説明

測定装置

【課題】バイオセンサの位置ズレや傾きが起こり難い測定装置を提供する。
【解決手段】測定装置110は、測定対象となる試料に化学的処理を施す試験片であるバイオセンサを使用してクロマトグラフィー測定を行う装置であって、バイオセンサの長手方向を挿入方向としてバイオセンサが挿入される空間が形成されている装着部119に、バイオセンサの短手方向に沿って装着部119の溝部151の側面にバイオセンサを押圧させて位置決めさせる第1の位置決め機構155と、バイオセンサの厚み方向に沿って装着部119の縁部152bの裏面にバイオセンサを押圧させて位置決めさせる第2の位置決め機構156とが設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の分析対象物について測定を行う測定装置に関し、特に、バイオセンサの位置ズレや傾きが起こり難い測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオセンサに点着された試料に対してクロマトグラフィー測定を行う測定装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
具体的には、図6に示すように、測定装置10は、バイオセンサ20に点着された試料30に対してクロマトグラフィー測定を行う装置である。バイオセンサ20は、測定対象となる試料30に化学的処理を施す試験片である。試料30は、人の指先を針で突いたときに出血する血液(10μリットル程度の量の血)である。
【0003】
具体的には、図7に示すように、バイオセンサ20は、濾紙などから構成されている。形状が矩形であり、長手方向に沿って展開部21が配置され、中央に反応部22が配置されている。試料30に含まれる分析対象物と特異的に結合する標識物質が、展開部21において試料30が点着されるバイオセンサ20の一端(展開部21の端)から反応部22までの間における部分(以下、上流部分と呼称する。)に塗布されている。また、試料30に含まれる分析対象物と特異的に結合するタンパク質等の試薬が、反応部22に固定化されている。
【0004】
測定装置10は、遮光板12などの光学系の下方にステージ18が配置されている。予め、ステージ18に装着されたバイオセンサ20の反応部22がイメージセンサ14の受光面上に結像するように、遮光板12と集光レンズ13との位置が調整されている。クロマトグラフィー測定を行うときは、遮光板12などの光学系と面するステージ18の上部に、バイオセンサ20の長手方向を挿入方向としてバイオセンサ20が装着される。このとき、反応部22が遮光板12などの光学系に向くように装着される。
【0005】
そして、バイオセンサ20がステージ18に装着された状態で、測定対象となる試料30がバイオセンサ20の一端に点着される。バイオセンサ20の一端に点着された試料30が、展開部21に沿って展開していき、展開部21の上流部分に塗布されている標識物質と結合する。さらに、反応部22に固定化されているタンパク質が、分析対象物と標識物質との複合体に対して結合反応を起こし、試料30に含まれる分析対象物の濃度に応じて反応部22が呈色する。測定装置10で、呈色した反応部22における反射光量が測定され、測定された反射光量から、試料30に含まれる分析対象物の濃度が特定される。
【0006】
このとき、測定装置10は、光源11を発光させて、バイオセンサ20の反応部22を照射する。反応部22に照射した光が反応部22で反射遮光板12に形成された開口12aと集光レンズ13とを通過してイメージセンサ14に入射する。イメージセンサ14に入射した光がイメージセンサ14で電気信号に変換される。変換されて得られた電気信号が信号変換部15で映像信号に変換される。変換されて得られた映像信号に基づいて画像処理部16で画像処理が行われる。画像処理が行われて得られた結果が出力部17に出力される。
【0007】
ここで、画像処理とは、反応部22の反射光量に応じた出力信号を使用して、反応部22の反射光量を演算する処理である。また、呈色度に応じて光が吸収されることから、バイオセンサ20に点着された試料30によって呈色した反応部22の反射光量を測定することによって、試料30に含まれる分析対象物の濃度を特定することができる。
