説明

測定装置及びデータテーブル設定方法

【課題】任意に設定できるデータテーブルを簡単、迅速に設定することのできるpH又は電気伝導率の測定用の測定装置、及びデータテーブル設定方法を提供する。
【解決手段】測定装置1は、溶液のpH値に応じた信号を出力するpH測定電極21と;溶液の温度に応じた信号を出力する温度検知手段23と;pH測定電極21及び温度検知手段23が接続された本体10と;本体10内に設けられ、標準液のpHと温度との関係を示すpH−温度特性データテーブルを記憶する記憶手段13と;本体10内に設けられ、標準液の温度に応じて温度検知手段23が出力した信号に対応するpH値を記憶手段13から取り出し、そのpH値を用いて校正を行う信号処理手段11と;本体10内に設けられた、記憶手段13に記憶するpH−温度特性データテーブルを本体10の外部の情報伝達媒体2から取り込む取り込み手段14と;を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH又は電気伝導率の測定用の測定装置、及びこの測定装置で用いるデータテーブルの設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶液のpH(水素イオン濃度)の測定には水素イオン選択性の感応膜を有するpH測定電極が使用され、その代表的なものにガラスをpH感応膜とするガラス電極がある。実際に溶液のpHを測定する場合には、pH測定電極を作用電極とし、この作用電極を甘汞電極や銀−塩化銀電極等の比較電極と共に測定すべき溶液(被測定溶液,被検液)に浸漬し、両電極間の電位差から被測定溶液のpH値を求める。
【0003】
溶液のpHの測定には直接電位差測定方法が広く用いられており、被測定溶液のpHの測定に先立ち、pH測定電極を、通常、pH6.86とpH4.01又はpH9.18との2つの標準液に浸漬し、2点校正を行なう。場合によっては、上記3つpHの異なる標準液を用いて3点校正を行う。上記3つの標準液はJISで規定されているものである。より具体的には、例えばpH測定電極と比較電極との間の電位差を測定装置の指示計により直読して校正を行なってから、被測定溶液のpHの測定を行なう。
【0004】
ここで、標準液のpHは温度によって変化するので、正確な校正を行うためには、標準液の温度を測定して、測定された温度におけるpH値で校正を行う必要がある。そのため、近年では、測定装置にROM(リード・オンリー・メモリ)を組み込み、このROMに上記各標準液についてのpH−温度特性データテーブルを予め記憶させておき、pH測定電極を校正する際に、各標準液の温度を測定し、ROMに記憶されたpH−温度特性データテーブルを参照してその温度に対応するpH値を取り出し、この取り出したpH値で自動校正するようにしているものがある。
【0005】
又、ユーザが上記ROMに記憶されている所定の標準液以外の任意の標準液でpH測定電極を校正することを望むことがある。この場合に、ユーザが予め調べた所望の任意の標準液のpHの温度依存性を示すpH−温度特性データテーブルを、測定装置に設けられたキーを用いて入力することで、測定装置に組み込まれたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)に記憶させるようになっているものがある(特許文献1)。これにより、任意の標準液を用いて校正をする際には、上記RAMに記憶されたpH−温度特性データテーブルからその標準液の温度に対応するpH値を取り出し、この取り出したpH値で自動校正することができる。
【0006】
一方、従来、溶液の電気伝導率を測定し、例えば溶液の電解質の割合を調査することが広く行われている。一般的に、溶液の電気伝導率は溶液中に存在するイオンに依存し、金属導体と同様にオームの法則に従う。溶液の場合は、1m立方の相対する2面間の電気抵抗を抵抗率とし、その逆数を電気伝導率としてS/mの単位で表す。電気伝導率の測定方法としては、少なくとも一対の電極を備えた電気伝導率測定電極(電気伝導率セル)を被測定溶液に浸漬し、この電極間に電圧を印加することで被測定溶液の電気抵抗を測定して電気伝導率を求める、所謂、電極法がある。より具体的には、例えば、セルの電極間に正弦波又は矩形波の交流電圧を印加し、電極間に流れる電流を検出して電気伝導率に換算する。
【0007】
ところで、溶液の溶質濃度が同じであっても、その溶液の電気伝導率は、溶液の温度により変わる。そのため、溶液の電気伝導率は、一般に、基準温度での電気伝導率に換算して表示される。電気伝導率の換算値は、下記式1により算出される。
T=kt/{1+α/100×(t−T)} ・・・(1)
(但し、Tは基準温度[℃]、tは溶液の温度[℃]、kTは電気伝導率のT℃換算値、ktはt℃における電気伝導率、αは溶液の温度係数[%])
【0008】
通常、基準温度Tは25℃とされる。又、温度係数αは、一般に、固定値(例えば2.00%)として、測定装置に組み込まれたROM等に予め設定される。これは、常温程度の通常の水溶液の電気伝導率は1℃の温度変化で約2%変化するので、一般の用途では、温度係数αを2.00%とすることで十分な精度で電気伝導率を測定することができるためである。
【0009】
しかしながら、測定系によっては、温度係数αが温度によって異なり、温度係数αを固定値として扱うと、所望の精度で電気伝導率を測定できない場合がある。このような場合に、ユーザが予め調べた所望の任意の測定系における温度係数αの温度依存性を示す温度係数−温度特性データテーブルを、測定装置に設けられたキーを用いて入力することで、測定装置に組み込まれたRAMに記憶させるようになっているものがある。
【0010】
又、従来、所望の任意の測定系における溶液の電気伝導率と、溶液中の溶質の濃度との関係を予め調べておくことで、溶液の電気伝導率の測定値から溶液の濃度を求めることが行われている。この時、測定装置に電気伝導率を指示させて、手動にて溶液の濃度を計算する代わりに、ユーザが予め求めた電気伝導率と濃度との関係を示す電気伝導率−濃度換算データテーブルを、測定装置に設けられたキーを用いて入力することで、測定装置に組み込まれたRAMに記憶させておき、測定装置が自動的に電気伝導率を濃度に換算して指示するようにすることができる。
【0011】
このように、pH測定装置又は電気伝導率測定装置によるpH、電気伝導率、或いは濃度の測定において、溶液の温度等の変化により検出値が非直線的な変化をする場合や、換算によって濃度を求める場合には、しばしば校正用又は測定用のデータテーブルを作成して測定装置に設けられた記憶手段に記憶させる。
【0012】
このデータテーブルは、例えばJIS等で規定されている標準物質に関するものであれば、予め測定装置に設けられた記憶手段に記憶させておくことができる。しかし、明確な規定の無い標準物質や特殊な物質に関するものの場合は、測定装置に設けられたキーを用いて、手動操作で記憶手段に記憶させる必要があった。
