説明

湛水直播機

【課題】圃場から飛散する泥で動力伝達部が汚れることを防止することができる湛水直播機を提供することを課題とする。
【解決手段】圃場に水稲の種子を直接播くものであり、種子を繰出す繰出し部42を備える播種装置40と、圃場に溝を切る作溝器50と、を具備する、湛水直播機30であって、播種装置40は、繰出し部42に種子を繰出す動作をさせる動力が動力伝達部35を介して伝達されるように構成され、作溝器50は、動力伝達部35の下方に作溝器50の作溝板51が位置するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湛水直播機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場に水稲の種子を直接播くものであり、種子を繰出す繰出し部を備える播種装置を具備する、湛水直播機に関する技術は、公知となっている(特許文献1参照)。
このような湛水直播機には、動力伝達部を介して動力(例えば、エンジンからの動力)が播種装置の繰出し部に伝達することによって、当該繰出し部が種子を繰出す動作をするように構成されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−148911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような湛水直播機では、播種作業時に圃場から泥が飛散し、その泥によって動力伝達部が汚れる場合がある。また、このように泥が飛散することは、動力伝達部が汚れるばかりでなく、泥が噛み込んで播種装置が故障する(播種装置の動作不良が発生する)一因となる。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、圃場から飛散する泥で動力伝達部が汚れることを防止することができる湛水直播機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、圃場に水稲の種子を直接播くものであり、前記種子を繰出す繰出し部を備える播種装置と、前記圃場に溝を切る作溝器と、を具備する、湛水直播機であって、前記播種装置は、前記繰出し部に種子を繰出す動作をさせる動力が動力伝達部を介して伝達されるように構成され、前記作溝器は、前記動力伝達部の下方に前記作溝器の作溝板が位置するように構成されるものである。
【0008】
請求項2においては、前記播種装置は、複数台配置され、前記動力伝達部は、前記複数台の播種装置のうち隣接する二台の播種装置間に形成される空間に配置されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
即ち、請求項1に係る発明によれば、圃場から飛散する泥で動力伝達部が汚れることを防止することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、湛水直播機が大型化することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る湛水直播機が装着される走行機体の全体的な構成を示した側面図。
【図2】本発明の実施形態に係る湛水直播機を示した背面図。
【図3】同じく平面模式図。
【図4】同じく側面図。
【図5】同じく側面図。
【図6】本発明の実施形態に係る湛水直播機における作溝器の作溝板を示した正面図。
【図7】同じく平面図。
【図8】同じく側面図。
【図9】本発明の実施形態に係る湛水直播機を示した側面図。
【図10】同じく背面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態に係る湛水直播機30について、図1から図10を用いて説明する。
【0014】
まず、湛水直播機30が装着された走行機体1の全体的な構成について説明する。
走行機体1は、図1に示すように、走行部10と昇降リンク機構20とを具備し、走行機体1の後部に昇降リンク機構20を介して湛水直播機30が装着される。また、走行機体1における走行部10の後部上には、施肥機17が搭載される。湛水直播機30の後部上に薬剤散布装置16が搭載される。
【0015】
走行機体1の走行部10では、エンジン2が機体の前部に設けられて、ボンネット4により被覆される。ミッションケースが機体の前部に支持されて、エンジン2の後下方に配置される。
【0016】
フロントアクスルケース5が機体の前部に支持され、前車輪6が当該フロントアクスルケース5の左右両側に支承される。リアアクスルケース7が機体の後部に支持され、後車輪8が当該リアアクスルケース7の左右両側に支承される。
