説明

測定装置および測定方法

【課題】血糖値とヘモグロビンA1c値の両方を測定できる装置であって、持ち運び自在な程度に小型であり且つ少ない検体量で測定できるPOCに適用可能な測定装置を提供する。
【解決手段】血液検体の血糖値とヘモグロビンA1c値とを測定するための装置であって、血液検体を点着させる試験片200を着脱自在に装着するための試験片装着部1と、前記試験片200に対する照射光を発する発光部2と、前記試験片200からの反射光を受光する受光部3と、前記受光部3から得られる測光値に基づいて血液検体中の血糖値およびヘモグロビンA1c値を算出する演算部4とを有し、血液検体中の血糖値を測定するための前記試験片200として、グルコースと反応して呈色する組成物(a)を担持した試験片(A)が装着され、血液検体中のヘモグロビンA1c値を測定するための前記試験片200として、糖化ヘモグロビンと反応して呈色する組成物(b)を担持した試験片(B)が装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖値とヘモグロビンA1c値の両方を測定することができる測定装置と、該測定装置を用いた測定方法とに関するものである。詳しくは、本発明に係る測定装置は、所謂POC(ポイントオブケア)に適用可能な小型で簡易型の測定装置である。
【背景技術】
【0002】
近年、POC(ポイントオブケア)が注目されている。POCとは、患者の自宅での自己検査、病院でのベッドサイド検査や中央検査室以外での検査など、患者の側で行われる若しくは患者本人が行う検査を意味するものであり、これにより、医師又は患者は検査結果を即座に知ることができるので、迅速な処置が可能になり、治療の質の向上に大きく役立つことが期待されている。このようなPOCに適用される測定装置(POC装置)としては、持ち運び自在な程度に小型であること、かつ検体(血液等)の必要量が少量であることなどが求められる。
【0003】
POC装置の一例としては、例えば自己血糖値測定装置(SMBG)が既に普及している。糖尿病の診断やその予防、治療には日々の血糖値を把握することが重要であり、患者が自ら血糖値を測定し自己管理することが推奨される。そのため、数μLの血液(全血)から簡便かつ迅速に血糖値を測定できるPOC装置は非常に有用である。このような血糖値測定用POC装置としては、古くは、血液中のグルコースを酵素で反応させて発色させ、その発色の程度を吸光度によって検知してグルコース量に換算する方法(酵素比色法)を利用したものが用いられていた。しかし、近年では装置の構成が比較的簡易である酵素電極法を利用した装置が主流になっている。酵素電極法とは、血液中のグルコースを酵素で反応させて電流を生じさせ、流れた電流値をグルコース量に換算する方法である。
【0004】
ところで、糖尿病の診断等に利用する別の指標として、糖化タンパク質の一つであるヘモグロビンA1c(糖化ヘモグロビン)が知られている。ヘモグロビンA1cは、生体内血糖値の過去1〜2ヶ月の履歴を反映する指標であり、長期的な血糖値の平均が表れる。そのため、短期的に変動の大きい血糖値に加え、ヘモグロビンA1c値をも把握することが、診断や治療をより正確に行う上で望ましい。ところが、従来公知のヘモグロビンA1c値の測定方法は、いずれも上述したPOCに適用し難いものであり、ヘモグロビンA1c値の測定はこれまで専ら病院の中央検査室や検査機関でしか行われてこなかった。
【0005】
詳しくは、ヘモグロビンA1c値の測定方法としては、従来、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法、免疫法などにより糖化率や糖化量として測定する方法が知られている。しかし、HPLC法ではヘモグロビンA1c値を測定するためだけに大型の専用機が必要になり、また免疫法では例えば測定用セルの汚れを充分に制御しないと測定精度が低下することになる。このような事情から、これらの方法によるヘモグロビンA1c値の測定は、これまで専ら病院や検査機関でしか行われてこなかったのである。
【0006】
さらにヘモグロビンA1c値の測定方法としては、特許文献1に、酵素による酸化還元反応を利用した方法が開示されている。この酵素による酸化還元反応を利用したヘモグロビンA1c値の測定では、まずヘモグロビンA1cを含む試料をフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)で処理し、FAODをヘモグロビンA1cの糖化部分に作用させる。これにより、ヘモグロビンA1c量に対応する量の過酸化水素が発生するので、次いで、ペルオキシダーゼ(POD)および還元剤を添加し、PODを触媒として過酸化水素と還元剤との間で酸化還元反応を起こさせる。このとき、還元剤として、酸化されることにより発色する還元剤を用い、得られた反応液の発色の程度を吸光度で検知することにより、発生した過酸化水素量ひいてはヘモグロビンA1c量を測定できるのである。
【0007】
しかし、かかる特許文献1記載の方法は、酸化還元反応で得られた反応液の吸光度を測定する所謂ウェット系の測定方法であるので、反応液の調製が必要であったり、取り扱いやメンテナンスが煩雑であったりする点で、上述したPOC、特に患者の自己検査には適用し難かった。また特許文献2にも、測定者による操作負担を最小化し、測定時間を短縮することを目指して、糖化ヘモグロビン測定カセットを利用したヘモグロビンA1c値の測定方法が提案されているが、かかる方法もウェット系の測定方法であり、やはり上述したPOC、特に患者の自己検査には適用し難いものであった。
【0008】
さらに特許文献3には、POCに適用しうるヘモグロビンA1c値測定方法として、免疫法と、上記のような発色の程度を吸光度で検知する比色法とを組み合わせた方法が提案されている。しかし、この方法は免疫法によるものなので、予め血液検体(全血)を溶血させた希釈液を調製しなければならず、全血をそのまま点着させるだけで測定できる自己血糖値測定装置(SMBG)に比べると、その測定時の煩雑さは否めない。
【0009】
近年、糖尿病の診断やその予防、治療に際し、ヘモグロビンA1c値はますます重要視されている。例えば米国では、従来、空腹時血糖またはブドウ糖負荷試験に基づき糖尿病診断を行っていたが、2009年6月に全米糖尿病学会(ADA)は新たな診断基準としてヘモグロビンA1c値を採用しうることを発表している。また日本では、2010年7月1日以降、糖尿病診断に際し、血糖値などの従来の必須検査項目に加え、ヘモグロビンA1cをも必須項目とすることを推奨している。したがって、ヘモグロビンA1c値についても血糖値と同様、患者自ら測定し自己管理できたり、また医療現場においてもより手軽で且つ迅速に測定できることが望まれている。
【0010】
また、上述した血糖値とヘモグロビンA1c値は、いずれも糖尿病診断に活用されるものであり、特に日本では血糖値とヘモグロビンA1c値の両方を糖尿病診断時の必須検査項目としていることから、利便性等を考慮すると、この両測定項目を一つの装置で測定しうることが望まれる。
【0011】
血糖値とヘモグロビンA1c値を同時に測定できる装置としては、アークレイ(株)よりグリコヘモグロビン/グルコース分析装置「アダムス(登録商標)ハイブリッドAH−8280」が市販されている。しかし、この装置は、血糖値についてはグルコースオキシダーゼ電極法で測定し、ヘモグロビンA1c値についてはHPLC法で測定するものであり、2種類の測定原理が組み込まれたものである。よって、当該装置は内部構成が複雑で装置自体も大きく、従来のように血糖値とヘモグロビンA1c値とを別々の装置で測定する場合に比べると装置の設置スペースが削減できるという利点を有するものの、POCに適用できるものではない。さらに血糖値とヘモグロビンA1c値の2項目を同時に測定できる装置として、ローム(株)、三和化学研究所(株)およびウシオ電機(株)の3社により開発された「バナリスト(登録商標)エース」も市販されている。しかし、この装置は、血糖値については酵素法で測定し、ヘモグロビンA1c値についてはラテックス凝集などの免疫法で測定するものであり、やはり2種類の測定原理が組み込まれたものである。そのため装置の構成が複雑であり、POC、特に患者の自己検査には適用し難いものであった。
【0012】
