湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法及びそれに用いる投入装置
【課題】湧昇流発生構造物構築用のブロックを海中に投入する際に、個々のブロックが海水の抵抗や海流の影響などにより流されるのを規制することにより、ブロックの分散範囲を低減することができ、目的の位置に精度よく着地させて所望の形状の湧昇流発生構造物を精度よく構築することが可能な施工性、信頼性、汎用性に優れた湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法の提供。
【解決手段】互いに離間した複数のブロックの間を連結部材で連結するブロック連結工程と、連結部材で連結された複数のブロックを同時に海中に投入するブロック投入工程と、を備えている。
【解決手段】互いに離間した複数のブロックの間を連結部材で連結するブロック連結工程と、連結部材で連結された複数のブロックを同時に海中に投入するブロック投入工程と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船上から海底に湧昇流発生構造物構築用のブロックを投入する際のブロック投入方法及びそれに用いる投入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海底に人工の湧昇流発生構造物を構築し、海底やその付近に存在する栄養分に富んだ海水の流れを湧昇流発生構造物にぶつけることによって湧昇流を発生させ、その海域にプランクトンなどの海洋小動物や魚介類を増繁殖させることにより、好適な漁場が形成されている。
湧昇流発生構造物の構築に用いられるコンクリートブロック等の運搬と投入は、主に土運船(バージ船)と呼ばれる専用の投入船を用いて行なわれている。この投入船は船底が開閉する機構を有しており、開口された船底から積載された多量のコンクリートブロック等をその自重によって、自然落下させることにより、円錐形や円錐台形或いはこれらが複合された形状の湧昇流発生構造物を構築するものである。
この湧昇流発生構造物の形状に関し、例えば、(特許文献1)には、「頂部より放射方向に、海底面に向かって傾斜する傾斜面を備えた一対の略円錐形マウンド状構造物と、該一対の略円錐形マウンド状構造物を連結する、円錐形マウンド状構造物より高さの低い仕切構造物とからなる湧昇流発生構造物」が開示されている。
また、(特許文献2)には、「湧昇流を発生させるために、捨て石、ブロック、石炭灰コンクリートブロック等のマウンド材料を海中に落下させて海底地盤上に積み上げて形成したマウンド状構造物であって、該構造物が、頂部より放射方向に、海底面に向かって傾斜する傾斜面を備えた略円錐形又は略円錐台形の構造物として設置されることを特徴とする湧昇流発生構造物」が開示されている。
さらに、(特許文献3)には、「湧昇流を発生させるため海底地盤に設置するマウンド状構造物であって、該構造物が、飛散を制御しながら自然落下投入することによって積み上げられる複数の構築材からなり、潮流を横切って配置した峰部と、該峰部から海底面に向かって傾斜するなだらかな傾斜面を備えてなることを特徴とする湧昇流発生構造物」が開示されている。
また、この湧昇流発生構造物を構築するブロックの投入方法に関して、(特許文献4)には、「船上に積載されている海底投下用ブロックの複数個を海底に投下するに際して、ブロックの複数個単位でブロック群を構成し、さらに該ブロック群の複数群を構成し、該ブロック群単位で個別独立に群構成ブロックを束縛し、一つの海底投下起動機構を作動させることにより、時間的間隔を置いて、順次に、各ブロック群単位で該ブロック群を構成する複数個のブロックが船底開口を介して海底に投下されていくように構成したことを特徴とするブロックの投下方法」が開示されている。
【特許文献1】特許第2992940号公報
【特許文献2】特許第2628114号公報
【特許文献3】特許第2607979号公報
【特許文献4】特開2005−264588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の技術は以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)乃至(特許文献3)では、湧昇流発生構造物の形状について検討しているが、湧昇流発生構造物を構築するブロック等の投入方法に関しては検討されておらず、従来と同様に投入船の船底を開口させて、大量のブロック等をまとめて投下するものであり、自然落下に頼ったものであるため、個々のブロック等の入水角度を制御することができず、海水の抵抗或いは海流の影響を受け易く、目的位置から離間した場所まで流されるものがあり、分散のばらつきが大きく、湧昇流発生構造物の形状の安定性に欠けるという課題を有していた。
また、大量のブロック等を積載し、それらを船底から海中に投下させるために、投入船に複雑で大掛かりな設備を備える必要があるという課題を有していた。
(2)(特許文献4)の投下方法は、ブロックを海底の所望の区域内に分散させて投入することを目的として、複数個のブロックをロープ状物で束縛してブロック群を構成し、さらに該ブロック群を複数群、並置することにより、ブロック群単位でブロック群を構成する複数個のブロックを時間的間隔を置いて、順次、海底に投下するものであるが、投下時にロープ状物による束縛を解いて投下するものであるため、海水の抵抗や海流の影響により、個々のブロックが海中及び海底で不規則に運動し、目的の位置から離れた場所まで流されてしまうという課題を有していた。
