説明

測温センサ

【課題】簡単且つ低コストな構造でありつつ、保護管からシース熱電対を容易に脱着できる保護管付き測温センサを提供せんとする。
【解決手段】金属シース20の内部に熱電対や測温抵抗体等の測温素子を収容してなるシース測温体2と、該シース測温体2を収容する保護管3とより構成され、特に、コイルスプリング部材4により保護管3の基端部30側に金属シース20の外周面20bを取り付けてなる。コイルスプリング部材4は、保護管の基端部の外周面30bに密着する大径コイル領域40と、シース測温体の金属シース外周面20bに密着する小径コイル領域41とを両端に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シース内に熱電対や測温抵抗体等の測温素子を収容したシース測温体と該シース測温体を収容する保護管とより構成される測温センサに係わり、特にシース測温体の点検、交換が容易となる測温センサに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の保護管付きの測温センサとしては、たとえば、一端が閉じた黒鉛製保護管の開口端に、一端にフランジを設けた金属製保護管の他端を螺合して一体とした保護管の外周を、さらに金属製保護管で保護し、前記一体とした保護管内にシース熱電対を挿入固定してなる炉内温度連続測温センサが提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
この測温センサは、4本のシース熱電対を保護管内に一括収納し、 これを一端を黒鉛栓で螺嵌して閉じた黒鉛製保護管と、一端にフランジを設けた保護管を螺合して一体とした保護管内に挿入し、空隙に黒鉛ペーストと MgO粉末の混合物を充填して固定した。さらに、黒鉛製保護管と保護管を螺合して一体とした保護管の外周を、鉄製保護管で保護し、空隙に黒鉛ペーストと MgO粉末の混合物を充填して固定した。鉄製保護管の他端を保護管に設けたフランジに溶接固定して、温度センサ自体の剛性を高めたものである。したがって、装着されたシース熱電対を点検や交換のために脱着するためには、溶接固定されている鉄製保護管との接続を外し、さらに黒鉛製保護管と保護管との螺合を解除し、シース熱電対を取り出すといった非常に困難な作業が必要となる。
【0004】
これに対し、シース熱電対の脱着性を考慮した測温センサとして、端子板を備えたリード線コネクタと、端子板と結線されるシース測温体と、リード線コネクタに固着されシース測温体の上側部を保持囲繞する筒状アダプタとを備え、該筒状アダプタを介して被測温体に取付けられる構成の測温センサであり、筒状アダプタが、被測温体取付け側とシース測温体取付け側とにワンタッチ式カプラで分割可能とされている測温センサが提案されている(たとえば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかし、特許文献2の測温センサは、筒状アダプタとワンタッチ式カプラといった複雑な構造を有する部品が必要となり、コスト上昇の要因となるとともに、構造上、ワンタッチ式カプラにより取り外した熱電対組立て体から、筒状アダプタに上方から挿入しばね押えにより固定されているシース測温体をさらに脱着する必要があり、作業性の向上にも限界がある。
【0006】
【特許文献1】特開平09−189616号公報
【特許文献2】特開平07−333071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、簡単且つ低コストな構造でありつつ、保護管からシース熱電対を容易に脱着できる保護管付き測温センサを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題解決のために、金属シース内に測温素子を収容してなるシース測温体と、該シース測温体を収容する保護管とより構成される測温センサであって、前記保護管の基端部を受け入れて該基端部の外周面に密着する大径コイル領域と、前記シース測温体の金属シース外周面に密着する小径コイル領域とを両端に有するコイルスプリング部材により、前記保護管の基端側に前記金属シース外周面を取り付けてなることを特徴とする測温センサを構成した。
【0009】
ここで、前記コイルスプリング部材は、大径コイル領域と小径コイル領域の間に該大径コイル領域から小径コイル領域に向けて次第に縮径するテーパーコイル領域を設けたものが好ましい。
【0010】
そして、前記保護管の基端部に前記コイルスプリング部材をその大径コイル領域開口端からテーパーコイル領域との境界位置まで差し込んで当該大径コイル領域の内面に密着保持させるとともに、前記シース測温体を前記小径コイル領域開口端から挿通して金属シース外周面の所定位置に前記小径コイル領域を密着させて取り付けられる。
【0011】
また、前記金属シース外周面における前記小径コイル領域が密着される所定部位に凸部を設け、該凸部の上に乗り上げることにより前記小径コイル領域と金属シースが軸方向に互いに係止されるものが好ましい。
【0012】
また、前記凸部は、前記金属シースの所定部位をかしめて張り出し変形させて構成できる。
【発明の効果】
【0013】
