説明

測定装置及びプラズマ処理装置

【課題】波長分解能を上げ、測定可能な被検体の範囲を広げた測定装置とプラズマ処理装置の提供。
【解決手段】厚さDのウエハWの表面を反射した光とウエハWの裏面を反射した光とを入射光として分光する回折格子104と、回折格子104により分光された光を受光し、受光した光のパワーを検出するフォトダイオードをアレイ状に複数設けたフォトダイオードアレイ108と、フォトダイオードアレイ108に取り付けられ、入力された電圧を力に変換する圧電素子200と、を備え、フォトダイオードアレイ108は、圧電素子200により変換された力によって前記アレイ方向の各フォトダイオードの幅dに対してd/m(mは2以上の整数)の変位まで移動したとき、前記受光した光のパワーを検出する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置及びプラズマ処理装置に関する。特に、被検体を光学的に測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウエハ(以下、ウエハと称呼する。)にエッチングや成膜等を施す場合、ウエハの温度制御は、ウエハの成膜レートやエッチングレートに関与し、ウエハに形成される膜の性質やホールの形状等に影響を与える。よって、ウエハの温度制御の精度を高めることは、ウエハの加工精度を高め、歩留まりを良好にし、生産性を向上させるために極めて重要である。
【0003】
このため、従来から、ウエハ裏面の温度を測定する蛍光式温度計や抵抗温度計等を用いたウエハの温度測定方法が提案されている。特許文献1には、光源と、光源からの光を測定光と参照光とに分ける手段と、分けられた参照光を反射させるとともに前記反射した参照光の光路長を変化させる手段と、ウエハに測定光を照射させ、ウエハを反射した測定光と前記参照光との干渉状態を検出する光検出器とを有し、測定光及び参照光の干渉状態からウエハの温度を測定する装置が開示されている。
【0004】
一方、CCD(Charge Coupled Device)アレイやフォトダイオードアレイを検出器に用いた分光器を用いれば、アレイ状に並んだ光検出素子によって瞬時に分光データを取得することができる。分光データは、分光器に入射された光の特性を示すから、これを利用してウエハの温度を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−199526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、CCDアレイやフォトダイオードアレイを用いた分光器では、素子数により波長分解能又は波長軸のサンプリング数が決まり、素子数以上に波長分解能を上げることは物理的に無理であった。また、波長分解能は、可視領域で3648個、赤外領域で512個〜1024個と限られ、それ以上に波長分解能を上げることはできなかった。このため、特に、赤外光を用いると、可視光に比べて高分解の分光ができなかった。
【0007】
一方、波長分解能と測定可能な被検体の厚さとには相関関係があり、波長分解能が低いほど、測定可能な被検体の厚さが限られてしまう。その結果、現状では、通常のCCDアレイやフォトダイオードアレイで測定可能な被検体の厚さはかなり薄いものに限られていた。例えば、プラズマ処理装置では、ウエハの厚さ程度なら測定できるが、フォーカスリング等、ある程度厚みのある部材は測定できなかった。
【0008】
上記課題に対して、本発明の目的とするところは、波長分解能を上げ、測定可能な被検体の範囲を広げることが可能な、測定装置及びプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、厚さDの被検体の表面を反射した光と前記被検体の裏面を反射した光とを入射光として分光する波長分散素子と、前記波長分散素子により分光された光を受光し、受光した光のパワーを検出する光検出素子をアレイ状に複数設けた検出器と、前記検出器に取り付けられ、入力された電圧を力に変換する圧電素子と、を備え、前記検出器は、前記圧電素子により変換された力によって前記アレイ方向の各光検出素子の幅dに対してd/m(mは2以上の整数)変位したとき、前記受光した光のパワーを検出する、ことを特徴とする測定装置が提供される。
【0010】
前記検出器は、前記検出器の変位がdより小さい場合であって、前記変位が0に等しいとき、及びd/m(mは2以上の整数)だけ変位する毎に、前記受光した光のパワーを検出してもよい。
【0011】
前記光検出素子により検出された光のパワーの周波数解析に基づき、前記被検体の温度を測定する測定部を更に備えてもよい。
【0012】
前記圧電素子は、前記アレイ状に設けられた複数の光検出素子の端部に取り付けられていてもよい。
【0013】