さらに、ブロック群を束縛するためのブロック群束縛機構やブロックを投下させる際にブロック群単位でロープ状物による束縛を順次、解放するための海底投下起動機構等の複雑な機構が必要になるという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、湧昇流発生構造物構築用のブロックを海中に投入する際に、個々のブロックが海水の抵抗や海流の影響などにより流されるのを規制することにより、ブロックの分散範囲を低減することができ、目的の位置に精度よく着地させて所望の形状の湧昇流発生構造物を精度よく構築することが可能な施工性、信頼性、汎用性に優れた湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法の提供及び、簡単な構成でブロックを船上から海中へ投入することができ投入作業性に優れ、既存の船への取り付けが可能な汎用性、実用性に優れた投入装置の提供を目的とする。
【0005】
上記課題を解決するために本発明の湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法は、以下の構成を有している。
請求項1に記載の湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法は、船上から海中へ湧昇流発生構造物構築用のブロックを投入するブロック投入方法であって、互いに離間した複数の前記ブロックの間を連結部材で連結するブロック連結工程と、前記連結部材で連結された前記複数のブロックを同時に海中に投入するブロック投入工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)ブロック連結工程により、複数のブロックの間が連結部材で連結されているので、ブロック投入工程によって複数のブロックを同時に海中に投入した際に、連結された個々のブロックが、海水の抵抗や海流の影響により大きく回転、揺動することを防止でき、目的位置から離間した場所へ流されることを防止し、ブロックが広範囲に分散することがなく、目的とする位置近傍に精度よく着地させることができる。
(2)ブロック連結工程で連結された複数のブロックが、互いに離間していることにより、個々のブロックが、ある程度の運動の自由度を持ちながらも、互いの動きを規制して海中を落下するので、着地位置精度を向上させることができる。
(3)ブロック投入工程により、連結部材で連結された複数のブロックを同時に海中に投入することができるので、作業時間を短縮することができ実用性、施工性に優れる。
【0006】
ここで、湧昇流発生構造物構築用のブロックとしては、石炭灰コンクリートブロック等が好適に用いられる。ブロックは略立方体状に形成されるが、中央部に貫通孔を設けることにより、ワイヤロープ等を挿通してクレーンによる吊り下げ等を行うことができ取扱い性に優れる。また、連結部材による連結作業も容易に行うことができ施工性に優れる。さらに、軽量化を図って搬送性を向上させることができる。
連結部材の材質及び太さは、ブロックの重量にもよるが、ブロックが海底に着地するまで、その間を繋ぎ止めることができるだけの強度があればよい。マニラ麻製のものやナイロン,ビニロン,ポリエチレン等の合成繊維製のもの等が好適に用いられる。
【0007】
ブロックを連結部材で連結する際に、各々のブロックを離間させる距離は、ブロックの一辺の長さの0.5倍〜1.5倍が好ましい。ブロックを離間させる距離が、ブロックの一辺の長さの0.5倍より短くなるにつれ、個々のブロックの回動や揺動などの運動の自由度が低下し、複数のブロックが一塊となって運動するため、連結の効果が不十分となる傾向があり、1.5倍より長くなるにつれ、個々のブロックがバラバラに運動し、海水の抵抗や海流の影響によって大きく回転、揺動し易くなり、連結の効果が不十分となる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0008】
請求項2に記載の湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法は、船上から海中へ湧昇流発生構造物構築用のブロックを投入するブロック投入方法であって、前記ブロックの略中央に形設された貫通孔に案内部材を挿通する案内部材挿通工程と、前記案内部材が挿通された前記ブロックを前記案内部材に沿って海中に投入するブロック投入工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)案内部材挿通工程により、ブロックの貫通孔に案内部材が挿通されているので、ブロック投入工程によってブロックを海中に投入した際に、案内部材によって案内されたブロックは、海水の抵抗や海流の影響によって案内部材を中心に回動したり或いは案内部材と共に揺動したりするが、大きく転動することがなく、案内部材に沿うように動きを規制されながら海中を落下し、目的とする位置近傍に精度よく着地することができる。
【0009】
ここで、ブロックは請求項1と同様である。ブロックを海中に投入する際に、案内部材は貫通孔の縁等で擦られて摩耗するので、案内部材としては、耐久性、耐摩耗性に優れるものが好ましく、金属製のワイヤなどが好適に用いられる。
案内部材の海中側の末端には、錘をつけることが好ましい。これにより、海水の流れの影響を受け難く、ブロックの落下途中に揺動などが発生しても、最終的に案内部材によって、ほぼ目的の位置にブロックを着地させることができ信頼性に優れる。錘としてはブロックの貫通孔に挿通することができるものであればよく、金属製のチェーンや円錐状,角錐状の錘等が好適に用いられる。円錐状や角錐状の錘を用いる場合は、案内部材との間をチェーン等で連結すればよい。
