説明

測定器具の標準化のための方法および装置

【課題】 付随測定器具を対応する主測定器具に対して標準化するための方法、携帯装置および測定器具を提供する。
【解決手段】 携帯装置は、基準物質を収容するための手段と、基準物質と主測定器具における基準物質の測定とについての情報を記憶するための情報ユニットとを備えている。付随測定器具に設置されると、携帯装置の情報ユニットに記憶された主器具からの情報は、付随器具に自動的にワイヤレスで送信され、携帯装置における基準物質の付随器具による測定に伴って、付随器具および試料の種類のための標準化モデルが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付随測定器具を対応する主測定器具に対して標準化するための携帯装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品および飼料のような作物の組成および栄養価を分析するために、近赤外線反射度(NIR)および近赤外線透過度(NIT)器具のような分光測定または分析器具が、例えば、食品業界または農業において広く使用されている。例えば、粗蛋白質、脂肪および炭水化物のような成分の量を分光分析により定めることができる。
【0003】
同じ設計の2つの分光分析器具における、例えば米の試料の直接分析は、おそらく、いくぶん異なる結果を生じる。これらの差は、器具の製造ばらつきおよび不安定性に起因している。
【0004】
同じ設計の幾つかの分光分析器において同じ試料を分析するときに類似結果を得るために、これらの器具が標準化される。かくして、標準化後、幾つかの「付随」器具、すなわち、異なる測定箇所に位置決めされた器具の各々からの分析結果は、「主」器具からの分析結果に対応するように補正される。
【0005】
この標準化手順において、通常、基準物質を収容するいわゆる「標準化カップ」が使用される。この標準化カップは、基準物質の品質が長い時間にわたって維持されるように気密にシールされる。まず、基準物質は、主器具を使用して分析される。基準物質の「主」スペクトルの形態のこの分析からの結果は、基準物質を識別する情報および主器具を識別する情報と共にディスクに記憶される。
【0006】
その後、このディスクおよび標準化カップは、付随器具の使用者に送られる。次いで、標準化カップは、付随器具に挿入され、ディスクは、付随器具に接続されたコンピュータに挿入される。次いで、基準物質が、付随器具により分析され、それにより試料用の「付随」スペクトルが生じられる。次いで、この付随スペクトルは、コンピュータのソフトウエアプログラムによってディスクについての主スペクトルと比較される。通常そうであるように、付随スペクトルが主スペクトルと異なれば、プログラムが、付随スペクトルを主スペクトルに対応するように数学的に変換する標準化モデルを作成する。次いで、この標準化モデルは、コンピュータに記憶され、そして基準物質と同じ種類の物質の試料についての付随器具における将来のルーチン分析の結果を変換するのに使用され得る。
【0007】
この公知な標準化手順の場合の問題は、特定の基準物質に関する「標準化」情報を有するディスクが失われるか、或いは悪くは、他の基準物質のための或る他の標準化ディスクに対して乱される恐れが常にあると言う点である。失われた標準化ディスクの結果は、遅延されたまたは取り消された標準化である。標準化ディスクのアイデンティティに関しての乱れの結果は、少なくとも付随器具が次回に標準化されるまで、その付随器具で測定されたすべてのルーチン試料についての予想値のエラーである。
【0008】
未知の試料(例えば、処理ラインからの粒子)の組成が分析されるような標準ルーチン分析では、操作者は、試料を試料カップに入れ、この試料カップを(付随)器具に入れる。次いで、操作者は、試料の種類についての情報をコンピュータに入力し、コンピュータのデータベースから、試料に適用されるべき適切な標準化モデルおよび予想モデルを選択し、そして器具による試料の分析を開始する。分析中、試料物質のスペクトルが採取され、標準化され、この標準化スペクトルを化学組成の予想に移すために、この標準化スペクトルに予想モデルが適用される。「人の要因」に起因した誤りが除去され、手順が速くなるように試料のルーチン分析がより自動化されることが望ましい。既存の装置では、操作者が間違った標準化モデルまたは予想モデルを選択する場合に誤った予想値を有してしまう恐れが常にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、付随測定器具を対応する主測定器具に対して標準化するための改良方法を提供することである。
【0010】
