説明

測長器

【課題】 様々な形状や態様の長尺体の長さを精密に計測することが可能な簡易な構造で廉価な測長器を提供する。
【解決手段】 制御回路部5と、駆動モータ6と、駆動モータ6の回転量を検出するエンコーダ7と、駆動モータ6の回転軸6Aに設けられて回転駆動される送出ローラ8と、送出ローラ8との間で長尺体2を挟持して長さ方向に送り出す可動ローラ9と、可動ローラ9を送出ローラ8に対して接離させる可動ローラ作動機構10と、長尺体2の送出量を設定する10キー16と、表示器15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通線ロッド、各種ケーブル、コード、ロープ或いはチューブ等の各種の長尺体の長さを計測する測長器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種長尺体は、大量かつ精度が要求される工場等の製造工程での使用態様では、例えば特許文献1に開示されるように工程に設置した精密な測長器により正確な繰出し量の計測と所定長さでの切断が行われる。一方、各種長尺体は、一般的な使用態様では、例えばスケールや机上に設けたマーク等に当てがわれて所定の長さが計測され、この計測値を目安としてやや余裕をもった長さで切断が行われる。
【0003】
長尺体は、ロール状に巻回された原反から引き出されて計測が行われるが、例えば屋内配線用のケーブルのように多芯化に伴って外径も太くかつ被覆も厚くなりロールから引き出された状態で巻癖が戻らず、正確な長さに切断することが困難であった。したがって、長尺体においては、従来では作業者が目分量である程度の余裕を以った長さに切断し、敷設作業を行った後に余分な部分を切断していた。
【0004】
建物等の建設工事においては、建設費の抑制と材料費の高騰等により、使用する各種のケーブル類が配線図に基づいて種類や使用量等が予め積算され細かなコスト管理が行われている。例えば特許文献2には、内装費用積算システムとして、室内各部を測長器により測長するとともに、その測長データに基づいて内装費用を積算するシステムが開示されている。ケーブル類については、かかる特許文献2の対象となるものではないが、コスト管理の徹底を図るために計画値と実際の使用量との整合性の向上が極めて重要である。
【0005】
大型ビル等の建設工事においては、IT化対応に基づいて高価な多芯ケーブルや光ファイバケーブル等のケーブルが大量に敷設され、そのコストも莫大となるとともにそれらの敷設長さも数百メートルといったように長大となっている。大型ビル等の建設工事では、従来のように作業者の目分量によるケーブルカットの手法では計測が困難であり、また大幅な余裕分の無駄がコストを大幅にアップさせるとともに廃棄物の量も増やすといった問題があった。
【0006】
ケーブル等の長さを実際に計測する装置としては、ローラをケーブルに押し付けながら移動させることにより、このローラの回転量に基づいてケーブル長を1m又は10cmの単位で計測する手動による機械式の測長器も提供されている。また、特許文献3には、被計測体に押し付けられるスピンドルの変位を光学的検出器により検出することで、ダイヤルゲージ、ノギス等の長さ測定器、重量、温度、速度測定等の測定器として利用可能な電子表示型測定器が開示されている。
【0007】
ところで、ケーブル等の敷設工事は、建物躯体や道路中に予め埋設して配管した導管内に電源ケーブルや光ファイバケーブル等の各種ケーブルを導通させる工事であり、一般に通線ロッドを先導体として導管内にケーブル等を敷設する。ケーブル等の敷設工事においては、引込み部から通線ロッドを導管内に導通して引出し部から先端部を引き出した状態で、この通線ロッドの引込み部の端部にケーブルの先端側を接続する。ケーブル等の敷設工事においては、この状態で通線ロッドを引出し部から引き出して接続したケーブルを導管内に導通させている。
【0008】
【特許文献1】特開平1−92459号公報
【特許文献2】特開平10−196133号公報
【特許文献3】特開昭62−142210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来の機械式測長器においては、ケーブルをロールから引き出しながらローラを押し付けて移動させることから、最長で数十メートル程度までの長さを計測することが可能である。しかしながら、機械式測長器においては、大型ビル等の建設工事や道路工事等の現場のように計測すべきケーブルの長さが長大になるにしたがって押し付け状態が不安定となってバラツキが生じやすくなり、計測誤差が大きくなるといった問題があるとともに、ケーブルを押さえ付ける作業員も必要で複数人による作業となる。また、機械式測長器においては、積算形であることから、誤って計測ポイントを通り越してしまった場合に、最初から計測作業を行わなければならないといった問題もある。機械式測長器においては、このように使い勝手が悪く、比較的高価であることから現場ではほとんど使用されていなかった。
【0010】
また、上述した先願の電子表示型測定器は、被計測物についてもっぱら短い長さを精密に測定する用途として用いられる機器であって、長大なケーブル長を測定するといった用途に用いられるものでは無い。測長器は、建築現場等に用いる場合に、電源用やデータ通信用のように用途や仕様を異にする多数種のケーブルをそれぞれ長大な長さで計測する機能が必須である。測長器は、例えば各種ケーブル等を販売する販売店或いは原材料の受け入れ検査等の様々な分野においても設置の要求が極めて大きい。測長器は、小型軽量、取り扱いが簡便、廉価であるとともにケーブル等の長尺体を精密に計測する機能が要求されるが、従来ではかかる要求機能を満足するものは提供されていないといっても過言では無い。
【0011】
一方、ケーブル敷設工事においては、上述したように通線ロッドを先導体として導管内にケーブルを敷設するが、途中で導管の潰れや急峻な曲がり等により通線ロッドがしばしば途中で詰まってしまうことがある。ケーブル敷設工事においては、ケーブルが円滑に通線されるように詰まり位置の補修等を施すことも行われるが、従来ではその位置を的確に把握することが困難であった。ケーブル敷設工事においては、このために導管の敷設経路に沿ってハツリ作業等が行われるために、工期延長や工事費増加等の問題があった。
【0012】
したがって、本発明は、様々な形状や態様の長尺体の長さを精密に計測することが可能な簡易な構造で廉価な測長器を提供することを目的に提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成する本発明にかかる測長器は、制御回路部と、駆動モータと、この駆動モータの回転軸の回転量を検出して制御回路部に計測値検出信号を出力する回転量検出器と、計測値検出信号に基づいて制御回路部から出力される計測値駆動信号により長尺体の送出量を表示する表示器と、駆動モータの回転軸に設けられて回転駆動されることにより長尺体を長さ方向に送り出す送出ローラと、この送出ローラの外周部の間に長尺体を挟持しながら回転する可動ローラと、可動ローラ作動機構を備える。測長器は、可動ローラ作動機構が、可動ローラを送出ローラ側に付勢して長尺体の挟持状態を弾持させる弾性部材と、可動ローラを送出ローラに対して接近させる第1位置と離間させる第2位置に切換移動させる切換カム手段を有し、第1位置において送出ローラと可動ローラの間で長尺体を挟持させるとともに第2位置において送出ローラと可動ローラとの間に長尺体が嵌挿されるようにする。