【特許文献1】特許3559975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、バイオセンサ20の長手方向を挿入方向とするので、バイオセンサ20が抜き差しし易いように、ステージ18においてバイオセンサ20が挿入される空間については、バイオセンサ20の短手方向と厚み方向とが、バイオセンサ20よりも少し大きめに形成されている。このため、バイオセンサ20が測定装置10に挿入された状態では、バイオセンサ20の短手方向と厚み方向とに隙間ができる。そして、バイオセンサ20の短手方向と厚み方向とにできた隙間によって、バイオセンサ20の位置ズレや傾きなどが起こり易くなる。例えば、使用者がバイオセンサ20を測定装置10に挿入する場合、使用者の手で挿入する向きが微妙に異なるので、挿入の度に位置や傾きが異なる。また、使用者がバイオセンサ20に試料30を点着する場合やバイオセンサ20が測定装置10に挿入された状態で測定装置10に衝撃が加わった場合などに、バイオセンサ20の位置や傾きの変化が起こる。
【0009】
また、図8A、図8Bに示すように、バイオセンサ20の位置ズレや傾きなどが起こることによって、バイオセンサ20の斜め上方に配置された光源11から照射された光の入射角や入射位置が変化する。ここで、図8Aは、バイオセンサ20が正位で配置された場合における光の散乱を示している。図8Bは、バイオセンサ20が傾いて配置された場合における光の散乱を示している。図8A、図8Bに示す矢印の長さは、光強度を示し、長ければ、光強度が大きく、短ければ、光強度が小さいことを示している。図8Aと図8Bとでは、光源11から反応部22に照射した光の入射角・入射位置が異なっていることを示している。また、バイオセンサ20が面方向に位置がずれて配置された場合についても、同様のことが起こる。
【0010】
これに伴い、バイオセンサ20の反応部22で反射した光の散乱分布が変化し、遮光板12などの光学系に対する通過光量も変化する。通過光量が変化するので、測定結果も変化する。このため、新たなバイオセンサを挿入して試料を測定する度に、バイオセンサ20の位置・姿勢が変われば、バイオセンサ20の位置ズレや傾きによって、測定結果が変化する。
【0011】
すなわち、バイオセンサ20の短手方向と厚み方向とにできる隙間によって、測定結果が変化するという問題がある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、バイオセンサの位置ズレや傾きが起こり難い測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係わる測定装置は、下記に示す特徴を備える。
(CL1)本発明に係わる測定装置は、(a)測定対象となる試料に化学的処理を施す試験片であるバイオセンサを使用してクロマトグラフィー測定を行う測定装置であって、(b)前記バイオセンサの長手方向を挿入方向として前記バイオセンサが挿入される空間が形成されている装着部に、前記バイオセンサの短手方向に沿って前記装着部の第1の壁面に前記バイオセンサを押圧させて位置決めさせる第1の位置決め手段と、前記バイオセンサの厚み方向に沿って前記装着部の第2の壁面に前記バイオセンサを押圧させて位置決めさせる第2の位置決め手段とを有した位置決め装置が設置されている。
【0013】
(CL2)さらに、上記(CL1)に記載の測定装置は、(a)前記第1の位置決め手段が、前記バイオセンサの長手方向に沿った第1の点と第2の点とで前記バイオセンサと接触して前記バイオセンサを押すものであり、(b)前記第2の位置決め手段が、前記バイオセンサの短手方向から見て、前記第1の点と前記第2の点との間で前記バイオセンサと接触して前記バイオセンサを押すものであるとしてもよい。
【0014】
(CL3)さらに、上記(CL2)に記載の測定装置は、前記第2の位置決め手段が、前記バイオセンサと接触する駒体と、前記駒体を前記バイオセンサに押圧させるコイルばねとを有するものであるとしてもよい。
【0015】
(CL4)さらに、上記(CL3)に記載の測定装置は、前記駒体が、前記コイルばねと組み合わさった状態で、前記バイオセンサの厚み方向に直交する第1の軸と第2の軸とのまわりに揺動可能なものであるとしてもよい。
【0016】
