説明

測温センサ及びその設置方法

【課題】測温対象の内部空間が複雑な構造を有していたり、外部の壁面に他の部品が存在するような場合にも適正な測温位置にシース熱電対の測温部を位置させることができるとともに、周囲の他部品の取り付けの妨げにもならず、広い用途に用いることができる保護管付きの測温センサ及びその設置方法を提供せんとする。
【解決手段】長手方向に沿って所定の形状に屈曲して構成された保護管3に対し、可撓性を有するシース熱電対2を保護管基端部30側から該保護管の内面形状に沿って屈曲させながら挿入し、所定の挿入位置にて金属シース外周面20aを前記保護管の基端部30に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シース内に少なくとも一対の熱電対素線を収容してなるシース熱電対と該シース熱電対を収容する保護管とより構成される測温センサに係わり、たとえば産業用の各種燃焼関連装置などの複雑な装置に設置するのに好適な測温センサ及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の測温センサとしては、たとえば特許文献1には、熱電対部をシース管で覆ったシース熱電対部を、保護管内に収容した構成とされ、シース管の先端よりもさらに先端側の保護管の部分に、開放端として内径が4.0mmの開口を設け、シース管と開口の先端との間隔を10mmにしたものが提案されている。また、特許文献2には、シース熱電対の筒状母材の基端側にフランジが形成され、フランジよりも先端側における筒状母材の外周面部に、15.5Cr−76Ni−8Feの組成を有する高合金材料のプラズマ粉末肉盛溶接部が肉盛溶接されたものが提案されている。さらに、特許文献3には、一端が閉じた黒鉛製保護管の開口端に、一端にフランジを設けた金属製保護管の他端を螺合して一体とした保護管の外周を、さらに金属製保護管で保護し、前記一体とした保護管内にシース熱電対を挿入固定してなる炉内温度連続測温センサが提案されている。
【0003】
これらシース熱電対と保護管よりなる従来の測温センサは、いずれも測温対象の測定位置まで保護管をストレートに挿入し、その内部にシース熱電対を挿着して構成されるものである。しかしながら、測温対象の内部空間が複雑な構造を有していたり、外部の壁面に他の部品が存在するような場合には、測温センサの取付に対する自由度が小さくなり、本来測定したい測温位置からずれてしまう、あるいは他の部品等の位置を設計変更せざるを得ないといった状況が生じていた。たとえば、産業用の各種燃焼関連装置などでは、外部壁面に多くの関連部品が存在するとともに複雑な内部構造を有し、かつ多くの測温位置を有する場合もあることから、上記保護管で適正な測温位置にシース熱電対を至らしめることは非常に困難である。
【0004】
よって、従来、このような取付けの自由度の小さい箇所に用いる測温センサは、保護管を用いることなく、屈曲容易なシース熱電対を直接、取り付けることにより狙いとする測温位置に設けることも為されていた。しかし、シース熱電対からはリード線などが延びていることから周囲の部品の取り付けの邪魔となり、自動化の妨げとなったり、シース熱電対単独で用いることから使用できる用途も限定されるといった問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−37381号公報
【特許文献2】特開平10−160586号公報
【特許文献3】特開平9−189616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、測温対象の内部空間が複雑な構造を有していたり、外部の壁面に他の部品が存在するような場合にも適正な測温位置にシース熱電対の測温部を位置させることができるとともに、周囲の他部品の取り付けの妨げにもならず、広い用途に用いることができる保護管付きの測温センサ及びその設置方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題解決のために、金属シース内に少なくとも一対の熱電対素線を収容してなるシース熱電対と、該シース熱電対を収容する保護管とより構成される測温センサであって、前記シース熱電対が可撓性を有するとともに、前記保護管を長手方向に沿って所定の形状に屈曲させて構成し、前記シース熱電対を、保護管の基端側から該保護管の内面形状に沿って屈曲させながら挿入し、所定の挿入位置において、金属シース外周面を前記保護管の基端部に固定してなることを特徴とする測温センサを構成した。
【0008】
ここで、前記保護管を、長手方向に沿って単または複数の方向に屈曲させることにより所定形状に構成したものが好ましい。
