説明

測定結果チェック方法、測定結果チェックシステム、測定結果チェック装置、及びコンピュータプログラム

【課題】 尿の比重及び導電率の測定結果をチェックして、当該測定結果の信頼性を評価することが可能な測定結果チェック方法、測定結果チェックシステム、測定結果チェック装置、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】 本発明に係る測定結果チェックシステム1は、分析対象として与えられた尿の比重を測定する尿定性分析装置2と、前記尿の導電率を測定する尿中有形成分分析装置3と、尿の比重と導電率との相関関係を記憶する記憶部と、前記尿定性分析装置2によって測定された尿の比重と前記尿中有形成分分析装置3によって測定された尿の導電率とが、前記記憶部に記憶された相関関係に適合するか否かを判別する判別手段と、当該判別手段の判別結果を出力する出力手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿分析における測定結果をチェックする測定結果チェック方法、その実施に使用される測定結果チェックシステム、測定結果チェック装置、及びコンピュータを測定結果チェック装置として機能させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
尿検査に用いられる尿分析装置として、尿定性分析装置と、尿中有形成分分析装置とが広く知られている。尿定性分析装置は、一般的に、各測定項目別の反応試験片を貼付した試験紙を所定時間、被検尿試料に浸し試験片の色を判定用基準色と比較し、各項目について陰性/陽性の結果(−)(±)(+)…を自動的に得るように構成されている(例えば、特許文献1参照)。また、尿中有形成分分析装置は、被検尿試料中の有形成分を自動的に分類及び計数するように構成されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
これらの尿定性分析装置及び尿中有形成分分析装置は、測定容量、尿中に含まれる夾雑物等の影響により測定精度が低下する場合がある。そこで、尿定性分析装置の測定結果と、尿中有形成分分析装置の測定結果とのうち相関関係の高いもの同士を相互にチェックし、これらの測定結果の信頼性を評価する測定結果チェック装置が提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
一方、尿定性分析装置の測定項目の一つである尿の比重については、尿の導電率と高い相関関係があることが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平2−27262号公報
【特許文献2】特開平5−322885号公報
【特許文献3】特開平9−218197号公報
【特許文献4】特開平2−149254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献3に開示されているクロスチェック装置にあっては、比重についての測定結果をチェックするようには構成されておらず、比重の測定結果の信頼性が低い場合があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、尿の比重の測定結果をチェックして、当該測定結果の信頼性を評価することが可能な測定結果チェック方法、その実施に使用される測定結果チェックシステム、測定結果チェック装置、及びコンピュータを測定結果チェック装置として機能させるためのコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の他の目的は、尿の比重と同様の臨床的意義を有する尿の導電率の測定結果をチェックして、当該測定結果の信頼性を評価することが可能な測定結果チェック方法、その実施に使用される測定結果チェックシステム、測定結果チェック装置、及びコンピュータを測定結果チェック装置として機能させるためのコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る測定結果チェック方法は、分析対象として与えられた尿の比重を測定するステップと、前記尿の導電率を測定するステップと、測定した尿の比重と導電率とが、予め与えられた尿の比重と導電率との相関関係に適合するか否かを判別するステップと、測定した尿の比重と導電率とが前記相関関係に適合しない場合に、当該尿の比重及び導電率は信頼性が低い旨を表示するステップとを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る測定結果チェックシステムは、分析対象として与えられた尿の比重を測定する第1分析装置と、前記尿の導電率を測定する第2分析装置と、尿の比重と導電率との相関関係を記憶する記憶部と、前記第1分析装置によって測定された尿の比重と前記第2分析装置によって測定された尿の導電率とが、前記記憶部に記憶された相関関係に適合するか否かを判別する判別手段と、当該判別手段の判別結果を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る測定結果チェック装置は、分析対象の尿の比重を取得する比重取得手段と、前記尿の導電率を取得する導電率取得手段と、尿の比重と導電率との相関関係を記憶する記憶部と、前記比重取得手段によって取得された尿の比重と前記導電率取得手段によって取得された尿の導電率とが、前記記憶部に記憶された相関関係に適合するか否かを判別する判別手段と、当該判別手段の判別結果を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。なお、ここでいう「取得」とは、外部から比重又は導電率を示す信号を受信する等して取得する場合の他、測定結果チェック装置で比重又は導電率を測定することによって取得する場合をも含むものである。
【0012】
また、本発明に係るコンピュータプログラムは、外部の装置との間でデータ通信することが可能な通信部と、記憶部と、表示部とを有するコンピュータを、前記通信部によって分析対象の尿の比重を外部から取得する比重取得手段と、前記通信部によって前記尿の導電率を外部から取得する導電率取得手段と、前記比重取得手段によって取得された尿の比重と前記導電率取得手段によって取得された尿の導電率とが、前記記憶部に予め記憶された尿の比重と導電率との相関関係に適合するか否かを判別する判別手段と、当該判別手段の判別結果を前記表示部に表示する表示手段として機能させることを特徴とする。
【0013】
このようにすることにより、高い相関関係が認められる比重と導電率とを相互にチェックして、比重及び導電率の測定結果の信頼性を評価することができる。
【0014】
上記発明においては、前記第2分析装置は、前記尿を温度制御する温度制御部を有し、当該温度制御部によって温度制御された前記尿の導電率を測定するように構成されていることが好ましい。
【0015】
このようにすることにより、温度変化によって導電率が変化することを防止することができ、導電率の測定結果の信頼性を向上させることができる。
【0016】
上記発明においては、前記尿の糖濃度を測定する糖濃度測定部と、当該糖濃度測定部によって測定された糖濃度と、予め与えられた閾値とを比較する比較手段とをさらに備え、前記出力手段は、当該比較手段の比較の結果、前記糖濃度が前記閾値を超える場合に、測定した尿の導電率は信頼性が低い旨を出力するように構成されていることが好ましい。
【0017】
本願発明者らは、尿の糖濃度が導電率に強い影響を及ぼすことを知見した。そこで、このようにすることにより、尿の糖濃度に基づいて尿の導電率の測定結果の信頼性を評価することができる。
【0018】
上記発明においては、尿の比重と導電率との相関関係の入力を受け付ける設定受付手段と、当該設定受付手段によって入力を受け付けた尿の比重と導電率との相関関係を、前記記憶部に書き込む書込手段とをさらに備える構成とすることが好ましい。このようにすることにより、ユーザが尿の比重と導電率との相関関係を調整することができる。
【0019】
上記発明においては、前記第2分析装置は、オリフィスが設けられており、当該オリフィスに分析対象の尿が含まれた試料を通流させるためのフローセルと、前記オリフィスを挟んで設けられた一対の電極と、当該電極間に電流を供給する電源と、前記試料の導電率を測定する導電率センサと、当該導電率センサの測定値に基づいて、前記電源から前記電極間に供給される電流を制御する電流制御部と、前記電極間のインピーダンス変化を検出するインピーダンス変化検出部とを有し、前記インピーダンス変化検出部によって検出されるインピーダンスの変化に基づいて、前記オリフィスを通過する尿中有形成分の形態を検出するように構成されていることが好ましい。
【0020】
このようにすることにより、フローサイトメトリー方式による尿中有形成分の形態検出の精度向上が可能であると共に、尿の導電率を求めることが可能となる。また、尿の導電率を測定するための導電率センサを尿中有形成分の形態検出構造と共用することができ、装置構成の簡素化が可能となる。
【0021】
上記発明においては、前記第1分析装置は、尿の潜血濃度を測定するように構成されており、前記第2分析装置は、尿の赤血球濃度を測定するように構成されており、前記記憶部は、尿の潜血濃度と赤血球濃度との相関関係を記憶しており、前記第1分析装置によって測定された尿の潜血濃度と前記第2分析装置によって測定された尿の赤血球濃度とが、前記記憶部に記憶された尿の潜血濃度と赤血球濃度との相関関係に適合するか否かを判別する判別手段をさらに備え、前記出力手段は、当該判別手段の判別結果を出力するように構成されていることが好ましい。