また特許文献4には、現在の血糖値と、過去の血糖値を反映する血糖マーカーを同時に測定する自己血糖検査手段が提案されているが、ここでは、血糖値とヘモグロビンA1c値とを測定できる装置に関して何ら具体的に開示されてはいない。さらに、近年、血糖とともに他の検査項目をも測定しうる自己血糖値測定装置(SMBG)が開発され、市販されている。例えば、台湾のGeneral Life Biotechnology社製の「Benecheck(登録商標)PLUS」は、血糖値とともに、酵素電極法によりコレステロール値や尿酸値を測定できる。しかしながら、この装置も、血糖値とともにヘモグロビンA1c値を測定できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2003/064683号
【特許文献2】特開2009−92643号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0158866号明細書
【特許文献4】特開2001−264336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、血糖値とヘモグロビンA1c値の両方を測定できる装置であって、持ち運び自在な程度に小型であり、且つ少ない検体量で測定できるPOCに適用可能な測定装置を提供すること、さらに該測定装置を用いた測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成し得た本発明の測定装置は、血液検体の血糖値とヘモグロビンA1c値とを測定するための装置であって、前記血液検体に照射光を発する発光部と、前記血液検体からの反射光を受光する受光部と、前記受光部から得られる測光値に基づいて血液検体中の血糖値およびヘモグロビンA1c値を算出する演算部とを有し、前記発光部が2種以上の異なる波長の光を照射可能である点に要旨を有するものである。ここで前記発光部は3種の異なる波長の光を照射可能であることが好ましい。このとき、前記3種の異なる波長の光のうちの一つは血液検体中のグルコースにより呈色した部分に吸収される特定波長の光であり、他の二つは血液検体中のヘモグロビンにより呈色した部分と糖化ヘモグロビンにより呈色した部分とにそれぞれ吸収される2種の異なる特定波長の光である。またかかる測定装置においては、血液検体を点着させる試験片を着脱自在に装着するための試験片装着部を備えることが好ましい態様である。
【0016】
また本発明の別の測定装置は、血液検体の血糖値とヘモグロビンA1c値とを測定するための装置であって、血液検体を点着させる試験片を着脱自在に装着するための試験片装着部と、前記試験片に対する照射光を発する発光部と、前記試験片からの反射光を受光する受光部と、前記受光部から得られる測光値に基づいて血液検体中の血糖値およびヘモグロビンA1c値を算出する演算部とを有し、血液検体中の血糖値を測定するための前記試験片として、グルコースと反応して呈色する組成物(a)を担持した試験片(A)が装着され、血液検体中のヘモグロビンA1c値を測定するための前記試験片として、糖化ヘモグロビンと反応して呈色する組成物(b)を担持した試験片(B)が装着される点に要旨を有する。かかる測定装置においては、上述した測定装置と同様、前記発光部は3種の異なる波長の光を照射可能であることが好ましい。
【0017】
上記のような本発明の測定装置においては、血糖値とヘモグロビンA1c値のいずれを測定する場合にも、反応により試験片を呈色させ、その呈色の程度を光の反射光によって検知するという同じ原理に基づく方法を利用するので、装置を小型化することが可能になる。しかも、上述の呈色させるための反応は、血液検体中のグルコースや糖化ヘモグロビンと反応させる組成物が試験片に担持されているため、わずか数滴(数μL程度)の血液検体(全血)を希釈させることなく直接、試験片に点着させることにより行わせることができる。このような本発明の測定装置はPOC装置として適用でき、しかも試験片として試験片(A)を装着すれば血糖値を、試験片として試験片(B)を装着すればヘモグロビンA1c値を、それぞれ測定することができる。
【0018】
なお、本発明における試験片(A)、試験片(B)は、個別に形成されている場合のほか、同一の試験片で形成される場合も含む。例えば、血液検体を点着させる試験片は、組成物(a)が担持された領域(試験片(A)に相当)と組成物(b)が担持された領域(試験片(B)に相当)の両方を有するものであってもよい。
【0019】
本発明の測定装置は、呈色させその程度を光の反射の程度によって検知するという測定原理に基づき、血糖値とヘモグロビンA1c値とを一つの装置で測定するものであり、そのためには、前記発光部が2種以上の異なる波長の光を照射可能であることが重要となる。すなわち、上記測定原理に基づき血糖値とヘモグロビンA1c値とを一つの装置で測定するには、血糖値を測定するためにグルコースによる呈色を検知する波長と、ヘモグロビンA1c値を測定するために糖化ヘモグロビンによる呈色を検知する波長との少なくとも2種の波長の光が必要となるのである。
【0020】
本発明の測定装置の好ましい態様においては、ヘモグロビンA1c値を測定する際には、ヘモグロビンによる呈色と糖化ヘモグロビンによる呈色とを検知し、それらの結果からへモグロビンA1c値が算出される。この場合、ヘモグロビンによる呈色と糖化ヘモグロビンによる呈色とは互いに異なる波長の光の反射で検出されることが望ましく、さらに、それら2種の異なる波長(ヘモグロビンによる呈色を検出する波長と糖化ヘモグロビンによる呈色を検出する波長)はグルコースによる呈色を検知する波長とも異なっていることが望ましい。前記発光部が3種の異なる波長の光を照射可能であれば、ヘモグロビンによる呈色と糖化ヘモグロビンによる呈色とさらにはグルコースによる呈色とを異なる波長の光の反射でそれぞれ検出することができる。なお、ヘモグロビンによる呈色、糖化ヘモグロビンによる呈色およびグルコースによる呈色のうちのいずれか2つの呈色を同一波長で検知できる場合には、前記発光部は2種の異なる波長の光を照射可能であればよい。
【0021】
上述したような2種以上の異なる波長の光を照射可能な発光部は、1種の波長の光を照射可能な発光素子を2個以上有することができる。さらに、前記発光部は2種以上の異なる波長の光を照射可能な発光素子(多波長発光素子)を少なくとも1個有することが好ましい。これにより、装置内部に設置する発光素子の数を減らせるので、装置の小型化が可能になる。
【0022】
さらに最も好ましい態様としては、前記発光部は3種の異なる波長の光を照射可能な発光素子を有する。この場合、1個の発光素子のみで、グルコースによる呈色、糖化ヘモグロビンによる呈色およびヘモグロビンによる呈色を、各々別の波長で検知することができる。
【0023】
さらに、2種以上又は3種の異なる波長の光を照射可能な発光部は、発光素子(例えば1種の波長の光を照射可能な発光素子であってもよいし、多波長発光素子であってもよい)を3個有する形態とし、この3個の発光素子のうち一つは前記試験片の一方の面に光を照射し、残りの二つは前記試験片の他方の面に光を照射するようにすることも好ましい。具体的には、例えば2個の発光素子を試験片の両面側(表面側および裏面側)に1個ずつ配して、発光素子の一方により試験片の表面に、他方により試験片の裏面に光を照射するとよい。これにより、2種の異なる波長の光を同時に試験片に照射することができるので、測定の迅速化が可能になる。
【0024】
前記発光部は、600nm以上にピーク波長があり、光度が1000mcd以上、より好ましくは2000mcd以上、更に好ましくは3000mcd以上である発光素子を少なくとも1つ有することが好ましい。これにより、高波長側の光を正確に受光(検知)することができ、測定精度の向上が可能になる。
【0025】
本発明の測定装置においては、前記試験片装着部を2個備え、この2個の試験片装着部のうちの一方に試験片(A)が装着され、他方に試験片(B)が装着されるとともに、該試験片(A)と該試験片(B)は形状または大きさが異なっていることが好ましい。つまり、血糖値測定用の試験片装着部とへモグロビンA1c値測定用の試験片装着部を設けた場合に、各試験片装着部に装着する試験片の形状または大きさを変えておくことが好ましいのである。これにより、試験片(A)と試験片(B)の入れ間違いを防止することができる。
【0026】
