説明

測定装置

【課題】 エアの有機物含有量の測定過程で行われるテストウェハの膜厚変化の測定処理、エアの有機物含有量の算出、測定時に用いられたテストウェハの表面処理(有機物の除去)を自動で行うことのできる測定装置を提供する。
【解決手段】 測定装置1を、膜厚変化の測定を行うエリプソメトリ測定系と、有機物の除去を行うUV光照射系と、から構成する。該エリプソメトリ測定系は、光源8と、偏光レンズ9と、1/4波長板10と、焦点レンズ11と、偏光検出装置12と、受光素子13と、から構成される。また、該UV光照射系は、UVランプ15と、石英ガラス16と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関するものであり、特に、空気中の有機物の含有量を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の製造過程において半導体ウェハ上に有機物が付着してしまうと、製造された該半導体のデバイス特性に悪影響を与えるおそれがある。また、半導体ウェハを露光して回路パタンを焼き付けるリソグラフィ工程において露光装置のレンズやガラス上に有機物が付着してしまうと、回路の焼き付けが正常に行えないことがある。
【0003】
そのため、通常、半導体等の精密機械の製造管理は、「クリーンルーム」で行われる。クリーンルームとは、空気中の浮遊塵埃や温度湿度等を必要に応じて一定の基準に制御する室のことであり、塵埃数(有機物量)が抑えられ、清浄度が高く保たれている。
【0004】
クリーンルームでは、クリーンルーム内の空気が室内を循環するように制御されている。この空気の循環路にHEPA/ULPAフィルタを設け、空気が該HEPA/ULPAフィルタを通過する際に該フィルタに塵埃(有機物)を吸着させることで塵埃(有機物)の除去がなされている。また、ケミカルフィルタを設けることで、HEPA/ULPAフィルタでは吸着できない分子レベルの有機物の吸着/除去がなされている。
【0005】
このケミカルフィルタの有機物吸着量には限界があり、それゆえフィルタ自体に寿命がある。フィルタ寿命は通常1〜2年であるが、使用環境、除去する有機物の種類等によっては、フィルタ寿命が変動してしまう。そこで、フィルタの除去能力の有無のチェック、言い換えれば寿命チェックを適宜行う必要がある。
【0006】
フィルタの除去能力のチェック方法としては、フィルタを通過したエア(空気)から吸着剤を用いて有機物を捕集し、該吸着剤を加熱脱離させガスクロマトグラフ質量分析により有機化合物の量を検査することでフィルタを通過した有機物の量を計測し、該計測結果から除去能力のチェックを行うものがある。
【0007】
また、別の方法としては、ウェハをフィルタ下流側に数時間〜1日放置することでフィルタを通過した有機物をウェハに付着させ、該ウェハを加熱脱離させガスクロマトグラフ質量分析により有機化合物の量を検査することでフィルタを通過した有機物の量を計測し、該計測結果から除去能力のチェックを行うものがある。
【0008】
しかしながら、前者のチェック方法においては、短時間でサンプリング可能となるが、ウェハに付着しない分子量の小さい有機化合物までサンプリング対象となってしまうので、問題となる分子量の大きい有機化合物に対して検出精度が低下してしまう。他方、後者のチェック方法においては、問題となる分子量の大きい有機化合物を精度良く測定分析できるが、短時間でサンプリングを行うことができない、ウェハを放置するサンプリングポイントが必要となるといった問題点がある。また、これらのチェック方法では、簡易にかつリアルタイムでモニタリングを行うことができない。
【0009】
そこで、近年では、いかにして上記問題点の解決を図るかが考えられている。
【0010】
特許文献1ではウェハ表面に付着した有機化合物(有機物)を簡便に評価する評価方法が提案されている。具体的には、テストウェハの有機化合物付着前後での膜厚の差をエリプソメトリ測定装置で測定し、同時に膜厚の接触角を測定することで、付着した有機化合物の定量を検出、評価するものである。
【特許文献1】特開平5−275410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような評価方法におけるウェハの放置時間と有機物付着による膜厚の増加量との関係は、図7に示すようなグラフ関係になる。このグラフからわかるように有機物付着による膜厚の増加量はリニアに増加せず、ある膜厚で飽和する。そのため、有機物がウェハ上に付着し膜厚が飽和点を超えてしまうと、それ以降の経時的な変化を確認することができない。なので、膜厚測定において飽和点を超えた場合に、フィルタの寿命から発生した有機物付着による膜厚変化か、あるいは寿命とは別要因の突発的な異常による膜厚変化なのか、を1回の膜厚測定では判断できないので、膜厚測定を複数回行う必要がある。