(CL5)さらに、上記(CL3)、(CL4)に記載の測定装置は、前記駒体が、点または前記挿入方向に沿って伸びる線で、前記バイオセンサの厚み方向に前記バイオセンサを押すものであるとしてもよい。
【0017】
(CL6)さらに、上記(CL2)〜(CL5)に記載の測定装置は、前記第1の位置決め手段が、前記第1の点と前記第2の点との位置に合わせて配置された突起部を有する板ばねであるとしてもよい。
【0018】
(CL7)さらに、上記(CL1)〜(CL6)に記載の測定装置は、前記第1の位置決め手段と前記第2の位置決め手段とが、前記バイオセンサの長手方向に沿った前記バイオセンサの一部であって前記バイオセンサにおいて光学的な測定を受ける被測定領域の部分を、前記第1の壁面と前記第2の壁面とに押圧させるものであるとしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バイオセンサの短手方向と厚み方向とにバイオセンサを押す位置決め装置が装着部に設置されている。これによって、バイオセンサの短手方向と厚み方向との位置決めを両立することができる。これに伴い、バイオセンサの短手方向と厚み方向とについては、バイオセンサが固定され、バイオセンサの位置ズレや傾きが起こり難くなる。このため、新たなバイオセンサを挿入して試料を測定する度に、バイオセンサの位置ズレや傾きが起こり難くなるので、測定誤差を抑えて信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下、本発明に係わる実施の形態1について説明する。
<概要>
本実施の形態における測定装置は、下記(1)〜(7)に示す特徴を備える。
【0021】
(1)測定装置は、(a)測定対象となる試料に化学的処理を施す試験片であるバイオセンサを使用してクロマトグラフィー測定を行う測定装置であって、(b)バイオセンサの長手方向を挿入方向としてバイオセンサが挿入される空間が形成されている装着部に、バイオセンサの短手方向に沿って装着部の第1の壁面にバイオセンサを押圧させて位置決めさせる第1の位置決め手段と、バイオセンサの厚み方向に沿って装着部の第2の壁面にバイオセンサを押圧させて位置決めさせる第2の位置決め手段とを有した位置決め装置が設置されている。
【0022】
(2)(a)第1の位置決め手段が、バイオセンサの長手方向に沿った第1の点と第2の点とでバイオセンサと接触してバイオセンサを押すものであり、(b)第2の位置決め手段が、バイオセンサの短手方向から見て、第1の点と第2の点との間でバイオセンサと接触してバイオセンサを押すものである。
【0023】
(3)第2の位置決め手段が、バイオセンサと接触する駒体と、駒体をバイオセンサに押圧させるコイルばねとを有するものである。
(4)駒体が、コイルばねと組み合わさった状態で、バイオセンサの厚み方向に直交する第1の軸と第2の軸とのまわりに揺動可能なものである。
【0024】
(5)駒体が、点または挿入方向に沿って伸びる線で、バイオセンサの厚み方向にバイオセンサを押すものである。
(6)第1の位置決め手段が、第1の点と第2の点との位置に合わせて配置された突起部を有する板ばねである。
【0025】
(7)第1の位置決め手段と第2の位置決め手段とが、バイオセンサの長手方向に沿ったバイオセンサの一部であってバイオセンサにおいて光学的な測定を受ける被測定領域の部分を、第1の壁面と第2の壁面とに押圧させるものである。
【0026】
以上の点を踏まえて、本実施の形態における測定装置について説明する。なお、従来の技術と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
<構成>
図1、図2に示すように、測定装置110は、測定装置10と比べて、ステージ18の代わりに、ステージ118を備える点が異なる。
【0027】
<ステージ118>
ステージ118は、図7に示す遮光板12などの光学系(以下、光学系と略称する。)と面する上部に、Y−Z面の形状が凹状である溝部151が形成されている。溝部151が形成された部分の上に、X−Y面の形状がU字状である板152が取り付けられている。溝部151が形成された部分と板152とで装着部119が形成されている。ステージ118の前側にバイオセンサ20の挿入口151aが形成されている。なお、図1、図2では、板152において挿入口151a側の一部を切欠いて示している。