【0017】
そして、エンジン2の動力が前記ミッションケースを介して左右の前車輪6と左右の後車輪8とにそれぞれ伝達されて、これらの前車輪6および後車輪8が回転駆動するように構成される。これにより、走行機体1が前進又は後進走行可能とされる。
【0018】
走行部10において、機体の前後中途部に運転操作装置11が設けられる。運転操作装置11の前部には、操向操作用の環状の操向ハンドル12、各種操作ペダル13、ダッシュボード14などが配置される。運転操作装置11の後部には、運転席15が操向ハンドル12の後方に位置するように配置される。
【0019】
ダッシュボード14の上には、操向ハンドル12に加えて、各種の操作具や表示装置が配置される。これらの操作具、操向ハンドル12、各種操作ペダル13等によって、走行部10等の操作を行うことが可能とされる。
【0020】
機体の後部には、昇降リンク機構20が具備される。昇降リンク機構20は、左右一対の上リンク21・21、左右一対の下リンク22・22、回転アーム25、及び油圧シリンダ26等を備える。
【0021】
一対の上リンク21・21は、左右方向に間隔を空けて相互に平行に設けられる。上リンク21・21の一端部(前端部)は、軸部材23を支点として上下方向に回転可能に機体後部に支持される。上リンク21・21の他端部(後端部)は、湛水直播機30の前端に取付けられる。
一対の下リンク22・22は、左右方向に間隔を空けて相互に平行に設けられる。下リンク22・22の一端部(前端部)は、軸部材24を支点として上下方向に回転可能に機体後部に支持される。下リンク22・22の他端部(後端部)は、湛水直播機30の前端に取付けられる。
【0022】
回転アーム25は棒状の部材であり、その一端部(下端部)は下リンク22・22の間に固定される。
油圧シリンダ26は、機体後部に装着される湛水直播機30を昇降させるためのアクチュエータである。油圧シリンダ26の一端部は、回転アーム25の他端部(上端部)に連結される。油圧シリンダ26の他端部は、機体に連結される。
そして、走行機体1は、油圧シリンダ26を伸縮させることにより、回転アーム25、上リンク21・21、および、下リンク22・22、を回動させて、湛水直播機30を昇降させるように構成される。
【0023】
湛水直播機30は、水を湛えた状態の圃場(水田)に水稲の種子を直接播くものであり、図1乃至図3に示すように、播種フレームと、播種フレームに取付けられるフロート31と、マーカー32と、播種装置40と、第一伝達軸33と、第二伝達軸34と、作溝器50と、を具備する。
【0024】
湛水直播機30のフロート31は、センターフロートとサイドフロート等からなり、泥中に沈まないように播種装置40を支持する。湛水直播機30のマーカー32は、播種フレームの左右両側に上下回動可能に支持され、枕地で回行して次の条の播種をおこなう時の目印を圃場上に付けるものである。
【0025】
湛水直播機30の播種装置40は、所定の間隔を空けて左右方向に並べて複数台配置される。本実施形態では、湛水直播機30の播種装置40は、左方に二台配置され、右方に二台配置される。なお、湛水直播機30の播種装置40は、後述する繰出し部42が合計8台備えられて、8条播きの構成とされる。但し、繰出し部42が備えられる台数はこれに限定しない。
湛水直播機30の播種装置40は、図2乃至図4に示すように、種子ホッパ41と、二つの繰出し部42・42と、二つの筒体43・43と、を備え、繰出し部42・42によって繰出された種子を筒体43・43の下端の開口から排出するように構成される。
【0026】
湛水直播機30における播種装置40の種子ホッパ41は、種子が収容されるものであり、その下方部の左方の下面および下方部の右方の下面からそれぞれ下方に突出して、二股状に分岐するように形成される。播種装置40の種子ホッパ41は、前記下方に突出するそれぞれの部分が下方にいくに従ってそれぞれ縮径(縮小)されるように形成される。
湛水直播機30の播種装置40は、前記種子ホッパ41の下方部における左方および右方の下方に突出する部分のそれぞれの下端に、繰出し部42・42がそれぞれ配置され、当該繰出し部42・42のそれぞれの下端に筒体43・43が下方に突出するようにそれぞれ設けられて構成される。
湛水直播機30における播種装置40の繰出し部42は、種子ホッパ41に収納された種子を繰出すものであり、筒状の繰出ケース内に、目皿駆動軸42a、目皿、および、規制円板等が収納されて構成される。
