説明

測定装置、測定方法及びプログラム

【課題】糖尿病患者などの被検者が、自己の血液中のグルコース濃度などの生体成分の状態を、実際に測定しなくとも感覚的に把握する能力を身につけることを支援する機能を有する、自己測定装置を提供する。
【解決手段】生体試料中の特定成分を測定する測定部(5)と、被検者の測定結果の推測値の入力を受け付ける入力受付部(2)と、前記入力受付部(2)で入力が受け付けられた推測値のデータを参照し、前記測定部で得られた測定値及び前記推測値の一致の度合いを判定する一致度判定部(61)と、前記一致度判定部(61)で得られた判定結果を出力する出力部(3、4)とを備える、測定装置(1)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己検査用血糖測定器などの、被検者が自己の生体試料中の特定成分の濃度を測定するための測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病などを有する患者は、疾患の状態把握や投薬管理のために、日常的に、自己の当該疾患に関連する生体成分の状態(濃度など)を把握する必要がある。生体成分の状態の把握には、携帯型の測定装置を用いることが一般的である。
例えば、糖尿病患者は、食事管理や投薬管理のために、日常的に自己の血糖値を把握する必要がある。そのため、糖尿病患者は、血糖測定器を携帯し自己の血糖値を測定することを要求される。
近年では、このような測定装置に、種々の新たな機能を付加することで、患者に生体成分の測定を習慣づけ、或いは生体成分の状態を管理するインセンティブを与えることが考えられている。
例えば、医師が患者の血糖値の目標値を設定し、血糖測定器を用いて測定された血糖値が事前に設定した目標値に近ければ、ネットワークを通じて、ポイントが付与されるシステムが開発されている。また、このようなシステムでは、患者は、事前に血糖値の推測値を、ネットワークを通じて、サーバーに送信することができ、測定された血糖値がこの推測値と近ければ、ネットワークを通じてポイントが付与される機能を設けることも提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、患者以外にも、自己の生体成分の状態を把握する必要がある場合がある。例えば、スポーツ選手は、トレーニング管理のために、運動後に自己の乳酸値を把握することが有効であるとされている。そのために、スポーツ選手は、乳酸測定器を携帯し、運動後の自己の乳酸値を測定することが推奨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−6334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生体成分の測定は、典型的には血液などの生体試料の採取を伴うため、長期に渡って高頻度で測定を行うことは、被検者に少なからず負担となる。
もし、この測定の回数を減らすことができれば、被検者にとっても、その測定値を管理する医師やトレーナーなどの管理者にとっても、有用である。
そのためには、被検者が生体成分の状態を測定せずとも、自己の体調や生活習慣、或いは運動の内容、運動量などから、自己の生体成分の状態を把握する能力を身につけることが、望ましい。
被検者がこのような能力を身につけることができれば、上記測定の回数を減らすことができるのみならず、自身で食事管理や投薬管理、トレーニング管理などを適切に行うことができるようになることが期待される。
実際に、糖尿病治療期間が長期にわたる患者の一部は、このような能力を自然と身につけていて、食事管理や投薬管理が適切に行われる傾向にある。このような経験に基づいて、医療現場においては、血糖測定器の使用を開始した患者に前記能力を早期に身につけさせる訓練を行うニーズが高まっている。
【0006】
本発明は、被検者が、上記のような自己の生体試料中の測定の目的とする特定成分の濃度を把握する能力を早期に身につけることを支援する機能を有する、生体試料中の特定成分を測定するための測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、被検者が自己の生体試料中の特定成分の濃度を測定するための測定装置であって、
生体試料中の前記特定成分の濃度を測定する測定部と、