前記検出器は、CCDアレイ又はフォトダイオードアレイであってもよい。
【0014】
前記測定装置は、ツェルニーターナー型の分光器であってもよい。
【0015】
前記測定部は、前記被検体の厚さが次の式で表される最大値Xmax以内の場合、前記被検体の温度を測定可能である。
【数1】


ただし、λは光源の中心波長、naveは被検体の屈折率、Δwは測定装置の波長スパン、Nは光検出素子の個数(サンプリング数)である。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、内部にて被処理体にプラズマ処理を施すチャンバと、前記チャンバ内にて被処理体を載置するサセプタと、前記サセプタに載置された被処理体の温度を測定する測定装置と、を備え、前記測定装置は、厚さDの被検体の表面を反射した光と前記被検体の裏面を反射した光とを入射光として分光する波長分散素子と、前記波長分散素子により分光された光を受光し、受光した光のパワーを検出する光検出素子をアレイ状に複数設けた検出器と、前記検出器に取り付けられ、入力された電圧を力に変換する圧電素子と、を備え、前記検出器は、前記圧電素子により変換された力によって前記アレイ方向の各光検出素子の幅dに対してd/m(mは2以上の整数)変位したとき、前記受光した光のパワーを検出する、ことを特徴とするプラズマ処理装置が提供される。
【0017】
前記光検出素子により検出された光のパワーの周波数解析に基づき、前記被検体の温度を測定する測定部を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、波長分解能を上げることが可能な、測定装置及びプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る測定システムの全体構成図である。
【図2】一実施形態に係る測定装置の概略構成図である。
【図3】一実施形態に係るフォトダイオードアレイの変位を説明するための図である。
【図4】一実施形態に係る測定装置による温度測定方法を説明するための図である。
【図5】一実施形態に係る測定装置を組み込んだプラズマ処理装置の縦断面図である。
【図6】比較例に係る可動ミラーを用いた測定システムである。
【図7】比較例に係る干渉波形の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
(はじめに)
はじめに、後述する本実施形態に係る測定システムとの比較例として、可動ミラーを用いた測定システムについて、図6を参照しながら説明する。比較例に係る測定システム99では、タイムドメインに着目した温度測定方法を提供する。
【0022】
まず、光源92から出力された光は、スプリッタ94にて測定光Lsと参照光Lrとに分けられる。参照光Lrは、可動ミラー96にて反射する。測定光Lsは、ウエハWに照射され、ウエハWにて反射し、更にスプリッタ94にて反射する。フォトダイオード90(フォトディテクタ)は、ウエハWを反射した測定光Lsと可動ミラー96を反射した参照光Lrを入射光として受光する。可動ミラー96は、上下に可動させながら前記反射する参照光Lrの光路長を変化させる。スプリッタ94から可動ミラー96までの距離と、スプリッタ94からウエハWまでの距離が等しくなると干渉が起こる。可動ミラー96を可動させ、移動量に対してフォトダイオード90で得られる光強度変化をモニターする。図7は、モニター結果として、測定光Lsの長さに対するフォトダイオード90(フォトディテクタ)の出力を示す。図7では、nD毎に干渉波形が得られることが示されている。ここでは、可動ミラー96を移動させ、参照光Lrの光路長を変化させることにより、ウエハWの表面及び裏面で反射した測定光Lsと参照光Lrが干渉する。このようにして、測定光Lsと参照光Lrの光路長とが一致した場所で強く干渉が起こり、それ以外の場所では干渉は実質的に低減されるという特質を利用して、ウエハWの表面での干渉と裏面での干渉の間隔nDを検出し、検出結果からウエハWの温度を測定する。
【0023】
しかしながら、上記比較例では、可動ミラー96は、可動による振動を小さく抑えるためにゆっくりとしか動かせなかった。この結果、測定時間内のサンプリング数が少なくなり、計測のインターバルが長くなるという問題があった。更に、この測定装置では、光路長を10−1mmのオーダーで合わせる必要があり、そのためにシステムが大きくなるという問題もあった。
【0024】
これに対して、本実施形態に係る測定システムは、図1に示したように、可動ミラーが存在しない。よって、可動ミラーの振動に関する問題が生じない。また、図1の下側に拡大図で示したように、本実施形態に係る測定システムは、ウエハWの表面を反射する光L1と裏面を反射する光L2との干渉を測定していて、比較例のような光路長の干渉の測定ではない。よって、本実施形態にかかる測定装置では、可動ミラーによる光路長のずれが生じないため、温度測定精度が低くなるという問題も生じない。また、これにより測定装置をコンパクトに作製でき、製造コストを低く抑えることができる。
