説明

測定用容器

【課題】装置の小型化を図ると共に、液体中の物体にダメージを与えることなく連続的なサンプリングと測定を可能とする測定用容器を提供する。
【解決手段】ピストン3は、容器本体部2の内部を移動することによって、流入口4からの液体の給液と、排出口6からの液体の排液を行うことができる。このように、ピストン3の移動によって給液と排液を繰返すことができるため、液体を連続的にサンプリングすると共に測定することが可能となる。また、ピストン動作によって吸引して液体を給液する方式では、他の方式とは異なり、細胞などの液体中の物体にダメージを与えることなく給液することが可能となる。更に、ピストン3が往復動する容器本体部2自体が、試料室を構成している。すなわち、送液機構と試料室を統合することで、構造の単純化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の測定に用いられる測定用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光学測定など、液体を測定するための装置が多く知られている。例えば、藻類を遅延発光や蛍光、吸光度、濁度などの光学計測によって測定する測定方法を利用したバイオアッセイが多数開発されている。このような装置では、例えば、一定量の検体液と藻類細胞懸濁液を混合した試料を調整し、その試料を測定の度に容器ごと試料を交換し、新たな容器を試料室に設置して計測を行っている。一方で、このような技術を、例えば河川水や工場排水のモニタリングに利用する場合、測定の度に容器を交換するのではなく、連続的に試料をサンプリングして測定することが求められる。このように、連続的に試料の液体をサンプリングして測定を可能とするものとして、特許文献1が知られている。特許文献1は、送液ポンプによって試料室に試料の液体を給液し、当該試料室内の液体を測定している。更に、チューブポンプを用いて試料室に試料を給液する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第93/12415号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1では、送液ポンプによって試料室に液体を給液するときに、液体中の細胞などの物体が破壊されてしまう可能性がある。例えば、チューブポンプを用いる場合、送液の際にチューブローラーで圧迫されることにより液体中の細胞などにダメージが発生してしまう。また、これらの装置では、測定を行う試料室とは別に、ポンプなどの外部装置が必要になってしまう。これによって、装置が大型化してしまい、コストが掛かるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、装置の小型化を図ると共に、液体中の物体にダメージを与えることなく連続的なサンプリングと測定を可能とする測定用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る測定用容器は、液体の測定に用いられる測定用容器であって、液体を収容する容器本体部と、容器本体部の内部で往復動を行うピストンと、容器本体部の内部へ液体を流入させる流入口と、容器本体部の内部の液体を排出させる排出口と、を備え、ピストンは、容器本体部の内部を移動することによって、流入口からの液体の給液と、排出口からの液体の排液を行い、容器本体部は、液体の測定が行われる試料室を構成することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る測定用容器によれば、ピストンは、容器本体部の内部を移動することによって、流入口からの液体の給液と、排出口からの液体の排液を行うことができる。このように、ピストンの移動によって給液と排液を繰返すことができるため、液体を連続的にサンプリングすると共に測定することが可能となる。また、ピストン動作によって吸引して液体を給液する方式では、他の方式とは異なり、細胞などの液体中の物体にダメージを与えることなく給液することが可能となる。更に、ピストンが往復動する容器本体部自体が、試料室を構成している。すなわち、送液機構と試料室を統合することで、構造の単純化を図ることができる。これにより、装置の小型化を図ることができると共に、コストを抑えることもできる。以上によって、装置の小型化を図ると共に、液体中の物体にダメージを与えることなく連続的なサンプリングと測定が可能になる。
