説明

測定装置

【課題】バイオセンサの表面の粗さ(凹凸)に起因した光学ノイズを較正する測定装置を提供する。
【解決手段】測定装置110は、(a)バイオセンサ120に点着された試料に対してクロマトグラフィー測定を行う測定装置であって、(b)バイオセンサ120の測定部(展開部122、反応部123)を撮影して測定部の映像信号を生成する撮影ユニット(発光素子111、絞り112、集光レンズ113、受光素子114、および信号変換部115)と、(c)撮影ユニットを制御して、測定部に試料が展開される前と展開された後とに、撮影ユニットに測定部を撮影させる制御部119と、(d)測定部に試料が展開される前に撮影ユニットで生成された映像信号を使用して、測定部に試料が展開された後に撮影ユニットで生成された映像信号に含まれた各バイオセンサに固有のノイズ成分を除去する画像処理部116とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の分析対象物について測定を行う測定装置に関し、特に、バイオセンサに点着された試料に対してクロマトグラフィー測定を行う測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試料中の分析対象物について測定を行う測定装置として、バイオセンサに点着された試料に対してクロマトグラフィー測定を行う測定装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
具体的には、図15(A)に示すように、測定装置10は、光源11、フィルタ12、集光レンズ13、イメージセンサ14、信号変換部15、画像処理部16、出力部17を備える。集光レンズ13は、バイオセンサ20の像をイメージセンサ14の受光面上に結像させる位置に配置されている。
【0004】
図15(B)に示すように、バイオセンサ20は、ニトロセルロースメンブレンから構成される展開部21の上に、試料中の分析対象物と反応して呈色する反応部22と、標準信号が得られる反射片23が設けられている。ここで、標準信号とは、光源11の光量の変動などに起因した感度の変動を較正するときに、標準となる信号である。
【0005】
測定装置10は、光源11を発光させて、バイオセンサ20の表面を照射する。照射したバイオセンサ20の表面で反射した光は、光学フィルタ12と、集光レンズ13とを通過し、イメージセンサ14に入射する。イメージセンサ14に入射した光は、イメージセンサ14において電気信号に変換される。変換されて得られた電気信号は、信号変換部15に出力され、信号変換部15において映像信号に変換される。変換されて得られた映像信号は、画像処理部16に出力され、画像処理部16において画像処理が行われる。画像処理が行われて得られた結果は、出力部17に出力される。ここで、画像処理とは、反応部22の反射光量に応じた出力信号と、反射片23の反射光量に応じた標準信号とを使用して、反応部22の反射率を演算する処理である。
【特許文献1】特許3559975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バイオセンサ20の展開部21の表面が粗いので、出力信号の波形に光学ノイズが発生する。このため、反応部22の呈色が弱いと、出力信号の波形に発生する光学ノイズによって、S/Nが悪化し、高精度の検出が難しくなり、高精度の測定を行うことが困難になる。
【0007】
すなわち、反射片23の反射光量に応じた標準信号を使用するだけでは、光源11の光量の変動などに起因した感度の変動を較正することができても、バイオセンサ20の表面の粗さ(凹凸)に起因した光学ノイズを較正することができない。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、バイオセンサの表面の粗さ(凹凸)に起因した光学ノイズを較正する測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係わる測定装置は、下記に示す特徴を備える。
(CL1)測定装置は、(a)バイオセンサに点着された試料に対してクロマトグラフィー測定を行う測定装置であって、(b)前記バイオセンサの測定部を撮影して前記測定部の映像信号を生成する撮影手段と、(c)前記撮影手段を制御して、前記測定部に前記試料が展開される前と展開された後とに、前記撮影手段に前記測定部を撮影させる制御手段と、(d)前記測定部に前記試料が展開される前に前記撮影手段で生成された映像信号を使用して、前記測定部に前記試料が展開された後に前記撮影手段で生成された映像信号に含まれた各バイオセンサに固有のノイズ成分を除去する画像処理手段とを備える。
【0010】
これによって、試料展開前の映像信号を使用して試料展開後の映像信号を補正することによって、バイオセンサの表面の粗さに起因した光学ノイズを除去することができる。また、呈色の弱い反応部分においても測定精度を高めることができる。
【0011】
