説明

測定装置及び測定方法

【課題】多点式の測定装置において、測定周期、並びに測定精度を向上させる。
【解決手段】測定装置100は、第1、第2の測定箇所から延設された第1、第2のパイプラインと、第1、第2の測定箇所の気中成分を測定する第1、第2、第3の測定器と、第1、第2の測定箇所の気中成分を、第1、第2のパイプラインを通じて順に第1の測定器に導入する第1の切替手段と、第1の切替手段と第1、第2の測定箇所との間に位置する第1、第2のパイプラインにそれぞれ接続された第1、第2の中継ラインと、第1の中継ラインに接続され、第1の測定箇所の気中成分を、第1の中継ラインを通じて、第2の測定器に導入する第2の切替手段と、第2の中継ラインに接続され、第2の測定箇所の気中成分を、第2の中継ラインを通じて、第3の測定器に導入する第3の切替手段と、を備える。これにより、多点式の測定装置において、測定周期、並びに測定精度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定装置及び測定方法に関し、特に気中の化学成分を連続に測定する、多点式の測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工場等に設置されているクリーンルームでは、気中に存在する化学成分が製品歩留まりに影響する。このため、クリーンルーム中の化学成分の充分な管理が必要とされる。また、いわゆる半導体技術ロードマップによれば、半導体製造技術の進歩に伴い、管理すべき化学成分の種類は増加し、それらの許容値は、益々低下する傾向にある。このため、近年では、クリーンルーム中の化学成分のより厳しい管理が必要となっている。
【0003】
当該管理は、製品の品質に悪影響を及ぼす前に、気中の化学成分を検知して、化学成分の維持システムにフィードバックをかける必要がある。そして、迅速にフィードバックを実施するには、気中に存在する化学成分を、リアルタイムで測定する必要がある。
【0004】
ここで、測定の対象となる気中の化学成分としては、例えば、アンモニア(NH3)、二酸化硫黄(SO2)、硫化水素(H2S)等が挙げられる。そして、このような化学成分は、発生場所、空調方式の違い、ケミカルフィルタ使用の有無等により、それぞれの状況によって濃度が異なる。
【0005】
このような状況の中、測定したい全ての場所に、測定器を配置することは、導入コスト、或いはメンテナンスコストの見地から困難である。そこで、最近では、クリーンルーム内のそれぞれの測定ポイントにまでサンプリングチューブを配置し、それぞれの測定ポイントからサンプリングチューブを通じて回収した雰囲気中の化学成分を、ポイント切替機によって、一組の測定器で測定する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】佐藤好、岩坪竜二、井川実、“クリーンルーム用雰囲気モニタ”、第21回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会論文、A07(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、気中の化学成分を測定する、一組の測定器においては、化学成分によって、それぞれの測定の応答時間が異なってしまう。
例えば、化学成分により、サンプリングチューブ、ポイント切替機等に吸着、或いは脱離する程度が異なるため、それぞれの測定器における化学成分の応答時間が数分から数10分にまでばらついてしまう。
【0007】
即ち、ある化学成分においては、極めて短時間で測定できるが、他の化学成分においては、測定時間が非常に長くなる場合がある。
このような状況の中、対象となる化学成分の全てを高精度で測定するには、ポイント切替周期を応答時間が最も長くなる測定器に合わせる必要がある。従って、ポイント切替機のポイント切替周期は、応答時間の長い測定器に律速されてしまう。このような状況では迅速な測定を目的にする、測定連続測定器としての意義が失われてしまう。
【0008】