【0012】
特許文献1記載の評価方法では、検査の実行時毎にテストウェハを洗浄剤(SC1洗浄剤)等で洗浄することで有機物を除去しなければならず、また、洗浄、付着前測定、放置、付着後測定の一連の動作を手動で管理する必要があるため、膜厚測定を複数回行うのに大変手間がかかる。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みて提案されたものであり、エア(空気)を取り込み、該エアに含まれる有機物量の測定を行うことができ、かつ、エアの有機物含有量の測定過程で行われるテストウェハの膜厚変化の測定処理、エアの有機物含有量の算出、測定時に用いられたテストウェハの表面処理(有機物の除去)を自動で行うことのできる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明は、測定対象エアの有機物の含有量を測定する測定装置であって、前記測定装置内に前記測定対象エアを取り入れるエア吸入口と、前記測定装置外に前記測定対象エアを排出するエア排出口と、表面に酸化膜を形成した半導体材料で、前記測定対象エアに含まれる測定対象有機物を付着させるテストウェハと、前記テストウェハの膜厚を測定する測定手段と、前記テストウェハに付着した付着有機物を除去する除去手段と、を有し、前記除去手段は、前記測定手段が前記テストウェハの前記膜厚の測定を開始する前に、前記テストウェハに付着した前記付着有機物を除去し、前記測定手段は、前記付着有機物の除去された前記テストウェハ上を前記測定対象エアが通過し、前記測定対象エアに含まれる前記測定対象有機物が付着することにより生じる、前記テストウェハの前記膜厚の変化を測定することを特徴とする測定装置である。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の測定装置において、前記測定装置により測定された前記テストウェハの前記膜厚の変化から、前記測定対象エアの有機物含有量を算出する算出手段を有することを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の測定装置において、前記測定装置は、偏光解析法を用いて前記テストウェハの前記膜厚を測定するエリプソメトリ測定装置であることを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の測定装置において、前記除去手段は、UV光を照射する素子を有し、前記UV光を照射することで前記テストウェハ上に付着した前記付着有機物を除去することを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の測定装置において、前記テストウェハ表面に形成された前記酸化膜の膜厚は3nm以上であることを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の測定装置において、前記測定装置は、前記測定手段により測定された前記テストウェハの前記膜厚の変化データを表示する表示手段を有することを特徴とする。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項2から6のいずれか1項に記載の測定装置において、前記測定装置は、前記測定手段により測定された前記テストウェハの前記膜厚の変化データと前記算出手段により算出された前記測定対象エアの有機物含有量データのうち、少なくとも1つを表示する表示手段を有することを特徴とする。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の測定装置において、前記測定装置は、外部端末に接続されており、前記測定手段により測定された前記テストウェハの前記膜厚の変化データを前記外部端末に通信する通信手段を有することを特徴とする。
【0022】
請求項9記載の発明は、請求項2から7のいずれか1項に記載の測定装置において、前記測定手段は、外部端末に接続されており、前記測定手段により測定された前記テストウェハの前記膜厚の変化データと前記算出手段により算出された前記測定対象エアの有機物含有量データのうち、少なくとも1つを前記外部端末に通信する通信手段を有することを特徴とする。
【0023】