(CL2)上記(CL1)に記載の測定装置は、(a)前記バイオセンサが装置内に挿入されたか否かを検知する検知手段を備え、(b)前記制御手段が、前記撮影手段を制御して、前記検知手段によって前記バイオセンサが装置内に挿入されたと検知されてから前記測定部に前記試料が展開されるまでに、前記撮影手段に前記測定部を撮影させるとしてもよい。
【0012】
これによって、バイオセンサを挿入するだけで、試料が展開される前におけるバイオセンサの表面の粗さ(凹凸)を撮影することができ、容易に、測定の信頼性を高めることができる。
【0013】
(CL3)上記(CL1)に記載の測定装置は、前記画像処理手段において、前記測定部に前記試料が展開される前に前記撮影手段で生成された映像信号が所定の信号レベル以下であるか否かを判定し、前記所定の信号レベル以下であると判定した場合は、前記バイオセンサが使用済みであると判定し、前記所定の信号レベル以下でないと判定した場合は、前記バイオセンサが使用可能であると判定する判定手段を備えるとしてもよい。
【0014】
これによって、使用可能なバイオセンサであることが識別可能となり、測定の信頼性を高めることができる。
(CL4)上記(CL1)に記載の測定装置は、(a)前記画像処理手段において、(b)前記測定部に前記試料が展開される前に前記撮影手段で生成された映像信号で所定の値を除算して得る補正係数を記憶する補正係数記憶手段と、(c)前記測定部に前記試料が展開された後に前記撮影手段で生成された映像信号に、前記補正係数記憶手段で記憶されている補正係数を乗算することによってノイズ成分を除去するノイズ成分除去手段とを備えるとしてもよい。
【0015】
これによって、試料展開後の映像信号に補正係数を乗算することによって、容易に、試料展開後の映像信号を補正することができる。
(CL5)上記(CL1)に記載の測定装置は、(a)前記画像処理手段において、(b)前記測定部に前記試料が展開される前に前記撮影手段で生成された映像信号を記憶する試料展開前信号記憶手段と、(c)前記測定部に前記試料が展開された後に前記撮影手段で生成された映像信号から、前記試料展開前信号記憶手段で記憶されている映像信号を減算することによってノイズ成分を除去するノイズ成分除去手段とを備えるとしてもよい。
【0016】
これによって、試料展開後の映像信号から試料展開前の映像信号を減算することによって、容易に、試料展開後の映像信号を補正することができる。
(CL6)上記(CL4)又は(CL5)に記載の測定装置は、(a)前記バイオセンサにおいて、測定の開始地点と終了地点とにマーキングが印されており、(b)前記ノイズ成分除去手段が、測定の開始地点と終了地点とに印されている前記マーキングを合わせるようにして、前記試料が展開される前の前記測定部と前記試料が展開された後の前記測定部との位置を合わせるとしてもよい。
【0017】
これによって、補正を行う領域が明確になり、1回目に撮影した測定部と2回目に撮影した測定部との間における位置ズレを無くすことができ、測定の信頼性を高めることができる。
【0018】
なお、本発明は、測定装置として実現されるだけではなく、測定方法として実現されるとしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、試料展開前の映像信号を使用して、試料展開後の映像信号を補正する。これによって、バイオセンサの表面の粗さに起因した光学ノイズを除去することができる。また、呈色の弱い反応部分においても測定精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下、本発明に係わる実施の形態1について説明する。
<概要>
本実施の形態における測定装置は、下記(1)〜(4)に示す特徴を備える。
【0021】
(1)測定装置は、(a)バイオセンサに点着された試料に対してクロマトグラフィー測定を行う測定装置であって、(b)バイオセンサの測定部を撮影して測定部の映像信号を生成する撮影手段と、(c)撮影手段を制御して、測定部に試料が展開される前と展開された後とに、撮影手段に測定部を撮影させる制御手段と、(d)測定部に試料が展開される前に撮影手段で生成された映像信号を使用して、測定部に試料が展開された後に撮影手段で生成された映像信号に含まれた各バイオセンサに固有のノイズ成分を除去する画像処理手段とを備える。
【0022】
(2)測定装置は、(a)バイオセンサが装置内に挿入されたか否かを検知する検知手段を備え、(b)制御手段が、撮影手段を制御して、検知手段によってバイオセンサが装置内に挿入されたと検知されてから測定部に試料が展開されるまでに、撮影手段に測定部を撮影させる。
【0023】
(3)測定装置は、画像処理手段において、測定部に試料が展開される前に撮影手段で生成された映像信号が所定の信号レベル以下であるか否かを判定し、所定の信号レベル以下であると判定した場合は、バイオセンサが使用済みであると判定し、所定の信号レベル以下でないと判定した場合は、バイオセンサが使用可能であると判定する判定手段を備える。