【0010】
予め、複数のブロックの貫通孔に案内部材を挿通した後、それらのブロックを並べたり、積み上げたりしておくことにより、複数のブロックを連続的に海中に投入することができ、施工性に優れる。また、案内部材の上流側の端部をウィンチなどで巻き取るようにした場合、案内部材の回収を容易に行うことができると共に、海底の深さや湧昇流発生構造物の高さに合わせて簡便に案内部材の末端位置を調整することができ、施工性に優れる。特に、ブロック投入工程の後工程として案内部材巻き取り工程により、海底に積み上がられたブロックの高さよりも高い位置まで案内部材の末端位置を上昇させるようにした場合、新たに投入されるブロックと案内部材が絡むのを防止でき、信頼性に優れる。
【0011】
請求項3に記載の投入装置は、湧昇流発生構造物構築用のブロックが載置されるブロック載置部と、前記ブロック載置部に連設され前記ブロック載置部の一端側を上方に傾動させる傾動駆動部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)湧昇流発生構造物構築用のブロックが載置されるブロック載置部と、ブロック載置部に連設されブロック載置部の一端側を上方に傾動させる傾動駆動部と、を有するので、予めブロック載置部に1乃至複数のブロックを載置し、傾動駆動部によってブロック載置部を傾動させるだけで、ブロック載置部の他端側から1乃至複数のブロックを同時に海中に投入することができ施工性に優れる。
【0012】
ここで、ブロック載置部には、請求項1で説明した連結部材で連結された複数のブロックや請求項2で説明した貫通孔に案内部材が挿通されたブロックを載置して投入作業を行うことができる。
この投入装置は、船の甲板に設置してブロックの投入作業を行うことができるので、既存の船にも容易に取り付けることができ、設備導入が容易で、汎用性に優れる。船首や船尾又は船側等の甲板の縁部に配置することで、容易に投入作業を行うことができる。投入装置を搭載した船を移動させながら投入作業を行うことにより、任意の位置でブロックの投入を行うことができ、細かな位置決めが可能で、所望の形状の湧昇流発生構造物を精度よく構築することができる。
ブロック載置部の横幅は、同時に海中に投入するブロックの数に応じて、決定することができる。また、一台の投入装置で複数のブロックの投入を行う以外に、複数の投入装置を横に並べて、同時或いは連続的に複数のブロックの投入作業を行うこともでき、容易に施工時間の短縮を図ることができる。
【0013】
傾動駆動部としては、油圧シリンダ等の伸縮機構が好適に用いられる。ブロック載置部の一端側(上流側)に伸縮機構を連設し、ブロック載置部の他端側(下流側)に回転軸を設けることにより、伸縮機構を伸縮させて回転軸周りにブロック載置部を傾動させることができる。
ブロック載置部へのブロックの載置は、クレーンによって行うことができる。また、投入装置の上流側にローラコンベア等を連設した場合、複数のブロックを連続的に投入装置に供給することができ、施工時間を短縮することができる。
尚、傾動駆動部は、ブロック載置部の両側やブロック載置部の下面の両側或いは中央などに配設することが好ましい。これにより、ブロック載置部へブロックを載置する際の作業性に優れる。特に、ブロック載置部の上流側にローラコンベア等を連設した場合、傾動駆動部が邪魔になることがなく、確実にブロックを供給することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の投入装置であって、前記ブロック載置部の幅方向の少なくとも一部に配設された搬送ローラを備えた構成を有している。
この構成により、請求項3の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)ブロック載置部の幅方向の少なくとも一部に配設された搬送ローラを備えているので、ブロック載置部を傾動させるだけで、重量のあるブロックをブロック載置部の上流側から下流側に向かって速やかに移動させることができ、投入作業の確実性に優れる。
【0015】
ここで、搬送ローラは、各々が独立して回転可能な複数のローラをブロック載置部の上流側から下流側に並べて配置することにより形成される。搬送ローラは、一列乃至複数列設けることができ、ブロックの底面の幅全体に接触するようにしてもよいし、ブロックの底面の幅方向の両端部や中央部などに部分的に接触するようにしてもよい。ブロックの底面に凹凸が形成されている場合は、凸部の幅と位置に合わせて搬送ローラを配置することにより、無駄なく確実にブロックを支持して搬送することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の投入装置であって、前記ブロック載置部の他端側に回動自在に配設され、前記ブロック載置部に載置される前記ブロックの端面に当接するストッパ部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3又は4の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)ブロック載置部の他端側に回動自在に配設され、ブロック載置部に載置されるブロックの端面に当接するストッパ部を備えているので、ブロック載置部を所定の角度に傾動させるまで、ブロック載置部上にブロックを保持することができると共に、任意のタイミングでストッパ部を解除してブロックの形状や重量などに応じた最適な投入角度で投入作業を行うことができ、汎用性、実用性に優れる。