請求項10記載の発明は、請求項7から9のいずれか1項に記載の測定装置において、前記測定装置は、前記測定装置の異常発生を検知する異常検知手段を有し、前記異常検知手段は、所定の条件が検知された場合には異常が発生したものとして、前記表示手段を用いて異常発生の旨を外部に報知することを特徴とする。
【0024】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の測定装置において、前記所定の条件とは、前記テストウェハの前記膜厚が前記膜厚の飽和値を超過することであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、エア(空気)を取り込み、該エアに含まれる有機物量の測定を行う測定装置において、エアの有機物含有量の測定過程で行われるテストウェハの膜厚変化の測定処理、エアの有機物含有量の算出、測定時に用いられたテストウェハの表面処理(有機物の除去)を自動で行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1を参照して、本実施形態の測定装置の構成を説明する。本実施形態の測定装置1は、テストウェハ2と、テストウェハテーブル3と、エア吸入口4と、エア排出口5と、吸気ファン6と、排気ファン7と、光源8と、偏光レンズ9と、1/4波長板(リターデーションプレート/位相シフタ)10と、焦点レンズ11と、偏光検出装置12と、受光素子13と、表示ディスプレイ14と、UVランプ15と、石英ガラス16と、から構成される。
【0027】
テストウェハ2は表面に酸化膜を形成したウェハであり、本実施形態の測定装置1では該テストウェハ2上に有機物を付着させる。このテストウェハ2の膜厚を測定し、該膜厚の変化度合いからエアの有機物含有量を測定する。テストウェハ2を構成する半導体材料としてはシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)等を用いることができる。
【0028】
このテストウェハ2は交換可能な構成になっている。このように構成することにより、テストウェハ2の素子寿命が尽きても新たなテストウェハに交換できるので、精度良く膜厚測定を行うことが可能となる。
【0029】
なお、テストウェハ2の酸化膜の膜厚は3nm以上であることが好ましい。3nm以上の膜厚に設定することにより水分等の外的要因による膜厚のばらつきを抑えることができ、安定した膜厚測定が可能となる。
【0030】
テストウェハテーブル3は、テストウェハ2を設置するためのテーブルである。なお、このテストウェハテーブル3はなくてもよい。
【0031】
エア吸入口4は、測定対象のエアを測定装置1内に取り込むための開口部であり、エア吸入口4にはエアの吸入効率を向上させる吸気ファン6が設けられている。また、エア排出口5は、測定装置1に取り込まれたエアを排出するための開口部であり、エア排出口にはエアの排出効率、装置内でのエアの循環効率を向上させる排気ファン7が設けられている。
【0032】
なお、入口4からエア排出口5に向けてエアが流れるので、図2のようにエアの流れるルート(以下、「エア流路」)上にテストウェハ2、テストウェハテーブル3を設ける。このように構成することにより、装置内で滞留しているエアでなく、エア流路上の測定対象の外部エアを効率良く測定することができる。
【0033】
また、テストウェハ2、テストウェハテーブル3が設けられた空間の側面壁にエア吸入口4を設ける。このように構成することにより、エア吸入口4から取り入れられたばかりのエアを測定できるので、測定精度を向上させることが可能となる。
【0034】
なお、エア吸入口4にはパーティクルを除去するエアフィルタが設けられていてもよい。エアフィルタを設けることで装置内に取り込まれるパーティクルを除去することが可能となるので、パーティクルによる膜厚増を回避し、有機物付着による膜厚変化の測定を精度良く行うことが可能となる。
【0035】
また、エア吸入口4には水分を除去する除湿フィルタが設けられていてもよい。除湿フィルタを設けることで装置内に取り込まれる水分を除去することが可能となるので、水分の付着による膜厚増を回避し、有機物付着による膜厚演歌の測定を精度良く行うことが可能となる。
【0036】
また、エア吸入口4にはノズルやパイプ等の空洞を有する導管部材が設けられていてもよい。導管部材を設けることで測定装置を持ち込むことのできない場所のエアや、通常のエア吸入口4からでは取り込むのが困難なエアを取り込むことが可能となる。
【0037】
光源8は、テストウェハ2に光を照射する。偏光レンズ9は、光源8から照射された光の直線偏光を行う。1/4波長板10は、偏光レンズ9からの直線偏光を楕円偏光に変換する。焦点レンズ10は、ピント調整を行う。
