説明

測温プローブ

【課題】窒化珪素保護管の割れを抑制して長寿命化に有利な測温プローブを提供する。
【解決手段】プローブは、アルミニウム合金溶湯よりも高融点をもつ測温対象物Wを測温する。このプローブは、窒化珪素保護管1と;窒化珪素保護管1を被覆すると共に、窒化珪素保護管1よりも熱衝撃に対する耐久性が高い保護材料で形成された有底状をなす保護管2と;窒化珪素保護管1に挿入され測温接点44をもつ熱電対要素4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯等の高温の測温対象物の温度を測定する測温プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム合金溶湯を測温する測温プローブとしては、図4に示すように、中空室をもつ窒化珪素で形成された有底状をなす窒化珪素保護管1Xと、窒化珪素保護管1Xの中空室14Xに挿入され測温対象物Wの温度を測定する測温接点を44Xもつ熱電対要素4Xとを備えるものが知られている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−372462号公報
【特許文献2】特開平09−304192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した測温プローブによれば、アルミニウム合金溶湯を測温するときには亀裂が発生しないものの、炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等といったアルミニウム合金溶湯よりもかなり融点が高温の測温対象物を測温するとき、窒化珪素保護管1Xが急熱され、熱衝撃により窒化珪素保護管1Xにおいて亀裂が発生することがあった。殊に、窒化珪素保護管1Xのうち湯面W1付近において亀裂が発生することがあった。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等の高温の測温対象物を測温するときであっても、窒化珪素保護管における亀裂の発生を抑制し、長寿命化に有利な測温プローブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る測温スリーブは、アルミニウム合金溶湯よりも高融点をもつ測温対象物を測温する測温プローブであって、(i)中空室をもつ筒部と筒部の先端に連接された底部とを有する窒化珪素質の材料で形成された有底状をなす窒化珪素保護管と、(ii)窒化珪素保護管の筒部の外壁面を被覆する外筒部と窒化珪素保護管の底部の外壁面を被覆する外底部とを有すると共に、窒化珪素保護管よりも熱衝撃に対する耐久性が高い保護材料で形成された有底状をなす保護管と、(iiI)窒化珪素保護管の中空室に挿入され測温対象物の温度を測定する測温接点をもつ熱電対要素とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、アルミニウム合金溶湯よりも高融点をもつ炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等の高温の測温対象物に測温プローブが浸漬されるときであっても、窒化珪素保護管に対する熱衝撃が緩和され、窒化珪素保護管の割れが抑制される。窒化珪素質は窒化珪素(Si)の他にサイアロンも含む意味である。サイアロンは、珪素、アルミニウム、酸素、窒素を含むセラミックス化合物である。
【0007】
保護管を構成する保護材料を100%とするとき、質量比で、セラミックスは10〜90%、殊に20〜80%、30〜70%、50〜70%にでき、カーボンは90〜10%、殊に80〜20%、70〜30%、または、40〜10%にできる。カーボンは伝熱性が良好であるため、カーボン含有の保護管の熱衝撃性に対する耐久性を向上でき、更に、スラグ等に対する耐久性を向上できる。上記したように保護管を構成する保護材料は、セラミックスおよびカーボンの混合物を基材とすることが好ましい。好ましくは、保護管の外筒部の内壁面と窒化珪素保護管の筒部の外壁面との間には、測温対象物の温度において溶融しない粉末粒子を基材とする粉末粒子層が配置されている。粉末粒子層は空気を含むため、窒化珪素保護管に対する熱衝撃が更に緩和され、窒化珪素保護管の割れが抑制される。好ましくは、保護材料におけるセラミックスはアルミナ、ジルコニア、マグネシア、スピネル、ムライトのうちの少なくとも1種で形成されている。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等の高温の測温対象物を測温するときであっても、窒化珪素保護管における急激な温度上昇が抑えられ、窒化珪素保護管における亀裂の発生が抑制され、長寿命化に有利な測温プローブが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1に係り、測温プローブの要部を示す図である。
