説明

測定装置および測定方法

【課題】薄膜材料におけるガスの透過性の試験における感度の向上に寄与する技術を提供すること。
【解決手段】本発明の測定装置1は、2つの空間12bおよび12aを形成し得るセル18を備えている、標的成分を測定する測定装置1であり、セルの温度を制御する温度制御部13、セル18および温度制御部13を収納している容器11、容器11の内部に第1のガスを供給するガス供給部15a、第2のガスを空間12bに供給するガス供給部15b、ならびに第3のガスを空間12aに供給するガス供給部15cをさらに備えており、第3のガスが標的成分とは異なる成分のみを含んでおり、第1のガスが以下の条件を満たしている:標的成分と異なる成分のみを含んでいるか、または大気より低い濃度において標的成分を含んでいる;第3のガスの成分と異なる成分のみを含んでいるか、または大気より低い濃度において第3のガスの成分を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜材料のガス透過度の試験に使用する測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜材料は、製品の包装および保護、ならびに製品における部品の被覆などに使用されている。製品の包装の用途としては、例えば食品の包装などが挙げられ、部品の被覆の用途としては、例えば精密機器における素子の被覆などが挙げられる。用途に応じて、薄膜材料は、大気中の特定の成分(例えば水蒸気、酸素、炭酸ガスなど)を選択的に透過させるか、またはほとんど透過させない性質を示す必要がある。例えば、保護を目的している薄膜材料は、保護される対象に悪影響を与える成分を可能な限り透過させない性質(特定の成分に対する低い透過性)を示す必要がある。よって、上述のような薄膜材料は、所望の程度の透過性を示すか否かについて試験されなければならない。
【0003】
例えば、薄膜材料が水分の付着によって性能が悪化する素子の被覆に使用される場合、薄膜材料は、大気中にある水蒸気をほぼ透過させない必要がある。よって、このような薄膜材料を試験する場合、微量の成分を検出し得る非常に高感度な試験を実施する必要がある。このような試験に用いる微量な成分の測定装置は、高感度であるために、微量の混入物の存在によって試験結果の精度に悪影響を受けるおそれがある。例えば、一般的な測定装置の構成および欠点について図2を用いて以下に説明する。
【0004】
図2に示すように、測定装置100は、試験の環境温度を制御するオーブン101、フィルム103の透過性を測定するセル102を備えている。オーブン101は、セル102を収納しており、セルが収納されている試験環境の全体の加熱を行う。図示していないが、オーブン101の内部には、セル102の内部(102aおよび102b)にガスを供給する構成(ポンプ、バルブ、管など)、一方の内部102aからフィルム103を介して他方の内部102bに移動した成分を検出器に送り出す管など、他に多くの構成が収納されている。ここでは、オーブン101は閉じた空間として描写されているが、外部と連絡しており、オーブン101の内部の気体は、大気と同じ組成を有している。
【0005】
ここで、セル102は、フィルム103を挟むことによって、内部(102aおよび102b)と外部(オーブン101の内部)とを遮断している。しかし、従来技術では、大気中の成分を完全に遮断することは実質的に不可能である。フィルム103は曲げ応力に弱いため、セル102とフィルム103との密着性を高めようとすると、フィルム103が破損して、破損した箇所から大気が侵入する。密着性が低ければ、フィルム103とセル102との間からセル102の内部に大気が侵入する。したがって、どのようにしてもセル102による大気の巻き込みを十分に回避できない。
【0006】
このような問題を解決する技術として、フィルムを固定するリングを2つ使用して、これらのリングの間に空間を形成し、試験結果に悪影響を与えない気体を当該空間に充填する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−233943号公報(2003年9月2日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術では形成される空間が小さい。このため、長時間にわたって試験を継続させると、セルとフィルムとの密着性の低さ、またはフィルムの破損にしたがって、上記空間に充填された気体が大気と交換されてゆき、結果としてセルの内部に大気が侵入する。特許文献1に記載の技術では、この大気の侵入を防ぐために上記空間に気体を常に供給し続けている。つまり、特許文献1に記載の技術では、気体を供給する手段、および当該気体の供給を制御する手段がさらに必要であり、当然の結果として構成を複雑にせざるを得ない。