また、測定の対象の化学成分の濃度は、極めて希薄(例えば、ppbレベル)であるために、例えば、測定器、或いはポイント切替機の内部に吸着し易い化学成分が測定中に再脱離をすると、測定全体のバックグラウンドに影響を与えてしまう。この場合においても、それぞれの測定ポイントの測定時間を長くすることで、その影響を抑制できるが、当該方法においても、測定時間を長くすることには変わりがなく、測定連続測定器としての意義が失われてしまう。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、気中の化学成分を連続に測定する、多点式の測定装置において、測定周期、並びに測定精度をより向上させた測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1の測定箇所及び第2の測定箇所からそれぞれ延設された第1のパイプライン及び第2のパイプラインと、前記第1、第2の測定箇所の気中成分を測定する第1の測定器、第2の測定器、及び第3の測定器と、前記第1、第2の測定箇所の前記気中成分を、前記第1、第2のパイプラインを通じて順に前記第1の測定器に導入する第1の切替手段と、前記第1の切替手段と前記第1、第2の測定箇所との間に位置する前記第1、第2のパイプラインにそれぞれ接続された第1の中継ライン及び第2の中継ラインと、前記第1の中継ラインに接続され、前記第1の測定箇所の気中成分を、前記第1の中継ラインを通じて、前記第2の測定器に導入する第2の切替手段と、前記第2の中継ラインに接続され、前記第2の測定箇所の気中成分を、前記第2の中継ラインを通じて、前記第3の測定器に導入する第3の切替手段と、を備えたことを特徴とする測定装置が提供される。
【0011】
また、第1の測定箇所の気中成分を第1のパイプラインを通じて引き込み、該気中成分の第1の測定器による測定を開始する工程と、前記第1の測定箇所の気中成分の測定中に、第2の測定箇所の気中成分を、第2のパイプラインと、前記第2のパイプラインに接続された中継ラインとを通じて引き込み、該気中成分の第2の測定器による測定を開始する工程と、前記第2の測定箇所の気中成分の前記第2の測定器による測定中に、前記第1の測定箇所の気中成分の測定を終了するとともに、前記第2の測定箇所の気中成分を前記第2のパイプラインを通じて引き込み、該気中成分の前記第1の測定器による測定を開始する工程と、を備えたことを特徴とする測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上記手段によれば、気中の化学成分を連続に測定する、多点式の測定装置において、測定周期、並びに測定精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本実施の形態に係る測定装置を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施の形態に係る測定装置の概要図である。
測定装置100にあっては、クリーンルーム等の被測定室10から、サンプリングチューブであるパイプライン11,12,13,14を引き出し、それぞれのパイプライン11,12,13,14の一方の端を、切替バルブ(ポイント切替バルブ)1,2,3,4に接続させている。また、被測定室10に接続された、パイプライン11,12,13,14の他方の端においては、それぞれ他方の端を、被測定室10内の異なる場所に配置している。これにより、被測定室10内の第1乃至第4の測定ポイント(測定箇所)における雰囲気を、パイプライン11,12,13,14によって回収することができる。
【0014】
また、測定装置100にあっては、5股に分岐されたパイプライン20が切替バルブ1,2,3,4に接続されている。ここで、パイプライン20中の4本のラインにおいては、それぞれ、切替バルブ1,2,3,4に接続され、残りの一本のラインは吸引ポンプ30に接続されている。また、当該吸引ポンプ30には、別途、排気用ライン31が備えられている。そして、当該吸引ポンプ30を作動させ、切替バルブ1,2,3,4の何れかを開状態にすることにより、被測定室10内の異なる場所における雰囲気を、パイプライン11,12,13,14の何れかのライン及びパイプライン20を通じて、排気用ライン31に排気することができる。
【0015】
また、測定装置100にあっては、パイプライン20に、別のパイプライン21,22,23の一方の端が中継され、パイプライン21,22,23の他方の端がそれぞれ、測定器41,42,43に接続されている。
【0016】
これらの測定器41,42,43には、その内部に吸引ポンプ(図示しない)が備えられ、パイプライン20中に存在するガスを、いわゆる差動排気によりそれぞれの測定器41,42,43に引き込むことができる。特に、本実施の形態においては、化学成分を測定(定量)する際の応答時間が比較的短い測定器が測定器41,42,43として配置されている。例えば、測定器41,42,43によって、各測定ポイントの酸化イオウ(SO2)、酸化窒素(NOx)等が測定される。
【0017】
また、測定装置100にあっては、パイプライン11に、パイプライン51の一方の端が中継され、パイプライン51の他方の端が切替バルブ5に接続されている。