本発明の測定装置においては、前記試験片装着部が試験片挿入口を有しており、前記試験片挿入口は、前記試験片(A)を案内する辺縁部と、前記試験片(A)とは形状が異なる前記試験片(B)を案内する辺縁部とを有していることが好ましい。これにより、試験片装着部を1個として小型化を図りながらも、試験片(A)と試験片(B)の入れ間違いを防止することができる。
【0027】
上記目的を達成し得た本発明の測定方法とは、2種以上(特に3種)の異なる波長の光を照射可能である発光部を備えた測定装置を用いて血液検体中の血糖値とヘモグロビンA1c値の両方を測定する点に要旨を有するものである。また本発明の別の測定方法は、血液検体を点着させる試験片を着脱自在に装着するための試験片装着部と、前記試験片に対する照射光を発する発光部と、前記試験片からの反射光を受光する受光部と、前記受光部から得られる測光値に基づいて血液検体中の血糖値およびヘモグロビンA1c値を算出する演算部とを有する測定装置を用いるとともに、前記試験片として、血液検体中の血糖値を測定する際にはグルコースと反応して呈色する組成物(a)を担持した試験片(A)を用い、血液検体中のヘモグロビンA1c値を測定する際には糖化ヘモグロビンと反応して呈色する組成物(b)を担持した試験片(B)を用いることとし、試験片に血液検体を点着させ、前記発光部から試験片に対して光を照射し、試験片から反射した光を前記受光部で受光し、得られた測光値に基づき前記演算部にて血糖値またはヘモグロビンA1c値を算出する点に要旨を有するものである。かかる本発明の測定方法によれば、血液検体の試験片への点着と試験片の装着という2つの簡便な操作によって、血糖値とヘモグロビンA1c値の両方を適宜測定することができる。
【0028】
本発明の測定方法において、前記試験片装着部を1個有する測定装置を用いる場合には、該1個の試験片装着部に、血液検体中の血糖値を測定するときには前記試験片(A)を装着し、血液検体中のヘモグロビンA1c値を測定するときには前記試験片(B)を装着することが好ましい。このように試験片装着部を1個とし、測定しようとする項目(血糖値またはヘモグロビンA1c値)に応じた試験片を適宜装着するようにすれば、装置をより小型化できる。
【0029】
本発明において、試験片(A)が担持する前記組成物(a)は、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび酸化還元系発色試薬を含有するものであることが好ましく、試験片(B)が担持する前記組成物(b)は、プロテアーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび酸化還元系発色試薬を含有するものであることが好ましい。これにより、血液検体中のグルコースや糖化ヘモグロビンによって試験片を確実に効率よく呈色させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、血糖値とヘモグロビンA1c値の両方を、POCに適用可能な一つの装置で測定することができる。詳しくは、本発明によれば、患者はわずか数滴の血液を検体として手軽に血糖値とともにヘモグロビンA1c値を測定することができ、病棟だけでなく家庭でも容易に糖尿病POCを行うことが可能になる、という効果が得られる。
【0031】
特に、本発明の測定装置は、血糖値とヘモグロビンA1c値の両方を同じ測定原理で測定するものであるので、装置の簡略化、小型化を図りやすい。しかも、本発明にかかる測定方法は、血液検体を試験片に点着させて測定に供する、所謂ドライ系での測定方法である。したがって、従来の免疫法や酵素比色法によるヘモグロビンA1c値測定のようなウェット系での測定において必須であった希釈操作、遠心分離操作、さらには機器の洗浄操作などが不要になる、という利点が得られる。さらにドライ系での測定であることにより、少量の検体量で測定でき、しかも血液検体を点着させる試験片は取扱いが容易で、ディスポーザルのため使用後の廃棄も簡便で、衛生面や感染防止の面でも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である測定装置と、該測定装置に装着する試験片とを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す測定装置に試験片(A)を装着したときのx−x線における模式断面図である。
【図3】図3は、図1に示す測定装置に試験片(B)を装着したときのy−y線における模式断面図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施形態である測定装置を説明するための模式図であり、図3と同様、図1に示す測定装置に試験片(B)を装着したときのy−y線における模式断面図である。
【図5】図5は、本発明のさらに別の実施形態である測定装置における発光部および受光部を説明するための模式断面図である。
【図6】図6は、本発明のさらに別の実施形態である測定装置における発光部および受光部を説明するための模式断面図である。
【図7】図7は、本発明において測定に供する血液検体の採取に用いることのできる採血針の一実施形態を示す斜視図である。
【図8】図8は、本発明の別の実施形態である測定装置と、該測定装置に装着する試験片とを示す斜視図である。
【図9】図9は、本発明のさらに別の実施形態である測定装置と、該測定装置に装着する試験片とを示す斜視図である。
【図10】図10は、本発明のさらに別の実施形態である測定装置における試験片装着部の試験片挿入口を示す斜視図である。
【図11】図11は、本発明のさらに別の実施形態である測定装置と、該測定装置に装着する試験片とを示す斜視図である。
【図12】図12は、本発明のさらに別の実施形態である測定装置と、該測定装置に装着する試験片とを示す斜視図である。
【図13】図13は、本発明のさらに別の実施形態である測定装置における発光部および受光部を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(測定装置)
本発明の測定装置は、所定の試験片を用いて血液検体の血糖値とヘモグロビンA1c値とを測定する装置である。以下、本発明の測定装置について図面を参照しつつ説明する。
【0034】
図1は、本発明の測定装置の一実施形態である測定装置100と、該測定装置100に装着する試験片200を示す斜視図である。図2は、図1に示す測定装置100に試験片200として血糖値測定用の試験片(A)(200a)を装着したときのx−x線における模式断面図であり、図3は、図1に示す測定装置100に試験片200としてヘモグロビンA1c値測定用の試験片(B)(200b)を装着したときのy−y線における模式断面図である。
【0035】
図1〜図3において本発明の測定装置100は、血液検体を点着させる試験片200を着脱自在に装着するための試験片装着部1と、前記試験片200に対する照射光を発する発光部2と、前記試験片200からの反射光を受光する受光部3と、前記受光部3から得られる測光値に基づいて血液検体中の血糖値およびヘモグロビンA1c値を算出する演算部4とを有する。
【0036】
試験片装着部1は、図1〜図3に示す測定装置100においては2個設けられているが、図8のように1個のみが設けられた形態であってもよい。試験片装着部1が2個設けられた図1〜図3に示す測定装置100においては、試験片200の装着に際し、一方の試験片装着部1aに後述する血糖値測定用の試験片(A)(200a)を装着し、他方の試験片装着部1bに後述するヘモグロビンA1c値測定用の試験片(B)(200b)を装着するようにすればよい。試験片装着部1が1個設けられている形態においては、試験片200の装着に際し、血糖値測定時には試験片(A)を、ヘモグロビンA1c値測定時には試験片(B)を、適宜差し替えて装着すればよい。測定を迅速化する上では試験片装着部1を2個備えることが好ましいが、装置を小型化する上では試験片装着部1は1個のみである方が好ましい。
【0037】