【0009】
よって、薄膜材料を収納している空間に大気を侵入させることなく、薄膜材料におけるガスの透過性を高感度に試験するための簡便な技術が必要とされている。
【0010】
上記問題点に鑑みて、本発明の目的は、薄膜材料におけるガスの透過性の試験における感度の向上に寄与する測定装置および測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の測定装置は、薄膜材料を挟んでいるときに対向する第1の空間および第2の空間を形成するセルを備えており、上記薄膜材料を透過して上記第1の空間から上記第2の空間に移動する気体の標的成分を測定する測定装置であって、上記セルに接して設けられている、当該セルの温度を制御する温度制御部、上記セルおよび温度制御部を収納している容器、上記容器の内部に第1のガスを供給する第1のガス供給部、上記標的成分を含んでいる第2のガスを上記第1の空間に供給する第2のガス供給部、ならびにキャリアガスとしての第3のガスを供給する上記第2の空間に第3のガス供給部をさらに備えており、上記第3のガスが、上記標的成分とは異なる成分のみを含んでおり、上記第1のガスが、以下の(a)および(b)の条件:(a)上記標的成分と異なる成分のみを含んでいるか、または大気より低い濃度において上記標的成分を含んでいる;(b)上記第3のガスの成分と異なる成分のみを含んでいるか、または大気より低い濃度において上記第3のガスの成分を含んでいる、を満たしている。
【0012】
また、本発明の測定装置において、上記第1のガスは、上記標的成分と異なる成分のみを含んでいることが好ましい。
【0013】
また、本発明の測定装置において、上記第1のガスは、上記第3のガスの上記構成成分とは異なる成分のみを含んでいることが好ましい。
【0014】
また、本発明の測定装置において、上記第1のガスは不活性ガスからなることが好ましい。
【0015】
また、本発明の測定装置において、上記セルの一部は上記温度制御部に収納されていることが好ましい。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の方法は、上述の測定装置を用いて上記第2の空間に存在している成分を測定する方法であって、上記第2の空間に存在している上記標的成分を検出する工程、および当該工程の検出結果に基づいて上記薄膜材料のガス透過度を決定する工程を包含している。
【0017】
また、上記方法において、検出する上記工程は、上記第2のガスに含まれている上記薄膜材料を透過する成分、および上記第1のガスに含まれている成分を同時に検出する工程であり、当該工程の検出結果に基づいて上記薄膜材料のガス透過度の測定時における測定条件の適否を評価する工程をさらに包含していることが好ましい。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の方法は、上述の測定装置を用いて上記第2の空間に存在している成分を測定する方法であって、上記第1のガスに含まれている成分を検出する工程、および当該工程の検出結果に基づいて上記セルの密閉度を決定する工程を包含している。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、所望の成分を含んでいるガスを用いてセルの周囲を満たすことによって、試験の精度に与える悪影響を低減させ得るか、または当該精度の低下を検出し得るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る測定装置の構成を示す概略図である。
【図2】従来の測定装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る測定装置の構成を示す概略図である。図1に示されている測定装置は、薄膜フィルムを透過した成分を高感度に検出するための測定装置である。
【0022】
〔測定装置1〕
図1に示すように、測定装置1は、容器11、ガス透過セル(セル)18、温度制御部13、および検出器16を備えている。容器11は、ガス透過セル18を収納しており、ガス透過セル18を大気から遮断している。ガス透過セル18は、ガス透過度について試験される薄膜材料14を、上部18aおよび下部18bを用いて挟むことによって固定している。したがって、ガス透過セル18の内部には、薄膜材料14を境にして空間(第2の空間)12aおよび空間(第1の空間)12bが形成されている。ガス透過セル18の外表面の大部分は、温度制御部13に覆われている。ガス透過セル18内の空間12aは、管17cを介して検出器16と連絡している。