【0038】
偏光検出装置12は、テストウェハ2の酸化膜表面において反射した楕円偏光と、テストウェハ2のウェハ表面において反射した楕円偏光と、を検出する。受光素子13は、反射した楕円偏光の光強度を検出する。
【0039】
なお、上述した光源8と、偏光レンズ9と、1/4波長板10と、焦点レンズ11と、偏光検出装置12と、受光素子13と、は「エリプソメトリ測定系」と総称される。エリプソメトリ測定系は、エリプソメトリ(偏光解析法)を用いて対象物質の膜厚を非破壊、非接触に測定することが可能である。本実施形態の測定装置1はエリプソメトリ測定系を有しているので、測定対象のテストウェハ2の膜厚を非破壊、非接触に測定することができる。
【0040】
表示ディスプレイ14は、膜厚の変化度合いから算出された有機物含有量等の各種データ等の表示を行う。
【0041】
UVランプ15は、テストウェハ2上にUV光を照射する。英ガラス16は、UVランプ15からのUV光のうちの遠紫外線を透過させる。なお、以下の説明においては、UVランプ15と石英ガラス16とを総じて「UV光照射系」と称する。
【0042】
UV光照射系により半導体材料上にUV光を照射すると、UV光が持つエネルギーによる解離作用とUV光が空気中の酸素から発生させるオゾンやラディカルな酸素原子種の酸化作用により、半導体材料上に付着した有機物を除去することができる。
【0043】
本実施形態の測定装置1は、テストウェハ2上にUV光を照射するUV光照射系を有しているので、テストウェハ2上の有機物の除去(表面処理)を行うことができる。
【0044】
なお、UVランプ15としては、低圧水銀ランプ(波長185nm、254nm)やXeエキシマランプ(波長172nm)を用いる。特に、Xeエキシマランプは、低圧水銀ランプと比較して短時間での有機物除去を行うことが可能で、かつ照射時の温度変動が少ないため、連続して膜厚測定を行う場合に安定した測定を行うことが可能となる。
【0045】
次に、図2を参照して、本実施形態の測定装置の内部構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)31と、ファン制御部32と、光源制御部33と、偏光データ検出部34と、光強度検出部35と、UVランプ制御部36と、データ処理部37と、メモリ38と、表示制御部39と、外部通信I/F40と、から構成される。
【0046】
CPU31は中央演算装置であり、装置全体の制御、プログラムの実行等を行う。また、装置の制御上の異常や膜厚測定における飽和点突破等の異常を検知した場合には、表示制御部39を制御して異常発生を報知する。
【0047】
ファン制御部32は、吸気ファン6及び排気ファン7の制御を行う。光源制御部33は、光源8の制御を行う。偏光データ検出部34は、偏光検出装置12において検出されたデータの制御を行う。光強度検出部35は、受光素子13において検出された反射光強度の検出を行う。UVランプ制御部36は、UVランプ15の制御を行う。
【0048】
データ処理部37は、偏光検出装置33及び光強度検出部34から送られてくる検出データからテストウェハ2の膜厚を算出する。また、膜厚の変化度合いから有機物含有量を算出する。
【0049】
メモリ38は、RAM(Random Access Memory)やNVRAM(Nonvolatile RAM)等から構成され、偏光検出装置34及び光強度検出部35で検知された検出データや、データ処理部37において算出されたテストウェハ2の膜厚データ、有機物含有量データ等を記憶する。
【0050】
表示制御部39は、メモリ38に記憶された膜厚データ、有機物含有量等の各種データを表示ディスプレイ14に表示する際の表示制御を行う。なお、表示ディスプレイ14以外の表示手段として、音で状態を報知する報知器をさらに設けてもよい。このように構成することにより、視覚だけでなく聴覚でも装置の状態検知を行うことが可能となる。
【0051】
外部通信I/F40は、測定装置1を外部端末50に接続させるためのインターフェースであり、これにより外部端末50に各種データを伝達することが可能となる。
【0052】
次に、図3を参照して、本実施形態の測定装置の動作フローを説明する。まず、UV光照射系によりテストウェハ2上にUV光を照射し、テストウェハ2に付着する有機物の除去を行う(S101)。なお、UV光照射系のUVランプ15が低圧水銀ランプである場合、照射時間30分で除去を行う。また、UVランプ15がXeエキシマランプである場合、照射時間5分で除去を行う。
【0053】
