説明

測定機器補助装置

【課題】重量がある測定機器を被測定対象物に当接若しくは近接して測定を行う際に、測定作業を容易かつ安全に行うことができる測定機器補助装置を提供すること。
【解決手段】測定機器補助装置10は、ステック状本体部12とステック状移動体14と載置台16とを有して構成される。ステック状本体部12は、中空円筒形状の筒状体部12aを有し、この内部を円柱体の部材で構成されたステック状移動体14が、上下動するように構成されている。このステック状移動体14の上端部には測定機器を載置する載置台16が取り付けられる。筒状体部12aの上端部には、載置台16の高さを調整し、所定の高さ位置で固定するための移動機構部18がラック部とピニオンギア部とを含んで形成されており、下端部には滑り止め部20が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定機器補助装置、特に測定機器を建物内の被測定対象物に近接若しくは当接することにより測定を行うための測定機器補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定機器には多くの種類があり、その形状、重量等は、用途に応じて様々である。例えば、原子力発電所、研究所、病院等においては、放射線を測定するための放射線測定機器が用いられる。この中で、中性子線を測定する中性子サーベイメータは、原子力施設や加速器等の漏洩中性子場において、中性子線量当量率を測定するものであり、安全管理等のためには必要な機器である。この種の測定機器に関しては普及率が著しく向上し、放射線遮蔽室等の特別な施設の必要がなく中性子サーベイメータに添付された校正定数の継続的使用が可能か否かを、簡便かつ容易に確かめることができる確認校正器が提供されている(特許文献1)。
【0003】
図6は、中性子サーベイメータの使用状況を説明する概略斜視図である。中性子サーベイメータ30は、本体部30aに肩掛けベルト30cが取り付けられており、作業者は、この中性子サーベイメータ30を肩から掛け、被測定対象物、例えばパイプ40に本体部30aの一部を当接して、パイプ40から放射される中性子線を測定する。当接して測定を行う場合以外にも、雰囲気中の中性子線を測定する場合もあり、その場合はその雰囲気中に中性子サーベイメータを設置することとなる。測定された結果は表示部30bに表示される。なお、中性子線はその本体部30a内部に内蔵されている比例計数管で測定され、測定可能な範囲は、内蔵されている比例計数管の精度等により決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−265765
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常使用される中性子サーベイメータは、内部に比例計数管を内蔵し、中性子線を精度良く測定するために必然的に大掛かりなものとなり、重量は10kg程度となる。したがって、作業者が長時間肩に掛けて測定している最中に、肩から外れて中性子サーベイメータを落下させてしまう危険性が存在する。落下した場合には、測定機器が破損すると共に安全上の問題も発生する。また、高所にある被測定対象物を測定する場合は、中性子サーベイメータを持ち上げての作業となるため、作業効率が悪いという問題もある。それに伴い、被測定対象物に当接して測定すべきところ、被測定対象物から中性子サーベイメータを離してしまい正確な測定ができないという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、重量がある測定機器を被測定対象物に当接若しくは近接して測定を行う際に、測定作業を容易かつ安全に行うことができる測定機器補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の測定機器補助装置は、
測定機器を建物内の被測定対象物に近接若しくは当接することにより測定を行うための測定機器補助装置において、前記建物の床面から少なくとも前記測定機器の測定高さ位置までに対応する長さを有するステック状の本体部と、該ステック状本体部に設けられ該ステック状本体部を移動軸として往復移動可能なステック状の移動体と、該ステック状移動体を往復移動させるための移動機構部と、前記ステック状移動体の先端部に設けられ、前記測定機器が載置可能な載置台と、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、載置台はステック状本体部を往復移動するステック状移動体の先端に取り付けられており、載置台に載置された測定機器は、床面からの高さ位置が精密に調整できる。そして、測定機器の重量はステック状本体部に掛かることとなる。したがって、作業者は重量物である測定機器を肩から下げることや手で持つことなく、測定機器を載置した測定機器補助装置等を手で支えながら、被測定対象物に測定機器を当接又は近接した状態で、測定を行うことが可能となる。また、本体部はステック状であるから、次の被測定対象物の測定位置まで測定機器補助装置を簡単に運ぶことができる。したがって、測定機器による測定作業を容易かつ安全に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の測定機器補助装置は、請求項1に記載の測定機器補助装置において、