【図2】実施形態2に係り、測温プローブの要部を示す断面図である。
【図3】実施形態3に係り、測温プローブの要部を示す断面図である。
【図4】従来技術に係り、測温プローブの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
図1は実施形態1の概念を示す。本実施形態に係る測温プローブは、アルミニウム合金溶湯よりも高融点をもつ測温対象物Wを測温する。測温プローブは、(i)中空室14をもつ筒部10と筒部10の先端に連接された底部12とを有する窒化珪素で形成された有底状をなす窒化珪素保護管1と、(ii)窒化珪素保護管1の筒部10の外壁面10pを被覆する外筒部20と窒化珪素保護管1の底部12の外壁面12pを被覆する外底部22とを有すると共に、セラミックスおよびカーボンの混合物を基材とする保護材料で形成された有底状をなすカーボン含有保護管2(保護管)と、(iiI)窒化珪素保護管1の中空室14に挿入され測温対象物Wの温度を測定する測温接点44をもつ熱電対要素4とを有する。底部12および外底部22はそれぞれ三次元ドーム形状をなし、熱衝撃に対する耐久性が改善されている。窒化珪素保護管1は窒化珪素またはサイアロンで形成されており、基本的には緻密体であり、気孔をほとんど有していない。窒化珪素またはサイアロンは焼結助剤を含む。カーボン含有保護管2を構成する保護材料は、セラミックスおよびカーボンの混合物で形成されている。セラミックスはアルミナとされている。従って、カーボン含有保護管2を構成する保護材料を100%とするとき、質量比で、セラミックスは60〜97%、特に、65〜85%にでき、カーボンは3〜40%、特に、15〜35%にできる。カーボンはセラミックスよりも伝熱性が良好である。更にスラグに対する耐久性も高め得る。このようにカーボン含有保護管2は、窒化珪素保護管1よりも高い熱衝撃性に対する耐久性をもつ。カーボンとしては、黒鉛、カーボンブラック等を例示でき、カーボン含有保護管2を構成する材料に含有されていた樹脂バインダを炭化させたものでも良い。カーボン含有保護管2は多数の微細な気孔(サイズ:1〜100マイクロメートル)を有しており、気孔率は体積比で1〜20%、2〜10%にできる。窒化珪素保護管1は基本的には緻密体であるため、カーボン含有保護管2の気孔率は窒化珪素保護管1の気孔率よりも高い。このようなカーボン含有保護管2は、窒化珪素保護管1に対する熱衝撃が更に緩和され、窒化珪素保護管1の割れが抑制される。図1に示すように、窒化珪素保護管1の筒部10の外壁面10pとカーボン含有保護管2の外筒部20の内壁面20iとの間には、多数のセラミックス粉末粒子30の集合体を基材とすると共に空気を含む粉末粒子層3が配置されている。セラミックス粉末粒子30は、測温対象物Wの測定温度(例えば1100〜1750℃、1200〜1700℃)において溶融しない材料とされており、具体的にはアルミナ粉末粒子の集合体で形成されている。
【0011】
粉末粒子層3は空気を含むため、窒化珪素保護管1に対する熱衝撃が更に緩和され、窒化珪素保護管1の割れが抑制される。セラミックス粉末粒子30の粒径は、窒化珪素保護管1のサイズ、粉末粒子層3の厚み等に応じて適宜選択できるが、5ミリメートル以下、特に0.1〜3ミリメートル、0.5〜2ミリメートル、0.8〜1.3ミリメートル程度とされている。なお、湯面W1付近の高さ位置(例えば、浸漬時において、湯面W1の高さ位置から窒化珪素保護管1の外径の1.5倍以内の値をプラスマイナス方向にとった範囲)において、粉末粒子層3の厚みt3は、窒化珪素保護管1の筒部10の厚みt1、カーボン含有保護管2の外筒部20の厚みt2よりも小さくされている。t1/t2は0.6〜2.5の範囲内、0.7〜2.0の範囲内が例示される。t1>t2でもよい。この場合、測温プローブの径の増加が抑制される。なおt1≒t2、t1=t2でもよく、場合によってはt1<t2にできる。熱電対要素4は、挿入孔41をもつアルミナ等の絶縁材料で形成された絶縁管42と、挿入孔41に挿入された熱電対本体43と、熱電対要素4の先端に設けられ測定対象物Wの温度を測定する測温接点44とを有する。熱電対本体43は測温対象物Wの温度の温度に応じて選択できる。測温接点44は、窒化珪素保護管1の底部12ひいてはカーボン含有保護管2の外底部22に対面している。熱電対要素4の外壁面4pと窒化珪素保護管1との間には、空気が収容されている断面リング形状の断熱層46が形成されている。
