説明

測温抵抗体洗浄装置を設けた腐食試験機

【課題】プログラムに規定されたサイクルを組んで試験片の腐食試験を実施する腐食試験機において、測温抵抗体を自動的に洗浄することで、正確な温湿度の測定値を得て、これにより、温湿度が一定値に到達する時間を短縮させ、日本工業規格に定めた一定の範囲内の移行時間で次の試験への移行を容易とし、かつ、自然界における腐食状態の再現性を向上することにある。
【解決手段】腐食試験機用測温抵抗体洗浄装置(68)は、測温抵抗体(57)への洗浄液を噴出する洗浄ノズル(70)を有する洗浄液供給手段(69)と、洗浄ノズル(70)から洗浄液を噴出させるように洗浄液供給手段(69)を駆動制御する制御手段(67)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測温抵抗体洗浄装置を設けたプログラムに規定されたサイクルを組んで腐食試験を実施する腐食試験機に係り、腐食試験機の測温抵抗体を洗浄する測温抵抗体洗浄装置を設けた腐食試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食試験機は、塗装、メッキ、アルマイト等の金属表面処理や、金属材料の腐食性(防錆性、防食性)を評価するために用いられている。
このような腐食試験機には、塩水噴霧試験機、塩乾湿の複合サイクル試験機、ガス腐食試験機等の各試験機がある。
複合サイクル試験機は、試験槽内で、プログラムに規定されたサイクルを組んで実施するサイクル腐食試験、すなわち、塩水噴霧試験と乾燥試験と湿潤試験とを順次に繰り返し、自然の環境を再現して試験片の試験を行うものであり、自然界における腐食状態を忠実に再現して、人工的に短時間で試験片の腐食性を知ることができ、自動車、住宅、家電製品、日常生活用品等のあらゆる工業製品の試験に使用されている。
また、複合サイクル試験機においては、各試験の設定された条件が変わる時の移行時間が試験片の腐食結果に影響することが分かっており、そのことが重要視されている。このため、日本工業規格では各試験への移行時間を一定の範囲で規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−242546号公報
【特許文献2】特開2008−76051号公報 特許文献1に記載の腐食センサは、腐食試験において正確な試験を行うための腐食速度をモニタリングするものにおいて、亜鉛と白金との組み合わせのガルバニック対からなり、亜鉛の腐食生成物を除去するものである。 特許文献2に記載の塩水噴霧装置は、塩水ノズルに洗浄水を吹きかける洗浄ノズルを設けたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、複合サイクル試験機を行う腐食試験機においては、塩水噴霧試験の際に、温湿度の測定を行う測温抵抗[S1]体(センサ)に塩水噴霧によって塩溶液が付着し、そして、次の乾燥試験に移行した時に、その付着した塩溶液中の塩が結晶となり、結晶となった塩が乾燥試験終了後に行う湿潤(高温)試験時の温度測定に、誤差を生じさせてしまうということが分かった。
例えば、測温抵抗体に塩化ナトリウム(塩)が付着した場合の温度測定値への影響を述べると、試験条件として、一例として、温度60℃・湿度25%rh、温度50℃・湿度95%rhとし、そして、恒温槽内に2対の乾球測温抵抗体及び湿球測温抵抗体をセットし、1対の乾球測温抵抗体・湿球測温抵抗体に塩化ナトリウム(塩)を付着させると、この塩化ナトリウム(塩)の付着の影響を受けて、乾球温度・湿球温度が上昇し、その傾向は、乾燥試験では湿球に影響が大きく、湿潤試験では乾球・湿球共に影響が大きくなる。これは、乾球測温抵抗体・湿球測温抵抗体に付着した塩化ナトリウム(塩)が雰囲気から吸湿する時に、疑縮潜熱が発生し、温湿度の測定値が実際の値よりも高くなると考えられる。
温湿度の測定は、乾球温度・湿球温度を各測温抵抗体で測定し、湿度は、その測定値を日本工業規格の計算式に代入して求る値である。
従って、実際の試験槽内の雰囲気温湿度と、乾湿球測温抵抗体によって測定された各温度及び各温度測定値をから日本工業規格の計算式に代入して求められた湿度表示[S2]値との間に誤差が生ずるとともに、温度測定値の誤差によって、温湿度が一定値に到達するまでの時間が実際の雰囲気湿度よりも遅れ、長い時間で表示されることになり、このため、温湿度の一定値への到達時間が実際とは異なって遅くなるという不都合があった。