(2)ストッパ部を解除するタイミングにより、ブロックを投入するタイミングを調整することができるので、波による船の揺動などの影響を低減することができ、投入条件を略一定に保つことができ、投入作業の繰り返し安定性に優れる。
【0017】
ここで、ストッパ部は、ブロック載置部の下流側でブロックの端面の幅方向の少なくとも一部に当接するものであればよく、1つのブロック載置部に対して一列乃至複数、設けることができる。ストッパ部を駆動するストッパ駆動部は、ストッパ部を回動させることができるものであればよい。ストッパ部が配設された回動軸を正逆回転可能なモータで直接、回動させてもよいし、ストッパ部に連結されたアーム部にピストンシリンダ等の伸縮機構を連設し、伸縮機構を前後方向に伸縮させることにより、ストッパ部を回動させてもよい。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)ブロック連結工程において、連結部材で連結された複数のブロックを、ブロック投入工程によって同時に海中に投入するので、互いに離間して連結された個々のブロックが、ある程度の自由度を持って運動しながらも、互いの動きを規制して、海水の抵抗や海流の影響によって大きく回転、揺動することがなく、目的位置から離間した場所へ流されることを防止でき、着地位置精度の信頼性に優れた湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を提供することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)案内部材挿通工程において、貫通孔に案内部材が挿通されたブロックを、ブロック投入工程によって海中に投入するので、ブロックが案内部材に沿うように動きを規制されながら海中を落下して、大きく転動することを防止でき、海水の流れの影響を受け難く、着地位置精度の信頼性に優れた湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を提供することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)傾動駆動部によってブロック載置部を傾動させるだけで、ブロック載置部に載置した1乃至複数の湧昇流発生構造物構築用のブロックを、同時に海中に投入することができる施工性に優れた投入装置を提供することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)ブロック載置部の幅方向の少なくとも一部に搬送ローラが配設されていることにより、ブロック載置部を傾動させるだけで、重量のあるブロックをブロック載置部の上流側から下流側に向かって速やかに移動させることができる投入作業の確実性、省力性に優れた投入装置を提供することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項3又は4の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)ブロック載置部の他端側に回動自在に配設されたストッパ部により、ブロック載置部を所定の角度に傾動させるまで、ブロック載置部上にブロックを保持することができるので、ストッパ部を解除するタイミングにより、ブロックの投入角度やブロックを投入するタイミングを簡便に調整することができ、投入条件を制御してブロックを目的の位置近傍に着地させることができる汎用性、信頼性に優れた投入装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法及びそれに用いる投入装置について、以下図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の正面図であり、図2は実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の側面図であり、図3は図1におけるA−A線矢視断面図である。
図1乃至3中、1は船10の船首や船尾又は船側等の甲板の縁部に設置され実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置、2は湧昇流発生構造物構築用のブロック15が載置される投入装置1のブロック載置部、2aはブロック載置部2の下流側でブロック載置部2を傾動自在に軸支する回転軸、2bはブロック載置部2の補強部、3はブロック載置部2の幅方向に1つのブロック15に対して2列ずつ配設された搬送ローラ、3aはブロック載置部2の下流側の先端に配設された先端ローラ、4はブロック載置部2の上流側の両側に立設された傾動固定部4aに連設されブロック載置部2を傾動させる油圧シリンダを用いた傾動駆動部、5はブロック載置部2の下流側に回動自在に配設されブロック載置部2に載置されるブロック15の端面に当接するストッパ部、15は石炭灰コンクリートブロックで形成された湧昇流発生構造物構築用のブロックである。
【0024】
投入装置1は、船10の甲板に設置してブロック15の投入作業を行うことができるので、既存の船10にも容易に取り付けることができる。
ブロック載置部2の横幅は、同時に海中に投入するブロック15の数に応じて、決定することができる。本実施の形態では、同時に2個のブロック15が投入できるようにしたが、ブロック15の数は1個でもよいし、3個以上でもよい。また、一台の投入装置1で複数のブロック15の投入を行う以外に、複数の投入装置1を横に並べて、同時或いは連続的に複数のブロック15の投入作業を行うこともでき、容易に施工時間の短縮を図ることができる。