以上にしてなる本願発明に係る測温センサによれば、保護管の基端部を受け入れて該基端部の外周面に密着する大径コイル領域と、前記シース測温体の金属シース外周面に密着する小径コイル領域とを両端に有するコイルスプリング部材により、前記保護管の基端側を前記金属シース外周面に取り付けてなる簡単な構造で、部品点数も少なく、低コストに構成できるとともに、シース測温体を点検又は交換する際には、たとえばコイルスプリング部材を保護管の基端部に装着させたままシース測温体のみ取り外し、あるいはコイルスプリング部材とともにシース測温体を取り外し、点検あるいは新しいシース測温体に容易に交換することが可能となる。
【0014】
また、コイルスプリング部材が、大径コイル領域と小径コイル領域の間に該大径コイル領域から小径コイル領域に向けて次第に縮径するテーパーコイル領域を設けたので、一本の線材を用いて容易に構成することができ、このテーパーコイル領域と大径コイル領域の境界位置まで保護管の基端部を差し込んで位置決めでき、確実に装着することが可能となる。
【0015】
また、金属シース外周面における前記小径コイル領域が密着される所定部位に凸部を設け、該凸部の上に乗り上げることにより前記小径コイル領域と金属シースが軸方向に互いに係止されるものとしたので、シース熱電対を小径コイル領域内により確実に保持させることができる。また、位置決めも容易になる。
【0016】
また、前記凸部は、前記金属シースの所定部位をかしめて張り出し変形させることにより容易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る測温センサ1を示す説明図であり、図中符号2はシース測温体、3は保護管、4はコイルスプリング部材をそれぞれ示している。
【0019】
本発明の測温センサ1は、金属シース20の内部に熱電対や測温抵抗体等の測温素子を収容してなるシース測温体2と、該シース測温体2を収容する保護管3とより構成され、特に、コイルスプリング部材4により保護管3の基端部30側を金属シース20の外周面20bに取り付けてなることを特徴とする。なお、本実施形態では、シース測温体2としてシース熱電対を構成した例について説明するが、白金抵抗体からなる測温抵抗体やその他の測温素子を用いることも勿論できる。
【0020】
また、本例では、シース測温体2が基端側において接続部5によりリード線6に接続されているが、このような構造に何ら限定されず、たとえばスリーブ状の保護管で支持し、端子箱から延出した補償導線で測定器に接続される耐圧防爆型シース測温体や端子箱を介することなく脱着コネクタを設けたものなど、従来同様の種々の接続構造を採用できる。
【0021】
シース測温体2としてのシース熱電対は、図2(a)の縦断面図に示すように、金属シース20の内部に、温接点21aを備えた少なくとも一対の熱電対素線21、21およびこれら熱電対素線と金属シースとの隙間を埋める無機絶縁物22を収容して構成されており、金属シース20としては、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、SUS316等)やニッケルクローム系耐熱合金(インコネル)等を用いることができ、シース内に充填する無機絶縁物22として、酸化マグネシウム(MgO)等を用いることができる。
【0022】
熱電対素線21は、たとえばプラス側素線にニッケル−クロム合金、マイナス側素線にニッケル合金が用いることができるが、とくに限定されるものではない。また、本例では、熱電対素線21,21を一対のみ収容したもの例示しているが、複数対内挿したものでも勿論よい。
【0023】
保護管3は、シース測温体2を収容して測温対象である雰囲気ガスの腐食成分によるシース測温体2、とくに熱電対素線21や測温抵抗体の腐食を防止したり、シース測温体の物理的破損を防止するものであり、従来から用いられているもの、例えば耐蝕性を備えたステンレス鋼製パイプなどを用いることができる。本例では、保護管3の先端側が封止されているが、先端を開放させたもの、さらにはシース測温体2の先端部を保護管3から突出させたものなど、従来からの種々の構造を広く採用できる。
【0024】
そして、測温対象の装置壁面7などに形成された開口部に前記保護管3が溶接等で固定され、該保護管3の内部に、基端側がコイルスプリング部材4を介して保護管3の基端部30に支持された状態で、シース測温体2が装着される。
【0025】
コイルスプリング部材4は、金属製のスプリング材からなり、両端側にそれぞれ大径コイル領域40および小径コイル領域41を備え、これら大径コイル領域40および小径コイル領域41の間には、該大径コイル領域40から小径コイル領域41に向けて次第に縮径するテーパーコイル領域42が設けられている。なお、本例では大径コイル領域40および小径コイル領域41の各領域内において、それぞれコイル径を同径としているが、各領域内で一部縮径させたり、先端側に向けてわずかにテーパー状に縮径させたものなど、抜け落ちを防止するための異径部を設けることも好ましい。
【0026】
大径コイル領域40は、保護管3が挿着される領域であり、保護管3の外径より僅かに小さい内径を有し、該保護管3の基端部30を受け入れることにより、当該領域のスプリングの締め付け力により基端部30の外周面30bに密着する。また、小径コイル領域41は、シース測温体2の外周面に装着される領域であり、該シース測温体2の金属シース外径より僅かに小さい内径を有し、同じくスプリング締め付け力により該金属シース外周面20bに密着する。大径コイル領域40と保護管3との着脱時、小径コイル領域41とシース測温体2との着脱時には、それぞれ各領域のスプリングが開く方向に捻じることで容易に着脱可能である。