【0025】
一方、本実施形態に係る測定装置では、アレイ状の検出器を持つ分光器が必要である。例えば、CCDアレイやフォトダイオードアレイを検出器に用いた分光器を用いれば、アレイ状に並んだ光検出素子により瞬時に分光データを取得することができる。
【0026】
しかしながら、CCDアレイやフォトダイオードアレイを用いた分光器では、光検出素子の数により波長分解能又は波長軸のサンプリング数が決まり、素子数以上に波長分解能を上げることは物理的に無理であった。
【0027】
一方、波長分解能と測定可能な被検体の厚さとには相関関係があり、波長分解能が低いほど、測定可能な被検体の厚さが限られてしまう。その結果、現状では、通常のCCDアレイやフォトダイオードアレイで測定可能な被検体の厚さはかなり薄いものに限られていた。例えば、プラズマ処理装置では、ウエハの厚さ程度なら測定できるが、フォーカスリング等、ある程度厚みのある部材は測定できなかった。
【0028】
[測定システムの構成]
これに対して、本実施形態に係る測定システムでは、アレイ状の検出器の波長分解能を上げ、ある程度厚みのある部材の測定を可能とする。以下に、本実施形態に係る測定システム及び測定システム内に設けられた測定装置について説明する。
【0029】
本実施形態に係る測定システムでは、周波数ドメインに着目した温度測定方法を提供する。図1は、本実施形態に係る測定システム10の全体構成を示し、図2は本実施形態に係る測定装置150の構成を示す。
【0030】
測定システム10は、光源105、ハーフミラー110及び測定装置150を有している。測定装置150は、分光器100及び制御器120を有する。ここでは、測定装置150は、被検体の温度を測定する非接触温度計として使用されるが、用途はこれに限らず、測定された光の特性に基づき被検体の状態を測定するために用いることができる。
【0031】
光源105から出力された光は、ハーフミラー110を透過して被検体としてのウエハWに照射され、ウエハWを反射する。反射光には、ウエハWの表面を反射した反射光L1と、ウエハWの裏面を反射した反射光L2とがある。反射光L1と反射光L2とは、ウエハWの厚さDの往復の長さ2Dだけずれている。反射光L1、L2は、ハーフミラー110を反射して分光器100に入射される。
【0032】
分光器100は、図2に示したように、ツェルニーターナー型の分光器であり、波長分散素子を用いて測定光を波長毎に分光し、任意の波長幅に存在する光のパワーを求め、求められた光のパワーから測定光の特性を測定する機能を有する。
【0033】
分光器100は、入力スリット101、ミラー102、回折格子104、ミラー106及びフォトダイオードアレイ108を有している。ミラー102及びミラー106は、入射光を所望の方向に反射するように設置されている。ミラー106で反射された光は、フォトダイオードアレイ108に入射する。
【0034】
入力スリット101から入射された光は、凹面状のミラー102を反射し、回折格子104に照射される。回折格子104は、厚さDのウエハWの表面を反射した光とウエハWの裏面を反射した光とを入射光として分光する。反射光または回折光のうち、特定波長の光は平面状のミラー106により反射されてフォトダイオードアレイ108に入光する。フォトダイオードアレイ108は、その光のパワーを検出する。
【0035】
回折格子104は、厚さDのウエハWの表面を反射した光とウエハWの裏面を反射した光とを入射光として分光する波長分散素子の一例である。波長分散素子の他の例としては、プリズムが挙げられる。
【0036】
フォトダイオードアレイ108は、分光された光を受光し、受光した光のパワーを検出する光検出素子(フォトダイオード)をアレイ状に複数設けた検出器の一例である。フォトダイオードアレイ108としては、例えば、アレイ状のSiフォトダイオード、InGaAsフォトダイオード、Geフォトダイオードなどを用いたPD(Photo Detector)により構成される。図3のフォトダイオードアレイ108では、12個の短冊状のフォトダイオード108aがアレイ方向に配列されているが、点状のフォトダイオード108aがアレイ方向に複数個配列されていてもよい。検出器の他の例としては、CCDアレイが挙げられるが、これらに限らず、アレイ状の光検出素子を有する検出器であればいずれを用いることもできる。
【0037】