【0025】
搬送ローラ3は、各々が独立して回転できるようにブロック載置部2の上流側から下流側に並べて配置した。本実施の形態では、ブロック15の底面に形成される凸部の幅と位置に合わせて2列ずつ合計4列の搬送ローラ3を配置した。尚、搬送ローラ3はブロック15の形状に応じて、底面の幅全体に接触するようにしたり、底面の幅方向の中央部などに部分的に接触するようにしたりしてもよく、その長さや位置を適宜、選択できる。
ブロック載置部2の下流側の先端には他の搬送ローラ3よりも大型で強度のある先端ローラ3aを配設した。これにより、傾動駆動部4によりブロック載置部2を傾動させ、ブロック15を海中に投入する最後の段階で、ブロック15の重量を確実に支持することができ、ブロック15をスムーズに落下させることができ投入作業の安定性に優れる。
【0026】
次に、ストッパ部の詳細について説明する。
図4は図1におけるB−B線矢視断面図である。
図4中、5aはストッパ部5の下端側を回動自在に軸支する回動軸、5bはストッパ部5に連結された略L字型のアーム部、5cはアーム部5bの一端側に配設され後述するストッパ駆動部6が連結される連結軸、6は一端がブロック載置部2の補強部2bに配設された固定軸2cに回動自在に固定され他端がアーム部5bの連結軸5cに回動自在に連結されて伸縮によりストッパ部5を回動させるピストンシリンダを用いたストッパ駆動部である。
ストッパ部5は、ブロック載置部2の下流側でブロック15の端面の幅方向の略中央部に当接するように配設した。これにより、両側の搬送ローラ3と干渉することなくストッパ部5を回動させることができ、確実にブロック15を保持することができる。尚、ストッパ部5は搬送ローラ3と干渉しない範囲で、1つのブロック載置部2に対して一列乃至複数列、設けることができる。
本実施の形態では、ピストンシリンダを用いたストッパ駆動部6を前後方向に伸縮させることにより、アーム部5bを介してストッパ部5を回動させたが、ストッパ駆動部6はストッパ部5を回動させることができるものであればよく、ストッパ部5が配設された回動軸5aを正逆回転可能なモータで直接、回動させるようにしてもよい。
【0027】
次に、実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の動作について説明する。
図5は実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の傾動状態を示す側面図である。
ブロック15はブロック載置部2の搬送ローラ3上に載置される(ブロック載置工程)。
傾動駆動部4を伸張させることにより、ブロック載置部2の上流側が持ち上がり、回転軸2aを中心としてブロック載置部2が傾動する。このとき、ブロック15の下流側の端面にストッパ部5が当接していることにより、ブロック15を保持したまま、所望の角度まで傾けることができる(ブロック載置部傾動工程)。
予め設定した投入角度までブロック載置部2を傾けた後に、ストッパ部5を矢印方向に回動させてストッパを解除することにより、ブロック15が搬送ローラ3上を移動し、海中に投入される(ストッパ部解除工程)。
【0028】
次に、実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法について説明する。
図6は実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を示す要部模式正面図であり、図7は実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を示す要部模式側面図である。
図6及び7中、15aは略立法体状のブロック15の中央に形成された貫通孔、16は貫通孔15aに挿通され2つのブロック15の間を離間させて連結するロープ状の連結部材、20はブロック15が投入され湧昇流発生構造が構築される海である。
【0029】
まず、ブロック連結工程において、複数のブロック15の間を連結部材16で連結する。本実施の形態では、ブロック15が2個の場合について説明するが、3個以上の場合でも同様である。
連結部材16の材質及び太さは、ブロック15の重量にもよるが、ブロック15が海底に着地するまで、その間を繋ぎ止めることができるだけの強度があればよい。マニラ麻製のものやナイロン,ビニロン,ポリエチレン等の合成繊維製のもの等が好適に用いられる。
ブロック15を連結部材16で連結する際に、各々のブロック15を離間させる距離は、ブロック15の一辺の長さの0.5倍〜1.5倍にした。ブロック15を離間させる距離が、ブロック15の一辺の長さの0.5倍より短くなるにつれ、個々のブロック15の回動や揺動などの運動の自由度が低下し、複数のブロック15が一塊となって運動するため、連結の効果が不十分となる傾向があり、1.5倍より長くなるにつれ、個々のブロック15がバラバラに運動し、海水の抵抗や海流の影響により大きく回動、揺動し易くなり、連結の効果が不十分となる傾向があることがわかったためである。
尚、ブロック連結工程は、ブロック15を投入装置1のブロック載置部2に載置する前後のいずれで行ってもよい。ブロック載置部2へのブロック15の載置は、クレーンによって行うことができるが、投入装置1の上流側にローラコンベア等を連設してもよい。これにより、複数のブロック15を連続的に投入装置1に供給することができ、施工時間を短縮することができる。