【0008】
本発明に係る測定用容器において、ピストンは、容器本体部の内周面を洗浄する洗浄具を有することが好ましい。ピストンの往復動に伴って洗浄具も移動するため、液体の送液と同時に容器本体部の内周面の洗浄も行うことができる。このように、送液機構、試料室、洗浄機構を統合することで、更なる構造の単純化を図ることができる。
【0009】
本発明に係る測定用容器において、排出口は、ピストンの移動方向における少なくとも一方に形成され、洗浄具は、排出口側に設けられることが好ましい。これにより、排出口側で洗浄具は容器本体部の内周面から汚れを除去し、排出口側の液体中に漂う汚れをピストンの移動により直ちに排出口から排出できる。
【0010】
本発明に係る測定用容器において、排出口は、ピストンの移動方向における一方に形成され、流入口は、移動方向における他方に形成され、ピストンは、流入口側から排出口側へ向かう液体の通過を許容し、排出口側から流入口側へ向かう液体の通過を制限する弁構造を有し、ピストンが排出口側から流入口側へ移動することによって、当該ピストンより流入口側の液体を弁を介してピストンより排出口側へ移動させ、ピストンが流入口側から排出口側へ移動することによって、既存の液体はピストンに圧送されて排出口から排液され、新たな液体がピストンに吸引されて流入口から給液されることが好ましい。このような構成により、排出口をピストンを介して流入口の反対側に配置することが可能となる。このように排出口を流入口の反対側に配置することで、流入口側に残存する汚れを少なくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置の小型化を図ると共に、試料の液体中の物体にダメージを与えることなく連続的なサンプリングと測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る測定用容器の構成を示した概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る測定用容器の動作を示す図である。
【図3】一般的な藻類の光学計測装置を示す図である。
【図4】図3の光学計測装置に第1実施形態に係る測定用容器を適用した図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る測定用容器の構成を示した概略構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る測定用容器の動作を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る測定用容器の構成を示した概略構成図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る測定用容器の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
本発明の実施形態に係る測定用容器1は、測定対象となる液体を収容し、測定用の装置にセットされ、測定を行うためのものである。測定用容器1は、全体としてピストンポンプとして動作するものであり、試料室、送液機構、洗浄機構を一つのユニットにまとめたものである。試料として測定される液体は、例えば、一定量の検体液と藻類細胞懸濁液を混合した液体や、河川水、工場排水、上水、下水、飲料水などである。また、測定方法としては、光学測定の他、電磁波、テラヘルツ波、NMRなどの計測容器を非破壊で観察可能な計測手法が適用される。図1に示すように、測定用容器1は、容器本体部2と、ピストン3と、流入口4と、排出口6と、を備えている。
【0014】
容器本体部2は、試料の液体を収容するものであり、当該液体が測定される試料室として機能する部分である。光学測定を行う場合、容器本体部2は、光学測定に適した形状・材質で構成されている。なお、他の計測手法を適用する場合、それぞれの手法に適した形状・材質で構成する。容器本体部2は、光を透過させることができる材質からなり、例えば、ガラスや樹脂などからなる。容器本体部2は、内部でピストン3が往復動できるように、所定の断面形状で一の方向へ真直ぐに延びた管状部11と、当該管状部11の両端を封止する端壁部12,13を備えている。管状部11の形状は特に限定されないが、円筒状とすることによって、洗浄のためにピストン3の回転を可能とすることが好ましい。
【0015】