本発明の特定の目的は、標準化手順の高いセキュリティを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、付随測定器具によって試料物質をルーチンで測定するときに標準化された結果を得るための改良方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の特定の目的は、標準化手順および資料物質のルーチン分析のための手順の両方の高いレベルの自動化を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的および他の目的のうちの少なくとも幾つかを達成するために、本発明による携帯装置と、本発明による測定器具と、本発明による情報を管理する方法と、本発明による付随測定器具を標準化する方法と、本発明による標準化された結果を得る方法と、本発明によるカップとが提供される。
【0014】
より詳細には、本発明によれば、付随測定器具を対応する主測定器具に対して標準化するための携帯装置は、基準物質を収容するための手段と、基準物質と、測定器具における基準物質の測定とについての情報を記憶するための情報ユニットとを備えている。標準化情報を1つの「携帯装置」における基準物質と物理的に結びつけることによって、間違った標準化情報を選択する恐れまたは情報を失う恐れが、除去されるも同然である。かくして、携帯装置は、ここでは、単一のユニット装置として見做されるべきである。携帯装置は、チップの形態の情報ユニットが取付けられた前述のような標準化カップをよりなってもよい。
【0015】
本発明の1つの実施の形態では、前記情報は、更に、前記主測定器具についてである。それにより、主測定器具は、例えば、その通し番号、モデル番号などよりなることができる情報によって識別されてもよい。
【0016】
本発明の他の実施の形態では、前記情報ユニットは、前記基準物質を収容するための前記手段に物理的に取付けられる。これは、携帯装置が以上で提示されたようにチップが取付けられた標準化カップよりなる場合であることができる。
【0017】
他の実施の形態では、前記情報ユニットは、前記情報を記憶するための記憶手段を備えている。このような記憶手段は、電気的消去可能でプログラミング可能なリードオンリーメモリ(EEPROM)または或る他の種類の適切なメモリ回路でもよい。デジタルメモリが、今日では非常に小さく製造されることができ、それでも大きい記憶容量を有するので、メモリは、好ましくは情報ユニットに構成される。
【0018】
本発明の他の実施の形態によれば、前記情報ユニットは、更に、前記情報を前記付随測定器具に送信するための手段を備えている。このように配置された送信手段が情報ユニットの一部であることによって、情報は、標準化手順を可能にするために付随測定器具に容易に装填される。
【0019】
他の実施の形態によれば、前記情報を送信するための前記手段は、ワイヤレスデータ転送のために配置される。これは、情報を付随測定器具に送信するために「差込」が必要とされないので、有利である。
【0020】
更に他の実施の形態によれば、前記情報を送信するための前記手段は、無線周波数識別器を備えている。今日の無線周波数識別器は、ワイヤレス無接触読み取りを可能にし、そして比較的安価であり、堅固な構成を有していて、読み取りおよび書き込み電子記憶技術を有することができる。
【0021】
本発明の他の実施の形態では、基準物質についての前記情報は、前記基準物質の識別を含む。かくして、基準物質が識別されることができ、識別情報は、特定の種類の物質のために作成されるべき標準化モデルとともに記憶され得る。
【0022】
他の実施の形態では、基準物質についての前記情報は、前記基準物質の有効期限データを含む。それにより、古い劣化基準物質について測定が行なわれる恐れが除去され得る。
【0023】
本発明の他の実施の形態によれば、主器具における基準物質の測定についての前記情報は、基準スペクトルを含む。分光分析器具の形態の付随器具を標準化するのに、基準スペクトルが使用されてもよい。
【0024】
1つの実施の形態によれば、前記基準スペクトルは、全電磁波超範囲内である。
【0025】
他の実施の形態によれば、前記基準スペクトルは、可視光線および赤外線波長範囲内である。例えばNIRおよびNIT器具のような一般の分光分析器具はこの波長範囲内で作用する。
【0026】
本発明の1つの実施の形態では、前記基準スペクトルは、可視光線および近赤外線反射度測定器具である前記主測定器具によって測定される。
【0027】
本発明の他の実施の形態では、前記基準スペクトルは、可視光線および近赤外線透過度測定器具である前記主測定器具によって測定される。
【0028】
1つの実施の形態では、前記基準物質を収容するための前記手段は、気密にシール可能である。それにより、基準物質の量は、長時間にわたって維持され得る。
【0029】
他の実施の形態では、前記基準物質を収容するための前記手段は、それに収容される前記基準物質の可視光線および近赤外線反射度測定を許容する。これは、前記基準物質を収容するための前記手段の室の窓により達成され得る。
【0030】
更に他の実施の形態では、前記基準物質を収容するための前記手段は、それに収容される前記基準物質の可視光線および近赤外線透過度測定を許容する。これは、前記基準物質を収容するための前記手段の室の2つの窓により達成され得る。
【0031】
