説明

測定装置

【課題】電源のON・OFF及び測定レンジ切替を別個のスイッチで行い、特に、電源スイッチは、テストリードに設けた近接スイッチにより実現することにより、接点不良による故障をなくし、また、極めて操作性に優れた測定装置を提供する。
【解決手段】対をなすテストリード3(3A、3B)の一方のテストリード3Aに電気信号を発するセンサ部51を設け、他方のテストリード3Bにセンサ部51に作用する作用部52を設け、テストリード3A、3Bを離接させることにより、センサ部51と作用部52とを離接させて電気信号のON・OFFを行い、装置本体2の電源のON・OFFを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定レンジ切替スイッチにより、測定対象である例えば電圧、電流、電気抵抗等の物理量の測定が可能であり、測定結果を表示部により表示するデジタルマルチメータ、携帯用テスタなどのような測定装置に関し、特に、電源のON・OFFを行う電源スイッチをテストリードに設置した測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、測定レンジ切替スイッチにより、測定対象である例えば電圧、電流、電気抵抗等の物理量の測定が可能であり、測定結果を表示部により表示する測定装置、即ち、デジタルマルチメータが広く使用されている(例えば、特許文献1を参照)。デジタルマルチメータ1Aの一例を、本願添付の図5(a)、(b)に示す。
【0003】
本例に示すように、通常、デジタルマルチメータ1Aは、メータ本体2と、メータ本体2にリード線30(30A、30B)で接続された一対のテストリード3(3A、3B)とにて構成される。各テストリード3は、電極部31(31A、31B)及び把持部32(32A、32B)にて構成される。メータ本体2には、操作部4及び表示部5などが設けられている。
【0004】
更に説明すると、図5(b)に示すように、メータ本体2は、測定部21、制御部22、操作部4及び表示部5を備え、図5(a)に示すように、例えば直流電圧測定レンジ(DCV)、交流電圧測定レンジ(ACV)、抵抗測定レンジ(Ω)及び導通レンジ(導通)などの4つの測定レンジのうちから切替操作によって選択された任意の1つの測定レンジに対応する測定処理を実行可能に構成されている。
【0005】
測定部21は、A/Dコンバータ及び演算部等を備え、制御部22の制御に従って入力信号についての電気的パラメータ(電流量や電圧値)を所定の周期でサンプリングしてサンプリングデータを生成すると共に、生成したサンプリングデータに基づいて測定値(サンプリングデータに基づく演算値)を演算する。
【0006】
制御部22は、デジタルマルチメータ1Aを総括的に制御する。具体的には、制御部22は、デジタルマルチメータ1Aに電源が投入された状態において、操作部4の切替操作によって選択された測定レンジで測定部21に測定処理を実行させると共に、測定部21による測定結果を表示部5に表示させる。
【0007】
操作部4は、デジタルマルチメータ1Aのメータ本体2に配設されたロータリスイッチ41を備え、ロータリスイッチ41の切替操作に応じた出力信号を制御部22に出力する。この場合、ロータリスイッチ41は、前述した測定レンジの内から任意の1つの測定レンジを切替操作可能に構成されている。表示部5は、制御部22の制御下で測定部21による測定結果(演算結果)を数値表示する。
【0008】
ユーザは、メータを使用するに際して、メータ本体2に設けられた、操作部4の、本例ではロータリスイッチとされる測定レンジ切替スイッチ41を回して、測定レンジ、即ち、ファンクションを設定する。つまり、デジタルマルチメータ1Aは、図示するように、ロータリスイッチ41を電源「OFF」(電源ON・OFF切替)位置から、例えば「DCV」位置、或いは、「ACV」位置などへと回し、電源をONとすると共に、ファンクション(測定レンジ)を設定する。
【0009】
また、図6(a)、(b)及び図7に示すように、従来、一側のテストリード3Aの把持部32Aにテスタ本体2を組み込んだ測定装置、所謂、携帯用テスタ1Bが使用されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0010】
携帯用テスタ1Bは、上述のように、一側のテストリード3Aを構成するテスタ本体2と、該テスタ本体2の後端部2bからリード線30を介して接続された他側テストリード3Bとを備えている。テスタ本体2の先端部2aにはテストリード3Aの探針(電極部)31Aが配置されている。
【0011】