【0009】
また、前記保護管の屈曲の最小半径を、1.0mm以上としたものが好ましい。
【0010】
さらに、前記金属シース外周面を、保護管の基端部に設けた取付部材を介して着脱可能に固定するものが好ましい。
【0011】
また、本発明は、これら測温センサの設置方法であって、被測温部の壁面に形成された取付孔に、前記所定の形状に屈曲させて構成した保護管を挿入して、その基端側を壁面に固定し、固定された前記保護管の基端側の開口部より、前記可撓性を有するシース熱電対を該保護管の内面形状に沿って屈曲させながら挿入し、所定の挿入位置において、金属シース外周面を前記保護管の基端部に固定してなることを特徴とする上記測温センサの設置方法をも提供する。
【0012】
ここで、保護管の基端部に、前記金属シース外周面を着脱可能に固定するための取付部材を設け、該取付部材を前記被測温部の壁面に固定する方法が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上にしてなる本願発明に係る測温センサによれば、保護管を長手方向に沿って所定の形状に屈曲させて構成し、シース熱電対を保護管の基端側から該保護管の内面形状に沿って屈曲させながら挿入し、所定の挿入位置において、金属シース外周面を前記保護管の基端部に固定するので、測温対象の内部空間が複雑な構造を有していたり、外部の壁面に他の部品が存在するような場合にも、これらの構造に応じて屈曲させた保護管を構成して取り付けることにより、該保護管の内面をガイド部としてシース熱電対を狙いとする測温位置まで案内し、適正な位置にシース熱電対の測温部を位置させることができる。
【0014】
また、本発明によれば、保護管を有することから広い用途に用いることができることは勿論のこと、このような屈曲させた保護管を用いることにより、周囲の他部品との間隔を取るなど、取付位置に関する設計上の自由度が高まることから、他部品等の構造や取付けなども容易となり、自動化が可能となるなど、コスト削減が容易となる。
【0015】
保護管は、長手方向に沿って単または複数の方向に屈曲させることにより、測温対象の構造に応じた適宜な形状に自由に構成することができ、とくに屈曲の最小半径を1.0mm以上としたのでシース熱電対の挿着が容易となる。
【0016】
また、金属シース外周面を、保護管の基端部に設けた取付部材を介して着脱可能に固定したので、シース熱電対の点検や交換の際の着脱作業が容易となる。
【0017】
また、設置方法としては、被測温部の壁面に形成された取付孔に所定形状に屈曲させて構成した保護管を挿入して、その基端側を壁面に固定し、固定された前記保護管の基端側の開口部より、前記可撓性を有するシース熱電対を該保護管の内面形状に沿って屈曲させながら挿入し、所定の挿入位置において、金属シース外周面を前記保護管の基端部に固定するので、周囲の他部品などを取り付けた後にシース熱電対を取り付けることができ、他部品取付けの際にシース熱電対のリード線などが邪魔になるといったことが回避でき、他部品等の自動化、とくに自動溶接なども可能となる。
【0018】
また、保護管の基端部に金属シース外周面を着脱可能に固定するための取付部材を設け、該取付部材を前記被測温部の壁面に固定するので、予め設定された保護管基端部の取付部材に対して、シース熱電対を容易に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る測温センサを構成するシース熱電対および保護管を示し、図2はその設置手順を示している。図中符号1は測温センサ、2はシース熱電対、3は保護管をそれぞれ示している。
【0021】
本発明の測温センサ1は、図2(a)〜(c)に示すように、長手方向に沿って所定の形状に屈曲して構成された保護管3に対し、可撓性を有するシース熱電対2を保護管基端部30側から該保護管の内面形状に沿って屈曲させながら挿入し、所定の挿入位置にて金属シース外周面20aを前記保護管の基端部30に固定したものである。
【0022】
なお、本発明の測温センサ1を設置する測温対象としては、たとえば産業用の各種燃焼関連装置など、構造が複雑で取付位置が限られるものが好適であるが、本発明はとくに測温対象を限定するものではなく、その他の対象にも用いることができることは勿論である。
【0023】
シース熱電対2は、図1(a)にも示すように、金属シース20の内部に、測温部Bとなる温接点21aを備えた少なくとも一対の熱電対素線21、21およびこれら熱電対素線と金属シースとの隙間を埋める無機絶縁物22を収容して構成された従来から用いられているシース熱電対を用いることができる。本例では温接点が非接触型とされているが接触型等として構成してもよい。金属シース20は、たとえばオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、SUS316等)やニッケルクローム系耐熱合金(インコネル)等を用いることができ、シース内に充填する無機絶縁物22は、酸化マグネシウム(MgO)等を用いることができる。
