説明

測量装置

【課題】対象物が複数個存在していても1箇所で対象物の座標位置を特定でき省力化を可能とした測量装置を提供する。
【解決手段】発光源2は対象空間に所定周期の変調信号で変調された光を照射し、光検出素子1は対象空間を撮像する。画像生成部4は、発光源2から対象空間に照射された光と対象空間内の対象物Obで反射され光検出素子1で受光される反射光との変調信号の位相差によって対象物Obまでの距離を求める。画像生成部4で生成された距離画像は、位置センサ51で検出した距離画像センサ10の基準座標系における位置および方向センサ52で検出した距離画像センサ10の基準座標系における方向とともに座標演算部54に与えられる。座標演算部54は基準座標系での対象物Obの座標位置を求め、地図作製部55は対象物Obの座標位置を電子地図に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定の基準座標系における対象物の座標位置を求める測量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、対象物の位置を緯度および経度で特定しようとすれば、対象物の存在する位置の緯度および経度を太陽や恒星の高度および方位に基づいて計測するか、緯度および経度が既知である地点と対象物との相対位置を測量によって計測しなければならない。これらの技術は、トランシットなどを用いて人手によって計測するものであるから、多くの労力および時間を要し、とくに地図作製などを目的として道路標識のような多数の対象物の位置を特定しようとすれば、膨大な手間を要することになる。さらに、地球上での位置を計測する技術として、時刻毎の位置が既知である人工衛星との相対位置を計測するGPSのような測位技術も知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−266552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、GPSのような測位技術を対象物の位置の計測に用いる場合でも、太陽や恒星の高度および緯度を用いる場合と同様に、各対象物ごとに対象物の存在する位置で測位することになるから、対象物の個数が多ければ依然として膨大な手間がかかるという問題が残る。
【0004】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、対象物との相対位置を計測可能な場所であれば対象物が複数個存在していても1箇所で対象物の座標位置を特定することを可能とし、結果的に省力化を可能とした測量装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、対象空間に光を照射するとともに対象空間に照射した光の反射光を含む光を受光し照射光と反射光との関係により対象物までの距離を測定する距離センサと、距離センサを移動させる空間を規定する基準座標系において距離センサで距離を測定する方向を検出する方向センサと、基準座標系において距離センサの座標位置を特定する位置センサと、位置センサと方向センサと距離センサとにより得られる座標位置と方向と距離とから基準座標系における対象物の座標位置を決定する座標演算部とを備えることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、対象物までの距離を測定する距離センサの基準座標系における座標位置および距離を測定する方向を位置センサおよび方向センサにより検出するから、絶対座標系における距離センサの座標位置に対する対象物の相対位置を特定することができ、座標演算部によって絶対座標系における対象物の座標位置を求めることが可能になる。すなわち、距離センサによって距離を測定することができる範囲内に複数個の対象物が存在する場合には、1箇所で複数個の対象物の座標位置を特定することが可能になり、複数個の対象物について個々に対象物の場所で座標位置を測定する場合に比較すると、座標位置を特定する際の手間を大幅に削減することができる。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記基準座標系は少なくとも緯度および経度を用いて表される座標系であり、基準座標系に対応する座標位置が決められている電子地図上において、座標演算部で決定された対象物の座標位置に対象物を記録する地図作製部が付加されたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、座標演算部で求めた対象物の座標位置を緯度および経度を用いて表される基準座標系を持つ電子地図上に記録することができるから、たとえば道路標識のように路上に存在する対象物の位置を電子地図に記録する作業の一部を自動化して電子地図を作製する手間を省くことができる。
【0009】
請求項3の発明では、請求項1の発明において、前記基準座標系は前記距離センサを搭載した自律走行型のロボットが移動する空間において設定され、ロボットが保有しかつ当該空間について基準座標系に対応する座標位置が決められている電子地図上において、座標演算部で決定された対象物の座標位置に対象物を記録する地図作製部が付加されたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、座標演算部で求めた対象物の座標位置を自律走行型のロボットが移動する空間に設定された基準座標系を持つ電子地図上に記録することができるから、たとえば工場内において部材の運搬に用いる自律走行型のロボットに搭載する電子地図に、工場内の設備の配置などを記録する作業の一部を自動化して電子地図を作製する手間を省くことができる。
【0011】
請求項4の発明では、請求項1ないし請求項3の発明において、前記距離センサは、強度が周期的に変化する強度変調光を対象空間に照射する発光源と、受光光量に応じた電気出力を発生する複数個の感光部が配列され対象空間を撮像する光検出素子と、発光源から対象空間に照射された光が対象空間内の対象物で反射され各感光部で受光されるまでの強度変調光の位相差を対象物までの距離に換算することにより画素値が距離値である距離画像を生成する画像生成部とを備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、距離センサが対象空間の距離画像を生成するから、対象空間内に複数個の対象物が存在すれば、距離画像を1画面生成するだけで複数個の対象物について基準座標系における座標位置を求めることが可能になり、大幅な省力化になる。また、距離画像を静止画像ではなく動画像として生成する場合には、たとえば、移動体に距離センサを搭載して距離画像の動画像を生成しておき、動画像から対象物が含まれる画面を抽出すれば対象物の座標位置を求めることが可能になる。
【0013】
請求項5の発明では、請求項1ないし請求項3の発明において、前記距離センサは、強度が周期的に変化する強度変調光を対象空間に照射する発光源と、受光光量に応じた電気出力を発生する複数個の感光部が配列され対象空間を撮像する光検出素子と、発光源から対象空間に照射された光が対象空間内の対象物で反射され各感光部で受光されるまでの強度変調光の位相差を対象物までの距離に換算することにより求めた距離値を画素値とする距離画像と各感光部の受光光量である濃淡値を画素値とする濃淡画像とを同じ感光部の受光光量からそれぞれ生成する画像生成部とを備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、距離センサが対象空間の距離画像を生成するから、対象空間内に複数個の対象物が存在すれば、距離画像を1画面生成するだけで複数個の対象物について基準座標系における座標位置を求めることが可能になり、大幅な省力化になる。また、距離画像を静止画像ではなく動画像として生成する場合には、たとえば、移動体に距離センサを搭載して距離画像の動画像を生成しておき、動画像から対象物が含まれる画面を抽出すれば対象物の座標位置を求めることが可能になる。しかも、距離画像の各画素ごとに濃淡画像の濃淡値が得られるから、基準座標系の座標位置を求めようとする対象物を濃淡画像によって確認することができる。
【0015】