被検者の測定結果の推測値の入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部で入力が受け付けられた推測値のデータを参照し、前記測定部で得られた測定値及び前記推測値の一致の度合いを判定する一致度判定部と、
前記一致度判定部で得られた判定結果を出力する出力部と、を備える、測定装置(以下、「本発明の測定装置」という。)である。
【0008】
上記生体試料は、特に限定されないが、自己で採取することが容易である血液、尿、汗などが挙げられ、上記特定成分は、その生体試料中の濃度などの状態が、身体の状態に関連しうる成分である。身体の状態とは、疾患、トレーニングによる疲労などが挙げられる。具体的には、糖尿病、肥満、高コレステロール血症などを含む生活習慣病に関連するグルコース、コレステロール、及びトリグリセリド、トレーニングによる疲労に関連する乳酸などが挙げられる。上記特定成分がグルコースの場合は、被検者は通常糖尿病患者であり、上記特定成分が乳酸の場合は、被検者は通常スポーツ選手であり、上記特定成分がコレステロールの場合は、被検者は通常高コレステロール血症患者であり、上記特定成分がトリグリセリドの場合は、被検者は通常肥満患者である。
このような測定装置は、被検者が日常的に行う特定成分の測定の際に、被検者に測定結果の推測を行わせることを可能にし、前記特定成分の濃度を把握する能力を訓練することで早期に体得することを支援する。
【0009】
本発明の測定装置の好ましい形態では、前記測定値及び推測値の一致の度合いに応じて出力形態を変えた複数の出力データを記憶する出力データ記憶部と、
前記判定された測定値及び推測値の一致の度合いに応じた出力データを、前記出力データ記憶部から読み出して、前記出力部に出力させる出力データ処理部と、を更に備える。
このような形態の測定装置は、前記一致の度合いを、分かりやすく被検者に知らせることができる。従って、特に、被検者が高齢者や子供の場合に有用である。
前記出力データは、例えば、画像データ、文字データ、及び音声データから選ばれる。
【0010】
本発明の測定装置の好ましい形態では、前記推測値の入力の受け付けが行われずに、前記測定部による測定が行われた場合に、推測値の入力を指示する指示データを、前記出力部に出力させる指示データ処理部を更に備える。
このような形態の測定装置は、被検者が予め推測値を入力せずに測定を行った場合でも、推測値の入力を促し、その機会を与えるものであり、被検者に対して、より確実に推測の訓練を行うことを可能にする。
【0011】
また、上記課題を解決するための本発明は、被検者により供給された生体試料中の特定成分の濃度を測定する測定方法であって、
生体試料中の前記特定成分の濃度を測定する測定ステップと、
被検者の測定結果の推測値の入力を受け付ける入力受付ステップと、
前記入力受付ステップで入力が受け付けられた推測値のデータを参照し、前記測定ステップで得られた測定値及び前記推測値の一致の度合いを判定する一致度判定ステップと、
前記一致度判定ステップで得られた判定結果を出力する出力ステップと、を含む、測定方法(以下、「本発明の測定方法」という。)である。
【0012】
本発明の測定方法の好ましい形態では、前記一致度判定ステップの終了後、前記判定された測定値及び推測値の一致の度合いに応じた出力データを、該一致の度合いに応じて出力形態を変えた複数の出力データを記憶する出力データ記憶部から読み出して出力する、出力データ処理ステップを、更に含む。
【0013】
本発明の測定方法の好ましい形態では、前記入力受付ステップが行われずに、前記測定ステップが行われた場合に、推測値の入力を指示する指示データを出力する指示データ処理ステップを、更に含む。
本発明の好ましい形態では、上記入力の受付から出力までの一連のステップを、ネットワークを介することなく一つの装置で行う。
【0014】
また、本発明は、コンピュータを備える、被検者が自己の生体試料中の特定成分の濃度を測定するための測定装置に読み込まれるプログラムであって、
コンピュータに、
被検者の測定結果の推測値の入力を受け付ける入力受付ステップ、及び
前記入力受付ステップで入力を受け付けた推測値のデータを参照し、生体試料中の前記特定成分の濃度の測定値及び前記推測値の一致の度合いを判定する一致度判定ステップを、