容器本体部2の端壁部13には、液体を容器本体部2の内部へ流入させる流入口4が設けられている。流入口4は、端壁部13に開口部が設けられ当該開口部に管を接続した構成を有する。また、端壁部13には、流入口4から容器本体部2へ向かう液体の通過を許容し、容器本体部2から流入口4へ向かう液体の通過を制限する流入弁14が設けられている。容器本体部2の端壁部12には、液体を容器本体部2の内部から排出させる排出口6が設けられている。排出口6は、端壁部12に開口部が設けられ当該開口部に管を接続した構成を有する。なお流入口4及び排出口6は、各端壁部13,12以外にも、管状部11の側面に設けても良い。ただし、この場合、流入口4は、ピストン3のシームライン16の移動範囲外であって端壁部13側になければならない。同様に、排出口6は、ピストン3のシームライン16の移動範囲外であって、端壁部12側になければならない。
【0016】
ピストン3は、容器本体部2の内部で往復動を行う。ピストン3は、容器本体部2の内周面2aに対応する形状・大きさを有しており、外周縁であるシームライン16で容器本体部2の内周面2aとすり合わせられる。また、ピストン3には、容器本体部2の内周面2aを洗浄するための洗浄具17が設けられている。洗浄具17の洗浄方法として、容器本体部2よりも柔らかく傷を付けにくいブラシ、スポンジ、ゴム板、精密にすり合わせるように設計された硬質の板によりこすり落とす方法などが利用できる。洗浄具17は、ピストン3のどちら側に設けられていてもよいが、排出口6側に設けられることが好ましい。ピストン3及び洗浄具17は、貫通孔18を有している。当該貫通孔18には、流入口4側から排出口6側へ液体の通過を許容し、排出口6側から流入口4側への液体の通過を制限するピストン弁19が設けられている。
【0017】
ピストン3は、容器本体部2の外側から操作できるように、シャフト21によって保持されている。なお、貫通孔18を回避すべく、シャフト21は、アーム22を介してピストン3と連結されている。なお、貫通孔18とシャフト21の取付け位置をずらすことによりアーム22を省略することができる。シャフト21には、例えばギアやモータなど、図示されない駆動機構が連結されており、容器本体部2内部でのピストン3の往復動を可能としている。また、洗浄効果を高めるために、駆動機構は、ピストン3を回転運動しながら往復動させるように構成されていることが好ましい。例えば、シャフト21に螺旋状のネジを切り(またはらせん状のネジが切られた部材を取り付ける)、ギアとモータの組み合わせで回転運動を伴って往復動させることができる。端壁部12は、シャフト21との間にシール部23を備えている。なお、ピストン3は、シャフト21の操作による移動ではなく、他の方法によって往復動してもよい。例えば、磁石などの非接触の力場によりピストン3を往復動させてもよい。例えば、容器本体部2を介してピストン3を取り囲むように、容器本体部2の外周面に環状の磁石を配置してもよい。当該環状の磁石を回転させながら往復動させることで、それにあわせてピストン3も回転しながら往復動できる。
【0018】
また、測定用容器1には、液体が逆流することを防止する逆流防止構造が適用されていることが好ましい。逆流とは、例えば図2の「保持」の状態、すなわち測定の状態で、排出した液体が排出口6側から逆流してしまうことである。この場合、測定中にピストン3が下がってしまう。逆流防止構造の例として、排出口6の管の途中に電磁弁などを設ける構造が挙げられる。また、ピストン弁19を強固にして確実に逆流が起きないようにする構造が挙げられる。
【0019】
次に、図2を参照して、測定用容器1の動作について説明する。
【0020】
まず、「待機1」の状態ではピストン3は流入口4側に配置されている。「給排液1」ではピストン3が排出口6側に移動する。このとき、ピストン3のピストン弁19は閉じた状態となり、流入弁14は開いた状態となる。これによって、ピストン3に吸引された液体Lが、流入弁14を介して容器本体部2の内部に流入する。一方、もともと容器本体部2内に存在していた液体は、排出口6から排出される。なお、液体の流れを理解し易くするために、「待機1」及び「給排液1」では、今回流入する液体Lのみに模様を付し、排出される既存の液体には模様を付していない。ピストンが排出口6側の所定位置まで移動完了すると「保持」状態になる。「保持」状態で容器本体部2内の液体Lの光学測定が行われる。このとき、容器本体部2は試料室として機能する。