また、次の試験への移行時間を日本工業規格で定めた一定の範囲内にするために、別途に乾湿球測温抵抗体1対を、試験槽外に設けておき、塩水噴霧装置以外はその測温抵抗体を使用するために自動的に測温抵抗体を出し入れする機能を増設することが考えられるが、コストアップになるという不都合があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、試験片のサイクル腐食試験を実施する腐食試験機において、試験中に測温抵抗体に付着した塩の結晶を自動的に洗浄して、温湿度を正確に測定することで、温湿度の一定値への到達時間を短縮し、正確な測定値を得て、日本工業規格に定めた一定の範囲内の移行時間で次の試験への移行を容易とし、かつ、自然界における腐食状態の再現性を向上する測温抵抗体洗浄装置を設けた腐食試験機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、試験片のサイクル腐食試験を実施する腐食試験機において、この腐食試験機の試験槽内に温度を測定する測温抵抗体を洗浄する腐食試験機用測温抵抗体洗浄装置を設け、この腐食試験機用測温抵抗体洗浄装置は、前記測温抵抗体への洗浄液を噴出する洗浄ノズルを有する洗浄液供給手段及び前記洗浄ノズルから洗浄液を噴出させるように前記洗浄液供給手段を駆動制御する制御手段から構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の測温抵抗体洗浄装置を設けた腐食試験機は、測温抵抗体を自動的に洗浄することで、塩の結晶の影響をなくし、乾湿温度を正確に測定させ、温湿度の一定値への到達時間を短縮させ、日本工業規格に定めた一定の範囲内の移行時間で次の試験への移行を容易とし、かつ、自然界における腐食状態の再現性を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は複合サイクル試験機の断面図である。(実施例1)
【図2】図2は乾球測温抵抗体近傍に配置した乾球測温用洗浄ノズルの断面図である。(実施例1)
【図3】図3は湿球測温抵抗体近傍に配置した湿球測温用洗浄ノズルの断面図である。(実施例1)
【図4】図4は各試験及び測温抵抗体洗浄の工程を示すフローチャートである。(実施例1)
【図5】図5は洗浄ノズルの拡大断面図である。(実施例2)
【図6】図6は2つの洗浄ノズルを配設した概略斜視図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明は、温湿度の一定値への到達時間を正確な測定値を得て短縮し、日本工業規格に定めた一定の範囲内の移行時間で次の試験への移行を容易とし、かつ、自然界における腐食状態の再現性を向上する目的を、測温抵抗体を自動的に洗浄して実現するものである。
【実施例1】
【0010】
図1〜図4は、この発明の実施例1を示すものである。
図1において、1はプログラムに規定されたサイクルを組んで試験片の腐食試験を実施する腐食試験機として例示する複合サイクル試験機である。
この複合サイクル試験機1は、試験槽2と、この試験槽2の上部の蓋体3とからなる。 試験槽2は、底部材4と、この底部材4に立設した筒体5とを備えている。
筒体5内には、底部4の上面に下側支板6を載置し、また、底部4の近傍且つ平行に区画部材7を配設し、この区画部材7の下側で機器用空間8を区画形成するとともに、区画部材7の上側で試験室9を区画形成する。
区画部材7は、下面が支持材10で支持され、底部4と平行に延びる横架部11と、試験室9の中央部位で上方に延びた立上円筒部12とからなる。
【0011】
底部4の上面に載置した下側支板6には、中央部位で、機器用空間8から試験室9内に突出して軸空間13を形成する中空状の固定用軸14が立設される。この固定用軸14の下部は、底部4及び下側支板6を貫通して下方に開口している。
この固定用軸14の上部には、塩水噴霧手段15が設けられる。
この塩水噴霧手段15は、固定用軸14の上端に固定されて塩水を貯留する塩水容器16と、この塩水容器16の上部に固定されて噴霧口17が蓋体3の高さ位置まで延びた筒状の噴霧筒18と、この噴霧筒18の途中に配設された塩水噴霧ノズル19と、この塩水噴霧ノズル19からの塩水を圧縮空気によって噴霧筒18内に噴霧するための圧縮空気ノズル20とを備えている。
【0012】