実行せしめるためのプログラム(以下、「本発明のプログラム」という。)を提供する。
【0015】
本発明のプログラムの好ましい形態では、コンピュータに、
前記一致度判定ステップの終了後、前記判定された測定値及び推測値の一致の度合いに応じた出力データを、該一致の度合いに応じて出力形態を変えた複数の出力データを記憶する出力データ記憶部から読み出して出力する、出力データ処理ステップを、更に実行せしめる。
【0016】
本発明のプログラムの好ましい形態では、
コンピュータに、
前記入力受付ステップが行われずに、前記特定成分の濃度の測定が行われた場合に、推測値の入力を指示する指示データを出力する指示データ処理ステップを、更に実行せしめる。
【0017】
また、本発明は、前記本発明のプログラムを記憶した、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体を提供する。
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。
【発明の効果】
【0018】
本発明の測定装置及び測定方法は、被検者が、自己の生体試料中の測定の目的とする特定成分の濃度を測定せずとも日常的に前記特定成分の濃度を把握する能力を、早期に身につけることを支援する。本発明の測定装置及び測定方法は、生活習慣病患者、特に糖尿病患者の食事管理及び投薬管理、並びにスポーツ選手のトレーニング管理に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の測定装置の一形態の外観を示す概略図である。
【図2】図1の測定装置の機能を示す概略図である。
【図3】図1の測定装置による測定の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の測定装置である血糖測定器1の外観を示す概略図であり、図2は、血糖測定器1の機能を示すブロック図である。
血糖測定器1は、測定器本体11と、測定器本体11と着脱可能なグルコースセンサ51からなる。グルコースセンサ51は、測定器本体11のスリット(図示しない)に挿入され、測定に使用された後、測定器本体11から取り外される。また、本実施形態では、グルコースセンサ51のスリットへの挿入により電源がオンされる構成となっている。
測定器本体11は、入力受付部2、出力部である表示部3及び音声出力部4、制御部6、並びに記憶部7を有する。グルコースセンサ51は、公知の構成を有し、血液を点着するための血液点着部、グルコースと反応する酵素を保持する酵素膜、酸化還元電位を検出する電極、血液点着部に点着された血液を酵素膜に接触する位置に供給するマイクロ流路等(図示しない)を有する。
【0021】
入力受付部2は、被検者による測定結果の推測値の入力を受け付けるためのものであり、ボタン、タッチパネル、マイクなどを採用することができる。本実施形態では、所定の数値を基準として、数値を増加させる増加ボタン(上ボタン)21、数値を減少させる減少ボタン(下ボタン)22、及び入力を確定する決定ボタン23を用いているが、推測値の入力を受け付けることができるものである限り、その数などの構成は特に限定されない。上ボタン21、下ボタン22、及び決定ボタン23を用いる場合には、例えば、上ボタンを1回押すごとに、表示部3に表示される数値(mg/dL)を10ずつ増加させ、下ボタンを1回押すごとに10ずつ減少させるように設計することができる。そして、決定ボタン23により入力を確定することができるように設計することができる。なお、糖尿病患者には高齢者が多いので、入力受付部2の構成はできるだけ簡素とすることが好ましい。このような観点から、例えば、決定ボタン23を設けずに、後述する測定部5での測定が行われた時点で、推測値の入力を確定する構成とすることも好ましい。
【0022】
表示部3は、本発明における出力部の一形態であり、後述する測定部5で得られた測定値、一致度判定部61で得られた判定結果、被検者による血糖測定器1の操作をサポートする情報を表示するものであり、ディスプレイである。本実施形態では、LEDバックライトを備えた液晶ディスプレイを用いるが、文字や画像を表示できるものである限り、特に限定されない。表示部3による表示は、数字やメッセージなどの文字、アイコン、背景色、背景パターンなどの画像により行う。
【0023】