また、テストリード3Aを構成するテスタ本体2は、デジタルマルチメータ1Aに関連して説明したと同様に、図6(b)に示すように、測定部21、制御部22、操作部4及び表示部5を備え、図6(a)に示すように、例えば直流若しくは交流電圧測定レンジ(V)及び抵抗測定レンジ(Ω)などの測定レンジのうちから切替操作によって選択された1つの測定レンジに対応する測定処理を実行可能に構成されている。
【0012】
従って、テスタ本体2の操作部4には、電源OFF(電源ON・OFF切替)、及び、電圧(V)、抵抗(Ω)測定レンジ切替を行うことができるスライド式の測定レンジ切替スイッチ41が設けられ、更に、電圧測定レンジの場合に直流電圧測定(DCV)と交流電圧測定(ACV)とのいずれかに切り替えたりするシフトキー42、測定値のホールド機能等のような予め設定してある特定機能を動作させるための特定機能入力キー43等が設置されている。また、テスタ本体2の後端部2b側には、例えばLCDから成る表示部5が配置されている。
【0013】
更に、テスタ本体2における一側のテストリード3Aの探針31Aの近傍位置には、該一側テストリード3Aの探針31A方向を照射する例えば白色LEDなどから成るライト33が配置されている。ライト33の点灯操作は、特定機能入力キー43の操作により行われる。
【0014】
ユーザは、携帯用テスタ1Bを使用するに際して、テスタ本体2に設けられた、本例ではスライドスイッチとされる測定レンジ切替スイッチ41をスライドさせて、測定レンジ、即ち、ファンクションを設定する。つまり、携帯用テスタ1Bは、図示するように、例えば、直流電圧(DCV)と交流電圧(ACV)、及び、電気抵抗(Ω)が測定可能であって、スライドスイッチ41を「OFF」位置から、例えば、電圧測定位置(V)へと摺動させて電源をONとすると共に、ファンクションを設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−20228公報
【特許文献2】特開2004−20361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記特許文献1、2に記載のデジタルマルチメータ1A、携帯用テスタ1B等のような測定装置では、上述のように、電源ON・OFF及び測定レンジ切替は、ロータリスイッチ或いはスライドスイッチにて行われている。
【0017】
電源ON・OFF及び測定レンジ切替をロータリスイッチ或いはスライドスイッチで行った場合には、スイッチ接点の接触不良を起こす可能性がある。スイッチ接点の接触不良を回避するには、スイッチを構成する部材の機械的強度を高め、接触不良を起こさないような機構を採用することにより、確実なスイッチ作動を達成し得るが、スイッチ機構が複雑となり、スイッチ自体の大型化により、測定装置自体の小型化が困難になるという問題がある。また、操作性においても問題がある。
【0018】
本発明者らの研究実験の結果によると、電源のON・OFFのための電源スイッチと測定レンジ切替のための測定レンジ切替スイッチとを別個に設け、特に、電源スイッチは、テストリードに設けた近接スイッチ(例えば磁気スイッチ)により実現することにより、接点不良による故障をなくし、また、極めて操作性に優れた測定装置を実現し得ることが分かった。
【0019】
本発明の目的は、電源のON・OFF及び測定レンジ切替を別個のスイッチで行い、特に、電源スイッチは、テストリードに設けた近接スイッチにより実現することにより、接点不良による故障をなくし、また、極めて操作性に優れた測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的は本発明に係る測定装置にて達成される。要約すれば、本発明は、装置本体に接続された一対のテストリードを用いて被測定物の物理量を測定する測定部と、測定結果を表示する表示部とを備えた測定装置において、
前記対をなすテストリードの一方のテストリードに制御信号を発するセンサ部を設け、他方のテストリードに前記センサ部に作用する作用部を設け、前記テストリードを離接させることにより、前記センサ部と前記作用部とを離接させて前記制御信号のON・OFFを行い、前記装置本体の電源のON・OFFを行うことを特徴とする測定装置である。
【0021】
本発明の一実施態様によると、前記測定装置は、前記装置本体が一方のテストリードに設けられた携帯用テスタであって、前記センサ部は、前記装置本体が設けられたテストリードに設けられ、前記対をなすテストリードは、リード線で接続されている。また、好ましくは、前記装置本体の側面にホルダを設け、前記他方のテストリードは、前記ホルダに着脱自在に取付けられ、前記ホルダに前記他方のテストリードを取付けることにより、前記装置本体の電源がOFFとされ、前記ホルダから前記他方のテストリードを取り外すことにより、前記装置本体の電源がONとされる。
【0022】