【0021】
その後、「移動洗浄」に移行し、ピストン3が流入口4側に移動する。このとき、ピストン弁19は開いた状態となり、流入弁14は閉じた状態となる。これにより、流入口4側の液体Lは、ピストン弁19を介して排出口6側へ移動する。一方、流入弁14は液体Lの通過を制限し、流入口4へ液体Lが逆流することが防止される。このときにピストン3に取付けられた洗浄具17が容器本体部2の内周面に付着した藻類、藻類分泌物、試料に含まれる汚れ(図中Pで示される)などを洗浄する。このときに排出される汚れPは、ピストン3のシームライン16で制限されることにより、ピストン3のシームライン16よりも流入口4側には混入しないようになっている。一方、汚れPの一部は、ピストン3のシームライン16で削ぎ落とされることにより、流入口4側の液体L中にも排出される。これらの汚れPは、ピストン3のピストン弁19を介して流入口4側から排出口6側へ移動する液体Lの液流に乗って、排出口6側へ移動する。ピストン3が流入口4側の所定位置まで移動すると移動洗浄が完了する。なお、ピストン3のシームライン16よりも流入口4側に僅かに液体Lが残存し汚れPが残る可能性はあるものの、全体の容積に比べれば極めて微量であり、次の測定に影響を及ぼすことはない(なお、繰り返しの測定により、汚れの影響が出る場合は、容器本体部2自体を交換すればよい)。
【0022】
その後、「給排液2」に移行する。当該工程では、ピストン3は再び排出口6側に移動する。このとき、ピストン弁19は閉じた状態となり、流入弁14は開いた状態となる。従って、ピストン3のシームライン16よりも排出口6側にある液体Lはピストン3よりも流入口4側に移動することはなく、移動するピストン3に圧送されて排出口6から容器本体部2の外に排出される。このときに「移動洗浄」の際に発生する汚れPが一緒に排出される。なお、容器本体部2が円筒状に設計されていれば、ピストン3を移動する際にピストン3を外周にそって回転させることにより、洗浄具17も回転しながら移動するため洗浄効果を高めることができる。また、「移動洗浄」と「給排液2」を繰り返すことによっても洗浄効果を高めることができる。一方、流入口4側では、移動するピストン3に吸引されて新たな液体が容器本体部2へ流入する。従って、「給排液2」が完了すると試料室として機能する容器本体部2に新鮮な液体が充填され再び「保持状態」となり、測定可能な状態となる。なお、液体の流れを理解し易くするために、「給排液2」では、今回排出される液体Lのみに模様を付し、流入する既存の液体には模様を付していない。
【0023】
本実施形態に係る測定用容器1は、以上の手順により、細胞懸濁液のような液体試料の連続的なサンプリング、光学測定、洗浄を細胞にダメージを与えることなく、ピストン3の往復のみで実現することができる。
【0024】
次に、本実施形態に係る測定用容器1を従来の光学計測装置に組み合わせた例について説明する。また、従来構造と本実施形態に係る測定用容器1を適用した構造の比較も行う。
【0025】
図3は一般的な藻類の光学計測装置を示している。この光学計測装置100は、遅延発光計測装置であり、試料容器Vが収納される第1の部屋101と、第2の部屋102と、第1の部屋101に設けられる励起光源103と、第2の部屋102に配置された光電子増倍管104と、第1の部屋101と第2の部屋102との間を仕切るシャッター106と、を備えている。試料容器Vの形状はたとえば直径25mmの試験管である。「励起」の状態では、試料の液体Lが充填された試料容器Vを第1の部屋101に収納し、シャッター106を閉じ、励起光源103で液体Lに励起光を照射する。「計測」の状態では、励起光源103を消灯し、シャッター106を開ける。これにより、光電子増倍管104が、試料の液体Lから発生する遅延発光DLを検出する。図3の構成では、一回の測定が終わった後、試料容器Vを取り出して別の試料容器Vに入れ替え、次の測定を行う。
【0026】
藻類の光学計測を利用して連続サンプリングにより測定を行う場合、従来構造として、図3の構成に対して図4(詳細は後述)で示すような曝露培養槽110と、当該曝露培養槽110から試料容器へ延びる給液管111と、試料容器から外部へ延びる排液管を追加すると共に、給液管111に、チューブポンプやその他のポンプなどの送液ポンプを設置する構成が知られている。この場合、藻類の細胞密度を一定もしくは所定の細胞密度範囲に制御された状態の藻類懸濁液を、有害要因を含む可能性のある試料(河川水や排水など)を連続的に採取したものと曝露培養槽110などで混合する。送液ポンプを作動させることによって、曝露培養槽110から一定量の混合試料の液体Lを光学計測装置100内の試料室に送液する。