請求項6の発明では、請求項5の発明において、前記画像生成部で生成された濃淡画像を画面上に表示するモニタ装置と、モニタ装置に表示される濃淡画像において対象物を指定する領域指定装置とを備え、前記地図作製部は、領域指定装置で指定された対象物の座標位置を電子地図上に記録することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、モニタ装置に表示された濃淡画像の画面上で所望の対象物を領域指定装置により指定すれば、対象物の座標位置を電子地図上に記録することができるから、必要な対象物のみを電子地図に記録することができ、電子地図を作製する作業の手間を大幅に省略することができる。
【0017】
なお、上述した電子地図は電子データによって表された地図を意味し、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することができ、またモニタ装置の画面上に表示したり、紙媒体に印刷したりすることが可能である。
【0018】
また、対象物には大きさがあるから、電子地図上における対象物の座標位置は、対象物ごとに規定した代表位置を用いる。たとえば、道路標識であれば道路標識の中心位置などを代表位置として用いることができる。代表位置としては、利用者が対象物を指定する場合には指定した位置を採用することができ、また対象物をテンプレートマッチングによって自動的に抽出する場合にはテンプレートに規定した代表位置を採用することができる。さらには、距離画像または濃淡画像の中で利用者が指定した位置を含む規定の領域内で距離値または濃淡値が規定の範囲内である画素の重心位置なども用いることが可能である。
【0019】
また、距離画像を用いる場合には撮像時において距離センサの位置と撮像方向とを距離画像に対応付けて記憶しておき、対象物を指定する際に基準座標系における座標位置を演算するようにすれば、無駄な演算を省略することができ、距離画像内のすべての画素について基準座標系における座標位置を求める場合に比較すると演算量を大幅に低減することになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構成によれば、対象物までの距離を測定する距離センサの基準座標系における座標位置および距離を測定する方向を位置センサおよび方向センサにより検出するから、絶対座標系における距離センサの座標位置に対する対象物の相対位置を特定することができ、座標演算部によって絶対座標系における対象物の座標位置を求めることが可能になるという利点がある。すなわち、距離センサによって距離を測定することができる範囲内に複数個の対象物が存在する場合には、1箇所で複数個の対象物の座標位置を特定することが可能になり、複数個の対象物について個々に対象物の場所で座標位置を測定する場合に比較すると、座標位置を特定する際の手間を大幅に削減することができるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態を説明するにあたり、まず本実施形態で用いる距離画像センサの構成について説明する。
【0022】
距離画像センサ10は、図1に示すように、対象空間に光を照射する発光源2を備えるとともに、対象空間からの光を受光し受光光量を反映した出力が得られる光検出素子1を備える。対象空間に存在する対象物Obまでの距離は、発光源2から対象空間に光が照射されてから対象物Obでの反射光が光検出素子1に入射するまでの時間(「飛行時間」と呼ぶ)によって求める。ただし、飛行時間は非常に短いから、対象空間に照射する光の強度が一定周期で周期的に変化するように変調した強度変調光を用い、強度変調光を受光したときの位相を用いて飛行時間を求める。なお、本発明の技術思想は、距離画像センサ10として、飛行時間により距離画像を生成する構成のほか、対象物に点状ないし線状のパターンを形成するように光を照射し光の照射位置と受光位置との位置関係によって対象物までの距離を求める三角測量法の原理により距離画像を生成するものや、複数台の撮像装置の視差を利用して対象物までの距離を求めるステレオ画像法により距離画像を生成するものなども採用可能である。ただし、以下に説明する構成の距離画像センサ10は、他の構成の距離画像センサに比較すると、短時間(ほぼ実時間)で距離画像を生成できるから、他の構成の距離画像センサよりも好ましい。
【0023】
図2(a)に示すように、発光源2から空間に放射する光の強度が曲線イのように変化し、光検出素子1で受光した受光光量が曲線ロのように変化するとすれば、位相差ψは飛行時間に相当するから、位相差ψを求めることにより対象物Obまでの距離を求めることができる。また、位相差ψは、曲線イの複数のタイミングで求めた曲線ロの受光光量を用いて計算することができる。たとえば、曲線イにおける位相が0度、90度、180度、270度の位相で求めた曲線ロの受光光量がそれぞれA0、A1、A2、A3であるとする(受光光量A0、A1、A2、A3を斜線部で示している)。ただし、各位相における受光光量A0、A1、A2、A3は、瞬時値ではなく所定の受光期間Twで積算した受光光量を用いる。いま、受光光量A0、A1、A2、A3を求める間に、位相差ψが変化せず(つまり、対象物Obまでの距離が変化せず)、かつ対象物Obの反射率にも変化がないものとする。また、発光源2から放射する光の強度を正弦波で変調し、時刻tにおいて光検出素子1で受光される光の強度がA・sin(ωt+δ)+Bで表されるものとする。ここに、Aは振幅、Bは直流成分(外光成分と反射光成分との平均値)、ωは角振動数、δは初期位相である。光検出素子1で受光する受光光量A0、A1、A2、A3を受光期間Twの積算値ではなく瞬時値し、変調の周期に同期した時刻t=n/f(n=0、1、2、…、fは変調の周波数)における受光光量を、A0=A・sin(δ)+Bとすれば、受光光量A0、A1、A2、A3は、次のように表すことができる。なお、反射光成分とは、発光源2から放射され対象物Obにより反射された後に光検出素子1に入射する光の成分を意味する。
A0=A・sin(δ)+B
A1=A・sin(π/2+δ)+B
A2=A・sin(π+δ)+B
A3=A・sin(3π/2+δ)+B
図2では位相差がψであるから、光検出素子1で受光する光の強度変化の波形における初期位相δ(時刻t=0の位相)は−ψになる。つまり、δ=−ψであるから、A0=−A・sin(ψ)+B、A1=A・cos(ψ)+B、A2=A・sin(ψ)+B、A3=−A・cos(ψ)+Bであり、結果的に、各受光光量A0、A1、A2、A3と位相差ψとの関係は、次式のようになる。
ψ=tan−1{(A2−A0)/(A1−A3)} …(1)
(1)式では受光光量A0、A1、A2、A3の瞬時値を用いているが、受光光量A0、A1、A2、A3として受光期間Twにおける積算値を用いても(1)式で位相差ψを求めることができる。
【0024】
また、光検出素子1で受光される光の強度をA・cos(ωt+δ)+Bとする場合、つまり変調の周期に同期した時刻t=n/f(n=0、1、2、…)における受光光量を、A0=A・cos(δ)+Bとすれば、位相差ψを次式で求めることができる。
ψ=tan−1{(A1−A3)/(A0−A2)}
この関係は、変調の周期に同期させるタイミングを90度ずらした関係である。また、距離値の符号は正であるから、位相差ψを求めたときに符号が負になる場合には、tan−1の括弧内の分母または分子の各項の順序を入れ換えるか括弧内の絶対値を用いるようにしてもよい。
【0025】
上述のように対象空間に照射する光の強度を変調するために、発光源2としては、たとえば多数個の発光ダイオードを一平面上に配列したものや半導体レーザと発散レンズとを組み合わせたものなどを用いる。また、発光源2は、制御回路部3から出力される所定の変調周波数である変調信号によって駆動され、発光源2から放射される光は変調信号により強度が変調される。制御回路部3では、たとえば20MHzの正弦波で発光源2から放射する光の強度を変調する。なお、発光源2から放射する光の強度は正弦波で変調する以外に、三角波、鋸歯状波などで変調してもよく、要するに、一定周期で強度を変調するのであれば、どのような構成を採用してもよい。
【0026】