【0012】
さて測温対象物Wの温度を測定するときには、測温プローブのカーボン含有保護管2の外壁面2pは、炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等の高温の測定対象物Wに浸漬されて接触する。W1は測定対象物Wの湯面を示す。この場合、カーボン含有保護管2が測定対象物Wの温度またはそれ付近に加熱される。測定対象物Wの種類によっては相違するものの、カーボン含有保護管2は、例えば、1100〜1700℃、1200〜1600℃に加熱される。このように測温プローブが高温に晒されるため、測定回数が多数回繰り返されたりすると、窒化珪素保護管1に亀裂が入るおそれがある。しかし本実施形態によれば、窒化珪素保護管1は、窒化珪素やサイアロンよりも熱衝撃に対する耐久性が高いカーボン含有保護管2で覆われているため、炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等の高温の測温対象物を測温プローブで測温するときであっても、窒化珪素保護管1の急激な温度上昇が抑制される。よって、窒化珪素保護管1に対する熱衝撃は緩和される。このように窒化珪素保護管1における亀裂は抑えられる。殊に、窒化珪素保護管1における湯面W1付近における亀裂が抑制される。ここで、カーボン含有保護管2は窒化珪素保護管1よりも熱衝撃に対して高い耐久性を有しているため、カーボン含有保護管2における亀裂発生および亀裂成長も抑えられる。加えて、窒化珪素保護管1の外筒部20の内壁面20iと窒化珪素保護管1の筒部10の外壁面10pとの間には、セラミックス粉末粒子30を基材とする粉末粒子層3が配置されている。このように粉末粒子層3が設けられているため、炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等の高温の測温対象物を測温するときであっても、窒化珪素保護管1の急激な温度上昇が抑制され、窒化珪素保護管1に対する熱衝撃が更に緩和され、窒化珪素保護管1の割れが更に抑制される。殊に、窒化珪素保護管1のうち湯面W1に対向する領域16における割れが効果的に抑制される。
【0013】
更に、図1に示すように、窒化珪素保護管1の底部12の外壁面12pは、カーボン含有保護管2の外底部22の内壁面22iに接近または接触している。よって、カーボン含有保護管2の外底部22付近においては、伝熱応答性を低下させる要因となり得る粉末粒子層3が存在しないか、粉末粒子層3の厚みが薄くされている。このため、カーボン含有保護管2の外底部22付近から熱電要素4の測温接点44への伝熱応答性が確保され、測温プローブの測温応答性が確保される。本実施形態によれば、粉末粒子層3が窒化珪素保護管1とカーボン含有保護管2との間に介在しているため、使用の際に、窒化珪素保護管1およびカーボン含有保護管2において径方向および/または軸長方向の熱膨張または熱収縮の差が発生したとしても、その差を吸収することを期待できる。測温プローブが高温において長時間使用されると、カーボン含有保護管2に含まれるカーボン含有量が多いとき、カーボン含有保護管2に含まれるカーボンが窒化珪素保護管1に拡散して窒化珪素保護管1の性状を変化させるおそれがある。この点本実施形態によれば、粉末粒子層3が窒化珪素保護管1とカーボン含有保護管2との間に介在しているため、上記した拡散が抑制される。
【0014】
(試験例)
図1に示す実施形態1に係る測温プローブと、図4に示す従来形態に係る測温プローブとについて、溶鋼の温度を測定する試験を実施した。実施形態1では、窒化珪素保護管1の内径は18ミリメートル、外径は28ミリメートル、厚みは5ミリメートルであった。カーボン含有保護管2の内径は35ミリメートル、外径は50ミリメートル、厚みは7.5ミリメートルであった。カーボン含有保護管2の保護材料を100%とするとき、質量比で、アルミナは約65%であり、カーボンは約30%であった。粉末粒子層3の厚みt3は3.5ミリメートルであった。セラミックス粉末粒子30の径は1〜500マイクロメートルとした。従来形態に係る測温プローブでは、実施形態1と同様の窒化珪素保護管1を用い、測定回数が1回から、窒化珪素保護管1Xに異常な亀裂が確認された。これに対して本実施形態に係る測温プローブでは、測定回数が30回であっても、窒化珪素保護管1の異常な亀裂は確認されなかった。