本発明によれば、試料物質のルーチン測定のための測定器具は、前記試料物質を収容する試料容器を受けるための受け手段と、前記試料容器が前記受け手段に位置決めされときに、前記試料物質を測定するための手段と、基準物質を収容する携帯装置が前記受け手段に位置決めされるときに、携帯装置の情報ユニットからの情報を読み取るための手段とを備えている。以上による携帯装置の情報ユニットから情報を読み取るための手段を測定器具に設けることによって、基準物質に関する標準化情報が、測定器具に素早く、簡単に勝つ安全に転送され、そしてかかる物質用の標準化モデルを作成するように使用され得る。
【0032】
本発明の1つの実施の形態によれば、情報を読み取るための前記手段は、前記情報をワイヤレスで読み取るように配置される。これは、情報ユニットが測定器具に物理的に連結される必要がないので有利であり、それにより情報の読み取りは、より素早く且つ簡単になる。
【0033】
本発明の他の実施の形態によれば、前記情報は、前記基準物質と、前記測定器具に対応する主測定器具における前記基準物質の測定とについてである。かかる情報によれば、測定器具の標準化が行なわれることができる。
【0034】
他の実施の形態によれば、前記情報は、更に、前記主測定器具についてである。それにより、例えば、主測定器具の特定の種類が識別され得る。
【0035】
更に他の実施の形態によれば、前記試料物質を測定するための前記手段は、前記携帯装置が前記受け手段に位置決めされると、前記基準物質についての測定を自動的に開始するように配置されている。これにより、測定器具を標準化するルーチン分析および手順の両方をより速く且つ簡単にする。
【0036】
本発明の他の実施の形態では、前記携帯装置の前記情報ユニットから情報を読み取るための前記手段は、前記携帯装置が前記受け手段に位置決めされると、前記情報の読み取りを自動的に開始するように配置されている。これによっても、測定器具を標準化するルーチン分析および手順の両方をより速く且つ簡単にする。
【0037】
他の実施の形態では、前記情報を読み取るための前記手段は、無線周波数識別リーダよりなる。前述のように、無線周波数識別(RFID)技術は、比較的安く且つ堅固でありながら、ワイヤレス読み取りを許容する。
【0038】
他の実施の形態では、前記測定器具は可視光線および近赤外線反射度測定器具である。
【0039】
更に他の実施の形態では、前記測定器具は、可視光線および近赤外線透過度測定器具である。
【0040】
本発明の一態様によれば、付随測定器具の標準化のための基準物質に関する、主測定器具により得られる情報を管理する方法は、
前記基準物質を収容するための手段を備えている携帯装置の一部である情報ユニットに前記情報を記憶することと、
前記携帯装置を前記主測定器具から前記付随測定器具へ搬送することと、
前記携帯装置の前記情報ユニットからの前記情報を前記付随測定器具へ送信することと、を備えている。
【0041】
基準物質に関する情報を管理するこの本発明の方法は、間違った標準化情報を選択する恐れまたは情報を失う恐れが除去されるも同然であるように、情報管理のセキュリティを高める。
【0042】
本発明の他の態様によれば、付随測定器具を対応する主測定器具に対して標準化するための方法は、
携帯装置の基準物質を収容するための手段に収容されている基準物質を前記付随測定器具によって測定することと、
前記携帯装置の一部である情報ユニットから前記主測定器具により得られる対応する測定値についての情報を前記付随測定器具によって読み取ることと、
前記基準物質を測定する作用の結果と、前記主測定器具により得られる前記対応する測定値との差を示す標準化モデルを作成して記憶することと、を備えている。
【0043】
前述のように、この標準化モデルは、例えばスペクトルの形態の付随測定結果を主測定値に対応するように数学的に変換することができる。標準化モデルは、付随測定結果を標準化された測定結果に変換する方法と見做される。
【0044】
本発明によれば、前記携帯装置の一部である情報ユニットからの情報を読み取ることによって、標準化手順をより速く且つ確実にすることができる。
【0045】
この本発明の方法の1つの実施の形態によれば、前記情報は、更に、前記基準物質および前記主測定器具についてである。
【0046】
他の実施の形態によれば、前記方法は、外部コンピュータの助けにより行なわれる。それにより、さほど「インテリジェント」ではない付随測定器具が標準化され得る。
【0047】
更に他の実施の形態によれば、前記標準化モデルを作成して記憶する前記作用は、前記外部コンピュータにより行なわれる。
【0048】
前記本発明の方法の1つの実施の形態では、前記方法は、前記携帯装置が前記付随測定器具の前記受け手段に位置決めされると、自動的に行なわれる。これにより付随測定器具を標準化する手順をより速く且つ容易にし、使用者がとるべきよい少ない手段を必要とする。
【0049】
他の実施の形態では、前記付随測定器具は、可視光線および近赤外線反射度測定器具である。
【0050】
更に他の実施の形態では、前記付随測定器具は、可視光線および近赤外線透過度測定器具である。
【0051】
