説明

測定補助具

【課題】筋電測定に際し、誰でも簡単に目的の筋肉上に電極を貼り付けることができるようにする。
【解決手段】筋電計により筋肉に生じる電圧を測定する際に用いる補助具であって、長袖Tシャツ1からなり、測定用の電極を貼り付ける部位に対応した窓2が設けられている。窓2から露出する身体の表面に電極を取り付ければよいので、被験者が着たままの状態で、測定者が簡単に適切な位置に筋肉を特定することができ、しかも服を脱ぐことなく電極を貼り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋電測定の技術分野に属し、詳しくは、人の筋肉にかかる負荷や疲労をその筋肉に生じる電圧の変化として定量的に測定する際に使用される測定補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、人の筋肉にかかる負荷や疲労を定量的に知る方法として、被験者の筋肉に生じる電圧の変化を測定し、得られた測定値から負荷や疲労の度合いを求めることが行われている。この方法では、電圧の変化を測定するために筋電計を用いるが、その測定に際しては、被験者の腕、肩、腰などの測定部位に当たる身体の表面にそれぞれ測定用の電極をテープで貼り付けて固定し、各測定部位に貼り付けた電極から得られる電気信号を増幅して記録計に記録したり、ディスプレイ画面に波形を表示したりしている。
【0003】
このような筋電計による電圧測定は、電極を貼る位置が筋電を測定したい筋肉の上でないと正確な測定ができないが、電極を貼る位置を特定するにはそれなりの知識が必要となり、一般的には経験のある技術者が被験者に対し電極を貼ることが多い。
【0004】
一方、筋電計を用いた作業負荷の測定を行う際には、実際の製造現場にて日々の生産を行っている作業者に被験者となってもらうことが必要である。また、疲労の測定を行う場合には朝から夕方まで1日の作業中連続して測定を行わなければならない。そのため技術者は筋電計を持って製造現場に行き、測定に立ち会わなければならず、製造現場が複数の場所にあるような企業では技術者に大きな負担がかかる。また、女性が作業を行っている現場では被験者が女性となるため、電極を貼る技術者が男性の場合には測定が困難であるという問題もある。
【0005】
そして、実際に筋電計により電圧を測定する際には、身体の表面に電極を貼り、測定を開始した後に電極が剥がれないようにするため、電極の上から粘着性のあるテープを貼るなどして電極を固定している。しかしながら、作業負荷を測定したい作業の多くは重いものを持つなどの重労働作業であり、作業中にテープが剥がれ電極の位置がずれる危険性がある。また、個人差はあるものの、数時間もテープを貼り付けていると接触面がかゆくなるなどの問題も生じる。
【0006】
そこで、被験者の体表面から電気信号を取り出す際の補助具として従来より着衣型のものが提案されており、例えば、心電図の測定ができ、筋電情報あるいは体動情報を検出できるものとして、電極の代わりに導電性繊維をセンサとして縫合し、信号伝達も導電性繊維を用いる着衣型被服が知られている。
【0007】
【特許文献1】特許第3711236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1に記載のような着衣型被服は、装着すると電極が身体の表面に当接するので、装着状態のままで測定できるという利点があるが、例えば所定部位6箇所に電極を縫い付けており、筋電のように測定ごとに電極貼り付け箇所が変わる場合には利用することができない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筋電測定に際し、誰でも簡単に目的の筋肉上に電極を貼り付けることができる測定補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、筋電計により筋肉に生じる電圧を測定する際に用いる補助具であって、長袖Tシャツからなり、測定用の電極を貼り付ける部位に対応した窓が設けられたことを特徴としている。
【0011】
そして、窓のサイズを電極より小さくし、長袖Tシャツにおける窓の周辺部分に伸縮性を持たせるようにしてもよい。
【0012】
また、窓を覆った状態で面ファスナーにより係止が可能なカバーを設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の測定補助具は、窓から露出する身体の表面に電極を取り付ければよいので、被験者が着たままの状態で、測定者が簡単に適切な位置に筋肉を特定することができ、しかも服を脱ぐことなく電極を貼り付けることができる。特に、被験者が女性であっても、服を脱ぐという心配がない。