【0024】
(4)測定装置は、(a)画像処理手段において、(b)測定部に試料が展開される前に撮影手段で生成された映像信号で所定の値を除算して得る補正係数を記憶する補正係数記憶手段と、(c)測定部に試料が展開された後に撮影手段で生成された映像信号に、補正係数記憶手段で記憶されている補正係数を乗算することによってノイズ成分を除去するノイズ成分除去手段とを備える。
【0025】
以上の点を踏まえて、本実施の形態における測定装置について説明する。
<構成>
図1に示すように、測定装置110にバイオセンサ120が装着され、測定対象となる試料130がバイオセンサ120に点着される。測定装置110は、バイオセンサ120に点着された試料130に対してクロマトグラフィー測定を行う装置である。バイオセンサ120は、測定対象となる試料に化学的処理を施す試験片である。試料130は、血液、血液から分離された血球や血漿などの成分、尿や鼻水などの体液などである。ここでは、人の指先を針で突いたときの出血(10μリットル程度の量)を試料としている。
【0026】
ここでは、一例として、図2に示すように、測定装置110は、発光素子111、絞り112、集光レンズ113、受光素子114、信号変換部115、画像処理部116、出力部117、検知センサ118、制御部119を備える。バイオセンサ120は、一定量の試料が供給される供給部121と、供給部121に供給された試料が展開する展開部122と、試料中の分析対象物の濃度に応じて呈色する反応部123とを備える。
【0027】
なお、発光素子111、絞り112、集光レンズ113、受光素子114、および信号変換部115が上記の撮影手段に該当する。画像処理部116が上記の画像処理手段に該当する。制御部119が上記の制御処理手段に該当する。展開部122、反応部123が上記の測定部に該当する。
【0028】
<発光素子111>
発光素子111は、標識試薬の金コロイドと試料の血液(赤血球)との吸光度差が十分得られる光を発光するLED(Light Emitting Diode)である。発光面をバイオセンサ120の表面(以下、測定面と呼称する。)に向けてバイオセンサ120の斜め上方に設置される。制御部119から発光駆動信号を受信すると発光する。
【0029】
例えば、発光素子111として、波長が610nmの発光ダイオードを使用するとしてもよい。これによって、標識試薬の金コロイドと試料の血液(赤血球)との吸光度差が十分得られる。なお、発光素子111にランプを使用して光学フィルタで通過する波長を制限しても同様の効果が得られる。
【0030】
<絞り112>
絞り112は、光の量を調節する板状の遮蔽物である。入射面をバイオセンサ120の測定面に向けてバイオセンサ120の上方に配置される。バイオセンサ120の上方に散乱された光(反射光)の光量を調節する。
【0031】
<集光レンズ113>
集光レンズ113は、焦点に光を集める凸レンズである。入射面を絞りの射出面に向けて焦点を受光素子の受光面に合わせて絞りの上方に配置される。絞り112で調節された光を集光する。
【0032】
<受光素子114>
受光素子114は、受光した光を変換して得られた電気信号を出力するCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサである。受光面を集光レンズ113の射出面に向けて集光レンズ113の上方に配置される。集光レンズ113で集光された光を受光する。制御部119から受光駆動信号を受信すると、受光した光を変換して得られた電気信号を出力する。
【0033】
<信号変換部115>
信号変換部115は、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータである。受光素子114から出力された電気信号(アナログ信号)を、輝度などの情報を含む映像信号(デジタル信号)に変換し、変換して得られた映像信号を出力する。
【0034】
<画像処理部116>
画像処理部116は、演算機能、記憶機能などを備える画像処理プロセッサである。図3に示すように、出力先選択部116a、輝度判定部116b、基準値記憶部116c、補正係数算出部116d、目標輝度記憶部116e、補正係数記憶部116f、ノイズ成分除去部116g、測定領域抽出部116h、吸光度算出部116i、濃度換算部116j、警告部116kを備える。
【0035】
出力先選択部116aは、制御部119から切替制御信号を受信すると、受信した切替制御信号に応じて、輝度判定部116bおよびノイズ成分除去部116gのいずれかを出力先として選択する。信号変換部115から出力された映像信号を、選択した出力先に出力する。
【0036】
輝度判定部116bは、出力先選択部116aから出力された映像信号の輝度が、基準値記憶部116cで記憶されている基準値以下であるか否かを判定する。判定した結果、基準値以下である場合は、警告信号を警告部116kに送信する。一方、所定の輝度以下でない場合は、判定した映像信号を補正係数算出部116dに出力する。