光検出素子1は、規則的に配列された複数個の感光部11を備える。また、感光部11への光の入射経路には受光光学系5が配置される。感光部11は光検出素子1において対象空間からの光が受光光学系5を通して入射する部位であって、感光部11において受光光量に応じた量の電荷を生成する。つまり、感光部11は受光光量に応じた電気出力を発生する。また、感光部11は、平面格子の格子点上に配置され、たとえば垂直方向(つまり、縦方向)と水平方向(つまり、横方向)とにそれぞれ等間隔で複数個ずつ並べたマトリクス状に配列される。
【0027】
受光光学系5は、光検出素子1から対象空間を見るときの視線方向と各感光部11とを対応付ける。すなわち、受光光学系5を通して各感光部11に光が入射する範囲を、受光光学系5の中心を頂点とし各感光部11ごとに設定された頂角の小さい円錐状の視野とみなすことができる。したがって、発光源2から放射され対象空間に存在する対象物Obで反射された反射光が感光部11に入射すれば、反射光を受光した感光部11の位置により、受光光学系5の光軸を基準方向として対象物Obの存在する方向を知ることができる。
【0028】
受光光学系5は一般に感光部11を配列した平面に光軸を直交させるように配置されるから、受光光学系5の中心を原点とし、感光部11を配列した平面の垂直方向と水平方向と受光光学系5の光軸とを3軸の方向とする直交座標系を設定すれば、対象空間に存在する対象物Obの位置を球座標で表したときの角度(いわゆる方位角と仰角)が各感光部11に対応する。なお、受光光学系5は、感光部11を配列した平面に対して光軸が90度以外の角度で交差するように配置することも可能である。
【0029】
本実施形態では、上述のように、対象物Obまでの距離を求めるために、発光源2から対象空間に照射される光の強度変化に同期する4点のタイミングで受光光量A0、A1、A2、A3を求めている。したがって、目的の受光光量A0、A1、A2、A3を得るためのタイミングの制御が必要である。また、発光源2から対象空間に照射される光の強度変化の1周期において感光部11で発生する電荷の量は少ないから、複数周期に亘って電荷を集積することが望ましい。そこで、図1のように各感光部11で発生した電荷をそれぞれ集積する複数個の電荷集積部13を設けるとともに、各感光部11の感度をそれぞれ調節する複数個の感度制御部12を設けている。
【0030】
各感度制御部12では、感度制御部12に対応する感光部11の感度を上述した4点のうちのいずれかのタイミングで高め、感度が高められた感光部11では当該タイミングの受光光量A0、A1、A2、A3に対応する電荷を主として生成するから、当該受光光量A0、A1、A2、A3に対応する電荷を当該感光部11に対応する電荷集積部13に集積させることができる。
【0031】
以下では、感度制御部12の具体的な構成として、感光部11で生成された電荷のうち電荷集積部13に与える電荷の割合を調節する技術と、実質的に感光部11として機能する部位の面積を変化させる技術とを示す。電荷集積部13に与える電荷の割合を調節する技術には、感光部11から電荷集積部13への通過率を調節する技術と、感光部11から電荷を廃棄する廃棄率を調節する技術と、通過率と廃棄率との両方を調節する技術とがある。
【0032】
感度制御部12において通過率と廃棄率とを調節する技術では、図3に示すように、感光部11と電荷集積部13との間にゲート電極12aを設け、ゲート電極12aに印加する通過電圧を変化させることにより、感光部11から電荷集積部13への電荷の移動(つまり、通過率)を制御する。また、電荷廃棄部12cを設け、電荷廃棄部12cに付設した廃棄電極12bに印加する廃棄電圧を変化させることにより、感光部11から電荷廃棄部12cへの電荷の移動(つまり、廃棄率)を制御する。電荷集積部13は感光部11ごとに一対一に対応するように設けられ、電荷廃棄部12cは複数個の感光部11に共通させて一対多に対応するように設けられる。図示例では、光検出素子1のすべての感光部11で1組の廃棄電極12bおよび電荷廃棄部12cを共用している。
【0033】
感度を制御するために、感光部11からの電荷の廃棄を行わずに感光部11から電荷集積部13への通過率の制御のみを行うことが考えられるが、電荷の廃棄を行わなければ感光部11において電荷が暫時残留するから、感光部11で生成された電荷のうち不要な残留電荷が、利用する電荷(以下、信号電荷という)に雑音成分として混入する。したがって、信号電荷への残留電荷の混入を防止するために、ゲート電極12aに印加する通過電圧だけでなく廃棄電極12bに印加する廃棄電圧を制御する。
【0034】
ゲート電極12aと廃棄電極12bとを用いて感度を制御するには、ゲート電極12aに印加する通過電圧を一定電圧に保つことにより感光部11で生成された電荷を電荷集積部13に通過可能としておき、感光部11で生成された電荷のうち信号電荷に用いる電荷が生成される期間以外には感光部11から電荷廃棄部12cに電荷が移動するように廃棄電極12bに廃棄電圧を印加する。要するに、感光部11において信号電荷として用いる電荷が生成される期間にのみ電荷廃棄部12cへの電荷の廃棄を行わず、他の期間には電荷廃棄部12cに電荷を廃棄することにより、信号電荷として用いようとする期間に生成された電荷のみを電荷集積部13に集積する。
【0035】
いま、図4(a)のような変調信号により発光源2から空間に照射される光の強度が変調されているとする。電荷集積部13には変調信号の複数周期(数万〜数十万周期)において変調信号に同期する特定の区間の受光光量A0,A1,A2,A3に相当する電荷を集積し、各区間の電荷の集積毎に集積した信号電荷を取り出して次の区間の電荷を集積する。たとえば、受光光量A0に相当する電荷を変調信号の数万周期について集積すると、この受光光量A0に相当する信号電荷を一旦外部に取り出し、その後、受光光量A1に相当する電荷を変調信号の数万周期について集積する。
【0036】
図4は受光光量A0に相当する電荷を集積している状態を示しており、図4(b)に示すようにゲート電極12aに印加する通過電圧を一定電圧に保っている。また、受光光量A0に相当する電荷としては、変調信号の位相が0〜90度の区間において感光部11で生成された電荷を採用している。つまり、廃棄電極12bには、図4(c)のように変調信号の位相が90〜360度の区間において、感光部11で生成される電荷を不要電荷とするように廃棄電圧を印加する。この制御により、図4(d)のように所望の区間の受光光量A0に対応した信号電荷を電荷集積部13に集積することが可能になる。図4に示す処理は変調信号の数万〜数十万周期について行われ、この期間に電荷集積部13に得られた信号電荷は受光光量A0に対応する受光出力として電荷取出部14により取り出される。
【0037】
電荷取出部14から取り出された電荷は画像生成部4に画像信号として与えられ、画像生成部4において、対象空間内の対象物Obまでの距離が、上述した(1)式を用いて受光光量A0、A1、A2、A3に対応する受光出力から算出される。すなわち、画像生成部4では各感光部11に対応した各方向における対象物Obまでの距離が算出され、対象空間の三次元情報が算出される。この三次元情報を用いると、対象空間の各方向に一致する画素の画素値が距離値である距離画像を生成することができる。
【0038】
なお、上述の制御では、廃棄電極12bに廃棄電圧を印加している期間においてゲート電極12aにも一定電圧である通過電圧を印加しているが、廃棄電圧と通過電圧との大小関係を適宜に設定すれば、不要電荷を廃棄している期間には信号電荷がほとんど集積されないようにすることができる。また、変調信号の数万〜数十万周期について電荷を集積しているのは、集積する電荷量を多くすることによって高感度化するためであり、変調信号をたとえば20MHzと設定すれば、30フレーム/秒で信号電荷を取り出すとしても、数十万周期以上の集積が可能になる。
【0039】
上述したように、廃棄電極12bを備えた電荷廃棄部12cを設け、感光部11に生じた電荷のうち信号電荷として利用しない不要電荷を電荷廃棄部12cに積極的に廃棄しているから、感光部11において電荷集積部13に信号電荷を与えていない期間に感光部11で生成される電荷はほとんどが不要電荷として廃棄されることになり、信号電荷への雑音成分の混入が大幅に抑制される。
【0040】