音声出力部4は、本発明における出力部の一形態であり、後述する測定部5で得られた測定値、一致度判定部61で得られた判定結果、更には、被検者による血糖測定器1の操作をサポートする各種音声を出力するものであり、スピーカーである。音声出力部4による出力は、一致の度合いを表す数字の読み上げやメッセージなどの言語、音楽により行う。
本発明において音声出力部4の構成は必須ではないが、視覚障害を持つ被検者が利用できる装置を提供する観点から、これを設けることが好ましい。
本実施形態では、出力部として、表示部3及び音声出力部4を採用しているが、出力部は、被検者が五感で認識できる出力を行うものであればよい。
【0024】
測定部5は、上述したグルコースセンサ51及びグルコース濃度算出部52を含む。
グルコースセンサ51は、グルコースオキシダーゼ(GOD)又はグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を保持する酵素膜及び電極(図示しない)を含み、被検者の血液が接触すると、グルコースの酵素反応生成物の酸化還元電流を検出する。
グルコース濃度算出部52は後述する制御部6に含まれ、後述する記憶部7に記憶され
ているグルコース濃度と電流値の相関を示す検量線データ(図示しない)に基づいて、血液中のグルコース濃度を算出する。
【0025】
なお、本実施形態では、測定部5が、電極法を用いた測定機構である場合について説明したが、グルコース測定部5は、グルコースの酵素反応生成物と特定の色原体との反応の色素量を測定する比色法を用いた測定機構であってもよい。この場合には、測定部5は、色原体、光学測定器などを含む。
【0026】
制御部6は、CPU及びRAMを備え、CPUがRAMに展開されたプログラムを解釈及び実行することで、一致度判定部61、画像データ処理部62及び音声データ処理部63を含む出力データ処理部、指示データ処理部64、上述したグルコース濃度算出部52として機能する。上記プログラムは、後述する記憶部7のプログラム記憶部71に格納されている。制御部6は、時計機能を有し、後述する推測値の入力日時、グルコース濃度の測定日時などを管理する。
【0027】
一致度判定部61は、入力受付部2が入力を受け付けた推測値、及び測定部5で得られた測定値の一致の度合いを判定する。該一致の度合いの判定は、測定値から推測値を減じた値を測定値で除した値の絶対値を算出し、更に必要に応じて算出した値を任意のランクに分類することにより行うことができる。あくまでも一例であるが、本実施形態では、0.2以下(一致度80%以上)、0.2より大きい〜0.5以下(一致度80%未満〜50%以上)、0.5より大きい(一致度50%未満)の3ランクに分類する。
なお、前記一致の度合いの判定に用いる値は、測定値から推測値を減じた値、測定値から推測値を減じた値を測定値で除した値などを用いることもできる。
また、ランクの数も特に制限されず、任意のランク付けを行うことができる。
【0028】
画像データ処理部62は、本発明における出力データ処理部の一形態であり、前記一致度判定部61で得られた判定結果に応じた画像データを、後述する画像データ記憶部74から読み出して、前記表示部3に、前記測定部5で得られた測定値のデータと共に出力させる。
音声データ処理部63は、本発明における出力データ処理部の一形態であり、前記一致度判定部61で得られた判定結果に応じた音声データを、後述する音声データ記憶部75から読み出して、前記音声出力部4に出力させる。音声としては、前記測定部5で得られた測定値のデータの読み上げと音楽を組み合わせたものなどが挙げられる。
【0029】
指示データ処理部64は、推測値を入力する旨の指示データを前記出力部に出力させる。該出力は、被検者により推測値が入力されずに、前記測定部による測定が行われた場合に行う。上記指示データ処理部64を設けることで、被検者が推測値を予め入力せずに血液をグルコースセンサに点着した場合でも、被検者に推測値の入力を促しその機会を与えることができ、被検者に推測の訓練を確実に行わせることができる。特に、糖尿病患者には高齢者が多く、このような被検者は、新しいタイプの血糖測定器を使用し始める際に従来の血糖測定器の使用の習慣で、グルコースセンサ51を測定器本体11のスリットへ挿入した後すぐに血液を点着させてしまう可能性があるので、上記構成が有用である。
