説明

測長方法および測長治具

【課題】電極間に温度差が生じる場合であっても、プラズマ放電中の電極間の距離を測長治具を用いて首尾良く測定するための技術を提供すること。
【解決手段】メス部品220、およびメス部品220に嵌挿されているオス部品210を備えている測長治具200をプラズマ放電のための第1の電極11および第2の電極12の間に配置して、プラズマ放電中の第1の電極11および第2の電極12の間の距離を測定する測長方法であって、プラズマ放電中、第2の電極12は、第1の電極11よりも高温となり、測長治具200は、オス部品210が第2の電極12に接するように配置される、測長方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ放電中の電極間の距離を測定する測長方法およびプラズマ放電中の電極間の距離を測定するための測長治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成膜処理やエッチング処理において、例えばマイクロ波や高周波を用いたプラズマCVD装置(プラズマ処理装置)が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板に薄膜を形成するプラズマCVD(plasma−enhanced chemical vapor deposition)装置が開示されている。一般的に、プラズマCVD装置は、高周波電源に接続されたカソ−ド電極と、カソ−ド電極に対向するように基板を支持するサセプタ(アノ−ド電極)とをチャンバ内に備えている。上記カソ−ド電極は、ガス導入系とも接続されており、処理ガス供給部材としても働く。プラズマCVD装置では、ガス導入系からカソ−ド電極を介して処理室内に処理ガスを供給し、両電極に高周波電圧を印加すると、カソ−ド電極とアノ−ド電極との間に発生したプラズマが処理ガスを活性化させ、この活性化された処理ガスがアノ−ド電極上の基板に到達して薄膜を形成する。
【0004】
このとき、基板上に形成される薄膜の膜厚及び膜質はプラズマ放電領域の距離、すなわちカソ−ド電極とアノ−ド電極との間の距離(以下、「ギャップ長」とも称する。)によって大きく左右される。ギャップ長を適切に調整するためには、ギャップ長を測定するための技術が必要となる。特許文献1〜4は、ギャップ長を測定する技術について開示している。
【0005】
特許文献1には、距離センサユニットを電極間に配置してギャップ長を測定する技術が記載されている。特許文献2には、高周波電力の電圧と電流との位相差によって電極間距離を検知する技術が記載されている。位相差は電極間の容量に依存し、電極間の容量は電極間距離に依存するものであるため、位相差を用いて電気的に電極間距離を知ることができる。特許文献3には、レ−ザ−を用いた距離計測計を使用することによってギャップ長を測定することが記載されている。
【0006】
但し、特許文献1に記載の技術は、接近センサからリ−ド線の引き出しが必要なため、放電安定性を損うおそれがあり、また、高周波電圧の印加中は電気信号にノイズが発生するため、プラズマ放電中の測定が困難である。また、特許文献2に記載の技術は、実測式ではないため計測精度に問題が生じ易く、また、電極間の特定部位におけるギャップ長を測定することができない。そのため、電極が傾いている場合などに対応できない。また、特許文献3に記載の技術は、複雑なレ−ザ−計測装置を使用する必要がある。
【0007】
一方、図4に示すような測長治具400を電極間に配置してギャップ長を測定することも行われている(特許文献4参照)。この方式によれば、簡易に、プラズマ放電中のギャップ長の測定が可能であり、また、電極間の特定部位におけるギャップ長を測定することもできる。
【0008】
図4(a)は測長治具400の斜視図であり、図4(b)は測長治具400の断面図である。図4に示すように、測長治具400は、中央に凹部40を有するメス部品42と、メス部品42の凹部40に嵌挿されているオス部品41とを備えている。外力43が加わった場合、オス部品41はメス部品42の凹部40に入り込むように移動し、移動した状態でその時の位置関係を保持する。
【0009】
図5は、測長治具400を使用してプラズマCVD装置500の第1の電極51および第2の電極52の間の距離を測定する様子を示した断面図である。第1の電極51は高周波発生器53に接続され、第2の電極52はグランド56に接続され、空間54にプラズマを発生させる。測長治具400は、オス部品41の上面44が第1の電極51に対向し、メス部品42の下面45が第2の電極52に接するように配置される。空間54にプラズマが発生すると、第1の電極51および第2の電極52はプラズマの熱によって変形し、測長治具400に外力55が加わる。測長治具400は、オス部品41がメス部品42の凹部40に入り込むように移動し、移動した状態でその時の位置関係を保持する。そして、測長治具400の高さ(最上面44と最下面45との間の距離L3)を測定することにより、プラズマ放電中のギャップ長を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−127822号公報(1991年5月30日公開)