【特許文献1】特開平5−133927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述のようなデータテーブルは、一般に、数個〜数十個の設定データから成り、測定装置に設けられたキーを用いて手動で設定するのは、煩わしい作業であり、間違いを生じる可能性もある。
【0014】
特に、測定装置自体を小型化するなどの目的で、テンキーのような十分量のキーが設けられておらず、その代わりに単一又は複数のキーを用いて表示画面上のキャラクターを逐次に選択、確定してデータテーブルを入力するようになっている場合などには、非常に煩雑な作業になる。
【0015】
又、従来、ある測定装置の記憶手段に記憶されたデータテーブルは、その測定装置単体でしか使用できなかった。そのため、同様のデータテーブルを記憶させるべき測定装置が別に1個又は複数個ある場合には、それぞれの測定装置の記憶手段に個別に手動操作でデータテーブルを記憶させる必要があった。このような作業は、極めて煩雑で、時間がかかるものであり、又間違いを生じる可能性が増大する。
【0016】
従って、本発明の目的の1つは、任意に設定できるデータテーブルを簡単、迅速に設定することのできるpH又は電気伝導率の測定用の測定装置、及びデータテーブル設定方法を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的の1つは、複数の測定装置に同じデータテーブルを簡単、迅速、且つ、正確に設定することのできるpH又は電気伝導率の測定用の測定装置、及びデータテーブル設定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的は本発明に係る測定装置及びデータテーブル設定方法にて達成される。要約すれば、第1の本発明によれば、溶液のpH値に応じた信号を出力するpH測定電極と;溶液の温度に応じた信号を出力する温度検知手段と;前記pH測定電極及び前記温度検知手段が接続された本体と;前記本体内に設けられ、標準液のpHと温度との関係を示すpH−温度特性データテーブルを記憶する記憶手段と;前記本体内に設けられ、前記標準液の温度に応じて前記温度検知手段が出力した信号に対応するpH値を前記記憶手段から取り出し、そのpH値を用いて校正を行う信号処理手段と;前記本体内に設けられた、前記記憶手段に記憶する前記pH−温度特性データテーブルを前記本体の外部の情報伝達媒体から取り込む取り込み手段、及び、前記記憶手段に記憶された前記pH−温度特性データテーブルを前記本体の外部の情報伝達媒体に出力する出力手段のうちの少なくとも1つと;を有することを特徴とする測定装置が提供される。
【0019】
第2の本発明によれば、溶液の電気伝導率に応じた信号を出力する電気伝導率測定電極と;溶液の温度に応じた信号を出力する温度検知手段と;前記電気伝導率測定電極及び前記温度検知手段が接続された本体と;前記本体内に設けられ、電気伝導率の温度依存性を表す温度係数と温度との関係を示す温度係数−温度特性データテーブルを記憶する記憶手段と;前記本体内に設けられ、前記温度検知手段が出力した信号に対応する温度係数値を前記記憶手段から取り出し、その温度係数値を用いて電気伝導率の測定値の温度補償を行う信号処理手段と;前記本体に設けられた、前記記憶手段に記憶する前記温度係数−温度特性データテーブルを前記本体の外部の情報伝達媒体から取り込む取り込み手段、及び、前記記憶手段に記憶された前記温度係数−温度特性データテーブルを前記本体の外部の情報伝達媒体に出力する出力手段のうちの少なくとも1つと;を有することを特徴とする測定装置が提供される。
【0020】
第3の本発明によれば、溶液の電気伝導率に応じた信号を出力する電気伝導率測定電極と;前記電気伝導率測定電極が接続された本体と;前記本体内に設けられ、電気伝導率と濃度との関係を示す電気伝導率−濃度換算データテーブルを記憶する記憶手段と;前記本体内に設けられ、前記電気伝導率測定電極の出力した信号に対応する濃度値を前記記憶手段から取り出して、電気伝導率の測定値を濃度の測定値に換算する信号処理手段と;前記本体内に設けられた、前記記憶手段に記憶する前記電気伝導率−濃度換算データテーブルを前記本体の外部の情報伝達媒体から取り込む取り込み手段、及び、前記記憶手段に記憶された前記電気伝導率−濃度換算データテーブルを前記本体の外部の情報伝達媒体に出力する出力手段のうちの少なくとも1つと;を有することを特徴とする測定装置が提供される。
【0021】
又、第4の本発明によれば、測定装置で使用する、標準液のpHと温度との関係を示すpH−温度特性データテーブル、電気伝導率の温度依存性を表す温度係数と温度との関係を示す温度係数−温度特性データテーブル、又は電気伝導率と濃度との関係を示す電気伝導率−濃度換算データテーブルであるデータテーブルを設定する方法であって、前記測定装置の外部の機器を用いて前記データテーブルを入力する段階と、該入力されたデータテーブルを情報伝達媒体を介して伝達する段階と、該伝達されたデータテーブルを前記測定装置内に取り込む段階と、該取り込まれたデータテーブルを前記測定装置内に設けられた記憶手段に記憶させる段階と、を有することを特徴とするデータテーブル設定方法が提供される。
【0022】
更に、第5の本発明によれば、測定装置で使用する、標準液のpHと温度との関係を示すpH−温度特性データテーブル、電気伝導率の温度依存性を表す温度係数と温度との関係を示す温度係数−温度特性データテーブル、又は電気伝導率と濃度との関係を示す電気伝導率−濃度換算データテーブルであるデータテーブルを設定する方法であって、前記データテーブルを前記測定装置内に設けられた記憶手段に記憶させる段階と、該記憶されたデータテーブルを情報伝達媒体を介して伝達する段階と、該伝達されたデータテーブルを前記測定装置の外部の機器内に取り込む段階と、該取り込まれたデータテーブルを前記機器内に設けられた記憶手段に記憶させる段階と、を有することを特徴とするデータテーブル設定方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、任意に設定できるデータテーブルを簡単、迅速に設定することができる。又、本発明によれば、複数の測定装置に同じデータテーブルを簡単、迅速、且つ、正確に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る測定装置及びデータテーブル設定方法を図面に則して更に詳しく説明する。
【0025】
実施例1
[測定装置の全体構成]
図1は本発明に係る測定装置の一実施例を示す概略ブロック図である。本実施例では、測定装置1は、溶液のpHの測定に用いられるpH測定装置とされる。
【0026】