【0023】
容器11の内部は、ガス供給部(第1のガス供給部)15aから第1のガスの供給を受けており、第1のガスは排気口(図1の紙面において左上にある出口)から排出される。つまり、第1のガスは図1に示されている矢印の方向にしたがって容器11の内部を通過する。ガス透過セル18の空間12bは、ガス供給部(第2のガス供給部)15bから管17aを介して第2のガスの供給を受けており、第2のガスは空間12bから管17dを通って排出される。ガス透過セル18の空間12aは、ガス供給部(第3のガス供給部)15cから第3のガスの供給を受けており、空間12aに存在しているガスは、管17cを通って検出器16に供給される。
【0024】
ここで、第2のガスに含まれている成分の1種以上が、薄膜材料14を透過して空間12bから空間12a(図1の紙面における左向きの矢印の方向)に移動する。よって、検出器16に送られるガスは、第2のガスに含まれている成分の1種以上と第3のガスとの混合物である。つまり、測定装置1は、上述のように、薄膜材料14のガス透過度を試験する測定装置であるので、試験の原理は、従来公知の測定装置と同じである。よって、通常の薄膜材料のガス透過度試験と同様の条件が、測定装置1を用いた薄膜材料14のガス透過度の試験に適用され得る。
【0025】
しかし、上述のように、測定装置1は、ガス透過セル18が容器11に収納されて大気から遮断されている点、およびガス透過セル18が温度制御部13に覆われている点において、従来技術と明らかに異なっている。図2に示されている一般的な測定装置100と異なり、測定装置1は、温度制御部13を用いてガス透過セル18の温度を直接的に制御している。よって、本発明に係る測定装置1は、従来の測定装置100のように内部に大気を含んでいるオーブン101を使用する必要がないので、ガス透過セル18を収納する構成を自由に選択し得る。このため、本発明に係る測定装置1は、大気と比べて試験に与える悪影響を低減させ得る気体をガス透過セル18の周囲(容器11の内部)に循環させることによって、長時間にわたる試験の精度の向上を実現している。さらに、本発明において、上述のようにガス透過セル18は直接的に温度制御されているので、ガス透過セル18の温度を一定に保つことが容易である。よって、本発明に係る測定装置1は、安定した試験環境を長時間にわたって実現し得る。
【0026】
(第1〜第3のガス)
上記第3のガスは、薄膜材料14を透過して空間12bから空間12aに移動した1種以上の成分を検出器16に送るための、一般的なキャリアガスである。よって、第3のガスは、薄膜材料14を透過する度合いについて測定されることが所望されている、第2のガスに含まれている成分(標的成分)を含んでおらず、当該標的成分に影響を与えないガスである。第3のガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスおよび酸素、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0027】
上記第1のガスは、仮にガス透過セル18の内部に侵入した場合でも、大気と比べて試験に与える悪影響を低減させ得る成分および組成を有している。つまり、第1のガスとしては、次の条件(a)を満たしているガスが挙げられる。条件(a)−1.標的成分と異なる成分のみを含んでいるか、または2.大気より低い濃度において標的成分を含んでいる。条件(a)−1.は、標的成分を含んでおらず、ガス透過セル18内に侵入しても空間12aにおける標的成分の存在量を変化させないガスを意味している。条件(a)−2.は、標的成分を含んでいるが、ガス透過セル18内に侵入したときに、空間12aにおける標的成分の存在量を変化させる量が、大気と比べて小さくなるガスを意味している。
【0028】
上記第1のガスとしては、以下の条件(b)をさらに満たしているガスが挙げられる。条件(b)−1.第3のガスの成分と異なる成分のみを含んでいるか、または2.大気より低い濃度において第3のガスの成分を含んでいる。条件(b)−1.は、第3のガスと同じ成分を含んでおらず、ガス透過セル18内に侵入しても第3のガスの存在量を変化させず、検出器16において第1のガスのガス透過セル18内への侵入を検出可能なガスを意味している。条件(b)−2.は、第3のガスと同じ成分を含んでいるが、ガス透過セル18内に侵入しても空間12aにおける第3のガスの存在量を変化させる量が、大気と比べて小さくなるガスを意味している。
【0029】