【特許文献2】特開2001−244206号公報(2001年9月7日公開)
【特許文献3】特開2007−227522号公報(2007年9月6日公開)
【特許文献4】特開2000−28304号公報(2000年1月28日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したようなプラズマCVD装置を用いてプラズマ放電を行う際、下部の電極(図5の第2の電極52)が、上部の電極(図5の第1の電極51)よりも高温になる場合がある。例えば、基板の温度を調節するために、基板を載置するための下部の電極に、ヒーターが設けられ、当該下部の電極が当該ヒーターによって加熱され、上部の電極よりも高温になる場合がある。
【0012】
このとき、図4に示すような測長治具400を用いてギャップ長を測定する際、より高温な第2の電極52に接するメス部品42の方が、第1の電極51に接するオス部品41よりも熱膨張量が大きくなる。そのため、凹部40がオス部品41よりも広がり、オス部品41とメス部品42との嵌合状態が解かれ、オス部品41が、メス部品42中に脱落してしまう。それゆえ、測長治具400を使用してプラズマ放電中における電極間のギャップ長を測定することができない。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電極間に温度差が生じる場合であっても、プラズマ放電中の電極間の距離を測長治具を用いて首尾良く測定するための技術を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る測長方法は、上記課題を解決するために、第1の部品、および第1の部品に嵌挿されている第2の部品を備えている測長治具をプラズマ放電のための第1の電極および第2の電極の間に配置して、プラズマ放電中の第1の電極および第2の電極の間の距離を測定する測長方法であって、該プラズマ放電中、第2の電極は、第1の電極よりも高温となり、該測長治具は、第2の部品が第2の電極に接するように配置されることを特徴としている。
【0015】
上記の方法によれば、プラズマ放電中において、より高温な第2の電極に接する第2の部品の方が、第1の電極に接する第1の部品よりも熱膨張量が大きくなる。そのため、第1の部品の第2の部品が嵌挿されている部分が、第2の部品よりも広がることがなく、第1の部品と第2の部品との間の嵌合状態は維持される。そのため、電極間に温度差が或る場合でも、第2の部品が、第1の部品中に脱落するようなことがなく、プラズマ放電中における電極間のギャップ長を首尾良く測定することができる。
【0016】
上記測長方法では、第2の電極は、第1の電極の鉛直下方に配置されていてもよい。
【0017】
プラズマ放電のための電極の内、下方にある電極は、例えば、電極上に載置される基板等の被処理物の温度を調節するために加熱される場合がある。そのような場合であっても、上記の方法によれば、下方にある第2の電極に第2の部品が接しているので、第2の部品の方が、第1の部品よりも熱膨張量が大きくなる。よって、第1の部品と第2の部品との間の嵌合状態が維持され、プラズマ放電中における電極間のギャップ長を首尾良く測定することができる。
【0018】
上記測長方法では、第2の部品は、第2の部品が第1の部品の鉛直下方にある状態で上記測長治具を支持するための脚部を備えていることが好ましい。
【0019】
上記の方法によれば、第2の部品が脚部を備えていることにより、第2の電極が第1の電極の鉛直下方に配置されている場合であっても、首尾良く、第2の部品と第2の電極とが接するように上記測長治具を第2の電極上に載置することができる。
【0020】
上記測長方法では、上記測長治具は、露出面が絶縁材料によって形成されていることが好ましい。
【0021】
上記の方法によれば、プラズマ放電中に異常放電などを起こす恐れがなく、より安全に測定することができる。
【0022】
なお、上記プラズマ放電中、第2の電極はヒーターによって加熱されていてもよい。また、第1の電極および第2の電極は、プラズマCVD装置の対向電極を構成していてもよい。
【0023】
本発明に係る測長治具は、第1の部品、および第1の部品に嵌挿されている第2の部品を備え、プラズマ放電のための第1の電極および第2の電極の間に配置して、プラズマ放電中の第1の電極および第2の電極の間の距離を測定するための測長治具であって、第2の部品が、第2の部品が第1の部品の鉛直下方にある状態で該測長治具を支持するための脚部を備えていることを特徴としている。