測定装置1は、本体10と、本体10に接続された測定部20とを有する。測定部20は、pH測定電極21と、比較電極22と、温度検知手段としての温度センサ23と、を有する。pH測定電極21はガラス電極、比較電極22は銀−塩化銀電極、又温度センサ23は測温抵抗体で構成される。本実施例では、測定部20のpH測定電極21と比較電極22と温度センサ23とは、pH複合電極として一体的に構成されている。
【0027】
本体10は、測定装置1の動作を統括的に制御する信号処理手段(制御手段)としてのコントローラ11を有する。又、本体10には、コントローラ11に接続された、所定のプログラムやデータを記憶する第1の記憶手段としてのROM12、詳しくは後述する任意に設定されるデータテーブルを記憶する第2の記憶手段としてのRAM13、測定部20からの信号をアナログ−デジタル変換(A/D変換)するアナログ−デジタル変換器(A/D変換器)16、測定値や各種設定値等を表示する表示部17、測定操作や校正操作の開始又は停止の指示或いは各種設定値を入力する入力手段としての操作部18が設けられている。操作部18には、データを入力するためのキーなどが設けられている。
【0028】
更に、本体10には、コントローラ11に接続された、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)接続が可能な第1のインターフェース部14、LAN(ローカルエリア・ネットワーク)接続が可能な第2のインターフェース部15が設けられている。
【0029】
この他、本体10には、詳しい説明は省略するが、本体10の各部への電力供給或いは測定部10への測定用電圧の出力のための電源、測定部20の出力信号を適当に増幅する増幅器等が設けられている。
【0030】
被測定溶液のpHを測定する場合には、pH複合電極とされる測定部20が、ビーカー等の容器6内に収容された被測定溶液61中に浸漬される。そして、pH測定電極22及び比較電極23からの出力電圧信号(pH測定電極21と比較電極22との間の電位差に応じた信号)は、本体10において、適当に増幅され、又A/D変換器16でデジタル信号に変換されて、コントローラ11に入力される。コントローラ11に入力された信号は、コントローラ11において信号処理され、pH測定電極21と比較電極22との間の電位差が検出されて、又検出された電位差に対応するpH値が決定される。そして、コントローラ11は決定したpH値を、例えば本体10の表示部17において表示させる信号を出力する。この時、温度センサ23からの出力電圧信号も本体10において適当に増幅され、又A/D変換器16でデジタル信号に変換されて、コントローラ11に入力される。そして、コントローラ11は、温度センサ23による温度検知結果を用いて、pH測定電極21と比較電極23との間の電位差から温度補償されたpH値を求めることができる。
【0031】
[校正操作]
(1)所定の標準液を用いた校正
コントローラ11に接続された第1の記憶手段としてのROM12には、所定の標準液(通常、JISで規定されているpH6.86、pH4.01、pH9.18の各pHの標準液)のpH−温度特性データテーブルが予め記憶されている。一方、コントローラ11に接続された第2の記憶手段としてのRAM13には、ユーザが所望する任意の標準液のpH値−温度特性データテーブルが記憶される。
【0032】
ROM12に記憶されたpH−温度特性データテーブルを用いた所定の標準液での校正は次のようにして行う。即ち、ビーカー等の適当な容器6内に収容された所定の標準液62に、pH複合電極とされる測定部20を浸漬する。そして、コントローラ11は、ROM12に記憶されているその標準液62のpH−温度特性データテーブルから、温度センサ23が標準液62の温度に応じて出力した信号に対応するpH値を取り出す。そして、その取り出されたpH値によって、その時のpH測定電極21と比較電極22との間の電位差に応じた信号に対する指示値の校正を行う。通常、pH6.86とpH4.01又はpH9.18との2つの標準液に浸漬し、2点校正を行なう。場合によっては、上記3つpHの異なる標準液を用いて3点校正を行う。
【0033】
(2)任意の標準液を用いた校正
(2−1)データテーブルの設定
次に、ROM12に記憶されていないユーザが所望する任意の標準液のpH−温度特性データテーブル(校正用データテーブル)をRAM13に記憶させる方法について説明する。
【0034】
本実施例では、通常多数のデータから成るデータテーブルを操作者が測定装置1に設けられたキーを用いて手動操作で個別に入力するのではなく、測定装置1の外部の情報伝達媒体(情報通信又は記憶媒体)から取り込み、データテーブルをRAM13に設定・保存することができるようになっている。
【0035】
ここで、情報伝達媒体は、測定装置1、及びパーソナルコンピュータ(以下「PC」という)等の測定装置1の外部の機器(外部機器)に対して取り外し可能な記憶手段であってよい。又、情報伝達媒体は、測定装置1とPC等の外部機器とを通信可能に接続する通信手段であってよい。以下、更に詳しく説明する。
【0036】
本実施例では、測定装置1は、本体10に、取り込み手段としての読み取り手段であるUSB接続が可能な第1のインターフェース部14を有する。第1のインターフェース部14は、コントローラ11に接続されている。第1のインターフェース部14には、取り外し可能な記憶手段としてのUSBメモリ(フラッシュメモリ)2が取り外し可能に接続される。そして、コントローラ11は、第1のインターフェース部14に接続されたUSBメモリ2から、このUSBメモリ2に予め記憶されている所望の任意の標準液のpH−温度特性データテーブルを、第1のインターフェース部14を介して取り込み、RAM13に記憶させる。
【0037】
規格化されていない標準液のpH−温度特性データテーブルは、詳しくは後述するように、PC等の外部機器において作成して、通常は、一旦この外部機器の有する(即ち、PC等の外部機器に内蔵されるか又はその外部機器に接続された)ハードディスク等の記憶手段に記憶される。このPC等の外部機器は、読み取り/書き込み手段としてのUSB接続が可能なインターフェース部を有する。別法として、このようなpH−温度特性データテーブルは、PC等の外部機器において、ネットワーク(LAN、インターネット等)を介して他の機器からダウンロードすることができる。
【0038】
そして、この外部機器の有する記憶手段に記憶されたpH−温度特性データテーブルは、この外部機器にUSBメモリ2を接続することによって、そのUSBメモリ2に書き込むことができる。次いで、上述のように、このUSBメモリ2を外部機器から取り外し、測定装置1に接続して、pH−温度特性データテーブルをUSBメモリ2から測定装置1に一括で取り込むことができる。
【0039】