【0037】
基準値記憶部116cは、未使用のバイオセンサ120の測定面を撮影して得られる映像信号の輝度よりも小さく、使用済みのバイオセンサ120の測定面を撮影して得られる映像信号の輝度よりも大きい輝度(所定の信号レベル)を基準値として記憶する。
【0038】
補正係数算出部116dは、目標輝度記憶部116eで記憶されている目標輝度(一定値)を、輝度判定部116bから出力された映像信号の輝度で除算する。除算して得られた結果を補正係数として補正係数記憶部116fに書き込む。
【0039】
目標輝度記憶部116eは、目標となる輝度に関する値(目標輝度)を記憶している。
補正係数記憶部116fは、補正係数算出部116dによって書き込まれた補正係数を記憶する。
【0040】
ノイズ成分除去部116gは、出力先選択部116aから出力された映像信号の輝度に、補正係数記憶部116fで記憶されている補正係数を乗算する。乗算して得られた結果を測定領域抽出部116hに出力する。これによって、受光素子114の各画素に発生したノイズ成分を除去した映像信号が得られる。
【0041】
測定領域抽出部116hは、ノイズ成分除去部116gから出力された結果から、測定領域に含まれる信号を抽出する。抽出して得られた結果を吸光度算出部116iに出力する。
【0042】
吸光度算出部116iは、測定領域抽出部116hから出力された結果から、反応部123の吸光度を算出する。算出して得られた結果を濃度換算部116jに出力する。
濃度換算部116jは、吸光度算出部116iから出力された結果から、濃度換算式に基づいて分析対象物の濃度を計算する。計算して得られた結果を出力部117に出力する。
【0043】
警告部116kは、輝度判定部116bから警告信号を受信すると、測定装置内に挿入されたバイオセンサ120が使用済みバイオセンサ120であることを示す警告情報を出力部117に出力する。
【0044】
<出力部117>
出力部117は、音声や映像などを出力する出力デバイスである。濃度換算部116jから出力された結果を分析対象物の濃度として出力する。また、警告部116kから出力された警告情報を出力する。
【0045】
<検知センサ118>
検知センサ118は、接触すると検知信号を出力するタッチセンサである。測定装置110にバイオセンサ120が挿入されたときに、バイオセンサ120の先端と接触する位置に配置される。測定装置110に挿入されたバイオセンサ120の先端が接触すると、検知信号を出力する。
【0046】
<制御部119>
制御部119は、発光素子111、受光素子114、画像処理部116などを制御するコントローラである。検知センサ118から検知信号を受信すると、検知センサ118から検知信号を受信してから1回目の撮影が始まるまでに、輝度判定部116bを出力先として選択させる切替制御信号を出力先選択部116aに送信する。バイオセンサ120の展開部122に試料が展開される前に、発光駆動信号を発光素子111に送信し、受光駆動信号を受光素子114に送信する(1回目の撮影)。その後、1回目の撮影が終わってから2回目の撮影が始まるまでに、ノイズ成分除去部116gを出力先として選択させる切替制御信号を出力先選択部116aに送信する。バイオセンサ120の展開部122に試料が展開された直後に、発光駆動信号を発光素子111に送信し、受光駆動信号を受光素子114に送信する(2回目の撮影)。
【0047】
すなわち、測定装置110は、補正係数を特定するために1回目の撮影が行われ、分析対象物の濃度を測定するために2回目の撮影が行われる。
<バイオセンサ120>
バイオセンサ120は、濾紙などから構成されている。表面が粗く、細かな凹凸が表面に形成されている。形状が矩形であり、長手方向の一端に供給部121が配置され、長手方向に沿って展開部122が配置され、中央に反応部123が配置されている。試料中の分析対象物と特異的に結合する標識物質が反応部123に塗布されている。供給部121に点着された試料が、展開部122に沿って展開していき、反応部123で標識物質と結合する。標識物質が試料中の分析対象物の濃度に応じて呈色する。呈色度に応じて光が吸光されるので、呈色した反応部123に対する反射率の変化を測定する。これによって、試料中の分析対象物の濃度が特定される。
【0048】
<輝度変化>
次に、バイオセンサ120の展開部122の輝度変化について説明する。
図4に示すように、グラフ170は、縦軸を輝度とし、横軸を時間とし、バイオセンサ120の展開部122における輝度の時間変化を表している。
【0049】
例えば、バイオセンサ120の展開部122に試料130が展開されていない状態(以下、試料展開前状態と呼称する。)の展開部122における輝度を100%とする。これに対して、バイオセンサ120の展開部122に試料130が展開された直後の状態(以下、試料展開直後状態と呼称する。)の展開部122における輝度が、試料展開前状態の展開部122における輝度から10%低下している。また、バイオセンサ120の展開部122に展開された試料130が乾燥した状態(以下、試料乾燥状態と呼称する。)の展開部122における輝度が、試料展開前状態の展開部122における輝度から5%低下している。