次に、図7に示すようにブロック投入工程において、連結部材16で連結された複数のブロック15を同時に海中に投入する。尚、ブロック投入工程における投入装置1の動作は前述の通りである。
【0030】
以上のように実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置によれば、以下の作用を有する。
(1)ブロック15が載置されるブロック載置部2と、ブロック載置部2に連設されブロック載置部2の一端側を上方に傾動させる傾動駆動部4と、を有するので、予めブロック載置部2に複数のブロック15を載置し、傾動駆動部4によってブロック載置部2を傾動させるだけで、ブロック載置部2の他端側から複数のブロック15を同時に海中に投入することができ施工性に優れる。
(2)ブロック載置部2の幅方向の少なくとも一部に配設された搬送ローラ3を備えているので、ブロック載置部2を傾動させるだけで、重量のあるブロック15をブロック載置部2の上流側から下流側に向かって速やかに移動させることができ、投入作業の確実性に優れる。
(3)ブロック載置部2の他端側に回動自在に配設され、ブロック載置部2に載置されるブロック15の端面に当接するストッパ部5を備えているので、ブロック載置部2を所定の角度に傾動させるまで、ブロック載置部2上にブロック15を保持することができると共に、任意のタイミングでストッパ部5を解除してブロック15の形状や重量などに応じた最適な投入角度で投入作業を行うことができ、汎用性、実用性に優れる。
(4)ストッパ部5を解除するタイミングにより、ブロック15を投入するタイミングを調整することができるので、波による船10の揺動などの影響を低減することができ、投入条件を略一定に保つことができ、投入作業の繰り返し安定性に優れる。
【0031】
以上のように実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法によれば、以下の作用を有する。
(1)ブロック連結工程により、複数のブロック15の間が連結部材16で連結されているので、ブロック投入工程によって複数のブロック15を同時に海中に投入した際に、連結された個々のブロック15が、大きく回転、揺動することを防止でき、海水の抵抗や海流の影響によってブロック15が流されることがなく、目的とする位置近傍に精度よく着地させることができる。
(2)ブロック連結工程で連結された複数のブロック15が、互いに離間していることにより、個々のブロック15が、ある程度の運動の自由度を持ちながらも、互いの動きを規制して海中を落下するので、着地位置精度を向上させることができる。
(3)ブロック投入工程により、連結部材16で連結された複数のブロック15を同時に海中に投入することができるので、作業時間を短縮することができ実用性、施工性に優れる。
【0032】
(実施の形態2)
実施の形態2における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法について説明する。
図8は実施の形態2における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を示す要部模式側面図である。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図8中、11は船10に配設され後述する案内部材17を巻き取るためのウィンチ、17は湧昇流発生構造物構築用のブロック15の略中央に形設された貫通孔15aに挿通されブロック15を海中で案内する金属製のワイヤなどの案内部材、18は案内部材17の先端に錘として連結された金属製のチェーンである。
案内部材17としては、貫通孔15aに挿通してブロック15を誘導できるものであればよいが、ブロック15を海中に投入する際に、案内部材17が貫通孔15aの縁等で擦られて摩耗するのを防止できる耐久性、耐摩耗性に優れたものが好ましい。また、案内部材17の先端に連結する錘は、ブロック15の貫通孔15aに挿通することができるものであればよく、チェーン16以外に円錐状や角錐状等の形状に形成された錘を用いてもよい。
【0033】
まず、案内部材挿通工程において、貫通孔15aに案内部材17を挿通し、案内部材17に連結されたチェーン18の末端側を海底付近まで垂らす。
次に、ブロック投入工程において、実施の形態1と同様に投入装置1を動作させ、海中へのブロック15の投入を行う。ブロック15は案内部材17に誘導され目的とする位置近傍に着地する。
予め、複数のブロック15の貫通孔15aに案内部材17を挿通した後、それらのブロック15を並べたり、積み上げたりしておけば、複数のブロック15を連続的に海中に投入することができ、施工性に優れる。特に、投入装置1の上流側にローラコンベア等を連設し、その上に複数のブロック15を並べておけば、連続的に投入装置1にブロック15を供給することができ、施工時間を短縮することができる。
【0034】
また、ウィンチ11により、案内部材15の回収を容易に行うことができると共に、海底の深さや湧昇流発生構造物の高さに合わせて簡便に案内部材15の末端位置を調整することができ、施工性に優れる。特に、ブロック投入工程の後工程として、海底に積み上がられたブロック15の高さよりも高い位置まで案内部材16の末端位置を上昇させる案内部材巻き取り工程を有する場合、新たに投入されるブロック15と案内部材16が絡むのを防止でき、信頼性に優れる。