【0028】
<溝部151>
溝部151は、挿入口151aから奥行方向(X方向)に沿って伸びて行き止まりになっている。バイオセンサ20が装着部119に挿入されたときは、バイオセンサ20の一端が溝部151の奥151bと接触し、バイオセンサ20の他端が入り込まずに挿入口151aから出るようになっている。バイオセンサ20が所定の長さ以上挿入されないように、奥行(X方向の寸法)がバイオセンサ20の長手方向の寸法よりも小さくなっている。バイオセンサ20が抜き差しし易いように、幅(Y方向の寸法)がバイオセンサ20の短手方向の寸法よりも少し大きく、深さ(Z方向の寸法)がバイオセンサ20の厚み方向の寸法よりも少し大きくなっている。バイオセンサ20が挿入し易いように、挿入口151a側が広めに形成されている。
【0029】
<板152>
板152は、前端から溝部151に合わせて切れ込み部152aが形成されている。切れ込み部152aは、バイオセンサ20の一端が溝部151の奥151bと接触しているかを光学的に検出することができるように、切れ込みの深さ(X方向の寸法)が溝部151の奥行(X方向の寸法)より少し大きくなっている。バイオセンサ20の反応部22を覆うことなく、切れ込み部152a側の縁部152bが溝部151の側面から少し差し出てバイオセンサ20の表面と接触するように、切れ込みの幅(Y方向の寸法)が溝部151の幅(Y方向の寸法)よりも少し小さくなっている。
【0030】
<装着部119>
装着部119は、測定部154の周辺に、バイオセンサ20の位置ズレや傾きが起こり難くするために、位置決め機構が設置されている。ここでは、一例として、バイオセンサ20の短手方向と厚み方向との位置決めを両立することができるように、測定部154の真横に第1の位置決め機構155が配置され、測定部154の真下に第2の位置決め機構156が配置されている。
【0031】
<測定部154>
測定部154は、装着部119において、バイオセンサ20が装着部119に挿入されたときに、バイオセンサ20の反応部22の一部が配置される部分であり、光学系によって測定可能な部分である。具体的には、溝部151の一方の側面と他方の側面とに、2箇所ずつ、対向するようにして、Y方向に窪んだ半円状の凹部153が板152の縁部152bに形成されている。装着部119において、この4箇所の凹部153で囲まれた部分が測定部154である。
【0032】
<第1の位置決め機構155>
第1の位置決め機構155は、測定部154の真横に位置する第1の窪み部157に設置された位置決め機構であり、バイオセンサ20の側面と2点で接触してバイオセンサ20の短手方向の位置決めを行うものである。具体的には、図1、図2、図3A〜図3Cに示すように、頂点間の距離が第2の位置決め機構156のX方向の寸法よりも大きい2つの山部155bを有する波状板ばね155aである。
【0033】
ここで、第1の窪み部157は、波状板ばね155aの形状・寸法に合わせて、測定部154の真横で溝部151の一方の側面側に形成された窪みである。ここでは、一例として、X方向の寸法が波状板ばね155aのX方向の寸法よりも少し大きく、Y方向の寸法が波状板ばね155aのY方向の寸法よりも少し大きくなっている。
【0034】
そして、2つの山部155bが溝部151の他方の側面に向けられ、X方向に沿って波状板ばね155aの長手方向が配置され、Y方向に伸縮自在な状態で、波状板ばね155aが第1の窪み部157に設置される。
【0035】
また、2つの山部155bの頂点は、X方向から見て、溝部151の一方の側面からY方向に突出している。バイオセンサ20が装着部119の奥151bまで挿入されたときに、バイオセンサ20の反応部22の真横に位置し、バイオセンサ20の側面と接触し、バイオセンサ20をY方向に押す。
【0036】
これによって、波状板ばね155aと溝部151の他方の側面とでバイオセンサ20が挟み込まれ、溝部151の他方の側面にバイオセンサ20が固定され、バイオセンサ20の位置・姿勢が安定する。
【0037】
<第2の位置決め機構156>