湛水直播機30における播種装置40の繰出し部42の目皿駆動軸42aは、繰出ケースの軸心方向に上方から下方へ挿入される。播種装置40の繰出し部42の目皿駆動軸42aの下端には、目皿が固定される。播種装置40の繰出し部42の目皿は、外周に沿って所定間隔毎に複数の目皿孔が開口されて構成される。
そして、湛水直播機30における播種装置40の繰出し部42では、その目皿駆動軸42aが回転して当該目皿駆動軸42aに固定された目皿が回転することによって、当該目皿の目皿孔に収納された種子が規制円板に開口した落下孔から落下する。
このようにして、湛水直播機30における播種装置40の繰出し部42は、目皿の目皿孔に収納された種子を繰出す動作をするように構成される。
【0027】
湛水直播機30の第一伝達軸33は、第二伝達軸34を駆動させるものである。
湛水直播機30の第一伝達軸33は、ミッションケースに入力されたエンジン2からの動力が走行部10の後部に設けられたPTO軸3等を介して伝達され、当該動力を第二伝達軸34に伝達するように構成される。
湛水直播機30の第一伝達軸33と第二伝達軸34は、播種フレームの前上部に、左右水平方向に支持される。湛水直播機30の第一伝達軸33は、左方の二台の播種装置40・40間から右方の二台の播種装置40・40間に亘るように横設される。湛水直播機30の第一伝達軸33は、その軸心方向に対して周方向に回転するように構成される。
湛水直播機30の第一伝達軸33は、その左右中央部がギアケース36内に収納される。湛水直播機30では、ギアケース36内から前方に突出するように入力軸37が配置される。また、湛水直播機30の入力軸37は、ユニバーサルジョイントや伝動軸等を介してPTO軸3と連動連結される。
そして、湛水直播機30は、ギアケース36内において入力軸37のベベルギアと第一伝達軸33のベベルギアとが噛合されて、PTO軸3、ユニバーサルジョイント、および、伝動軸等を介して、エンジン2からの動力が、第一伝達軸33に伝達されるように構成される。
【0028】
湛水直播機30の第二伝達軸34は、播種装置40における各繰出し部42・42の各目皿駆動軸42a・42aを駆動させるものである。
湛水直播機30の第二伝達軸34は、左方と右方とにそれぞれ配置される。湛水直播機30の左方の第二伝達軸34と右方の第二伝達軸34とは、同一軸心上に配置される。
湛水直播機30の左方の第二伝達軸34は、左方における二台の播種装置40・40の繰出し部42・42・42・42(目皿駆動軸42a・42a・42a)に、前記第一伝達軸33から伝達された動力を伝達するように構成される。湛水直播機30の右方の第二伝達軸34は、右方における二台の播種装置40・40の繰出し部42・42・42・42(目皿駆動軸42a・42a・42a)に、前記第一伝達軸33から伝達された動力を伝達するように構成される。
【0029】
湛水直播機30の左方の第二伝達軸34は、第一伝達軸33よりも後方に配置されるとともに、その軸心方向が第一伝達軸33の軸心方向と平行になるように配置される。湛水直播機30左方の第二伝達軸34は、左方の二台の播種装置40・40におけるそれぞれの繰出し部42・42・42・42のケース内を貫通するように横設される。
湛水直播機30の左方の第二伝達軸34は、その軸心方向に対して周方向に回転するように構成される。そして、湛水直播機30の左方の第二伝達軸34が回転することによって、左方における二台の播種装置40・40の繰出し部42・42・42・42の目皿駆動軸42a・42a・42aが回転するように構成される。
なお、湛水直播機30の右方の第二伝達軸34は、左方の第二伝達軸34と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0030】
湛水直播機30の作溝器50は、支持杆55と支持ブラケット56と作溝板51と支持棒52と付勢バネ57とを備え、作溝板51の下面を圃場面に押付けた状態で走行機体1が走行することにより圃場に溝(断面略V字状の溝)を切るものである。
湛水直播機30の作溝器50は、湛水直播機30の下部に配置される。湛水直播機30の作溝器50は、左右それぞれに配置される動力伝達部35・35の近傍にそれぞれ配置される。湛水直播機30の作溝器50は、作溝器50の作溝板51が動力伝達部35の下方に位置するように構成される。
【0031】
作溝器50の支持杆55は上下方向に配設される。作溝器50の支持杆55は、上下高さ調節可能に、その上部が播種フレームに取付けられて構成される。
作溝器50の支持ブラケット56は、左右二枚の板材で構成される。作溝器50の支持ブラケット56の二枚の板材の間の上前部には、支持杆55の下端が固定される。