本発明の更に他の態様によれば、付随測定器具によって試料物質をルーチンにより測定するときに、標準化された結果を得るにあたり、前記結果と、試料物質が対応する主測定器具によって測定された場合に得られた結果との差が最小化されるように標準化された結果を得る方法は、
携帯装置の前記試料物質を収容するための手段に収容されている前記試料物質を前記付随測定器具によって測定することと、
前記携帯装置の一部である情報ユニットからの情報であって、前記試料物質の種類のアイデンティティの情報を含む情報を前記付随測定器具によって読み取ることと、
前記付随測定器具およびこれに接続された外部コンピュータのうちの少なくとも一方に記憶された少なくとも幾つかの標準化モデルの中から、前記試料物質の種類のアイデンティティの前記情報に応じて正しい標準化モデルを選択することと、
前記主測定器具によって得られたスペクトルと本質的に同じである前記試料物質の標準化スペクトルが生じられるように、前記標準化モデルを前記試料物質のスペクトルに適用することと、を備えている。
【0052】
この本発明の方法によれば、本発明の携帯装置は、付随測定器具によって試料物質をルーチンにより測定するときに、標準化された結果を得るために使用されてもよい。この本発明の方法は、標準化されたルーチン測定をより速く、より容易に且つより確実にする。
【0053】
この本発明の方法の1つの実施の形態では、前記情報の前記読み取りはワイヤレスで行なわれる。
【0054】
他の実施の形態では、前記試料物質の種類のアイデンティティの前記情報は、更に、前記付随測定器具および前記外部コンピュータのうちの少なくとも一方に記憶された少なく徒の幾つかの予想モデルの中から正しい予想モデルを選択するのに使用される。
【0055】
前述のように、予想モデルは、分光情報を分析情報、すなわち、化学量の形態の情報に転換する、或いは数学的に変換するのに使用される。従って、予想モデルは、分光情報を分析情報に変換する方法として見做される。
【0056】
他の実施の形態では、前記方法は、更に、前記主測定器具によって得られた結果と本質的に同じである前記試料物質についての所望の分析結果を得るために、前記試料物質の前記標準化されたスペクトルに前記予想モデルを適用することを備えている。
【0057】
他の実施の形態によれば、前記方法は、前記携帯装置が前記付随測定器具の受け手段に位置決めされると、自動的に行なわれる。
【0058】
さらに他の実施の形態では、前記付随測定器具は、可視光線および近赤外線反射度測定器具である。
【0059】
更に他の実施の形態では、前記付随測定器具は、可視光線および近赤外線透過度測定器具である。
【0060】
本発明によれば、分析すべき物質を受入れて収容するためのカップは、前記物質についての情報を記憶し、前記情報を、前記物質を測定するための測定器具にワイヤレスで送信するためのチップを支持している。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による携帯装置の1つの実施の形態の簡単化概略図である。
【図2】本発明による測定器具の1つの実施の形態と、図1に示される携帯装置との相互作用を示す簡単化概略図である。
【図3】本発明による測定器具の他の実施の形態のより詳細な概略斜視図である。
【図4】本発明による携帯装置の他の実施の形態の概略斜視図である。
【図5】付随測定器具を対応する主測定器具に対して標準化するための本発明による方法の1つの実施の形態の複数の工程を示すフローチャートである。
【図6】付随測定器具によって試料物質をルーチンで測定するときに、標準化された結果を得るための方法による方法の実施の形態の複数の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、本発明による携帯装置10の1つの実施の形態を示している。
【0063】
携帯装置10は、基準または試料物質11を収容するための手段を備えており、この手段は、ここでは物質11を収容するための室13を規定する容器12の形態である。この容器12は、物質11が室13に収容されている間に、例えば、物質11の可視光線および近赤外線反射度/透過度測定のような分光測定を行うように配置される。また、可視光線および近赤外線反射度/透過度測定を行なうために、携帯装置10は、室13の反対側に他の分析窓(図示せず)を備えてもよい。
【0064】
本発明の携帯装置10は、更に、容器12により支持される情報ユニット14を備えており、この情報ユニット14は、物質に関する情報を記憶するための、ここではメモリ15の形態の記憶手段を有している。このメモリ15は、電気的消去可能でプログラミング可能なリードオンリーメモリ(EEPROM)または或る他の種類の適切なメモリ回路でもよい。
【0065】
また、情報ユニット14は、情報を測定器具またはこの測定器具に連結された外部コンピュータに送信する手段を有しており、この送信手段は、ここでは、ワイヤレスデータ転送のために配置されているトランスミッタ16の形態である。
【0066】