【0015】
(実施形態2)
図2は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には共通の構成であり、共通の作用効果を有する。粉末粒子層3のうち測温時において湯面W1に対向する領域36では、粉末粒子層3の厚みが外径方向に拡径され、粉末粒子層3の厚みt3が、粉末粒子層3の他の領域37(領域36よりも下方の領域)よりも厚くされている。下方とは、カーボン含有保護管2の外底部22に向かう方向を意味する。
【0016】
このため炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等の高温の測温対象物を測温するときであっても、窒化珪素保護管1のうち湯面W1に対面する領域16における急激な温度上昇が抑制され、領域16に対する熱衝撃が更に緩和される。よって、窒化珪素保護管1のうち湯面W1に対面する領域16における割れを更に抑制させるのに有利である。なお、粉末粒子層3の領域36付近の厚みt3を厚くしても、粉末粒子層3の領域36は軸長方向において測温接点44から離間しているため、測温接点44による測温の応答性に実質的に影響を与えない。
【0017】
(実施形態3)
図3は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1,2と基本的には共通の構成であり、共通の作用効果を有する。粉末粒子層3のうち測温時において湯面W1に対面する領域36では、粉末粒子層3の厚みが拡径方向に増加し、粉末粒子層3の領域36の厚みt3が、粉末粒子層3の他の領域37(領域36よりも下方の領域)よりも厚くされている。更に、カーボン含有保護管2のうち湯面W1に対向する領域26では、カーボン含有保護管2の厚みが拡径方向に増加され、カーボン含有保護管2の領域26の厚みt2が他の領域27(湯面W1に対向する領域26よりも下方の領域)よりも厚くされている。このため炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等の高温の測温対象物を測温するときであっても、窒化珪素保護管1のうち湯面W1に対面する領域16における急熱が抑えられ、窒化珪素保護管1の割れを抑制させるのに有利である。なお厚みt2,t3を厚くしても、カーボン含有保護管2の領域26、粉末粒子層3の領域36は、測温接点44から軸長方向において離間しているため、測温接点44による測温の応答性に実質的に影響を与えない。
【0018】
(実施形態4)
実施形態4は実施形態1〜3と基本的には共通の構成であり、共通の作用効果を有するため、図1〜図3を準用する。カーボン含有保護管2を構成する保護材料はスピネルおよびカーボンの混合物で形成されている。ここで、カーボン含有保護管2を構成する保護材料を100%とするとき、質量比で、スピネルは60〜97%にでき、カーボンは3〜40%にできる。カーボン含有保護管2は多数の気孔を有しており、気孔率は体積比で1〜20%、2〜10%にできる。カーボン含有保護管2の気孔率は窒化珪素保護管1の気孔率よりも高い。このように熱衝撃に対する耐久性が必ずしも充分ではない窒化珪素保護管1の外側をカーボン含有保護管2が覆っているため、炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等の高温の測温対象物Wを測温するときであっても、窒化珪素保護管1に対する熱衝撃が緩和され、窒化珪素保護管1の割れが抑制される。
【0019】
(実施形態5)
実施形態5は実施形態1〜3と基本的には共通の構成であり、共通の作用効果を有するため、図1〜図3を準用する。カーボン含有保護管2を構成する保護材料はマグネシアおよびカーボンの混合物で形成されている。ここで、カーボン含有保護管2を構成する保護材料を100%とするとき、質量比で、マグネシア60〜97%にでき、カーボンは3〜40%にできる。カーボン含有保護管2は多数の気孔を有しており、気孔率は体積比で1〜20%、2〜10%にできる。カーボン含有保護管2の気孔率は窒化珪素保護管1の気孔率よりも高い。窒化珪素保護管1の外側をカーボン含有保護管2が覆っているため、炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等の高温の測温対象物を測温するときであっても、窒化珪素保護管1に対する熱衝撃が緩和され、窒化珪素保護管1の割れが抑制される。
【0020】
(実施形態6)
