説明

測距双眼鏡

【課題】対象物までの距離を測定可能で、焦点調節及び視度調節等の双眼鏡の基本的な機能を損なわずに小型化した測距双眼鏡を提供すること。
【解決手段】接眼レンズ、対物レンズ並びに第1プリズム及び第2プリズムから成る正立プリズムを有する一対の光学系と、ビーム分割面を有し、かつ前記第1プリズム及び第2プリズムの間に配置されるビームスプリッタと、対象物にレーザーを放射する発光部と、対象物から反射したレーザーが入射する受光部と、レーザーが前記受光部に入射することにより対象物までの距離を算出する演算手段と、前記演算手段で算出された結果を表示する測定結果表示手段と、前記一対の光学系、前記ビームスプリッタ、前記発光部、前記受光部、前記演算手段及び前記測定結果表示手段を内蔵する筐体とを備えることを特徴とする測距双眼鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は測距双眼鏡に関し、詳述すると、対象物までの距離を測定することができ、双眼鏡の機能を損なうことなく小型化を図ることのできる測距双眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「Binoculars having an integrated laser range finder, compris-ing: first and second separate housing parts, each with an eyepiece and objecti-ve, which are connected to each other via a jointed bridge for eye width adjust-ment, and in which the first housing part contains a transmitter and a receiver of the laser rangefinder and also an optoelectronic display element in a fixed arrangement with respect to an optical observation axis.」(接眼レンズ及び対物レンズを夫々有する第1筐体及び第2筐体は眼幅調節用の結合部で互いに結合されており、前記第1筐体にはレーザーの発信機及び受信機並びに光軸が固定された光電表示手段を有しているレーザー測距双眼鏡)が記載されている(特許文献1の請求項1参照)。
【0003】
しかしながら、対象物までの距離を測定する機能を備えた双眼鏡は、双眼鏡の内部の装置が複雑化することにより大型化し、操作者が使用し難くなる要因の一つとなっていた。したがって、双眼鏡の機能、例えば焦点調節及び視度調節等の機能を損なうことなく小型化を図ることのできる測距双眼鏡が求められていた。
【0004】
【特許文献1】米国特開US2005/0128576A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、対象物までの距離を測定することができ、焦点調節及び視度調節等の双眼鏡の基本的な機能を損なうことなく小型化を達成できる測距双眼鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、接眼レンズ、対物レンズ並びに第1プリズム及び第2プリズムから成る正立プリズムを有し、かつ光軸が平行になるように配置される一対の光学系と、
ビーム分割面を有し、かつ前記第1プリズム及び第2プリズムの間に配置されるビームスプリッタと、
一方の光学系の前記ビームスプリッタを介して対象物にレーザーを放射する発光部と、
前記発光部から放射され、前記対象物から反射したレーザーが他方の光学系の前記ビームスプリッタを介して入射する受光部と、
前記発光部から放射されて前記対象物で反射したレーザーが前記受光部に入射することにより前記対象物までの距離を算出する演算手段と、
前記演算手段で算出された結果を表示する測定結果表示手段と、
前記一対の光学系、前記ビームスプリッタ、前記発光部、前記受光部、前記演算手段及び前記測定結果表示手段を内蔵する筐体とを備えることを特徴とする測距双眼鏡であり、
請求項2は、前記ビーム分割面は、前記発光部から放射されるレーザー及び前記対象物で反射したレーザーを反射可能でかつ前記測定結果表示手段が表示する測定結果を前記対象物と共に結像可能に設置されて成る請求項1に記載の測距双眼鏡である。