また、パイプライン12に、パイプライン52の一方の端が中継され、パイプライン52の他方の端が切替バルブ7に接続されている。
【0018】
また、パイプライン13に、パイプライン53の一方の端が中継され、パイプライン53の他方の端が切替バルブ6に接続されている。
また、パイプライン14に、パイプライン54の一方の端が中継され、パイプライン54の他方の端が切替バルブ8に接続されている。
【0019】
また、測定装置100にあっては、3股に分岐されたパイプライン55,56が切替バルブ5,6,7,8に接続されている。ここで、パイプライン55中の2本のラインにおいては、それぞれ、切替バルブ5,6に接続され、残りの一本のラインにおいては、測定器44aに接続されている。また、パイプライン56中の2本のラインにおいては、それぞれ、切替バルブ7,8に接続され、残りの一本のラインにおいては、測定器44bに接続されている。
【0020】
これらの測定器44a,44bには、その内部に吸引ポンプ(図示しない)が備えられ、切替バルブ5,6,7,8を開状態にすることにより、パイプライン11,12,13,14中に存在するガスを、差動排気によりそれぞれの測定器44a,44bに引き込むことができる。特に、本実施の形態においては、化学成分を測定する際の応答時間が比較的長い測定器が測定器44a,44bとして配置されている。尚、測定器44aと測定器44bとは、同じ化学成分を測定する測定器であってもよい。例えば、測定器44a,44bによって、被測定室10内のアンモニア(NH3)を測定してもよい。
【0021】
このように、本実施の形態に係る測定装置100においては、被測定室10からパイプライン11,12,13,14を通じて導入された、雰囲気内の成分が切替バルブ1,2,3,4の切替えにより、測定器41,42,42により測定される。
【0022】
また、パイプライン11からパイプライン14に向かう方向において、奇数番目のパイプライン11,13に存在する成分については、測定器44aにより測定され、偶数番目のパイプライン12,14に存在する成分については、測定器44bにより測定される。
【0023】
即ち、本実施の形態に係る測定装置100においては、測定器44a,44bのそれぞれが複数のパイプラインに存在するガスを測定するという、分配構造を備えている。
尚、複数の切替バルブ1〜8を含む構成の切替器100aは、制御装置60により自動制御されている。
【0024】
また、測定装置100にあっては、測定器41,42,43,44a,44bにより測定された結果がモニタ61に自動的に表示される。
このように、測定装置100は、複数の測定箇所からパイプラインを延出し、それぞれの測定箇所の気中成分を上記パイプラインに設けられた切替バルブの切替により、一定時間毎に順に測定する測定装置である。そして、それぞれの測定箇所の気中成分を、パイプライン11,12,13,14を通じて順に測定器41,42,43に導入する切替手段と、前記切替手段と測定箇所との間に位置するパイプライン11,12,13,14のそれぞれに中継ラインを接続し、奇数番目に測定する測定箇所の気中成分を、パイプライン51,53を通じて、測定器44aに導入する切替手段と、偶数番目に測定する測定箇所の気中成分を、パイプライン52,54を通じて、測定器44bに導入する切替手段と、を備えている。
【0025】
また、測定器44aに気中成分を導入する時間内に、測定器44bに気中成分を導入する手段、または測定器44bに気中成分を導入する時間内に、測定器44aに気中成分を導入する手段を備えている。
【0026】
即ち、測定装置100にあっては、何れかの測定箇所、及び前記測定箇所とは異なる別の測定箇所からそれぞれ延設された第1のパイプライン及び第2のパイプラインと、それぞれの測定箇所の気中成分を測定する第1の測定器、第2の測定器、及び第3の測定器と、それぞれの測定箇所の気中成分を、第1、第2のパイプラインを通じて順に第1の測定器に導入する第1の切替手段と、第1の切替手段とそれぞれの測定箇所との間に位置する第1、第2のパイプラインにそれぞれ接続された第1の中継ライン及び第2の中継ラインと、第1の中継ラインに接続され、前記何れかの測定箇所の気中成分を、第1の中継ラインを通じて、第2の測定器に導入する第2の切替手段と、第2の中継ラインに接続され、前記別の測定箇所の気中成分を、第2の中継ラインを通じて、前記第3の測定器に導入する第3の切替手段と、を備えている。
【0027】
次に、測定装置100を用いた、気中の化学成分を連続に測定する、多点式の測定方法について説明する。