以上のことから、条件(a)および(b)において、いずれも選択肢1.であることが好ましい。つまり、第1のガスとしては、条件(a)および(b)のいずれかにおいて選択肢1.を満たしているガスがより好ましく、条件(a)および(b)のいずれにおいても選択肢1.を満たしているガスが最も好ましい。より詳細には、第3のガスは、第1のガスおよび第2のガスと成分が異なるガスであることが最も好ましい。第1のガスがガス透過セル18内に侵入すると、検出器16によって第1のガスの成分およびその量が検出される。よって、試験を行いながらガス透過セル18の密閉度を監視し得るので、試験の精度を確かめながら薄膜材料14のガス透過度を測定することができる。また、第1のガスの侵入する量にしたがって、試験の条件の良否を判定し得るので、試験の最適化が容易になる。
【0030】
第1のガスの好適な例としては、キャリアガスである第3のガスと同様に、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが挙げられる。しかし、上述のように、大気の成分の一部を含んでおり、標的成分の濃度が大気よりも低いガスは、試験の精度を向上させ得るので、第1のガスとして使用可能である。
【0031】
上記第2のガスは標的成分を含んでいるガスである。第2のガスは、標的成分のみからなるガスである必要はなく、標的成分の含有濃度が一定である混合ガスであれば、検出器16の検出結果から、薄膜材料14における標的成分の透過性を逆算し得る。測定装置1において測定可能な標的成分としては、水蒸気、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、水素、二酸化炭素、一酸化炭素などの無機ガスおよびメタンなどの有機系ガスが挙げられる。
【0032】
標的成分が水蒸気である場合における第1〜第3のガスの組合せ例は、以下の通り、第1のガス=アルゴン、第2のガス=水蒸気および窒素の混合ガス、第3のガス=窒素である。上記組合せ例において、第1のガスは約99.9999%以上の純度を有していることが好ましく、第2のガスは飽和水蒸気濃度に近い濃度の水蒸気を含んでいることが好ましく、第3のガスは約99.99995%以上の純度を有していることが好ましい。
【0033】
これまでとは、逆に第1〜第3のガスに含まれていることが好ましくない成分としては、腐食性ガスなどが挙げられる。腐食性ガスは、ガス透過セル18内部を腐食させて、試験中にガス透過セル18に穴を開けたり、耐久性を著しく低下させたりする。
【0034】
(容器11)
容器11は、内部の気密性を維持し得る容器であれば、特に限定されない。容器11の一例としては、ステンレス鋼から構成されている、高い気密性を有している容器である。
【0035】
(ガス透過セル18)
ガス透過セル18としては、高感度な薄膜材料のガス透過度試験において一般的に使用されるものが挙げられる。ガス透過セル18の例としては、例えばステンレス鋼製のセルが挙げられる。ここでは、水蒸気の透過性を試験するために適した例を挙げたが、標的成分が他の気体であれば、その気体を検出するために適している公知のセルからガス透過セル18を適宜選択すればよい。
【0036】
図1では、空間12aから伸びている管17cを通って、標的成分を含んでいるガスが検出器16に供給され、空間12bから管17dを通って第2のガスが排出されるように描写されている。しかし、ガス透過セル18の上部18aおよび下部18bを入れ替えた構成、および上部18aおよび下部18bの側面から管17cおよび17dが伸びている構成などがあり得る。
【0037】
なお、上述のように、ガス透過セル18の温度は、温度制御部13によって直接的に制御される。したがって、図1には特に図示していないが、ガス透過セル18の温度を検出する温度センサーは、ガス透過セル18の外部の表面に接して設けられている。これと同様に、図1には特に図示していないが、ガス透過セル18の温度を検出する温度センサーは、ガス透過セル18の内部の表面に接して設けられている。
【0038】
(温度制御部13)
温度制御部13は、ガス透過セル18の少なくとも一部と接することによって、ガス透過セル18の温度を直接的に制御可能なものであれば、特に限定されない。温度制御部13の一例としては、市販のマントルヒータが挙げられる。温度制御部13として容易に変形するマントルヒータを用いれば、ガス透過セル18のほぼ全体を容易に覆うことができる。よって、マントルヒータは、ガス透過セル18の温度を適切に制御し得る好ましい一例である。温度制御部13として使用可能なマントルヒータは、例えば、使用するガス透過セル18に応じて市販品を適宜改良したものである。なお、図1から明らかなように、温度制御部13は、ガス透過セル18を覆う構成であり、空間12aおよび空間12bに接して設けられる構成ではない。