図2は、ここでは分光分析器具20、例えば、可視光線および近赤外線反射度/透過度測定器具の形態である本発明による測定器具の1つの実施の形態と、図1に示されるような携帯装置10とを示している。図2に示される携帯装置10は、分光分析器具20の受け手段21上に位置されており、容器12の室13の内側の物質11は、ここでは分光分析器具20の検出器22の形態で物質11を測定するための手段に与えられ得る。
【0067】
本発明の測定器具は、更に、ここでは携帯装置10の情報ユニット14からの情報をワイヤレスで読みとるためのリーダ(またはレシーバ)である手段を備えている。
【0068】
情報ユニット14のトランスミッタ16とリーダ23との間の通信は、ワイヤレスであってもよく、それにより情報ユニット14のメモリ15に記憶された情報を分光分析器具20に送信するために物理的連結が必要とされない。ワイヤレス通信は、ワイヤレスデータ転送用の任意の一般的なプロトコル、例えば、IEEE802.11またはブルーツースに従って、或いは好ましくは、無線周波数識別(REID)のための任意の規格によるより簡単な方法で実施され得る。
【0069】
測定器具は、携帯装置10が受け手段21上に設置されたときに、物質11の測定を自動的に開始するように配置されてもよい。更に、測定器具は、携帯装置10が受け手段21に設置されるときに情報ユニット14からの情報の読み取りを自動的に開始するように配置されてもよい。
【0070】
図3は、本発明による測定器具の他のより詳細な実施の形態を示している。図示されているものは、被分析内容物を有する携帯装置を受けて支持するためのプレート32の形態の受け手段を有する分光分析器具30のケーシング31である。図示の分光分析器具30は、また、本発明の携帯装置の情報ユニットからの情報をワイヤレスで読み取るためのインターフェース33を有するRFIDリーダを有している。
【0071】
図4は、本発明による携帯装置40の他のより詳細な実施の形態を示している。ここでは、携帯装置40は、基準または試料物質が入れられるカップ41の形態である。物質が基準物質である場合に通常そうであるように、長時間、物質がカップ41に収容されるべきであれば、カップ41は、蓋(図示せず)によって気密にシールされてもよい。カップ41の円筒形壁部には、RFIDタグ(またはチップ)42が取り付けられる。RFIDタグ42は、カップ41内の物質に関する情報を記憶するためのメモリを収容している。
【0072】
携帯装置が標準化のために使用される場合、情報ユニット(図1および図2では14、または図4では42)のメモリに記憶された情報は、基準物質と、主測定器具と、この主測定器具における基準物質の測定値とについてである。より詳細には、情報は、基準物質および主測定器具の両方の識別に加えて、主測定器具による基準物質の測定中、主測定器具により採取された基準物質についてのデータを含む。
【0073】
基準物質についてのデータは、主測定器具により採取された基準スペクトルの形態であってもよい。この基準スペクトルは、全電磁波長範囲内、または好ましくは、可視光線および赤外線波長範囲内であってもよい。
【0074】
情報ユニットのメモリに記憶された情報は、また、基準物質の有効期限データと、主測定器具による測定中の基準物質の温度についての情報とを含んでもよい。
【0075】
以下に、図5のフローチャートを参照して、付随測定器具を対応する主測定器具に標準化するための方法を説明する。
【0076】
図5の工程1において、本発明による携帯装置に収容されている基準物質が主測定器具で測定される。
【0077】
工程2において、主測定器具と、基準物質と、携帯装置の種類とを識別する情報が、主器具から、或いは主器具に接続された外部コンピュータから携帯装置の情報ユニットにワイヤレスで送信され、情報ユニットに設けられたメモリに記憶される。更に、送信された情報は、基準分光データの形態である、主器具における基準物質の測定の結果を有している。この工程では、基準物質と一緒の情報の速い容易な記憶が行なわれる。
【0078】
工程3において、携帯装置が、主器具から付随器具の使用者に搬送され、標準化されるべきである付随測定器具に設置される。この工程では、付随測定器具の標準化のために基準物質と共に使用される情報の搬送および管理の高いセキュリティが得られる。この標準化情報は、携帯装置における基準物質と共に物理的に束縛され、誤った標準化情報を選択する恐れ、または情報を失う恐れが除去されたも同然である。
【0079】
工程4において、携帯装置の情報ユニットに記憶された情報が、付随器具にワイヤレスで送信される。この工程は、携帯装置が付随器具に設置されると、自動的に行なわれてもよい。情報を付随器具にワイヤレスで自動的に送信することにより、手順が素早く且つ簡単になる。
【0080】
工程5において、携帯装置に収容された基準物質が、付随器具により測定される。この工程もまた、携帯装置が付随器具に設置されると、自動的に行なわれてもよく、かくして遅れなしに行なわれ得る。
【0081】