前記ステック状本体部は、筒状体として構成され、前記ステック状移動体は、前記筒状体内で摺動移動可能に設けられ、前記移動機構部は、前記ステック状移動体に構成されたラック部と、前記ステック状本体部に設けられたピニオンギア部とを含むことを特徴とする。
【0010】
この構成により、載置台の高さを調整する機構がラック部とピニオンギア部とにより簡単に実現でき、載置台の上下移動がスムーズに行われることとなる。したがって、簡単な構成であるので、測定機器補助装置全体のコストを低く抑えることが可能である。
【0011】
請求項3に記載の測定機器補助装置は、請求項1又は2に記載の測定機器補助装置において、
前記載置台は、全面に複数個の穴が形成されたことを特徴とする。したがって、載置台を軽量とすることが可能である。
【0012】
請求項4に記載の測定機器補助装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載の測定機器補助装置において、
前記ステック状本体部の下端部には、ゴム等の緩衝部材により構成された滑り止め部が設けられたことを特徴とする。したがって、測定機器を載置した測定機器補助装置は、ステック状本体部が滑って転倒することを防止することができ、また床面等からの振動等の影響を緩和することができる。したがって、測定作業を安全に行うことが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の測定機器補助装置によれば、載置台はステック状本体部を往復移動するステック状移動体の先端に取り付けられており、載置台に載置された測定機器は、床面からの高さ位置が精密に調整できる。したがって、作業者は重量物である測定機器を肩から下げることや手で持つことなく、測定機器を載置した測定機器補助装置等を手で支えながら、被測定対象物に測定機器を当接又は近接した状態で、測定を行うことが可能となる。また、本体部はステック状であるから、次の被測定対象物の測定位置まで簡単に運ぶことができる。したがって、測定機器による測定作業を容易かつ安全に行うことができ、そのようにして測定した測定値の信頼性も向上することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の測定機器補助装置の全体斜視図である。
【図2】図1の測定機器補助装置の移動機構部の拡大斜視図である。
【図3】図1の測定機器補助装置の載置台の拡大斜視図である。
【図4】図1の測定機器補助装置の滑り止め部の拡大斜視図である。
【図5】図1の測定機器補助装置の載置台に中性子サーベイメータを載置した様子を示す概略斜視図である。
【図6】中性子サーベイメータによる測定作業の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を、以下図面を参照しながら詳述する。図1は、本発明の測定機器補助装置に係る全体斜視図である。図2は、図1の移動機構部の拡大斜視図である。図3は、載置台の拡大斜視図である。図4は、滑り止め部の拡大斜視図である。
【0016】
測定機器補助装置10は、ステック状本体部12、ステック状移動体14、載置台16の構成要素を有する。以下、各構成要素について説明する。
【0017】
ステック状本体部12は、図1及び2に示すように、所定の長さを有する中空円筒形状の筒状体部12aを有し、この筒状体部12a内でステック状移動体14が上下に往復移動するように構成されている。この筒状体部の12aの上端部には、後述する移動機構部18が設けられ、下端部には後述する滑り止め部20が設けられている。
【0018】
ステック状移動体14は、円柱体の部材で上記の筒状体部12aの長さと略同一に形成されており、その筒状体部12a内に挿入され、上下に往復移動できるように構成されている。そのため、ステック状移動体14の上下方向(長手方向)には、筒状体部12aからの突出量を調整するためのラック部14aが形成されている。また、筒状体部12a内で円滑に上下動できるように、ステック状移動体14の長手方向には溝部14bも形成されている。それに対応して、筒状体部12aの内部には、上記の溝部14bに緩挿される突起部(図示していない)がその長手方向に形成されており、これらによりステック状移動体14のスムーズな往復運動を実現している。なお、ステック状移動体14の上端部には後述する載置台16が取り付け、固定されている。