試験片装着部1は、図1〜図3に示す測定装置100や図8に示す形態においては、長方形形状の試験片挿入口を有しているが、試験片装着部1における試験片挿入口が1個である場合、その試験片挿入口の形状は、血糖値測定用の試験片(A)を案内する辺縁部と、前記試験片(A)とは形状が異なるヘモグロビンA1c値測定用の試験片(B)を案内する辺縁部とを有している形状であることも好ましい態様である。かかる形状としては、例えば、図9に示すような十字形状のほか、図10(a)に示すT字形状や、図10(b)に示すL字形状などが挙げられる。装置の小型化を図るべく試験片装着部1を1個しか設けない場合、試験片挿入口の形状が例えば図8に示すように単純な長方形であれば、そこへ挿入する試験片(A)と試験片(B)は同等の形状にせざるを得ない。そうすると血糖値を測定する際に誤ってヘモグロビンA1c値測定用の試験片(B)を挿入するなど、試験片の入れ間違いが懸念される。しかし、試験片挿入口を上述した図9や図10に示すような形状としておけば、試験片(A)と試験片(B)の形状を明確に異ならせることができるので、試験片の入れ間違い防止に役立つ。
【0038】
試験片装着部1における試験片挿入口が例えば図9に示す十字形状である場合、血糖値測定用の試験片(A)として、図9(a)に示す試験片200aの如く装置の鉛直方向の長さ(厚み)が小さい試験片を選択し、ヘモグロビンA1c値測定用の試験片(B)として、図9(b)に示す如く装置の鉛直方向の長さ(厚み)が大きい試験片を選択することが好ましい。血糖値測定用の試験片(A)およびヘモグロビンA1c値測定用の試験片(B)は複数の層が積層された多層構造からなるが、ここで積層される層の数は、通常、血糖値測定用の試験片(A)の方がヘモグロビンA1c値測定用の試験片(B)に比べ少なくてすみ、厚みを薄くし易いからである。
【0039】
なお、図1に示す測定装置100においては、試験片装着部1(1a、1b)は装置本体の側面に形成されているが、試験片装着部1の形成箇所は特に限定されず、例えば図11、図12に示すように、装置本体の上面に試験片装着部1を形成し、その上に試験片を載置するようにしてもよい。
【0040】
発光部2は、1個または2個以上の発光素子から構成されており、試験片装着部1に装着された試験片200に対して(より厳密には、試験片200に血液検体を点着させた血液検体点着部5に対して)照射光を発することができる位置に配される(図中、光の軌跡は点線で示す。)。なお、複数の発光素子を有する場合、各発光素子の全てが試験片200の一方の面(表面側または裏面側)に配されていてもよいし、各発光素子が試験片200の両面(表面側および裏面側)に分けて配されていてもよい。装置を薄型化かつ小型化する上では、図13に示すように各発光素子の全てが試験片200の一方の面に配されているのがよく、好ましくは試験片200の裏面側に配されているのがよい。
【0041】
発光部2は、上述のように何個の発光素子から構成されていてもよいが、3種の異なる波長の光を照射可能であることが好ましい。すなわち、本発明の装置の測定原理は後に詳述するが、本発明の装置は、ヘモグロビンA1c値を測定する際には、ヘモグロビンによる呈色と糖化ヘモグロビンによる呈色とを検知し、それらの結果からへモグロビンA1c値を演算するものである。このとき、ヘモグロビンによる呈色と糖化ヘモグロビンによる呈色とは異なる波長の光の反射で検出されることが望ましく、これを可能にするために、発光部2は2種の異なる波長の光を照射可能であることが好ましいのである。加えて、血糖値を測定する際に検知するグルコースによる呈色も、上記ヘモグロビンによる呈色や上記糖化ヘモグロビンによる呈色と異なる波長の光の反射で検出するのが望ましく、発光部2は3種の異なる波長の光を照射可能である態様とすることが好ましい。
【0042】
発光部2を上述したように3種の異なる波長の光を照射可能とするには、発光部2が2種以上の異なる波長の光を照射可能な発光素子(多波長発光素子)を少なくとも1個有することが好ましい。このように3種の異なる波長の光を照射するために、発光部2を構成する発光素子の少なくとも一部に多波長発光素子を利用することにより、装置内部に設置する発光素子の数を減らせるので、装置の小型化が可能になる。
【0043】
また、3種の異なる波長の光を照射可能な発光部2を発光素子(例えば1種の波長の光を照射可能な発光素子であってもよいし、多波長発光素子であってもよい)を少なくとも2個有する形態とすることも好ましい。これにより、へモグロビンA1c値測定時に2種の異なる波長の光を同時に試験片に照射することができるので、測定の迅速化が可能になる。
【0044】
図1〜図3に示す測定装置100においては、発光部2は、図2に示す試験片装着部1aに装着した血糖値測定用の試験片(A)(200a)の血液検体点着部5に照射光を発する発光素子2aと、図3に示す試験片装着部1bに装着したへモグロビンA1c値測定用の試験片(B)(200b)の血液検体点着部5に照射光を発する発光素子2bb’とからなる。ここで発光素子2bb’は多波長発光素子であり、ヘモグロビンによる呈色を検出する波長の光と、糖化ヘモグロビンによる呈色を検出する波長の光とを照射する。発光素子2aはグルコースによる呈色を検出する波長の光を照射できるものであればよい。
【0045】
また発光部2は、上記図3に示す発光素子2bb’に代えて、図4に示すように2個の発光素子2b、発光素子2b’を有する形態であってもよい。図4に示す形態おいては、2個の発光素子2b、2b’が試験片200bの両面側(表面側および裏面側)に1個ずつ配され、一方の発光素子2bは試験片200bの表面に光を照射し、他方の発光素子2b’は試験片200bの裏面に光を照射する。このように図1、図2および図4で示される形態の場合、試験片を挟んで装置の一方の側(試験片の裏面側)に2個の発光素子2a、発光素子2b’を有し、装置の他方の側(試験片の表面側)に1個の発光素子2bを有することになる。装置の一方の側と他方の側にそれぞれ発光素子を配することにより、装置の小型化が可能になる。
【0046】
また発光部2は、図13に示すように、試験片の一方の側に3個の発光素子2a、2b、2b’を有する形態であってもよい。
【0047】
発光部2は、ピーク波長が、通常450nm〜780nmの範囲、好ましくは450nm〜550nmと600nm〜700nmの範囲、より好ましくは450nm〜500nmと630nm〜700nmの範囲にある光を照射する1もしくは2以上の発光素子を有することが好ましい。これにより、呈色した試験片に対して、該呈色を検知するのに適した波長の光を照射することができる。具体例として、450nm〜550nm、より好ましくは450〜500nmの範囲でヘモグロビンによる呈色を検知するための光を照射し、600nm〜700nm、より好ましくは630nm〜700nmの範囲でグルコースによる呈色と糖化ヘモグロビンによる呈色を検知するための光を照射することができる。発光素子の具体例としては、青色の発光ダイオード、緑色の発光ダイオード、赤色の発光ダイオード等が挙げられる。
【0048】
発光部2は、光度が1000mcd以上である発光素子を有することが好ましく、光度が2000mcd以上である発光素子を有することがより好ましく、光度が3000mcd以上である発光素子を有することが更に好ましい。発光素子のうちの少なくとも1つは、ピーク波長が600nm以上700nm以下であり光度が1000mcd以上、より好ましくは2000mcd以上、更に好ましくは3000mcd以上であることが好ましい。換言すれば、発光部2が有する発光素子のうち、600nm以上700nm以下のピーク波長における発光素子の光度が1000mcd以上、より好ましくは2000mcd以上、更に好ましくは3000mcd以上であることが好ましい。これにより、高波長側の光を正確に受光(検知)することができるので、特にヘモグロビンA1c値の測定の精度向上が期待できるようになる。より好ましくは、ピーク波長が630nm以上700nm以下である発光素子の光度が1000mcd以上、より好ましくは2000mcd以上、更に好ましくは3000mcd以上であることが好ましい。
【0049】
受光部3は、1個または2個以上の受光素子から構成されており、発光部2(発光素子)から照射され試験片200の血液検体点着部5で反射した光を受光することができる位置に配される。受光部3は1個の発光素子に対して1個の受光素子を設けた形態であってもよいし、1個の発光素子に対して2個または3個の受光素子を設けた形態であってもよく、対応する発光素子に応じて適宜設定すればよい。受光部3は、2種以上の異なる波長の光を受光可能な受光素子(多波長受光素子)を利用したものであることが装置を小型化する上で好ましい。
【0050】