【発明の効果】
【0007】
この発明によると、対象物までの距離を測定可能であり、かつ双眼鏡の機能を損なうことなく装置全体を小型化可能である測距双眼鏡を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の測距双眼鏡は、一対の光学系と、ビームスプリッタと、発光部と、受光部と、演算手段と、測定結果表示手段と、筐体とを備えている。
【0009】
前記一対の光学系は、接眼レンズ、対物レンズ並びに第1プリズム及び第2プリズムから成る正立プリズムを有する。一方の前記対物レンズの中心を通る光軸と他方の前記対物レンズの中心を通る光軸とが互いに平行になり、また一方の接眼レンズの中心を通る光軸と他方の前記接眼レンズを通る光軸とが互いに平行になるように、前記一対の光学系を形成する各要素つまり接眼レンズ、対物レンズ並びに第1プリズム及び第2プリズムから成る正立プリズムが、配置されている。なお、説明の便宜上、対物レンズに近い箇所に設置されるプリズムを第1プリズム、接眼レンズに近い箇所に設置されるプリズムを第2プリズムと称することにする。
【0010】
この発明の測距双眼鏡における接眼レンズ及び対物レンズは、測距する機能を備えていないような通常の双眼鏡で用いる接眼レンズ及び対物レンズを用いることができる。
【0011】
この発明の測距双眼鏡における正立プリズムは、正立プリズムが第1プリズム及び第2プリズムに分割されている限り、特に制限されない。前記正立プリズムとしては、例えばアッベプリズム、ドーブレッスプリズム、シュミット・ペシャンプリズム及びケーニッヒプリズム等のダッハプリズム、並びにポロプリズム等を挙げることができる。
【0012】
また、前記一対の光学系には、接眼レンズ及び対物レンズ以外に視度調節用のレンズを設けることもできる。視度調節用レンズを設ける場合には、対物レンズを移動させて焦点を調整する機構以外に、視度を調節する機構もこの発明の測距双眼鏡に取り付けることになる。
【0013】
前記ビームスプリッタは、ビーム分割面を有し、かつ第1プリズム及び第2プリズムの間に配置されている。すなわち、対物レンズから入射する光は、操作者の目に入射するまでに、第1プリズム、ビームスプリッタ、第2プリズム及び接眼レンズを通ることとなる。ビームスプリッタとしては、ビーム分割面を有していれば良いが、例えば三角柱形状のプリズムの側面同士を接着し、かつ接着面にはビーム分割面となる所定の波長を反射するようなコーティングを予め施して成る直方体のプリズムを挙げることができる。
【0014】
ビームスプリッタは、後述の発光部から放射されるレーザーを反射し、かつ可視領域の波長を有する光は透過するようなビーム分割面を有する。なお、ビーム分割面で反射したレーザーが一対の光学系の光軸と一致し、かつビームスプリッタを透過した光が一対の光学系の光軸に平行となるように、ビーム分割面の方向が調整される。通常は、ビーム分割面の方向としては、レーザーのビームスプリッタに入射する方向と、ビーム分割面とが45°の角度を成すように調整される。ビームスプリッタの好ましい態様は、例えば発光部に赤外線レーザーを用いるとして、ビーム分割面においては、波長が400〜600nm付近の透過率が90%以上であり、かつ波長が650nm付近の透過率が50%程度であり、かつ赤外線レーザー波長領域である900nm付近の光を反射する態様を挙げることができる。
【0015】
前記発光部は、一方の光学系のビームスプリッタを介して対象物にレーザーを放射する。
【0016】
発光部は、一方の光学系のビームスプリッタに向ってレーザーを放射する。放射されたレーザーは、一対の光学系の光軸に一致するようにビーム分割面で反射され、更に第1プリズム又は第2プリズムを通って対物レンズから放射された後、対象物に投射されることとなる。発光部から放射されるレーザーとしては、赤外線レーザー又は可視光線レーザー等を用いることができる。
【0017】
前記受光部は、発光部から放射されて対象物で反射したレーザーが他方の光学系のビームスプリッタを介して入射する。
【0018】
受光部は、他方の光学系に配置される部材である。対象物に投射されたレーザーの一部は、対象物で反射して他方の光学系に入射する。他方の光学系の対物レンズから入射したレーザーは、第1プリズム又は第2プリズムを通ってビームスプリッタに入射し、ビーム分割面で受光部に向けて反射した後、受光部に入射することとなる。