上述の例では、ゲート電極12aに一定電圧である通過電圧を印加している期間に廃棄電極12bに廃棄電圧を印加する期間と印加しない期間とを設けることによって、廃棄電圧が印加されていない期間において感光部11に生成された電荷を信号電荷として用いているが、図5に示すように、ゲート電極12aに通過電圧を印加する期間と廃棄電極12bに廃棄電圧を印加する期間とが重複しないように制御してもよい。
【0041】
図5は受光光量A0に対応する信号電荷を集積する場合の動作を示している。図5(a)は発光源2から空間に照射される光の強度を変調する変調信号を示しており、ゲート電極12aには、図5(b)のように、受光光量A0に対応するタイミングで通過電圧を印加する。ゲート電極12aに通過電圧を印加する期間は、変調信号の位相における0度から一定期間(図示例では0〜90度)に設定され、この期間において感光部11から電荷集積部13への電荷の移動が可能になる。一方、廃棄電極12bには、図5(c)のように、電荷集積部13に受光光量A0に相当する信号電荷を集積する期間以外において廃棄電圧を印加し、信号電荷を集積する期間以外では感光部11で生成した電荷を不要電荷として電荷廃棄部12cに廃棄する。このような制御によって、図5(d)のように受光光量A0に相当する信号電荷を取り出すことが可能になる。
【0042】
図5に示す制御では、ゲート電極12aに通過電圧を印加している期間と廃棄電極12bに廃棄電圧を印加している期間とが異なるから、図4に示した制御例のように通過電圧と廃棄電圧との大小関係を考慮しなくとも通過電圧と廃棄電圧との大きさを独立して制御することができ、結果的に通過電圧および廃棄電圧の制御が容易になり、感光部11で受光した光量に対して信号電荷を取り込む割合である感度の制御が容易になるとともに、感光部11で生成された電荷のうち不要電荷として廃棄する割合の制御が容易になる。また、図5に示す制御例では、電荷集積部13に信号電荷を集積する期間はゲート電極12aに印加する通過電圧により規定されるから、廃棄電極12bに廃棄電圧を印加する期間を短縮することが可能であり、たとえば、ゲート電極12aに通過電圧を印加する直前の所定期間にのみ廃棄電極12bに廃棄電圧を印加することも可能である。
【0043】
図5に示す制御を行えば、感光部11で生成した電荷を電荷集積部13に信号電荷として集積していない期間において感光部11で生成される電荷をほとんど不要電荷として廃棄するから、信号電荷への雑音成分の混入が大幅に抑制されることになる。
【0044】
通過電圧と廃棄電圧との制御例としては、図6に示すように、廃棄電極12bに印加する廃棄電圧を一定電圧に保って感光部11で生成された電荷の一部をつねに廃棄するようにしてもよい。図6の制御例では、ゲート電極12aに通過電圧を印加する期間と印加しない期間とを設け、通過電圧を印加する期間を電荷集積部13に信号電荷を集積する期間としている。
【0045】
図6は受光光量A0に相当する信号電荷を集積する場合の動作を示している。図6(a)は発光源2から空間に照射される光の強度を変調する変調信号を示しており、電荷集積部13に設けたゲート電極12aには、図6(b)のように、受光光量A0に対応する期間に通過電圧が印加され、感光部11において生成された電荷を受光光量A0に相当する信号電荷として電荷集積部13に集積する。つまり、ゲート電極12aに通過電圧を印加する期間は、変調信号の位相における0度から一定期間(図示例では0〜90度)に設定され、この期間において感光部11から電荷集積部13への電荷の移動が可能になる。一方、廃棄電極12bには、図6(c)のように、直流電圧である一定電圧の廃棄電圧がつねに印加され、感光部11で生成された電荷の一部をつねに不要電荷として電荷廃棄部12cに廃棄する。上述の制御では、信号電荷を電荷集積部13に集積する期間にのみゲート電極12aに通過電圧を印加しているから、図6(d)のように受光光量A0に相当する信号電荷を取り出すことが可能になる。
【0046】
図6に示す制御では、ゲート電極12aに通過電圧を印加しているか否かにかかわらず廃棄電極12bに一定電圧の廃棄電圧を印加しているから、感光部11において生成された電荷のうち電荷集積部13に信号電荷として集積されなかった不要電荷は、廃棄電荷として電荷廃棄部12cに廃棄される。ここで、感光部11で生成された電荷の一部を信号電荷として電荷集積部13に集積する期間においても感光部11から電荷廃棄部12cへの電荷の廃棄が継続しているから、信号電荷を電荷集積部13に適正に集積するために、通過電圧と廃棄電圧との大小関係を考慮する必要がある。ただし、廃棄電圧は一定電圧であって廃棄電極12bにつねに印加しているだけであるから、実際には通過電圧のみを制御すればよく、制御自体は容易である。
【0047】
図3に示した感度制御部12を備える光検出素子1は、オーバーフロードレインを備えたCCDイメージセンサにより実現することができる。CCDイメージセンサにおける電荷の転送方式はどのようなものでもよく、インターライントランスファ(IT)方式、フレームトランスファ(FT)方式、フレームインターライントランスファ(FIT)方式のいずれであってもよい。
【0048】
図7に縦型オーバーフロードレインを備えるインターライントランスファ方式のCCDイメージセンサの構成を示す。図示例は、感光部11となるフォトダイオード41を水平方向と垂直方向とに複数個ずつ(図では3×4個)配列した2次元イメージセンサであって、垂直方向に配列したフォトダイオード41の各列の右側方にCCDからなる垂直転送レジスタ42を備え、フォトダイオード41および垂直転送レジスタ42が配列された領域の下方にCCDからなる水平転送レジスタ43を備える。垂直転送レジスタ42は各フォトダイオード41ごとに2個ずつの転送電極42a,42bを備え、水平転送レジスタ43は各垂直転送レジスタ42ごとに2個ずつの転送電極43a,43bを備える。
【0049】
フォトダイオード41と垂直転送レジスタ42と水平転送レジスタ43とは1枚の半導体基板40上に形成され、半導体基板40の主表面には、フォトダイオード41と垂直転送レジスタ42と水平転送レジスタ43との全体を囲む形でアルミニウム電極であるオーバーフロー電極44が、半導体基板40の全周に亘って絶縁膜を介さずに半導体基板40に直接接触するように設けられる。オーバーフロー電極44に半導体基板40に対して正極性になる適宜の廃棄電圧を印加すればフォトダイオード41で生成された電子(電荷)はオーバーフロー電極44を通して廃棄される。オーバーフロー電極44は、感光部11であるフォトダイオード41において生成した電荷のうち不要電荷を廃棄する際に廃棄電圧が印加されるから廃棄電極12bとして機能し、オーバーフロー電極44に廃棄電圧を印加する電源が感光部11で生成された電子(電荷)を廃棄する電荷廃棄部12cとして機能する。半導体基板40の表面はフォトダイオード41に対応する部位を除いて遮光膜46(図8参照)により覆われる。
【0050】
図7に示したCCDイメージセンサについて、1個のフォトダイオード41に関連する部分を切り出して図8に示す。半導体基板40にはn形半導体を用い、半導体基板40の主表面にはフォトダイオード41と垂直転送レジスタ42とに跨る領域にp形半導体からなるウェル領域31を形成している。ウェル領域31は、フォトダイオード41に対応する領域に比較して垂直転送レジスタ42に対応する領域の厚み寸法が大きくなるように形成してある。ウェル領域31のうちフォトダイオード41に対応する領域にはn形半導体層32を重ねて設けてあり、ウェル領域31とn形半導体層32とのpn接合によってフォトダイオード41が形成される。フォトダイオード41の表面にはp形半導体からなる表面層33を積層してある。表面層33はフォトダイオード41で生成された電荷を垂直転送レジスタ42に移動させる際に、n形半導体層32の表面付近が電荷の通過経路にならないように制御する目的で設けてある。このような構造は、埋込フォトダイオードとして知られている。
【0051】