図1〜図3に示す測定装置100において、受光部3は、図2に示す発光素子2aから照射された光を受光する受光素子3aと、図3に示す発光素子2bb’から照射された光を受光する受光素子3bb’とからなる。この場合、多波長発光素子である発光素子2bb’に対して設けられた受光素子3bb’は多波長受光素子であり、例えば発光素子2bb’からヘモグロビンによる呈色を検出する波長の光が照射されたときには当該光を受光し、発光素子2bb’から糖化ヘモグロビンによる呈色を検出する波長の光が照射されたときには当該光を受光する。
【0051】
図1〜図3に示す測定装置100における受光部3は、上記図3に示す受光素子3bb’に代えて、図5に示すような受光素子3b、受光素子3b’を有する形態であってもよい。図5に示す形態においては、多波長発光素子である発光素子2bに対して受光素子3bと受光素子3b’が設けられており、それぞれヘモグロビンによる呈色を検出する波長の光と、糖化ヘモグロビンによる呈色を検出する波長の光とを受光する。
【0052】
また発光部2が図4に示す形態である場合、受光部3は、図4に示すように、試験片200bの表面で反射する反射光を受光する受光素子3bと、試験片200bの裏面で反射する反射光を受光する受光素子3b’とから構成される。
【0053】
さらに受光部3は、図13に示すように、3個の発光素子2a、2b、2b’からそれぞれ照射される光を受光する多波長受光素子3abb’を設けた形態であってもよい。
【0054】
受光部3を構成する受光素子は、対応する発光素子から照射される光を受光できるものであればよい。受光素子の具体例としては、例えばフォトダイオードが挙げられる。
【0055】
発光部2と受光部3の他の形態として、1個の試験片装着部1を有する測定装置の場合には、例えば、図6に示すように、試験片200の表面側に一対の発光素子2aおよび受光素子3aを配するとともに、試験片200の裏面側に多波長発光素子である発光素子2bb’を1個と、2個の受光素子3bおよび受光素子3b’を配するようにしてもよい。この場合、血糖値測定時には、グルコースによる呈色を検出する波長の光を発光素子2aから照射して受光素子3aにて受光し、ヘモグロビンA1c値測定時には、ヘモグロビンによる呈色を検出する波長の光と、糖化ヘモグロビンによる呈色を検出する波長の光とを、それぞれ時間差で発光素子2bb’から照射し、受光素子3bおよび受光素子3b’にてそれぞれ受光すればよい。
【0056】
また図6のような配置で2個の発光素子と3個の受光素子を配置し、ヘモグロビンによる呈色を検出する波長の光と糖化ヘモグロビンによる呈色を検出する波長の光のいずれか一方を発光素子2aおよび受光素子3aで照射、受光するようにしてもよい。この場合、ヘモグロビンA1c値測定時にヘモグロビンによる呈色と糖化ヘモグロビンによる呈色を同時に検出することが可能になるので、測定を迅速化できる。なお、この場合、図6における2個の受光素子3b、3b’のうち、一方でグルコースによる呈色を検出する波長の光を受光し、他方でヘモグロビンまたは糖化ヘモグロビンによる呈色を検出する波長の光を受光することになるが、このとき、グルコースによる呈色とヘモグロビンまたは糖化ヘモグロビンによる呈色とを比べると、ヘモグロビンまたは糖化ヘモグロビンによる呈色の方が反射率が低いので、試験片200により近い位置にある受光素子3bでヘモグロビンまたは糖化ヘモグロビンによる呈色を検出する波長の光を受光し、試験片200により遠い位置にある受光素子3b’でグルコースによる呈色を検出する波長の光を受光することが好ましい。
【0057】
演算部4は、受光部3と電気的に接続されており電気信号を伝達可能になっている(図中、電気信号の伝達回路は太矢印で示す)。そして演算部4は、受光部3から電気信号として送られた測光値に基づいて血液検体中の血糖値およびヘモグロビンA1c値を算出するCPU(記憶部)を搭載している。
【0058】
本発明の測定装置は、図1に示す測定装置100のように、電源スイッチ6と、演算部4に電気的に接続されており電気信号の伝達(図中、電気信号の伝達回路は太矢印で示す)により、測定結果を表示するモニター7を備えていてもよい。また本発明の測定装置は、測定結果をPC等の記憶装置に送信するためのUSBコネクタを備えていてもよい。かかるUSBコネクタを備えていると、特に測定頻度が高い血糖値の測定結果をPC等で記録、管理することができるので、利便性が高い。本発明の測定装置は、このほかにも、従来公知のPOC装置(SMBGなど)における構成や部材(例えば音声発生部など)を必要に応じて適宜採用することができる。
【0059】
なお、図1に示す測定装置100は、試験片200に血液検体を点着した後に、試験片200を装置に装着することを想定したものであるが、例えば、装置の上部に検体導入口を設け、該検体導入口から血液検体を滴下してガイドを伝わせて予め装着した試験片に点着するようにしてもよい。
【0060】
本発明の測定装置はPOC装置として適用可能なものである。したがって、測定装置100の大きさは、例えば縦100mm以下、横70mm以下、厚み30mm以下であり、質量は150g以下、より好ましくは100g以下である。
【0061】
(試験片)
本発明の測定装置に装着させる試験片は、測定を行なうごとに装着されるものであり、血糖値を測定するためには、グルコースと反応して呈色する組成物(a)を担持した試験片(A)が装着され、血液検体中のヘモグロビンA1c値を測定するためには、糖化ヘモグロビンと反応して呈色する組成物(b)を担持した試験片(B)が装着される。
【0062】
試験片(試験片(A)および試験片(B))は、血液検体中のグルコースまたはヘモグロビンA1cと反応して呈色するよう構成された所定の酵素および酸化還元系発色試薬を含む組成物(組成物(a)または組成物(b))を基材に担持させたものである。基材としては、例えばポリエステル類、ポリアミド類、ポリエーテルスルホン類、セルロース類等が挙げられる。酵素は、例えば、グルコースオキシダーゼ(GOD)、ペルオキシダーゼ(POD)、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)、プロテアーゼ等から選択される。酸化還元系発色試薬としては、カップラーとして、例えば4−アミノアンチピリン(4AA)等が、フェノール系水素供与体として、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン・ナトリウム(TOOS;吸収波長λmax=555nm)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジアニリン(MAOS;吸収波長λmax=630nm)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(DAOS;吸収波長λmax=593nm)等のトリンダー試薬;トリンダー試薬以外のロイコ色素DA−67(吸収波長λmax=666nm)、ロイコ色素DA−64(吸収波長λmax=727nm)等;が挙げられる。
【0063】
試験片(A)が担持する組成物(a)は、好ましくは、グルコースオキシダーゼ(GOD)、ペルオキシダーゼ(POD)および酸化還元系発色試薬を含有するものであり、試験片(B)が担持する前記組成物(b)は、好ましくは、プロテアーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)、ペルオキシダーゼ(POD)および酸化還元系発色試薬を含有するものである。このような組み合わせの組成物によれば、血液検体中のグルコースや糖化ヘモグロビンによって試験片を確実に効率よく呈色させることができる。
【0064】
試験片200(試験片(A)および試験片(B))の形状または大きさは、特に限定されないが、例えば図1に示すように試験片装着部を2個備え、この2個の試験片装着部のうちの一方に試験片(A)が装着され、他方に試験片(B)が装着される場合には、試験片(A)と試験片(B)は形状または大きさが異なるよう設計することが好ましい。このように、血糖値測定用の試験片装着部とへモグロビンA1c値測定用の試験片装着部を設けた場合に、各試験片装着部に装着する試験片の形状または大きさを変えておくことにより、試験片(A)と試験片(B)の入れ間違いを防止することができる。
【0065】