【0019】
なお、発光部の配置は一対の光学系のいずれかであれば良く、発光部が配置された光学系ではない方に受光部が配置される。
【0020】
前記演算手段は、発光部から放射されて対象物で反射したレーザーが前記受光部に入射することにより対象物までの距離を算出する。
【0021】
演算手段としては、発光部から放射され、かつ対象物で反射したレーザーが受光部に入射することにより、操作者がこの発明の測距双眼鏡を使用している場所(以下、「観測地点」と称することがある。)から対象物までの距離を算出することができる限り、適宜の手段を採用することができる。演算手段としては、例えばレーザーが発光部で放射されてから受光部に入射するまでの時間及び光速から観測地点と対象物との距離を算出する方法を採用した電子計算機等を挙げることができる。
【0022】
前記測定結果表示手段は、演算手段で算出された結果を表示する。
【0023】
測定結果表示手段は、演算手段で算出された結果を操作者が認識できれば良い。例えば、操作者が接眼レンズを通して観察する視野の中に、演算手段で算出された結果を表示すると、観測地点から対象物までの距離を操作者が視認し易いので好ましい。
【0024】
前記筐体は、一対の光学系、ビームスプリッタ、発光部、受光部、演算手段、測定結果表示手段を内蔵する。
【0025】
筐体は、その内部に上述した種々の部材が配置されるので、この発明の測距双眼鏡全体が大型化することない。
【0026】
この発明の測距双眼鏡は、対象物を観察する双眼鏡の従来の機能を損なうことなく、観察地点から対象物までの距離を測定する機能を追加すると共に、ビームスプリッタを第1プリズム及び第2プリズムの間に配置し、かつ発光部及び受光部等の部材を筐体内に配置することによって、装置全体の小型化を図ることができる。
【0027】
前記ビームスプリッタの好ましい態様として、前記ビーム分割面が前記発光部から放射されるレーザー及び対象物で反射したレーザーを反射可能であり、かつ前記測定結果表示手段が表示する測定結果を対象物と共に結像可能であるように設置される態様を挙げることができる。当該態様を採用することにより、操作者は、接眼レンズを介して対象物と観測地点から対象物までの距離とを同視野中に観察することができる。なお、当該態様におけるビーム分割面は、レーザーが投射される面ではレーザーを反射し、かつレーザーが投射される面の裏面では測定結果表示手段から出力される測定結果の表示を接眼レンズに向う光学系の光軸に一致するように反射するコーティングが施される。
【0028】
以下に、この発明の測距双眼鏡の使用方法及び作用について説明する。
【0029】
先ず、操作者が一対の光学系の光軸を対象物に向ける。前記光軸を対象物に向けると、操作者は対物レンズ、第1プリズム、ビームスプリッタ、第2プリズム及び接眼レンズを透過する光により対象物を観察することができる。
【0030】
次に、対象物に焦点を合わせる。また、視度調節用レンズ及び視度調節機構が測距双眼鏡に設けられている場合には、焦点を合わせた後に視度調節を行う。
【0031】
続いて、発光部からレーザーを放射させる。もっとも、前記光軸を対象物に向ける前に発光部からレーザーを放射していても良い。
【0032】
発光部からレーザーが放射されると、レーザーはビームスプリッタに入射する。通常はレーザーの入射方向とビーム分割面とが45°を成すようにしてビームスプリッタが設置されているので、ビームスプリッタに入射したレーザーは、ビーム分割面で反射して一方の光学系の光軸に一致することになる。
【0033】
ビーム分割面で反射したレーザーは、第1プリズム又は第2プリズムに入射する。更に、レーザーは、対物レンズから放射されることとなる。なお、レーザーの進行方向は、一方の光学系の光軸に一致しているので、操作者が接眼レンズを通して観察している対象物に投射されることになる。
【0034】
対象物に投射されたレーザーの一部又は全部が反射し、反射したレーザーの一部が他方の光学系に入射する。他方の光学系における対物レンズから入射したレーザーは、第1プリズム又は第2プリズムに入射し、更にビームスプリッタに入射する。ビームスプリッタに入射したレーザーは、ビーム分割面で反射して受光部に入射することとなる。
【0035】