USBメモリ2を用いてRAM13にpH−温度特性データテーブルを記憶させる動作は、操作者が操作部18に設けられたキーによって開始指示を入力することで開始するようになっていてもよい。或いは、この動作は、USBメモリ2が第1のインターフェース部14に接続されたことをコントローラ11が認識して自動的に開始するようになっていてもよい。
【0040】
一方、本実施例では、測定装置1は、本体10に、取り込み手段としての受信手段であるLAN接続が可能な第2のインターフェース部15を有する。第2のインターフェース部15は、コントローラ11に接続されている。第2のインターフェース部15には、通信手段としての情報通信ケーブルであるLANケーブル3の一方の末端が取り外し可能に接続される。本実施例では、LANケーブル3の他方の末端は、外部機器としてのPC4に取り外し可能に接続される。外部機器としてのPC4は、受信/送信手段としてのLAN接続が可能なインターフェース部を有する。そして、コントローラ11は、PC4の有する記憶手段から、上述のようにしてこの記憶手段に予め記憶されている所望の任意の標準液のpH−温度特性データテーブルを、第2のインターフェース部15を介して取り込み、RAM13に記憶させる。或いは、PC4において入力するpH−温度特性テーブルデータを、直接、測定装置1のRAM13に書き込むことができる。
【0041】
このようにして、取り外し可能な記憶手段を使用しない場合において、PC4と測定装置1とを接続する通信手段を用いて、規格化されていない標準液のpH−温度特性データテーブルを、直接、測定装置1に書き込むことができる。
【0042】
LANケーブル3を用いてRAM13にpH−温度特性データテーブルを記憶させる動作は、操作者がPC4の操作部によって開始指示を入力することで開始するようになっていてよい。或いは、この動作は、測定装置1の操作部18に設けられたキーによって開始指示を入力することで開始するようになっていてもよい。
【0043】
このように、本実施例では、外部機器4からは、USB2、LANケーブル3のいずれを介しても、データテーブルを測定装置に取り込むことができる。
【0044】
図2は、上述のデータテーブル設定方法の概略フローチャートである。即ち、データテーブル設定方法は、(i)測定装置1の外部の機器(PC等の外部機器)4を用いて、標準液のpHと温度との関係を示すpH−温度特性データテーブルであるデータテーブルを入力する段階と、(ii)該入力されたデータテーブルを情報伝達媒体を介して伝達する段階と、(iii)該伝達されたデータテーブルを測定装置1内に取り込む段階と、(iv)該取り込まれたデータテーブルを測定装置1内に設けられた記憶手段(RAM)13に記憶させる段階と、を有する。
【0045】
一実施態様では、上記(ii)の伝達する段階は、上記入力されたデータテーブルを、外部機器4内に設けられた書き込み手段によって外部機器4から取り外し可能な記憶手段(USBメモリ)2に記憶させることを含み、上記(iii)の取り込む段階は、外部機器4から取り外して測定装置1に接続された取り外し可能な記憶手段2に記憶されたデータテーブルを、測定装置1内に設けられた読み取り手段(第1のインターフェース部)14によって読み取ることを含む。又、他の実施態様では、上記(ii)の伝達する段階は、上記入力されたデータテーブルを、外部機器4内に設けられた送信手段によって、外部機器4と測定装置1とを通信可能に接続する通信手段(LANケーブル)3を通して送信することを含み、上記(iii)の取り込む段階は、通信手段3を通して送信されたデータテーブルを、測定装置1内に設けられた受信手段(第2のインターフェース部)15によって受信することを含む。
【0046】
PC等の外部機器によれば、通常、測定装置1に設けられたキーよりも操作性の良い付属のキーボードを用いて、例えば数個〜数十個の設定データから成るデータテーブルも比較的容易に作成することができ、データテーブル作成時間を短縮し、又間違いの発生も少なくすることができる。又、ネットワークからデータテーブルをダウンロードする場合には、更にデータテーブルを作成する手間は省ける。
【0047】
勿論、測定装置1が更に、従来同様、本体10の操作部18のキーを用いて手動操作でデータテーブルをRAM13に記憶させ得るようになっていてもよい。
【0048】
(2−2)データテーブルの出力
次に、RAM13に記憶された所望の任意の標準液のpH−温度特性データテーブルを測定装置1から出力(転送)する方法について説明する。
【0049】
本実施例では、測定装置1のRAM13に記憶されているデータテーブルを、測定装置1の外部の情報伝達媒体(情報通信又は記憶媒体)を介して別の測定装置1やPC等の外部機器に転送できるようになっている。これにより、ある測定装置1から、別の測定装置1やPC等の外部機器に、同じデータテーブルを簡単に移植することができる。
【0050】
ここで、情報伝達媒体は、測定装置1、及びPC等の外部機器に対して取り外し可能な記憶手段であってよい。又、情報伝達媒体は、測定装置1と記憶手段を有するPC等の外部機器とを通信可能に接続する通信手段であってよい。以下、更に詳しく説明する。
【0051】
本実施例では、上記読み取り手段として機能する第1のインターフェース部14が、出力手段としての書き込み手段としても機能する。即ち、第1のインターフェース部14には、USBメモリ2が取り外し可能に接続される。そして、コントローラ11は、RAM13に記憶されている所望の任意の標準液のpH−温度特性データテーブルを、第1のインターフェース部14を介して、第1のインターフェース部14に接続されたUSBメモリ2に記憶させる。
【0052】
その後、このUSBメモリ2をその測定装置1から取り外し、別の測定装置1に接続して、上述の方法と同様にして、この別の測定装置1のRAM13に、上記所望の任意の標準液のpH−温度特性データテーブルを記憶させることができる。或いは、USBメモリ2は、RAM13から任意の所望の標準液のpH−温度特性データテーブルが記憶された後に、その測定装置1から取り外され、PC等の外部機器に接続されて、このPC等の外部機器の有する記憶手段に、このUSBメモリ2からの該pH−温度特性データテーブルを記憶させることができる。このPC等の外部機器の有する記憶手段に転送されたpH−温度特性データテーブルは、上述の方法と同様にして、更に別の測定装置1やPC等の外部機器に転送することができる。
【0053】
USBメモリ2へpH−温度特性データテーブルを記憶させる動作は、操作者が操作部18に設けられたキーによって開始指示を入力することで開始するようになっていてよい。或いは、この動作は、USBメモリ2が第1のインターフェース部14に接続されたことをコントローラ11が認識して自動的に開始するようになっていてもよい。
【0054】