【0027】
ここで、連続サンプリングによる測定を行う場合、試料室内壁に藻類およびその分泌物、試料中の汚れなどが付着するために定期的に内壁を洗浄するか容器自体を交換する必要がある。このような要求に対し、計測後、試料室を洗浄する機構を持つ構造も知られている。このような従来構造では、試料室を洗浄するために計測後に塩水を試料室に流入させ藻類を殺している。このような手法では、塩水が試料である淡水性藻類に対して毒性的な影響を及ぼさなくなるように、塩水を洗い流した上で次の計測を行う必要がある。
【0028】
上述のような従来構造によれば、次のような問題がある。すなわち、送液ポンプによって試料室に液体を給液するときに、液体中の細胞が破壊されてしまう可能性がある。例えば、チューブポンプを用いる場合、送液の際にチューブローラーで圧迫されることにより液体中の細胞にダメージが発生してしまう。更には、従来構造によれば、測定を行う試料室とは別に、ポンプや洗浄用の装置など、外部装置が必要になってしまう。すなわち、従来構造では、送液機構、試料室、洗浄機構が個別になっているために、装置全体として大型化してしまうと共にコストが増大するという問題がある。また、稼働部品が増えることによりそれらの連携の為の制御機構の複雑化、故障原因の増加も引き起こされる。
【0029】
図4は一般的な光学計測装置に本実施形態に係る測定用容器を適用した構造を示している。本実施形態に係る測定用容器1を利用する場合、既存装置の試料容器サイズ(直径25mm試験管)に合わせてピストンポンプ型の試料室を設計すれば、既存装置の構成を大きく改造することなく、既存の試料容器Vと置き換えることができる。このとき、少なくとも流入口4と排出口6は装置外に流路が延長される必要がある(流入口4側には給液管111が設けられる)。流入口4、排出口6は装置筐体を貫通するため外部光の進入が問題となるが、貫通する流路を光が通過しない素材としかつ光迷路構造とするなど一般的な対策で解決できる。流入口4の給液管111を既存技術で構成された曝露培養槽110に連結し、測定用容器1のピストンポンプを動作させ、保持状態の時に従来の光学計測装置100を動作させることにより、通常通り光学計測を行うことができる。計測終了後は図2に示す「移動洗浄」と「給排液2」の動作を行うことで洗浄を行うと共に、連続的に試料をサンプリングして計測することができる。以上のように、本実施形態に係る測定用容器1を取付けることにより、既存装置の検出器等の基本構成はそのままに、最小限の改造で連続サンプリングによる計測に対応することができる。このように、試料室、送液ポンプ、洗浄具など複数の部位に分かれていたものを統合した単純なピストンポンプの構造を取っているため、試料室の大きさは小型から大型まで容易に変えることができる。このため測定用容器1を利用することにより既存の光学計測装置100の構成を大きく変えずに連続サンプリング型の計測装置として利用することができるようになる。
【0030】
以上によって、本実施形態に係る測定用容器1によれば、ピストン3は、容器本体部2の内部を移動することによって、流入口4からの液体の給液と、排出口6からの液体の排液を行うことができる。このように、ピストン3の移動によって給液と排液を繰返すことができるため、液体を連続的にサンプリングすると共に測定することが可能となる。また、ピストン動作によって吸引して液体を給液する方式では、他の方式とは異なり、細胞などの液体中の物体にダメージを与えることなく給液することが可能となる。更に、ピストン3が往復動する容器本体部2自体が、試料室を構成している。すなわち、送液機構と試料室を統合することで、構造の単純化を図ることができる。これにより、装置の小型化を図ることができると共に、コストを抑えることもできる。以上によって、装置の小型化を図ると共に、液体中の物体にダメージを与えることなく連続的なサンプリングと測定が可能になる。
【0031】
また、本実施形態に係る測定用容器1において、ピストン3は、容器本体部2の内周面2aを洗浄する洗浄具を有している。ピストン3の往復動に伴って洗浄具17も移動するため、液体の送液と同時に容器本体部2の内周面2aの洗浄も行うことができる。このように、送液機構、試料室、洗浄機構を統合することで、構造の単純化を図ることができる。