【0014】
測長器においては、可動ローラ作動機構により送出ローラに対して可動ローラを第2位置に設定した状態で長尺体を送出ローラの外周部に掛け合わせた状態で、可動ローラ作動機構により送出ローラに対して可動ローラを第1位置へと切換移動させることにより長尺体を送出ローラと可動ローラとの間で挟持する。測長器においては、駆動モータに電源を投入して送出ローラを回転駆動させることにより、送出ローラと可動ローラとで挟持した長尺体を長さ方向へと走行移動させて送り出しを行う。測長器においては、長尺体の走行移動に伴う送出ローラの回転量を回転量検出器により検出し、この回転量検出器からの計測値検出信号に基づいて制御回路部から計測値駆動信号を表示器へと出力する。測長器においては、計測値駆動信号に基づいて表示器に長尺体の送出量を表示する。
【0015】
測長器においては、送出ローラに対して可動ローラが離間した第2位置において長尺体をセットするとともに、送出ローラに対して可動ローラを離間させた第1位置において例えば所定の長さに切断した長尺体を取り外すことから、取り扱いが簡便である。測長器においては、弾性部材の弾性力により送出ローラと可動ローラとの間で長尺体を挟持した状態を保持して走行させて、送出ローラの回転量に基づいて送出量の計測を行うことから、外径や断面積を異にしたり各種の被覆を有する様々な形状や態様或いは巻癖のついた長尺体であってもその長さを精密に計測することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
以上のように構成された本発明にかかる測長器によれば、簡易な構成と取り扱いにより様々な形状や態様の長尺体の長さを精密に計測することが可能であり、現場対応において長尺体を冗長の長さで切断したり長さ不足で再計測を行うといった無駄が確実に防止されるようにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態として示す測長器1について、図面を参照して詳細に説明する。測長器1は、詳細を後述するように可搬型で適宜の場所に持ち運びして用いられ、各種のケーブル、コード、ロープ、チューブ、或いは線材等の各種の長尺体2について簡易な操作により送出量を精密に計測することにより、例えばこの長尺体2を所定の長さに切断することを可能とする。また、測長器1は、ケーブル敷設工事の際に用いられる通線ロッドの繰出し量を精密に計測する。なお、以下の説明において、前後、左右及び上下の用語を用いるが、これら用語は、図1を基準にして用いるものとする。
【0018】
測長器1は、図1及び図2に示すように詳細を後述する構成各部を内蔵した可搬型の略縦長のボックス状筐体3を備え、この筐体3の前面部3Aと両側面部3B、3Cとに跨って水平方向の開口溝からなる長尺体嵌挿溝部4を設ける。測長器1は、長尺体2を、筐体3に対してその前面部3A側から長尺体嵌挿溝部4に嵌挿して両側面部3B、3Cから引き出されるようにセットする。測長器1においては、従来のように長尺体2をその先端部から筐体3の内部を貫通させてセットする面倒なセット操作が不要となり、操作性の向上が図られる。また、測長器1においては、先端部に大径部位を有する長尺体2であってもその計測操作を可能とする。
【0019】
測長器1は、筐体3の内部に、図1に示すように制御回路部5と、長尺体2を長さ方向に送り出す駆動源を構成する駆動モータ6と、この駆動モータ6の回転軸6Aの回転量を検出する回転量検出器(エンコーダ)7を備える。また、測長器1は、筐体3の内部に、駆動モータ6により回転駆動される送出ローラ8と、この送出ローラ8と共同して長尺体嵌挿溝部4に嵌挿された長尺体2を挟持する可動ローラ9と、送出ローラ8に対して可動ローラ9を接離移動させる可動ローラ作動機構10を備える。
【0020】
測長器1は、筐体3の内部に、電源を構成する充電が可能なバッテリー11を備え、図示を省略するが背面部3Dに蓋体と充電端子部を設ける。測長器1は、蓋体を開閉してバッテリー11の交換操作等を可能とするとともに、充電端子部を商用電源に接続してバッテリー11の充電が行われるようにする。測長器1は、筐体3の上面部3Eに操作パネル12を設けるとともに、可動ローラ作動機構10を構成するセット操作レバー13を有する切換カム部材14を設ける。
【0021】
測長器1は、上面部3Eに設けた操作パネル12に、図3に示すように液晶表示器15と、設定値入力手段を構成する10キー16と、電源スイッチ17と、計測オン・オフスイッチ18と、駆動モータ切換スイッチ19と、リセットスイッチ20と、表示切換スイッチ21と、表示LED22を搭載する。操作パネル12は、詳細を省略するがパネル筐体と、上述した各スイッチ等を搭載する回路基板等により構成し、パネル筐体の内部にその開口部から部材搭載面を外方に臨ませて回路基板を収納して構成する。なお、測長器1は、操作パネル12を例えば筐体3の背面部3D或いは両側面部3B、3Cに配置するようにしてもよく、また電源スイッチ17をこれら各部のいずれかに配置するようにしてもよい。
【0022】
測長器1は、制御回路部5が、詳細を省略するが所定の回路パターンを形成した回路基板にマイクロコンピュータや各種の電子部品等を搭載して構成する。制御回路部5は、詳細を後述するように構成各部から出力される各種信号に基づいて所定の処理を行い、構成各部に対して制御信号等を出力することにより測長器1の制御処理を行う。制御回路部5には、後述するように長尺体2の計測動作が行われると、エンコーダ7から駆動モータ6の回転量検出信号(計測値検出信号)が入力される。制御回路部5は、モータ制御部23へと制御信号を出力し、駆動モータ6の動作制御を行う。
【0023】
制御回路部5は、エンコーダ7からの回転量検出信号に基づいて液晶表示器15に計測値駆動信号を出力し、この液晶表示器15に繰出し操作にしたがって長尺体2の送出量を表示させる。制御回路部5には、予め設定される長尺体2のセット値(設定量)に基づいて10キー16から出力されるセット値信号(設定値情報)が入力される。制御回路部5は、このセット値信号に基づいて液晶表示器15に設定値駆動信号を出力し、この液晶表示器15に長尺体2を送り出すセット値を表示させる。
【0024】
制御回路部5は、電源スイッチ17がオン操作されることによりバッテリー11からの供給電圧を受けて、所定の制御動作を行う。制御回路部5は、計測オン・オフスイッチ18がオン操作されることにより、所定の計測動作の処理を行って構成各部に対して所定の制御信号を出力する。制御回路部5は、駆動モータ切換スイッチ19からの切換信号に基づいて駆動モータ6の回転方向を切り換える制御信号を出力する。制御回路部5は、リセットスイッチ20のオン操作により、例えば液晶表示器15に表示されている送出量或いはセット値のリセットが行われるようにする。制御回路部5は、表示切換スイッチ21のオン操作により、液晶表示器15の表示が切換えられるようにする。