一方、本実施例では、上記受信手段として機能する第2のインターフェース部15が、出力手段としての送信手段としても機能する。即ち、第2のインターフェース部15には、LANケーブル3の一方の末端が取り外し可能に接続される。LANケーブル3の他方の末端はPC4に取り外し可能に接続される。そして、コントローラ11は、RAM13に記憶されている所望の任意の標準液のpH−温度特性データテーブルを、第2のインターフェース部15を介して、PC4へと送信する。PC4は、このpH−温度特性データテーブルを、PC4の有する記憶手段に記憶させることができる。
【0055】
その後、このPC4の有する記憶手段に記憶されたpH−温度特性データテーブルは、上述の方法と同様にして、USBメモリ2、LANケーブル3を介して別の測定装置1やPC等の外部機器の記憶手段に記憶させることができる。
【0056】
LANケーブル3を介したpH−温度特性データテーブルの送信動作は、操作者がPC4の操作部によって開始指示を入力することで開始するようになっていてよい。或いは、この動作は、測定装置1の操作部18に設けられたキーによって開始指示を入力することで開始するようになっていてもよい。
【0057】
ここで、測定装置1のRAM13に記憶されている、他の機器に出力すべきpH−温度特性データテーブルは、前述のようにして、USBメモリ2又はLANケーブル3を用いて記憶されたものであっても、或いは別法として測定装置1の操作部18のキーを用いて入力されたものであってもよい。
【0058】
このように、本実施例では、測定装置1からは、USB2、LANケーブル3のいずれを介してもデータテーブルを外部機器に対して出力することができる。
【0059】
図3は、上述のデータテーブル設定方法の概略を示すフローチャート図である。即ち、データテーブル設定方法は、(I)標準液のpHと温度との関係を示すpH−温度特性データテーブルであるデータテーブルを、測定装置1内に設けられた記憶手段(RAM)13に記憶させる段階と、(II)該記憶されたデータテーブルを情報伝達媒体を介して伝達する段階と、(III)該伝達されたデータテーブルを測定装置1の外部の機器(別の測定装置1やPC等の外部機器)内に取り込む段階と、(IV)該取り込まれたデータテーブルを外部機器内に設けられた記憶手段に記憶させる段階と、を有する。
【0060】
一実施態様では、上記(II)の伝達する段階は、測定装置1内の記憶手段13に記憶されたデータテーブルを、測定装置1内に設けられた書き込み手段(第1のインターフェース部)14によって測定装置1から取り外し可能な記憶手段(USBメモリ)2に記憶させることを含み、上記(III)の取り込む段階は、測定装置1から取り外して外部機器に接続された取り外し可能な記憶手段2に記憶されたデータテーブルを、外部機器内に設けられた読み取り手段によって読み取ることを含む。又、他の実施態様では、上記(II)の伝達する段階は、測定装置1内の記憶手段13に記憶されたデータテーブルを、測定装置1内に設けられた送信手段(第2のインターフェース部)15によって、測定装置1と外部機器とを通信可能に接続する通信手段(LANケーブル)3を通して送信することを含み、上記(III)の取り込む段階は、通信手段3を通して送信されたデータテーブルを、外部機器内に設けられた受信手段によって受信することを含む。
【0061】
上述のように、ある測定装置1のRAM13に記憶された所望の任意の標準液のpH−温度特性データテーブルを、別の測定装置1やPC等の外部機器に一括で転送(移植)できるようにすることで、同様のデータテーブルを記憶させるべき測定装置1が別に1個又は複数個ある場合に、それぞれの測定装置1に個別に手動操作でデータテーブルを記憶させる必要がなく、作業性は極めて向上し、データテーブルの設定時間を短縮し、又間違いを生じる可能性を大幅に減少することができる。
【0062】
(2−3)データテーブルの作成及び校正操作
ここで、ユーザが所望する任意の標準液のpH−温度特性データテーブルは、例えば次のようにして予め作成することができる。例えば、所望の任意の標準液の温度を0℃〜100℃の範囲において5℃毎に変化させて、測定装置1においてその時のその標準液のpH値を測定する。このようにして測定したpH値と温度との関係を、外部機器としてのPC等にインストールされた表計算用のソフトウェアのような任意のソフトウェアを用いて入力し、例えばCSV形式のデータテーブルとしてPC等の外部機器の有する記憶手段に記憶させる。
【0063】
又、RAM13に記憶されたpH−温度特性データテーブルを用いた所望の任意の標準液での校正は、用いるpH−温度特性データテーブルが異なることを除いて、実質的に上述の所定の標準液を用いて校正を行う場合と同様にして行うことができる。
【0064】
即ち、ビーカー等の適当な容器6に所望の任意の標準液62を注入し、この標準液62にpH複合電極とされる測定部20を浸漬し、この標準液62の温度を温度センサ23により測定し、デジタル信号に変換してコントローラ11に供給し、この測定温度に対応する標準液のpH値をRAM13からコントローラ11へ取り出し、このpH値を用いてpH測定電極21と比較電極22との間の電位差に応じた信号に対応する指示値の校正を行ない、不斉電位、スロープ等を算出する。即ち、コントローラ11は、所望の任意の標準液の温度に応じて温度センサ23が出力した信号に対応するpH値をRAM13から取り出し、そのpH値を用いて校正を行う。この場合、上述したように、RAM13に記憶した温度は5℃単位であるので、中間の温度に対するpH値は、例えば補間法等により算出することができる。勿論、更に細かい温度毎のpH値を記憶させてもよい。又、標準液の温度測定は、上述のような温度センサ23で行なうことができる。従って、温度測定から、この測定温度に対応する標準液のpH値を取り出し、校正するまでの操作は自動的に行なうことができる。
【0065】
以上、本実施例によれば、任意に設定できるデータテーブルを簡単、迅速に設定することができる。又、本実施例によれば、複数の測定装置に同じデータテーブルを簡単、迅速、且つ、正確に設定することができる。
【0066】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。図4は本発明に係る測定装置の他の実施例を示す概略ブロック図である。本実施例では、測定装置1は、溶液の電気伝導率の測定に用いられる電気伝導率測定装置とされる。
【0067】
尚、pH測定装置とされる実施例1の測定装置のものと同一又はそれに相当する機能を有する要素には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0068】
本実施例では、測定装置1は、電極法によって溶液の電気伝導率を測定するように構成される。即ち、測定装置1は、一対の電極(白金黒メッキ電極)24a、24bを備えた電気伝導率測定電極(電気伝導率セル)とされる測定部20を有する。測定部20には、温度センサ23も一体的に設けられている。