塩水容器16内には、塩水量調整用フロート21が設けられている。
塩水噴霧ノズル19には、塩水容器16内からの塩水を導く塩水供給管22が接続している。
圧縮空気ノズル20には、固定用軸14の軸空間13内に開口する圧縮空気供給管23が接続している。
固定用軸14の下端には、圧縮空気接続管24の一端が接続している。この圧縮空気接続管24の他端には、空気圧縮機25が接続している。この空気圧縮機25で生成された圧縮空気は、圧縮空気接続管24と固定用軸14の軸空間13と圧縮空気供給管23とを経て圧縮空気ノズル20に供給される。
【0013】
機器用空間8において、固定用軸14の下部の外周面には、下側固定用部材26が設けられる。
この下側固定用部材26には、下側軸受27を介して固定用軸14と同心上で且つこの固定用軸14の径よりも大きな回動筒28の下部が回転可能に立設される。この場合、固定用軸14の外周面と回動筒28の内周面との間には、環状の流水用空間29が形成される。
この回動筒28の上部は、塩水容器16の下面に取り付けた上側固定用部材30の上側軸受31によって回転可能に支持されている。
機器用空間8において、回動筒28の外周面の下部には、被動ギヤ32が横方向に固定されている。この被動ギヤ32には、下側支板6の上面に取り付けた駆動用モータ33の駆動ギヤ34が噛み合っている。
試験室9内において、塩水容器16の下方には、区画部材7の立上円筒部12の上端に設置され且つ回動筒28に遊嵌した上側支板35が設けられている。
【0014】
回動筒28の上部には、試験室9において、複数枚の試験片Pを載置する試験片用枠体36が取り付けられる。
この試験片枠体36は、固定用軸14と回動筒28間の環状の流水用空間29に連通して水が流通可能な中空状のパイプ材からなり、回動筒28の上部位に固定された断面U字形状の支持基部37と、この支持基部37の上部に連設した一側環状部38及び他側環状部39と、この一側環状部38と他側環状部39とを連結する接続腕部40とからなる。支持基部37の下面は、上側支板35の上面に摺動可能に載置されている。
また、試験片枠体36は、一側環状部38・他側環状部39よりも下方で試験片Pを保持する受板41が設けられている。一側環状部38と他側環状部39と接続腕部40とには、試験片Pを冷却するための水を噴出する複数の水噴出用口42が形成されている。
更に、固定用軸14と回動筒28間の環状の流水用空間29には、固定用軸14の軸空間13内に配置されて下方に延びる送水管43が連通している。この送水管43は、送水接続管44を介して水容器45に連絡している。送水接続管44の途中には、水ポンプ46が介設されている。
試験片枠体36は、駆動用モータ33が駆動して回動筒28が回動すると、この回動筒28の回動に伴って回動される。
【0015】
試験室9においては、試験片洗浄手段47を構成するように、噴霧筒18の上部に固定された管部材48が水平方向に延びて配設されている。この管部材48には、外部の水源(図示せず)からの洗浄液を試験室9に噴出する複数の試験片洗浄用噴出口49が形成されている。
また、試験室9においては、乾燥手段50を構成するように、受板41近傍で且つ試験片枠体36の回転範囲の外周辺には、熱風用管部材51が配設される。この熱風用管部材51は、外部の熱風槽(図示せず)からの熱風を試験室9に導くものである。
更に、試験室9において、湿潤手段52を構成するように、区画部材7の横架部11と立上円筒部12の部位には、仕切板53によって水を貯留する水用室54を形成する。この水用室54には、ヒータ55と、発泡ノズル56とが配設される。
【0016】
試験室9には、この試験室9の温度を測定する測温抵抗体(センサ)57が配設される。
この測温抵抗体57としては、この実施例1において、乾球測温抵抗体58と湿球測温抵抗体59とが試験室9の上部に配設される。
乾球測温抵抗体58は、乾気温度を検知するものであり、図2に示すように、乾球測温用チタン管60と、この乾球測温用チタン管60の先端に取り付けられた乾球測温用検知部(センシング部)61とからなる。
湿球測温抵抗体59は、湿気温度を検知するものであり、図3に示すように、湿球測温用チタン管62と、この湿球測温用チタン管62の先端に取り付けられた湿球測温用検知部(センシング部)63とからなる。この湿球測温用検知部63の先端には、連絡管64を介して湿球ポット65が設けられている。