【0027】
そして、このコイルスプリング部材4を用いたシース測温体2と保護管3の装着は、まず保護管3の基端部30を大径コイル領域40の開口端40aからテーパーコイル領域42との境界位置まで差し込むことにより、該基端部30にコイルスプリング部材4を取り付けた後、シース測温体2を小径コイル領域41の開口端41aから挿通し、金属シース外周面20bの所定位置に前記小径コイル領域41を密着させることにより、該コイルスプリング部材4で支持された状態にシース測温体2を保護管3の内部に収容保持させることができる。勿論、コイルスプリング部材4を予めシース測温体2の所定部に装着しておき、そのまま保護管3に挿入してゆき大径コイル領域40を基端部30に装着することで保持させるようにしてもよい。
【0028】
そして、シース測温体を点検又は交換する際には、コイルスプリング部材4を基端部30に装着させたままシース測温体2のみ取り外し、あるいはコイルスプリング部材4とともにシース測温体2を取り外し、点検あるいは新しいシース測温体に容易に交換することが可能となる。
【0029】
図2(b)に示すように、金属シース外周面20bにおける前記小径コイル領域41が密着される所定部位には凸部23が設けられ、該凸部23の上に小径コイル領域41が乗り上げることにより、該小径コイル領域41と金属シース20とが互いに軸方向に確実に係止され、シース測温体2はコイルスプリング部材4の小径コイル領域41内に安定した状態に保持される。とくに本例のように、下方に向けてシース測温体2を装着する場合にも、小径コイル領域41内からのずれ落ちを防止でき、先端の温接点21aを所定の位置に確保することができる。なお、本発明はこのような凸部を設けるものになんら限定されず、大径コイル領域40が装着される保護管基端部30に設けてもよい。
【0030】
凸部23は、金属シース20の所定部位をかしめ、シース外周面を径方向に張り出し変形させることにより形成され、具体的には、たとえば図3(b)に示すように、金属シース20内に収納されている熱電対素線21、21の隣り合う方向にシース壁面を張り出し変形させることにより、シース外周面上に一対の凸部23、23が形成される。なお、その他の方法としてビーディング加工、異形加工、チューブハイドロフォーミング法などにより、パイプ成形時にあらかじめ金属シースに凸部を加工してもよい。
【0031】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の代表的実施形態に係る測温センサを示す説明図。
【図2】(a)は同じく測温センサを示す縦断面図、(b)は要部を示す縦断面図。
【図3】(a)は同じく測温センサを構成するシース測温体の要部を示す説明図、(b)はそのA−A断面図、(c)はB−B断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 測温センサ
2 シース測温体
3 保護管
4 コイルスプリング部材
5 接続部
6 リード線
7 壁面
20 金属シース
20b 外周面
21 熱電対素線
21a 温接点
22 無機絶縁物
23 凸部
30 基端部
30b 外周面
40 大径コイル領域
40a 開口端
41 小径コイル領域
41a 開口端
42 テーパーコイル領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属シース内に測温素子を収容してなるシース測温体と、該シース測温体を収容する保護管とより構成される測温センサであって、前記保護管の基端部を受け入れて該基端部の外周面に密着する大径コイル領域と、前記シース測温体の金属シース外周面に密着する小径コイル領域とを両端に有するコイルスプリング部材により、前記保護管の基端側に前記金属シース外周面を取り付けてなることを特徴とする測温センサ。
【請求項2】
前記コイルスプリング部材が、大径コイル領域と小径コイル領域の間に、該大径コイル領域から小径コイル領域に向けて次第に縮径するテーパーコイル領域を設けてなる請求項1記載の測温センサ。
【請求項3】
前記保護管の基端部に前記コイルスプリング部材をその大径コイル領域開口端からテーパーコイル領域との境界位置まで差し込んで当該大径コイル領域の内面に密着保持させるとともに、前記シース測温体を前記小径コイル領域開口端から挿通して金属シース外周面の所定位置に前記小径コイル領域を密着させてなる請求項2記載の測温センサ。
【請求項4】
前記金属シース外周面における前記小径コイル領域が密着される所定部位に凸部を設け、該凸部の上に乗り上げることにより前記小径コイル領域と金属シースが軸方向に互いに係止される請求項1〜3の何れか1項に記載の測温センサ。
【請求項5】
前記凸部が、前記金属シースの所定部位をかしめて張り出し変形させてなる請求項4記載の測温センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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