【0050】
これから、輝度を測定することによって、バイオセンサ120の展開部122の状態を把握することができる。
<動作>
次に、測定装置110の動作(以下、測定処理と呼称する。)について説明する。
【0051】
図5に示すように、測定装置110は、装置内にバイオセンサ120が挿入されると(S101:Yes)、バイオセンサ120の測定面を撮影する(S102)。撮影して得られた映像信号の輝度が基準値以下である場合は(S103:Yes)、装置内に挿入されたバイオセンサ120が使用済みバイオセンサ120であることを示す警告を出力する(S104)。未使用のバイオセンサ120が挿入されるまで、繰り返し警告する。一方、撮影して得られた映像信号の輝度が基準値以下でない場合は(103;No)、撮影して得られた映像信号の輝度から補正係数を算出する(S105)。このとき、図6に示すように、補正係数算出部116dにおいて、目標輝度記憶部116eで記憶されている目標輝度(一定値)が、輝度判定部116bで判定した映像信号の輝度で除算され、除算されて得られた結果が補正係数として補正係数記憶部116fに書き込まれる。
【0052】
次に、図5に示すように、測定装置110は、試料130を展開して測定を行うときに、バイオセンサ120の測定面を再撮影する(S106)。算出した補正係数を使用して、再撮影して得られた映像信号の輝度からノイズ成分を除去する(S107)。このとき、図7に示すように、ノイズ成分除去部116gにおいて、出力先選択部116aから出力された映像信号の輝度に、補正係数記憶部116fで記憶されている補正係数が乗算され、受光素子114の各画素に発生したノイズ成分が除去された映像信号が得られる。
【0053】
そして、図5に示すように、測定装置110は、ノイズ成分を除去した映像信号を使用して分析対象物の濃度を特定する(S108)。特定した分析対象物の濃度を測定結果として出力する(S109)。
【0054】
<まとめ>
以上、本実施の形態によれば、測定装置110は、試料展開前に、バイオセンサ120の測定面を撮影する。撮影して得られた映像信号の輝度から、目標とする一定値(目標輝度)に対する補正係数を計算する。計算して得られた補正係数を記憶しておく。試料展開後に、バイオセンサ120の測定面を撮影する。撮影して得られた映像信号の輝度に、記憶している補正係数を乗算する。このように、試料展開前の映像信号の輝度を使用して、試料展開後の映像信号の輝度を補正する。これによって、バイオセンサ120の測定面の粗さに起因した光学ノイズを除去することができる。また、呈色の弱い反応部123においても測定精度を高めることができる。
【0055】
(実施の形態2)
以下、本発明に係わる実施の形態2について説明する。
<概要>
本実施の形態における測定装置は、下記(5)に示す特徴を備える。
【0056】
(5)測定装置は、(a)画像処理手段において、(b)測定部に試料が展開される前に撮影手段で生成された映像信号を記憶する試料展開前信号記憶手段と、(c)測定部に試料が展開された後に撮影手段で生成された映像信号から、試料展開前信号記憶手段で記憶されている映像信号を減算することによってノイズ成分を除去するノイズ成分除去手段とを備える。
【0057】
以上の点を踏まえて、本実施の形態における測定装置について説明する。なお、実施の形態1と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
<構成>
ここでは、一例として、図8に示すように、測定装置210は、実施の形態1における測定装置110と比べて、画像処理部116の代わりに、画像処理部216を備える点が異なる。
【0058】
<画像処理部216>
画像処理部216は、図9に示すように、実施の形態1における画像処理部116と比べて、補正係数算出部116d、目標輝度記憶部116e、補正係数記憶部116f、ノイズ成分除去部116gの代わりに、試料展開前輝度記憶部216d、ノイズ成分除去部216gを備える点が異なる。
【0059】
試料展開前輝度記憶部216dは、輝度判定部116bから出力された映像信号の輝度(試料展開前の輝度)を記憶する。
ノイズ成分除去部116gは、出力先選択部116aから出力された映像信号の輝度(試料展開後の輝度)から、試料展開前輝度記憶部216dで記憶されている映像信号の輝度(試料展開前の輝度)を減算する。減算して得られた結果を測定領域抽出部116hに出力する。これによって、受光素子114の各画素に発生したノイズ成分を除去した映像信号が得られる。
【0060】
<動作>
次に、測定装置210の動作について説明する。
図10に示すように、測定装置210は、実施の形態1における測定処理のステップ(S101)〜(S103)を実行し、撮影して得られた映像信号の輝度が基準値以下でない場合は(S103;No)、撮影して得られた映像信号の輝度(試料展開前の輝度)を記憶する(S201)。