【0025】
測長器1においては、上述したように操作パネル12に、オン・オフ操作を行う電源スイッチ17、計測オン・オフスイッチ18、駆動モータ切換スイッチ19、リセットスイッチ20及び表示切換スイッチ21の5個の機能スイッチを搭載したが、かかる構成に限定されないことは勿論である。測長器1においては、各スイッチとして例えばプッシュ−プッシュ操作を行うことにより機能切換を行うことが可能な機能スイッチを用いることにより、スイッチ数を減らすようにしてもよい。
【0026】
測長器1は、例えば計測オン・オフスイッチ18と駆動モータ切換スイッチ19の機能或いはリセットスイッチ20と表示切換スイッチ21の機能を複合化することが可能である。また、測長器1は、電源スイッチ17と機能切換スイッチとを設け、機能切換スイッチにより所定のモード設定を行った状態で10キー16の各キーを利用して各スイッチによる機能設定が行われるようにしてもよい。
【0027】
測長器1には、駆動モータ6として、正逆回転が可能なDCモータが用いられ、制御回路部5からモータ制御部23に制御信号が出力されて動作制御が行われる。駆動モータ6は、電源スイッチ17がオン操作されるとバッテリー11から電圧が供給され、この状態で計測オン・オフスイッチ18がオン操作されることにより起動して回転軸6Aを回転駆動する。駆動モータ6は、後述するように長尺体嵌挿溝部4に長尺体2をセットした状態で回転軸6Aを介して送出ローラ8を回転駆動することにより、図4において長尺体2を左側から右側へと送り出すようにする。駆動モータ6は、回転軸6Aに送出ローラ8を固定するとともにエンコーダ7により回転軸6Aの回転量が検出される。
【0028】
測長器1においては、上述したように10キー16により予め長尺体2の送り量をセット値として設定し、当該セット値においてその送出し動作が停止されるようにする。測長器1においては、セット値を誤って設定したり変更操作を忘れる等した状態で長尺体2の送出し操作を行ってしまった場合に、駆動モータ6を逆転させて長尺体2を正規の長さまで引き戻す操作を行う。測長器1においては、駆動モータ切換スイッチ19がオン操作されることにより制御回路部5とモータ制御部23を介して駆動モータ6の逆転動作が行われ、長尺体2を引戻し動作させることで、再計測操作を行わずに所定の長さまでの計測が可能となる。
【0029】
エンコーダ7は、詳細を省略するが例えば光学スリット等が設けられて回転軸6Aに固定されたパルス発生板と、このパルス発生板を挟んで対向配置される発光部及び受光部とからなる検出器とから構成される。エンコーダ7は、検出器が、パルス発生板の回転に伴って発光部と受光部の間を通過する光学スリットの通過数を検出して制御回路部5に計測値検出信号を出力する。なお、測長器1においては、かかる透過型エンコーダに限定されず、パルス発生板に対して発光部と受光部とを併設した反射型エンコーダ等の適宜の回転量検出器を用いることが可能であり、さらに送出ローラ8の回転量を直接検出するようにしてもよい。
【0030】
計測オン・オフスイッチ18は、計測動作の開始又は停止操作を行うスイッチであり、オン操作により駆動モータ6を起動させる。測長器1においては、通常の操作では計測オン・オフスイッチ18をオン操作して長尺体2がセット値まで送り出されると駆動モータ6が自動停止する。測長器1においては、長尺体2の送出動作が行われている途中で計測オン・オフスイッチ18をオフ操作することにより、駆動モータ6を手動で停止させて任意の位置で長尺体2の送出動作を停止させることが可能である。
【0031】
リセットスイッチ20は、長尺体2をセット値まで送り出しを行った後にオン操作を行うことにより、液晶表示器15に表示したセット値をリセットする。リセットスイッチ20は、セット値のリセットばかりでなく、例えば駆動モータ切換スイッチ19により設定した駆動モータ6の回転方向或いは液晶表示器15の表示単位が初期値にリセットされるようにする。なお、リセットスイッチ20は、例えば電源スイッチ17のオフ操作により同様のリセット操作が行われるようにする場合には特に設ける必要も無い。
【0032】
表示切換スイッチ21は、液晶表示器15の表示を切り換える操作を行う。表示切換スイッチ21は、液晶表示器15に長尺体2の送出量の表示単位を、例えば1メートル単位と10センチメートル単位とに切り換えて表示されるようにしたり、セット値までの残量が表示されるようにする。表示切換スイッチ21は、リセットスイッチ20と兼用され、単位切換機能とともにリセット機能を有するようにしてもよい。
【0033】
測長器1は、液晶表示器15として、例えば図3に示すように第1表示部15Aと第2表示部15Bを有する液晶表示器が用いられ、上述した表示切換スイッチ21のスイッチ操作により表示単位を切り換えて表示が行われるようにする。液晶表示器15は、例えば第1表示部15Aにより長尺体2の送出量を表示するとともに、第2表示部15Bにセット値を表示する。
【0034】
測長器1は、1つの表示部を有する液晶表示器15が用いられ、設定操作を行った際にはセット値を表示するとともに長尺体2の送出操作が行われると送出量の表示が行われるようにしてもよい。測長器1においては、エンコーダ7からの検出信号に基づいて制御回路部5から液晶表示器15に対して駆動信号を出力するが、上述した駆動モータ切換スイッチ19により設定される駆動モータ6の回転方向情報に基づいて加算駆動信号又は減算駆動信号のいずれかが出力されるようにする。また、測長器1は、表示切換スイッチ21により表示モードが設定された液晶表示器15において、駆動モータ切換スイッチ19が正転側にセットされている状態では加算表示が行われ、逆転側にセットされている状態では減算表示が行われるようにする。
【0035】
表示LED22は、電源スイッチ17をオン操作すると点灯して電源の投入状態を表示する。表示LED22は、制御回路部5から出力される制御信号等に基づいて、適宜の態様で点灯することにより測長器1の状態表示も行う。表示LED22は、バッテリー11の電圧残量が規定の値以下となった状態を検出した制御回路部5から出力される警告信号に基づいて、例えば点滅表示を行う。表示LED22は、長尺体2がセット値まで送り出されると、異なる表示態様によりその旨を表示する。
【0036】
測長器1は、長尺体2について、断面寸法が1mm×1mm〜12mm×12mmの角形長尺体或いは外径が1mm〜12mmの円形長尺体の送出量を計測することが可能である。測長器1は、上述したように筐体3の前面部3Aと両側面部3B、3Cとに跨って形成した長尺体嵌挿溝部4内に、前面部3A側から長尺体2を嵌挿して両側面部3B、3Cから引き出して送出し動作が行われるようにする。したがって、測長器1は、長尺体嵌挿溝部4を、高さが12mmよりやや大きな開口幅を有する水平方向の開口溝として筐体3に形成する。
【0037】