【0030】
制御部6は、更に、後述する記憶部7の推測データ記憶部72や測定データ記憶部73に記憶されている一定期間の推測値のデータと測定値のデータを分析し、訓練の成果を評価する機能を有することも好ましい。例えば、上述した一致の度合いの時間的変化をグラフ化する機能が挙げられる。
【0031】
記憶部7は、プログラム記憶部71、推測データ記憶部72、測定データ記憶部73、並びに画像データ記憶部74及び音声データ記憶部75を含む出力データ記憶部を有する

プログラム記憶部71は、上記制御部6のRAMに展開され、CPUにより実行されるプログラムを記憶する。
推測データ記憶部72は、上記入力受付部2で入力が受け付けられた推測値のデータを、その入力日時と関連づけて記憶する。推測データ記憶部72は、一定期間の推測値のデータを保持する。
測定データ記憶部73は、上記測定部5で得られた測定値のデータを、その測定日時と関連づけて記憶する。測定データ記憶部73は、一定期間の測定値のデータを保持する。
画像データ記憶部74は、本発明における出力データ記憶部の一形態であり、上記推測値及び測定値の一致の度合いと関連づけて、表示形態を変えた複数の画像データを記憶する。画像データには、背景色データが含まれる。本実施形態の場合には、画像データ記憶部74には、上記一致の度合いの3つのランクと3つの背景色データを関連づけるテーブルが記憶されている。
音声データ記憶部75は、本発明における出力データ記憶部の一形態であり、上記推測値及び測定値の一致の度合いと関連づけて、音声を変えた複数の音声データを記憶する。本実施形態の場合には、音声データ記憶部75には、上記一致の度合いの3つのランクと3つの音楽データを関連づけるテーブルが記憶されている。
【0032】
記憶部7は、更に、上記一致度判定部61で得られた判定結果(一致の度合い)を、推測値の入力日時、又はグルコース濃度の測定日時と関連づけて記憶することも好ましい。このような構成とすることで、医師などが、患者の訓練の成果を確認することができる。
また、記憶部7は、被検者の氏名、連絡先などの被検者情報などの従来の血糖測定器に記憶されているような基礎情報を記憶することができる。
【0033】
以下、図3のフローチャートを参照し、血糖測定器1の動作について説明する。
まず、被検者によりグルコースセンサ51が測定器本体11のスリットに挿入されると、表示部3がスタート画面を表示すると同時に、音声出力部4がスタート音声を出力する(ステップS101)。スタート画面又はスタート音声は、例えば、被検者に対し推測値の入力を指示するものが挙げられる。
次に、ステップS102では、入力受付部2で推測値の入力が受け付けられたか否かの判断を行う。推測値が入力されたと判断した場合は、表示部3が血糖値の測定(グルコースセンサ51への血液の点着)を指示する測定指示画面を表示すると同時に、音声出力部4が血糖値の測定を指示する測定指示音声を出力する(ステップS103)。続いて、測定部5が、グルコースセンサへの血液の接触を待って、グルコース濃度を測定する(ステップS104)。ステップS104の終了後、ステップS108に進む。入力が受け付けられた推測値のデータは、制御部6のRAMに記憶されるとともに、推測データ記憶部72に記憶される。
【0034】
一方、前記ステップS102で、推測値の入力が受け付けられなかったと判断した場合は、測定部5が、グルコースセンサへの血液の接触を待って、グルコース濃度を測定する(ステップS105)。測定値のデータは、制御部6のRAMに記憶されるとともに、測定データ記憶部73に記憶される。ステップS105の終了後、指示データ処理部64が、被検者に推測値の入力を指示する文字データや画像データを表示部3に出力させると同時に、推測値の入力を指示する音声データを音声出力部4に出力させる(ステップS106)。ステップS106が終了したら、ステップS107に進み、入力受付部2で推測値の入力が受け付けられたか否かの判断を行う。ステップS107で推測値の入力が受け付けられたと判断した場合は、ステップS108に進む。
一方、ステップS107で推測値の入力が受け付けられなかったと判断した場合は、推測データ記憶部72に、最新のグルコース濃度の測定日時と関連づけてブランクデータを記憶し、表示部3及び音声出力部4がステップS105で得られた測定値のデータを出力