【0024】
また、熱電対素線21は、たとえばプラス側素線にニッケル−クロム合金、マイナス側素線にニッケル合金が用いることができるが、これも特に限定されるものではない。また、本例では、熱電対素線21,21を一対のみ収容したもの例示しているが、複数対内挿したものでも勿論よい。また、シース熱電対2の基端側において接続部5によりリード線6,6に接続され、該リード線6,6の先端に脱着コネクタ7が設けられているが、このような構造に何ら限定されず、たとえばスリーブ状の保護管で支持し、端子箱から延出した補償導線で測定器に接続される耐圧防爆型としたものなど、接続構造は用途等に応じて種々の構造を採用できる。
【0025】
このようなシース熱電対2は、金属シースの素材や外径、肉厚等に応じた可撓性を有しており、本発明はこの可撓性を利用して、屈曲させた保護管3に対してシース熱電対2を挿着する。なお、金属シースの素材や外径等の寸法などは、測温する対象、すなわち用途に応じて適宜設定され、それにより可撓性もほぼ決まるが、その可撓性の程度に応じて、保護管3の屈曲のさせ方(屈曲半径等)や寸法(保護管3とシース熱電対2との隙間、内部の隙間など)を適宜設定すればよい。
【0026】
保護管3は、シース熱電対2を収容することにより測温対象である雰囲気ガスの腐食成分による熱電対素線21等の腐食を防止したり、シース熱電対2の物理的破損を防止するためのものであり、例えば耐蝕性を備えたステンレス鋼製パイプなどを用いることができる。また、保護管3の先端側は気密封止したもの以外に、図3(a),(b)に示すように、先端を開放させたもの、とくに開放端にシース先端部を位置させたものや、シース熱電対2の先端部を突出させたものなど、使用状況に応じて種々の形態を広く採用できる。
【0027】
本発明は、このような保護管3を基端側の取付位置Aから測温位置Lに向けて単または複数の方向に屈曲させ、所定形状に構成される。本例では、図2に示すように他の部品82の位置を避けた取付位置Aから、測温位置Lに向けて一方向に屈曲させているが、屈曲のさせ方に特に限定はなく、たとえば図4に示すように複数の方向に屈曲させてもよく、同一平面上で屈曲させるだけでなく3次元的に屈曲させてもよい。
【0028】
すなわち本発明は、障害となる壁や他部品の存在等により、取付位置Aから測温位置Lまでストレートで伸ばすことができない状況、あるいは他の部品の取付け等の関係でストレートの位置を避けたいような状況において、保護管を屈曲形成することにより取付位置Aについての設計自由度を高めたものであり、その屈曲の形態については取付位置Aと測温位置Lの関係、障害となる壁等の位置などに応じて適宜設定すればよい。屈曲の最小半径は、シース熱電対2をスムーズに案内できる程度、具体的には1.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上とすることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る測温センサの設置手順は、図2(a)に示すように、まず前記保護管3が被測温部の壁面8に形成された取付孔80に挿入されて基端部30側を壁面8に固定した後、その基端部30側の開口部よりシース熱電対2を挿入し、図2(c)に示すように温接点を有する先端の測温部Bが測温位置Lに至った所定の挿入位置にて、金属シース外周面20aを保護管3の基端部30に固定することにより測温センサ1が設置される。より詳しくは、保護管3の基端部30に、金属シース20の外周面20aを着脱可能に固定するための取付部材4が設けられており、保護管3は該取付部材4を介して壁面8に固定されている。
【0030】
取付部材4は、図1(b)にも示すように、保護管3の基端部30に溶接等で固定される筒状本体40と、該筒状本体40の内周面に形成されたテーパー面40aに当接する傾斜面42aを外周に備えた筒状のコッター42と、前記筒状本体40の端部に螺着され、コッター42を前記テーパー面に押付けて金属シース外周面20aに圧着させるための締付ネジ41とよりなるコンプレッション・フィッティングが用いられている。
【0031】