受光部にレーザーが入射したことにより、演算手段で観測地点から対象物までの距離を測定することができる。
【0036】
演算手段で算出された結果が測定結果表示手段に出力されることにより、測定結果表示手段が対象物までの距離を表示する。
【0037】
したがって、操作者は測定結果表示手段によって表示された対象物までの距離を視認することができる。なお、前記ビームスプリッタにおける前記ビーム分割面が、前記発光部から放射されるレーザー及び対象物で反射したレーザーを反射可能であり、かつ前記測定結果表示手段が表示する測定結果を対象物と共に結像可能である場合には、操作者は対象物の像と共に測定結果も同視野中に視認可能となる。
【0038】
この発明の測距双眼鏡の実施態様を、図面を用いて以下に説明する。
【0039】
図1に示されるこの発明の一実施態様である測距双眼鏡1は、一対の光学系2と、ビームスプリッタ3と、発光部4と、受光部5と、演算手段6と、測定結果表示手段7と、筐体8とを備えている。
【0040】
前記一対の光学系2は、図1における上側に一方の光学系2Aが配置され、かつ下側に他方の光学系2Bが配置されている。なお、一方の光学系2A及び他方の光学系2Bは、測距双眼鏡1の中心軸線Xを中心に線対称となるように、かつ一方の光学系2Aの光軸A及び他方の光学系2Bの光軸Bが平行になるように配置されている。
【0041】
一対の光学系2は、対物レンズ9、視度調節用レンズ10、シュミット・ペシャンプリズム11及び接眼レンズ12を有している。
【0042】
図1に示されるように、測距双眼鏡1は、正立プリズムとしてシュミット・ペシャンプリズム11を用いており、第1プリズムとしてペシャンプリズム13を用い、第2プリズムとしてシュミットプリズム14を用いている。
【0043】
測距双眼鏡1の焦点調節機構(図示せず)及び視度調節機構(図示せず)により焦点調節及び視度調節を行うと、対物レンズ9から入射する光は、シュミットプリズム14と接眼レンズ12との間に現れる結像面15で結像することとなる。
【0044】
ペシャンプリズム13とシュミットプリズム14との間には、ビームスプリッタ3が配置されている。ビームスプリッタ3のビーム分割面16は、測距双眼鏡1の中心軸船Xに直交する方向で、かつビームスプリッタ3にレーザーが入射する方向から45°の角度を成すように配置されている。図1に示されるようなビーム分割面の配置にすることにより、ビームスプリッタ3に入射するレーザーと一対の光学系2の光軸とを一致させることができる。ビームスプリッタ3は、2個の三角柱のプリズムの側面同士を接着した直方体形状のプリズムである。また、三角柱のプリズムの接着面は、接着する前にコーティングを予め施しており、特定の光学特性を有するようになっている。
【0045】
ここで、ビームスプリッタ3におけるビーム分割面16の光学特性を、図2に示す。ビーム分割面16は、波長が400〜600nm付近の透過率が90%以上であり、かつ波長が650nm付近の透過率が50%程度であり、かつ波長が900nm付近の光を反射することが示されている。すなわち、ビーム分割面16は、可視領域の光は透過させるが、赤外線レーザー等の赤外領域の光は反射させることになる。
【0046】
発光部4は、発光素子(図示せず)を有する装置であり、ビームスプリッタ3に向けて赤外線レーザーを放射することができる。
【0047】
受光部5は、受光素子(図示せず)を有する装置であり、ペシャンプリズム13からビームスプリッタ3に入射するレーザーがビーム分割面16で反射した後に入射することになるレーザーを感知することができる。
【0048】
演算手段6は、受光部5がレーザーを感知したことが出力されることにより、発光部4のレーザーの放射と受光部5へのレーザーの入射とから観測地点から対象物までの距離を算出する電子計算機である。
【0049】
図1における測定結果表示手段7については、水平方向から測定結果表示手段7を見た状態を筐体8の下方に立面図として示した。測定結果表示手段7は、表示用素子17、鏡18、リレープリズム19及び表示用結像レンズ20を有している。リレープリズム19は、台形プリズムであるが、直角プリズム等を用いても良い。演算手段6から算出値が集積回路等の制御手段(図示せず)が出力されることにより、表示用素子17に測定結果が表示される。表示用素子17に表示された測定結果は、鏡18、リレープリズム19、表示用結像レンズ20、ビームスプリッタ3及びシュミットプリズム14により、結像面15で結像する。なお、測定結果表示手段7における表示用素子17が出力する波長は、結像面15で結像可能な程度にビーム分割面16で反射し、かつ接眼レンズを介して操作者が観察しても眼球に悪影響を与えない範囲で適宜に決定することができる。