して(ステップS111)、処理を終了する。
【0035】
ステップS108では、一致度判定部61が、前記測定値及び推測値の一致の度合いを判定する。一致度判定部61は、入力受付部2で入力を受け付けた推測値のデータと、測定部5で得られた測定値のデータとの、一致の度合いの判定を行う。
【0036】
一致の度合いの判定は、ランクの数、分類方法に応じた複数の判断を繰り返すことにより行うことができる。上述した3つのランクに分類する場合には、例えば、以下の2段階の判断を含む。
1段階目は、下記式(i)の真偽を判定する。
|(推測値−測定値)/測定値|≦x1 ・・・(i)
x1として、例えば、0.2程度の数値が設定される。
上記式(i)が真である場合には、画像データ処理部62は、画像データ記憶部74から画像データX1を読み出し(ステップS109)、前記測定値のデータと共に表示部3に表示させる(ステップS110)。本実施形態においては、画像データX1は、青の背景データであり、表示部3は、青の背景に測定値を表示する。青の背景は、一致の度合いが高く、良い判定結果を意味する。また、この場合には、音声データ処理部63は、音声データ記憶部75から音声データY1を読み出し(ステップS109)、音声出力部4に出力させる(ステップS110)。本実施形態においては、音声データY1は、良い結果を連想させる軽快な音楽に、“測定値と推測値が一致しています”という言語を組み合わせた音声データである。
【0037】
上記式(i)が偽である場合には、2段階目に進み、下記式(ii)の真偽を判定する。
|(推測値−測定値)/測定値|≦x2 ・・・(ii)
x2として、例えば、0.5程度の数値が設定される。
上記式(ii)が真である場合には、画像データ処理部62は、画像データ記憶部74から画像データX2を読み出し(ステップS109)、前記測定値のデータと共に表示部3に表示させる(ステップS110)。本実施形態においては、画像データX2は、黄の背景データであり、表示部3は、黄の背景に測定値を表示する。黄の背景は、一致の度合いがあまり高くなく、普通の判定結果を意味する。また、この場合には、音声データ処理部63は、音声データ記憶部75から音声データY2を読み出し(ステップS109)、音声出力部4に出力させる(ステップS110)。本実施形態においては、音声データY2は、良くも悪くもない結果を連想させる単調な音楽に、“測定値と推測値がずれています”という言語を組み合わせた音声データである。
【0038】
上記式(ii)が偽である場合には、画像データ処理部62は、画像データ記憶部74から画像データX3を読み出し(ステップS109)、前記測定値のデータと共に表示部3に表示させる(ステップS110)。本実施形態においては、画像データX3は、赤の背景データであり、表示部3は、赤の背景に測定値を表示する。赤の背景は、一致の度合いが低く、悪い判定結果を意味する。また、この場合には、音声データ処理部63は、音声データ記憶部75から音声データY3を読み出し(ステップS109)、音声出力部4に出力させる(ステップS110)。本実施形態においては、音声データY3は、悪い結果を連想させる寂しげな音楽に、“測定値と推測値が大きくずれています”という言語を組み合わせた音声データである。
【0039】
なお、上記実施形態の変形例として、血糖測定器を、血糖値の推測を行わないで血糖値を測定する、従来の測定を実行する機能を選択できるように構成することもできる。この場合は、例えば、血糖値の推測を行って血糖値を測定する推測モード、及び血糖値の推測を行わずに血糖値を測定する測定モードの選択を指示するモード選択画面を、ステップS
101の前に表示部3が表示し、入力受付部2により推測モードの入力が受け付けられた場合のみ、上述した処理を行うように構成すればよい。
【0040】
1 ・・・ 血糖測定器
11 ・・・ 測定器本体
2 ・・・ 入力受付部
3 ・・・ 表示部
4 ・・・ 音声出力部
51 ・・・ グルコースセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の特定成分の濃度を測定するための測定装置であって、
生体試料中の前記特定成分の濃度を測定する測定部と、