ウェル領域31のうち垂直転送レジスタ42に対応する領域にはn形半導体からなる蓄積転送層34を重ねて設けてある。蓄積転送層34の表面と表面層33の表面とは略同一平面であって、蓄積転送層34の厚み寸法は表面層33の厚み寸法よりも大きくしてある。蓄積転送層34は、表面層33とは接触しているが、n形半導体層32との間には、表面層33と不純物濃度が等しいp形半導体からなる分離層35が介在する。蓄積転送層34の表面には、絶縁膜45を介して転送電極42a,42bが配置される。転送電極42a,42bは1個のフォトダイオード41に対して2個ずつ設けられ、垂直方向において2個の転送電極42a,42bのうちの一方は他方よりも広幅に形成される。具体的には、図9のように、1個のフォトダイオード41に対応する2個の転送電極42a,42bのうち狭幅の転送電極42bは平板状に形成されており、広幅の転送電極42aは、幅狭の転送電極42bと同一平面上に配列され一対の転送電極42bの間に配置される平板状の部分と、平板状の部分の垂直方向(図9の左右方向)における両端部からそれぞれ延長され転送電極42bの上に重複する湾曲した部分とを備える。ここに、絶縁膜45はSiOにより形成され、また転送電極42a,42bはポリシリコンにより形成され、各転送電極42a,42bは絶縁膜45を介して互いに絶縁されている。さらに、フォトダイオード41に光を入射させる部位を除いて光検出素子1の表面は遮光膜46により覆われる。ウェル領域31において垂直転送レジスタ42に対応する領域および蓄積転送層34は垂直転送レジスタ42の全長に亘って形成され、したがって、蓄積転送層34には広幅の転送電極42aと狭幅の転送電極42bとが交互に配列される。
【0052】
上述した光検出素子1では、フォトダイオード41が感光部11に相当し、転送電極42aがゲート電極12aに相当し、オーバーフロー電極44が廃棄電極12bに相当し、垂直転送レジスタ42が電荷集積部13および電荷取出部14の一部として機能する。また、水平転送レジスタ43も電荷取出部14の一部になる。すなわち、フォトダイオード41に光が入射すれば電荷が生成され、フォトダイオード41で生成された電荷のうち垂直転送レジスタ42に信号電荷として引き渡される電荷の割合は転送電極42aに印加する通過電圧とオーバーフロー電極44に印加する廃棄電圧との関係によって決めることができる。転送電極42aに通過電圧を印加すると蓄積転送層34にポテンシャル井戸が形成され、通過電圧の制御によりポテンシャル井戸の深さを制御することができる。したがって、ポテンシャル井戸の深さおよび通過電圧を印加する時間とを制御すれば、フォトダイオード41から垂直転送レジスタ42に引き渡される電荷の割合を調節することができる。また、オーバーフロー電極44に印加する廃棄電圧を制御すれば、フォトダイオード41と半導体基板40との間の電位勾配を制御することができるから、電位勾配と廃棄電圧を印加する時間とを制御すれば、垂直転送レジスタ42に引き渡される電荷の割合を調節することができる。通過電圧と廃棄電圧とは図4ないし図6に示した制御例のように制御すればよい。
【0053】
フォトダイオード41から垂直転送レジスタ42に引き渡された信号電荷は、上述した4区間の受光光量A0,A1,A2,A3のうちの各1区間の受光光量A0,A1,A2,A3に相当する信号電荷が集積されるたびに読み出される。たとえば、受光光量A0に相当する信号電荷が各フォトダイオード41に対応して形成されるポテンシャル井戸に集積されると信号電荷を読み出し、次に受光光量A1に相当する信号電荷がポテンシャル井戸に集積されると再び信号電荷を読み出すという動作を繰り返す。なお、各受光光量A0,A1,A2,A3に相当する信号電荷を集積する期間は等しく設定しておく。
【0054】
ところで、上述した制御例のうち、図4に示す制御例では、感光部11(フォトダイオード41)で生成された電荷(電子)を電荷集積部13(垂直転送レジスタ42)に対してつねに引き渡しているから、電荷集積部13に集積された電荷は必ずしも目的の受光光量A0、A1、A2、A3が得られる期間に生成された電荷だけではなく、目的外の期間に生成された電荷も混入することになる。いま、感度制御部12において、受光光量A0、A1、A2、A3に対応した電荷を生成する期間(つまり、受光期間Tw)の感度をα、それ以外の期間(以下では、「保持期間」と呼ぶ)の感度をβとし、感光部11は受光光量に比例する電荷を生成するものとする。この条件では、受光光量A0に対応した電荷を集積する電荷集積部13には、αA0+β(A1+A2+A3)+βAx(Axは受光光量A0、A1、A2、A3が得られる期間以外の受光光量)に比例する電荷が集積され、受光光量A2に対応した電荷を集積する電荷集積部13には、αA2+β(A0+A1+A3)+βAxに比例する電荷が集積される。上述したように、位相差ψを求める際には(A2−A0)を求めており、(A2−A0)に相当する値を電荷集積部13に集積した電荷から求めると(α−β)(A2−A0)になり、同様にして(A1−A3)に相当する値は(α−β)(A1−A3)になるから、(A2−A0)/(A1−A3)は電荷の混入の有無によらず理論上は同じ値になるのであって、電荷が混入しても求める位相差ψは同じ値になる。
【0055】
上述した構成例では、CCDイメージセンサを光検出素子1に用い、電荷集積部13に通過させる電荷の量と、電荷廃棄部12cに廃棄する電荷の量との少なくとも一方を制御することにより感度制御部12を構成する例を示したが、以下に示す感度制御部12は、感光部11において利用できる電荷を生成する領域の面積(実質的な受光面積)を変化させるものである。
【0056】
以下に光検出素子1の具体的構造例を説明する。図10に示す光検出素子1は、複数個(たとえば、100×100個)の感光部11をマトリクス状に配列したものであって、たとえば1枚の半導体基板上に形成される。1個の感光部11は不純物を添加した半導体層21に酸化膜からなる絶縁膜22を介して複数個(図では5個)の制御電極23を配列した構成を有する。図示例では制御電極23が並ぶ方向(左右方向)が垂直方向であり、感光部11で生成した電荷(本実施形態では、電子を用いる)を取り出す際には、垂直転送レジスタにより電荷を垂直方向に転送した後、水平転送レジスタを用いて水平方向に転送される。つまり、垂直転送レジスタと水平転送レジスタとにより電荷取出部14が構成される。垂直転送レジスタおよび水平転送レジスタの構成には、CCDイメージセンサにおけるインターライントランスファ(IT)方式、フレームトランスファ(FT)方式、フレームインターライントランスファ(FIT)方式と同様の構成を採用することができる。
【0057】
すなわち、垂直方向に並ぶ各感光部11が一体に連続する半導体層21を共用するとともに半導体層21を垂直転送レジスタに用いれば、半導体層21が感光部11と電荷の転送経路とに兼用された構造になり、FT方式のCCDイメージセンサと同様にして電荷を垂直方向に転送することができ、また、感光部11から転送ゲートを介して垂直転送レジスタに電荷を転送すれば、IT方式またはFIT方式のCCDイメージセンサと同様にして電荷を転送することができる。
【0058】
上述のように、半導体層21は不純物が添加してあり、半導体層21の主表面は酸化膜からなる絶縁膜22により覆われ、半導体層21に絶縁膜22を介して複数個の制御電極23を配置している。この光検出素子1はMIS素子として知られた構造であるが、1個の光検出素子1として機能する領域に複数個(図示例では5個)の制御電極23を備える点が通常のMIS素子とは異なる。絶縁膜22および制御電極23は発光源2から対象空間に照射される光と同波長の光が透過するように材料が選択され、絶縁膜22を通して半導体層21に光が入射すると、半導体層21の内部に電荷が生成される。図示例の半導体層21の導電形はn形であり、光の照射により生成される電荷として電子eを利用する。図10は1個の感光部11に対応する領域のみを示したものであり、半導体基板(図示せず)には上述したように図10の構造を持つ領域が複数個配列されるとともに電荷取出部14となる構造が設けられる。電荷取出部14として設ける垂直転送レジスタは、図10の左右方向に電荷を転送することを想定しているが、図10の面に直交する方向に電荷を転送する構成を採用することも可能である。また、電荷を図の左右方向に転送する場合には、制御電極23の左右方向の幅寸法を1μm程度に設定するのが望ましい。
【0059】