測長器1は、上述した外形寸法の範囲であれば角形や円形ばかりでなく様々な外形形状の長尺体2について適用することが可能であり、また被覆材の材質を異にする長尺体2についても適用することが可能である。測長器1は、長尺体2が外形形状や被覆材の材質を異にする場合に送出ローラ8と可動ローラ9間に摩擦係数の変化が生じるが、後述するように制御回路部5においてカルマンフィルタによる補正処理を行うことにより全長に亘って同一形状、同一材質の長尺体2であれば送出量を精密に計測することが可能である。
【0038】
長尺体嵌挿溝部4は、図1及び図2に示すように両側面部3B、3C側において、上述した水平溝部から連続する奥行き側部位が、互いに同一軸線上に位置するやや大径の略円形開口として形成される。測長器1には、筐体3の両側面部3B、3Cの内面に、長尺体ホルダ27を構成する下ホルダ半体部材28A、28B(下ホルダ半体部材28)が取り付けられる。下ホルダ半体部材28は、対磨耗性を有する合成樹脂材により長尺体嵌挿溝部4の円形開口部の下側部位を囲む上向き円弧状に形成され、長尺体嵌挿溝部4内を送り出される長尺体2の外周部の下半分を保持する。下ホルダ半体部材28は、内面が滑らかに形成されることにより、後述する長尺体2の送出し動作に際して長尺体2の下半分を保持してスムーズに移動させるようにする。
【0039】
測長器1は、上述したように駆動モータ6の回転軸6Aに固定された送出ローラ8に対して可動ローラ9が可動ローラ作動機構10により作動されて、長尺体嵌挿溝部4内に嵌挿された長尺体2を挟持して送出し動作を行う。送出ローラ8は、図1及び図2に示すように筐体3に形成した長尺体嵌挿溝部4の奥行き寸法よりもやや長軸であり、やや弾性変形が可能で対磨耗性を有する合成樹脂材、例えばウレタン樹脂材により成形されたローラ体からなる。送出ローラ8は、両端部にやや大径のフランジ部8A、8Aが周回りに一体に突設されることにより、長尺体2が側方に脱落することなく送出し動作が行われるようにする。なお、送出ローラ8には、図示を省略するが外周面の全周に亘って例えば平行細目ローレットが形成され、長尺体2にスリップ現象を生じることなく送出し動作が行われるようにする。
【0040】
測長器1は、制御回路部5において、送出ローラ8の外径情報と駆動モータ6の回転軸6Aの回転量を検出するエンコーダ7から出力される計測値検出信号とに基づいて長尺体2の送出量を演算する。測長器1は、その際に制御回路部5において、長尺体2の外形仕様、すなわち被覆材の材質による摩擦係数μや円周率πに起因して生じる送出ローラ8の回転変動の蓄積誤差を排除するアルゴリズムであるカルマンフィルタを用いた補正処理を行って計測値駆動信号を液晶表示器15に出力する。測長器1は、上述したように表示切換スイッチ21により設定された表示単位モードに基づいて制御回路部5から補正された計測値駆動信号が液晶表示器15に出力され、この液晶表示器15に長尺体2の送出量がメートル単位又は10センチメートル単位で表示されるようにする。
【0041】
測長器1は、上述した送出ローラ8に対して可動ローラ9を可動ローラ作動機構10により接離移動させる。測長器1は、送出ローラ8と可動ローラ9が離間した第2位置において長尺体嵌挿溝部4を開放して長尺体2が嵌挿されるようにするとともに、送出ローラ8と可動ローラ9が接近した第1位置においてこれら送出ローラ8と可動ローラ9とが長尺体2を挟持しその送出し動作を行うようにする。
【0042】
可動ローラ9は、やや弾性変形が可能な対磨耗性を有する合成樹脂材、例えばウレタン樹脂材により成形されたローラ体からなる。可動ローラ9は、長尺体嵌挿溝部4の奥行き寸法よりもやや長軸でありかつ送出ローラ8よりもやや短軸に形成される。可動ローラ9は、その支軸9Aが送出ローラ8を支持する回転軸6Aと平行状態で可動ローラ作動機構10に支持される。なお、可動ローラ9にも、送出ローラ8と同様に、その外周面に長尺体2のスリップ現象を抑制するローレットを形成するようにしてもよい。
【0043】
可動ローラ作動機構10は、図1及び図2に示すように、筐体3の上面部3Eに配置されたセット操作レバー13及び切換カム部材14と、筐体3の内部に組み合わされた軸状のカムロッド24とコイルスプリング25と可動ローラ支持ブラケット部材26とから構成される。可動ローラ作動機構10は、セット操作レバー13を回動操作して切換カム部材14を介してカムロッド24を上下方向に移動させることにより、可動ローラ9を上述した第1位置と第2位置とに切換移動させる。
【0044】
可動ローラ作動機構10は、カムロッド24が上端部を筐体3の上面部3Eを貫通して突出され、この上端部に切換カム部材14を固定する。切換カム部材14は、カムロッド24の外径よりもやや大きな厚みを有する円板状の部材であり、図2に示すように中心を通って内部を貫通して外周部に開口されるロッド嵌挿溝14Aが切欠き形成される。切換カム部材14は、ロッド嵌挿溝14Aに嵌挿したカムロッド24の上端部を、外周部の近傍位置において結合ピン29により回転方向に対してフリーな状態で結合する。
【0045】
セット操作レバー13は、図1に示すように上述したロッド嵌挿溝14Aを形成した切換カム部材14に対して、その切残し部位の外周部から突出される。セット操作レバー13は、ロッド嵌挿溝14Aと直交し、結合ピン29によるカムロッド24の結合位置に対して略90°の位置において切換カム部材14に設けられる。
【0046】
可動ローラ作動機構10は、図1に示すようにセット操作レバー13を筐体3の左側面部3B側に位置された状態において、カムロッド24を結合する結合ピン29が筐体3の上面部3E側の下方側に位置されるように切換カム部材14を位置決めする。可動ローラ作動機構10は、これによりカムロッド24を引き降ろした状態とする。可動ローラ作動機構10は、図2に示すようにセット操作レバー13を筐体3の左側面部3B側から右側面部3C側へと回動操作することにより、カムロッド24を結合する結合ピン29が筐体3の上面部3Eと対向する上方側に位置されるように切換カム部材14を位置決めする。可動ローラ作動機構10は、これによりカムロッド24を引き上げた状態とする。
【0047】
なお、可動ローラ作動機構10は、上述した構成のセット操作レバー13と切換カム部材14によりカムロッド24を上下方向に切換移動させるようにしたが、かかる構造に限定されないことは勿論である。可動ローラ作動機構10は、筐体3から突出させたカムロッド24を、例えば直接或いは他のカム−リンク機構等によって上下方向に切換移動させるようにしてもよい。
【0048】
可動ローラ作動機構10は、カムロッド24が、上面部3Eから筐体3の内部に貫通された下端部を可動ローラ支持ブラケット部材26に固定される。可動ローラ支持ブラケット部材26は、合成樹脂材や金属材を素材とし、図1及び図2に示すようにカムロッド24を固定する上面部26Aと、この上面部26Aの前後側縁から一体に折曲形成された前面部26B及び背面部26Cとからなる下向きコ字状に形成される。可動ローラ支持ブラケット部材26は、前面部26Bと背面部26Cの間に支軸9Aを支架して、可動ローラ9を回転自在に支持する。
【0049】