本発明の他の実施態様によると、前記測定装置は、前記装置本体に前記対をなすテストリードがリード線で接続されているデジタルマルチメータである。また、好ましくは、前記装置本体の側面にホルダを設け、前記対をなすテストリードは互いに接触或いは近接して前記ホルダに着脱自在に取付けられ、前記ホルダに前記対をなすテストリードを取付けることにより、前記装置本体の電源がOFFとされ、前記ホルダから前記対をなすテストリードを取り外すことにより、前記装置本体の電源がONとされる。
【0023】
本発明の他の実施態様によると、前記装置本体に前記表示部が一体に設けられている。
【0024】
本発明の他の実施態様によると、前記表示部は、前記装置本体とは別体として設けられている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、電源のON・OFFのための電源スイッチと測定レンジ切替のための測定レンジ切替スイッチとを別個に設け、特に、電源スイッチは、近接スイッチをテストリードに設置することにより、接点不良による故障をなくすことができる。測定装置の不使用時には、両テストリードを近接、或いは、接触させて一体に固定された状態にて収納することにより電源をOFFとし、両テストリードを分離することにより電源をONとする構成とされるので、極めて操作性に優れており、また、利便性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1(a)は、本発明に係る測定装置の一実施例である携帯用テスタの全体構成図であり、図1(b)は、電気回路図の一例を示すブロック図であり、図1(c)は、近接スイッチの一例の概略構成を示す図である。
【図2】図2(a)は、本発明に係る測定装置の一実施例である携帯用テスタの全体構成図であり、電源OFFの状態を示しており、図2(b)及び図2(c)は、一方のテストリードを他方のテストリードに取付けるためのホルダを説明する斜視図である。
【図3】本発明に係る測定装置の他の実施例で携帯用テスタの全体構成図である。
【図4】図4(a)は、本発明に係る測定装置の他の実施例であるデジタルマルチメータの全体構成図であり、図4(b)は、電気回路図の一例を示すブロック図である。
【図5】図5(a)は、従来の測定装置の一例であるデジタルマルチメータの全体構成図であり、図5(b)は、電気回路図の一例を示すブロック図である。
【図6】図6(a)は、従来の測定装置の一例である携帯用テスタの全体構成図であり、図6(b)は、電気回路図の一例を示すブロック図である。
【図7】従来の測定装置の一例である携帯用テスタの全体構成斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る測定装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0028】
実施例1
図1及び図2を参照して、本発明に係る測定装置の一実施例について説明する。本発明の測定装置は、装置本体に接続された一対のテストリードを用いて被測定物の物理量、例えば、電圧、電流、電気抵抗等を測定する測定部と、測定結果を表示する表示部とを備えている。
【0029】
図1に示すように、本実施例の測定装置1は、先に、図6、図7を参照して説明した一側のテストリード3Aの把持部32Aに装置本体、即ち、テスタ本体2を組み込んだ携帯用テスタ1Bと同様の構成とされる携帯用テスタ1であるとして説明する。
【0030】
本実施例にて携帯用テスタ1は、図1(a)に示すように、テスタ本体2が組み込まれた一側のテストリード3Aと、テスタ本体2の後端部2bからリード線30を介して接続された他側のテストリード3Bとを備えている。テスタ本体2の先端部2aにはテストリード3Aの探針(電極部)31Aが配置されている。テストリード3Bは、一端に電極部31Bを備え、全体形状が細長形状の絶縁材で形成された棒状部材とされた把持部32Bを有する、通常広く使用されている測定プローブとされる。つまり、テストリード3Bの先端部3aには電極部としての探針31Bが配置されており、残り部は把持部32Bとされている。把持部32Bの後端部3bからは、テスタ本体2と接続するリード線30が延出している。また、探針31Bに隣接して探針31Bへの接触防止のための鍔6が形成されている。
【0031】
また、テスタ本体2は、図6(b)に示した従来構成と同様に、図1(b)に示すように、測定部21、制御部22、操作部4及び表示部5を備え、例えば直流若しくは交流電圧測定レンジ(V)及び抵抗測定レンジ(Ω)などの測定レンジのうちから切替操作によって選択された任意の1つの測定レンジに対応する測定処理を実行可能に構成されている。
【0032】