作溝器50の支持ブラケット56の上前後中途部には、支持棒52の前端が支持軸52aにより枢支される。作溝器50の支持棒52は、支持軸52aを中心に上下方向に回動自在に構成される。作溝器50の支持棒52の後端部には作溝板51が固定される。
【0032】
湛水直播機30における作溝器50の作業姿勢時(作溝器50による作溝作業時)には、作溝板51および支持棒52を下方(作溝器50の作溝板51を圃場に近接する方向)に回動させて、その作溝板51の下面を圃場に押付けるようにする。湛水直播機30の作溝器50は、作溝板51および支持棒52を下方に回動させた状態(作溝器50の作業姿勢時)においても、作溝板51が動力伝達部35の下方に位置するように構成される。
作溝器50の非作業姿勢時には、作溝板51および支持棒52を上方(作溝器50の作溝板51を圃場に離間する方向)に回動させた状態にする(図5参照)。
【0033】
作溝器50の付勢バネ57はねじりバネで構成され、その中央部が支持軸52aに支持され、その一端が支持ブラケット56の前部より側方に突出した掛止ピン57aに掛止され、その他端が支持棒の中途部より突出した掛止ピン57bに掛止される。このようにして、作溝器50の作溝板51および支持棒52は、作溝板51および支持棒52が下方へ回動するように付勢バネ57によって付勢される。
作溝器50の支持ブラケット56の後部には、ストッパピン58が挿入可能なピン孔56a・56bが上下に開口される。
作溝器50の作業姿勢時には、下方のピン孔56bにストッパピン58を挿入して、前記下方に付勢される支持棒52を当該ストッパピン58で下方から支えるような状態とする。作溝器50の非作業姿勢時には、上方のピン孔56aにストッパピン58を挿入して、前記下方に付勢される支持棒52を当該ストッパピン58で下方から支えるような状態とする。
【0034】
ここで、湛水直播機30の動力伝達部35は、播種装置40の繰出し部42に種子を繰出す動作をさせる動力が伝達する部分である。より詳細には、湛水直播機30の動力伝達部35は、第一伝達軸33からの動力が、第二伝達軸34に伝達する部分である。湛水直播機30の動力伝達部35は、左方と右方とにそれぞれ配置される。
湛水直播機30の左方の動力伝達部35は、第一伝達軸33の左端部に設けられる平ギア33aと左方の第二伝達軸34の左右中央に設けられる平ギア34aとが噛合されて、第一伝達軸33の回転動力が第二伝達軸34に伝達するように構成される。湛水直播機30の右方の動力伝達部35は、第一伝達軸33の右端部に設けられる平ギア33aと右方の第二伝達軸34の左右中央に設けられる平ギア34aとが噛合されて、第一伝達軸33の回転動力が第二伝達軸34・34に伝達するように構成される。
そして、湛水直播機30では、第一伝達軸33が回転すると、第一伝達軸33の回転方向と反対方向に第二伝達軸34が回転する。前記第二伝達軸34が回転すると、播種装置40における繰出し部42の目皿駆動軸42aが回転する。
このようにして、湛水直播機30の動力伝達部35は、エンジン2からの動力が、第一伝達軸33から第二伝達軸34に伝達して、播種装置40における繰出し部42の目皿駆動軸42aに伝達するように構成される。
そして、湛水直播機30では、エンジン2からの動力が第一伝達軸33から動力伝達部35を介して伝達して、第二伝達軸34から繰出し部42の目皿駆動軸42aに伝達することによって、播種装置40の繰出し部42が種子を繰出す動作をする。
以上のようにして、湛水直播機30は、播種装置40の繰出し部42に種子を繰出す動作をさせる動力が動力伝達部35を介して伝達されるように構成される。
なお、湛水直播機30は、第一伝達軸33の平ギア33aの歯数を第二伝達軸34の平ギア34aの歯数よりも少なくして、第一伝達軸33から第二伝達軸34に減速して動力を伝達するように構成される。
【0035】
このように、湛水直播機30の作溝器50は、作溝器50の作溝板51が動力伝達部35の下方に位置するように構成される。
このため、湛水直播機30では、圃場から飛散する泥を作溝器50の作溝板51によって遮断するようにして、当該泥が動力伝達部35の方向に飛散することを防止することができる。
したがって、湛水直播機30では、圃場から飛散する泥で動力伝達部35が汚れることを防止することができる。
【0036】
また、湛水直播機30は、作溝器50の作業姿勢時に、作溝器50の作溝板51が動力伝達部35の下方に位置するように構成される。
つまり、湛水直播機30における作溝器50の作業姿勢時に、作溝器50の作溝板51は、圃場における作溝器50の作溝板51によって作業(作溝)される部分と動力伝達部35との間に位置する。