【0014】
そして、上記構成に加え、窓のサイズを電極より小さくし、長袖Tシャツにおける窓の周辺部分に伸縮性を持たせることにより、電極を周辺部分で押さえることができるので、テープ等を用いることなく身体に固定することが可能となる。
【0015】
また、上記構成に加え、窓を覆った状態で面ファスナーにより係止が可能なカバーを設けることにより、電極を覆った状態でしっかりと身体に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明に係る測定補助具の一例を示す概略構成図であり、同図に示す測定補助具は、身体にフィットする長袖Tシャツ1からなるもので、その長袖Tシャツ1には測定用の電極を貼り付ける部位に対応した窓2が複数設けられている。長袖Tシャツ1はサイズ別に数種類を準備しておくようにする。
【0018】
図1に示す長袖Tシャツ1は、段ボール等の重量物を運搬する作業において肩及び腕の筋肉に生じる電圧を測定する場合に使用するものであり、その窓2を設ける場所は次のようである。
【0019】
すなわち、一般的に肩の筋電を測定する場合には僧帽筋が対象となり、また腕の筋肉では、上腕の二頭筋、前腕外側の腕橈骨筋、前腕内側の橈側手根屈筋が測定対象となるので、長袖Tシャツ1にはこれらの部位に対応したところに窓2が設けられる。
【0020】
このような窓2のある長袖Tシャツ1を着用することによって、測定者は特に詳しい知識がなくても簡単に筋肉を特定することができる。そして、窓2のところに露出している身体の部分に測定用の電極をテープ等で貼り付けることにより、服を脱ぐことなく電極を貼り付けることができる。
【0021】
図2に電極を貼り付けた別の例を示す。この例は、長袖Tシャツ1の窓2の周辺部分を伸縮性のある素材にし、窓2のサイズを電極よりも小さくしたものである。窓2のところを伸ばして電極3を挿入すると、素材の伸縮性により窓2が元に戻ることにより、電極3を身体に固定することができる。このように長袖Tシャツ1における窓2の周辺部分に伸縮性を持たせるには、その部分を伸縮性のある素材に変えるほか、ゴム等の伸縮部材を入れるようにしてもよい。
【0022】
図3に示す例は、電極3を貼り付けた後の窓2を覆うカバー4を設け、そのカバー4が閉状態で係止できるよう周囲にマジックテープ(登録商標)等の面ファスナー5を設けたものである。このようなカバー付き構造の窓2を備えた測定補助具では、電極3を完全に覆う形でしっかりと固定することができる。この例の場合、窓2の周辺部分やカバーなどに伸縮性の素材を用いることで、さらにしっかりと電極3を固定することができる。
【0023】
なお、図1では肩及び腕の部分に窓2を開けてあるが、測定したい場所に合わせて窓を開けることで任意の場所の測定が可能となる。また、足など下半身で同様の測定を行いたい場合には、同じ仕組みでパンツ型の測定補助具とすればよい。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明による測定補助具は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る測定補助具の一例を示す概略構成図である。
【図2】電極を貼り付ける別の例を示す説明図である。
【図3】電極を貼り付けるさらに別の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 長袖Tシャツ
2 窓
3 電極
4 カバー
5 面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋電計により筋肉に生じる電圧を測定する際に用いる補助具であって、長袖Tシャツからなり、測定用の電極を貼り付ける部位に対応した窓が設けられたことを特徴とする測定補助具。
【請求項2】
窓のサイズを電極より小さくし、長袖Tシャツにおける窓の周辺部分に伸縮性を持たせたことを特徴とする請求項1に記載の測定補助具。
【請求項3】
窓を覆った状態で面ファスナーにより係止が可能なカバーを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の測定補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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