図2〜図6は多点式の測定方法を説明するための概要図である。尚、図2〜図6には、上記制御装置60並びにモニタ61は表示されていない。
【0028】
先ず、多点式の測定を実施する前に、予め、吸引ポンプ30、並びに測定器41,42,43,44a,44b内に取り付けられた吸引ポンプにより、パイプライン11〜14、パイプライン20〜23、並びにパイプライン51〜56の残留ガス等の予備排気を行う。これにより、パイプライン11〜14、パイプライン20〜23、並びにパイプライン51〜56のガスの成分比が被測定室10の各測定ポイントの成分比に略等しくなる。
【0029】
次いで、図2に示すように、切替バルブ1及び切替バルブ5をX時間(例えば、5分間)のみ開状態とし、パイプライン11内の化学成分を測定器41,42,43,44aにより測定する。これにより、パイプライン11によって回収された被測定室10の第1の測定ポイントの化学成分が測定される。そして、測定器41,42,43,44aによる測定結果を上記モニタ61に表示する。
【0030】
尚、この段階を期間1とする。
ところで、切替バルブ5は、切替バルブ1が開状態となる前のX時間前から、既に開状態となっており、測定器44aによる測定が当該X時間前から実施されている。但し、当該X時間前(後述する期間4)の測定器44aによる測定結果は、モニタ61に表示させない。
【0031】
何故なら、測定器44aは、上述したように、上記応答時間が比較的長い測定器である。従って、当該X時間前から切替バルブ1が開状態となる段階での測定器44aによる測定は、測定器44aによる測定開始直後での測定であり、真の測定結果を表示しないからである。
【0032】
但し、切替バルブ1が開状態となった時点では、測定器44aによる測定が、既にX時間を経過しているので、測定器44aによる測定は、真の測定結果を示している。
また、期間1の段階では、既に、切替バルブ7を開状態とし、測定器44bによるパイプライン12内の測定を開始させる。但し、期間1の段階での測定器44bによる測定結果は、モニタ61に表示しない。何故なら、測定器44bは、上記応答時間が比較的長い測定器であり、この段階での測定器44bによる測定は、測定器44bによる測定開始直後での測定であり、真の測定結果を表示しないからである。
【0033】
このように、期間1の段階で、予め測定器44bによる測定を開始させ、パイプライン12内の予備排気を充分に実施させておく。
次に、期間1に連続させて、図3に示すように、切替バルブ2及び切替バルブ7をX時間のみ開状態とし、パイプライン12内の化学成分を測定器41,42,43,44bにより測定する。これにより、パイプライン12によって回収された被測定室10の第2の測定ポイントの化学成分が測定される。そして、測定器41,42,43,44bによる測定結果を上記モニタ61に表示する。
【0034】
尚、この段階を期間2とする。
ところで、切替バルブ7は、切替バルブ2が開状態となる前のX時間前から、既に開状態となっており、測定器44bによる測定が当該X時間前から実施されている。但し、この段階(期間1)での測定器44bによる測定結果は、モニタ61に表示させない。
【0035】
何故なら、測定器44bは、上述したように、上記応答時間が比較的長い測定器である。従って、当該X時間前から切替バルブ2が開状態となる段階での測定器44bによる測定は、測定器44bによる測定開始直後での測定であり、真の測定結果を表示しないからである。
【0036】
但し、切替バルブ2が開状態となった時点では、測定器44bによる測定が、既にX時間を経過しているので、測定器44bによる測定は、真の測定結果を示している。
また、期間2の段階では、既に、切替バルブ6を開状態とし、測定器44aによるパイプライン13内の測定を開始させる。但し、期間2の段階での測定器44aによる測定結果は、モニタ61に表示しない。何故なら、測定器44aは、上記応答時間が比較的長い測定器であり、この段階での測定器44aによる測定は、測定器44aによる測定開始直後での測定であり、真の測定結果を表示しないからである。
【0037】
このように、期間2の段階で、予め測定器44aによる測定を開始させ、パイプライン13内の予備排気を充分に実施させておく。
次に、期間2に連続させて、図4に示すように、切替バルブ3及び切替バルブ6をX時間のみ開状態とし、パイプライン13内の化学成分を測定器41,42,43,44aにより測定する。これにより、パイプライン13によって回収された被測定室10の第3の測定ポイントの化学成分が測定される。そして、測定器41,42,43,44aによる測定結果を上記モニタ61に表示する。