【0061】
次に、測定装置210は、試料130を展開して測定を行うときに、バイオセンサ120の測定面を再撮影する(S106)。記憶している映像信号の輝度(試料展開前の輝度)を使用して、再撮影して得られた映像信号の輝度(試料展開後の輝度)からノイズ成分を除去する(S202)。このとき、図11に示すように、ノイズ成分除去部216gにおいて、出力先選択部116aから出力された映像信号の輝度(試料展開後の輝度)に、試料展開前輝度記憶部216dで記憶されている映像信号の輝度(試料展開前の輝度)が減算され、受光素子114の各画素に発生したノイズ成分が除去された映像信号が得られる。
【0062】
そして、実施の形態1における測定処理のステップ(S108),(S109)を実行する。
<まとめ>
以上、本実施の形態によれば、試料展開後の輝度から試料展開前の輝度を減算することによって、試料展開後の輝度を補正する。これによって、バイオセンサ120の測定面の粗さに起因した光学ノイズを除去することができる。また、呈色の弱い反応部123においても測定精度を高めることができる。
【0063】
(実施の形態3)
以下、本発明に係わる実施の形態3について説明する。
<概要>
本実施の形態における測定装置は、下記(6)に示す特徴を備える。
【0064】
(6)測定装置は、(a)バイオセンサにおいて、測定の開始地点と終了地点とにマーキングが印されており、(b)ノイズ成分除去手段が、測定の開始地点と終了地点とに印されているマーキングを合わせるようにして、試料が展開される前の測定部と試料が展開された後の測定部との位置を合わせる。
【0065】
以上の点を踏まえて、本実施の形態における測定装置について説明する。なお、実施の形態1と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
<構成>
ここでは、一例として、図12に示すように、測定装置310は、実施の形態1における測定装置110と比べて、画像処理部116、バイオセンサ120の代わりに、画像処理部316、バイオセンサ320を備える点が異なる。
【0066】
<バイオセンサ320>
バイオセンサ320は、実施の形態1におけるバイオセンサ120と比べて、展開部322に、測定の開始地点と終了地点とにマーキング324が印されている点が異なる。
【0067】
<画像処理部316>
画像処理部316は、図13に示すように、実施の形態1における画像処理部116と比べて、ノイズ成分除去部116gの代わりに、ノイズ成分除去部316gを備える点が異なる。
【0068】
ノイズ成分除去部316gは、出力先選択部116aから出力された映像信号の輝度(試料展開後の輝度)と、補正係数記憶部116fで記憶されている補正係数とに含まれるマーキング324の位置を合わせる。出力先選択部116aから出力された映像信号の輝度(試料展開後の輝度)に、補正係数記憶部116fで記憶されている補正係数を乗算する。乗算して得られた結果を測定領域抽出部116hに出力する。これによって、受光素子114の各画素に発生したノイズ成分を除去した映像信号が得られる。
【0069】
<動作>
次に、測定装置310の動作について説明する。
図14に示すように、測定装置310は、実施の形態1における測定処理のステップ(S101)〜(S106)を実行し、1回目に撮影して得られた補正係数と2回目に撮影して得られた映像信号の輝度とに含まれるマーキング324の位置を合わせる(S301)。算出した補正係数を使用して、再撮影して得られた映像信号の輝度からノイズ成分を除去する(S107)。
【0070】
そして、実施の形態1における測定処理のステップ(S108),(S109)を実行する。
<まとめ>
以上、本実施の形態によれば、バイオセンサ320の測定面において、測定の開始地点と終了地点とにマーキング324が印されている。測定の開始地点と終了地点とに印されているマーキング324を合わせるようにして、1回目に撮影した測定面と2回目に撮影した測定面との位置を合わせる。これによって、補正を行う領域が明確になり、1回目に撮影した測定面と2回目に撮影した測定面との間における位置ズレを無くすことができ、測定の信頼性を高めることができる。
【0071】
(その他)
なお、実施の形態3における測定装置310は、ノイズ成分を除去するにあたって、試料展開後の映像信号の輝度に補正係数を乗算する代わりに、実施の形態2における測定装置210のように、試料展開後の映像信号の輝度から試料展開前の映像信号の輝度を減算するとしてもよい。
【0072】
なお、実施の形態1における測定装置110において、バイオセンサ120の表面側に配置されている絞り112、集光レンズ113、受光素子114が、バイオセンサ120の表面側の代わりに、上下反転させた配置で、バイオセンサ120の裏面側に配置されるとしてもよい。これによって、バイオセンサ120の裏面から射出された透過光を受光素子114で受光することができ、受光した透過光から試料130の分析対象物の濃度を特定することができる。