このため、湛水直播機30における作溝器50の作業姿勢時に、作溝器50によって作業されることで圃場から飛散する泥が動力伝達部35の方向に飛散することを抑制することができる。
【0037】
湛水直播機30における作溝器50の作溝板51は、図6乃至図8に示すように、平板状の部材を正面視で略V字状に形成するようにして構成される。作溝器50の作溝板51は、上方、前方、および、後方が開口するとともに、前端から後端に亘って左右中央部が下方に突出するように形成される。作溝器50の作溝板51の中央部の谷部の前部には、支持棒52の後部が固定される。
作溝器50の作溝板51は、左右上端部のそれぞれに突出部53L・53Rを有する。
作溝器50における作溝板51の左方の突出部53Lは、上端から左上方に突出するように形成される。作溝器50における作溝板51の右方の突出部53Rは、上端から右上方に突出するように形成される。作溝器50における作溝板51の左前上部および右前上部は、前下後上に斜めに切欠かれるようにそれぞれ形成される。
作溝器50の作溝板51は、その左方の突出部53Lの左端から右方の突出部53Rの右端までの幅(左右方向の幅)が、動力伝達部35の左右方向の幅に比べて大きく構成される。
【0038】
湛水直播機30における作溝器50の作溝板51は、このように構成される突出部53L・53Rを有するため、作溝器50(作溝板51)によって作られる溝の両側の盛上がる部分を作溝板51の突出部53L・53Rで押さえるようにするとともに、圃場から飛散する泥を作溝板51の突出部53L・53Rによって遮断するようにして、当該泥が動力伝達部35の方向に飛散することをより確実に防止することができる。
よって、湛水直播機30では、圃場から飛散する泥で動力伝達部35が汚れることをより確実に防止することができる。
【0039】
ここで、湛水直播機30の第二伝達軸34は、図2または図3に示すように、左方第二伝達軸34Lと右方第二伝達軸34Rとで構成される。湛水直播機30の左方第二伝達軸34Lは、平ギア34aの左方に配置される。湛水直播機30の右方第二伝達軸34Rは、平ギア34aの右方に配置される。
また、湛水直播機30における平ギア34aの左方の近傍と右方の近傍とには、それぞれクラッチ38L・38Rが配置される。湛水直播機30における左方のクラッチ38Lは、当該左方のクラッチ38Lが入切されることによって、第一伝達軸33からの動力が左方第二伝達軸34Lに伝達/遮断されるように構成される。湛水直播機30における右方のクラッチ38Rは、当該右方のクラッチ38Rが入切されることによって、第一伝達軸33からの動力が右方第二伝達軸34Rに伝達/遮断されるように構成される。
このようにして、湛水直播機30は、左方または右方に配置される二台の播種装置40・40の繰出し部42・42・42・42に種子を繰出す動作をさせること、当該二台の播種装置40・40の繰出し部42・42・42・42に種子を繰出す動作を停止させること、または、当該二台の播種装置40・40のうち一方の播種装置40の繰出し部42・42のみに種子を繰出す動作をさせること、を可能に構成される。
そして、前記播種作業時に圃場から泥が飛散し、その泥によって湛水直播機30のクラッチ38L・38Rが汚れる場合がある。このように泥が飛散することは、湛水直播機30のクラッチ38L・38Rの入切の動作不良が発生する一因となる。
【0040】
湛水直播機30の作溝器50は、作溝器50の作溝板51がクラッチ38L・38Rの下方に位置するように構成される。
このため、湛水直播機30では、作溝器50の作溝板51によって、圃場から飛散する泥を作溝器50の作溝板51によって遮断するようにして、当該泥がクラッチ38L・38Rの方向に飛散することを防止することができる。
したがって、湛水直播機30では、圃場から飛散する泥でクラッチ38L・38Rが汚れることを防止することができ、ひいては、湛水直播機30のクラッチ38L・38Rの入切の動作不良の発生を防止することができる。
【0041】
また、湛水直播機30は、作溝器50の作業姿勢時に、作溝器50の作溝板51がクラッチ38L・38Rの下方に位置するように構成される。
つまり、湛水直播機30における作溝器50の作業姿勢時に、作溝器50の作溝板51は、圃場における作溝器50の作溝板51によって作業(作溝)される部分とクラッチ38L・38Rとの間に位置する。
このため、湛水直播機30における作溝器50の作業姿勢時に、作溝器50によって作業されることで圃場から飛散する泥がクラッチ38L・38Rの方向に飛散することを抑制することができる。
【0042】