【0022】
これにより、尿の比重と導電率の測定結果のチェックに加えて、高い相関関係を示す尿の潜血濃度と赤血球濃度との測定結果チェックを行うことができ、より一層測定結果の信頼性について多様な評価を行うことができる。
【0023】
上記発明においては、前記第1分析装置は、尿の白血球濃度を測定するように構成されており、前記第2分析装置は、尿の白血球濃度を測定するように構成されており、前記記憶部は、尿の白血球濃度の相関関係を記憶しており、前記第1分析装置によって測定された尿の白血球濃度と前記第2分析装置によって測定された尿の白血球濃度とが、前記記憶部に記憶された尿の白血球濃度の相関関係に適合するか否かを判別する判別手段をさらに備え、前記出力手段は、当該判別手段の判別結果を出力するように構成されていることが好ましい。
【0024】
これにより、尿の比重と導電率の測定結果のチェックに加えて、尿の白血球濃度の測定結果チェックを行うことができ、より一層測定結果の信頼性について多様な評価を行うことができる。
【0025】
上記発明においては、前記第1分析装置は、尿の蛋白濃度を測定するように構成されており、前記第2分析装置は、尿の円柱濃度を測定するように構成されており、前記記憶部は、尿の蛋白濃度と円柱濃度との相関関係を記憶しており、前記第1分析装置によって測定された尿の蛋白濃度と前記第2分析装置によって測定された尿の円柱濃度とが、前記記憶部に記憶された尿の蛋白濃度と円柱濃度との相関関係に適合するか否かを判別する判別手段をさらに備え、前記出力手段は、当該判別手段の判別結果を出力するように構成されていることが好ましい。
【0026】
これにより、尿の比重と導電率の測定結果のチェックに加えて、高い相関関係を示す尿の蛋白濃度と円柱濃度との測定結果チェックを行うことができ、より一層測定結果の信頼性について多様な評価を行うことができる。
【0027】
上記発明においては、前記第1分析装置は、尿の亜硝酸塩濃度を測定するように構成されており、前記第2分析装置は、尿の細菌濃度を測定するように構成されており、前記記憶部は、尿の亜硝酸塩濃度と細菌濃度との相関関係を記憶しており、前記第1分析装置によって測定された尿の蛋白濃度と前記第2分析装置によって測定された尿の細菌濃度とが、前記記憶部に記憶された尿の亜硝酸塩濃度と細菌濃度との相関関係に適合するか否かを判別する判別手段をさらに備え、前記出力手段は、当該判別手段の判別結果を出力するように構成されていることが好ましい。
【0028】
これにより、尿の比重と導電率の測定結果のチェックに加えて、高い相関関係を示す尿の亜硝酸塩濃度と細菌濃度との測定結果チェックを行うことができ、より一層測定結果の信頼性について多様な評価を行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る測定結果チェック方法、測定結果チェックシステム、測定結果チェック装置、及びコンピュータプログラムによれば、高い相関関係が認められる比重と導電率とを相互にチェックして、比重及び導電率の測定結果の信頼性を評価することができる。また、尿検査精度が向上し、臨床診断に役立つ等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態に係る測定結果チェック方法、測定結果チェックシステム、測定結果チェック装置、及びコンピュータプログラムについて、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る測定結果チェックシステムの構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係る測定結果チェックシステム1は、尿定性分析装置2と、尿中有形成分分析装置3と、搬送装置4及び5と、コンピュータ6とによって主として構成されている。コンピュータ6は、尿定性分析装置2及び尿中有形成分分析装置3と電気的に接続されており、尿定性分析装置2及び尿中有形成分分析装置3と相互にデータ通信をすることが可能となっている。
【0032】
図2は、本実施の形態に係る測定結果チェックシステム1の部分構成を示す斜視図である。図2に示すように、尿定性分析装置2と尿中有形成分分析装置3とは、隣り合って配置されており、尿定性分析装置2の前方には搬送装置4が、尿中有形成分分析装置3の前方には搬送装置5が配置されている。搬送装置4と搬送装置5とは、互いにボルト等によって結合されており、後述するように検体を搬送装置4,5間で連続搬送することができるようになっている。搬送装置4は、検体を尿定性分析装置2に自動的に供給することができるように構成されており、搬送装置5は、搬送装置4から受け取った検体を尿中有形成分分析装置3に自動的に供給することができるように構成されている。
【0033】
図3は、尿定性分析装置2の構成を示すブロック図である。尿定性分析装置2は、図3に示すように、CPU,ROM,RAM等から構成された制御部21と、コンピュータ6との間でデータの送受信を行う通信部22と、供給された検体に各測定項目(潜血濃度、蛋白濃度、白血球濃度(白血球エステラーゼ反応)、亜硝酸塩濃度、及びブドウ糖濃度)に対応した試験紙を浸し、夫々の試験紙の変色の度合いから各測定項目について測定する第1測定部23と、前記検体の屈折率を検出し、当該屈折率から検体の比重を測定する第2測定部24とから主として構成されている。かかる尿定性分析装置2は、潜血濃度、蛋白濃度、白血球濃度、亜硝酸塩濃度、及びブドウ糖濃度については、試験紙の変色度合いを(−)、(±)、(+)、(2+)、(3+)、…、(7+)の9段階に自動的に分類し、夫々に対応する測定結果データを通信部22からコンピュータ6へ送信し、比重については、その測定値を示す測定結果データを通信部22からコンピュータ6へ送信するように構成されている。
【0034】
図4は、尿中有形成分分析装置3の構成を示すブロック図である。尿中有形成分分析装置3は、図4に示すように、CPU,ROM,RAM等から構成された制御部31と、コンピュータ6との間でデータの送受信を行う通信部32と、供給された検体に対してフローサイトメトリー方式で尿中有形成分(赤血球、白血球、円柱、細菌等)に関する各測定項目の測定値を得るための測定部33とから主として構成されている。
【0035】
図5は、尿中有形成分分析装置3の要部の構成を示す模式図である。測定部33は、反応部33aを有しており、搬送装置5によって搬送された尿検体(試料)を試料吸引ピペット(図示せず)によって吸引し、希釈液、染色液とともに前記試料を当該反応部33aへ導入するようになっている。反応部33aでは、試料を希釈液及び染色液と混合され、これによって尿は4倍に希釈される。反応部33aは、撹拌機構と、サーミスタ等のヒータを有する温度制御部とを有しており、導入された試料を撹拌し、それと共に温度制御を行って、35℃の一定温度下で10秒間染色するようになっている。
【0036】
反応部33aからは流路33bが延設されており、流路33bの終端にはシースフローセル33cが設けられている。また、この流路33bの途中には、導電率センサ33dが取り付けられている。反応部33aにて希釈、染色された試料は、流路33bを通じてシースフローセル33cへと送られる。また、測定部33には、図示しないシース液チャンバが設けられており、このシース液チャンバに貯められたシース液が、シースフローセル33cへと供給されるように構成されている。シースフローセル33cでは、シース液に取り囲まれるように試料が流れるようになっている。シースフローセル33cにはオリフィス33eが設けられており、このオリフィス33eによって試料の流れが細く絞り込まれ、試料に含まれる粒子(有形成分)が一つずつオリフィス33eを通過することとなる。シースフローセル33cには、オリフィス33eを挟むようにして一対の電極33fが取り付けられている。これらの電極33fには直流電源33gが接続されており、電極33fの間に直流電流が供給されるようになっている。そして、直流電源33gから直流電流が供給されている間に、かかる電極33fの間のインピーダンスが検出されるようになっている。かかるインピーダンスの変化を示す電気抵抗信号は、アンプ33hによって増幅されて制御部31へ与えられる。この電気抵抗信号は、粒子の体積情報を反映しており、制御部31がこの電気抵抗信号を信号処理することによって、粒子の体積を得るようになっている。
【0037】