工程6において、工程5からの結果と、携帯装置の情報ユニットから送信された結果との比較後、標準化モデルが、付随器具により、或いは付随器具に接続された外部コンピュータにより作成される。この標準化モデルは、付随器具で基準物質を測定することによって得られる結果と、主器具で基準物質を測定することによって得られる対応結果との差を示している。
【0082】
工程7において、作成された標準化モデルが、付随器具または付随器具に接続された外部コンピュータにおけるデータベースに記憶される。標準化モデルは、付随器具または付随器具に接続された外部コンピュータに記憶された幾つかのモデルのうちの1つであってもよい。
【0083】
ここで使用する場合、「標準化」は、標準化スペクトルを得るために同じ種類の試料のルーチン測定について使用され得る標準化モデルを、付随器具で基準物質を測定することによって得ることを意味している。これは、標準化されたスペクトルが、主測定器具で得られたスペクトルに対応することを意味している。標準化モデルは、試料の種類および主/付随器具対に対して特有である。
【0084】
図6を参照して説明すると、本発明の携帯装置は、試料物質のルーチン分析のために使用されてもよい。この場合、情報ユニット(図1および図2では14、或いは図4では42)のメモリに記憶された情報は、携帯装置における物質の種類の情報を含んでもよい。試料の種類の情報は、付随器具または付随器具に接続された外部コンピュータに転送され、そしてルーチン試料のスペクトルに適用されるべき正しい標準化モデルを識別するのに使用される。
【0085】
試料の種類の情報は、ルーチン試料の標準化スペクトルを分析結果に変換するのに使用されるべき、器具または器具に接続された外部コンピュータにおける幾つかのモデルのうちの、記憶された正しい予想モデルを識別するに使用されてもよい。
【0086】
図6におけるフローチャートを参照して、付随測定器具によって試料物質を常習的に測定するときに標準化された結果を得るためのこの方法を段階的に説明する。
【0087】
次の前記工程からわかるように、図5による標準化のための方法と関連して述べた高いセキュリティおよび減少された遅れを有する対応する利点は、図6によるルーチン分析についても価値がある。
【0088】
図6の工程1において、本発明による携帯装置に収容された試料物質が、付随器具において測定される。この測定は、携帯装置が付随器具に設置されるときに自動的に開始してもよい。
【0089】
工程2において、試料の種類のアイデンティティが、携帯装置の情報ユニットのメモリから付随器具または付随器具に接続された外部コンピュータへワイヤレスで転送される。試料自身または試料カップに関連された追加の情報が転送されてもよい。
【0090】
工程3において、正しい標準化モデルが、試料の種類のアイデンティティによって付随器具または付随器具に接続された外部コンピュータにおけるデータベースから選択され、そして工程1からのルーチン試料のスペクトルに適用される。それにより、スペクトルは、主器具によって得られたスペクトルと本質的に同じになるように補正される。
【0091】
工程4において、付随器具または付随器具に接続された外部コンピュータにおけるデータベースから正しい予想モデルを選択するために、試料の種類のアイデンティティが使用される。選択された予想モデルは、主器具によって得られた結果と本質的に同じである試料物質についての所望の分析結果を得るために補正されたスペクトルに適用される。
【0092】
本発明による携帯装置は、これに収容された基準物質による標準化のために使用されてもよいし、或いは携帯装置に収容された試料物質のルーチン分析のために使用されてもよい。
【0093】
携帯装置が標準化に使用されるか、或いはルーチン分析に使用されるかどうかにかかわらず、携帯装置の情報ユニットは、測定中、基準または試料物質の近傍の温度を感知するための温度センサを備えてもよい。その場合、情報ユニットは、この情報を測定器具または測定器具に接続された外部コンピュータに転送するように配置されてもよい。
【0094】
本発明のこの説明は、単に物質の特性の分光分析に対する適用性に関していたが、本発明は、機械的、化学的および光学的特性の他の種類の測定にも適用可能である。その場合には、本発明の携帯装置および測定器具は、変更されて特定種類の測定に適合されてもよい。また、本発明の携帯装置の情報ユニットに記憶された特定の情報は、他の種類の測定に適合されてもよい。このような他の種類の測定の例は、クロマトグラフィ、アイソトープ分析、像分析および他の種類の電磁波分析である。
【0095】
本発明の精神および範囲を逸脱することなしに、前述の携帯装置、測定器具および方法の変更例が、当業者により行なわれることができることは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付随測定器具を対応する主測定器具に対して標準化するための携帯装置であって、
基準物質を収容するための手段と、
基準物質と、主測定器具における基準物質の測定とについての情報を記憶するための情報ユニットと、を具備している携帯装置。
【請求項2】
前記情報は、更に、前記主測定器具についてである、請求項1に記載の携帯装置。
【請求項3】