また、作溝器50の作溝板51は、左右上端部のそれぞれに突出部53L・53Rを有し、その左方の突出部53Lの左端から右方の突出部53Rの右端までの幅(左右方向の幅)が、左方のクラッチ38Lの左端から右方のクラッチ38Rの右端までの幅に比べて大きく構成される。
このように湛水直播機30における作溝器50の作溝板51は、突出部53L・53Rを有するため、圃場から飛散する泥を作溝板51の突出部53L・53Rによって遮断するようにして、当該泥がクラッチ38L・38Rの方向に飛散することをより確実に防止することができる。
よって、湛水直播機30では、圃場から飛散する泥でクラッチ38L・38Rが汚れることをより確実に防止することができる。
【0043】
湛水直播機30における作溝器50の作溝板51は、図9に示すように、上方に開口する収納部54を有し、作溝器50は、その非作業姿勢時に、動力伝達部35の少なくとも一部(例えば、第二伝達軸34の平ギア34aの一部)を収納部54内に配置可能に構成してもよい。
このとき、湛水直播機30の作溝器50は、その作溝板51の回動軌跡上に動力伝達部35の一部が位置するように配置される。作溝器50は、作溝板51を後上方(水平方向よりも上方)に回動させた状態で、作溝器50の非作業姿勢となるように構成される。
作溝器50の支持ブラケット56の後方における上方のピン孔56aよりさらに上方に、ストッパピン58が挿入可能なピン孔56cが開口される。作溝器50は、前記非作業姿勢時に、動力伝達部35の少なくとも一部を収納部54内に配置した状態で、ピン孔56cにストッパピン58を挿入して当該ストッパピン58で支持棒52を下方から支えるような状態となるように構成される。
作溝器50における作溝板51の収納部54は、前記略V字状に形成される左右の斜面間の空間にて構成される。
【0044】
このように作溝器50が構成されるので、湛水直播機30では、作溝器50の作溝板51が収納部54を有さない場合(作溝器50内に動力伝達部35を配置不可な構成)よりも、作溝板51を上方に回動させることができる。
したがって、湛水直播機30によれば、作溝器50の非作業姿勢時に、作溝器50の作溝板51が収納部54を有さない場合に比べて作溝板51が後方に突出しなくなり、湛水直播機30における作溝器50の非作業姿勢時の状態をコンパクトに構成することができる。
【0045】
また、湛水直播機30では、作溝器50の非作業姿勢時には、動力伝達部35の少なくとも一部が収納部54内に配置されて、動力伝達部35(第二伝達軸34の平ギア34a)の後方および側方に作溝器50の作溝板51が位置することとなる。
したがって、湛水直播機30では、作溝器50の非作業姿勢時に、動力伝達部35(第二伝達軸34の平ギア34a)に後下方から接近しようとするものを遮断するようにして動力伝達部35を保護することができる。
また、湛水直播機30によれば、作溝器50の非作業姿勢時には、作溝器50の作溝板51によって、圃場からの飛散される泥で動力伝達部35(第二伝達軸34の平ギア34a)が汚れることを防止することができる。
【0046】
なお、湛水直播機30における作溝器50の支持ブラケット56のピン孔56a・56b・56cについては、このような数量に限定するものではなく、任意の数量としてもよく、また、これらが配置される互いの間隔についても任意の間隔としてもよい。
また、湛水直播機30における作溝器50の付勢バネ57の一端が掛止される掛止ピン57aの位置を変更して、付勢バネ57における作溝板51および支持棒52への付勢力を変更可能に構成してもよい。
【0047】
湛水直播機30における作溝器50は、作溝器50の作業姿勢時に作溝板51および支持棒52が圃場から押されて付勢バネ57の付勢力に抗じて上方に回動しないように、作溝板51および支持棒52を固定してもよい。前記作溝器50の作溝板51および支持棒52の固定は、例えば、作溝器50の作業姿勢時に、作溝板51および支持棒52が上方に回動しないように固定する固定ピンを、支持棒52の上方に位置するように支持ブラケット56の後部に形成される固定ピン用孔に挿入して、作溝板51および支持棒52の上方への回動を固定ピンによって規制する構成とする。
このように、作溝器50の作業姿勢時に作溝板51および支持棒52が付勢バネ57の付勢力に抗じて上方に回動しないように作溝板51および支持棒52を固定することにより、作溝器50の作業姿勢時に作溝板51および支持棒52が圃場から押されても、作溝器50による作溝をより確実におこなうことができる。
【0048】
湛水直播機30の動力伝達部35は、図2に示すように、複数台の播種装置40・40・・のうち隣接する二台の播種装置40・40間に形成される空間に配置される。