更に説明すると、本実施例の携帯用テスタ1では、操作部4には、電圧(V)、抵抗(Ω)等の測定レンジを切り替えることができるキー式の測定レンジ切替スイッチ41が配置されているが、従来と異なり、測定レンジ切替スイッチ41は、電源ON・OFF機能は有していない。後述するように、電源スイッチ50は、テストリード3A、3Bに配置されている。
【0033】
また、操作部4は、従来と同様に、電圧測定レンジの場合に直流電圧測定(DCV)と交流電圧測定(ACV)とのいずれかに切り替えたりするシフトキー42、測定値のホールド機能等のような予め設定してある特定機能を動作させるための特定機能入力キー43等を備えてある。更に、テスタ本体2の後端部2b側には、例えばLCD(液晶ディスプレー)から成る表示部5が配置されている。
【0034】
また、テスタ本体2における一側のテストリード3Aの探針31Aの近傍位置には、該一側テストリード3Aの探針31A方向を照射する例えば白色LEDなどから成るライト33が配置されている。ライト33の点灯操作は、特定機能入力キー43の操作により行われる。
【0035】
次に、本発明の特徴部の構成について説明する。
【0036】
本実施例によれば、上述したように、従来の携帯用テスタ1Bにて操作部4に設けられていたスライド式の測定レンジ切替スイッチ41が兼用していた電源スイッチは、測定レンジ切替スイッチ41とは別体として、即ち、測定レンジ切替スイッチ41とは分離して電源スイッチ50として設けられる。
【0037】
つまり、本実施例にて電源スイッチ50は、対をなすテストリード3A、3Bに設けた非接触スイッチ(近接スイッチ)にて行われる。近接スイッチ50としては、種々の形態のものが使用され得るが、本実施例では、図1(c)に示すような「磁気感応スイッチ(磁気近接スイッチ)」と言われる磁気スイッチが好適に使用される。磁気スイッチ50は、電気信号を発するセンサ部(磁気センサ)51と、前記センサ部51に作用しセンサ部51を作動させる作用部(磁石)52とにて構成され、磁気センサ51と磁石52とを離間するか、或いは、近接させることにより電源のON・OFF切替をなす。
【0038】
本実施例では、テストリード3Aをなすテスタ本体2に磁気センサ51を組み込み、他方のテストリード3Bの先端部3aに設けた探針31Bに隣接して、本実施例では、鍔6の近傍の把持部32Bに、磁石52が設置される。
【0039】
つまり、本実施例では、テストリード3Aの把持部とされるテスタ本体2に、磁気センサ51が取り付けられる。磁気センサ51は、テスタ本体2内にて制御部22の電源回路12に電気的に接続されている。磁気センサ51は、電源回路12をON、OFFする制御信号を発生し、制御信号のON、OFFにより装置本体2の電源回路12を駆動して電源のON、OFFを行う。即ち、磁気センサ51は、磁石52を近接させることによりOFFとされ、電源回路12をOFFとし、テスタ本体2を非作動状態とする。一方、磁気センサ51は、磁石52を磁気センサ51から離間させることによりONとされ、電源回路12をONとし、テスタ本体2を動作状態とする。本実施例にて信号のOFFは0(ゼロ)ボルト、ONは例えば3ボルトなどの電圧が出力される状態を意味する。
【0040】
本実施例によると、図2(a)、(b)、(c)に示すように、テストリード3Aのテスタ本体2の側面には、テストリード3Bを接触、或いは、近接して着脱自在に保持するためのホルダを備えている。本実施例にてホルダ60(60a、60b)は、外方に面して開口が形成された、「C」字形状(図2(b))或いは「U」字形状(図2(c))の弾性部材、例えば、弾性を有するプラスチックにて形成される。従って、テストリード3Bは、不使用時には、ホルダ60(60a、60b)により、テスタ本体2の側面に固定して保持されている。この状態にて、テスタ本体2の磁気センサ51は、テストリード3Bの磁石52と近接状態に保持されており、従って、電源回路12はOFFであり、テスタ本体2は非動作状態とされる。
【0041】
上記構成にて、テストリード3Bを、テストリード3Aの本体部分2から取り外すと、磁気センサ51はONとされる。また、上述のように、テストリード3Bを、テストリード3Aの本体部分にホルダ60(60a、60b)にて固定すると、磁気センサ51はOFFとされる。図2(c)に示すように、ホルダ60(60a、60b)に保持されたときテストリード3Aの磁気センサ51とテストリード3Bの磁石52とが近接状態に保持されるように、両テストリード3A、3Bは位置決めする必要がある。位置決め手段としては、本実施例では、一方のテストリード3Bのホルダ保持領域の把持部32Bに、軸線方向の規制手段として鍔6を設けたり、回転方向の規制手段として二方取り平面部7を設けることなどが採用される。
【0042】
次に、本実施例の携帯用テスタ1の使用法について説明する。