【0050】
上述の部材は、筐体8において上方に示す筒体である上側筐体8A及び下方に示す筒体である下側筐体8Bに収納されている。
【0051】
なお、図1に示される発光部4、受光部5、演算手段6及び表示用素子17は、電池として示される電源21に接続されている。すなわち、電源21の電力により測距双眼鏡1は観測地点から対象物までの距離を測定することになる。
【0052】
図1においては、正立プリズムとしてシュミット・ペシャンプリズム11を用いていたが、図3及び4に正立プリズム及びビームスプリッタの他の実施態様を示すこととする。図1と図3及び4とでは、ビームスプリッタが共通の部材を採用しているので、図1と同一の番号を付して示す。図3及び4に示されるように、左側に対物レンズが配置され(図示せず)、右側に接眼レンズが配置される(図示せず)。また、図3及び4のビームスプリッタ近傍に示される矩形状の部材は発光部又は受光部である。
【0053】
図3に示す正立プリズムはアッベプリズム22であり、第1プリズム23及び第2プリズム24を有している。また、第1プリズム23及び第2プリズム24の間にビームスプリッタ3が配置されている。
【0054】
図4に示す正立プリズムはポロプリズム25であり、第1プリズム26及び第2プリズム27を有している。前記アッベプリズム22と同様に、第1プリズム26及び第2プリズム27の間にビームスプリッタ3が配置されている。なお、第1プリズム25における下側の傾斜面28は、接眼レンズ側にレーザーが透過しないようにビーム分割面16と同様のコーティング等が施されることにより、レーザーを反射するようになっている。
【0055】
もっとも、この発明の測距双眼鏡における正立プリズムは、図1、3及び4に示されるプリズムに限定されることは無く、第1プリズム及び第2プリズムの配置及び夫々の大きさ等から、双眼鏡をより一層小型化できる正立プリズムを選択すれば良い。
【0056】
図1に示す測距双眼鏡1の使用方法及び作用を、以下に示す。
【0057】
先ず、操作者が接眼レンズ12を覗くようにして一対の光学系2の光軸A及びBを対象物に向ける。前記光軸A及びBを対象物に向けると、操作者は対物レンズ9、視度調節用レンズ10、ペシャンプリズム13、ビームスプリッタ3、シュミットプリズム14及び接眼レンズ12を透過する光により対象物を観察することができる。
【0058】
次に、対象物に焦点を合わせる。また、視度調節機構(図示せず)により視度調節用レンズ10を光軸A及びBに沿って平行移動させて視度調節を行う。
【0059】
続いて、発光部4からレーザーを放射させる。もっとも、前記光軸A及びBを対象物に向ける前に発光部4からレーザーを放射していても良い。
【0060】
発光部4からレーザーが放射されると、レーザーはビームスプリッタ3に入射する。図1に示されるように、レーザーの入射方向とビーム分割面16とが45°を成すようにしてビームスプリッタ3が設置されているので、ビームスプリッタ3に入射したレーザーは、ビーム分割面16で反射して他方の光学系2Bの光軸Bに一致することになる。
【0061】
ビーム分割面16で反射したレーザーは、ペシャンプリズム13に入射する。更に、レーザーは、視度調節用レンズ10を通って対物レンズ9から放射されることとなる。なお、レーザーの進行方向は、他方の光学系2Bの光軸Bに一致しているので、操作者が接眼レンズ12を通して観察している対象物に投射されることになっている。
【0062】
対象物に投射されたレーザーの一部又は全部が反射し、反射したレーザーの一部が一方の光学系2Aに入射する。一方の光学系2Aにおける対物レンズ9から入射したレーザーは、視度調節用レンズ10を通ってペシャンプリズム13に入射し、更にビームスプリッタ3に入射する。ビームスプリッタ3に入射したレーザーは、ビーム分割面16で反射して受光部5に入射することとなる。
【0063】
受光部5にレーザーが入射すると、レーザーの入射が受光部5から演算手段6に出力される。この出力により、演算手段6で観測地点から対象物までの距離を測定することができる。
【0064】