【0073】
なお、本発明に係わる画像処理部116や制御部119などは、フルカスタムLSI(Large Scale Integration)によって実現されるとしてもよい。また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のようなセミカスタムLSIによって実現されるとしてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等のようなプログラマブル・ロジック・デバイスによって実現されるとしてもよい。また、動的に回路構成が書き換え可能なダイナミック・リコンフィギュラブル・デバイスとして実現されるとしてもよい。
【0074】
さらに、本発明に係わる画像処理部116や制御部119などを構成する1以上の機能を、これ等のLSIに形成する設計データは、VHDL(Very high speed integrated circuit Hardware Description Language)、Verilog−HDL、SystemC等のようなハードウェア記述言語によって記述されたプログラム(以下、HDLプログラムと呼称する。)であるとしてもよい。また、HDLプログラムを論理合成して得られるゲート・レベルのネットリストであるとしてもよい。また、ゲート・レベルのネットリストに、配置情報、プロセス条件等を付加したマクロセル情報であるとしてもよい。また、寸法、タイミング等が規定されたマスクデータであるとしてもよい。
【0075】
さらに、設計データは、コンピュータシステム、組み込みシステムなどのようなハードウェアシステムに読み取り可能な記録媒体に記録されているとしてもよい。さらに、記録媒体を介して他のハードウェアシステムに読み取られた設計データが、ダウンロードケーブルを介して、プログラマブル・ロジック・デバイスにダウンロードされるとしてもよい。これによって、本発明に係わる画像処理部116や制御部119などを他のハードウェアシステムに実現することができる。ここで、ハードウェアシステムに読み取り可能な記録媒体としては、光学記録媒体(例えば、CD−ROMなど。)、磁気記録媒体(例えば、ハードディスクなど。)、光磁気記録媒体(例えば、MOなど。)、半導体メモリ(例えば、メモリカードなど。)などがある。
【0076】
また、設計データは、インターネット、ローカルエリアネットワークなどのようなネットワークに接続されているハードウェアシステムに保持されているとしてもよい。さらに、ネットワークを介して他のハードウェアシステムに取得された設計データが、ダウンロードケーブルを介して、プログラマブル・ロジック・デバイスにダウンロードされるとしてもよい。これによって、本発明に係わる画像処理部116や制御部119などを他のハードウェアシステムに実現することができる。ここで、ネットワークとして、地上放送網、衛星放送網、PLC(Power Line Communication)、移動電話網、有線通信網(例えば、IEEE802.3など。)、無線通信網(例えば、IEEE802.11など。)がある。
【0077】
また、論理合成、配置、配線された設計データは、シリアルROMに記録されているとしてもよい。そして、シリアルROMに記録された設計データが、通電時に、直接、FPGAにダウンロードされるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、試料中の分析対象物について測定を行う測定装置などとして、特に、バイオセンサに点着された試料に対してクロマトグラフィー測定を行う測定装置などとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施の形態1における測定装置の概要を示す図である。
【図2】実施の形態1における測定装置の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1における画像処理部の構成を示す図である。
【図4】実施の形態1におけるバイオセンサの展開部における輝度変化を示す図である。
【図5】実施の形態1における測定処理を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1における補正係数算出部による輝度の補正係数の算出を行う過程における信号の流れの概要を示す図である。
【図7】実施の形態1におけるノイズ成分除去部による輝度の補正を行う過程における信号の流れの概要を示す図である。
【図8】実施の形態2における測定装置の構成を示す図である。
【図9】実施の形態2における画像処理部の構成を示す図である。
【図10】実施の形態2における測定処理を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2におけるノイズ成分除去部による輝度の補正を行う過程における信号の流れの概要を示す図である。
【図12】実施の形態3における測定装置の構成を示す図である。