また、試料は、シースフローセル33cに供給される前に流路33bを通流し、ここで導電率センサ33dによって導電率が検出される。導電率センサ33dによって検出された導電率は電流制御回路33iに与えられ、電流制御回路33iは、この導電率に基づいて直流電源33gの出力電流を制御する。図6は、導電率によるインピーダンス測定の感度調整について説明するためのシースフローセル33c及びその近傍の構成を示す模式図であり、図7は、導電率センサ33dの構成を示す部分断面側面図である。尿の試料の導電率は試料ごとに様々であり、試料の導電率が変化すると、粒子の通過の有無に関わらず電極33fの間の電流が変化する。このため、インピーダンス検出の感度に影響が及び、粒子の正確な体積情報が得られなくなる。そこで測定部33では、ユリノパック(希釈液)による希釈で試料の電気伝導度を一定の範囲におさめるとともに、希釈試料がシースフローセル33cへ入る前に導電率を測定し、その値に応じて検出電流の補正を行い感度を一定に調整するようになっている。ここで、導電率センサ33dの構造を図7を参照して説明する。導電率センサ77dは、全体として略円管状をなしており、合成樹脂、セラミックス等の絶縁体で構成された絶縁チューブ34と、当該絶縁チューブ34の両端に取り付けられた金属電極35a,35bとによって主として構成されている。金属電極35a,35bは、絶縁チューブ34と同一の内径を有する円環状をなしており、絶縁チューブ34に同軸的に取り付けられている。これによって、導電率センサ33dには、その全長に渡って同一の内径の空洞が形成される。金属電極35a,35bには、導電率検出回路36が接続されており、前記空洞内を試料が通流したときに、金属電極35a,35b間に約1kHzの正弦波電流が与えられ、前記空洞内を通流する試料に流れる電流を導電率検出回路36で整流、積分し、この試料の導電率に比例した電圧を検出するようになっている。そして、このようにして得られた導電率信号は電流制御回路33iへと出力される。
【0038】
また、電流制御回路33iは、入力された導電率信号を制御部31へと出力するようになっている。また、試料の温度が変化した場合に、電離する物質が異なるため、導電率は温度変化によって変化するが、上述したように試料を一定温度に温度制御しているので、同一条件で導電率測定を行うことができ、高精度な導電率の測定結果を得ることができる。
【0039】
測定部33には、アルゴンレーザ光源が、シースフローセル33cのオリフィス33eへ向けてレーザ光を出射するように配置されている。アルゴンレーザ光源とシースフローセル33cとの間には、複数のレンズからなる照射レンズ系33kが配されている。この照射レンズ系33kによって、アルゴンレーザ光源から出射された平行ビームがビームスポットに集束されるようになっている。このビームスポットは楕円形で、シースフローセル33cの中心に焦点が合わせられている。また、アルゴンレーザ光源からのレーザ光の光軸上には、シースフローセル33cを挟んで照射レンズ系33kに対向するように、ビームストッパ33mが設けられたコレクタレンズ33nが配されており、アルゴンレーザ光源からの直接光はビームストッパ33mによって遮光される。
【0040】
シースフローセル33cに試料が流れると、レーザ光により散乱光及び蛍光の光信号が発生する。このうち前方の信号光をコレクタレンズ33nで集めて後段の受光系に送るようになっている。受光系には、ピンホール33oが設けられており、さらに光軸下流側にはダイクロイックフィルタ33pが設けられている。コレクタレンズ33nから送られた信号光は、ピンホール33oによって迷光(測定以外の光)が除去された後、ダイクロイックフィルタ33pで散乱光成分と蛍光成分に分けられる。ダイクロイックフィルタ33pの側方(前記光軸方向に交差する方向)には、散乱光集光用のレンズ33q及びフォトダイオード33rが設けられており、ダイクロイックフィルタ33pの前記光軸下流側には、色ガラスフィルタ33s及び光電子増倍管33tが設けられている。そして、ダイクロイックフィルタ33pで分けられた散乱光成分は、レンズ33qによって集光された後フォトダイオード33rで光電変換され、これによって生じた電気信号(散乱光信号)がアンプ33uによって増幅され、制御部31に出力される。この散乱光信号は、粒子の大きさの情報を反映しており、制御部31がこの散乱光信号を信号処理することによって、粒子の断面積及び長さを得るようになっている。また、ダイクロイックフィルタ33pから発せられた蛍光成分は色ガラスフィルタ33sによって波長選択された後、光電子増倍管33tで光電変換され、これによって生じた電気信号(蛍光信号)がアンプ33vによって増幅され、制御部31に出力される。ここで用いられる蛍光色素は、粒子の核を特異的に染色するという特性を有しており、制御部31がこの蛍光信号を信号処理することによって、粒子の染色性及び染色部位の長さを得るようになっている。
【0041】
このように、測定部33から制御部31には、電気抵抗信号、導電率信号、散乱光信号、及び蛍光信号が与えられる。制御部31は、電気抵抗信号、散乱光信号、及び蛍光信号を信号処理することにより、試料の赤血球濃度、白血球濃度、細菌濃度、円柱濃度、上皮細胞濃度等を取得し、これらの測定結果データを通信部32からコンピュータ6へ送信するように構成されている。さらに、尿中有形成分分析装置3は、制御部31が取得した導電率の測定結果データを、通信部32からコンピュータ6へと送信するように構成されている。
【0042】
次に、搬送装置4,5の構成について説明する。図2に示すように、搬送装置4は、検体が収容された複数(例えば10本)の検体容器7が収納された検体ラック7aを搬送するための搬送部41と、ユーザが搬送装置4に対して各種設定値等の入力を行うための入力パネル42と、搬送装置4の設定状態等を表示するためのLCDパネル43とを備えている。また、搬送部41は、ユーザが分析対象の検体が収容された検体ラック7aをセットするための発送部44と、発送部44にセットされた検体ラック7aに収納された検体容器7を尿定性分析装置2の第1測定部23及び第2測定部24の測定に供するための測定位置へと移動させる横送り部45と、尿定性分析装置2による測定が終了した後の検体ラック7aを搬送装置5へと移動させるための排出部46とから構成されている。搬送装置5は、検体が収容された複数本の検体容器7が収納された検体ラック7aを搬送するための搬送部51と、ユーザが搬送装置5に対して各種設定値等の入力を行うための入力パネル52と、搬送装置5の設定状態等を表示するためのLCDパネル53とを備えている。また、搬送部51は、搬送装置4から検体ラック7aを受け入れる発送部54と、受け入れた検体ラック7aに収納された検体容器7を尿中有形成分分析装置3の測定部33の測定に供するための測定位置へと移動させる横送り部55と、尿中有形成分分析装置3による測定が終了した後の検体ラック7aを回収する回収部56とから構成されている。
【0043】
次に、コンピュータ6の構成について説明する。図8は、本発明の実施の形態に係る測定結果チェックシステムが有するコンピュータ6の構成を示すブロック図である。コンピュータ6は、本体61と、画像表示部62と、入力部63とから主として構成されている。本体61は、CPU61aと、ROM61bと、RAM61cと、ハードディスク61dと、読出装置61eと、入出力インタフェース61fと、通信インタフェース61gと、画像出力インタフェース61hとから主として構成されており、CPU61a、ROM61b、RAM61c、ハードディスク61d、読出装置61e、入出力インタフェース61f、通信インタフェース61g、および画像出力インタフェース61hは、バス61iによって接続されている。
【0044】
CPU61aは、ROM61bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM61cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなコンピュータプログラムを当該CPU61aが実行することにより、コンピュータ6が本発明に係る測定結果装置として機能する。
【0045】
ROM61bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU61aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
【0046】
RAM61cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM61cは、ROM61bおよびハードディスク61dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU61aの作業領域として利用される。
【0047】
ハードディスク61dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラム等、CPU61aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよび当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。
【0048】
読出装置61eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体64に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体64には、本発明に係る測定結果チェック装置として機能するためのコンピュータプログラムが格納されており、コンピュータ6が当該可搬型記録媒体64から本発明に係るコンピュータプログラムを読み出し、当該コンピュータプログラムをハードディスク61dにインストールすることが可能である。
【0049】
なお、前記コンピュータプログラムは、可搬型記録媒体64によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ6と通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記コンピュータプログラムがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ6がアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク61dにインストールすることも可能である。