第2の位置決め機構156は、測定部154の真下に位置する第2の窪み部158に設置された位置決め機構であり、バイオセンサ20の裏面と4点で接触してバイオセンサ20の厚み方向の位置決めを行うものである。具体的には、図1、図2、図3A〜図3Cに示すように、板状天板部156cと柱状脚部156dとからなる駒体156aと、中心軸に沿って柱状脚部156dが入るコイルばね156bとを備える。板状天板部156cは、Z方向から見て、X−Y面の形状が矩形状であり、表面の四隅に点状突起部156eが形成されている。柱状脚部156dは、X方向またはY方向から見て、板状天板部156cの裏面中央からまっすぐZ方向に伸びている。Z方向の寸法がコイルばね156bの中心軸方向の寸法よりも少し短くなっている。
【0038】
ここで、第2の窪み部158は、駒体156aの形状・寸法に合わせて、測定部154の真下であって溝部151の底側に形成された窪みである。ここでは、一例として、コイルばね156bと柱状脚部156dとが配置される下部158aと、板状天板部156cが配置される上部158bとからなる。下部158aは、深さ(Z方向の寸法)が柱状脚部156dのZ方向の寸法よりも少し大きく、X−Y面の開口寸法が柱状脚部156dの寸法よりも少し大きくなっている。上部158bは、深さ(Z方向の寸法)が板状天板部156cのZ方向の寸法よりも少し大きく、X−Y面の開口寸法が板状天板部156cの寸法よりも少し大きくなっている。駒体156aとコイルばね156bとが組み合わされて第2の窪み部158に設置された状態で、柱状脚部156dの端面と下部158aの底面との間に僅かな隙間ができ、板状天板部156cの裏面と上部158bの底面との間に僅かな隙間ができる。
【0039】
そして、Z方向に沿ってコイルばね156bの中心軸方向が配置され、コイルばね156bが第2の窪み部158に設置される。コイルばね156bの中心軸に沿って柱状脚部156dがコイルばね156bの中に入れられ、Z方向に直交する2軸のまわりに揺動可能な状態で、駒体156aが第2の窪み部158に設置される。
【0040】
また、四隅の点状突起部156eの頂点は、Z方向から見て、反応部22の一部(50%以上)である矩形領域の四隅に対応する位置に、それぞれ、配置されている。X方向から見て、溝部151の底からZ方向に突出し、バイオセンサ20が装着部119の奥151bまで挿入されたときに、バイオセンサ20の反応部22の真下に位置し、バイオセンサ20の裏面と接触し、バイオセンサ20をZ方向に押す。
【0041】
これによって、駒体156aと切れ込み部152a側の縁部152bとでバイオセンサ20が挟み込まれ、切れ込み部152a側の縁部152bにバイオセンサ20が固定され、バイオセンサ20の位置・姿勢が安定する。
【0042】
<補足>
なお、駒体156aは、Y方向から見て、2つの山部155bで挟まれるように配置されている。これによって、第1の位置決め機構155と第2の位置決め機構156とが接触することを回避することができる。
【0043】
なお、四隅の点状突起部156eは、バイオセンサ20の両側に半分ずつに分かれて接触するように配置されている。これによって、バイオセンサ20の両側を均等に押し、バイオセンサ20の表面を平面にすることができる。
【0044】
なお、四隅の点状突起部156eで囲まれる領域は、反応部22の一部(50%以上)に限定されている。これによって、構成要素を不要に大きくすることを回避することができる。
【0045】
なお、四隅の点状突起部156eで、バイオセンサ20が上側に向かって押される。これによって、バイオセンサ20の抜き差しに伴い生じる紙屑・埃などのゴミが、バイオセンサ20と切れ込み部152a側の縁部152bとの間に挟み込まれ難くなり、ゴミを挟み込むことによって生じるバイオセンサ20の位置ズレや傾きを回避することができる。
【0046】
なお、バイオセンサ20の裏面を点で押す代わりに、バイオセンサ20の裏面を面で押すと、バイオセンサ20の裏面を点で押す場合に比べて、広範囲に亘って均一に押すことができる。しかしながら、バイオセンサ20の裏面との接触面積が大きくなり、摩擦抵抗も大きくなる。バイオセンサ20を抜き差しするときに、バイオセンサ20が滑り難くなる。このため、バイオセンサ20を抜き差しするときに、バイオセンサ20が滑り易くするために、バイオセンサ20の裏面を点で押している。