【0039】
(薄膜材料14)
薄膜材料14は、例えば、薄膜ガラスフィルム、有機ELデバイス用のハイバリア膜のような表面薄膜コーティングフィルム、太陽電池のバックシート用フィルムのような高温下において用いられるフィルム、食品もしくは薬品の包装用フィルム、および半導体材料用フィルムが挙げられる。
【0040】
(第1〜第3のガス供給部15a〜c)
第1〜第3のガス供給部15a〜cは、従来公知の構成であり、特に限定されるものではない。第1〜第3のガス供給部15a〜cは、例えば高圧の高純度ガスを充填したボンベを減圧弁と組み合わせた構成であり得る。
【0041】
なお、図1において第2および第3のガス供給部15bおよび15cは、容器11の内部に配置されている。しかし、管17aおよび17bを容器11の外部まで引き出すことによって、第2および第3のガス供給部15bおよび15cを容器11の外部に配置し得る。第2および第3のガス供給部15bおよび15cを容器11の外部に配置することによって、容器11として容積のより小さいものを選択し得るので、好ましい。
【0042】
また、図1には特に示していないが、管17a〜17dは、圧力を制御するか、またはガスの流れ制御するバルブ、管17a〜17d内の湿度を検出するセンサー、ならびに湿度を制御する吸湿部などを必要に応じて備えている。
【0043】
(検出器16)
検出器16は、気体を成分ごとに検出可能な従来公知の機器であれば、特に限定されない。公知の検出器16の種類は、検出の原理に応じて多岐にわたっているが、標的成分の気体に応じて適宜選択され得る。標的成分が水蒸気である場合の検出器16の例は、露点計、質量分析器、感湿センサー、クーロメトリック検出器である。
【0044】
以上のように、本発明の測定装置1は、ガス透過セル18が大気にさらされている場合と比べて、高感度なガス透過度試験における測定結果の精度を向上させ得る。ここでは、測定装置1が薄膜フィルムを透過した成分を高感度に検出するための測定装置として説明しているが、上述したように、測定装置1は、ガス透過度試験を実施しながら、第1のガスを検出することによってガス透過セル18の密閉度を決定可能である。よって、測定装置1は、ガス透過度試験の精度を監視しながら、ガス透過度試験を行うことによって、得えられた薄膜材料14のガスの透過性が信頼し得るか否かを判定することができる。さらに、得えられた薄膜材料14のガスの透過性が信頼し得るか否かの判定結果に基づいて、試験条件の最適化を実施し得る。
【0045】
〔測定方法〕
上述のように、測定装置1を用いれば、種々の気体について薄膜材料14のガス透過度を高感度に測定することができる。また、それぞれが異なる成分を含んでいる第1のガス、第2のガスおよび第3のガスを選択して、測定装置1を用いれば、ガス透過セル18の密閉度、つまり内部に第1のガスが侵入していることや、これと同時にガス透過セル18の外部にガスが漏れているか否かを定量的に検出することができる。よって、測定装置1を用いて、薄膜材料14のガス透過度およびガス透過セル18の密閉度を同時に調べることによって、薄膜材料14のガス透過度の測定時における測定条件の適否を評価することができる。
【0046】
以上において測定装置1を用いた3通りの方法を説明した。これらの方法は、以下のように実施される。
【0047】
(薄膜材料14のガス透過度の測定方法)
測定装置1を用いたガス透過度の測定方法は、空間12bに存在している成分を測定する方法である。当該方法は、空間12bに存在している上記標的成分を検出する工程、および当該工程の検出結果に基づいて上記薄膜材料のガス透過度を決定する工程を包含している。この方法は、測定装置1の使用方法として最も一般的であり、〔測定装置1〕における記載を参照すれば、容易に実施し得る。
【0048】
(ガス透過セル18の密閉度の測定方法)
測定装置1を用いたガス透過セル18の密閉度の測定方法は、ガス透過度の測定方法と同様に、空間12bに存在している成分を測定する方法である。当該方法は、第1のガスに含まれている成分を検出する工程、および当該工程の検出結果に基づいて上記セルの密閉度を決定する工程を包含している。
【0049】
この方法において、通常のガス透過度の試験と異なっているのは、ガス透過セル18の外部に存在している気体の成分を検出する点である。ガス透過セル18の密閉度が十分に高い状態であれば、第1のガスの成分は検出されない。薄膜材料14の破損などによって、ガス透過セル18の密閉度が低下すると、第1のガスの成分が検出される。つまり、検出器16が、第1のガスの成分に対応する有意に大きな検出結果を示している場合、ガス透過セル18の不良な状態が定量的に判定できる。