【0050】
また、ハードディスク61dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るコンピュータプログラムは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0051】
また、ハードディスク61dには、潜血濃度と赤血球濃度との相関関係、白血球濃度の相関関係、蛋白濃度と円柱濃度との相関関係、亜硝酸塩濃度と細菌濃度との相関関係、及び比重と導電率との相関関係を夫々示すクロスチェックテーブルが記憶されている。
【0052】
例えば、尿定性検査での潜血濃度は、アスコルビン酸等の含有により偽陰性側に反応し、次亜塩素酸等の含有により偽陽性側に反応する。その一方、潜血濃度及び赤血球濃度、白血球濃度及び白血球濃度、蛋白濃度及び円柱濃度、亜硝酸塩濃度及び細菌濃度、比重及び導電率には、高い相関関係が存在することが知られている。したがって、これらの相関関係を利用することにより、尿定性分析装置2及び尿中有形成分分析装置3の測定結果をチェックして、信頼性の低い測定結果を弁別することが可能である。
【0053】
ここで、比重と導電率との相関関係について説明する。図9は、比重と導電率との相関関係を示すグラフである。図9において、縦軸は導電率(mS/cm)を、横軸は比重を夫々示している。また、図9では、試験紙による比重の測定結果についての導電率との関係を示している。試験紙による比重の測定においては、1.000から1.030までの間で0.005の間隔で7段階に比重の測定結果が比色呈示される。そこで、この図9では、複数検体についての比重と導電率との測定結果をプロットした結果を示している。図9に示すように、比重が1.005の場合には、導電率は概ね5〜12mS/cmの範囲に収まっており、比重が1.010の場合には、導電率は概ね5〜16.5mS/cmの範囲に収まっている。同様に、比重が1.015,1.020,1.025,1.030の場合には、導電率は夫々概ね7.5〜21mS/cm,12〜26mS/cm,16.5〜30mS/cm,21〜35mS/cmの範囲に収まっていることがわかる。
【0054】
そこで、本実施の形態においては、次のような比重と導電率とに関するクロスチェックテーブルをデフォルトとして設定している。図10は、本実施の形態に係る比重と導電率とに関するクロスチェックテーブルを示すグラフである。図10において、縦軸は比重を、横軸は導電率(mS/cm)を夫々示している。クロスチェックテーブルは、対応する測定項目の測定値を適当な間隔(ランク)で区分し、各升目について適合領域又は不適合領域が割り当てられる。そして、尿定性分析装置2の測定結果と、尿中有形成分分析装置3の測定結果とのうち、対応する測定結果同士が、適合領域に該当すれば両測定項目の相関関係に適合していると判別し、不適合領域に該当すれば相関関係に適合していないと判別するようになっている。図10では、対応する測定項目が比重及び導電率であり、比重については1.000から1.030までの間が0.005間隔の各ランクで区分され、導電率については0以上の範囲が、0〜5.0mS/cm,5.1〜7.5mS/cm,7.6〜12.0mS/cm,12.1〜16.5mS/cm,16.6〜21.0mS/cm,21.1〜26.0mS/cmの夫々のランクで区分されている。そして、比重が1.000〜1.005のランクの場合には、導電率が0〜5.0mS/cmのランクが適合領域であり、比重が1.006〜1.010のランクの場合には、導電率が0〜12.0mS/cmのランクが適合領域であり、比重が1.011〜1.015のランクの場合は、導電率が5.1〜16.5mS/cmのランクが適合領域であり、比重が1.016〜1.020のランクの場合は、導電率が7.6〜21.0mS/cmのランクが適合領域であり、比重が1.021〜1.025のランクの場合は、導電率が12.1〜26.0mS/cmのランクが適合領域であり、比重が1.026〜1.030のランクの場合は、導電率が16.6以上のランクが適合領域であり、比重が1.031以上のランクの場合は、導電率が21.1以上のランクが適合領域であるとされている。その他の測定項目についてのクロスチェックテーブルでは、尿定性分析装置2の測定項目は、測定結果の(−)、(±)、(+)、(2+)、(3+)、…、(7+)が夫々対応するランクで予め区分されており、尿中有形成分分析装置3の測定項目は、適当なランクによって予め区分されている。
【0055】
また、ハードディスク61dには、尿中有形成分分析装置3の測定した導電率について信頼性が低いか否かを判別するために用いられる、ブドウ糖濃度の測定結果に関する閾値が記憶されている。本願発明者らは、尿中の糖濃度、蛋白濃度が導電率に与える影響について調査する実験を行った。図11は、蛋白濃度についての実験結果を示すグラフであり、図12は、ブドウ糖濃度についての実験結果を示すグラフである。図11及び図12において、縦軸は浸透圧(mOsm/HO)を示しており、横軸は導電率(mS/cm)を示している。比重と浸透圧とは高い相関を示すことが知られており、略同等の臨床的意義を有するものとされている。したがって、ここでは、導電率と比重との関係について実験する代わりに、導電率と浸透圧との関係について実験した。図11においては、検体に蛋白質が検出されなかった場合についての導電率及び浸透圧の測定結果を点印で示し、検体に15mg/dl程度の蛋白質が検出された場合についての測定結果を菱形印で示し、検体に30mg/dl程度の蛋白質が検出された場合についての測定結果を丸印で示し、検体に100mg/dl程度の蛋白質が検出された場合についての測定結果を三角印で示し、検体に300mg/dl以上の蛋白質が検出された場合についての測定結果を四角印で示している。図11に示すように、300mg/dl以上の蛋白質が検出された検体は、その測定結果が浸透圧と導電率との相関関係を示す線から大きく外れており、この測定結果が信頼性が低いものであることがわかる。また、この実験結果では、15mg/dl程度の蛋白質が検出された検体、30mg/dl程度の蛋白質が検出された検体、100mg/dl程度の蛋白質が検出された検体についても、測定結果が前記相関関係を示す線から大きく外れたものがあることがわかる。
【0056】
図12においては、検体にブドウ糖が検出されなかった場合についての導電率及び浸透圧の測定結果を点印で示し、検体に0.1g/dl程度のブドウ糖が検出された場合についての測定結果を菱形印で示し、検体に0.25g/dl程度のブドウ糖が検出された場合についての測定結果を丸印で示し、検体に0.5g/dl程度のブドウ糖が検出された場合についての測定結果を三角印で示し、検体に1.0g/dl以上のブドウ糖が検出された場合についての測定結果を四角印で示している。図12に示すように、1.0g/dl以上の蛋白質が検出された検体は、その測定結果が浸透圧と導電率との相関関係を示す線から大きく外れており、この測定結果が信頼性が低いものであることがわかる。また、この実験結果では、蛋白質についての実験結果に比べて、ブドウ糖濃度が高い検体の測定結果がより一層顕著に相関関係を示す線から大きく外れていることがわかる。 さらに、1.0g/dl以上のブドウ糖が検出された検体以外の検体については、測定結果が前記相関関係を示す線から大きく外れていないことがわかる。
【0057】
図13は、図12に示した導電率と浸透圧との相関グラフから、ブドウ糖濃度が高い検体の測定結果を除いたグラフを示している。図13に示すように、図11及び12に示した相関関係に比べて明らかに相関が高くなっていることがわかる。図11の実験結果における相関係数は0.91であり、図11及び図12の実験結果における相関係数が0.869であったのに比べて、改善されていることがわかる。このような結果は、蛋白及び糖は電解質ではないため、これらの濃度が高まると不導体として導電率を低下させることに起因していると考えられる。
【0058】
このように、本願発明者らは、蛋白濃度及び糖(ブドウ糖を含む)濃度が高い検体についての導電率の測定結果は、腎臓の機能障害についての重要な指標となる尿の浸透圧(比重)との相関関係から乖離し、臨床データとして信頼性が低いものであることを知見した。そこで、本実施の形態においては、尿中有形成分分析装置3の測定した導電率について信頼性が低いか否かを判別するために用いられる、ブドウ糖濃度の測定結果に関する閾値を、1.0g/dlとして設定している。
【0059】
入出力インタフェース61fは、例えばUSB,IEEE1394,RS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,IEEE1284等のパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース61fには、キーボードおよびマウスからなる入力部63が接続されており、ユーザが当該入力部63を使用することにより、コンピュータ6にデータを入力することが可能である。
【0060】
通信インタフェース61gは、例えばEthernet(登録商標)インタフェースであり、コンピュータ6は、当該通信インタフェース61gにより、所定の通信プロトコルを使用して尿定性分析装置2、尿中有形成分分析装置3、及び搬送装置4,5との間でデータの送受信が可能である。