この構造の光検出素子1では、制御電極23に正の制御電圧+Vを印加すると、半導体層21には制御電極23に対応する部位に電子eを集積するポテンシャル井戸(空乏層)24が形成される。つまり、半導体層21にポテンシャル井戸24を形成するように制御電極23に制御電圧を印加した状態で光が半導体層21に照射されると、ポテンシャル井戸24の近傍で生成された電子eの一部はポテンシャル井戸24に捕獲されてポテンシャル井戸24に集積され、残りの電子eは半導体層21の深部での再結合により消滅する。また、ポテンシャル井戸24から離れた場所で生成された電子eも半導体層21の深部での再結合により消滅する。
【0060】
ポテンシャル井戸24は制御電圧を印加した制御電極23に対応する部位に形成されるから、制御電圧を印加する制御電極23の個数を変化させることによって、半導体層21の主表面に沿ったポテンシャル井戸24の面積(言い換えると、受光面において利用できる電荷を生成する領域の面積)を変化させることができる。つまり、制御電圧を印加する制御電極23の個数を変化させることは感度制御部12における感度の調節を意味する。たとえば、図10(a)のように3個の制御電極23に制御電圧+Vを印加する場合と、図10(b)のように1個の制御電極23に制御電圧+Vを印加する場合とでは、ポテンシャル井戸24が受光面に占める面積が変化するのであって、図10(a)の状態のほうがポテンシャル井戸24の面積が大きいから、図10(b)の状態に比較して同光量に対して利用できる電荷の割合が多くなり、実質的に感光部11の感度を高めたことになる。このように、感光部11および感度制御部12は半導体層21と絶縁膜22と制御電極23とにより構成されていると言える。ポテンシャル井戸24は光照射により生成された電荷を保持するから電荷集積部13として機能する。
【0061】
上述したように、ポテンシャル井戸24から電荷を取り出すには、CCDイメージセンサと同様の技術を採用する。たとえば感光部11を垂直転送レジスタとして用いる場合は、ポテンシャル井戸24に電子eが集積された後に、電荷の集積時とは異なる印加パターンの制御電圧を制御電極23に印加することによってポテンシャル井戸24に集積された電子eを一方向(たとえば、図の右方向)に転送することができる。あるいはまた、感光部11とは別に設けた垂直転送レジスタに転送ゲートを介して感光部11から電荷を転送する構成を採用することもできる。垂直転送レジスタからは水平転送レジスタに電荷を引き渡し、水平転送レジスタを転送された電荷は、半導体基板に設けた図示しない電極から光検出素子1の外部に取り出される。
【0062】
図10に示す構成における感度制御部12は、利用できる電荷を生成する面積を大小2段階に切り換えることにより感光部11の感度を高低2段階に切り換えるのであって、受光光量A0、A1、A2、A3のいずれかに対応する電荷を感光部11で生成しようとする受光期間にのみ高感度とし(電荷を生成する面積を大きくし)、他の期間である保持期間には低感度にする。高感度にする受光期間と低感度にする保持期間とは、発光源2を駆動する変調信号に同期させて設定される。具体的には、変調信号に同期する特定の区間(特定位相の区間)において、電荷を生成する面積を大きくして感光部11で生成した電荷を集積し、上記特定区間以外の他の区間において、電荷を生成する面積を小さくして感光部11で生成した電荷を蓄積する。すなわち、感光部11において、電荷を集積する機能と蓄積する機能とが交互に実現される。ここで、集積とは電荷を集めることを意味し、蓄積とは電荷を保持することを意味する。言い換えると、図10に示す構成では、感光部11に設けた電荷集積部13の大きさ(面積)を変化させることにより、電荷を集積する期間には感光部11で生成された電荷の集積率を大きくし、電荷を蓄積する期間には感光部11で生成された電荷の集積率を小さくするのである。
【0063】
また、変調信号の複数周期に亘ってポテンシャル井戸24に電荷を集積した後に電荷取出部14を通して光検出素子1の外部に電荷を取り出すようにしている。変調信号の複数周期に亘って電荷を集積しているのは、変調信号の1周期内では感光部11が利用可能な電荷を生成する期間が短く(たとえば、変調信号の周波数を20MHzとすれば50nsの4分の1以下)、生成される電荷が少ないからである。つまり、変調信号の複数周期分の電荷を集積することにより、信号電荷(発光源2から照射された光に対応する電荷)と不要電荷(主に外光成分および光検出素子1の内部で発生するショットノイズに対応する電荷)との比を大きくとることができ、大きなSN比が得られる。
【0064】
ところで、位相差ψを求めるのに必要な4区間の受光光量A0、A1、A2、A3に対応する電荷を1個の感光部11で生成するとすれば、視線方向に関する分解能は高くなるが、各受光光量A0、A1、A2、A3に対応する電荷を求める時間差が大きくなるという問題が生じる。一方、各受光光量A0、A1、A2、A3に対応する電荷を4個の感光部11でそれぞれ生成するとすれば、各受光光量A0、A1、A2、A3に対応する電荷を求める時間差は小さくなるが、4区間の電荷を求める視線方向にずれが生じ視線方向に関する分解能は低下する。そこで、2個の感光部11を用いることにより、変調信号の1周期内で受光光量A0、A1、A2、A3に対応する電荷を2種類ずつ生成する構成を採用してもよい。つまり、2個の感光部11を組にして用い、組になる2個の感光部11に同じ視線方向からの光が入射するようにしてもよい。
【0065】
この構成を採用することにより、視線方向の分解能を比較的高くし、かつ受光光量A0、A1、A2、A3に対応する電荷を生成する時間差を少なくすることができる。つまり、受光光量A0、A1、A2、A3に対応する電荷を生成する時間差を少なくしていることにより、対象空間の中で移動している対象物Obについても距離の検出精度を比較的高く保つことができる。なお、この構成では、1個の感光部11で4区間の受光光量A0、A1、A2、A3に対応する電荷を生成する場合よりも視線方向の分解能が低下するが、視線方向の分解能については感光部11の小型化や受光光学系16の設計によって向上させることが可能である。
【0066】
図10に示した例では、1個の感光部11について5個の制御電極23を設けた例を示しているが、両側の2個の制御電極23は、感光部11で電荷(電子e)を生成している間に隣接する感光部11に電荷が流出するのを防止するための障壁を形成するものであって、2個の感光部11を組にして用いる場合には隣接する感光部11のポテンシャル井戸24の間には、いずれかの感光部11で障壁が形成されるから、各感光部11には3個ずつの制御電極23を設けるだけで足りることになる。この構成によって、感光部11の1個当たりの占有面積が小さくなり、2個の感光部11を組にして用いながらも視線方向の分解能の低下を抑制することが可能になる。
【0067】
なお、上述した距離画像センサ10の構成例では、受光光量A0、A1、A2、A3に対応する4区間を変調信号の1周期内で位相の間隔が90度ずつになるように設定しているが、変調信号に対する位相が既知であれば4区間は90度以外の適宜の間隔で設定することが可能である。ただし、間隔が異なれば位相差ψを求める算式は異なる。また、4区間の受光光量A0、A1、A2、A3に対応した信号電荷を取り出す周期は、対象物Obの反射率および外光成分が変化せず、かつ位相差ψも変化しない時間内であれば、変調信号の1周期内で4区間の信号電荷を取り出すことも必須ではない。さらに、太陽光や照明光のような外乱光の影響があるときには、発光源2から放射される光の波長のみを透過させる光学フィルタを感光部11の前に配置するのが望ましい。
【0068】
ところで、図11(a)に示すように、基準座標系XYZにおける距離画像センサ10の位置が(x1,y1,z1)と表され、距離画像センサ10に設定したセンサ座標系xyzでの対象物Obの座標位置が(x2,y2,z2)と表され、さらに基準座標系XYZの各座標軸の回りでのセンサ座標系xyzの回転位置が(α,β,γ)で表されるとすれば、これらを用いて絶対座標系XYZにおける対象物Obの座標位置を表すことが可能になる。いま、センサ座標系xyzのxy平面が基準座標系XYZのXY平面と平行であるとすれば(つまり、距離画像センサ10を水平に配置しているとすれば)、基準座標系XYZのZ軸とセンサ座標系xyzのz軸とが平行になるから、基準座標系XYZに対するセンサ座標系xyzの回転はZ軸回りの回転γのみを考慮すればよく、図11(b)から明らかなように、基準座標系XYZにおける対象物Obの座標位置は(x1+x2・cosγ+y2・sinγ,y1+y2・cosγ−x2・sinγ,z1+z2)になる。基準座標系XYZに対するセンサ座標系xyzの回転についてX軸回りおよびY軸回りの回転α,βも考慮する必要があるときには、座標変換の一般式を用いて対象物Obの座標位置を求めればよい。