前記情報ユニットは、前記基準物質を収容するための前記手段に物理的に取付けられる、請求項1または2に記載の携帯装置。
【請求項4】
前記情報ユニットは、前記情報を記憶するための記憶手段を備えている、前記すべての請求項のうちのいずれか1つの項に記載の携帯装置。
【請求項5】
前記情報ユニットは、更に、前記情報を前記付随測定器具に転送するための手段を備えている、前記すべての請求項のうちのいずれか1つの項に記載の携帯装置。
【請求項6】
前記情報を転送するための前記手段は、ワイヤレスデータ転送のために配置されている、請求項5に記載の携帯装置。
【請求項7】
前記情報を転送するための前記手段は、無線周波数識別器を備えている、請求項5に記載の携帯装置。
【請求項8】
前記基準物質についての前記情報は、前記基準物質の識別を含んでいる、前記すべての請求項のうちのいずれか1つの項に記載の携帯装置。
【請求項9】
前記基準物質についての前記情報は、更に、前記基準物質の有効期限データを含んでいる、前記すべての請求項のうちのいずれか1つの項に記載の携帯装置。
【請求項10】
前記主器具における前記基準物質の測定についての前記情報は、基準スペクトルを含んでいる、前記すべての請求項のうちのいずれか1つの項に記載の携帯装置。
【請求項11】
前記基準スペクトルは、全電磁波長範囲内である、請求項10に記載の携帯装置。
【請求項12】
前記基準スペクトルは、可視光線および赤外線波長範囲内である、請求項10または11に記載の携帯装置。
【請求項13】
前記基準スペクトルは、可視光線および近赤外線反射度測定器具である前記主測定器具によって測定される、請求項10ないし12のうちのいずれか1つの項に記載の携帯装置。
【請求項14】
前記基準スペクトルは、可視光線および近赤外線透過度測定器具である前記主測定器具によって測定される、請求項10ないし13のうちのいずれか1つの項に記載の携帯装置。
【請求項15】
前記基準物質を収容するための前記手段は、気密にシール可能である、前記すべての請求項のうちのいずれか1つの項に記載の携帯装置。
【請求項16】
前記基準物質を収容するための前記手段は、これに収容される前記基準物質の可視光線および近赤外線反射度測定を許容する、前記すべての請求項のうちのいずれか1つの項に記載の携帯装置。
【請求項17】
前記基準物質を収容するための前記手段は、これに収容される前記基準物質の可視光線および近赤外線透過度測定を許容する、前記すべての請求項のうちのいずれか1つの項に記載の携帯装置。
【請求項18】
試料物質のルーチン測定用の測定器具であって、
前記試料物質を収容する試料容器を受ける受け手段と、
前記試料容器が前記受け手段に位置されたときに、前記試料物質を測定するための手段と、
基準物質を収容する携帯装置が前記受け手段に位置されたときに、前記携帯装置の情報ユニットからの情報を読み取るための手段と、を具備している測定器具。
【請求項19】
情報を読み取るための前記手段は、前記情報をワイヤレスで読み取るように配置されている、請求項18に記載の測定器具。
【請求項20】
前記情報は、前記基準物質と、前記測定器具に対応する主測定器具における前記基準物質の測定値とについてである、請求項18または19に記載の測定器具。
【請求項21】
前記情報は、更に、前記主測定器具についてである、請求項20に記載の測定器具。
【請求項22】
前記試料物質を測定するための前記手段は、前記携帯装置が前記受け手段に位置されると、前記試料物質についての測定を自動的に開始するように配置されている、請求項18ないし21のうちのいずれか1つの項に記載の測定器具。
【請求項23】
前記携帯装置の前記情報ユニットからの情報を読み取るための前記手段は、前記携帯装置が前記受け手段に位置されると、前記情報の読み取りを自動的に開始するように配置されている、請求項18ないし22のうちのいずれか1つの項に記載の測定器具。
【請求項24】
前記情報を読み取るための前記手段は、無線周波数識別リーダを備えている、請求項18ないし23のうちのいずれか1つの項に記載の測定器具。
【請求項25】
前記測定器具は、可視光線および近赤外線反射度測定器具である、請求項18ないし24のうちのいずれか1つの項に記載の測定器具。
【請求項26】
前記測定器具は、可視光線および近赤外線透過度測定器具である、請求項18ないし25のうちのいずれか1つの項に記載の測定器具。
【請求項27】
付随測定器具の標準化のために基準物質に関し、主測定器具によって得られる情報を管理する方法であって、
前記基準物質を収容するための手段を備えている携帯装置の一部である情報ユニットに前記情報を記憶することと、
前記携帯装置を前記主測定器具から前記付随測定器具へ搬送することと、
前記情報を前記携帯装置の前記情報ユニットから前記付随測定器具へ送信することと、を具備している情報を管理する方法。
【請求項28】
付随測定器具を対応する主測定器具に対して標準化するための方法であって、
携帯装置の基準物質を収容するための手段に収容されている基準物質を前記付随測定器具によって測定することと、