被検者の測定結果の推測値の入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部で入力が受け付けられた推測値のデータを参照し、前記測定部で得られた測定値及び前記推測値の一致の度合いを判定する一致度判定部と、
前記一致度判定部で得られた判定結果を出力する出力部と、を備える、測定装置。
【請求項2】
前記測定値及び推測値の一致の度合いに応じて出力形態を変えた複数の出力データを記憶する出力データ記憶部と、
前記判定された測定値及び推測値の一致の度合いに応じた出力データを、前記出力データ記憶部から読み出して、前記出力部に出力させる出力データ処理部と、を更に備える、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記推測値の入力の受け付けが行われずに、前記測定部による測定が行われた場合に、推測値の入力を指示する指示データを、前記出力部に出力させる指示データ処理部を更に備える、
請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記出力データが画像データ、文字データ及び音声データから選ばれる、請求項1〜3の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記被検試料が血液であり、前記特定成分はグルコース、乳酸、コレステロール、及びトリグリセリドから選ばれる、請求項1〜4の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
被検者により供給された生体試料中の特定成分の濃度を測定する測定方法であって、
生体試料中の前記特定成分の濃度を測定する測定ステップと、
被検者の測定結果の推測値の入力を受け付ける入力受付ステップと、
前記入力受付ステップで入力が受け付けられた推測値のデータを参照し、前記測定ステップで得られた測定値及び前記推測値の一致の度合いを判定する一致度判定ステップと、
前記一致度判定ステップで得られた判定結果を出力する出力ステップと、を含む、測定方法。
【請求項7】
前記一致度判定ステップの終了後、前記判定された測定値及び推測値の一致の度合いに応じた出力データを、該一致の度合いに応じて出力形態を変えた複数の出力データを記憶する出力データ記憶部から読み出して出力する、出力データ処理ステップを、更に含む、
請求項6に記載の測定方法。
【請求項8】
前記入力受付ステップが行われずに、前記測定ステップが行われた場合に、推測値の入力を指示する指示データを出力する指示データ処理ステップを、更に含む、
請求項6又は7に記載の測定方法。
【請求項9】
コンピュータを備える、被検者が自己の生体試料中の特定成分の濃度を測定するための測定装置に読み込まれるプログラムであって、
コンピュータに、
被検者の測定結果の推測値の入力を受け付ける入力受付ステップ、及び
前記入力受付ステップで入力を受け付けた推測値のデータを参照し、生体試料中の前記特定成分の濃度の測定値及び前記推測値の一致の度合いを判定する一致度判定ステップを、
実行せしめるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
前記一致度判定ステップの終了後、前記判定された測定値及び推測値の一致の度合いに応じた出力データを、該一致の度合いに応じて出力形態を変えた複数の出力データを記憶する出力データ記憶部から読み出して出力する、出力データ処理ステップを、更に実行せしめるための、
請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
コンピュータに、
前記入力受付ステップが行われずに、前記特定成分の濃度の測定が行われた場合に、推測値の入力を指示する指示データを出力する指示データ処理ステップを、更に実行せしめるための、
請求項9又は10に記載のプログラム。
【請求項12】
請求項9〜11の何れか一項に記載のプログラムを記憶した、コンピュータが読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−247884(P2011−247884A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99636(P2011−99636)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】