【0069】
上述したように、センサ座標系xyzにより求めた対象物Obの座標位置(x2,y2,z2)を基準座標系XYZの座標位置に変換するには、基準座標系XYZにおける距離画像センサ10の座標位置(x1,y1,z1)と、基準座標系XYZの各座標軸の回りでの距離画像センサ10の回転位置(α,β,γ)とが必要である。そこで、図1に示すように、本実施形態では、距離画像センサ10の座標位置(x1,y1,z1)を求めるために、基準座標系における距離画像センサ10の座標位置を特定する位置センサ51を設け、基準座標系XYZの各座標軸の回りでの距離画像センサ10の回転位置(α,β,γ)を求めるために、基準座標系において距離画像センサ10で撮像している領域の方向を検出する方向センサ52を設けている。
【0070】
基準座標系は、対象物Obの地球上での位置の特定を必要とするときには、緯度および経度を用いて表される座標系であり、望ましくは緯度、経度、高度によって表される座標系になる。また、工場内や特定の地域内のような限られた空間での対象物Obの位置の特定を必要とするときには、対象物Obが移動する空間において設定された座標系を用いることができる。
【0071】
前者の場合には、基準座標系における距離画像センサ10の位置を特定する位置センサ51として、GPSのように時刻毎の位置が既知である人工衛星を用いて距離画像センサ10の位置を求める衛星測位システムを採用する。現状技術では位置センサ51にDGPSの技術を採用することによって、基準座標系における距離画像センサ10の位置を1〜数m程度の精度で求めることができる。
【0072】
また、後者の場合には、距離画像センサ30を搭載した移動体が移動する空間において基準座標系における座標位置が既知である適宜の複数位置にそれぞれ基地局を配置し、各基地局との間で電波を授受することにより各基地局との距離を求めて基準座標系における距離画像センサ10の位置を特定する技術を採用する。基地局を用いた位置センサ51は、電波航法の技術を用いて基地局との距離と基地局の方向とを検知できる構成のものであればどのようなものでもよい。
【0073】
一方、方向センサ52としては、加速度センサおよびジャイロセンサを備えたものを用いる。すなわち、距離画像センサ10による撮像される視野の方向が変化したときに、加速度センサではセンサ座標系の座標軸に沿う方向の成分を検出し、ジャイロセンサではセンサ座標系の座標軸の回りの回転の成分を検出する。したがって、方向センサ52によって基準座標系に対するセンサ座標系の方向の変化を検出することができ、検出結果に基づいて上述した回転位置(α,β,γ)を算出することができる。
【0074】
距離画像センサ10で測定した対象物Obまでの距離と、位置センサ51により特定した基準座標系での距離画像センサ10の座標位置と、方向センサ52により検出したセンサ座標系の方向(受光光学系5の基準座標系における光軸の方向)とは、データ記憶部53に格納される。距離画像センサ10で得られる距離画像は各画素値が距離値であり、各画素の位置はセンサ座標系における座標位置に対応している。また、位置センサ51および方向センサ52で検出される座標位置および方向は距離画像の1画面内では変化しないとみなしており、データ記憶部53には、距離画像の各画面ごとの基準座標系での距離画像センサ10の位置および方向が距離画像とともに格納される。
【0075】
データ記憶部53に格納された距離画像と距離画像センサ10の基準座標系での位置および方向は座標演算部54に入力され、座標演算部54では、基準座標系における距離画像センサ10の座標位置および方向と距離画像とから、距離画像の1画面内の対象物Obについて基準座標系における座標位置を決定する。本実施形態は、電子地図に対象物Obの位置を記録することを目的としており、座標演算部54で求めた位置は地図作製部34に与えられる。地図作製部34は、あらかじめ基準座標系に対応する座標位置が決められた電子地図を備えており、地図作製部55では、座標演算部54で求めた対象物Obの座標位置を電子地図上に記録する。
【0076】
地図作製部55には対象物Obの種類を選択する機能があり、地図作製部55に付設した対象物指定装置56を操作することによって、電子地図において座標位置ごとに対象物Obを対応付けて記録することが可能になっている。対象物指定装置56は、電子地図を表示するCRTあるいは液晶表示器からなるモニタ装置と、対象物Obのシンボルを一覧表示したパレットをモニタ装置の画面内に表示するプログラムを実行するコンピュータと、パレットから所望のシンボルを選択するマウスのようなポインティングデバイスとからなる。図12に示すように、電子地図EMにおいて座標位置を記録した後に対象物Obを対応付けていない部位には、対象物Obが未指定であることを示すマークMKが表示され、ポインティングデバイスで選択したパレットPL上のシンボルSYを、ドラッグアンドドロップの操作によってマークMKの位置付近に移動させると、当該シンボルがマークSYに対応する部位に貼り付けられるようになっている。
【0077】
なお、理論上は距離画像の1画面内のすべての画素について基準座標系における座標位置を求めることが可能であるが、距離画像内において座標位置を特定しようとする対象物Obに対応した領域は画面内の一部の領域であり、また距離画像内にはノイズも含まれるから、電子地図に対象物Obを記録する座標位置は選択しなければならない。本実施形態では、電子地図に座標位置を記録する対象物Obの選択作業は手作業で行うようにしてあり、対象物Obの選択作業のために、距離画像を表示するためのCRTや液晶表示器などからなるモニタ装置57と、距離画像において所望の領域を指定するマウスのようなポインティングデバイスからなる領域指定装置58とを設けている。
【0078】
距離画像から対象物Obを選択する際には、距離画像内で対象物Obが存在する領域をモニタ装置57により確認し、領域指定装置58で当該領域に距離画像内で移動可能なポインタ(カーソル)の位置を合わせてクリックの操作を行うと、当該領域を対象物Obの存在部位として指定することができる。基準座標系における座標位置を求める演算は領域指定装置58で指定した領域についてのみ行い、距離画像内の他の領域については座標位置を求める演算を行わないようにしてある。したがって、距離画像内のすべての画素ごとに基準座標系における座標位置を求める場合に比較すれば、座標位置を求める演算の演算量を大幅に低減することができる。
【0079】
ところで、対象物Obには大きさがあるから、対象物Obが存在する領域を指定する際に、同じ対象物Obであっても指定する位置によって座標位置にずれが生じる。座標位置のずれを無視できる小さい対象物Obであれば問題は生じないが、座標位置のずれを無視できない大きい対象物Obであると、電子地図において対象物Obを対応付ける座標位置がずれるという問題を生じる。そこで、電子地図上における対象物Obの座標位置は、対象物Obごとに規定した代表位置を用いるのが望ましい。代表位置としては、対象物Obの占める領域が既知であれば対象物Obの中心位置や重心位置を用いればよく、また利用者が指定した位置を含む規定の領域内で距離値が規定の範囲内である画素の重心位置を用いることができる。なお、小さい対象物Obでは利用者が指定した位置を代表位置に用いればよい。
【0080】
上述の例では利用者の手作業で対象物Obを抽出しているが、対象物Obの形状が既知である場合には、テンプレートマッチングの技術を用いて距離画像から対象物Obを自動的に抽出してもよい。この場合には、テンプレートに規定した代表位置を、テンプレートとマッチングした対象物Obの代表位置とすることができる。
【0081】