試験片200の形状としては、例えば、矩形、楕円形などの薄板状が挙げられる。試験片200の大きさは、装置を小型化する上で小さければ小さいほどよいが、例えば試験片200が矩形の薄板状である場合には、その大きさは縦30mm以下、横20mm以下、厚み5mm以下である。
【0066】
試験片200(試験片(A)および試験片(B))には、各試験片の測定項目を認識するためのバーコードまたはICチップを設けておくことができる。特に、試験片装着部1が1個である測定装置の場合には、装着する試験片に測定項目を認識するためのバーコードまたはICチップを具備させておくことにより、確実にその測定項目を把握し、測定項目に応じた波長の光を照射することが可能になる。
【0067】
(測定原理)
本発明の測定装置を用いた血糖値測定およびへモグロビンA1c値測定はいずれも、反応により試験片を呈色させ、その呈色の程度を光の反射光によって検知する方法(所謂酵素比色法)によって行なわれる。このように同じ測定原理に基づく方法で血糖値およびへモグロビンA1c値を測定するようにしたことにより、装置を小型化することが可能になったのである。以下、各測定原理について説明する。
【0068】
[血糖値測定]
血糖値測定においては、まず、血液検体中のグルコースにより組成物(a)を反応させることで試験片(A)を呈色させる。例えば組成物(a)が上述した好ましい組み合わせである場合、試験片に点着させた血液検体中のグルコースと組成物(a)中のグルコースオキシダーゼが反応すると、グルコノラクトンと過酸化水素が発生するので、この過酸化水素に酸化還元系発色試薬とペルオキシダーゼとを反応させることで、試験片(A)が呈色する。次いで、この呈色した部分に特定波長の光を照射し、反射する光を測定することで、呈色の程度を検出する。ここで照射する光の波長は用いた酸化還元系発色試薬に応じて決定すればよい。そして、このようにして得られた測光値に基づき血糖値が算出される。算出方法の詳細については、従来公知の酵素比色法による血糖値測定技術(例えば特開2009−233253号公報など)に準じて行なえばよい。
【0069】
なお、血糖値測定において試験片を呈色させるための上述した反応は、組成物を担持させた試験片の内部で起こるので、血液検体(全血)を試験片に点着させると速やかに進行し、通常、血液検体の点着から数秒間で呈色する。したがって、本発明の測定装置によれば、測定を迅速化できる。
【0070】
以下、血糖値測定の流れの一例について説明する。
【0071】
i)まず、基準値(ブランク値)を測定するため、血液点着前に試験片200に色素の特異吸収波長光λ1が照射される。色素の吸収波長の光λ1は、試験片200に血液検体が吸収され呈色反応が発生したことを検知するために使用される。
【0072】
ii)血液検体が試験片に吸収され呈色が検知された後、一定時間、一定間隔で発光部2(発光素子)からλ1が発光され、試験片200で反射した光λ1は受光部3(受光素子)で受光される。そして受光部3で受光した光λ1の強度(測光値)が電気信号として演算部4に送られ演算部4の中にある記憶部に記憶される。
【0073】
iii)演算部4には、予め、受光された光λ1の強度(測光値)に基づき反射率R(%)を算出するステップが組み込まれており、反射率Rが算出される。
【0074】
iv)次いで演算部4において、算出された反射率Rは、Kubelka−Munkの式(下記式(1))に基づきK/S値に換算される。
【0075】
【数1】

(式(1)中、Rは反射率、Kは吸収係数、Sは散乱係数である。)
【0076】
v)さらに演算部4には、予め、血糖値とK/Sの関係(検量線)が記憶部に記憶されており、この検量線に従い血糖値が算出される。そうして算出された血糖値は、表示モニター7へ電気信号として送られ表示される。
【0077】
なお、血糖値測定において試験片を呈色させるための上述した反応は、組成物を担持させた試験片の内部で起こるので、血液検体(全血)を試験片に点着させると速やかに進行し、通常、血液検体の点着から数秒間で呈色する。したがって、本発明の測定装置によれば、測定を迅速化できる。
【0078】
[ヘモグロビンA1c値測定]
ヘモグロビンA1c値測定においては、血液検体中のヘモグロビンA1c(糖化ヘモグロビン)の濃度と、血液検体中のヘモグロビンの濃度とを求め、この両者に基づきヘモグロビンA1c値が算出される。
【0079】
糖化ヘモグロビン濃度を求めるには、まず血液検体中の糖化ヘモグロビンにより組成物(b)を反応させることで試験片(B)を呈色させる。例えば組成物(b)が上述した好ましい組み合わせである場合、プロテアーゼの作用により血液検体中のヘモグロビンβ鎖N末端の糖化ジペプチド(フルクトシル−バリルヒスチジン)が切り出され、この糖化ジペプチドにフルクトシルペプチドオキシダーゼを作用させると過酸化水素が発生するので、この過酸化水素に酸化還元系発色試薬とペルオキシダーゼとを反応させることで試験片(B)が呈色する。次いで、この呈色した部分に特定波長の光を照射し、反射する光を測定することで呈色の程度を検出する。ここで照射する光の波長は用いた酸化還元系発色試薬に応じて決定すればよい。このようにして得られた測光値に基づき糖化ヘモグロビン濃度を求めることができる。
【0080】
ヘモグロビン濃度は、血液検体中のヘモグロビンを例えば波長475nmの吸光度で測定することにより求めることができる。
【0081】
ヘモグロビンA1c値を求めるに際し、モル比(mmol/mol)で表すヘモグロビンA1c値、即ちIFCC(International Federation of Clinical Chemistry)値は、上記糖化ヘモグロビン濃度(HbA1c濃度)と上記ヘモグロビン濃度(総Hb濃度)とから下記式(2)に従い算出できる。
【0082】
IFCC値(mmol/mol)=HbA1c濃度/総Hb濃度×1000 (2)
またヘモグロビンA1c値には百分率(%)で表すJDS(Japan Diabetes Society:日本糖尿病学会)値もあるが、当該JDS値を求める際には、上記式(2)で求められるIFCC値を下記式(3)に従いJDS値に換算すればよい。
【0083】
JDS値(%)=0.0963×IFCC値+1.62 (3)
なお、上記式(2)における「HbA1c濃度/総Hb濃度」は、ヘモグロビンA1c値を求めるための演算をする際の経由例であり、必ずしも中間算出を必須とするものではない。
【0084】
なお、ヘモグロビンA1c値測定において試験片を呈色させるための上述した各反応は全て、組成物を担持させた試験片の内部で起こるので、血液検体(全血)を試験片に点着させると速やかに進行し、通常、血液検体の点着から数秒間で呈色する。したがって、本発明の測定装置によれば、測定を迅速化できる。
【0085】
以下、ヘモグロビンA1c値測定の流れの一例について説明する。
【0086】
I)まず、基準値(ブランク値)を測定するため、血液点着前に試験片200に色素の特異吸収波長光λ2(糖化ヘモグロビンの特異吸収波長)とヘモグロビンの特異吸収波長λ3が照射される。色素の吸収波長の光λ2は、試験片200に血液検体が吸収され呈色反応が発生したことを検知するために使用される。
【0087】
II)血液検体が試験片に吸収され呈色が検知された後、一定時間、一定間隔で発光部2(発光素子)からλ2とλ3が発光され、試験片200で反射した光λ2とλ3は受光部3(受光素子)で受光される。そして受光部3で受光した光λ2とλ3の各強度(測光値)が電気信号として演算部4に送られ演算部4の中にある記憶部に記憶される。
【0088】
III)演算部4には、予め、受光された光λ2とλ3の各強度(測光値)に基づき反射率R(%)を算出するステップが組み込まれており、λ2の反射率R(R2)と、λ3の反射率R(R3)とが算出される。
【0089】
IV)次いで演算部4において、算出された反射率R(R2)と、λ3の反射率R(R3)は、それぞれ上述したKubelka−Munkの式(式(1))に基づきK/S値(2)とK/S値(3)に換算される。
【0090】
V)次いで演算部4では、ヘモグロビン由来のK/S値(3)と、色素由来のK/S値(2)とから、下記式(4)に基づきK/SRatioが算出される。
K/SRatio=K/S値(2)/K/S値(3) 式(4)
【0091】
VI)さらに演算部4には、予め、ヘモグロンビンA1c値とK/SRatioとの関係(検量線)が記憶部に記憶されており、この検量線に従いヘモグロンビンA1c値が算出される。そうして算出されたヘモグロンビンA1c値は、表示モニター7へ電気信号として送られ表示される。