【0069】
電気伝導率を測定する際には、測定部20を被測定溶液に浸漬し、本体10に設けられた電気伝導率測定用の交流電源から、測定部20の電極24a、24b間に交流電圧を印加して、その時流れる電流を検出する。測定部20の検出出力は、本体10において、適当に増幅され、又A/D変換器16でA/D変換されて、コントローラ11に入力される。コントローラ11は、測定値にセル定数や温度などの補正を加えて電気伝導率を算出し、例えば本体10に設けられた表示部17において電気伝導率を表示させる信号を出力する。尚、本実施例では、測定部20は2つの電極を有するが、より多くの電極を有していてもよい。
【0070】
コントローラ11は、測定値を、下記式1、
T=kt/{1+α/100×(t−T)} ・・・(1)
(但し、Tは基準温度[℃]、tは溶液の温度[℃]、kTは電気伝導率のT℃換算値、ktはt℃における電気伝導率、αは溶液の温度係数[%])
に基づいて基準温度Tでの電気伝導率に換算する。基準温度Tは、例えば25℃である。
【0071】
ところで、一般の用途では、温度係数αを2.00%とすることで十分な精度で電気伝導率を測定することができる。そこで、本実施例では、第1の記憶手段としてのROM12には、電気伝導率の温度依存性を表す所定の温度係数として、2.00%が記憶されている。
【0072】
しかしながら、測定系によっては、温度係数αを固定値として扱うと、十分な精度で電気伝導率を測定することができない場合がある。このような場合には、予め温度係数αの温度依存性を調べておくことで、任意の温度の溶液の電気伝導率をより正確に温度補償することができる。
【0073】
そこで、本実施例では、ユーザが所望する任意の測定系における温度係数−温度特性データテーブル(測定用データテーブル)を、第2の記憶手段としてのRAM13に記憶させ得るようになっている。
【0074】
温度係数−温度特性データテーブルは、実施例1におけるpH−温度特性データテーブルと同様に、PC等の外部機器において作成して、通常は、一旦その外部機器の有する記憶手段に記憶される。別法として、温度係数−温度特性データテーブルは、PC等の外部機器において、ネットワークを介して他の機器からダウンロードすることができる。
【0075】
そして、この温度係数−温度特性データテーブルは、実施例1におけるpH−温度特性データテーブルと同様にして、USBメモリ2及び/又はLANケーブル15を介して、第1又は第2のインターフェース14、15によって測定装置1に取り込み、RAM13に記憶させることができる。
【0076】
又、このRAM13に記憶された温度係数−温度特性データテーブルは、実施例1におけるpH−温度特性データテーブルと同様にして、USBメモリ2及び/又はLANケーブル15を介して、別の測定装置1やPC等の外部機器に移植することができる。
【0077】
ここで、ユーザが所望する任意の測定系における温度係数−温度特性データテーブルは、例えば次のようにして予め求めることができる。基準温度(例えば25℃)における電気伝導率が既定値とされた所望の任意の測定系の溶液の温度を、例えば0℃〜80℃の範囲で1℃刻みで変化させ、各温度において測定装置1を用いて温度補償を行わずに電気伝導率を測定する。そして、基準温度を例えば25℃とした場合の各温度における温度係数を上記式1から算出する。このようにして測定した温度係数と温度との関係を、実施例1におけるpH−温度特性データテーブルの場合と同様にして外部機器としてのPC等によって入力し、保存することができる。
【0078】
RAM13に記憶された温度係数−温度特性データテーブルを用いて所望の測定系の被測定溶液の電気伝導率を測定する場合には、被測定溶液の電気伝導率に応じて電極24a、24bが出力する信号を検出し、又被測定液の温度に応じて温度センサ23が出力する信号を検出する。コントローラ11は、検出された温度に対応する温度係数αをRAM13から取り出し、この温度係数αを用いて上記式1により被測定液の電気伝導率を基準温度におけるものに換算する。即ち、コントローラ11は、RAM13に記憶された温度係数−温度特性データテーブルに従う溶液の温度に応じて温度センサ23が出力した信号に対応する温度係数値をRAM13から取り出し、その温度係数値を用いて電気伝導率の測定値の温度補償を行う。
【0079】
以上、本実施例のように測定装置1が電気伝導率測定装置であり、所望の温度係数−温度特性データテーブルを設定したい場合にも、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0080】
実施例3
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。本実施例では、測定装置は、実施例2と同様の電気伝導率測定装置である。本実施例の測定装置1の概略構成は、図4に示した通りである。
【0081】
但し、本実施例では、測定装置1は、コントローラ11が、被測定溶液の電気伝導率と、被測定溶液中の溶質の濃度との関係を用いて、被測定溶液の濃度を自動的に求めることができるようになっている。
【0082】
即ち、本実施例では、ユーザが所望する任意の測定系における電気伝導率−濃度変換データテーブル(測定用データテーブル)を、第2の記憶手段としてのRAM13に記憶させ得るようになっている。
【0083】
電気伝導率−濃度変換データテーブルは、実施例1におけるpH−温度特性データテーブル及び実施例2における温度係数−温度特性データテーブルと同様に、PC等の外部機器において作成して、通常は、一旦その外部機器の有する記憶手段に記憶される。別法として、温度係数−温度特性データテーブルは、PC等の外部機器において、ネットワークを介して他の機器からダウンロードすることができる。
【0084】
そして、この電気伝導率−濃度換算データテーブルは、実施例1におけるpH−温度特性データテーブル及び実施例2における温度係数−温度特性データテーブルと同様にして、USBメモリ2及び/又はLANケーブル15を介して、第1又は第2のインターフェース14、15によって測定装置1に取り込み、RAM13に記憶させることができる。
【0085】
又、このRAM13に記憶された電気伝導率−濃度データテーブルは、実施例1におけるpH−温度特性データテーブル及び実施例2における温度係数−温度特性データテーブルと同様にして、USBメモリ2及び/又はLANケーブル15を介して、別の測定装置1やPC等の外部機器に移植することができる。
【0086】