尚、投入装置1に複数のブロック15が載置できる場合、各々のブロック15の貫通孔15aにそれぞれ別々の案内部材17を挿通し、同時に投入作業を行うことができる。このとき、複数のブロック15を実施の形態1と同様に連結部材16で連結してもよい。その場合、案内部材17による案内は、複数のブロック15の内の少なくともいずれか1つに対して行えばよい。
【0035】
以上のように実施の形態2における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法によれば、以下の作用を有する。
(1)案内部材挿通工程により、ブロック15の貫通孔15aに案内部材17が挿通されているので、ブロック投入工程によってブロック15を海中に投入した際に、案内部材17によって案内されたブロック15が、海水の抵抗や海流の影響によって大きく転動することを防止でき、目的とする位置近傍に精度よく着地させることができる。
(2)案内部材挿通工程で貫通孔15aに案内部材17が挿通されたブロック15は、案内部材17を中心に回動したり或いは案内部材17と共に揺動したりするが、案内部材17に沿うように動きを規制されながら海中を落下するので、海水の流れの影響を受け難く、着地位置精度を向上させることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実際に湧昇流発生構造物の構築に用いるブロックは、一辺の長さ1.6m、重量6tの石炭灰コンクリートブロックであり、施工場所の水深は89mが想定される。
そこで、縮尺モデルを用いて実験を行った。
施工場所の水深89mと、実験に用いる水槽の水深7mの比から、7/89モデルのブロック及び投入装置を作製し、実施例として実施の形態1及び実施の形態2と同様の投入方法で投入を行った。また、比較例として、ブロック単独での投入も行った。
【0037】
(比較例1)ブロックを1つずつ投入角度8°で水槽に投入した(計104個)。
(実施例1)紐状の連結部材で連結した2個のブロックを投入角度8°で水槽に投入した(計60回、120個)。
(実施例2)紐状の連結部材で連結した2個のブロックを投入角度10°で水槽に投入した(計45回、90個)。
(実施例3)ブロックの貫通孔にワイヤを挿通し、投入角度10°で水槽に投入した(計40個)。
【0038】
それぞれについて、投入位置と着地位置との位置ずれを測定した結果を以下に示す。
図9は比較例1における着地位置ずれの測定結果を示す図であり、図10は実施例1における着地位置ずれの測定結果を示す図であり、図11は実施例2における着地位置ずれの測定結果を示す図であり、図12は実施例3における着地位置ずれの測定結果を示す図である。
図9により、比較例1の投入方法では、着地位置が広範囲に渡って略扇状に分散することがわかった。
図10により、実施例1の投入方法(実施の形態1の2個連結に相当)では、落下時の揺動が制御され着地位置ずれ量が比較例1の半分程度に抑えられることがわかった。
図11により、実施例2の投入方法(実施の形態1の2個連結に相当)では、実施例1とほぼ同等の着地位置ずれ量となり、投入角度の違いによる有意差は見られなかった。
図12により、実施例3の投入方法(実施の形態2に相当)では、実施例1、2よりもさらに狭い範囲(投入位置近傍)に着地位置が集中し、着地位置ずれ量の改善効果が見られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、湧昇流発生構造物構築用のブロックを海中に投入する際に、個々のブロックが海水の抵抗や海流の影響などにより流されるのを規制することにより、ブロックの分散範囲を低減することができ、目的の位置に精度よく着地させて所望の形状の湧昇流発生構造物を精度よく構築することが可能な施工性、信頼性、汎用性に優れた湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法の提供及び、簡単な構成でブロックを船上から海中へ投入することができ投入作業性に優れ、既存の船への取り付けが可能な汎用性、実用性に優れた投入装置の提供を行うことができ、湧昇流発生構造物構築の施工性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の正面図
【図2】実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の側面図
【図3】図1におけるA−A線矢視断面図
【図4】図1におけるB−B線矢視断面図
【図5】実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の傾動状態を示す側面図
【図6】実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を示す要部模式正面図
【図7】実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を示す要部模式側面図
【図8】実施の形態2における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を示す要部模式側面図
【図9】比較例1における着地位置ずれの測定結果を示す図
【図10】実施例1における着地位置ずれの測定結果を示す図
【図11】実施例2における着地位置ずれの測定結果を示す図
【図12】実施例3における着地位置ずれの測定結果を示す図
【符号の説明】
【0041】
1 投入装置
2 ブロック載置部
2a 回転軸
2b 補強部
2c 固定軸
3 搬送ローラ
3a 先端ローラ
4 傾動駆動部
4a 傾動固定部
5 ストッパ部