【0092】
なお、上述した演算を行うに際しては、酵素分析における代表的な2つの方法、すなわちエンドポイント法とレート法(初速度法)があるが、血糖値の測定、ヘモグロビンA1c値の測定ともに、各々独立して、いずれの方法を採用してもよい。特に迅速な測定が可能である点では、血糖値の測定、ヘモグロビンA1c値の測定ともにレート法が好ましい。レート法を採用する場合、例えば、ヘモグロビンA1c値測定時には、呈色反応が発生したことを検知した時点から20秒間〜300秒間にわたり10〜20秒間隔で、好ましくは呈色反応が発生したことを検知した時点から20秒から60秒までの間は10秒間隔で、且つ60秒から300秒までの間は20秒間隔で、測光値に基づきヘモグロビンA1c値を演算すればよい。また血糖値測定時には、呈色反応が発生したことを検知した時点から例えば60秒間にわたり10秒間隔で測光値に基づき血糖値を演算すればよい。
【0093】
(測定方法)
本発明の測定方法は、2種以上の異なる波長の光を照射可能である発光部を備えた測定装置を用いて血液検体中の血糖値とヘモグロビンA1c値の両方を測定するものであり、より具体的に示すと、上述した本発明の測定装置を用いるとともに、試験片として、血液検体中の血糖値を測定する際には上記試験片(A)を用い、血液検体中のヘモグロビンA1c値を測定する際には上記試験片(B)を用いる方法である。このように測定しようとする項目に応じて所定の試験片を装着することにより、一つの装置で血糖値とヘモグロビンA1c値の両方を測定することが可能になった。試験片装着部を1個有する測定装置を用いる場合には、該1個の試験片装着部に、血液検体中の血糖値を測定するときには試験片(A)を装着し、血液検体中のヘモグロビンA1c値を測定するときには試験片(B)を装着すればよい。
【0094】
例えば、図1〜図3に示す測定装置100を用いる場合、試験片200に血液検体を点着させた後、該試験片200を試験片装着部1に装着し、発光部2から装着した試験片200に対して(厳密には血液検体点着部5に対して)光を照射し、試験片200から反射した光を受光部3で受光し、得られた測光値に基づき演算部4にて血糖値またはヘモグロビンA1c値を算出すればよい。かかる方法において測定者が実際に行う操作は、電源スイッチ6のON/OFFの切り替えと、試験片の装着、血液検体の点着のみであるので、例えば検体の前処理などの複雑な操作を要することなく、測定が非常に簡便である。
【0095】
本発明において測定に供する血液検体としては全血を用いる。測定に必要な血液検体量は、血糖値測定時、ヘモグロビンA1c値測定時ともに、通常10μL以下、好ましくは5μL以下、より好ましくは3μL以下、さらに好ましくは1μL以下でよい。本発明の装置によれば、このように非常に少量であっても正確に血糖値、ヘモグロビンA1c値を測定できる。ただし血液検体量があまりに少なすぎると測定値の正確さを欠く虞があるので、血液検体量は0.01μL以上が好ましく、0.05μL以上がより好ましく、0.1μL以上がさらに好ましい。
【0096】
本発明において測定に供する血液検体は、例えば、図7に示す採血針10を用いて採取することができる。採血針10は、本体11と該本体11に着脱自在に取り付けられる取替え式の針12とからなり、ボタン13を押すと針12が飛び出す仕組みになっている。この採血針10の針12を指先等に向けてボタン13を押すと、針12が飛び出して指先等から血液が滲出するので、この数滴の血液を試験片200に点着させればよい。
【実施例】
【0097】
<実施例1>
図1〜図3に示す測定装置100を用いて、血糖値およびヘモグロビンA1c値を測定した。
【0098】
(血糖値測定)
測定装置100は、予め電源スイッチ6をONにすることにより、発光素子2aと受光素子3aとを連動させ、発光素子2aから波長630nmの光を照射させておいた。そして、試験片(A)として、グルコースオキシダーゼ(GOD)(東洋紡績(株)製)、ペルオキシダーゼ(POD)(東洋紡績(株)製)および酸化還元系発色試薬として4−アミノアンチピリン/N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジアニリン(4AA−MAOS)からなる組成物(a)を担持したものを用意し、この試験片(A)に約5μLの血液検体(全血)を点着させた。そうすると、数秒で試験片(A)の色が白色から青色に呈色した。この呈色した試験片(A)を直ちに測定装置100の試験片挿入口1aに挿入した。このとき測定装置100の内部において、受光素子3aにて試験片(A)で反射した波長630nmの光を受光し、得られた測光値が演算部4に送られ、演算部4のCPUで血糖値が算出される。測定装置100の演算部4には、予め、血液検体(全血)を点着する前の試験片(A)に同様の光を照射したときに得られる測光値をブランク値として入力しておいた。なお、測光値は、測定開始から60秒間にわたり10秒間隔で演算部4に送られるよう設定し、測定結果は、レート法で算出させた。このようにして得られた測定結果は表示モニター7に表示される。測定後には電源スイッチ6をOFFにした。
【0099】
(ヘモグロビンA1c値測定)
測定装置100は、予め電源スイッチ6をONにすることにより、多波長発光素子である発光素子2bb’と多波長受光素子である受光素子3bb’とを連動させ、まず発光素子2bb’から波長475nmの光を照射させておいた。そして、試験片(B)として、プロテアーゼ(東洋紡績(株)製)、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)(東洋紡績(株)製)、ペルオキシダーゼ(POD)(東洋紡績(株)製)および酸化還元系発色試薬としてロイコ色素DA−67からなる組成物(b)を担持したものを用意し、この試験片(B)に約5μLの血液検体(全血)を点着させた。そうすると、数秒で試験片(B)の色が白色から青色に呈色した。この呈色した試験片(B)を直ちに測定装置100の試験片挿入口1bに挿入した。このとき測定装置100の内部においては、まず受光素子3bb’にて試験片(B)で反射した波長475nmの光を受光し、その後引き続き、発光素子2bb’から波長660nmの光を照射させ、受光素子3bb’にて試験片(B)で反射した波長660nmの光を受光し、得られた各測光値が演算部4に送られ、演算部4のCPUでヘモグロビンA1c値が算出される。測定装置100の演算部4には、予め、血液検体(全血)を点着する前の試験片(B)に同様の光を照射したときに得られる測光値をブランク値として入力しておいた。なお、測光値は、測定開始から300秒間にわたり10秒間隔で演算部4に送られるよう設定し、測定結果は、レート法で算出させた。このようにして得られた測定結果は表示モニター7に表示される。測定後には電源スイッチ6をOFFにした。
<実施例2>
図1〜図3に示す測定装置100を用いて、血糖値およびヘモグロビンA1c値を測定した。
【0100】
(血糖値測定)
測定装置100は、予め電源スイッチ6をONにすることにより、発光素子2aと受光素子3aとを連動させ、発光素子2aから波長550nmの光を照射させておいた。そして、試験片(A)として、グルコースオキシダーゼ(GOD)(東洋紡績(株)製)、ペルオキシダーゼ(POD)(東洋紡績(株)製)および酸化還元系発色試薬として4−アミノアンチピリン/N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン・ナトリウム(4AA−TOOS)からなる組成物(a)を担持したものを用意し、この試験片(A)に約5μLの血液検体(全血)を点着させた。そうすると、数秒で試験片(A)の色が白色から赤紫色に呈色した。この呈色した試験片(A)を直ちに測定装置100の試験片挿入口1aに挿入した。このとき測定装置100の内部において、受光素子3aにて試験片(A)で反射した波長550nmの光を受光し、得られた測光値が演算部4に送られ、演算部4のCPUで血糖値が算出される。測定装置100の演算部4には、予め、血液検体(全血)を点着する前の試験片(A)に同様の光を照射したときに得られる測光値をブランク値として入力しておいた。なお、測光値は、測定開始から60秒間にわたり10秒間隔で演算部4に送られるよう設定し、測定結果は、レート法で算出させた。このようにして得られた測定結果は表示モニター7に表示される。測定後には電源スイッチ6をOFFにした。