【0024】
上記測長治具は、第2の部品が上記脚部を備えているため、本発明に係る測長方法に好適に使用することができる。
【0025】
上記測長治具は、露出面が絶縁材料によって形成されていることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、プラズマ放電中に異常放電などを起こす恐れがなく、より安全に測定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る測長方法は、第1の部品、および第1の部品に嵌挿されている第2の部品を備えている測長治具をプラズマ放電のための第1の電極および第2の電極の間に配置して、プラズマ放電中の第1の電極および第2の電極の間の距離を測定する測長方法であって、該プラズマ放電中、第2の電極は、第1の電極よりも高温となり、該測長治具は、第2の部品が第2の電極に接するように配置されるため、電極間に温度差が或る場合でも、第2の部品が、第1の部品中に脱落するようなことがなく、プラズマ放電中における電極間のギャップ長を首尾良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る測長方法を実施中のプラズマCVD装置の様子を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る測長治具の構造を示す図であり、(a)は本発明の一実施形態に係る測長治具の斜視図を示し、(b)は本発明の一実施形態に係る測長治具の断面図を示す。
【図3】本発明の一実施形態に係る測長方法の各段階の様子を示す断面図であり、(a)はプラズマ放電前の様子を示し、(b)はプラズマ放電中の様子を示し、(c)はプラズマ放電後の様子を示す。
【図4】従来技術に係る測長治具の構造を示す図であり、(a)は従来技術に係る測長治具の斜視図を示し、(b)は従来技術に係る測長治具の断面図を示す。
【図5】従来技術に係る測長治具を使用してプラズマCVD測定装置におけるギャップ長を測定する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態について、図1〜図3を使用して説明すると以下の通りである。
【0030】
(プラズマCVD装置100の構成)
まず、本実施形態においてギャップ長を測定する対象であるプラズマCVD装置100の概略的な構成について図1を参照して説明する。図1に示すように、プラズマCVD装置100は、被処理物である基板を収容する密封可能な処理容器(処理室)13と、処理容器13内に配置され、第1の電極11(カソード電極)と第2の電極12(アノード電極)とから構成されるカソード−アノード電極対を備えている。
【0031】
処理容器13は、例えばステンレス鋼からなり、内部を真空状態にできる構成を有している。処理容器13の内壁面には、例えばアルミナなどの保護膜が被覆されており、処理容器13は接地線14により電気的に接地されている。
【0032】
処理容器13の底部には排気管(図示しない)が設けられており、排気管の先には真空ポンプなどの排気装置が連結されている。排気装置は処理容器13内の雰囲気を適宜減圧でき、例えば、10Pa以上、6000Pa以下に設定することができる。
【0033】
カソード−アノード電極対では、第1の電極11および第2の電極12の各電極は板状であって、互いに対向するように配置されている。第1の電極11と第2の電極12との間には基板が配置される。基板は、プラズマCVD装置100が処理を行う対象であれば特に限られず、例えばガラス基板が挙げられる。
【0034】
第2の電極12は、基板を上に載置するための載置台となり、対をなす第1の電極11の下側に配置される。第2の電極12は、例えばステンレス鋼、アルミニウム合金、カーボンなどの、導電性および耐熱性を備えた材料で作成される。第2の電極12の寸法は、基板の寸法に合わせて適当な値に設計されればよい。
【0035】
また、第2の電極12はヒーターや冷却設備等の温度安定化手段を内蔵しており、この温度安定化手段によってその温度を室温(例えば、25℃)〜300℃に温度制御される。このため、第2の電極12上の基板では、発生したプラズマの熱による温度の上昇が制御され、均一な温度で膜形成が行われる。
【0036】
一方、第1の電極11は、対をなす第2の電極12の上側に配置され、ステンレス鋼やアルミニウム合金などの材料から作成される。第1の電極11の寸法は、第2の電極12と同様に、基板の寸法に合わせて適当な値に設計されればよい。
【0037】
第1の電極11は、外部のプラズマ励起電源15に接続されている。プラズマ励起電源15は、例えばRF1MHz〜60MHzで基板の寸法に合わせて電力密度が50W/m〜5000W/mとなる出力のものを使用する。