可動ローラ作動機構10は、カムロッド24に対してコイルスプリング25を、筐体3の上面部3Eと可動ローラ支持ブラケット部材26の上面部3Eとの間に組み付ける。コイルスプリング25は、カムロッド24が下降した位置においても圧縮した状態とされて可動ローラ支持ブラケット部材26に対して弾性力を作用させる長さを有している。コイルスプリング25は、後述するように送出ローラ8と可動ローラ9により長尺体2を挟持した状態で、可動ローラ支持ブラケット部材26を介して可動ローラ9を送出ローラ8側へと付勢する。可動ローラ作動機構10は、コイルスプリング25の弾性力により、断面寸法を異にする長尺体2に対して、送出ローラ8と可動ローラ9による挟持状態が弾持されるようにする。
【0050】
なお、可動ローラ作動機構10は、コイルスプリング25の弾性力により送出ローラ8と可動ローラ9による長尺体2の挟持状態を弾持するように構成したが、かかる構成に限定されないことは勿論である。可動ローラ作動機構10は、適宜の付勢構造、例えば可動ローラ支持ブラケット部材26と筐体3との間にトーションスプリングや板バネ等の弾性部材を組み合わせるようにしてもよく、また可動ローラ9の支軸9Aを可動ローラ支持ブラケット部材26に対してトーションスプリングを介して組み合わせる構造等であってもよい。
【0051】
測長器1は、送出ローラ8側に位置して設けた上述した下ホルダ半体部材28と共同して可動ローラ9側に長尺体ホルダ27を構成する左右一対の上ホルダ半体部材30A、30B(上ホルダ半体部材30)と、これら上ホルダ半体部材30を取り付けた可動ホルダ部材31を備える。可動ホルダ部材31は、図1及び図2に示すように可動ローラ支持ブラケット部材26を囲む矩形筒状の部材からなり、その前面部と図示しない背面部に相対する高さ方向のスライドガイド溝32A、32B(背面部側のスライドガイド溝32Bについては図示せず。)が形成される。
【0052】
可動ホルダ部材31は、これらスライドガイド溝32に可動ローラ9の支軸9Aの端部を貫通させて、可動ローラ支持ブラケット部材26に組み合わされる。可動ホルダ部材31は、スライドガイド溝32の高さ範囲において可動ローラ支持ブラケット部材26に対して高さ方向に移動自在に組み合わされる。可動ホルダ部材31には、左右側面部の下縁に上述した長尺体嵌挿溝部4を構成する筐体3側に形成した略円形開口に対向して、半円形の切欠きが形成される。
【0053】
可動ホルダ部材31には、左右側面部の外面に、長尺体ホルダ27を構成する上ホルダ半体部材30が取り付けられる。上ホルダ半体部材30も、対磨耗性を有する合成樹脂材により長尺体嵌挿溝部4の円形開口部の上側部位と対向してこれを囲む下向き円弧状に形成される。上ホルダ半体部材30も、内面が滑らかに形成されることにより、後述する長尺体2の送出し動作に際して長尺体2の上半分を保持してスムーズに移動させるようにする。
【0054】
上ホルダ半体部材30は、後述するように可動ローラ作動機構10により第2位置に移動される可動ローラ9を介して可動ホルダ部材31が下方へと移動されると、図4に示すように相対する下ホルダ半体部材28に突き当てられて全体がリング状の長尺体ホルダ27を構成する。上ホルダ半体部材30は、長尺体嵌挿溝部4内を送り出される長尺体2の外周部の上半分を保持する。長尺体ホルダ27は、下ホルダ半体部材28と上ホルダ半体部材30が共同して筐体3の両側面部3B、3Cにおいて長尺体嵌挿溝部4の開口部を囲むリング状のガイドを構成し、長尺体2をスムーズに移動させるようにする。
【0055】
以上のように構成した測長器1による長尺体2の送出量の計測操作について説明する。測長器1には、例えばロール体から引き出された原反の長尺体2が、筐体3の前面部3A側から長尺体嵌挿溝部4内に嵌挿して両端側を両側面部3B、3Cから引き出すことにより、図4に示すように筐体3を貫通した状態でセットする。測長器1においては、初期状態においてセット操作レバー13が図1に示すように筐体3の左側面部3B側に位置されている。なお、測長器1は、かかる初期状態に限定されないことは勿論である。
【0056】
測長器1は、この初期状態において切換カム部材14にカムロッド24を結合する結合ピン29が筐体3の上面部3E側の下側に位置し、カムロッド24が押し下げられた状態となっている。測長器1においては、カムロッド24を介して可動ローラ支持ブラケット部材26も下方に押し下げられた位置にあって、可動ローラ9が送出ローラ8に接触した第1位置にある。測長器1においては、可動ローラ9の支軸9Aがスライドガイド溝32の下端部に突き当たって可動ホルダ部材31を押し下げている。測長器1においては、図1に示すように可動ホルダ部材31により長尺体嵌挿溝部4が閉塞された状態にある。
【0057】
測長器1においては、上述した初期状態から、セット操作レバー13を図2に示すように筐体3の右側面部3C側に回動して切換カム部材14を回転する操作を行う。測長器1においては、切換カム部材14の回転動作に伴って結合ピン29が筐体3の上面部3E側から対向する上側へと移動してカムロッド24を引き上げる動作が行われる。測長器1においては、カムロッド24の引上げ動作に伴って、カムロッド24を介して可動ローラ支持ブラケット部材26の引上げ動作が行われる。測長器1においては、可動ローラ支持ブラケット部材26に支持された可動ローラ9が、送出ローラ8と接触した状態から上方へと移動して送出ローラ8から離間する第2位置へと移動する。
【0058】
測長器1においては、可動ローラ支持ブラケット部材26の上面部26Aと筐体3の上面部3Eとの間でコイルスプリング25を圧縮して弾性力が蓄勢されるようにする。測長器1においては、可動ローラ9の支軸9Aがスライドガイド溝32内を上方へと移動してその上端部に突き当たることにより、可動ローラ支持ブラケット部材26とともに可動ホルダ部材31の引上げ動作が行われる。測長器1においては、図2に示すように可動ホルダ部材31が上方へと移動して長尺体嵌挿溝部4を開放した状態とする。
【0059】
測長器1においては、電源スイッチ17をオン操作して制御回路部5等に電源を供給するとともに、リセットスイッチ20をオン操作して既セット値のリセット操作を行う。測長器1においては、表示切換スイッチ21により表示単位の設定を行うとともに、10キー16により長尺体2の送出量を設定する。なお、測長器1においては、この各操作を後述する長尺体2のセット操作後に行うようにしてもよい。
【0060】
測長器1においては、図5矢印で示すように、ロール体から引き出した長尺体2を水平姿勢の状態で筐体3の前面部3A側から長尺体嵌挿溝部4に嵌挿して両側面部3B、3Cから引き出すようにする。測長器1においては、長尺体2が、送出ローラ8の外周部上を導かれて長尺体嵌挿溝部4の両側に配置した下ホルダ半体部材28により下側部位を保持して引き出される。
【0061】
測長器1においては、セット操作レバー13を筐体3の右側面部3C側から左側面部3B側に回動して切換カム部材14を回転する操作を行う。測長器1においては、切換カム部材14の回転動作に伴って結合ピン29が筐体3の上面部3E側へと移動してカムロッド24を引き下げる動作が行われる。測長器1においては、カムロッド24の引下げ動作に伴って、カムロッド24を介して可動ローラ支持ブラケット部材26の引下げ動作が行われる。測長器1においては、図4に示すように可動ローラ支持ブラケット部材26に支持された可動ローラ9が、送出ローラ8から離間した位置から下方へと移動して長尺体2を送出ローラ8との間で挟持する第1位置へと移動する。