【0038】
尚、この段階を期間3とする。
ところで、切替バルブ6は、切替バルブ3が開状態となる前のX時間前から、既に開状態となっており、測定器44aによる測定が当該X時間前から実施されている。但し、この段階(期間2)での測定器44aによる測定結果は、モニタ61に表示させない。
【0039】
何故なら、測定器44aは、上述したように、上記応答時間が比較的長い測定器である。従って、当該X時間前から切替バルブ3が開状態となる段階での測定器44aによる測定は、測定器44aによる測定開始直後での測定であり、真の測定結果を表示しないからである。
【0040】
但し、切替バルブ3が開状態となった時点では、測定器44aによる測定が、既にX時間を経過しているので、測定器44aによる測定は、真の測定結果を示している。
また、期間3の段階では、既に、切替バルブ8を開状態とし、測定器44bによるパイプライン14内の測定を開始させる。但し、期間3の段階での測定器44bによる測定結果は、モニタ61に表示しない。何故なら、測定器44bは、上記応答時間が比較的長い測定器であり、この段階での測定器44bによる測定は、測定器44bによる測定開始直後での測定であり、真の測定結果を表示しないからである。
【0041】
このように、期間3の段階で、予め測定器44bによる測定を開始させ、パイプライン14内の予備排気を充分に実施させておく。
次に、期間3に連続させて、図5に示すように、切替バルブ4及び切替バルブ8をX時間のみ開状態とし、パイプライン14内の化学成分を測定器41,42,43,44bにより測定する。これにより、パイプライン14によって回収された被測定室10の第4の測定ポイントの化学成分が測定される。そして、測定器41,42,43,44bによる測定結果を上記モニタ61に表示する。
【0042】
尚、この段階を期間4とする。
ところで、切替バルブ8は、切替バルブ4が開状態となる前のX時間前から、既に開状態となっており、測定器44bによる測定が当該X時間前から実施されている。但し、この段階(期間3)での測定器44bによる測定結果は、モニタ61に表示させない。
【0043】
何故なら、測定器44bは、上述したように、上記応答時間が比較的長い測定器である。従って、当該X時間前から切替バルブ4が開状態となる段階での測定器44bによる測定は、測定器44bによる測定開始直後での測定であり、真の測定結果を表示しないからである。
【0044】
但し、切替バルブ4が開状態となった時点では、測定器44bによる測定が、既にX時間を経過しているので、測定器44bによる測定は、真の測定結果を示している。
また、期間4の段階では、既に、切替バルブ5を開状態とし、測定器44aによるパイプライン11内の測定を開始させる。但し、期間4の段階での測定器44aによる測定結果は、モニタ61に表示しない。何故なら、測定器44aは、上記応答時間が比較的長い測定器であり、この段階での測定器44aによる測定は、測定器44aによる測定開始直後での測定であり、真の測定結果を表示しないからである。
【0045】
このように、期間4の段階で、予め測定器44aによる測定を開始させ、パイプライン11内の予備排気を充分に実施させておく。
そして、期間1〜期間4の測定を順に繰り返すことにより、被測定室10の気中の化学成分を連続に測定する、多点式の測定が実施される。
【0046】
図6は、以上に説明した時間と切替バルブの開閉の関係、時間と測定器によるモニタ表示の関係をまとめたものである。ここで、図6(a)には、各期間に於けるそれぞれの切換バルブの開閉の状態が示され、図6(b)には、各期間に於けるそれぞれのモニタ表示の状態が示されている。
【0047】
図6(a)並びに図6(b)に示すように、期間1では、切替バルブ1,5,7が開状態であり、測定器41,42,43,44aによる測定結果が上記モニタ61に表示される。
【0048】
期間2では、切替バルブ2,6,7が開状態であり、測定器41,42,43,44bによる測定結果が上記モニタ61に表示される。
期間3では、切替バルブ3,6,8が開状態であり、測定器41,42,43,44aによる測定結果が上記モニタ61に表示される。
【0049】
期間4では、切替バルブ4,5,8が開状態であり、測定器41,42,43,44bによる測定結果が上記モニタ61に表示される。
そして、この後においては、再び、期間1の状態に戻り、再び、期間1〜期間4の順で、多点式の測定が繰り返される。
【0050】
また、期間1〜期間4の繰り返しにおいて、測定器41,42,43による測定時間と、測定器44a,44bによる測定時間とは異なっているが、測定器41,42,43,44a,44bによる測定結果の表示は、同じ時間内で行われる。