【0019】
移動機構部18は、筒状体部12aの上端部に設けられ、ステック状移動体14の筒状体部12からの突出量、すなわち載置台16の高さを調整し、所定の高さ位置で固定するためのものである。この移動機構部18は、調整ハンドル18aと位置決めストッパ18bとロック機構18cとを有する。調整ハンドル18aは、前述のステック状移動体14の長手方向に形成されたラック部14aと噛み合うピニオンギア部(図示していない)に連動して回転するように構成されており、調整ハンドル18aを矢印Aで示した方向に回転させると、ピニオンギア部が回転し、このピニオンギア部の回転によりラック部14aが形成されたステック状移動体14が上下に移動することとなる。
【0020】
位置決めストッパ18bは、これを操作することによりピニオンギアの回転ができなくなるように構成されており、図2の矢印Bで示した方向に操作することでON、OFF状態にすることができる。この位置決めストッパ18bをステック状本体部12の筒状体部12a側に近づけたときは、位置決めストッパ18bがOFF状態であり、調整ハンドル12aは回転できる状態となる。筒状体部12aから遠ざかる方向に動かした場合は、位置決めストッパ18bがON状態となり、回転ハンドル18aは回転することができず、載置台16の高さ位置を変えることができない。ロック機構18cは、図2の矢印Cの方向に回転可能であり、時計回りに回転させることにより、ステック状移動体14と筒状体部12aとが堅固に締め付けられ、ステック状移動体14は固定された状態となる。
【0021】
上記の移動機構部18の位置決めストッパ18bの外側には、この位置決めストッパ18を外側から覆い誤動作を防止するため、またステック状本体部12を手で把持・固定するための把持部19が形成されている。載置台16の高さ位置を調整する際には、この把持部19を把持しながら行うことができる。
【0022】
ステック状移動体14の上端部には、載置台16が取り付けられている(図1、3参照)。この取り付けはボルト等により行われている。溶接等によって取り付けることも可能である。載置台16には、開口穴16aが複数形成され、載置台16の重量が軽くなるように考慮されている。ただし、強度を第一とするときは開口穴を形成しなくても良い。また、載置台16の縁部には所定の高さの略垂直な壁部17a、17b、17c、17dが形成され、載置台16に載置した測定機器等が簡単に落下しないように配慮されている。更に、載置台16の全面には、滑り止めマット18が敷かれ、その上に載置される測定機器の安定化が図られている。
【0023】
ステック状本体部12の筒状体部12aの下部には、ゴム等の緩衝部材で構成された滑り止め部20が形成されている(図1、4参照)。滑り止め部20は、筒状体部12aの下端部に嵌め込むように構成され、床面等と接触する側には凹凸が形成されている。この滑り止め部20により、ステック状本体部12の下端部が床面に接触している場合、その接触断面積が小さいにも拘わらず、滑り止め部20の大きな摩擦力により、ステック状本体部12が滑って転倒することを防止している。また、緩衝部材により構成しているので、床面等からの振動の影響をも防止して、載置台16に載置された測定機器による精密な測定を可能にしている。
【0024】
図5は、本発明の測定機器補助装置10の載置台16上に中性子サーベイメータ30を載置した様子を示す概略斜視図である。中性子サーベイメータ30は、載置台16に敷かれた滑り止めマット18の上に載置されている。ここで、中性子サーベイメータには平面上に載置されたときに転がりを防止する足部が設けられており、この足部と滑り止めマット18とにより中性子サーベイメータ30は載置台16上で安定した状態にセットされる。
【0025】
本発明の測定機器補助装置10を用いて、原子炉発電所内の各所の中性子線の測定を行う場合について説明する。まず、被測定対象物がある場所に測定機器補助装置10を搬入する。床面の一箇所に、ステック状本体部12の滑り止め部20を当て、ステック状本体部12を手で支えながら、載置台16に中性子サーベイメータ30を載置する。位置決めストッパ18bをOFF状態、ロック機構18cを解除状態にし、ステック状本体部12又は載置台16を継続して手で支えながら、移動機構部18の調整ハンドル18aを回転させて、高さ位置を調整する。被測定対象物に中性子サーベイメータ30を当接させる必要がある場合には、移動機構部18の調整ハンドル18aを、中性子サーベイメータ30を被測定対象物に当接するまで回転させる。その後、位置決めストッパ18bをON状態、ロック機構18cをロック状態にする。このように中性子サーベイメータ30を載置した測定機器補助装置10をセットした後、必要な時間だけ中性子線の測定を行う。