【0038】
また、第1の電極11は、処理ガスを供給するガス供給系(図示しない)に接続されている。処理ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH)ガス等を使用することができる。ガス供給系から第1の電極11に導入された処理ガスは、第1の電極11の底面から第2の電極12上の基板に向かって処理容器13内に供給される。
【0039】
第1の電極11および第2の電極12の各々は、その両端を電極保持部17a、17b、17c、17dによって支えられている。よって、第1の電極11および第2の電極12は、互いに対向する面およびその反対側の面が、処理容器13内の気相に露出する構造をとっている。
【0040】
以上のように構成されたプラズマCVD装置100の稼働の際には、例えば以下のような動作が行われる。
【0041】
まず基板が処理容器13内に搬入され、第2の電極12上に載置される。次いで、排気装置が作動し、排気管から排気が行われて処理容器13内が減圧される。また、ヒーターが作動し、第2の電極12を通して基板を所望の温度に保持する。
【0042】
次いで、ガス供給系から供給された成膜用の処理ガスが、第1の電極11を介して、第1の電極11と第2の電極12との間隙であるプラズマ放電領域16に充填される。また、プラズマ励起電源15の作動により、第1の電極11と第2の電極12との間に高周波電力が印加されることによって、プラズマ放電領域16に電界が発生し、処理ガスがプラズマ化される。処理ガスがプラズマ化の際に発生した活性種によって基板上に成膜処理がなされる。
【0043】
所定時間の成膜処理が行われた後、処理容器13内への処理ガスの供給が停止し、またプラズマ励起電源15が停止し、基板が処理容器13内から搬出される。
【0044】
以上の一連の工程によって、プラズマCVD装置100による基板の成膜処理が終了する。
【0045】
なお、図1は、処理容器13内に1つのカソード−アノード電極対を備えるプラズマCVD装置100を示しているが、本発明はこれに限られず、複数のカソード−アノード電極対を備えるマルチ電極構造のプラズマCVD装置であっても構わない。
【0046】
次に、本実施形態に係る測長方法について説明する。プラズマCVD装置100において、所定の位置を基準として、第1の電極11の位置は電極保持部17aおよび17b、第2の電極12の位置は電極保持部17cおよび17dによって調整することができる。しかし、プラズマ放電中において、第1の電極11および第2の電極12に対して、プラズマ放電領域16(プラズマ)側から、熱が伝達するため、第1の電極11および第2の電極12の放電面(プラズマ放電領域16側の面)側の熱膨張率が大きくなる。そのため、第1の電極11および第2の電極12は、プラズマ放電領域16(プラズマ)側に変形し、第1の電極11と、第2の電極12との間の距離(ギャップ長)が狭くなる。それゆえ、プラズマCVD装置100を適切なギャップ長において稼働するためには、プラズマ放電中にギャップ長を首尾良く測定することができる測長方法が必要となる。本実施形態に係る測長方法では、上述したようなプラズマCVD装置100におけるプラズマ放電中のギャップ長を測定するため、図1に示すように、第1の電極11と、第2の電極12との間に、測長治具200を配置することを行う。まず、測長治具200の構成について詳細に説明する。
【0047】
(測長治具200の構成)
図2を用いて、測長治具200の構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る測長治具200の構造を示す図である。図2(a)は測長治具200の斜視図であり、図2(b)は測長治具200の断面図である。図2に示すように、測長治具200は、オス部品210(第2の部品)、およびメス部品220(第1の部品)を備えている。
【0048】
オス部品210は、メス部品に嵌挿される凸部21と、オス部品210を下にして直立姿勢を保つための脚部22とを備えている。脚部22は、オス部品210がメス部品220の鉛直下方にある状態で測長治具200を支持し得るようになっていればどのような形状を有していてもよいが、例えば、図2に示すように、底面の面積が、凸部21の水平方向における断面積よりも広いことが好ましい。
【0049】
メス部品220は、凸部21が嵌挿される凹部20を備えており、凸部21が、凹部20に嵌合し、挿入されていることによって、メス部品220とオス部品210とが外力によって相対移動され得る程度に締結されている。
【0050】