【0043】
先ず、ユーザは、テスタ1を使用するに際して、テストリード3Bを、テストリード3Aの本体部分2から取り外す。これにより、磁気センサ51はONとなり、テスタ本体2は、電源ON状態となり、表示部5にも測定装置が動作状態にあることが表示される。その後、ユーザは、その表示を確認しながら、測定レンジ切替スイッチ41を操作することにより、所定の測定対象項目、即ち、所定のファンクションに設定する。
【0044】
その後、テストリード3(3A、3B)をそれぞれの手に持って、被測定物に接触させて測定する。測定結果は、表示部5に表示される表示値を読むことによって得られる。
【0045】
測定作業が終了すると、ユーザは、テストリード3Bを、ホルダ60(60a、60b)により、テスタ本体2の側面に固定して保持させる。これにより、テスタ本体2の磁気センサ51は、テストリード3Bの磁石52と近接状態に保持され、従って、電源回路12はOFFとなり、テスタ本体2は非動作状態とされる。
【0046】
このように、本実施例によれば、対をなすテストリード3A、3Bに電源のON・OFFのための電源スイッチ50を測定レンジ切替のためのスイッチ41とは別個に設け、特に、電源スイッチ50として近接スイッチを使用することにより、接点不良による故障をなくしている。また、本実施例では、電源スイッチ50は、磁気スイッチ50とされ、一側のテストリード3Aに磁気センサ51を設置し、他側のテストリード3Bには磁石52を設置し、両テストリード3A、3Bを使用時には分離して使用することにより、磁気スイッチ50をONさせることができる。また、不使用時には、両テストリード3A、3Bを近接、或いは、接触させて一体に固定された状態にて収納されるので、従来のようなスイッチ接点の接触不良をなくすことができると共に極めて操作性に優れており、また、利便性が高い。
【0047】
実施例2
図3に、本発明の測定装置1の第二の実施例を示す。
【0048】
図3にて、本実施例の測定装置1は、実施例1で説明した携帯用テスタ1と同様の構成とされる。ただ、実施例1では、テスタ本体2に一体に設けた表示部5が、実施例2では別体としてテスタ本体2とは分離して設けられている点において異なる。従って、同じ構成及び作用をなす部材には同じ参照番号を付し、実施例1の説明を援用し、詳しい説明は省略する。
【0049】
上述のように、本実施例によると、表示部5がテスタ本体2とは別個に設けられており、従って、表示部5は、測定作業時に見易い位置に設置することができる。
【0050】
ただ、本実施例では、表示部5をテスタ本体2から分離したために、テスタ本体2には、図示してはいないが、測定結果を表示部5へと送信するための送信回路、表示部5には、新たに、電源スイッチ55、及び、図示してはいないが、電源回路、受信回路等が設けられている。
【0051】
実施例3
図4に、本発明の測定装置の他の実施例を示す。
【0052】
上記実施例1、2では、本発明の測定装置は、一側のテストリード3Aにテスタ本体2を組み込んだ携帯用テスタ1であるとして説明した。しかし、本発明は、先に図5を参照して説明した、テストリード3(3A、3B)がメータ本体2にリード線30(30A、30B)で接続されたデジタルマルチメータと同様の測定装置においても具現化し得る。
【0053】
つまり、図4(a)に示すように、本実施例のデジタルマルチメータ1は、装置本体、即ち、メータ本体2と、メータ本体2から延びたプローブケーブル(リード線)30(30A、30B)に接続された一対のテストリード3(3A、3B)とを備えている。
【0054】
プローブケーブル30(30A、30B)は、電気回路部10に対して取り外し自在に差し込まれる接続端子方式でも良く、電気回路部10に対して固定的に接続された固定式のものでも良い。
【0055】
メータ本体2には、操作部4と、測定結果を表示するLCD(液晶ディスプレー)とされる表示部5とを備えている。
【0056】
本実施例にて操作部4は、本体ファンクション切替ボタン41として押しボタン式のAC(交流)電圧測定用の「ACV」ボタン41a、DC(直流)電圧測定用の「DCV」ボタン41b、電流測定用の「A」ボタン41c、抵抗測定用の「Ω」ボタン41d、及び、導通チェックのための「導通チェック」ボタン41e、を備えている。
【0057】
本発明によれば、対をなすテストリード3A、3Bの把持部32A、32Bに電源スイッチ50が設けられている。従って、図4に示す測定装置1には、メータ本体2に押しボタン式の電源ON・OFFスイッチ44が設けられているが、省略することもできる。
【0058】
電気回路部10は、図5(b)に示す従来構成と同じとされ、実施例1と同様に、測定部21、制御部22などを有し、更に、電源スイッチ50からの信号を受信する電源回路12が設けられている。