【0062】
測長器1においては、可動ローラ9の支軸9Aがスライドガイド溝32内を下方へと移動してその下端部に突き当たることにより、可動ローラ支持ブラケット部材26とともに可動ホルダ部材31の引下げ動作が行われる。測長器1においては、図4に示すように可動ホルダ部材31に設けた上ホルダ半体部材30が相対する下ホルダ半体部材28に突き当たることにより、筐体3の両側面部3B、3Cにおいて長尺体嵌挿溝部4の開口部に長尺体2の外周部を囲む長尺体ホルダ27を構成する。測長器1においては、図6に示すように可動ホルダ部材31が筐体3の前面部3Aにおいて長尺体嵌挿溝部4の前面側を閉塞するとともに両側面部3B、3Cにおいて長尺体ホルダ27を介して長尺体2を引き出して長尺体2のセット操作を完了する。
【0063】
測長器1においては、上述した長尺体2のセット操作を行った後に計測オン・オフスイッチ18のオン操作を行うと、制御回路部5からモータ制御部23に起動信号が出力されて駆動モータ6を起動する。測長器1においては、駆動モータ6の起動により回転軸6Aに固定した送出ローラ8が回転する。測長器1においては、送出ローラ8の回転によりこの送出ローラ8と可動ローラ9との間で挟持された長尺体2の送出し動作を行う。測長器1においては、ロール体から引き出された長尺体2が筐体3の左側面部3Bに構成された長尺体ホルダ27にガイドされて長尺体嵌挿溝部4の内部に引き込まれ、右側面部3Cに構成された長尺体ホルダ27にガイドされて送り出される。
【0064】
測長器1においては、回転軸6Aの回転量、すなわち送出ローラ8と可動ローラ9により送り出される長尺体2の送出量がエンコーダ7により計測され、このエンコーダ7から計測値検出信号が制御回路部5へと出力される。測長器1においては、制御回路部5から計測値検出信号に基づいて計測値駆動信号が液晶表示器15へと出力され、この液晶表示器15に長尺体2の送出量が刻々と表示されるようにする。測長器1においては、制御回路部5が、エンコーダ7から出力される計測値検出信号に基づく長尺体2の送出量と10キー16により設定したセット値とを比較する。
【0065】
測長器1においては、長尺体2がセット値まで送り出されると制御回路部5においてその検出が行われ、制御回路部5からモータ制御部23に停止信号が出力されることにより駆動モータ6を停止させる。測長器1においては、作業者により長尺体2の切断操作等が行われるようにする。
【0066】
測長器1においては、セット値の誤設定等の何らかの理由により長尺体2が余剰に送り出された場合に、駆動モータ切換スイッチ19をオン操作して駆動モータ6を逆回転させる。測長器1においては、エンコーダ7からマイナスの計測値検出信号が出力されることで液晶表示器15の表示が減算されるようにする。なお、測長器1においては、10キー16によりセット値を再設定して長尺体2の引戻し操作を自動で行うようにしてもよい。
【0067】
測長器1においては、上述したように断面寸法が1mm×1mm〜12mm×12mmの角形長尺体及び外径が1mm〜12mmの円形長尺体の送出量を計測することが可能である。測長器1においては、図7(A)に示すように小断面の長尺体2Aの送出量を計測する場合に、可動ローラ9がコイルスプリング25の弾性力により長尺体2を送出ローラ8に押し付けて挟持する。測長器1においては、可動ローラ9の支軸9Aを介して可動ホルダ部材31が引き下げられて上ホルダ半体部材30と下ホルダ半体部材28が突き当って構成する長尺体ホルダ27を長尺体2が嵌挿される。
【0068】
測長器1においては、図7(B)に示すように大きな断面寸法を有する長尺体2Bの送出量を計測する場合であっても、可動ローラ9がコイルスプリング25の弾性力により長尺体2を送出ローラ8に押し付けて挟持する。測長器1においては、可動ローラ9の支軸9Aがスライドガイド溝32内をやや上方へと押し上げられるが、上ホルダ半体部材30と下ホルダ半体部材28が可動ホルダ部材31の自重により突き当て状態を保持されることで長尺体ホルダ27が構成される。
【0069】
測長器1においては、小さな断面寸法を有する長尺体2A或いは大きな断面寸法を有する長尺体2Bであっても、上述したように送出ローラ8がコイルスプリング25の弾性力によりその外周面を長尺体2に圧接した状態を保持されて回転する構造である。測長器1においては、上述したように送出ローラ8の回転量から長尺体2の送出量を検出する構造であり、いずれの長尺体2A、2Bであってもスリップを生じることなく安定した状態で送出し動作が行われることによりエンコーダ7から制御回路部5に対して精密な計測値検出信号が出力される。また、測長器1においては、後述するように計測値検出信号に対して制御回路部5においてカルマンフィルタによる補正処理を行うことにより、±3%程度の誤差範囲で精密な計測を行うことが可能である。
【0070】
測長器1においては、上述したように駆動モータ6の回転軸6Aに送出ローラ8を固定するとともにこの回転軸6Aの回転量をエンコーダ7により検出するように構成したが、例えば長尺体2を駆動モータ6によらずに手動で引張って移動させる手動型として構成することも可能である。測長器1においては、送出ローラ8の支軸にエンコーダ7を設け、長尺体2を送出ローラ8と可動ローラ9で挟持した状態で引張り移動させることで計測が行われるようにする。かかる手動型測長器は、駆動モータ6やモータ制御部23等が不要となって小型、軽量化及びコスト低減を図った簡易型の測長器を構成し、長尺体2を数十メートル程度まで計測する用途として用いる場合に有効である。
【0071】
また、測長器1においては、2段表示型の液晶表示器15と10キー16等を備えて長尺体2を予め設定した所望の長さまで移動計測した時点でその送出し動作を自動的に停止させるいわゆるプリセット機能を搭載したが、かかるプリセット機能を省略した簡易型の測長器を構成するようにしてもよい。簡易型測長器は、液晶表示器が1つの表示部を有すればよくまた10キー16も不要となり小型、軽量化及びコスト低減が図られる。
【0072】
測長器1は、上述したように制御回路部5において、エンコーダ7から出力された計測値検出信号についてカルマンフィルタを用いた補正処理を行って計測値駆動信号を生成して液晶表示器15に出力する。カルマンフィルタは、ノイズが重畳した時系列的なランダム信号の入力について、直前までの情報と入力データとに基づいて最も適切なシステムの状態を推定する方法である。カルマンフィルタは、直前情報に基づく予測値と計測値とを比較し、これらの平均二乗偏差を最小とするように計測値を補正する。
【0073】
測長器1においては、上述したように長尺体2の外形仕様、すなわち摩擦係数μや円周率πに起因して送出ローラ8の回転変動が生じる。この回転変動は、現在(時間ステップk)の状態で、次の2つの変数で表される。
【0074】
【数1】