乾球測温抵抗体58と湿球測温抵抗体59とは、隣接して左右方向や上下方向等の各方向で且つ隣接して平行に配設される。
【0017】
空気圧縮機25と駆動用モータ33と水ポンプ46と乾球測温抵抗体58と湿球測温抵抗体59とは、制御盤66に内蔵された制御手段67に連絡している。
【0018】
複合サイクル試験機1には、測温抵抗体57としての乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59を自動的に洗浄する腐食試験機用の測温抵抗体洗浄装置68が備えられる。
この測温抵抗体洗浄装置68は、塩水由来の塩分の結晶の析出の防止のみならず、酸由来のアニオンと塩由来のカチオンとの塩の結合物が測温抵抗体57に析出するのを防止したり、塵埃等の遺失物を洗い流すものであり、腐食試験機として、複合サイクル試験機1のみならず、塩水噴霧試験機やガス腐食試験機等の他の腐食試験機にも使用することが可能なものである。
この測温抵抗体洗浄装置68は、図1に示すように、前記制御手段67及び洗浄液供給手段69から構成される。
この洗浄液供給手段69においては、洗浄ノズル70として、乾球測温抵抗体58と湿球測温抵抗体59との全体を洗浄可能なように、図2に示すように、乾球測温抵抗体58近傍の上方で且つこの乾球測温抵抗体58に倣った同じ長さでパイプ状の乾球測温用洗浄ノズル71と、図3に示すように、湿球測温抵抗体59近傍の上方で且つこの湿球測温抵抗体59に倣った同じ長さでパイプ状の湿球測温用洗浄ノズル72とが設けられている。
乾球測温洗浄ノズル71には、図2に示すように、乾球測温抵抗体58に向かって複数の乾球測温用噴出口73が形成されているとともに、洗浄液の乾球測温用導入管74が接続している。
湿球測温用洗浄ノズル72には、図3に示すように、湿球測温抵抗体59に向かって複数の湿球測温用噴出口75が形成されているとともに、洗浄液の湿球測温用導入管76が接続している。
【0019】
乾球測温用導入管74と湿球測温用導入管76とは、図1に示すように、管集合部77で集合している。この管集合部77には、洗浄液(例えば、純水)を貯留する洗浄液容器78に連絡した洗浄液供給管79が接続している。
この洗浄液供給管79には、洗浄液容器78側から順次に、開閉バルブ80と液量調整用電磁弁81とが介設されている。開閉バルブ80は、洗浄液供給管79を開閉するものである。液量調整用電磁弁81は、制御手段67に連絡して、洗浄液供給管79を流通する洗浄液の供給量を調整するように駆動制御される。
【0020】
制御手段67は、この実施例において、少なくとも塩水噴霧制御部67Aと乾燥制御部67Bと湿潤制御部67Cとを備え、試験室9内で塩水噴霧試験と乾燥試験と湿潤試験とを順次に繰り返し行って試験片のサイクル腐食試験を実施する。
また、制御手段67は、洗浄制御部67Dを備え、測温抵抗体洗浄装置68の洗浄液供給手段69を、塩水噴霧試験終了前又は塩水噴霧試験終了後に、乾球測温用洗浄ノズル71及び湿球測温用洗浄ノズル72から洗浄液を噴出させて乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59を洗浄、つまり、乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59での析出物の予防や、乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59に付着した塵埃等の遺失物を除去するように制御する。
【0021】
このように、測温抵抗体57としての乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59を洗浄しなければならないのは、以下の理由からである。
例えば、塩水噴霧試験(35℃)から乾燥試験(60℃、25%rh±5%rh)、湿潤試験(50℃、95%以上)への移行に際しては、以下の状態となる。
(1)、塩水噴霧条件(状態)で塩水が付着する。
(2)、次の乾燥条件に移行するに伴って、塩溶液が塩の結晶となる。
(3)、結晶となった塩は、湿潤条件時に、試験槽内空気[S3]が高湿になるので、その空気より吸湿する。
(4)、上記の乾燥条件では、塩の結晶が生成される過程で塩溶液から水分が蒸発するために、蒸発潜熱により測温抵抗体の温度が雰囲気温度よりも低下する。