【0059】
本実施例によれば、電源スイッチ50は、実施例1で説明したと同様の図1(c)に示すような非接触スイッチ50とされる。つまり、非接触スイッチ50としては、例えば、磁気センサ51と磁石52とにて構成され、磁気センサ51と磁石52とを離間するか、或いは、近接させることによりON・OFF切替をなす「磁気感応スイッチ(磁気近接スイッチ)」と言われる磁気スイッチが好適に使用される。
【0060】
本実施例では、テストリード3Aの探針31Aに隣接して把持部32Aに磁気センサ51を組み込み、他方のテストリード3Bの探針31Bに隣接して把持部32Bに磁石52が設置される。
【0061】
つまり、本実施例では、テストリード3Aに取り付けられた磁気センサ51は、テスタ本体2内にて制御部22の電源回路12に電気的に接続されている。実施例1で説明したように、磁気センサ51は、磁石52を離間させることによりONとされ、電源回路12をONとし、テスタ本体2を動作状態とする。一方、磁気センサ51は、磁石52を近接させることによりOFFとされ、電源回路12をOFFとし、テスタ本体2を非動作状態とする。
【0062】
本実施例によると、図4(a)に示すように、テスタ本体2の側面には、テストリード3A、3Bを互いに接触、或いは、近接して着脱自在に保持し得るように構成されたホルダ60(60a、60b)を備えている。本実施例にてホルダ60(60a、60b)は、実施例1で説明したと同様の構成とされ、図2(b)、(c)に示すように、外方に面して開口が形成された、本実施例では2本のテストリード3A、3Bを保持し得るように、図2(c)に示す「U」字形状の弾性部材、例えば、弾性を有するプラスチックにて形成される。従って、テストリード3A、3Bは、不使用時には、ホルダ60により、テスタ本体2の側面に一体的に固定して保持されている。この状態にて、テストリード3Aの磁気センサ51は、テストリード3Bの磁石52と近接状態に保持されており、従って、電源回路12はOFFであり、テスタ本体2は非動作状態とされる。勿論、ホルダに保持されたときテストリード3Aの磁気センサ51とテストリード3Bの磁石52とが近接状態に保持されるように、両テストリード3A、3Bは位置決めする必要がある。位置決め手段としては、図4(a)、(b)に示すように、各テストリード3A、3Bのホルダ保持領域の把持部32(32A,32B)に、軸線方向の規制手段として鍔6を設けたり、回転方向の規制手段として二方取り平面部7(図2(c)参照)を設けることなどが採用される。
【0063】
上記構成にて、テストリード3A、3Bを、テスタ本体2から取り外すと、テストリード3A、3Bは分離され、磁気センサ51と磁石52とが離間し、磁気センサ51はONとされる。一方、上述のように、テストリード3A、3Bを、テスタ本体2にホルダにて固定すると、磁気センサ51と磁石52とが接触或いは近接し、磁気センサ51はOFFとされる。
【0064】
本実施例では、テストリード3A、3Bを、テスタ本体2から取り外し、磁気センサ51をONとし、電源ON状態となると、表示部5に測定装置1が動作状態にあることが表示される。従って、ユーザは、その表示を確認しながらファンクションを切替ることができる。
【0065】
次に、本実施例のデジタルマルチメータ1の使用法について説明する。
【0066】
先ず、ユーザは、テスタ1を使用するに際して、テストリード3A、3Bを、テスタ本体2から取り外す。これにより、磁気センサ51はONとなり、テスタ本体2は、電源ON状態となり、表示部5にも測定装置1が動作状態にあることが表示される。その後、ユーザは、その表示を確認しながら、測定レンジ切替ボタン41としてのAC(交流)電圧測定用の「ACV」ボタン41a、DC(直流)電圧測定用の「DCV」ボタン41b、電流測定用の「A」ボタン41c、抵抗測定用の「Ω」ボタン41d、及び、導通チェックのための「導通チェック」ボタン41e、を操作することにより、所定の測定対象項目、即ち、所定のファンクションに設定する。
【0067】
その後、テストリード3(3A、3B)をそれぞれの手に持って、被測定物に接触させて測定する。測定結果は、表示部5に表示される表示値を読むことによって得られる。
【0068】
測定作業が終了すると、ユーザは、テストリード3A、3Bを、ホルダ60により、テスタ本体2の側面に固定して保持させる。これにより、テスタ本体の磁気センサ51は、テストリード3Bの磁石52と近接状態に保持され、従って、電源回路12はOFFとなり、テスタ本体2は非動作状態とされる。
【0069】