【0047】
なお、バイオセンサ20の長手方向については、バイオセンサ20の一端が溝部151の奥151bと接触することで、位置決めされているものとする。
<検証>
次に、バイオセンサ20の位置ズレ・傾きについて検証した結果について説明する。ここでは、位置決め機構を有しない測定装置10と、位置決め機構を有する測定装置110とを使用して得られた結果について比較した。具体的には、測定装置10と測定装置110とのそれぞれについて、バイオセンサ20を複数回抜き差しし、その都度、呈色度を測定し、測定した結果から、バイオセンサ20の抜き差しに伴う測定誤差を算出した。なお、通常の使用とは異なるが、明確な結果を求めるために、同一のバイオセンサを繰り返し使用した。
【0048】
ここで、図4Aは、位置決め機構を有しない測定装置10に対して、バイオセンサ20を複数回抜き差ししたときの測定誤差を示すグラフである。図4Bは、位置決め機構を有する測定装置110に対して、バイオセンサ20を複数回抜き差ししたときの測定誤差を示すグラフである。図4A、図4Bに示すグラフについて、縦軸が呈色度の測定誤差[%]であり、横軸がバイオセンサを抜き差しした回数である。また、サンプル1、サンプル2、サンプル3は、呈色度がそれぞれ異なるバイオセンサである。
【0049】
先ず、図4Aに示すように、測定装置10については、呈色度に係わらず、呈色度の測定誤差のばらつきが顕著であることがグラフに示されている。このことから、バイオセンサ20を抜き差しする度に、バイオセンサ20の位置・姿勢が変わることが窺える。
【0050】
一方、図4Bに示すように、測定装置110については、呈色度に係わらず、呈色度の測定誤差のばらつきがほとんどないことがグラフに示されている。このことから、バイオセンサ20を抜き差ししても、バイオセンサ20の位置・姿勢がほとんど変わらないことが窺える。すなわち、バイオセンサ20の位置ズレ・傾きが起こり難く、バイオセンサ20の位置・姿勢が安定することが示されている。
【0051】
<まとめ>
以上、本実施の形態によれば、第1の位置決め機構155と第2の位置決め機構156とが装着部119に設置されている。これによって、バイオセンサ20の短手方向と厚み方向との位置決めを両立することができる。これに伴い、バイオセンサ20の短手方向と厚み方向とについては、バイオセンサ20が固定され、バイオセンサ20の位置ズレや傾きが起こり難くなる。このため、新たなバイオセンサを挿入して試料を測定する度に、バイオセンサ20の位置ズレや傾きが起こり難くなるので、測定誤差を抑えて信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0052】
<変形例>
なお、駒体156aの代わりに、図5に示す駒体156fを使用するとしてもよい。駒体156fは、4個の点状突起部156eが表面に形成された板状天板部156aの代わりに、2個の線状突起部156hが表面に形成された板状天板部156gを有する。線状突起部156hは、挿入方向(X方向)に沿って配置されている。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、試料中の分析対象物について測定を行う測定装置などとして、特に、バイオセンサの位置ズレや傾きが起こり難い測定装置などとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態におけるバイオセンサの未挿入状態の装着部を示す斜視図である。
【図2】実施の形態におけるバイオセンサの挿入状態の装着部を示す斜視図である。
【図3A】実施の形態における装着部を示す平面図である。
【図3B】実施の形態における装着部を切断線A−Aで切断して矢視方向に見た断面図である。
【図3C】実施の形態における装着部を切断線B−Bで切断して矢視方向に見た断面図である。
【図4A】従来の技術における測定装置に対して、バイオセンサを複数回抜き差ししたときの測定誤差を示すグラフである。
【図4B】実施の形態における測定装置に対して、バイオセンサを複数回抜き差ししたときの測定誤差を示すグラフである。
【図5】実施の形態の変形例における駒体を示す斜視図である。
【図6】従来の技術における測定装置の概要を示す図である。