【0051】
即ち、測定器41,42,43による測定結果を順に表示する際に、奇数番目に測定する測定箇所の気中成分の測定器44aによる測定結果を表示し、偶数番目に測定する測定箇所の気中成分の測定器44bによる測定結果を表示する。
【0052】
このように、上述した測定方法では、何れかの測定箇所の気中成分を第1のパイプラインを通じて引き込み、当該気中成分の第1の測定器による測定を開始し、前記測定箇所の気中成分の測定中に、前記測定箇所とは別の測定箇所の気中成分を、第2のパイプラインと、第2のパイプラインに接続された中継ラインとを通じて引き込み、当該別の測定箇所の気中成分の第2の測定器による測定を開始し、前記別の測定箇所の気中成分の第2の測定器による測定中に、前記何れかの測定箇所の気中成分の測定を終了するとともに、前記別の測定箇所の気中成分を第2のパイプラインを通じて引き込み、当該気中成分の第1の測定器による測定を開始している。
【0053】
このような測定方法によれば、測定の切替周期が上記応答時間が比較的短い測定器41,42,43の測定時間で律速され、迅速な切替バルブの切替が遂行される。これにより、多点式の測定の測定周期がより向上する。
【0054】
また、上記応答時間が比較的長い測定器44a,44bにおいては、充分に予備排気を行った後からの測定結果を表示させているので、測定器44a,44bによる測定結果は高精度になり、測定装置100全体としての測定精度がより向上する。
【0055】
尚、測定精度を更に向上させるには、定期的に、クリーンドライエア(例えば、露点温度70℃以下)を、パイプライン11〜14に流入させて、クリーンドライエアの測定値を、測定値のゼロ点とするゼロ点校正を実施してもよい。
【0056】
また、上記の例では、被測定室10に接続される4つのパイプライン11,12,13,14を例示したが、当該被測定室10に接続されるパイプラインの数においては、特にこの数に限られるものではない。必要に応じて、被測定室10に接続されるパイプラインの増設を図ってもよい。
【0057】
この場合、被測定室10に接続させる、複数のパイプラインにおいては、測定装置100の基本構成の如く、上記奇数番目のパイプラインに存在するガスについては、当該パイプラインから中継ラインを測定器44aにまで引き、奇数番目のパイプラインに存在するガスについては、測定器44aにより測定する。また、上記偶数番目のパイプラインに存在するガスについては、当該パイプラインから中継ラインを測定器44bにまで引き、偶数番目のパイプラインに存在するガスについては、測定器44bにより測定する。
【0058】
例えば、図7には、任意に選択した12個の測定ポイントの測定装置100による測定、並びにイオンクロマト分析結果の比較が示されている。即ち、この例では、被測定室10から12個のパイプラインが延出され、第1乃至第12の測定ポイントの測定が行われている。
【0059】
また、この図の縦軸には、上記応答時間が比較的長いとされる分子、即ち、アンモニア(NH3)の濃度を測定器44a,44bにより定量した結果が示されている。
一方、横軸には、上記12個の測定ポイントにおける雰囲気を、純水にバブリングすることにより回収した後、12個の測定ポイントのアンモニア(NH3)の濃度をイオンクロマト分析法により定量した結果が示されている。
【0060】
ここで、横軸が0.0(μg/cm3)付近において、既に測定ポイントの一つが約1.0(μg/cm3)を示すのは、測定器44a,44b内、或いは切替バルブ5,6,7,8内に吸着しているアンモニア(NH3)がバックグラウンドとして影響しているためである。
【0061】
即ち、12個の測定値から当該バックグラウンドを差し引くと、測定器44a,44bにより測定した結果とイオンクロマト分析法により算出した結果とが、略1:1(正比例関係)に対応している。
【0062】
このように、多点式の測定装置100においても、イオンクロマト分析法と同程度の精度で被測定室10内の雰囲気の化学成分を測定できる。また、上記多点式の測定では、純水へのバブリング等の手間を要せず、被測定室10内の化学成分を簡便に測定することができる。
【0063】
また、上記パイプラインの増設においては、パイプラインの本数、継ぎ手等の構成を変更することで足りる。従って、新規の測定システムの導入に比べ、安価に測定装置を改造することができる。
【0064】
このように、測定装置100を用いた、気中の化学成分の測定方法によれば、各測定器の上記応答時間が異なっても、対象となる化学成分の全てを迅速且つ高精度で測定することができる。