前記携帯装置の一部である情報ユニットから前記主測定器具により得られる対応する測定値についての情報を前記付随測定器具によって読み取ることと、
前記基準物質を測定する作用の結果と、前記主測定器具により得られる前記対応する測定値との差を示す標準化モデルを作成して記憶することと、を具備している標準化するための方法。
【請求項29】
前記標準化モデルの前記作成および記憶は、前記付随測定器具において行なわれる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記情報の前記読み取りは、ワイヤレスで行なわれる、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記情報は、更に、前記基準物質および前記主測定器具についてである、請求項28、29または30に記載の方法。
【請求項32】
外部コンピュータの助けにより行なわれる、請求項28ないし31のうちのいずれか1つの項に記載の方法。
【請求項33】
前記標準化モデルを作成して記憶する作用は、前記外部コンピュータによって行なわれる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
この方法は、前記携帯装置が前記付随測定器具の受け手段に位置されると、自動的に行なわれる請求項28ないし33のうちのいずれか1つの項に記載の方法。
【請求項35】
前記付随測定器具は、可視光線および近赤外線反射度測定器具である、請求項28ないし34のうちのいずれか1つの項に記載の方法。
【請求項36】
前記付随測定器具は、可視光線および近赤外線透過度測定器具である、請求項28ないし35のうちのいずれか1つの項に記載の方法。
【請求項37】
付随測定器具によって試料物質をルーチンにより測定するときに、標準化された結果を得るにあたり、前記結果と、試料物質が対応する主測定器具によって測定された場合に得られた結果との差が最小化されるように標準化された結果を得る方法であって、
携帯装置の前記試料物質を収容するための手段に収容されている前記試料物質を、前記付随測定器具によって測定することと、
前記携帯装置の一部であり、前記試料物質の種類のアイデンティティの情報を含む情報を、前記付随測定器具によって読み取ることと、
前記付随測定器具と、この付随測定器具に接続された外部コンピュータとのうちの少なくとも一方に記憶された少なくとも幾つかの標準化モデルの中から、前記試料物質の種類のアイデンティティの前記情報に応じて正しい標準化モデルを選択することと、
前記主測定器具によって得られたスペクトルと本質的に同じである前記試料物質の標準化スペクトルが生じられるように、前記標準化モデルを前記試料物質のスペクトルに適用することと、を具備している標準化された結果を得る方法。
【請求項38】
前記情報の読み取ることは、ワイヤレスで行なわれる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記試料物質の種類のアイデンティティの前記情報は、更に、前記付随測定器具と、この付随測定器具に接続された外部コンピュータとのうちの少なくとも一方に記憶された少なくとも幾つかの予想モデルの中から正しい予想モデルを選択するのに使用される、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記主測定器具によって得られた結果と本質的に同じである前記試料物質についての所望の分析結果を得るために、前記予想モデルを前記標準化スペクトルに適用することを更に具備している請求項39に記載の方法。
【請求項41】
この方法は、前記携帯装置が前記付随測定器具の受け手段に位置されると、自動的に行なわれる請求項37ないし40のうちのいずれか1つの項に記載の方法。
【請求項42】
前記付随測定器具は、可視光線および近赤外線反射度測定器具である、請求項37ないし41のうちのいずれか1つの項に記載の方法。
【請求項43】
前記付随測定器具は、可視光線および近赤外線透過度測定器具である、請求項37ない42のうちのいずれか1つの項に記載の方法。
【請求項44】
分析すべき物質を受入れて収容するためのカップであって、
このカップに取付けられ、前記物質についての情報を記憶し、前記情報を、前記物質を測定するための測定器具にワイヤレスで送信するためのチップを有するカップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−8422(P2010−8422A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−212361(P2009−212361)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2004−538111(P2004−538111)の分割
【原出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願人】(503143002)フォス、アナリティカル、アクチボラグ (3)
【氏名又は名称原語表記】FOSS ANALYTICAL AB
【Fターム(参考)】