ここで、ユーザが所望する任意の測定系における電気伝導率−濃度換算データテーブルは、所望の測定系の溶質の濃度を異ならせた標準濃度系列を調製し、電気伝導率と濃度との関係を調べることで、予め求めることができる。例えば、基準温度を25℃とした場合の電気伝導率と濃度との関係を求めておく。このようにして測定した電気伝導率と濃度との関係を、実施例1におけるpH−温度特性データテーブル及び実施例2における温度係数−温度特性データテーブルの場合と同様にして外部機器としてのPC等によって入力し、保存することができる。
【0087】
RAM13に記憶された電気伝導率−濃度換算データテーブルを用いて所望の測定系の被測定溶液の濃度を測定する場合には、被測定溶液の電気伝導率に応じて電極24a、24bが出力する信号を検出し、又被測定溶液の温度に応じて温度センサ23が出力する信号を検出する。コントローラ11は、先ず、上記式1に従って基準温度における被測定溶液の電気伝導率を求める。この時、一般に、温度係数αはROM12に記憶されている固定値を用いる。次いで、コントローラ11は、RAM13に記憶されている電気伝導率−濃度変換テーブルから、測定された電気伝導率に対応する濃度を取り出し、電気伝導率の測定値をこの濃度に変換する。そして、コントローラ11は、求めた濃度を、例えば本体10の表示部17で表示させる信号を出力する。即ち、コントローラ11は、電気伝導率測定電極20の出力した信号に対応する濃度値をRAM13から取り出して、電気伝導率の測定値を濃度の測定値に換算する。
【0088】
以上、本実施例のように測定装置1が電気伝導率測定装置であり、所望の電気伝導率−濃度変換テーブルを設定したい場合にも、実施例1及び2と同様の効果を得ることができる。
【0089】
上記実施例では本発明を具体的な実施態様に則して説明したが、本発明は上述の実施態様に限定されるものではなく、必要に応じて種々に変形及び変更できるものである。
【0090】
例えば、上記実施例では、取り外し可能な記憶手段はUSBメモリ2であるものとして説明したが、本発明は斯かる態様に何ら限定されるものではない。例えば、メモリーカード(フラッシュメモリ)、フレキシブルディスク、取り外し可能なハードディスクなどのその他の任意の取り外し可能な記憶手段を利用することができる。読み取り手段/書き込み手段としてのインターフェース部は、それぞれの態様の記憶手段に適合するように構成すればよい。
【0091】
又、上記実施例では、情報通信ケーブルは、測定装置1とPC4とに直接接続されたLANケーブルであるものとして説明したが、本発明は斯かる態様に何ら限定されるものではない。例えば、USBケーブル等のその他の任意の情報通信ケーブルを利用することができる。又、上記実施例では通信手段は有線にて接続するものであったが、無線にて接続するものであってもよい。更に、情報通信ケーブルは、測定装置1とPC4とを直接接続することに限定されるものではなく、LANに接続された複数のPC4に接続可能とされていたり、別の単一又は複数の測定装置1に接続可能とされていたりしてよい。これにより、複数のPC4から特定の測定装置1へのデータテーブルの転送、特定の測定装置1から複数のPC4へのデータテーブルの転送、特定の測定装置1から別の単一又は複数の測定装置1へのデータテーブルの転送を可能とすることができる。測定装置1と別の測定装置1とを直接通信可能に接続してもよい。
【0092】
又、上記実施例では、測定装置1は、第1、第2のインターフェース部14、15の両方を備えていたが、これらのいずれか一方が設けられていてもよい。又、測定装置1は、外部機器から当該測定装置1内へのデータテーブルの取り込み、及び、当該測定装置1から外部機器へのデータテーブルの出力のうちの少なくとも一方を行えるようになっていてよい。
【0093】
又、RAM13に複数種類のデータテーブルを記憶させ、例えば測定装置1の操作部18に設けられたキーなどを用いて選択して用いるようにしてもよい。
【0094】
更に、上記実施例では、測定装置1の測定結果は、本体10に設けられた表示部で表示するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、測定結果は、本体10に接続されたプリンタによって印字して出力することができる。又、測定結果は、例えば、本体10と通信可能に接続されたPC等の外部機器に送信して、この外部機器の表示部で表示したり、この外部機器に接続されたプリンタによって印字して出力したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係る測定装置の一実施例を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明に係るデータテーブル設定方法の一実施例を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係るデータテーブル設定方法の他の実施例を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る測定装置の他の実施例の概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0096】
1 測定装置(pH測定装置,電気伝導率測定装置)
2 USBメモリ(取り外し可能な記憶手段,情報伝達媒体)
3 LANケーブル(通信手段,情報伝達媒体)
4 パーソナルコンピュータ(外部機器)
10 本体
12 ROM(第1の記憶手段)
13 RAM(第2の記憶手段)
14 第1のインターフェース部(読み取り/書き込み手段)
15 第2のインターフェース部(受信/送信手段)
20 測定部(pH複合電極,電気伝導率セル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液のpH値に応じた信号を出力するpH測定電極と、
溶液の温度に応じた信号を出力する温度検知手段と、
前記pH測定電極及び前記温度検知手段が接続された本体と、
前記本体内に設けられ、標準液のpHと温度との関係を示すpH−温度特性データテーブルを記憶する記憶手段と、
前記本体内に設けられ、前記標準液の温度に応じて前記温度検知手段が出力した信号に対応するpH値を前記記憶手段から取り出し、そのpH値を用いて校正を行う信号処理手段と、
前記本体内に設けられた、前記記憶手段に記憶する前記pH−温度特性データテーブルを前記本体の外部の情報伝達媒体から取り込む取り込み手段、及び、前記記憶手段に記憶された前記pH−温度特性データテーブルを前記本体の外部の情報伝達媒体に出力する出力手段のうちの少なくとも1つと、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
溶液の電気伝導率に応じた信号を出力する電気伝導率測定電極と、
溶液の温度に応じた信号を出力する温度検知手段と、
前記電気伝導率測定電極及び前記温度検知手段が接続された本体と、
前記本体内に設けられ、電気伝導率の温度依存性を表す温度係数と温度との関係を示す温度係数−温度特性データテーブルを記憶する記憶手段と、