フォトダイオードアレイ108の各光検出素子は、受光した光のパワーに応じた電流(光電流)を発生し、この光電流を分光器の検出結果として出力する。各素子には、予め特定の波長が割り付けられている。各素子に割り付ける特定の波長は、光が回折格子104によって波長毎に分光されて、フォトダイオードアレイ108にて収束する位置と対応している。よって、各素子は、各素子に割り付けられた特定の波長の光のパワーに応じた電流(光電流)を発生する。
【0038】
フォトダイオードアレイ108の端部には、圧電素子200が取り付けられている。圧電素子200は、圧電体を2枚の電極で挟んだ素子であり、電極に所望の電圧を印加することにより、その電圧を力に変換する機能を有する。圧電素子200は、所定のタイミングに所定量だけフォトダイオードアレイ108を振動させる。
【0039】
制御器120は、分光器100の各部を駆動するとともに、分光器100により検出された各波長の光のパワーに基づき、被検体の温度を測定する。制御器120は、同期部121、ドライバ122、駆動部124、測定部126及び記憶部128を有している。同期部121は、同期信号を出力する。ドライバ122は、同期信号に従って圧電素子200に所望の電圧を印加する。
【0040】
図3は、圧電素子200に所望の電圧を印加したときのフォトダイオードアレイ108の状態を模式的に示した図である。フォトダイオード108aがアレイ状に並んだ方向(図3では紙面の左右方向)をアレイ方向とする。ここでは、フォトダイオード108aのアレイ方向の幅をdで示す。圧電素子200は、加えられた電圧を力に変換し、フォトダイオードアレイ108をアレイ方向に動かす。例えば、図3では、フォトダイオードアレイ108が、圧電素子200により加えられた力によって、変位0の状態からアレイ方向にd/2だけ変位した状態まで動いたことを示している。
【0041】
駆動部124は、同期部121から出力された同期信号に従って、フォトダイオードアレイ108の接続を各フォトダイオード108aに順番に切り替え、各フォトダイオード108aにて検出された光パワーの検出信号(光電流)を所望の電気信号に変換して出力する。
【0042】
測定部126は、検出された光のパワーに基づき、入射光の特性を測定する。本実施形態では、測定部126は、検出された光のパワーのFFT(FFT:Fast Fourier Transform)方式の周波数解析に基づき、被検体であるウエハWの温度を測定する。計測結果は、記憶部128に記憶される。以下に具体的な温度測定方法を説明する。
【0043】
フォトダイオードアレイ108による検出結果は、図4(a)に示したように、光パワー(光強度)を波長λの関数としてプロットすることにより、光スペクトル(光のパワー)として得られる。
【0044】
図4(a)では、図3の上側のフォトダイオードアレイ108の位置(変位0)で、各素子にて検出された分光データと、図3の下側のフォトダイオードアレイ108の位置(変位d/2)で、各フォトダイオード108aにて検出された分光データとを簡略化して示した図である。
【0045】
図4(a)では、4個のフォトダイオード108aにて検出された光パワーのみが示されている。変位0では、4個のフォトダイオード108aは、波長λ、λ、λ、λの光のパワーを検出している。
【0046】
図3の下側のフォトダイオードアレイ108の位置(変位d/2)では、4個のフォトダイオード108aは、波長λ−Δλ/2、λ−Δλ/2、λ−Δλ/2、λ−Δλ/2の光のパワーを検出している。つまり、フォトダイオードアレイ108をd/2だけずらすと、N個の素子数のフォトダイオードアレイ508で2N個の分光データをサンプリングすることができることがわかる。これは、波長分解能が素子数の2倍になったことに等しくなる。
【0047】
波長分解能が2倍になった分光データをFFT方式で周波数解析すると、図4(b)に示したように、厚さDのウエハWの表面で反射した反射光L1と裏面で反射した反射光L2とのシリコン中の往復の光路長2Dの整数倍n(n=1以上の整数)の位置で、光の振幅の光スペクトラムが出力される。
【0048】
図4(c)に示したように、ウエハWの厚さDの整数倍nと温度Tsとの関係は予め算出されている。ここで、ウエハWが加熱されると熱膨張によりウエハWの厚さDは厚くなり、屈折率が大きくなる。よって、温度が上がるとシリコン中の片道の光路長Dの整数倍nの長さnDがずれる。この値nDのずれ量Cから温度Tを検出する。このようにして、分光データの周波数解析により求められた各光スペクトラムからウエハWの温度を測定することができる。
【0049】