【0026】
ここで、ステック状本体部12は筒状体部12aを有し、その下端部に滑り止め部20が設けられた構成であるため、場所を取らず、被測定箇所が狭い場所にあるときであっても、本発明の測定機器補助装置10により測定を行うことが可能である。これは、ステック状本体部12の下端部には台車等、場所を取るものが取り付けられていないこと、またステック状本体部12を多少斜めに傾斜させた状態でも測定を行うこが可能であることによる。なお、ステック状本体部12には把持部19が設けられているが、必要に応じて別の把持部、例えば円環、棒状の突起部等を筒状体部12aに設けても良い。また、載置台16に載置した測定機器を必要に応じてベルト等で固定するように構成しても良い。
【0027】
本発明の測定機器補助装置によれば、ステック状本体部とステック状移動体と載置台とを用いて構成されたので、作業者は重量物である測定機器を肩から下げることや手で持つ必要がなく、測定機器の測定高さ位置を精密に調整することができ、測定作業を容易かつ安全に行うことができる。更に、測定器補助装置は軽量であり移動可能である。したがって、測定機器による測定の作業効率、作業品質が向上し、安全性も高まることとなる。また、測定値の信頼性も向上する。
【0028】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、ステック状移動体とこれを収納するステック状本体部の筒状体部は断面形状が略円形であるものを用いたが、矩形状であっても良い。更に、載置台の平面形状を矩形ではなく円形であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の測定機器補助装置は、特に原子力発電所内での中性子サーベイメータを用いた測定に適しているが、重量物を必要な高さ位置で保持する必要のある他の作業にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 測定機器補助装置
12 ステック状本体部
12a 筒状体部
14 ステック状移動体
14a ラック部
14b 溝部
16 載置台
16a 開口穴
17a、17b、17c、17d 壁部
18 移動機構部
18a 調整ハンドル
18b 位置決めストッパ
18c ロック機構
19 把持部
20 滑り止め部
30 中性子サーベイメータ
30a 本体部
30b 表示部
30c 肩掛けベルト
40 被測定対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定機器を建物内の被測定対象物に近接若しくは当接することにより測定を行うための測定機器補助装置において、
前記建物の床面から少なくとも前記測定機器の測定高さ位置までに対応する長さを有するステック状の本体部と、
該ステック状本体部に設けられ該ステック状本体部を移動軸として往復移動可能なステック状の移動体と、
該ステック状移動体を往復移動させるための移動機構部と、
前記ステック状移動体の先端部に設けられ、前記測定機器が載置可能な載置台と、
を有することを特徴とする測定機器補助装置。
【請求項2】
前記ステック状本体部は、筒状体として構成され、
前記ステック状移動体は、前記筒状体内で摺動移動可能に設けられ、
前記移動機構部は、前記ステック状移動体に構成されたラック部と、前記ステック状本体部に設けられたピニオンギア部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の測定機器補助装置。
【請求項3】
前記載置台は、全面に複数個の穴が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の測定機器補助装置。
【請求項4】
前記ステック状本体部の下端部には、ゴム等の緩衝部材により構成された滑り止め部が設けられたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の測定機器補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−234475(P2010−234475A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84323(P2009−84323)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】