【0061】
画像出力インタフェース61hは、LCDまたはCRT等で構成された画像表示部62に接続されており、CPU61aから与えられた画像データに応じた映像信号を画像表示部62に出力するようになっている。画像表示部62は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0062】
次に、本実施の形態に係る測定結果チェックシステム1の動作について説明する。まず、検体(尿)が収容された複数の検体容器7が収納された検体ラック7aが尿定性分析装置2の正面の測定位置まで自動的に搬送される。具体的には、まず、検体が収容された複数の検体容器7が収納された検体ラック7aを搬送装置4の発送部44にセットする。そして、入力パネル42に設けられたスタートキーを押下する。これにより、搬送装置4が動作を開始し、搬送装置4の発送部44にセットされた検体ラック7aが横送り部45に搬送される。そして、横送り部45で検体ラック7aが1つの検体容器7に対応するピッチで順次横送りされることにより、検体ラック7aに収納された検体容器7が尿定性分析装置2の測定位置に搬送される。そして、尿定性分析装置2の第1測定部23及び第2測定部24において、検体ラック7aに収納された検体容器7内に収容された検体が順次測定される。その後、検体ラック7aは、横送り部45から排出部46に搬送され、搬送装置5の発送部54に搬送される。そして、搬送装置5は、発送部54に設けられたセンサにより、発送部54に検体ラック7aが搬送されたことを検知して動作を開始する。
【0063】
搬送装置5の発送部54に搬送された検体ラック7aは、搬送装置5の横送り部55に搬送される。そして、横送り部55で検体ラック7aが一つの検体容器7に対応するピッチで順次横送りされることにより、検体ラック7aに収納された検体容器7が尿中有形成分分析装置3の測定位置に搬送される。そして、尿中有形成分分析装置3の測定部33において、検体ラック7aに収納された検体容器7内に収容された検体が順次測定される。この後、検体ラック7aは、横送り部55から回収部56に搬送される。上記のような動作が各検体ラック7aについて順次行われる。
【0064】
このようにして、尿定性分析装置2及び尿中有形成分分析装置3が、同一の検体に対して測定して得た測定結果データは、コンピュータ6へと送信される。そして、コンピュータ6によってクロスチェック処理が実行される。以下、コンピュータ6のクロスチェック処理について説明する。図14及び図15は、コンピュータ6が実行する本発明の実施の形態に係るコンピュータプログラムによるクロスチェック処理の手順を示すフローチャートである。なお、以下に説明する各測定項目に対するクロスチェックエラーフラグ、及び低信頼性フラグは、全てクリアされた状態がデフォルト値とされる。まず、コンピュータ6のCPU61aは、尿定性分析装置2からの測定結果データの受信を待機する(ステップS1)。測定結果データを受信した場合には(ステップS1においてYes)、CPU61aは、尿中有形成分分析装置3からの測定結果データの受信を待機する(ステップS2)。そして、CPU61aは、ステップS2において測定結果データを受信した場合には(ステップS2においてYes)、潜血濃度の測定結果(OB)と、赤血球濃度の測定結果(RBC)とが、これらの測定項目の相関関係を示すクロスチェックテーブルにおいて適合領域に該当するか否かを判別する(ステップS3)。ここで潜血濃度の測定結果と、赤血球濃度の測定結果とが、前記クロスチェックテーブルの不適合領域に該当している場合には(ステップS3においてNo)、CPU61aは、潜血濃度の測定結果に対するクロスチェックエラーフラグをセットする(ステップS4)。
【0065】
次に、CPU61aは、尿定性分析装置2の白血球濃度の測定結果(WBC)と、尿中有形成分分析装置3の白血球濃度の測定結果(WBC)とが、これらの測定項目の相関関係を示すクロスチェックテーブルにおいて適合領域に該当するか否かを判別する(ステップS5)。ここで両測定結果が、前記クロスチェックテーブルの不適合領域に該当している場合には(ステップS5においてNo)、CPU61aは、尿定性分析装置2の白血球濃度の測定結果に対するクロスチェックエラーフラグをセットする(ステップS6)。
【0066】
次に、CPU61aは、蛋白濃度の測定結果(PRO)と、円柱濃度の測定結果(CAST)とが、これらの測定項目の相関関係を示すクロスチェックテーブルにおいて適合領域に該当するか否かを判別する(ステップS7)。ここで両測定結果が、前記クロスチェックテーブルの不適合領域に該当している場合には(ステップS7においてNo)、CPU61aは、蛋白濃度の測定結果に対するクロスチェックエラーフラグをセットする(ステップS8)。
【0067】
次に、CPU61aは、亜硝酸塩濃度の測定結果(NIT)と、細菌濃度の測定結果(BACT)とが、これらの測定項目の相関関係を示すクロスチェックテーブルにおいて適合領域に該当するか否かを判別する(ステップS9)。ここで両測定結果が、前記クロスチェックテーブルの不適合領域に該当している場合には(ステップS9においてNo)、CPU61aは、亜硝酸塩濃度の測定結果に対するクロスチェックエラーフラグをセットする(ステップS10)。
【0068】
次に、CPU61aは、比重の測定結果(SG)と、導電率の測定結果(Cond.)とが、これらの測定項目の相関関係を示すクロスチェックテーブルにおいて適合領域に該当するか否かを判別する(ステップS11)。ここで両測定結果が、前記クロスチェックテーブルの不適合領域に該当している場合には(ステップS11においてNo)、CPU61aは、比重の測定結果に対するクロスチェックラグをセットする(ステップS12)。
【0069】
次に、CPU61aは、ブドウ糖濃度の測定結果と、尿中有形成分分析装置3の測定した導電率について信頼性が低いか否かを判別するために用いられる閾値とを比較する(ステップS13)。ステップS13において、ブドウ糖濃度の測定結果が、閾値を超える場合には(ステップS13においてNo)、CPU61aは、導電率の測定結果に対する低信頼性フラグをセットする(ステップS14)。
【0070】
そして、CPU61aは、尿中有形成分分析装置3の測定結果を用いてスキャッタグラムを作成し(ステップS15)、測定結果表示画面を画像表示部62に表示して(ステップS16)、処理を終了する。
【0071】
図16は、本実施の形態に係るコンピュータ6が画像表示部62に表示する測定結果表示画面の一例を示す模式図である。図16に示すように、測定結果表示画面には、スキャッタグラムと、各測定項目の測定値とが表示される。さらに詳しく説明すると、測定結果表示画面の中央から左側には、散乱光情報及び蛍光情報に基づいて作成された2つのスキャッタグラム71,72が縦に並べて表示され、測定結果表示画面の中央から右側には、測定値表示エリア73,74が縦に並べて表示される。上側の測定値表示エリア73には、尿中有形成分分析装置3の測定結果のうち、赤血球濃度(RBC)、白血球濃度(WBC)、上皮細胞濃度(EC)、円柱濃度(CAST)、細菌濃度(BACT)、及び導電率(Cond.)の測定値が表示されるようになっている。また、下側の測定値表示エリア74には、尿定性分析装置2の測定結果のうち、潜血濃度(OB)、蛋白濃度(PRO)、亜硝酸塩濃度(NIT)、及び比重(SG)の測定値が表示されるようになっている。また、クロスチェックエラーフラグがセットされた測定項目については、測定結果の横に信頼性が低いデータである旨を示す記号「?」が表示されるようになっている。また、導電率の測定結果に低信頼性フラグがセットされている場合には、測定値の横に信頼性が低いデータである旨を示す記号「*」が表示されるようになっている。図16は、導電率の測定値の横に「*」が表示されている画面を示している。このようにすることによって、ユーザに対して、導電率の測定値は信頼性が低いものであることを通知することができる。
【0072】
次に、本発明の実施の形態に係る測定結果チェックシステムにおける相関関係の設定動作について説明する。かかる相関関係の設定動作は、ランク設定動作及びクロスチェックテーブル設定動作の2つの動作に大別される。まず、ランク設定動作について説明する。
【0073】