なお、駆動部124及び測定部126の機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)が記憶部128に格納されたプログラムに従って動作することによって実現されうる。このプログラムは、記憶媒体に格納して提供され、記憶部128に読み込まれるものであってもよく、また、図示しないネットワークからダウンロードされて記憶部128に格納されるものであってもよい。また、上記各部の機能を実現するために、CPUに代えてDSP(Digital Signal Processor)が用いられてもよい。記憶部128は、例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどを用いるRAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)として実現されうる。また、駆動部124及び測定部126の機能は、ソフトウエアを用いて動作することにより実現されてもよく、ハードウエアを用いて動作することにより実現されてもよい。
【0050】
[測定可能な厚さ]
以上に説明した測定装置150を用いて測定できる被検体の厚さについて説明する。FFT方式の周波数解析で図れる被検体の厚さの最大値Xmaxは次のようにして算出することができる。
【0051】
まず、FFTにおける時間と周波数の関係により、次式が成り立つ。
Δτ=2π/Δw
【0052】
ここで、wを波長λで表すと、
w=2πv=2πc/λ
Δw=−2πc(Δλ/λ
【0053】
屈折率naveのサンプル中を時間Δτで移動する距離Δx’は、
Δx’=(c/nave)×Δτ=λ/(naveΔλ)
【0054】
サンプル中の裏面を反射する光がサンプル中を移動する距離は往復であることを考慮して、Δx’=2Δxとする。
【0055】
以上より、FFT後の間隔Δxは、
Δx=λ/(2naveΔλ)
【0056】
また、ナイキストの定理より、被検体の厚さの最大値Xmaxは次のようになる。
max=(N/2)×Δx=(λ/4naveΔλ)×N
【0057】
次に、実測結果から、アレイ状の検知器の測定可能な波長域が有限な場合についてのXmax及びΔxがどのような値を取るかについて考える。Gaussianの計算システムを用いた場合、Gaussianが1/eになる幅を基準に取る。Gaussianの裾まできれいに計測される場合、例えば、光源スペクトルのGaussianの1/e半幅はΔλ/√(ln2)となる。ここで、3×1/e幅を検知する幅とする(6×1/e半幅)。
【0058】
検知する波長域がΔw、サンプリング数がNである場合、波長分解能はΔw/Nで表される。
Δw=6×1/e=6σ’半幅のときに、Xmaxの式を満たすとすれば、次の式が成り立つ。
Δw/N=6σ’/N’
N’=6σN/Δw
【0059】
N’を上記Xmaxの式に代入すると、
【数2】


【数3】


【数4】


【数5】

【0060】
【数6】


ただし、λは光源の中心波長、naveは被検体の屈折率、Δwは測定装置の波長スパン、Nは光検出素子の個数(サンプリング数)である。

【数7】

【0061】
以上により導き出されたXmaxの式のうち、Δw/Nで表される波長分解能から、波長分解能が高いと厚い被検体を測定可能となることがわかる。より詳しくは、次のことが考察される。
1.計測スパンΔwが大きいほどΔxを小さくとることができるため、ピーク位置精度を向上させることができる。
2.計測スパンΔw内のサンプリング数Nが大きいほど厚いサンプルを測定することができる。
【0062】
しかし、CCDアレイやフォトダイオードアレイの素子数は、1300nm〜1500nmの帯域で1024が限界である。よって、Δwを大きく取りすぎると、素子数が少ないため波長分解能が悪くなり、FFT解析後の信号にノイズが多く購入する結果となる。
【0063】
したがって、上記1、2を満たすためには、光スペクトル解析を使用する、又は、波長スキャン方式を使用することが好ましい。FFT方式の周波数解析では、必ずしも光源が低コヒーレンスである必要はない。
【0064】
以上に説明したように、波長分解能と測定可能な被検体の厚さとには相関関係があり、波長分解能が低いほど、測定可能な被検体の厚さが限られてしまう。その結果、いままでは、通常のCCDアレイやフォトダイオードアレイで測定可能な被検体の厚さはかなり薄いものに限られていた。例えば、プラズマ処理装置では、ウエハの厚さ程度なら測定できるが、フォーカスリング等、ある程度厚みのある部材は測定できなかった。
【0065】
これに対して、本実施形態に係る測定装置150では、フォトダイオードアレイ108を変位させることにより、波長分解能を上げることができる。よって、本実施形態に係る測定装置150によれば、後述するプラズマ処理装置に設けられたウエハだけでなく、フォーカスリングや上部電極(シリコン電極)等、ある程度厚みのある部材を測定することができる。
【0066】
[測定システムを組み込んだプラズマ処理装置]
最後に、本実施形態に係る測定システム10を組み込んだプラズマ処理装置について、図5を参照しながらその一例を説明する。