【0075】
【数2】

【0076】
カルマンフィルタによる補正処理では、時間ステップkを1ステップ進めるために、予測と更新の2つの処理を行う。予測の処理は、上記式1及び式2について、1ステップ前の推定状態から現在の推定状態を計算することで次の予測値を得る。
【0077】
【数3】

【0078】
【数4】

【0079】
更新の処理は、現在の計測値を用いて推定値を補正することにより、より正確な次の推定値を得る。
【0080】
【数5】

【0081】
【数6】

【0082】
【数7】

【0083】
【数8】

【0084】
【数9】

【0085】
カルマンフィルタによる補正処理では、モデルが正確であり上記式1、式2における時間ステップk=0の初期条件が正確であるとすれば、全ての推定値E[]が次式に示すように期待値「0」となる。
【0086】
【数10】

【0087】
【数11】

共分散は、推定値の誤差共分散として次式である。
【0088】
【数12】

【0089】
【数13】

【0090】
【数14】

【0091】
測長器1においては、初期状態で長尺体2が送出ローラ8と可動ローラ9とにより挟持されることにより、位置「0」で停止している。測長器1においては、送出ローラ8が駆動されて長尺体2の送出し動作が行われると、長尺体2の外形仕様に起因するランダムなノイズがエンコーダ7の計測値検出信号に重畳する。制御回路部5は、計測値検出信号に基づいてΔt毎に長尺体2の位置xを観測し、カルマンフィルタにより以下の補正処理を施す。なお、計測値検出信号には、上述したようにノイズが重畳している。補正処理に際しては、制御動作が不要であることからB及びUについて考慮せず、また行列F、H、R、Qについては時間変化が無いので添え字は付けない。
【0092】
長尺体2の位置と速度は、次式で示される。
【0093】
【数15】

【0094】
長尺体2には、前時間k−1と現在時間kとの間で加速度akが与えられる。加速度akは、平均「0」、標準偏差σaの正規分布である。したがって、長尺体2には、運動の第2法則より、次の条件式が与えられる。
【0095】
【数16】

【0096】
【数17】

【0097】
【数18】

また、ここで右辺の共分散は、標準偏差σaをスカラーであることを用いて次式で示される。
【0098】
【数19】

【0099】
カルマンフィルタによる補正処理では、それぞれの時刻において長尺体2の移動位置を計測し、計測誤差も平均「0」で、標準偏差σzの正規分布であると仮定すると、次の条件式を得る。
【0100】
【数20】