(5)、上記の湿潤試験では、塩の結晶が空気中の水分を吸湿することにより、凝縮潜熱が発生し、測温抵抗体の温度が試験槽内の空気温度よりも上昇する。
(6)、これを、計算式で表すと、以下のようになる。
Q=α*F*ΔT…………式(a)
w*C=α*F*(t1−t2)…………式(b)
上記の式(a)、式(b)より、
t1=w*C/α*F+t2
ここで、
Q:発熱量(Kw)
α:空気の熱伝達率(Kw/m2 K)
F:塩の結晶が付着した測温抵抗体の面積(m2 )
ΔT:温度差(K)
w:塩の結晶に吸湿されて凝縮する水分の量(塩の結晶に含まれている水分の蒸発 量に相当する)(Kg/S)
C:水の蒸発(凝縮)潜熱(KJ/Kg)
t1:測温抵抗体の温度(℃)
t2:試験槽内の温度(乾球温度)(℃)
である。
(7)、従って、塩の結晶が測温抵抗体に付着することにより、測温抵抗体の温度(t1)は、試験槽の温度よりも高く表示され、また、塩の結晶の測温抵抗体への付着による温度差は、湿球測温抵抗体よりも乾球測温抵抗体の方が大きくなる。
【0022】
次に、この実施例1の作用を、図4のフローチャートに基づいて説明する。
図4に示すように、制御盤66における制御手段67のプログラムがスタートすると(ステップA01)、複合サイクル試験機1を駆動し、サイクル腐食試験として、先ず、塩水噴霧条件が成立することで、塩水噴霧手段15を駆動して塩水噴霧試験を実施する(ステップA02)。このとき、乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59には、塩溶液が付着してしまう。
そこで、例えば、この塩水噴霧試験終了後に、測温抵抗体洗浄装置67を駆動して、乾球測温用洗浄ノズル71及び湿球測温用洗浄ノズル72から乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59に向かって洗浄液を噴出させ、乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59に付着した塩溶液や塵埃を除去する(ステップA03)。
これにより、次の乾燥試験、又は、乾燥試験に続く湿潤試験に移行したときに、乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59に塩が結晶となって付着することがなく、よって、乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59の温度測定が正確になり、試験槽2内の雰囲気相対湿度と乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59によって温度測定された値を基に、日本工業規格の計算式に代入して求めた湿度測定値との差がなくなり、また、温湿度の一定値への到達時間が実際とは異なることがなくなる。
次に、乾燥条件が成立することで、乾燥手段50を駆動して、乾燥試験を実施し(ステップA04)、さらに、湿潤条件が成立することで、湿潤手段52を駆動して、湿潤試験を実施し(ステップA05)、その後、プログラムをリターンさせ(ステップA06)、塩水噴霧試験と乾燥試験と湿潤試験とを順次に繰り返して、自然の環境を再現して試験片Pの腐食試験を行う。
【0023】
なお、この図4のフローチャートにおいては、乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59の洗浄回数を増加するために、塩水噴霧試験終了後のみならず、乾燥試験終了後に、測温抵抗体洗浄装置68を駆動して洗浄液を噴出したり(ステップB01)、あるいは、湿潤試験終了後に、測温抵抗体洗浄装置68を駆動して洗浄液を噴出することもできる(ステップB02)。これにより、乾球測温抵抗体58及び湿球測温抵抗体59に付着した塩溶液や塵埃を、より効率良く除去することができる。
【0024】
以上、この発明の実施例について説明してきたが、上述の実施例の構成を請求項毎に当てはめて説明する。
請求項1に係る発明は、測温抵抗体洗浄装置68を、測温抵抗体57への洗浄液を噴出する洗浄ノズル70を有する洗浄液供給手段69及び洗浄ノズル70から洗浄液を噴出させるように洗浄液供給手段69を駆動制御する制御手段67から構成している。
