サンプル
3:走査系
4:信号アンプ
5:画像
6:コンピュータ
7:測定パラメータ設定手段
8:画像取得手段
9:測定手段
10:測定結果ファイル
11:入力装置
12:表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象物上のパターンの線幅あるいは線間隔などを測定した測定値の良否を判定する判定方法において、
被測定対象物上のパターンの信号強度分布を取得するステップと、
前記取得した信号強度分布から当該パターンのエッジ位置を検出するステップと、
前記エッジ位置の検出に用いたと同一の信号強度分布から当該パターンのエッジ部分のスロープ値を検出するステップと、
前記検出したスロープ値が予め設定した所定範囲内のときに前記検出したエッジ位置をもとに算出した測定値が正しいと判定し、一方、所定範囲外のときに前記検出したエッジ位置をもとに算出した測定値が不良と判定するステップと
を有する測定値の判定方法。
【請求項2】
前記スロープ値は、前記信号強度分布のエッジ部分における最大ピーク値P1と最小ピーク値P2との間の幅を、当該最大ピーク値P1のときの閾値と当該最小ピーク値P2のときの閾値との差で割った値としたことを特徴とする請求項1記載の測定値の判定方法。
【請求項3】
前記スロープ値は、前記信号強度分布のエッジ部分に対応する最大ピーク値P1と最小ピーク値P2の間に予め2つの閾値を設定し、当該2つの閾値の間の幅を、当該2つの閾値の差で割った値としたことを特徴とする請求項1記載の測定値の判定方法。
【請求項4】
前記パターンのエッジ位置として、前記信号強度分布のエッジ部分に対応する最大ピーク値P1と最小ピーク値P2との間の位置としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の測定値の判定方法。
【請求項5】
前記パターンのエッジ位置として、前記信号強度分布のエッジ部分に対応する最大ピーク値P1と最小ピーク値P2との間に予め2つの閾値を設定し、当該2つの閾値の間の位置としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の測定値の判定方法。
【請求項6】
前記パターンのエッジ位置として、前記信号強度分布のエッジ部分に対応する最大ピー
ク値P1と最小ピーク値P2との間の所定個数の値をもとに直線回帰法によってエッジ位置を求めたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の測定値の判定方法。
【請求項7】
前記パターンの信号強度分布が、被測定対象物上のパターンから放射された2次電子を検出して生成した信号強度分布であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の測定値の判定方法。
【請求項8】
前記パターンの描画露光量に対応づけて、前記測定値が正しいと判定する所定範囲を予め設定したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の測定値の判定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−145302(P2011−145302A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41620(P2011−41620)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【分割の表示】特願2005−194819(P2005−194819)の分割
【原出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(591012668)株式会社ホロン (63)
【Fターム(参考)】