図17及び図18は、コンピュータ6が実行する本発明の実施の形態に係るコンピュータプログラムによる相関関係の設定処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係るコンピュータプログラムをCPU61aが実行することにより、画像表示部62には、このコンピュータプログラムの起動後にメイン画面(図示せず)が表示されるようになっている(ステップS21)。このメイン画面には、コンピュータ6に各種設定を行うための設定画面を呼び出すためのソフトウェアキーである「設定キー」が表示される。このメイン画面では、ユーザが画像表示部62に表示されたマウスポインタを「設定キー」上に移動させるように入力部63のマウスを操作し、当該マウスの左ボタンを押下(クリック)することにより、コンピュータ6に設定画面への切り替えの指示を与えることができるようになっている。CPU61aは、このような設定画面への切替指示を受け付けた場合には(ステップS22においてYes)、画像表示部62に設定画面を表示する(ステップS23)。この設定画面では、「ランクキー」、「クロスチェックキー」の少なくとも2つのソフトウェアキーが表示される(図示せず)。ここでユーザがランクキー又はクロスチェックキーをクリックすると、コンピュータ6に対してランク設定画面又はクロスチェック設定画面への画面切り替えの指示を与えることができる。ユーザがランクキーをクリックし、ランク設定画面への切替指示を受け付けた場合には(ステップS24において「ランク設定画面」)、CPU61aは、パスワードの入力を求めるパスワード入力画面を画像表示部62に表示し(ステップS25)、ユーザにパスワードの入力を促す。これは、ランクの設定のような重要な項目についての設定、変更は、セキュリティ上の観点から特定のユーザ(例えばシステム管理者)又はサポート業者等に対してのみ許可することが好ましいためである。そして、ユーザからパスワードの入力を受け付けた場合には(ステップS26においてYes)、入力されたパスワードを予め登録されたパスワードと照合し(ステップS27)、パスワードの照合に失敗した場合には(ステップS27においてNo)、処理を終了する。ステップS27において、パスワードの照合に成功した場合には(ステップS27においてYes)、CPU61aは、ランクの設定が可能なランク設定画面を表示する(ステップS28)。
【0074】
図19は、ランク設定画面の一例を示す模式図である。図19に示すように、ランク設定画面には、ランクの設定値表示エリア81と、ランク設定値の入力箇所を示すカーソル81aと、カーソル81aを上下方向へ移動させるためのカーソル移動キー82a,82bと、数値入力用のテンキー83と、テンキー83で入力した数値をランクの設定値として決定するための入力キー84と、ランクの設定対象として赤血球濃度(RBC)、白血球濃度(WBC)、上皮細胞濃度(EC)、円柱濃度(CAST)、細菌濃度(BACT)、導電率(Cond.)を夫々選択するためのRBCキー85a、WBCキー85b、ECキー85c、CASTキー85d、BACTキー85e、Condキー85fと、設定対象の測定項目についてのランクの設定を終了するための終了キー86と、ランク設定処理を終了するための終了キー87とが表示されている。
【0075】
CPU61aは、ランクの設定対象項目のユーザによる選択を待機する(ステップS29)。ここで、一つの設定対象項目の選択を受け付けた場合には(ステップS29においてYes)、CPU61aは、この設定対象項目のランクの設定画面を表示する(ステップS30)。例えば、ユーザによってRBCキー85aがクリックされた場合には、赤血球濃度のランク設定画面が表示される。次に、CPU61aは、設定するランクのユーザによる選択を待機する(ステップS31)。ここで、ユーザはカーソル移動キー82a,82bを適宜クリックすることによって、カーソルを移動させ、設定対象のランクを選択することが可能である。そして、設定対象のランクの選択を受け付けた場合には(ステップS31においてYes)、CPU61aは、設定値の入力を待機する(ステップS32)。ここで、ユーザは、テンキー83を適宜クリックすることによって数値を入力し、入力キー84をクリックすることによって入力した数値を設定対象のランクの設定値として決定することができる。設定値の入力を受け付けた場合には(ステップS32でYes)、CPU61aは、入力された設定値を設定対象ランクの上限値にセットする(ステップS33)。また、CPU61aは、設定対象ランクより一つ上位のランクの下限値を、入力を受け付けた設定値よりも単位数値だけ大きい数値にセットする(ステップS34)。例えば、ランク1の上限値が5にセットされた場合には、5より単位数値(例えば0.01)だけ大きい5.01が、ランク2の下限値としてセットされることとなる。
【0076】
そして、CPU61aは、その時点での設定対象の測定項目についてのランク設定の終了指示を待機する(ステップS35)。ステップS35において、まだランク設定作業を続行する場合には(ステップS35においてNo)、CPU61aは、ステップS31へと処理を戻す。ここでユーザは、さらに別のランクを設定対象として選択し、このランクの設定値を入力することができる。また、ステップS35において、ユーザによって終了キー86がクリックされた場合には(ステップS35においてYes)、CPU61aは、ランク設定処理の終了指示を待機する(ステップS36)。ステップS36において、まだランク設定作業を続行する場合には(ステップS36においてNo)、CPU61aは、ステップS29へと処理を戻す。ここでユーザは、赤血球濃度のランク設定を完了した場合には、白血球濃度、上皮細胞濃度、円柱濃度、細菌濃度、導電率についてのランク設定を続けて行うことができる。また、ステップS36において、ユーザによって終了キー87がクリックされた場合には(ステップS36においてYes)、CPU61aは、処理を終了する。
【0077】
次に、クロスチェックテーブル設定動作について説明する。ステップS24において、ユーザがクロスチェックキーをクリックし、CPU61aがクロスチェック設定画面への切替指示を受け付けた場合には(ステップS24において「クロスチェック設定画面」)、CPU61aは、パスワードの入力を求めるパスワード入力画面を画像表示部62に表示し(ステップS37)、ユーザにパスワードの入力を促す。そして、ユーザからパスワードの入力を受け付けた場合には(ステップS38においてYes)、入力されたパスワードを予め登録されたパスワードと照合し(ステップS39)、パスワードの照合に失敗した場合には(ステップS39においてNo)、処理を終了する。ステップS39において、パスワードの照合に成功した場合には(ステップS39においてYes)、CPU61aは、クロスチェックテーブルの設定が可能なクロスチェックテーブル設定画面を表示する(ステップS40)。
【0078】
図20は、クロスチェックテーブル設定画面の一例を示す模式図である。図20に示すように、クロスチェックテーブル設定画面には、クロスチェックテーブルの表示エリア91と、上下左右方向へのカーソル移動キー92a,92b,92c,92dと、クロスチェックテーブル内の設定対象として選択された升目を適合領域及び不適合領域に設定することが可能な適合キー94a及び不適合キー94bと、クロスチェックテーブルの設定対象として潜血濃度(OB)×赤血球濃度(RBC)、白血球濃度(WBC)×白血球濃度(WBC)、蛋白濃度(PRO)×円柱濃度(CAST)、亜硝酸塩濃度(NIT)×細菌濃度(BACT)、比重(SG)×導電率(Cond.)を夫々選択するためのOB×RBCキー95a、WBC×WBCキー95b、PRO×CASTキー95c、NIT×BACTキー95d、SG×Condキー95eと、設定対象の測定項目についてのクロスチェックテーブルの設定を終了するための終了キー96と、クロスチェック設定処理を終了するための終了キー97とが表示されている。また、クロスチェックテーブルの表示エリア91には、クロスチェックテーブル内の升目を移動させることが可能なカーソル93が表示されている。
【0079】
CPU61aは、クロスチェックテーブルの設定対象項目のユーザによる選択を待機する(ステップS41)。ここで、一組の設定対象項目の選択を受け付けた場合には(ステップS41においてYes)、CPU61aは、この設定対象項目のクロスチェックテーブルの設定画面を表示する(ステップS42)。例えば、ユーザによってOB×RBCキー95aがクリックされた場合には、潜血濃度×赤血球濃度のクロスチェックテーブル設定画面が表示される。次に、CPU61aは、設定する升目のユーザによる選択を待機する(ステップS43)。ここで、ユーザはカーソル移動キー92a,92b,92c,92dを適宜クリックすることによって、カーソル93を移動させ、設定対象の升目を選択することが可能である。そして、設定対象の升目の選択を受け付けた場合には(ステップS43においてYes)、CPU61aは、設定値の入力を待機する(ステップS44)。ここで、ユーザは、適合キー94a及び不適合キー94bのいずれかをクリックすることによって、設定値(適合又は不適合)を入力することが可能である。設定値の入力を受け付けた場合には(ステップS44でYes)、CPU61aは、入力された設定値を設定対象升目にセットする(ステップS45)。例えば、ユーザによって適合キー94aがクリックされた場合には、設定対象の升目が適合にセットされ、適合領域を示す表示(図ではハッチング表示)に切り替わる。
【0080】
そして、CPU61aは、その時点での設定対象の測定項目についてのクロスチェックテーブル設定の終了指示を待機する(ステップS46)。ステップS46において、まだクロスチェックテーブル設定作業を続行する場合には(ステップS46においてNo)、CPU61aは、ステップS43へと処理を戻す。ここでユーザは、さらに別の升目を設定対象として選択し、この升目の設定値を入力することができる。また、ステップS46において、ユーザによって終了キー96がクリックされた場合には(ステップS46においてYes)、CPU61aは、クロスチェックテーブル設定処理の終了指示を待機する(ステップS47)。ステップS47において、まだクロスチェックテーブル設定作業を続行する場合には(ステップS47においてNo)、CPU61aは、ステップS41へと処理を戻す。ここでユーザは、潜血濃度×赤血球濃度のクロスチェックテーブル設定を完了した場合には、白血球濃度×白血球濃度、蛋白濃度×円柱濃度、亜硝酸塩濃度×細菌濃度、比重×導電率についてのクロスチェックテーブル設定を続けて行うことができる。また、ステップS47において、ユーザによって終了キー97がクリックされた場合には(ステップS47においてYes)、CPU61aは、処理を終了する。