そして、保護管基端部30に固定された筒状本体40が取付孔80に溶接等で固定されることにより、保護管3は間接的に取付孔80に一端支持され、該筒状本体40にコッター42および締付ネジ41をゆるく装着した状態で、当該取付部材4にシース熱電対2を挿入し、上述の所定の挿入位置にて締付ネジ41を締付けることにより、金属シース外周面20aが当該取付部材4を介して保護管3の基端部30に着脱可能に固定されるのである。
【0032】
本例では、取付部材4としてコンプレッション・フィッティングを用いたが、その他の取付部材を用いることも勿論可能である。このような取付部材を用いることによりシース熱電対を点検又は交換する際には、シース熱電対2のみ取り外し、点検あるいは新しいシース熱電対に容易に交換することが可能となる。また、保護管3の基端部30を直接取付孔80に溶接等で固定してもよく、シース熱電対2と保護管3の接続についても、取付部材を設けずに直接ネジ込み、カシメ止め、溶接等により接続してもよい。
【0033】
図4は、取付孔80周辺に障害となる壁があるだけでなく、内部の測温位置Lの手前側にも障害となる壁81があることから、保護管3を2度屈曲させ、障害壁81を迂回して測温位置Aに至らしめる例を示している。図4(a)は保護管3を取付部材4を介して取付孔80に固定した状態、図4(b)は固定された保護管3に対してシース熱電対2を挿通させている状態、図4(c)はシース熱電対2が保護管3の内面に案内されて先端の測温部Bが測温位置Aに至り、その位置で取付部材4により保護管3に固定された状態をそれぞれ示している。
【0034】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)は、本発明の代表的実施形態に係る測温センサに用いるシース熱電対を示す説明図、(b)は、同じく保護管と取付部材を示す説明図。
【図2】(a)〜(c)は、同じく測温センサの設置手順を示す説明図。
【図3】(a),(b)は、保護管先端の変形例を示す説明図。
【図4】(a)〜(c)は、測温センサの変形例についての設置手順を示す説明図。
【符号の説明】
【0036】
1 測温センサ
2 シース熱電対
3 保護管
4 取付部材
5 接続部
6 リード線
7 脱着コネクタ
8 壁面
20 金属シース
20a 外周面
21 熱電対素線
21a 温接点
22 無機絶縁物
30基端部
40 筒状本体
40a テーパー面
41 締付ネジ
42 コッター
42a 傾斜面
80 取付孔
A 取付位置
B 測温部
L 測温位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属シース内に少なくとも一対の熱電対素線を収容してなるシース熱電対と、該シース熱電対を収容する保護管とより構成される測温センサであって、前記シース熱電対が可撓性を有するとともに、前記保護管を長手方向に沿って所定の形状に屈曲させて構成し、前記シース熱電対を、保護管の基端側から該保護管の内面形状に沿って屈曲させながら挿入し、所定の挿入位置において、金属シース外周面を前記保護管の基端部に固定してなることを特徴とする測温センサ。
【請求項2】
前記保護管を、長手方向に沿って単または複数の方向に屈曲させることにより所定形状に構成してなる請求項1記載の測温センサ。
【請求項3】
前記保護管の屈曲の最小半径を、1.0mm以上としてなる請求項1又は2記載の測温センサ。
【請求項4】
前記金属シース外周面を、保護管の基端部に設けた取付部材を介して着脱可能に固定してなる請求項1〜3の何れか1項に記載の測温センサ。
【請求項5】
被測温部の壁面に形成された取付孔に、前記所定の形状に屈曲させて構成した保護管を挿入して、その基端側を壁面に固定し、
固定された前記保護管の基端側の開口部より、前記可撓性を有するシース熱電対を該保護管の内面形状に沿って屈曲させながら挿入し、
所定の挿入位置において、金属シース外周面を前記保護管の基端部に固定してなることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の測温センサの設置方法。
【請求項6】
保護管の基端部に、前記金属シース外周面を着脱可能に固定するための取付部材を設け、該取付部材を前記被測温部の壁面に固定してなる請求項5記載の測温センサの設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−128694(P2008−128694A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311058(P2006−311058)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(390007744)山里産業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】