【図7】従来の技術における測定装置の構成を示す図である。
【図8A】従来の技術における装着部にバイオセンサが正位で装着された場合における光の散乱分布の様子を示す模式図である。
【図8B】従来の技術における装着部にバイオセンサが傾いた状態で装着された場合における光の散乱分布の様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0055】
10 測定装置
11 光源
12 遮光板
12a 開口
13 集光レンズ
14 受光素子
15 信号変換部
16 画像処理部
17 出力部
18 ステージ
20 バイオセンサ
21 展開部
22 反応部
30 試料
110 測定装置
118 ステージ
119 装着部
151 溝部
151a 挿入口
151b 奥
152 板
152a 切れ込み部
152b 縁部
153 凹部
154 測定部
155 第1の位置決め機構
155a 波状板ばね
155b 山部
156 第2の位置決め機構
156a 駒体
156b コイルばね
156c 板状天板部
156d 柱状脚部
156e 点状突起部
156f 駒体
156g 板状天板部
156h 線状突起部
157 第1の窪み部
158 第2の窪み部
158a 下部
158b 上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる試料に化学的処理を施す試験片であるバイオセンサを使用してクロマトグラフィー測定を行う測定装置であって、
前記バイオセンサの長手方向を挿入方向として前記バイオセンサが挿入される空間が形成されている装着部に、前記バイオセンサの短手方向に沿って前記装着部の第1の壁面に前記バイオセンサを押圧させて位置決めさせる第1の位置決め手段と、前記バイオセンサの厚み方向に沿って前記装着部の第2の壁面に前記バイオセンサを押圧させて位置決めさせる第2の位置決め手段とを有した位置決め装置が設置されている
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記第1の位置決め手段が、前記バイオセンサの長手方向に沿った第1の点と第2の点とで前記バイオセンサと接触して前記バイオセンサを押すものであり、
前記第2の位置決め手段が、前記バイオセンサの短手方向から見て、前記第1の点と前記第2の点との間で前記バイオセンサと接触して前記バイオセンサを押すものである
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記第2の位置決め手段が、前記バイオセンサと接触する駒体と、前記駒体を前記バイオセンサに押圧させるコイルばねとを有するものである
ことを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記駒体が、前記コイルばねと組み合わさった状態で、前記バイオセンサの厚み方向に直交する第1の軸と第2の軸とのまわりに揺動可能なものである
ことを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記駒体が、点または前記挿入方向に沿って伸びる線で、前記バイオセンサの厚み方向に前記バイオセンサを押すものである
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記第1の位置決め手段が、前記第1の点と前記第2の点との位置に合わせて配置された突起部を有する板ばねである
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記第1の位置決め手段と前記第2の位置決め手段とが、前記バイオセンサの長手方向に沿った前記バイオセンサの一部であって前記バイオセンサにおいて光学的な測定を受ける被測定領域の部分を、前記第1の壁面と前記第2の壁面とに押圧させるものである
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2010−107453(P2010−107453A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281854(P2008−281854)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】