【0081】
以上の如き構成により、本発明の実施の形態に係る測定結果チェックシステム1においては、腎臓の機能障害を示す指標として重要な臨床的意義を有する尿の比重と導電率との測定結果についてクロスチェックを行うことができ、これにより、尿定性分析装置2による比重の測定結果及び尿中有形成分分析装置3による導電率の測定結果の信頼性の評価を行うことができる。また、潜血濃度及び赤血球濃度、白血球濃度及び白血球濃度、蛋白濃度及び円柱濃度、ならびに亜硝酸塩濃度及び細菌濃度の各測定結果のクロスチェックも合わせて行うことにより、より一層詳細な信頼性評価を行うことができる。このことは、血液等のように検体毎に各成分の濃度のばらつきが小さいものよりも、尿のように検体毎に各成分の濃度のばらつきが大きいものを分析対象とする分析装置においては、基準値から大きく外れる測定結果が得られた場合に、それが装置の誤動作によるものであるのか、それともその検体が異常であるのかの判断が難しいため、特に有効である。
【0082】
なお、以上説明した実施の形態に係る測定結果チェックシステム1においては、尿定性分析装置2が検体の屈折率によって比重を測定する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、試験紙によって比重を測定する構成としてもよい。しかし、試験紙を用いて比重を測定するよりも、屈折率によって比重を測定する方が分解能が高く、高い測定精度を期待できる点で、屈折率によって比重を測定する構成の方が好ましい。
【0083】
また、本実施の形態に係る測定結果チェックシステム1においては、ブドウ糖の濃度を用いて導電率の測定結果の信頼性を評価する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、ブドウ糖以外の糖の濃度を用いて導電率の測定結果を評価する構成としてもよく、また蛋白濃度を用いて導電率の測定結果を評価する構成としてもよい。
【0084】
また、本実施の形態に係る測定結果チェックシステム1においては、尿定性分析装置2及び尿中有形成分分析装置3をコンピュータ6に接続し、尿定性分析装置2及び尿中有形成分分析装置3の測定結果をコンピュータ6へと送信して、コンピュータ6によって各測定項目についての測定結果のクロスチェック、及び導電率の測定結果についての信頼性評価を行う構成について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、尿中有形成分分析装置3に測定結果チェック装置としての機能を搭載してもよい。この場合は、尿定性分析装置2と尿中有形成分分析装置3とを接続し、尿定性分析装置2の測定結果を尿中有形成分分析装置3へと送信し、尿中有形成分分析装置3により、当該尿中有形成分分析装置3の測定結果と、受信した尿定性分析装置2の測定結果とのクロスチェックを行うこととなる。また、上述したようなコンピュータ6の画像表示部62に表示される表示画面は、尿中有形成分分析装置3に設けられたLCD等の表示部に表示すればよい。また、この表示部にタッチパネル式の入力装置を付設することにより、マウスによる入力に代えて、ユーザの指又はスタイラスにより入力する構成とすれば、さらに好ましい。さらには、尿定性分析装置2、尿中有形成分分析装置3を一体化し、この分析装置に測定結果チェック装置としての機能を搭載してもよい。この場合は、一つの装置内で尿定性分析装置2の測定項目及び尿中有形成分分析装置3の測定項目について測定し、これらの測定結果のクロスチェック、及び導電率の測定結果についての信頼性評価を実行する構成となる。この場合にも、当該装置に設けられたLCD等の表示部に、前述したような表示画面を表示すればよく、表示部にタッチパネル式の入力装置を付設し、ユーザの指又はスタイラスにより入力する構成とすればより好ましい。
【0085】
また、本実施の形態に係る測定結果チェックシステム1においては、尿定性分析装置2及び尿中有形成分分析装置3をコンピュータ6に接続し、尿定性分析装置2及び尿中有形成分分析装置3の測定結果をコンピュータ6へと送信して、コンピュータ6によって各測定項目についての測定結果のクロスチェック、及び導電率の測定結果についての信頼性評価を行う構成について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、尿中有形成分分析装置3に測定結果装置としての機能を搭載してもよい。この場合は、尿定性分析装置2と尿中有形成分分析装置3とを接続し、尿定性分析装置2の測定結果を尿中有形成分分析装置3へと送信し、尿中有形成分分析装置3により、当該尿中有形成分分析装置3の測定結果と、受信した尿定性分析装置2の測定結果とのクロスチェックを行うこととなる。また、上述したようなコンピュータ6の画像表示部62に表示される表示画面は、尿中有形成分分析装置3に設けられたLCD等の表示部に表示すればよい。また、この表示部にタッチパネル式の入力装置を付設することにより、マウスによる入力に代えて、ユーザの指又はスタイラスにより入力する構成とすれば、さらに好ましい。さらには、尿定性分析装置2、尿中有形成分分析装置3を一体化し、この分析装置に測定結果チェック装置としての機能を搭載してもよい。この場合は、一つの装置内で尿定性分析装置2の測定項目及び尿中有形成分分析装置3の測定項目について測定し、これらの測定結果のクロスチェック、及び導電率の測定結果についての信頼性評価を実行する構成となる。この場合にも、当該装置に設けられたLCD等の表示部に、前述したような表示画面を表示すればよく、表示部にタッチパネル式の入力装置を付設し、ユーザの指又はスタイラスにより入力する構成とすればより好ましい。
【0086】
また、本実施の形態に係る測定結果チェックシステム1においては、クロスチェックエラーフラグを「?」で表示し、低信頼性フラグを「*」で表示する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、「クロスチェックエラー」、「低信頼」といった文字で表示してもよいし、またクロスチェクエラーフラグがセットされた測定値を赤で表示し、低信頼性フラグがセットされた測定値を青で表示する等、他の表示方法でクロスチェックエラーフラグ及び低信頼性フラグを表示する構成としてもよい。
【0087】
また、本実施の形態に係る測定結果チェックシステム1においては、一定温度に温度制御した試料に対して導電率の測定を行う構成について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、導電率の測定結果を温度補正する構成としてもよい。しかしながら、温度補正では正確な導電率を求めることが難いため、高精度な導電率の測定結果を得ることができるという点で、試料を一定温度に温度制御する構成の方が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る測定結果チェック方法、測定結果チェックシステム、測定結果チェック装置、及びコンピュータプログラムは、高い相関関係が認められる比重と導電率とを相互にチェックして、比重及び導電率の測定結果の信頼性を評価することができるという効果を奏し、尿分析における測定結果をチェックする測定結果チェック方法、その実施に使用される測定結果チェックシステム、測定結果チェック装置、及びコンピュータを測定結果チェック装置として機能させるためのコンピュータプログラムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態に係る測定結果チェックシステムの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る測定結果チェックシステムの部分構成を示す斜視図である。
【図3】尿定性分析装置の構成を示すブロック図である。
【図4】尿中有形成分分析装置の構成を示すブロック図である。
【図5】尿中有形成分分析装置の要部の構成を示す模式図である。
【図6】導電率によるインピーダンス測定の感度調整について説明するためのシースフローセル及びその近傍の構成を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る導電率センサの構成を示す部分断面側面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る測定結果チェックシステムが有するコンピュータの構成を示すブロック図である。
【図9】比重と導電率との相関関係を示すグラフである。
【図10】本実施の形態に係る比重と導電率とに関するクロスチェックテーブルを示すグラフである。
【図11】尿中の蛋白濃度が導電率に与える影響について調査した実験結果を示すグラフである。
【図12】尿中のブドウ糖濃度が導電率に与える影響について調査した実験結果を示すグラフである。
【図13】図12に示した導電率と浸透圧との相関グラフから、ブドウ糖濃度が高い検体の測定結果を除いたグラフである。