【0065】
例えば、図8には、測定装置100の比較例として測定装置200が示されている。尚、この図において、図1と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明の詳細については省略する。
【0066】
当該測定装置200においては、パイプライン20に、パイプライン21,22,23,24の一方の端が中継され、パイプライン21,22,23,24の他方の端を、それぞれ、測定器41,42,43,44aに接続している。これらの測定器41,42,43,44aには、その内部に吸引ポンプ(図示しない)が備えられ、パイプライン20中に存在するガスを、いわゆる差動排気によりそれぞれの測定器41,42,43,44aに引き込むことができる。
【0067】
ここで、測定装置200においては、上記応答時間が比較的短い測定器を、測定器41,42,43として配置し、上記応答時間が比較的長い測定器を、測定器44aとして配置している。
【0068】
このような構成では、対象となる化学成分の全てを高精度で測定するには、ポイント切替バルブの切替タイミングを応答時間が最も長くなる測定器44aに合わせる必要がある。従って、ポイント切替バルブの切替周期は、測定器44aの測定時間に律速されてしまう。
【0069】
ところが、上記測定装置100では、上記応答時間の長い測定器44a,44bのそれぞれへのポイント切替手段と、上記応答時間の短い測定器41,42,43へのポイント切替手段を分けた構成としている。従って、ポイント切替バルブの切替周期が応答時間の短い測定器41,42,43の測定時間に律速される。そして、測定結果の表示においては、上記応答時間の短い測定器41,42,43の表示時間により、全ての測定器41,42,43,44a,44bの測定結果を表示することができる。このように、本実施の形態によれば、測定周期、並びに測定精度がより向上する。
【0070】
また、測定周期においては、ポイント切替に要する時間(上記X時間)を自由に調整することにより、ポイント切替タイミングのマージンが拡大する。
また、測定の対象の化学成分の濃度が極めて希薄(例えば、ppbレベル)であっても、上述したゼロ点校正を実施することにより、測定データを常に真の値に近づけることができる。
【0071】
(付記1) 第1の測定箇所及び第2の測定箇所からそれぞれ延設された第1のパイプライン及び第2のパイプラインと、
前記第1、第2の測定箇所の気中成分を測定する第1の測定器、第2の測定器、及び第3の測定器と、
前記第1、第2の測定箇所の前記気中成分を、前記第1、第2のパイプラインを通じて順に前記第1の測定器に導入する第1の切替手段と、
前記第1の切替手段と前記第1、第2の測定箇所との間に位置する前記第1、第2のパイプラインにそれぞれ接続された第1の中継ライン及び第2の中継ラインと、
前記第1の中継ラインに接続され、前記第1の測定箇所の気中成分を、前記第1の中継ラインを通じて、前記第2の測定器に導入する第2の切替手段と、
前記第2の中継ラインに接続され、前記第2の測定箇所の気中成分を、前記第2の中継ラインを通じて、前記第3の測定器に導入する第3の切替手段と、
を備えたことを特徴とする測定装置。
【0072】
(付記2) 前記第2の測定器に前記気中成分を導入する時間内に、前記第3の測定器に前記気中成分を導入する手段、または前記第3の測定器に前記気中成分を導入する時間内に、前記第2の測定器に前記気中成分を導入する手段を備えていることを特徴とする付記1記載の測定装置。
【0073】
(付記3) 前記第1の測定器による、前記気中成分を測定する応答時間は、前記第2の測定器による応答時間並びに前記第3の測定器による応答時間よりも短いことを特徴とする付記1または2記載の測定装置。
【0074】
(付記4) 前記第2の測定器及び前記第3の測定器は、同一の前記気中成分を測定することを特徴とする付記2または3記載の測定装置。
(付記5) 第1の測定箇所の気中成分を第1のパイプラインを通じて引き込み、該気中成分の第1の測定器による測定を開始する工程と、
前記第1の測定箇所の気中成分の測定中に、第2の測定箇所の気中成分を、第2のパイプラインと、前記第2のパイプラインに接続された中継ラインとを通じて引き込み、該気中成分の第2の測定器による測定を開始する工程と、
前記第2の測定箇所の気中成分の前記第2の測定器による測定中に、前記第1の測定箇所の気中成分の測定を終了するとともに、前記第2の測定箇所の気中成分を前記第2のパイプラインを通じて引き込み、該気中成分の前記第1の測定器による測定を開始する工程と、