次に、吸気ファン6、排気ファン7を駆動させ、有機物含有量の測定を行うエアを装置内に取り込む(S102)。そして、取り込んだエアをテストウェハ2に触れさせることでテストウェハ2上に有機物を付着させ膜厚の変化を測定する(S103)。そして、この膜厚
の変化度合いから、エア内の有機物含有量を算出する(S104)。
【0054】
測定の精度を上げるために再測定設定をしている場合や何らかの異常で再測定が必要な場合などは(S105/Yes)、再測定のため、有機物除去処理(S101)に戻る。そうでない場合は(S105/No)、測定処理を抜ける。
【0055】
本実施形態により、測定装置において、エア(空気)を取り込み、該エアに含まれる有機物量の測定を行い、かつ、エアの有機物含有量の測定過程で行われるテストウェハの膜厚変化の測定処理、エアの有機物含有量の算出、測定時に用いられたテストウェハの表面処理(有機物の除去)を自動で行うことが可能となる。
【0056】
本実施形態の測定装置1は、測定対象のエアをエア吸入口4から吸入しテストウェハ2の設けられた空間を通過させることで、エアの含有する有機物を付着させ、有機物含有量を測定するが、このような測定方法においては測定対象のエア以外の要素から生じる有機物が測定されてしまうと測定精度が低下してしまう。この測定対象のエア以外の要素から生じる有機物(以下、「測定対象外有機物」)は、測定装置1に用いられる塗料、シール、可塑剤等の部材や、エリプソメトリ測定系、UV光照射系等の装置素子から生じ得る。
【0057】
よって、測定精度を高水準に維持するため、測定対象外有機物を測定装置1による測定対象からはずす必要がある。しかし、測定対象エアの含有する有機物と測定対象外有機物とは実質上の差異はないため、これらの判別を事後的な方法で行うことは困難である。
【0058】
そこで、事前的な対策によりテストウェハ2に測定対象外有機物が付着することを抑制する。言い換えれば、測定装置1の装置構成を、測定対象外有機物がテストウェハ2に付着しない構成、測定対象外有機物が発生しない構成にする。
【0059】
まず、測定対象外有機物がテストウェハ2に付着しない構成であるが、これはエア流路が少なくともテストウェハ2、テストウェハテーブル3上を通過するまでは、装置素子の周囲を通過しないように構成することで実現できる。このような装置構成の一例としては、図4、図5、図6に示すものが挙げられる。
【0060】
図4の測定装置1は、外部エアの通過するテストウェハ2の設けられた空間(以下、「ウェハ空間」)と、装置素子の設けられた空間(以下、「素子空間」)と、をそれぞれ独立した空間として構成している。このように構成することにより、装置素子から測定対象外有機物が生じても、これがテストウェハ2に付着することを防ぐことができる。
【0061】
図5の測定装置1は、エアがウェハ空間のテストウェハ2上を通過してから素子空間を通過する構成としている。具体的には、テストウェハ空間と素子空間とを空間的に接続させる開口部を設け、かつ、素子空間にエア排出口5を設けている。このように構成することにより、素子空間のエアがウェハ空間に流入することを防ぐことができるので、装置素子から発生した測定対象外有機物をテストウェハ2に付着することを防ぐことができる。
【0062】
図6の測定装置1は、ウェハ空間と素子空間とを空間的に接続させる開口部を設け、かつ、ウェハ空間と素子空間とにそれぞれエア排出口5を設けている。このような構成によっても、素子空間のエアがウェハ空間に流入することを防ぐことができるので、装置素子から発生した測定対象外有機物をテストウェハ2に付着することを防ぐことができる。
【0063】
また、測定対象外有機物が発生しない構成であるが、これは測定装置1の構成を有機物の発生しにくい構成にすることで実現が可能となる。具体的には、アルミニウム、SUS(Stainless Used Steel)のような金属等を用い、塗料や可塑剤等の部材を使用しないことで実現する。
【0064】
上記のように構成することにより、測定対象外有機物の発生、テストウェハ2への付着を抑制することが可能となるので、測定対象エアの有機物含有量を精度良く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】測定装置の構成を示す図である。
【図2】測定装置の内部構成を示す図である。
【図3】測定装置の動作制御のフローを示す図である。
【図4】測定対象外有機物がテストウェハに付着しない構成の一例を示す図である。
【図5】測定対象外有機物がテストウェハに付着しない構成の一例を示す図である。