【0050】
(ガス透過度の測定条件の適否を判定する方法)
測定装置1を用いたガス透過度の測定条件の適否を判定する方法は、ガス透過度の測定方法と同様に、空間12bに存在している成分を測定する方法である。当該方法は、上記第2のガスに含まれている薄膜材料14を透過する成分、および第1のガスに含まれている成分を同時に検出する工程、ならびに当該工程の検出結果に基づいて薄膜材料14のガス透過度の測定時における測定条件の適否を評価する工程を包含している。
【0051】
この方法は、上述の2つの方法を組み合わせたものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、種々の薄膜材料のガス透過度試験に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 測定装置
11 容器
12a 空間(第2の空間)
12b 空間(第1の空間)
13 温度制御部
14 薄膜材料
15a〜c ガス供給部(第1〜3のガス供給部)
16 検出器
17a〜d 管
18 ガス透過セル(セル)
18a 上部
18b 下部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜材料を挟んでいるときに対向する第1の空間および第2の空間を形成するセルを備えており、上記薄膜材料を透過して上記第1の空間から上記第2の空間に移動する気体の標的成分を測定する測定装置であって、
上記セルに接して設けられている、当該セルの温度を制御する温度制御部、
上記セルおよび温度制御部を収納している容器、
上記容器の内部に第1のガスを供給する第1のガス供給部、
上記標的成分を含んでいる第2のガスを上記第1の空間に供給する第2のガス供給部、ならびに
キャリアガスとしての第3のガスを上記第2の空間に供給する第3のガス供給部をさらに備えており、
上記第3のガスが、上記標的成分とは異なる成分のみを含んでおり、
上記第1のガスが、以下の(a)および(b)の条件:
(a)上記標的成分と異なる成分のみを含んでいるか、または大気より低い濃度において上記標的成分を含んでいる;
(b)上記第3のガスの成分と異なる成分のみを含んでいるか、または大気より低い濃度において上記第3のガスの成分を含んでいる、
を満たしている、測定装置。
【請求項2】
上記セルの一部が上記温度制御部に収納されている、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
上記第1のガスが、上記標的成分と異なる成分のみを含んでいる、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
上記第1のガスが、上記第3のガスの上記成分とは異なる成分のみを含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
上記第1のガスが不活性ガスからなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の測定装置を用いて上記第2の空間に存在している成分を測定する方法であって、
上記第2の空間に存在している上記標的成分を検出する工程、および
当該工程の検出結果に基づいて上記薄膜材料のガス透過度を決定する工程を包含している、方法。
【請求項7】
検出する上記工程が、上記第2のガスに含まれている上記薄膜材料を透過する成分、および上記第1のガスに含まれている成分を同時に検出する工程であり、当該工程の検出結果に基づいて上記薄膜材料のガス透過度の測定時における測定条件の適否を評価する工程をさらに包含している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項3に記載の測定装置を用いて上記第2の空間に存在している成分を測定する方法であって、
上記第1のガスに含まれている成分を検出する工程、および
当該工程の検出結果に基づいて上記セルの密閉度を決定する工程を包含している、方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−3028(P2013−3028A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135916(P2011−135916)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)