【0101】
式20において、Hは次式である。
【0102】
【数21】

また、Rは次式である。
【0103】
【数22】

【0104】
初期条件は、上記式1より次式と正確に分かっている。
【0105】
【数23】

また、初期条件は、上記式2より次式と正確に分かっている。
【0106】
【数24】

【0107】
カルマンフィルタによる補正処理では、上述した手順を経て、直前情報に基づく予測値とエンコーダ7から出力されるノイズを含む計測値検出信号とを比較し、これら予測値と計測値の平均二乗偏差を最小とするように計測値の補正を行う。なお、カルマンフィルタによる補正処理において、初期条件に誤差があるならば、次式となる。
【0108】
【数25】

【0109】
カルマンフィルタによる補正処理は、この場合にBが大きければ、初期条件よりも以降の計測値に重みをおいてその処理を行う。
【0110】
測長器1においては、制御回路部5においてエンコーダ7から出力される計測値検出信号に基づいて上述したカルマンフィルタによる補正処理を施してノイズ補正を行った計測値駆動信号を液晶表示器15に対して出力する。測長器1においては、これにより長尺体2の外形仕様等に起因する送出ローラ8の回転変動が生じても、長尺体2の繰出し量を精密に計測することが可能である。測長器1は、外形仕様を異にする長尺体2であっても、数十m乃至数百mの長さを±3%程度の誤差範囲で計測することが可能である。
【0111】
実施の形態として示した測長器1は、上述したように各種ケーブル等の長尺体2の送出量を計測して所定の長さで切断する使用形態を示したが、かかる使用形態に限定されないことは勿論である。測長器1は、例えば導管内に長尺体2として電源ケーブル等を導通させる際に先導体として用いる通線ロッドの繰出し量を計測するようにしてもよい。測長器1は、導管内に存在する詰まり箇所において通線ロッドが突き当たって繰り出しが停止されるまでの繰出し量を精密に計測する。測長器1は、導管内における詰まり箇所を精密に特定することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の実施の形態として示す測長器の内部構造を透視して示す斜視図である。
【図2】同測長器の長尺体非セット時の透視斜視図である。
【図3】同測長器の構成図である。
【図4】同測長器に長尺体をセットした状態の一部切欠き斜視図である。
【図5】長尺体のセット操作説明図であり、長尺体を嵌合する状態を示す。
【図6】長尺体のセット操作説明図であり、長尺体をセットして計測する状態を示す。
【図7】同測長器における長尺体の挟持動作の説明図であり、同図(A)は細径長尺体の適用例、同図(B)は太径長尺体の適用例である。
【符号の説明】
【0113】
1 測長器、2 長尺体、3 筐体、4 長尺体嵌挿溝部、5 制御回路部、6 駆動モータ、7 エンコーダ、8 送出ローラ、9 可動ローラ、10 可動ローラ作動機構、11 バッテリー、12 操作パネル、13 セット操作レバー、14 切換カム部材、15 液晶表示器、16 10キー、17 電源スイッチ、18 計測オン・オフスイッチ、19 駆動モータ切換スイッチ、20 リセットスイッチ、21 表示切換スイッチ、22 表示LED、23 モータ制御回路部、24 カムロッド、25 コイルスプリング、26 可動ローラ支持ブラケット部材、27 長尺体ホルダ、28 下ホルダ半体部材、29 結合ピン、30 上ホルダ半体部材、31 可動ホルダ部材、32 スライドガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御回路部と、
駆動モータと、
上記駆動モータの回転軸の回転量を検出して上記制御回路部に計測値検出信号を出力する回転量検出器と、
上記計測値検出信号に基づいて上記制御回路部から出力される計測値駆動信号により、長尺体の送出量を表示する表示器と、
上記駆動モータの上記回転軸に設けられて回転駆動されることにより、長尺体を長さ方向に送り出す送出ローラと、
上記送出ローラの外周部の間に上記長尺体を挟持しながら回転する可動ローラと、
上記可動ローラを上記送出ローラ側に付勢して上記長尺体の挟持状態を弾持させる弾性部材と、上記可動ローラを上記送出ローラに対して接近させる第1位置と離間させる第2位置に切換移動させる切換カム手段を有し、上記第1位置において上記送出ローラと上記可動ローラの間で上記長尺体を挟持させるとともに上記第2位置において上記送出ローラと上記可動ローラとの間に上記長尺体が嵌挿されるようにする可動ローラ作動機構と、
を備える測長器。
【請求項2】
上記制御部は、上記回転量検出器から出力される上記検出計測信号に対して上記長尺体の外形仕様に起因して生じる上記送出ローラの回転変動の蓄積誤差をカルマンフィルタにより補正することにより、上記表示器に補正された上記長尺体の送出量が表示されるようにする請求項1に記載の測長器。
【請求項3】
予め設定した上記長尺体の送出量を入力して上記制御回路部に設定値情報を出力する入力手段を備え、
上記表示器が、上記検出計測信号に基づく上記長尺体の送出量と、上記制御回路部から出力される上記設定値情報に基づく設定値駆動信号により上記設定値を表示する請求項1又は請求項2に記載の測長器。
【請求項4】
上記送出ローラと上記可動ローラが当接する領域に対向して前面部と相対する側面部に亘って開口されて上記長尺体を前面部側から嵌挿させる長尺体嵌挿溝部を設けた筐体を備える請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の測長器。
【請求項5】
上記可動ローラ作動機構が、
上記可動ローラを支持する可動ローラ支持ブラケット部材と、
下端部が上記可動ローラ支持ブラケット部材に固定されるとともに、上端部が上記筐体の天井部を貫通して突出されたカムロッドと、
上記可動ローラ支持ブラケット部材と上記筐体の天井部との間において上記カムロッドに組み付けられ、上記可動ローラ支持ブラケット部材を介して上記可動ローラを上記送出ローラ側に付勢させるコイルスプリングと、
上記カムロッドの上端部に固定され、上記カムロッドを介して上記可動ローラを上記第1位置と上記第2位置に切換移動させる切換カム部材と
を備える請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の測長器。
【請求項6】
バッテリー電源を備えて可搬型として用いられる請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の測長器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−300352(P2009−300352A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157562(P2008−157562)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(504415223)株式会社ツール・ディポ (3)
【出願人】(000162593)株式会社協和エクシオ (57)
【Fターム(参考)】