【図6】測定対象外有機物がテストウェハに付着しない構成の一例を示す図である。
【図7】ウェハの放置時間と有機物付着による膜厚の増加量との関係を表すグラフ図である。
【符号の説明】
【0066】
1 測定装置
2 テストウェハ
4 エア吸入口
5 エア排出口
8 光源
12 偏光検出装置
14 表示ディスプレイ
15 UVランプ
31 CPU
37 データ処理部
50 外部端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象エアの有機物の含有量を測定する測定装置であって、
前記測定装置内に前記測定対象エアを取り入れるエア吸入口と、
前記測定装置外に前記測定対象エアを排出するエア排出口と、
表面に酸化膜を形成した半導体材料で、前記測定対象エアに含まれる測定対象有機物を付着させるテストウェハと、
前記テストウェハの膜厚を測定する測定手段と、
前記テストウェハに付着した付着有機物を除去する除去手段と、を有し、
前記除去手段は、
前記測定手段が前記テストウェハの前記膜厚の測定を開始する前に、前記テストウェハに付着した前記付着有機物を除去し、
前記測定手段は、
前記付着有機物の除去された前記テストウェハ上を前記測定対象エアが通過し、前記測定対象エアに含まれる前記測定対象有機物が付着することにより生じる、前記テストウェハの前記膜厚の変化を測定することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記測定装置により測定された前記テストウェハの前記膜厚の変化から、前記測定対象エアの有機物含有量を算出する算出手段を有することを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記測定装置は、偏光解析法を用いて前記テストウェハの前記膜厚を測定するエリプソメトリ測定装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記除去手段は、UV光を照射する素子を有し、
前記UV光を照射することで前記テストウェハ上に付着した前記付着有機物を除去することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記テストウェハ表面に形成された前記酸化膜の膜厚は3nm以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記測定装置は、前記測定手段により測定された前記テストウェハの前記膜厚の変化データを表示する表示手段を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記測定装置は、前記測定手段により測定された前記テストウェハの前記膜厚の変化データと前記算出手段により算出された前記測定対象エアの有機物含有量データのうち、少なくとも1つを表示する表示手段を有することを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記測定装置は、外部端末に接続されており、
前記測定手段により測定された前記テストウェハの前記膜厚の変化データを前記外部端末に通信する通信手段を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記測定手段は、外部端末に接続されており、
前記測定手段により測定された前記テストウェハの前記膜厚の変化データと前記算出手段により算出された前記測定対象エアの有機物含有量データのうち、少なくとも1つを前記外部端末に通信する通信手段を有することを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記測定装置は、前記測定装置の異常発生を検知する異常検知手段を有し、
前記異常検知手段は、所定の条件が検知された場合には異常が発生したものとして、前記表示手段を用いて異常発生の旨を外部に報知することを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項11】
前記所定の条件とは、前記テストウェハの前記膜厚が前記膜厚の飽和値を超過することであることを特徴とする請求項10記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−253335(P2006−253335A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66394(P2005−66394)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】