より詳細には、湛水直播機30の左方の動力伝達部35は、左方の二台の播種装置40・40における種子ホッパ41・41間に形成される空間に配置される。湛水直播機30の右方の動力伝達部35は、右方の二台の播種装置40・40における種子ホッパ41・41間に形成される空間に配置される。
つまり、湛水直播機30では、動力伝達部35を配置する空間を別途設けることなく、空スペース(二台の播種装置40・40間に形成される空間)を利用して、動力伝達部35が配置される。
したがって、湛水直播機30によれば、このように動力伝達部35が配置されるので、湛水直播機30が大型化することが抑制される。
【0049】
薬剤散布装置16は、薬剤散布装置16に薬剤を散布する動作をさせる動力が動力伝達部60を介して伝達されるように構成される。
湛水直播機30の動力伝達部60は、第一伝達軸33からの動力が第三伝達軸61に伝達する部分である。動力伝達部60は、図3または図10に示すように、右方から二台目の播種装置40における種子ホッパ41の下方(種子ホッパ41の二股に形成される部分の間)に形成される空間に配置される。
湛水直播機30の動力伝達部60は、第一伝達軸33の右方の平ギア33aとギアケース36との間に設けられる平ギア33bと、播種フレームから延設されるフレームに支持される第三伝達軸61に設けられる平ギア61aと、が噛合されて、第一伝達軸33の回転動力が第三伝達軸61に伝達するように構成される(図3参照)。第一伝達軸33が回転することによって、第三伝達軸61が回転する。
【0050】
湛水直播機30の第三伝達軸61は、前記播種装置40における種子ホッパ41の下方に形成される空間に配置される。湛水直播機30の第三伝達軸61の一端には、回動アームが固設される。湛水直播機30の回動アームの他端はリンク機構62の一側に連結され、リンク機構62の他側は薬剤散布装駆動軸63に設けられた一方向クラッチに連結される。
湛水直播機30のリンク機構62は、前記播種装置40における種子ホッパ41の後方において、その下方から上方に亘って配置される。湛水直播機30のリンク機構62は、前記第一伝達軸33の回転を上下動に変換し、更に、この上下動を一方向クラッチにより薬剤散布装駆動軸63の間欠回転運動に変換するように薬剤散布装駆動軸63に動力を伝達するように構成される。薬剤散布装駆動軸63が回転することにより薬剤散布装置16が薬剤を散布する動作をする。
薬剤散布装駆動軸63は、前記播種装置40における種子ホッパ41の上方において、左右中央部に配置される薬剤散布装置16内に薬剤散布装駆動軸63の左端部が貫挿されるように横設される。
以上のようにして、薬剤散布装置16は、薬剤散布装置16に薬剤を散布する動作をさせる動力が第一伝達軸33から動力伝達部60を介して伝達されるように構成される。
【0051】
このように、動力伝達部60は、播種装置40における種子ホッパ41の二股に形成される部分の間の空間に配置される。
つまり、湛水直播機30では、動力伝達部60を配置する空間を別途設けることなく、空スペース(種子ホッパ41の二股に形成される部分の間の空間)を利用して、動力伝達部60が配置される。
したがって、湛水直播機30によれば、このように動力伝達部60が配置されるので、湛水直播機30が大型化することが抑制される。
【符号の説明】
【0052】
30 湛水直播機
33 第一伝達軸
34 第二伝達軸
35 動力伝達部
40 播種機
41 種子ホッパ
42 繰出し部
50 作溝器
51 作溝板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に水稲の種子を直接播くものであり、前記種子を繰出す繰出し部を備える播種装置と、前記圃場に溝を切る作溝器と、を具備する、湛水直播機であって、
前記播種装置は、前記繰出し部に種子を繰出す動作をさせる動力が動力伝達部を介して伝達されるように構成され、
前記作溝器は、前記動力伝達部の下方に前記作溝器の作溝板が位置するように構成される、
湛水直播機。
【請求項2】
前記播種装置は、複数台配置され、
前記動力伝達部は、前記複数台の播種装置のうち隣接する二台の播種装置間に形成される空間に配置される、
請求項1に記載の湛水直播機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−21943(P2013−21943A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157801(P2011−157801)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】