【0067】
図5は、測定システム10を組み込んだプラズマ処理装置500の左縦断面図である。プラズマ処理装置500は、ウエハWを収容してプラズマにより処理するための真空チャンバ505を具備している。真空チャンバ505内には、ウエハWを載置するためのサセプタ510が設けられている。サセプタ510は、導電性材料から構成され、高周波電力が印加されるRFプレート510aと、RFプレート510a上に設けられ、ウエハWを吸着するための静電チャック機構510bとを具備しており、RFプレート510aの中央部には、図示しない高周波電源と電気的に接続された給電棒515が接続されている。
【0068】
サセプタ510の周囲には、サセプタ510の周囲を囲むように、環状に形成されたバッフル板520が設けられている。また、真空チャンバ505の底部には、ベースプレート525が設けられており、RFプレート510aとベースプレート525との間には、空隙が形成されている。
【0069】
サセプタ510の上方には、サセプタ510と間隔を設けて対向するように対向電極530が設けられている。対向電極530は、シャワーヘッドによって構成されており、サセプタ510上に載置されたウエハWに対して、シャワー状に所定の処理ガスを供給するようになっている。対向電極530は、接地電位とされるか或いは高周波電力が印加されるようになっている。サセプタ510上のウエハWの周囲には、フォーカスリング535が設けられている。フォーカスリング535は、ウエハWのプラズマ処理の面内均一性を向上させる。
【0070】
サセプタ510には、4つの温度測定用窓540a〜540dが形成されている。温度測定用窓540a〜540dは、サセプタ510の上面と下面とを測定光が透過可能なように光学的に連通し、かつ、気密封止された構造となっている。
【0071】
本実施形態にかかるプラズマ処理装置500では、温度測定用窓540a〜540dのうち、サセプタ510の最も外周側の位置に設けられた温度測定用窓540dは、フォーカスリング535の温度を測定するためのものであり、他の温度測定用窓540a〜540cは、ウエハWの温度を測定するためのものである。
【0072】
温度測定用窓540a〜540dに対応して、ベースプレート525には、貫通孔545a〜545dが設けられており、これらの貫通孔には、測定システム10から測定光を導くための光ファイバ550a〜550dの出口部分に設けられたコリメータ555a〜555dが固定されている。
【0073】
光ファイバ550a〜550dは、測定システム10に接続されている。測定システム10は、光源105と、光源105からの光を透過又は反射するハーフミラー110と、ハーフミラー110を透過した光を、4本の光ファイバ550a〜550dにそれぞれ切り替えるためのマルチプレクサ109とを備えている。
【0074】
測定装置150は、分光器100及び制御器120を有している。分光器100は、4つの測定光をウエハW及びフォーカスリング535等の4つの測定ポイントに照射したときに、ウエハW及びフォーカスリング535の表面側及び裏面側をそれぞれ反射する反射光L1、L2の干渉を測定する。制御器120は、測定結果に基づき、ウエハWの温度及びフォーカスリング535の温度を測定する。前述したように、測定中、分光器100のフォトダイオードアレイ108は圧電素子200によりアレイ方向に変位している。これにより、本実施形態にかかる測定システム10によれば、素子数の2倍以上の波長分解能の分光データを得ることができる。この結果、ウエハWの温度だけでなく、比較的厚みのあるフォーカスリング535であっても、その温度を精度良く測定することができる。このようにして、本実施形態にかかる測定システム10を組み込むことにより、プラズマ処理装置500の内部パーツの温度を、比較的厚みのある部材であっても測定することができる。
【0075】
上記一実施形態及びその変形例において、各部の動作は互いに関連しており、互いの関連を考慮しながら、一連の動作及び一連の処理として置き換えることができる。これにより、測定装置の実施形態を、温度測定方法の実施形態とすることができる。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0077】
例えば、本発明に係るプラズマ処理装置は、上記実施形態に示したエッチング装置に限られず、成膜装置、マイクロ波プラズマ処理装置等のあらゆるプラズマ処理装置であってもよい。また、本発明に係る測定装置は、プラズマ処理装置だけでなく、内部に入熱のある装置に使用することができる。
【0078】
また、本発明に係る測定装置は、周波数領域光コヒーレンストモグラフィにて特に有用である。測定サンプルでの反射光を分光器にて分光する場合、波長軸のサンプリング数Nと分光器の波長スパンΔwで、測定厚さの限界が定まるので、サンプリング数が多いほうがより厚い検体を測定することができる。