演算手段6で算出された結果が測定結果表示手段7に出力されることにより、表示用素子17に測定結果が表示される。表示用素子17に表示された測定結果は、鏡18で反射され、リレープリズム19で方向を転換され、表示用結像レンズ20を通過し、ビーム分割面16で反射されることにより、光軸Bに平行に進行することとなり、更にシュミットプリズム14を介して、結像面15で結像することとなる。
【0065】
したがって、操作者は測定結果表示手段7によって表示された対象物までの距離を視認することができる。
【0066】
ここで、操作者が測距双眼鏡1を使用して対象物までの距離を測定した場合、操作者が接眼レンズ12を介して観察することになる視野について図5を用いて説明する。操作者が観察することになる視野29の中央には、レーザーが投射される位置を示すレーザー投射位置30が設けられている。対象物31の所望の位置にレーザー投射位置30を一致させることにより、測定結果32がレーザー投射位置30近傍に表示されるようになっている。なお、測定結果32が、図1における測定結果表示手段7で表示される画像である。
【0067】
この発明の測距双眼鏡は、この発明の目的を達成することができる限り、上述の構成に限定されることは無く、適宜の部材を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、この発明の測距双眼鏡の一実施態様を示す概略図である。
【図2】図2は、ビーム分割面の光学特性の一例を示すグラフである。
【図3】図3は、この発明の測距双眼鏡における正立プリズム及びビームスプリッタの他の具体例を示す概略図である。
【図4】図4は、この発明の測距双眼鏡における正立プリズム及びビームスプリッタの他の具体例を示す概略図である。
【図5】図5は、この発明の測距双眼鏡の一実施例を使用した場合の視野を示す説明図である。
【符号の説明】
【0069】
1 測距双眼鏡
2 一対の光学系
2A 一方の光学系
2B 他方の光学系
3 ビームスプリッタ
4 発光部
5 受光部
6 演算手段
7 測定結果表示手段
8 筐体
8A 上側筐体
8B 下側筐体
9 対物レンズ
10 視度調節用レンズ
11 シュミット・ペシャンプリズム
12 接眼レンズ
13 ペシャンプリズム
14 シュミットプリズム
15 結像面
16 ビーム分割面
17 表示用素子
18 鏡
19 リレープリズム
20 表示用結像レンズ
21 電源
22 アッベプリズム
23、26 第1プリズム
24、27 第2プリズム
25 ポロプリズム
28 傾斜面
29 視野
30 レーザー投射位置
31 対象物
32 測定結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接眼レンズ、対物レンズ並びに第1プリズム及び第2プリズムから成る正立プリズムを有し、かつ光軸が平行になるように配置される一対の光学系と、
ビーム分割面を有し、かつ前記第1プリズム及び第2プリズムの間に配置されるビームスプリッタと、
一方の光学系の前記ビームスプリッタを介して対象物にレーザーを放射する発光部と、
前記発光部から放射され、前記対象物から反射したレーザーが他方の光学系の前記ビームスプリッタを介して入射する受光部と、
前記発光部から放射されて前記対象物で反射したレーザーが前記受光部に入射することにより前記対象物までの距離を算出する演算手段と、
前記演算手段で算出された結果を表示する測定結果表示手段と、
前記一対の光学系、前記ビームスプリッタ、前記発光部、前記受光部、前記演算手段及び前記測定結果表示手段を内蔵する筐体とを備えることを特徴とする測距双眼鏡。
【請求項2】
前記ビーム分割面は、前記発光部から放射されるレーザー及び前記対象物で反射したレーザーを反射可能でかつ前記測定結果表示手段が表示する測定結果を前記対象物と共に結像可能に設置されて成る請求項1に記載の測距双眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−169363(P2009−169363A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10500(P2008−10500)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000156396)鎌倉光機株式会社 (14)
【Fターム(参考)】