を備えたことを特徴とする測定方法。
【0075】
(付記6) 前記第2の測定器により前記気中成分を測定する時間内に、第3の測定器により前記気中成分を測定し、前記第3の測定器により前記気中成分を測定する時間内に、前記第2の測定器により前記気中成分を測定することを特徴とする付記5記載の測定方法。
【0076】
(付記7) 前記第1の測定器による測定結果を順に表示する際に、前記第2の測定器による測定結果を表示するか、または、前記第3の測定器による測定結果を表示することを特徴とする付記6記載の測定方法。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施の形態に係る測定装置の概要図である。
【図2】多点式の測定方法を説明するための概要図である(その1)。
【図3】多点式の測定方法を説明するための概要図である(その2)。
【図4】多点式の測定方法を説明するための概要図である(その3)。
【図5】多点式の測定方法を説明するための概要図である(その4)。
【図6】多点式の測定方法を説明するための概要図である(その5)。
【図7】測定装置とイオンクロマト分析による測定結果の比較を示す図である。
【図8】測定装置の比較例を説明するための概要図である。
【符号の説明】
【0078】
1,2,3,4,5,6,7,8 切替バルブ
10 被測定室
11,12,13,14,20,21,22,23,24,51,52,53,54,55,56 パイプライン
30 吸引ポンプ
31 排気用ライン
41,42,43,44a,44b 測定器
60 制御装置
61 モニタ
100,200 測定装置
100a 切替器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の測定箇所及び第2の測定箇所からそれぞれ延設された第1のパイプライン及び第2のパイプラインと、
前記第1、第2の測定箇所の気中成分を測定する第1の測定器、第2の測定器、及び第3の測定器と、
前記第1、第2の測定箇所の前記気中成分を、前記第1、第2のパイプラインを通じて順に前記第1の測定器に導入する第1の切替手段と、
前記第1の切替手段と前記第1、第2の測定箇所との間に位置する前記第1、第2のパイプラインにそれぞれ接続された第1の中継ライン及び第2の中継ラインと、
前記第1の中継ラインに接続され、前記第1の測定箇所の気中成分を、前記第1の中継ラインを通じて、前記第2の測定器に導入する第2の切替手段と、
前記第2の中継ラインに接続され、前記第2の測定箇所の気中成分を、前記第2の中継ラインを通じて、前記第3の測定器に導入する第3の切替手段と、
を備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記第2の測定器に前記気中成分を導入する時間内に、前記第3の測定器に前記気中成分を導入する手段、または前記第3の測定器に前記気中成分を導入する時間内に、前記第2の測定器に前記気中成分を導入する手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記第1の測定器による、前記気中成分を測定する応答時間は、前記第2の測定器による応答時間並びに前記第3の測定器による応答時間よりも短いことを特徴とする請求項1または2記載の測定装置。
【請求項4】
前記第2の測定器及び前記第3の測定器は、同一の前記気中成分を測定することを特徴とする請求項2または3記載の測定装置。
【請求項5】
第1の測定箇所の気中成分を第1のパイプラインを通じて引き込み、該気中成分の第1の測定器による測定を開始する工程と、
前記第1の測定箇所の気中成分の測定中に、第2の測定箇所の気中成分を、第2のパイプラインと、前記第2のパイプラインに接続された中継ラインとを通じて引き込み、該気中成分の第2の測定器による測定を開始する工程と、
前記第2の測定箇所の気中成分の前記第2の測定器による測定中に、前記第1の測定箇所の気中成分の測定を終了するとともに、前記第2の測定箇所の気中成分を前記第2のパイプラインを通じて引き込み、該気中成分の前記第1の測定器による測定を開始する工程と、
を備えたことを特徴とする測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−229334(P2009−229334A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76983(P2008−76983)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】