上述した構成例では、距離画像の中で対象物Obを指定しているが、距離画像は画素値が距離値であるから、手作業で対象物Obを指定する場合に距離画像を見慣れていなければ対象物Obを見つけだす作業に手間がかかる。
【0082】
一方、上述した距離画像センサ10では、各感光部11において受光光量に応じた量の電荷を生成するから、各受光光量A0、A1、A2、A3は対象物Obの明るさを反映している。つまり、受光光量A0、A1、A2、A3の加算値あるいは平均値は濃淡画像における濃度値に相当する。換言すれば、各感光部11での受光光量A0、A1、A2、A3を用いると、対象物Obまでの距離を求めるほか、対象物Obの濃度値も得ることが可能になる。しかも、同じ位置の感光部11を用いて対象物Obの距離と濃度値とを求めるから、同じ位置について濃度値と距離との両方の情報を得ることが可能になる。つまり、画像生成部4において距離画像とともに濃淡画像を生成すれば、同じ感光部11から距離画像と濃淡画像とを生成することができ、対象空間の同じ位置についてほぼ同時刻の距離値と濃度値とを求めることが可能になる。濃淡画像は受光光量A0、A1、A2、A3の平均値(つまり、直流成分B)を濃淡値に用いるようにすれば、発光源2からの強度変調の光の影響を除去できる。ただし、距離画像を生成する際の光検出素子1への外光成分の入射を低減するために、発光源2から赤外線を対象空間に照射し、光検出素子1の前方に赤外線透過フィルタを配置してあり、濃淡画像は赤外線に対する濃淡画像になる。
【0083】
光検出素子1の出力を用いて画像生成部4において距離画像と濃淡画像とを生成すれば、モニタ装置57において濃淡画像を表示し、濃淡画像において対象物Obを指定することが可能になる。つまり、距離画像に慣れていない利用者であっても濃淡画像を用いて対象物Obを比較的容易に指定することが可能になる。
【0084】
本実施形態では電子地図上において基準座標系での対象物Obの座標位置を容易に記録することができるから、地球上での対象物Obの座標位置を緯度、経度、高度によって特定する用途に用いれば、道路標識や消火栓などを対象物Obとして撮像するだけで、道路標識や消火栓などが存在する場所を電子地図に容易に記録することができる。また、市中などにおいて距離画像センサ10を用いて撮像可能な範囲内に複数の対象物Obが存在する場合には、距離画像センサ10の位置を移動させることなく複数の対象物Obの存在場所を計測することができる。さらにまた、自動車のような移動体に距離画像センサ10を搭載し、対象物Obが距離画像内に映り込むように距離画像センサ10によって動画像を撮像しながら移動体を移動させれば、多数の対象物Obについて存在場所の情報を記録することができるから、撮像後にデータ記憶部53に記録されたデータから所望の対象物Obを指定して電子地図に対象物Obの位置を記録することができ、電子地図への対象物Obの記入作業の作業量を大幅に低減することが可能になる。
【0085】
また、工場内で物品を搬送する自律走行型のロボット(自律搬送車)に搭載する電子地図(工場内のマップ)を作製する場合には、ロボットに距離画像センサ10を搭載して手動でロボットを走行させて工場内の設備を撮像し、距離画像内で設備の位置を指定すれば設備の位置を記録した電子地図を作製することができ、ロボットが保有する電子地図の作製作業が容易になる。
【0086】
なお、上述した実施形態において、距離センサとして距離画像センサ10を用いる例を示したが、光ビームによって点状の光パターンを対象物Obに照射し、対象物Obに形成される光パターンの位置をPSDのような位置検出素子で検出することにより三角測量法の原理を用いて対象物Obまでの距離を求める距離センサや、超音波を対象物Obにより反射させ超音波の送波と受波との時間差を利用して対象物Obまでの距離を求める距離センサなどを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】同上における感度制御部の構成例を示すブロック図である。
【図4】同上の動作例を示す説明図である。
【図5】同上の他の動作例を示す説明図である。
【図6】同上のさらに他の動作例を示す説明図である。
【図7】同上に用いる光検出素子の構成例を示す平面図である。
【図8】図7に示した光検出素子の要部分解斜視図である。
【図9】図8のA−A線断面図である。
【図10】同上に用いる光検出素子の要部の動作説明図である。
【図11】同上における座標位置の算出原理を示す説明図である。
【図12】同上の操作例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
1 光検出素子
2 発光源
3 制御回路部
4 画像生成部
5 受光光学系
11 感光部
51 位置センサ
52 方向センサ
53 データ記憶部
54 座標演算部
55 地図作製部
56 対象物指定装置
57 モニタ装置
58 領域指定装置
Ob 対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間に光を照射するとともに対象空間に照射した光の反射光を含む光を受光し照射光と反射光との関係により対象物までの距離を測定する距離センサと、距離センサを移動させる空間を規定する基準座標系において距離センサで距離を測定する方向を検出する方向センサと、基準座標系において距離センサの座標位置を特定する位置センサと、位置センサと方向センサと距離センサとにより得られる座標位置と方向と距離とから基準座標系における対象物の座標位置を決定する座標演算部とを備えることを特徴とする測量装置。
【請求項2】
前記基準座標系は少なくとも緯度および経度を用いて表される座標系であり、基準座標系に対応する座標位置が決められている電子地図上において、座標演算部で決定された対象物の座標位置に対象物を記録する地図作製部が付加されたことを特徴とする請求項1記載の測量装置。
【請求項3】
前記基準座標系は前記距離センサを搭載した自律走行型のロボットが移動する空間において設定され、ロボットが保有しかつ当該空間について基準座標系に対応する座標位置が決められている電子地図上において、座標演算部で決定された対象物の座標位置に対象物を記録する地図作製部が付加されたことを特徴とする請求項1記載の測量装置。
【請求項4】
前記距離センサは、強度が周期的に変化する強度変調光を対象空間に照射する発光源と、受光光量に応じた電気出力を発生する複数個の感光部が配列され対象空間を撮像する光検出素子と、発光源から対象空間に照射された光が対象空間内の対象物で反射され各感光部で受光されるまでの強度変調光の位相差を対象物までの距離に換算することにより画素値が距離値である距離画像を生成する画像生成部とを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の測量装置。
【請求項5】
前記距離センサは、強度が周期的に変化する強度変調光を対象空間に照射する発光源と、受光光量に応じた電気出力を発生する複数個の感光部が配列され対象空間を撮像する光検出素子と、発光源から対象空間に照射された光が対象空間内の対象物で反射され各感光部で受光されるまでの強度変調光の位相差を対象物までの距離に換算することにより求めた距離値を画素値とする距離画像と各感光部の受光光量である濃淡値を画素値とする濃淡画像とを同じ感光部の受光光量からそれぞれ生成する画像生成部とを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の測量装置。
【請求項6】
前記画像生成部で生成された濃淡画像を画面上に表示するモニタ装置と、モニタ装置に表示される濃淡画像において対象物を指定する領域指定装置とを備え、前記地図作製部は、領域指定装置で指定された対象物の座標位置を電子地図上に記録することを特徴とする請求項5記載の測量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−153772(P2006−153772A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347714(P2004−347714)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】