前記本体内に設けられ、前記温度検知手段が出力した信号に対応する温度係数値を前記記憶手段から取り出し、その温度係数値を用いて電気伝導率の測定値の温度補償を行う信号処理手段と、
前記本体に設けられた、前記記憶手段に記憶する前記温度係数−温度特性データテーブルを前記本体の外部の情報伝達媒体から取り込む取り込み手段、及び、前記記憶手段に記憶された前記温度係数−温度特性データテーブルを前記本体の外部の情報伝達媒体に出力する出力手段のうちの少なくとも1つと、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項3】
溶液の電気伝導率に応じた信号を出力する電気伝導率測定電極と、
前記電気伝導率測定電極が接続された本体と、
前記本体内に設けられ、電気伝導率と濃度との関係を示す電気伝導率−濃度換算データテーブルを記憶する記憶手段と、
前記本体内に設けられ、前記電気伝導率測定電極の出力した信号に対応する濃度値を前記記憶手段から取り出して、電気伝導率の測定値を濃度の測定値に換算する信号処理手段と、
前記本体内に設けられた、前記記憶手段に記憶する前記電気伝導率−濃度換算データテーブルを前記本体の外部の情報伝達媒体から取り込む取り込み手段、及び、前記記憶手段に記憶された前記電気伝導率−濃度換算データテーブルを前記本体の外部の情報伝達媒体に出力する出力手段のうちの少なくとも1つと、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項4】
前記情報伝達媒体は、前記本体に取り外し可能に接続される記憶手段であり、前記取り込み手段は、該取り外し可能な記憶手段から情報を読み取る読み取り手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記情報伝達媒体は、前記本体の外部の機器と前記本体とを通信可能に接続する通信手段であり、前記取り込み手段は、該通信手段を通して送信された情報を受信する受信手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記情報伝達媒体は、前記本体に取り外し可能に接続される記憶手段であり、前記出力手段は、該取り外し可能な記憶手段に情報を書き込む書き込み手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記情報伝達媒体は、前記本体の外部の機器と前記本体とを通信可能に接続する通信手段であり、前記出力手段は、該通信手段を通して前記機器に情報を送信する送信手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の測定装置。
【請求項8】
測定装置で使用する、標準液のpHと温度との関係を示すpH−温度特性データテーブル、電気伝導率の温度依存性を表す温度係数と温度との関係を示す温度係数−温度特性データテーブル、又は電気伝導率と濃度との関係を示す電気伝導率−濃度換算データテーブルであるデータテーブルを設定する方法であって、
前記測定装置の外部の機器を用いて前記データテーブルを入力する段階と、
該入力されたデータテーブルを情報伝達媒体を介して伝達する段階と、
該伝達されたデータテーブルを前記測定装置内に取り込む段階と、
該取り込まれたデータテーブルを前記測定装置内に設けられた記憶手段に記憶させる段階と、
を有することを特徴とするデータテーブル設定方法。
【請求項9】
前記伝達する段階は、前記入力されたデータテーブルを、前記機器内に設けられた書き込み手段によって前記機器から取り外し可能な記憶手段に記憶させることを含み、前記取り込む段階は、前記機器から取り外して前記測定装置に接続された前記取り外し可能な記憶手段に記憶されたデータテーブルを、前記測定装置内に設けられた読み取り手段によって読み取ることを含むことを特徴とする請求項8に記載のデータテーブル設定方法。
【請求項10】
前記伝達する段階は、前記入力されたデータテーブルを、前記機器内に設けられた送信手段によって、前記機器と前記測定装置とを通信可能に接続する通信手段を通して送信することを含み、前記取り込む段階は、前記通信手段を通して送信されたデータテーブルを、前記測定装置内に設けられた受信手段によって受信することを含むことを特徴とする請求項8に記載のデータテーブル設定方法。
【請求項11】
前記機器は、パーソナルコンピュータであることを特徴とする請求項8〜10のいずれかの項に記載のデータテーブル設定方法。
【請求項12】
測定装置で使用する、標準液のpHと温度との関係を示すpH−温度特性データテーブル、電気伝導率の温度依存性を表す温度係数と温度との関係を示す温度係数−温度特性データテーブル、又は電気伝導率と濃度との関係を示す電気伝導率−濃度換算データテーブルであるデータテーブルを設定する方法であって、
前記データテーブルを前記測定装置内に設けられた記憶手段に記憶させる段階と、
該記憶されたデータテーブルを情報伝達媒体を介して伝達する段階と、
該伝達されたデータテーブルを前記測定装置の外部の機器内に取り込む段階と、
該取り込まれたデータテーブルを前記機器内に設けられた記憶手段に記憶させる段階と、
を有することを特徴とするデータテーブル設定方法。
【請求項13】
前記伝達する段階は、前記測定装置内の記憶手段に記憶されたデータテーブルを、前記測定装置内に設けられた書き込み手段によって前記測定装置から取り外し可能な記憶手段に記憶させることを含み、前記取り込む段階は、前記測定装置から取り外して前記機器に接続された前記取り外し可能な記憶手段に記憶されたデータテーブルを、前記機器内に設けられた読み取り手段によって読み取ることを含むことを特徴とする請求項12に記載のデータテーブル設定方法。
【請求項14】
前記伝達する段階は、前記測定装置内の記憶手段に記憶されたデータテーブルを、前記測定装置内に設けられた送信手段によって、前記測定装置と前記機器とを通信可能に接続する通信手段を通して送信することを含み、前記取り込む段階は、前記通信手段を通して送信されたデータテーブルを、前記機器内に設けられた受信手段によって受信することを含むことを特徴とする請求項12に記載のデータテーブル設定方法。
【請求項15】
前記機器は、前記測定装置とは別の第2の測定装置又はパーソナルコンピュータであることを特徴とする請求項12〜14のいずれかの項に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−190969(P2008−190969A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24926(P2007−24926)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】