【0079】
本発明に係るプラズマ処理装置は、上記実施形態に示した平行平板型のプラズマ処理装置に限られず、ICP(Inductively Coupled Plasma)プラズマ処理装置、マイクロ波プラズマ処理装置等いずれのプラズマ処理装置のガス系統にも使用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 測定システム
100 分光器
101 入力スリット
102,106 ミラー
104 回折格子
105 光源
108 フォトダイオードアレイ
108a フォトダイオード
109 マルチプレクサ
110 ハーフミラー
120 制御器
121 同期部
122 ドライバ
124 駆動部
126 計測部
128 記憶部
150 測定装置
540a〜540d 温度測定用窓
550a〜550d 光ファイバ
555a〜555d コリメータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さDの被検体の表面を反射した光と前記被検体の裏面を反射した光とを入射光として分光する波長分散素子と、
前記波長分散素子により分光された光を受光し、受光した光のパワーを検出する光検出素子をアレイ状に複数設けた検出器と、
前記検出器に取り付けられ、入力された電圧を力に変換する圧電素子と、を備え、
前記検出器は、前記圧電素子により変換された力によって前記アレイ方向の各光検出素子の幅dに対してd/m(mは2以上の整数)変位したとき、前記受光した光のパワーを検出する、
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記検出器は、前記検出器の変位がdより小さい場合であって、前記変位が0に等しいとき、及びd/m(mは2以上の整数)だけ変位する毎に、前記受光した光のパワーを検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記光検出素子により検出された光のパワーの周波数解析に基づき、前記被検体の温度を測定する測定部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記圧電素子は、前記アレイ状に設けられた複数の光検出素子の端部に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記検出器は、CCDアレイ又はフォトダイオードアレイである、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記測定装置は、ツェルニーターナー型の分光器である、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記測定部は、前記被検体の厚さが次の式で表される最大値Xmax以内の場合、前記被検体の温度を測定可能である、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の測定装置。
【数8】


ただし、λは光源の中心波長、naveは被検体の屈折率、Δwは測定装置の波長スパン、Nは光検出素子の個数(サンプリング数)
【請求項8】
内部にて被処理体にプラズマ処理を施すチャンバと、
前記チャンバ内にて被処理体を載置するサセプタと、
前記サセプタに載置された被処理体の温度を測定する測定装置と、を備え、
前記測定装置は、
厚さDの被検体の表面を反射した光と前記被検体の裏面を反射した光とを入射光として分光する波長分散素子と、
前記波長分散素子により分光された光を受光し、受光した光のパワーを検出する光検出素子をアレイ状に複数設けた検出器と、
前記検出器に取り付けられ、入力された電圧を力に変換する圧電素子と、を備え、
前記検出器は、前記圧電素子により変換された力によって前記アレイ方向の各光検出素子の幅dに対してd/m(mは2以上の整数)変位したとき、前記受光した光のパワーを検出する、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記光検出素子により検出された光のパワーの周波数解析に基づき、前記被検体の温度を測定する測定部を更に備える、
ことを特徴とする請求項8に記載のプラズマ処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−208050(P2012−208050A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74979(P2011−74979)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】