言い換えれば、メス部品220と、オス部品210とは、凹部20と凸部21とを嵌合させた状態において、外力のない時は相互の位置関係を保持でき、外力が加わることにより凸部21は凹部20に入り込むように移動し、移動した状態でその時の位置関係を保持できるように構成されている。
【0051】
測長治具200は、プラズマ放電中に変形しない材料で形成されていればよく、電極の温度に応じた耐熱性を有する材料を適宜選択すればよい。耐熱性を有する材料としては、これらに限定されるものではないが、例えば、電極温度が150℃以下の場合は、PEEK樹脂等を用い得、電極温度が200℃前後の場合は、テフロン(登録商標、PTFE)等を用い得、電極温度が300℃前後の場合は、PBI樹脂、セラゾール(登録商標)、べスペル(登録商標)等のエンジニアリングプラスチック等を用い得、電極温度が400℃以上の高温となる場合には、アルミナ、マセライト(登録商標)、ホトベール(登録商標)等を用い得る。
【0052】
特に、測長治具200の表面に露出している部分(露出面)は、上述したような絶縁材料で形成されていることが好ましい。例えば、メス部品220と、オス部品210とが絶縁材料によって形成されていてもよいし、上記露出面が、絶縁材料の膜によって被覆されていてもよい。このように、測長治具200の露出面が絶縁材料によって形成されていることにより、プラズマ放電中に、測長治具200が原因の異常放電を抑制することができ、より安全に測長することができる。
【0053】
次に、図3を用いて、本実施形態に係る測長方法の各段階について説明する。図3は、本実施形態に係る測長方法の各段階の様子を示した断面図である。図3(a)はプラズマ放電前の様子を示し、図3(b)はプラズマ放電中の様子を示し、図3(c)はプラズマ放電後の様子を示す。
【0054】
まず、プラズマ放電前に、図3(a)に示すように、第1の電極11と第2の電極12との間に測長治具200を配置する。測長治具200の配置は、第2の電極12上に測長治具200を載置したのちに、その上に第1の電極11を配置してもよいし、予め互いに対向するように配置された第1の電極11と第2の電極12との間に測長治具200を挿入してもよい。このとき、オス部品210が第2の電極12に接するように測長治具200を配置する。上述したように、オス部品210は、脚部22を備えているため、容易に、オス部品210がメス部品220の鉛直下方にある状態で測長治具200を第2の電極12上に配置することができる。
【0055】
なおこのとき、メス部品220は、第1の電極11に対向していればよいが、図3(a)に示すように、第1の電極11に接していてもよい。測長治具200の高さは、このときL1となる。
【0056】
次に、プラズマ励起電源15によって第1の電極11と第2の電極12との間に電圧を印加して、プラズマ放電領域16にプラズマ放電させる。図3(b)は、プラズマ放電中の様子を示した図である。このとき、ヒーターによって第2の電極12を所定の温度に加熱してもよい。
【0057】
図3(b)に示すように、プラズマの熱およびヒーターの熱を受けて、第1の電極11および第2の電極12は変形し、ギャップ長がL2’になる。このとき、外力10が第1の電極11および第2の電極12から測長治具200に加わり、オス部品の凸部21はメス部品の凹部20に入り込むように移動する。このとき、上述したように、第2の電極12の方が、第1の電極11よりも高温になっていたとしても、第2の電極12に接するオス部品210の方が、第1の電極11に接するメス部品220よりも熱膨張量が大きくなる。そのため、凹部20が、凸部21よりも広がることがなく、メス部品220とオス部品210との間の嵌合状態は維持される。その結果、測長治具200の最上面から最下面までの高さは、L2’と実質的に同じ長さのL2に維持される。
【0058】
所定時間のプラズマ放電が終了し、第2の電極12の温度が常温に戻ると、図3(c)に示すように、第1の電極11と第2の電極12は、元の形状に復元する。しかし、図3(c)に示すように、測長治具200の高さはL2に維持される。それゆえ、測長治具200の高さを測定することにより、プラズマ放電中の第1の電極11と第2の電極12との間の距離(ギャップ長)を首尾良く測定することができる。なお、測長治具200の高さを測定する代わりに、オス部品210のメス部品220に対する挿入深さを測定して、その結果に基づいてギャップ長を算出してもよい。
【0059】
測長治具200の高さまたは上記挿入深さの測定は、例えば、プラズマ放電およびヒーターによる加熱を停止したのちに、プラズマCVD装置100から測長治具200を取り出した後に測定してもよいが、特に限定されず、測長治具200の高さまたは上記挿入深さを首尾良く測定し得る方法を用いればよい。
【0060】