これにより、サイクルを組んで試験片のサイクル腐食試験を実施する腐食試験機としての複合サイクル試験機1において、測温抵抗体57を自動的に洗浄することで、正確な温湿度の測定値を得て、これにより、温湿度が一定値に到達する時間を短縮させ、日本工業規格に定めた一定の範囲内の移行時間で次の試験への移行を容易とし、かつ、自然界における腐食状態の再現性を高くすることができる。また、別途にヒータを不要とするので、コスト低減を図ることができる。
請求項2に係る発明において、洗浄ノズル70としての乾球測温用洗浄ノズル71・湿球測温用洗浄ノズル72は、乾球測温抵抗体58・湿球測温抵抗体59に倣って且つ乾球測温抵抗体58・湿球測温抵抗体59と同じ長さで配設されている。
これにより、乾球測温抵抗体58・湿球測温抵抗体59全体を洗浄することができ、乾球測温抵抗体58・湿球測温抵抗体59の測定値をより正確なものとできる。
【実施例2】
【0025】
図5は、この発明の実施例2を示すものである。
以下の実施例においては、上述の実施例1と同一機能を果たす箇所には、同一符号を伏して説明する。
この実施例2の特徴とするところは、以下の点にある。即ち、洗浄ノズル82には、内周面側の径D1よりも小さな外周面側の径D2によって先細りのテーパ面83を有する洗浄液噴出口84を形成する。
これにより、洗浄ノズル82内の洗浄液が洗浄液噴出口84から噴出する際に、先細りのテーパ面83によって洗浄液の噴出速度・強さが高められ、測温抵抗体57を効率良く洗浄することができる。
【実施例3】
【0026】
図6は、この発明の実施例3を示すものである。
この実施例3の特徴とするところは、以下の点にある。即ち、一の測温抵抗体57の周りには、測温抵抗体57の測定を害さないように、測温抵抗体57の上部を洗浄する上側洗浄ノズル85と、測温抵抗体57の下部を洗浄する下側洗浄ノズル86との2つの洗浄ノズルを配設する。上側洗浄ノズル85には、測温抵抗体57の上部に配設され、測温抵抗体57の上部に向かって洗浄液を噴出する上部噴出口87が形成されている。下側洗浄ノズル86は、測温抵抗体57の下部の横方に配設され、測温抵抗体57の下部に向かって洗浄液を噴出する下部噴出口88が形成されている。
これにより、測温抵抗体57は、上部及び下部で洗浄されるので、より測定精度を高くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明に係る測温抵抗体洗浄装置を、塩水噴霧試験機やガス腐食試験機等の他の腐食試験機にも適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 腐食試験機として例示した複合サイクル試験機
2 試験槽
5 筒体
7 区画部材
8 機器用空間
9 試験室
15 塩水噴霧手段
16 塩水容器
18 噴霧筒
19 塩水噴霧ノズル
20 圧縮空気ノズル
50 乾燥手段
52 湿潤手段
57 測温抵抗体
58 乾球測温抵抗体
59 湿球測温抵抗体
61 乾球測温用検知部
63 湿球測温用検知部
66 制御盤
67 制御手段
68 測温抵抗体洗浄装置
69 洗浄液供給手段
70 洗浄ノズル
71 乾球測温用洗浄ノズル
72 湿球測温用洗浄ノズル
73 乾球測温用噴出口
75 湿球測温用噴出口
78 洗浄液容器
80 開閉バルブ
81 液量調整用電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片のサイクル腐食試験を実施する腐食試験機において、該試験機の試験槽内に温度を測定する測温抵抗体を洗浄する腐食試験機用測温抵抗体洗浄装置を設け、前記測温抵抗体への洗浄液を噴出する洗浄ノズルを有する洗浄液供給手段及び前記洗浄ノズルから洗浄液を噴出させるように前記洗浄液供給手段を駆動制御する制御手段から構成したことを特徴とする測温抵抗体洗浄装置を設けた腐食試験機。
【請求項2】
前記洗浄ノズルは、前記測温抵抗体に倣って且つ前記測温抵抗体と同じ長さで配設されていることを特徴とする請求項1に記載の測温抵抗体洗浄装置を設けた腐食試験機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−80849(P2011−80849A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233023(P2009−233023)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000107583)スガ試験機株式会社 (28)
【Fターム(参考)】