実施形態6は実施形態1〜3と基本的には共通の構成であり、共通の作用効果を有するため、図1〜図3を準用する。カーボン含有保護管2を構成する保護材料はムライトおよびカーボンの混合物で形成されている。ここで、カーボン含有保護管2を構成する保護材料を100%とするとき、質量比で、ムライト60〜97%にでき、カーボンは3〜40%にできる。このように窒化珪素保護管1の外側をカーボン含有保護管2が覆っているため、炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等の高温の測温対象物を測温するときであっても、窒化珪素保護管1に対する熱衝撃が緩和され、窒化珪素保護管1の割れが抑制される。
【0021】
(実施形態7)
実施形態7は実施形態1〜3と基本的には共通の構成であり、共通の作用効果を有するため、図1〜図3を準用する。カーボン含有保護管2を構成する保護材料はジルコニアおよびカーボンの混合物で形成されている。ここで、カーボン含有保護管を構成する保護材料を100%とするとき、質量比で、ジルコニア60〜97%にでき、カーボンは3〜40%にできる。このように窒化珪素保護管1の外側をカーボン含有保護管2が覆っているため、炭素溶鋼、合金溶鋼、鋳鉄溶湯、鋳鋼溶湯等の高温の測温対象物を測温するときであっても、窒化珪素保護管1に対する熱衝撃が緩和され、窒化珪素保護管1の割れが抑制される。
【0022】
(その他)図1に示す実施形態では、カーボン含有保護管2の外底部22付近においては、粉末粒子層3が存在しないか、粉末粒子層3の厚みが薄くされているが、これに限らず、カーボン含有保護管2の外底部22付近においても外筒部20の場合と同様な厚み、あるいは、それよりも厚みが大きい粉末粒子層3が存在していても良い。粉末粒子層3を形成するセラミックス粉末粒子30としては、アルミナに限らず、ジルコニア、マグネシア、スピネル、ムライトのうちの少なくとも1種で形成されていても良い。断熱層46には空気が存在しているが、アルゴンガス等のその他のガスでも良いし、断熱層46にセラミックス粉末粒子を装填させていても良い。断熱層46を廃止しても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0023】
1は窒化珪素保護管、10は筒部、12は底部、14は中空室、2はカーボン含有保護管(保護管)、20は外筒部、22は外底部、3は粉末粒子層、30はセラミックス粉末粒子、4は熱電対要素、42は絶縁管、43は熱電対本体、44は測温接点、5は保護スリーブを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金溶湯よりも高融点をもつ測温対象物を測温する測温プローブであって、
中空室をもつ筒部と筒部の先端に連接された底部とを有する窒化珪素質の材料で形成された有底状をなす窒化珪素保護管と、
前記窒化珪素保護管の筒部の外壁面を被覆する外筒部と前記窒化珪素保護管の底部の外壁面を被覆する外底部とを有すると共に、前記窒化珪素保護管よりも熱衝撃に対する耐久性が高い保護材料で形成された有底状をなす保護管と、
前記窒化珪素保護管の前記中空室に挿入され測温対象物の温度を測定する測温接点をもつ熱電対要素とを具備することを特徴とする測温プローブ。
【請求項2】
請求項1において、前記保護管を構成する保護材料は、セラミックスおよびカーボンの混合物を基材とすることを特徴とする測温プローブ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記カーボン含有保護管の前記外筒部の内壁面と前記窒化珪素保護管の前記筒部の外壁面との間には、測温対象物の温度において溶融しない粉末粒子を基材とする粉末粒子層が配置されていることを特徴とする測温プローブ。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記保護材料におけるセラミックスはアルミナ、ジルコニア、マグネシア、スピネル、ムライトのうちの少なくとも1種で形成されていることを特徴とする測温プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−42323(P2012−42323A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183561(P2010−183561)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000220767)東京窯業株式会社 (211)
【Fターム(参考)】