【0032】
また、本実施形態に係る測定用容器1において、排出口6は、ピストン3の移動方向における一方に形成され、洗浄具17は、排出口6側に設けられることが好ましい。これにより、排出口6側で洗浄具17は容器本体部2の内周面2aから汚れを除去し、排出口6側の液体中に漂う汚れをピストン3の移動により直ちに排出口6から排出できる。
【0033】
また、本実施形態に係る測定用容器1において、排出口6は、ピストン3の移動方向における一方に形成され、流入口4は、移動方向における他方に形成され、ピストン3は、流入口4側から排出口6側へ向かう液体の通過を許容し、排出口6側から流入口4側へ向かう液体の通過を制限するピストン弁19を有している。このような構成により、排出口をピストンを介して流入口の反対側に配置することが可能となる。このように排出口を流入口の反対側に配置することで、流入口側に残存する汚れを少なくすることができる。また、洗浄具17自体に汚れがたまったとしても、流入口4側から新たに流入した液体に、当該たまった汚れが混入することが防止される。
【0034】
[第2実施形態]
図5及び図6を参照して、第2実施形態に係る測定用容器50について説明する。第2実施形態に係る測定用容器50は、排出口6と流入口4が同じ方向に設けられている点で、第1実施形態に係る測定用容器1と主に相違している。図5に示すように、容器本体部52は、管状部61と端壁部62,63を有しており、一方の端壁部63に流入口4と排出口6が設けられている。排出口6には、排出方向へのみ液体の通過を許容する排出弁69が設けられている。ピストン53には貫通孔は設けられていない。洗浄具67は、排出口6側(流入口4側と同方向である)に設けられている。本実施形態に係るピストン53も、第1実施形態に係るピストン3と同様に、移動方法は特に限定されない。なお流入口4及び排出口6は、端壁部63以外にも、管状部61の側面に設けても良い。ただし、この場合、流入口4及び排出口6は、ピストン53のシームライン16の移動範囲外であって端壁部63側になければならない。
【0035】
図6(a)に示すように、給液の時は、流入口4(及び排出口6)から離れる方向へピストン3が移動することにより、吸引されて流入口4から液体Lが流入する。このとき、流入弁14は開き、排出弁69は閉じる。これにより、容器本体部52に液体Lが充填され、当該状態でピストン3を保持し、測定を行う。図6(b)に示すように、排液の時は、排出口6(及び流入口4)側へピストン3が移動することにより、排出口6から液体Lが排出される。このとき、流入弁14は閉じ、排出弁69は開く。また、排液のためのピストン3の移動に合わせて、洗浄具67で容器本体部52の内周面52aを洗浄する。発生した汚れPは、直ちに排出口6から排出される。
【0036】
以上のように、排出口6を流入口4と同じ方向に設けても、試料室、送液機構、洗浄機構を統合して単純化を図ることができ、第1実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。第2実施形態に係る測定用容器50では、試料室はひとつの区画となるが、試料室の気密性はピストン53のシームライン16により保たれるので、シャフト21が試料室を貫通するためのシール部23が不完全であったとしても、試料の液体の漏出が少ないというメリットがある。
【0037】
[第3実施形態]
図7及び図8を参照して、第3実施形態に係る測定用容器70について説明する。第3実施形態に係る測定用容器70は、ピストン73に設けられている貫通孔88がそのまま排出口6として機能する点で、第1実施形態に係る測定用容器1と主に相違している。図7に示すように、第1実施形態のシャフト21に代えて、中空のシャフト81がピストン73の貫通孔88と連通するように設けられている。この中空のシャフト81は、その内部が排出口6と連結すると共に、排出される液体を容器本体部72の外部へ導く排出流路として機能する。ピストン弁89は、排出方向へのみ液体の通過を許容する排出弁として機能する。容器本体部72は、管状部11及び端壁部13については第1実施形態と同様な構成であるが、端壁部82については、中空のシャフト81が排出管とシャフトとを兼ねた構成となっているため、当該シャフト81の位置のみで開口し、シャフト81を取り囲むようにシール83が設けられる。洗浄具87は、排出口6側(すなわち流入口4側と同方向である)に設けられている。本実施形態に係るピストン73も、第1実施形態に係るピストン73と同様に、移動方法は特に限定されない。なお流入口4は、端壁部13以外にも、管状部11の側面に設けても良い。ただし、この場合、流入口4は、ピストン73のシームライン16の移動範囲外であって端壁部13側になければならない。