なお、一つの局面において、測長治具200を第2の電極12上に配置する際、測長治具200を3つ以上、同じ直線上に位置しないように配置してもよい。これにより、プラズマ放電中における第1の電極11と第2の電極12との間の平行度を知ることができる。平行でない場合は、得られた結果に応じて、第1の電極11および第2の電極12の位置を調整することによって、平行に近づけることができる。
【0061】
(実施例)
図1に示すようなプラズマCVD装置100におけるプラズマ放電中のギャップ長の最低値(ミニマムギャップ)を測定した。なお、第2の電極12としては、ヒーターが設置されている電極を用いた。
【0062】
まず、第1の電極11と、第2の電極12との間のギャップ長を測定したい箇所に、測長治具200を配置した。測長治具200は、オス部品210が第2の電極12に接するように配置した。
【0063】
続いて、第2の電極12に埋め込まれたヒーターを200℃に設定した。その後、実際のプロセスを実施する際に必要なプラズマを生成し、所望の時間プラズマ放電を継続した。このとき、第1の電極11および第2の電極12は、プラズマからの入熱により、ギャップ長が狭くなる方向に変形した。
【0064】
プラズマ放電を止め、ヒーターを停止した状態において、プラズマCVD装置100内に配置した測長治具200を取り出し、測長治具200の高さを計測した。測長治具200は、電極によりつぶされた後の高さ(状態)を保持しているので、以上により、ミニマムギャップを確認できた。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種種の変更が可能である。すなわち、開示されたそれぞれの技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、例えば薄膜形成を行うプラズマCVD装置において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0067】
10 外力
11 第1の電極
12 第2の電極
13 処理容器
14 接地線
15 プラズマ励起電源
16 プラズマ放電領域
17a、17b、17c、17d 電極保持部
20 凹部
21 凸部
22 脚部
100 プラズマCVD装置
200 測長治具
210 オス部品(第2の部品)
220 メス部品(第1の部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部品、および第1の部品に嵌挿されている第2の部品を備えている測長治具をプラズマ放電のための第1の電極および第2の電極の間に配置して、プラズマ放電中の第1の電極および第2の電極の間の距離を測定する測長方法であって、
該プラズマ放電中、第2の電極は、第1の電極よりも高温となり、
該測長治具は、第2の部品が第2の電極に接するように配置されることを特徴とする測長方法。
【請求項2】
第2の電極は、第1の電極の鉛直下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の測長方法。
【請求項3】
第2の部品は、第2の部品が第1の部品の鉛直下方にある状態で上記測長治具を支持するための脚部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の測長方法。
【請求項4】
上記、第2の電極はヒーターによって加熱されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の測長方法。
【請求項5】
上記測長治具は、露出面が絶縁材料によって形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の測長方法。
【請求項6】
第1の電極および第2の電極は、プラズマCVD装置の対向電極を構成していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の測長方法。
【請求項7】
第1の部品、および第1の部品に嵌挿されている第2の部品を備え、プラズマ放電のための第1の電極および第2の電極の間に配置して、プラズマ放電中の第1の電極および第2の電極の間の距離を測定するための測長治具であって、
第2の部品が、第1の部品の鉛直下方に第2の部品がある状態で該測長治具を支持するための脚部を備えていることを特徴とする測長治具。
【請求項8】
露出面が絶縁材料によって形成されていることを特徴とする請求項7に記載の測長治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7915(P2012−7915A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142013(P2010−142013)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】