【図13】実施の形態3における画像処理部の構成を示す図である。
【図14】実施の形態3における測定処理を示すフローチャートである。
【図15】従来の技術における測定装置の構成を示す図であり、(A)は、測定装置の構成を示す図であり、(B)は、バイオセンサを測定したときの出力信号を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
10 測定装置
11 光源
12 光学フィルタ
13 集光レンズ
14 受光素子
15 信号変換部
16 画像処理部
17 出力部
20 バイオセンサ
21 展開部
22 反応部
23 反射片
110 測定装置
111 発光素子
112 絞り
113 集光レンズ
114 受光素子
115 信号変換部
116 画像処理部
116a 出力先選択部
116b 輝度判定部
116c 基準値記憶部
116d 補正係数算出部
116e 目標輝度記憶部
116f 補正係数記憶部
116g ノイズ成分除去部
116h 測定領域抽出部
116i 吸光度算出部
116j 濃度換算部
116k 警告部
117 出力部
118 検知センサ
119 制御部
120 バイオセンサ
121 供給部
122 展開部
123 反応部
130 試料
210 測定装置
216 画像処理部
216d 試料展開前輝度記憶部
216g ノイズ成分除去部
310 測定装置
316 画像処理部
316g ノイズ成分除去部
320 バイオセンサ
322 展開部
324 マーキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセンサに点着された試料に対してクロマトグラフィー測定を行う測定装置であって、
前記バイオセンサの測定部を撮影して前記測定部の映像信号を生成する撮影手段と、
前記撮影手段を制御して、前記測定部に前記試料が展開される前と展開された後とに、前記撮影手段に前記測定部を撮影させる制御手段と、
前記測定部に前記試料が展開される前に前記撮影手段で生成された映像信号を使用して、前記測定部に前記試料が展開された後に前記撮影手段で生成された映像信号に含まれた各バイオセンサに固有のノイズ成分を除去する画像処理手段とを備える
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記バイオセンサが装置内に挿入されたか否かを検知する検知手段を備え、
前記制御手段が、前記撮影手段を制御して、前記検知手段によって前記バイオセンサが装置内に挿入されたと検知されてから前記測定部に前記試料が展開されるまでに、前記撮影手段に前記測定部を撮影させる
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記画像処理手段において、前記測定部に前記試料が展開される前に前記撮影手段で生成された映像信号が所定の信号レベル以下であるか否かを判定し、前記所定の信号レベル以下であると判定した場合は、前記バイオセンサが使用済みであると判定し、前記所定の信号レベル以下でないと判定した場合は、前記バイオセンサが使用可能であると判定する判定手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記画像処理手段において、
前記測定部に前記試料が展開される前に前記撮影手段で生成された映像信号で所定の値を除算して得る補正係数を記憶する補正係数記憶手段と、
前記測定部に前記試料が展開された後に前記撮影手段で生成された映像信号に、前記補正係数記憶手段で記憶されている補正係数を乗算することによってノイズ成分を除去するノイズ成分除去手段とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記画像処理手段において、
前記測定部に前記試料が展開される前に前記撮影手段で生成された映像信号を記憶する試料展開前信号記憶手段と、
前記測定部に前記試料が展開された後に前記撮影手段で生成された映像信号から、前記試料展開前信号記憶手段で記憶されている映像信号を減算することによってノイズ成分を除去するノイズ成分除去手段とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
前記バイオセンサにおいて、測定の開始地点と終了地点とにマーキングが印されており、
前記ノイズ成分除去手段が、測定の開始地点と終了地点とに印されている前記マーキングを合わせるようにして、前記試料が展開される前の前記測定部と前記試料が展開された後の前記測定部との位置を合わせる
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−38702(P2010−38702A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201356(P2008−201356)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】