【0101】
(ヘモグロビンA1c値測定)
測定装置100は、予め電源スイッチ6をONにすることにより、多波長発光素子である発光素子2bb’と多波長受光素子である受光素子3bb’とを連動させ、まず発光素子2bb’から波長540nmの光を照射させておいた。そして、試験片(B)として、プロテアーゼ(東洋紡績(株)製)、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)(東洋紡績(株)製)、ペルオキシダーゼ(POD)(東洋紡績(株)製)および酸化還元系発色試薬として4−アミノアンチピリン/N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジアニリン(4AA−MAOS)からなる組成物(b)を担持したものを用意し、この試験片(B)に約5μLの血液検体(全血)を点着させた。そうすると、数秒で試験片(B)の色が白色から青色に呈色した。この呈色した試験片(B)を直ちに測定装置100の試験片挿入口1bに挿入した。このとき測定装置100の内部においては、まず受光素子3bb’にて試験片(B)で反射した波長540nmの光を受光し、その後引き続き、発光素子2bb’から波長630nmの光を照射させ、受光素子3bb’にて試験片(B)で反射した波長630nmの光を受光し、得られた各測光値が演算部4に送られ、演算部4のCPUでヘモグロビンA1c値が算出される。測定装置100の演算部4には、予め、血液検体(全血)を点着する前の試験片(B)に同様の光を照射したときに得られる測光値をブランク値として入力しておいた。なお、測光値は、測定開始から300秒間にわたり10秒間隔で演算部4に送られるよう設定し、測定結果は、レート法で算出させた。このようにして得られた測定結果は表示モニター7に表示される。測定後には電源スイッチ6をOFFにした。
【0102】
以上本発明に係る測定装置及び測定方法に関して、図面を参照しつつ具体的に説明したが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0103】
100 測定装置
200 試験片
1 試験片装着部
2 発光部
3 受光部
4 演算部
5 血液検体点着部
6 電源スイッチ
7 表示モニター
10 採血針
11 採血針本体
12 針
13 ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液検体の血糖値とヘモグロビンA1c値とを測定するための装置であって、
前記血液検体に照射光を発する発光部と、
前記血液検体からの反射光を受光する受光部と、
前記受光部から得られる測光値に基づいて血液検体中の血糖値およびヘモグロビンA1c値を算出する演算部とを有し、
前記発光部が2種以上の異なる波長の光を照射可能であることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記発光部が3種の異なる波長の光を照射可能である請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記3種の異なる波長の光のうちの一つは血液検体中のグルコースにより呈色した部分に吸収される特定波長の光であり、他の二つは血液検体中のヘモグロビンにより呈色した部分と糖化ヘモグロビンにより呈色した部分とにそれぞれ吸収される2種の異なる特定波長の光である請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
血液検体を点着させる試験片を着脱自在に装着するための試験片装着部を備える、請求項1〜3のいずれかに記載の測定装置。
【請求項5】
血液検体の血糖値とヘモグロビンA1c値とを測定するための装置であって、
血液検体を点着させる試験片を着脱自在に装着するための試験片装着部と、
前記試験片に対する照射光を発する発光部と、
前記試験片からの反射光を受光する受光部と、
前記受光部から得られる測光値に基づいて血液検体中の血糖値およびヘモグロビンA1c値を算出する演算部とを有し、
血液検体中の血糖値を測定するための前記試験片として、グルコースと反応して呈色する組成物(a)を担持した試験片(A)が装着され、血液検体中のヘモグロビンA1c値を測定するための前記試験片として、糖化ヘモグロビンと反応して呈色する組成物(b)を担持した試験片(B)が装着されることを特徴とする測定装置。
【請求項6】
前記発光部は3種の異なる波長の光を照射可能である、請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記発光部は2種以上の異なる波長の光を照射可能な発光素子を少なくとも1個有する、請求項1〜6のいずれかに記載の測定装置。
【請求項8】
前記発光部は3種の異なる波長の光を照射可能な発光素子を有する、請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記発光部は発光素子を3個有するとともに、この3個の発光素子のうち一つは前記試験片の一方の面に光を照射し、残りの二つは前記試験片の他方の面に光を照射する、請求項4〜8のいずれかに記載の測定装置。
【請求項10】
前記発光部は、ピーク波長が600nm以上であり光度が1000mcd以上である発光素子を有する、請求項3〜9のいずれかに記載の測定装置。
【請求項11】
前記試験片装着部を2個備え、この2個の試験片装着部のうちの一方に装着される試験片と他方に装着される試験片とは形状または大きさが異なっている、請求項4〜10のいずれかに記載の測定装置。
【請求項12】
前記試験片装着部が試験片挿入口を有しており、前記試験片挿入口は、前記試験片(A)を案内する辺縁部と、前記試験片(A)とは形状が異なる前記試験片(B)を案内する辺縁部とを有している請求項4〜11のいずれかに記載の測定装置。
【請求項13】
2種以上の異なる波長の光を照射可能である発光部を備えた測定装置を用いて血液検体中の血糖値とヘモグロビンA1c値の両方を測定することを特徴とする測定方法。
【請求項14】
血液検体を点着させる試験片を着脱自在に装着するための試験片装着部と、
前記試験片に対する照射光を発する発光部と、
前記試験片からの反射光を受光する受光部と、
前記受光部から得られる測光値に基づいて血液検体中の血糖値およびヘモグロビンA1c値を算出する演算部とを有する測定装置を用いるとともに、
前記試験片として、血液検体中の血糖値を測定する際にはグルコースと反応して呈色する組成物(a)を担持した試験片(A)を用い、血液検体中のヘモグロビンA1c値を測定する際には糖化ヘモグロビンと反応して呈色する組成物(b)を担持した試験片(B)を用いることとし、
試験片に血液検体を点着させ、前記発光部から試験片に対して光を照射し、試験片から反射した光を前記受光部で受光し、得られた測光値に基づき前記演算部にて血糖値またはヘモグロビンA1c値を算出することを特徴とする測定方法。
【請求項15】
前記試験片装着部を1個有する測定装置を用い、該1個の試験片装着部に、血液検体中の血糖値を測定するときには前記試験片(A)を装着し、血液検体中のヘモグロビンA1c値を測定するときには前記試験片(B)を装着する、請求項14に記載の測定方法。
【請求項16】
前記組成物(a)はグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび酸化還元系発色試薬を含有し、前記組成物(b)は、プロテアーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび酸化還元系発色試薬を含有する、請求項14または15に記載の測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−137500(P2012−137500A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−61130(P2012−61130)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【分割の表示】特願2011−547630(P2011−547630)の分割
【原出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】