【0038】
図8(a)に示すように、給液の時は、流入口4から離れる方向へピストン73が移動することにより、吸引されて流入口4から液体Lが流入する。このとき、流入弁14は開き、ピストン弁89は閉じる。これにより、容器本体部72に液体Lが充填され、当該状態でピストン73を保持し、測定を行う。図8(b)に示すように、排液の時は、流入口4側へピストン73が移動することにより、排出口6から液体Lが排出される。このとき、流入弁14は閉じ、ピストン弁89は開く。また、排液のためのピストン73の移動に合わせて、洗浄具87で容器本体部72の内周面72aを洗浄する。発生した汚れPは、直ちに排出口6から排出される。
【0039】
以上のように、排出口6を流入口4と同じ方向に設けても、試料室、送液機構、洗浄機構を統合して単純化を図ることができ、第1実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。第3実施形態に係る測定用容器70では、試料室はひとつの区画となるが、試料室の気密性はピストン73のシームライン16により保たれるので、シャフト81が試料室を貫通するためのシール部83が不完全であったとしても、試料の液体の漏出が少ないというメリットがある。
【0040】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、容器本体部やピストンの形状、大きさ等は、適用する測定装置に合わせて適宜変更してもよい。また、洗浄具が設けられていなくともよい。また、ピストンポンプの方式で送液を行うことができれば、その他の構成は特に限定されず、上述で説明した形態にて弁を設けた構成を作用しているが、別の構造を採用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1,50,70…測定用容器、2,52,72…容器本体部、3,53,73…ピストン、4…流入口、6…排出口、17,67,87…洗浄具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の測定に用いられる測定用容器であって、
前記液体を収容する容器本体部と、
前記容器本体部の内部で往復動を行うピストンと、
前記容器本体部の内部へ前記液体を流入させる流入口と、
前記容器本体部の内部の前記液体を排出させる排出口と、を備え、
前記ピストンは、前記容器本体部の内部を移動することによって、前記流入口からの前記液体の給液と、前記排出口からの前記液体の排液を行い、
前記容器本体部は、前記液体の測定が行われる試料室を構成することを特徴とする測定用容器。
【請求項2】
前記ピストンは、前記容器本体部の内周面を洗浄する洗浄具を有することを特徴とする請求項1記載の測定用容器。
【請求項3】
前記排出口は、前記ピストンの移動方向における少なくとも一方に形成され、
前記洗浄具は、前記排出口側に設けられることを特徴とする請求項2記載の測定用容器。
【請求項4】
前記排出口は、前記ピストンの移動方向における一方に形成され、前記流入口は、前記移動方向における他方に形成され、
前記ピストンは、前記流入口側から前記排出口側へ向かう前記液体の通過を許容し、前記排出口側から前記流入口側へ向かう前記液体の通過を制限する弁を有し、
前記ピストンが前記排出口側から前記流入口側へ移動することによって、当該ピストンより前記流入口側の前記液体を前記弁を介して前記ピストンより前記排出口側へ移動させ、
前記ピストンが前記流入口側から前記排出口側へ移動することによって、既存の前記液体は前記ピストンに圧送されて前記排出口から排液され、新たな前記液体が前記ピストンに吸引されて前記流入口から給液されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の測定用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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