このように、本実施例によれば、対をなすテストリード3A、3Bに電源ON・OFFのためのスイッチ50を測定レンジ切替のためのスイッチ41とは別個に設け、特に、電源スイッチとして近接スイッチ50を使用することにより、接点不良による故障をなくしている。また、電源スイッチは、本実施例では、磁気スイッチ50とされ、一側のテストリード3Aに磁気センサ51を設置し、他側のテストリード3Bには磁石52を設置し、両テストリード3A、3Bを使用時には分離して使用することにより、磁気スイッチをONさせることができる。また、不使用時には、両テストリード3A、3Bを近接、或いは、接触させて一体に固定された状態にて収納されるので、従来のようなスイッチ接点の接触不良をなくすことができると共に極めて操作性に優れており、また、利便性が高い。
【0070】
本実施例においても、実施例2にて説明したように、表示部5をテスタ本体2とは別個に設けることも可能である。これにより、表示部5は、測定作業時に見易い位置に設置することができる。
【0071】
ただ、この場合には、表示部5をテスタ本体2から分離したために、テスタ本体2には、図示してはいないが、測定結果を表示部5へと送信するための送信回路、表示部5には、新たに、電源スイッチ55、及び、図示してはいないが、電源回路、受信回路等を設ける構成とされる。
【0072】
また、上記各実施例では、装置本体2の電源をON、OFFさせる制御信号は電気信号であるとして説明したが、勿論、光信号であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 デジタルマルチメータ、携帯用テスタ(測定装置)
2 メータ本体、テスタ本体(装置本体)
3(3A、3B) テストリード
4 操作部
5 表示部
10 電気回路部
12 電源回路
30(30A、30B) プローブケーブル(リード線)
31(31A、31B) 電極部
32(32A、32B) 把持部
50 磁気スイッチ(近接スイッチ)
51 磁気センサ(センサ部)
52 磁石(作用部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に接続された一対のテストリードを用いて被測定物の物理量を測定する測定部と、測定結果を表示する表示部とを備えた測定装置において、
前記対をなすテストリードの一方のテストリードに制御信号を発するセンサ部を設け、他方のテストリードに前記センサ部に作用する作用部を設け、前記テストリードを離接させることにより、前記センサ部と前記作用部とを離接させて前記制御信号のON・OFFを行い、前記装置本体の電源のON・OFFを行うことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記測定装置は、前記装置本体が一方のテストリードに設けられた携帯用テスタであって、前記センサ部は、前記装置本体が設けられたテストリードに設けられ、前記対をなすテストリードは、リード線で接続されていることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記装置本体の側面にホルダを設け、前記他方のテストリードは、前記ホルダに着脱自在に取付けられ、前記ホルダに前記他方のテストリードを取付けることにより、前記装置本体の電源がOFFとされ、前記ホルダから前記他方のテストリードを取り外すことにより、前記装置本体の電源がONとされることを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記測定装置は、前記装置本体に前記対をなすテストリードがリード線で接続されているデジタルマルチメータであることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記装置本体の側面にホルダを設け、前記対をなすテストリードは互いに接触或いは近接して前記ホルダに着脱自在に取付けられ、前記ホルダに前記対をなすテストリードを取付けることにより、前記装置本体の電源がOFFとされ、前記ホルダから前記対をなすテストリードを取り外すことにより、前記装置本体の電源がONとされることを特徴とする請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記装置本体に前記表示部が一体に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記装置本体とは別体として設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113822(P2013−113822A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263144(P2011−263144)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】