【図14】本発明の実施の形態に係るコンピュータプログラムによるクロスチェック処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態に係るコンピュータプログラムによるクロスチェック処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】本実施の形態に係るコンピュータが画像表示部に表示する測定結果表示画面の一例を示す模式図である。
【図17】本発明の実施の形態に係るコンピュータプログラムによる相関関係の設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施の形態に係るコンピュータプログラムによる相関関係の設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】ランク設定画面の一例を示す模式図である。
【図20】クロスチェックテーブル設定画面の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0090】
1 測定結果チェックシステム
2 尿定性分析装置
3 尿中有形成分分析装置
4,5 搬送装置
6 コンピュータ
7 検体容器
7a 検体ラック
21 制御部
22 通信部
23 第1測定部
24 第2測定部
31 制御部
32 通信部
33 測定部
33a 反応部
33b 流路
33c シースフローセル
33d 導電率センサ
33e オリフィス
33f 電極
33g 直流電源
33i 電流制御回路
33k 照射レンズ系
33m ビームストッパ
33n コレクタレンズ
33o ピンホール
33p ダイクロイックフィルタ
33q レンズ
33r フォトダイオード
33s 色ガラスフィルタ
33t 光電子増倍管
34 絶縁チューブ
35a,35b 金属電極
36 導電率検出回路
61 本体
62 画像表示部
63 入力部
61a CPU
61b ROM
61c RAM
61f 入出力インタフェース
61g 通信インタフェース
61h 画像出力インタフェース
64 可搬型記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象として与えられた尿の比重を測定するステップと、
前記尿の導電率を測定するステップと、
測定した尿の比重と導電率とが、予め与えられた尿の比重と導電率との相関関係に適合するか否かを判別するステップと、
測定した尿の比重と導電率とが前記相関関係に適合しない場合に、当該尿の比重及び導電率は信頼性が低い旨を表示するステップと
を有する測定結果チェック方法。
【請求項2】
前記尿の導電率を測定するステップでは、前記尿を温度制御して、前記尿の導電率を測定する請求項1に記載の測定結果チェック方法。
【請求項3】
測定した尿の比重と導電率とが、前記相関関係に適合するか否かを判別するステップの後に、
前記尿の糖濃度を測定するステップと、
測定した糖濃度と予め与えられた閾値とを比較するステップと、
測定した糖濃度が前記閾値を超える場合に、測定した尿の導電率は信頼性が低い旨を表示するステップと
をさらに有する請求項1又は2に記載の測定結果チェック方法。
【請求項4】
分析対象として与えられた尿の比重を測定する第1分析装置と、
前記尿の導電率を測定する第2分析装置と、
尿の比重と導電率との相関関係を記憶する記憶部と、
前記第1分析装置によって測定された尿の比重と前記第2分析装置によって測定された尿の導電率とが、前記記憶部に記憶された相関関係に適合するか否かを判別する判別手段と、
当該判別手段の判別結果を出力する出力手段と
を備える測定結果チェックシステム。
【請求項5】
前記第2分析装置は、前記尿を温度制御する温度制御部を有し、当該温度制御部によって温度制御された前記尿の導電率を測定するように構成されている請求項4に記載の測定結果チェックシステム。
【請求項6】
前記尿の糖濃度を測定する糖濃度測定部と、
当該糖濃度測定部によって測定された糖濃度と、予め与えられた閾値とを比較する比較手段とをさらに備え、
前記出力手段は、当該比較手段の比較の結果、前記糖濃度が前記閾値を超える場合に、測定した導電率は信頼性が低い旨を出力するように構成されている請求項4又は5に記載の測定結果チェックシステム。
【請求項7】
尿の比重と導電率との相関関係の入力を受け付ける設定受付手段と、
当該設定受付手段によって入力を受け付けた尿の比重と導電率との相関関係を、前記記憶部に書き込む書込手段と
をさらに備える請求項4乃至6のいずれかに記載の測定結果チェックシステム。
【請求項8】
前記第2分析装置は、オリフィスが設けられており、当該オリフィスに分析対象の尿が含まれた試料を通流させるためのフローセルと、前記オリフィスを挟んで設けられた一対の電極と、当該電極間に電流を供給する電源と、前記試料の導電率を測定する導電率センサと、当該導電率センサの測定値に基づいて、前記電源から前記電極間に供給される電流を制御する電流制御部と、前記電極間のインピーダンス変化を検出するインピーダンス変化検出部とを有し、前記インピーダンス変化検出部によって検出されるインピーダンスの変化に基づいて、前記オリフィスを通過する尿中有形成分の形態を検出するように構成されている請求項4乃至7のいずれかに記載の測定結果チェックシステム。
【請求項9】
前記第1分析装置は、尿の潜血濃度を測定するように構成されており、
前記第2分析装置は、尿の赤血球濃度を測定するように構成されており、
前記記憶部は、尿の潜血濃度と赤血球濃度との相関関係を記憶しており、
前記第1分析装置によって測定された尿の潜血濃度と前記第2分析装置によって測定された尿の赤血球濃度とが、前記記憶部に記憶された尿の潜血濃度と赤血球濃度との相関関係に適合するか否かを判別する判別手段をさらに備え、
前記出力手段は、当該判別手段の判別結果を出力するように構成されている請求項4乃至8のいずれかに記載の測定結果チェックシステム。
【請求項10】
前記第1分析装置は、尿の白血球濃度を測定するように構成されており、
前記第2分析装置は、尿の白血球濃度を測定するように構成されており、
前記記憶部は、尿の白血球濃度の相関関係を記憶しており、
前記第1分析装置によって測定された尿の白血球濃度と前記第2分析装置によって測定された尿の白血球濃度とが、前記記憶部に記憶された尿の白血球濃度の相関関係に適合するか否かを判別する判別手段をさらに備え、
前記出力手段は、当該判別手段の判別結果を出力するように構成されている請求項4乃至9のいずれかに記載の測定結果チェックシステム。
【請求項11】
前記第1分析装置は、尿の蛋白濃度を測定するように構成されており、
前記第2分析装置は、尿の円柱濃度を測定するように構成されており、
前記記憶部は、尿の蛋白濃度と円柱濃度との相関関係を記憶しており、
前記第1分析装置によって測定された尿の蛋白濃度と前記第2分析装置によって測定された尿の円柱濃度とが、前記記憶部に記憶された尿の蛋白濃度と円柱濃度との相関関係に適合するか否かを判別する判別手段をさらに備え、
前記出力手段は、当該判別手段の判別結果を出力するように構成されている請求項4乃至10のいずれかに記載の測定結果チェックシステム。
【請求項12】
前記第1分析装置は、尿の亜硝酸塩濃度を測定するように構成されており、
前記第2分析装置は、尿の細菌濃度を測定するように構成されており、
前記記憶部は、尿の亜硝酸塩濃度と細菌濃度との相関関係を記憶しており、
前記第1分析装置によって測定された尿の蛋白濃度と前記第2分析装置によって測定された尿の細菌濃度とが、前記記憶部に記憶された尿の亜硝酸塩濃度と細菌濃度との相関関係に適合するか否かを判別する判別手段をさらに備え、
前記出力手段は、当該判別手段の判別結果を出力するように構成されている請求項4乃至11のいずれかに記載の測定結果チェックシステム。
【請求項13】
分析対象の尿の比重を取得する比重取得手段と、
前記尿の導電率を取得する導電率取得手段と、
尿の比重と導電率との相関関係を記憶する記憶部と、
前記比重取得手段によって取得された尿の比重と前記導電率取得手段によって取得された尿の導電率とが、前記記憶部に記憶された相関関係に適合するか否かを判別する判別手段と、
当該判別手段の判別結果を出力する出力手段と
を備える測定結果チェック装置。
【請求項14】
分析対象の尿の導電率を取得する導電率取得手段と、
前記尿の糖濃度を取得する糖濃度取得手段と、
当該糖濃度取得手段によって測定された糖濃度と、予め与えられた閾値とを比較する比較手段と、
当該比較手段の比較の結果、前記糖濃度が前記閾値を超える場合に、前記導電率取得手段が取得した導電率は信頼性が低い旨を出力する出力手段と
を備える測定結果チェック装置。
【請求項15】
外部の装置との間でデータ通信することが可能な通信部と、記憶部と、表示部とを有するコンピュータを、
前記通信部によって分析対象の尿の比重を外部から取得する比重取得手段と、
前記通信部によって前記尿の導電率を外部から取得する導電率取得手段と、
前記比重取得手段によって取得された尿の比重と前記導電率取得手段によって取得された尿の導電率とが、前記記憶部に予め記憶された尿の比重と導電率との相関関係に適合するか否かを判別する判別手段と、
当該判別手段の判別結果を前記表示部に表示する表示手段として機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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