5a 回動軸
5b アーム部
5c 連結軸
6 ストッパ駆動部
10 船
15 ブロック
15a 貫通孔
16 連結部材
17 案内部材
18 チェーン
20 海
【技術分野】
【0001】
本発明は、船上から海底に湧昇流発生構造物構築用のブロックを投入する際のブロック投入方法及びそれに用いる投入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海底に人工の湧昇流発生構造物を構築し、海底やその付近に存在する栄養分に富んだ海水の流れを湧昇流発生構造物にぶつけることによって湧昇流を発生させ、その海域にプランクトンなどの海洋小動物や魚介類を増繁殖させることにより、好適な漁場が形成されている。
湧昇流発生構造物の構築に用いられるコンクリートブロック等の運搬と投入は、主に土運船(バージ船)と呼ばれる専用の投入船を用いて行なわれている。この投入船は船底が開閉する機構を有しており、開口された船底から積載された多量のコンクリートブロック等をその自重によって、自然落下させることにより、円錐形や円錐台形或いはこれらが複合された形状の湧昇流発生構造物を構築するものである。
この湧昇流発生構造物の形状に関し、例えば、(特許文献1)には、「頂部より放射方向に、海底面に向かって傾斜する傾斜面を備えた一対の略円錐形マウンド状構造物と、該一対の略円錐形マウンド状構造物を連結する、円錐形マウンド状構造物より高さの低い仕切構造物とからなる湧昇流発生構造物」が開示されている。
また、(特許文献2)には、「湧昇流を発生させるために、捨て石、ブロック、石炭灰コンクリートブロック等のマウンド材料を海中に落下させて海底地盤上に積み上げて形成したマウンド状構造物であって、該構造物が、頂部より放射方向に、海底面に向かって傾斜する傾斜面を備えた略円錐形又は略円錐台形の構造物として設置されることを特徴とする湧昇流発生構造物」が開示されている。
さらに、(特許文献3)には、「湧昇流を発生させるため海底地盤に設置するマウンド状構造物であって、該構造物が、飛散を制御しながら自然落下投入することによって積み上げられる複数の構築材からなり、潮流を横切って配置した峰部と、該峰部から海底面に向かって傾斜するなだらかな傾斜面を備えてなることを特徴とする湧昇流発生構造物」が開示されている。
また、この湧昇流発生構造物を構築するブロックの投入方法に関して、(特許文献4)には、「船上に積載されている海底投下用ブロックの複数個を海底に投下するに際して、ブロックの複数個単位でブロック群を構成し、さらに該ブロック群の複数群を構成し、該ブロック群単位で個別独立に群構成ブロックを束縛し、一つの海底投下起動機構を作動させることにより、時間的間隔を置いて、順次に、各ブロック群単位で該ブロック群を構成する複数個のブロックが船底開口を介して海底に投下されていくように構成したことを特徴とするブロックの投下方法」が開示されている。
【特許文献1】特許第2992940号公報
【特許文献2】特許第2628114号公報
【特許文献3】特許第2607979号公報
【特許文献4】特開2005−264588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の技術は以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)乃至(特許文献3)では、湧昇流発生構造物の形状について検討しているが、湧昇流発生構造物を構築するブロック等の投入方法に関しては検討されておらず、従来と同様に投入船の船底を開口させて、大量のブロック等をまとめて投下するものであり、自然落下に頼ったものであるため、個々のブロック等の入水角度を制御することができず、海水の抵抗或いは海流の影響を受け易く、目的位置から離間した場所まで流されるものがあり、分散のばらつきが大きく、湧昇流発生構造物の形状の安定性に欠けるという課題を有していた。
また、大量のブロック等を積載し、それらを船底から海中に投下させるために、投入船に複雑で大掛かりな設備を備える必要があるという課題を有していた。
(2)(特許文献4)の投下方法は、ブロックを海底の所望の区域内に分散させて投入することを目的として、複数個のブロックをロープ状物で束縛してブロック群を構成し、さらに該ブロック群を複数群、並置することにより、ブロック群単位でブロック群を構成する複数個のブロックを時間的間隔を置いて、順次、海底に投下するものであるが、投下時にロープ状物による束縛を解いて投下するものであるため、海水の抵抗や海流の影響により、個々のブロックが海中及び海底で不規則に運動し、目的の位置から離れた場所まで流されてしまうという課題を有していた。
さらに、ブロック群を束縛するためのブロック群束縛機構やブロックを投下させる際にブロック群単位でロープ状物による束縛を順次、解放するための海底投下起動機構等の複雑な機構が必要になるという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、湧昇流発生構造物構築用のブロックを海中に投入する際に、個々のブロックが海水の抵抗や海流の影響などにより流されるのを規制することにより、ブロックの分散範囲を低減することができ、目的の位置に精度よく着地させて所望の形状の湧昇流発生構造物を精度よく構築することが可能な施工性、信頼性、汎用性に優れた湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法の提供及び、簡単な構成でブロックを船上から海中へ投入することができ投入作業性に優れ、既存の船への取り付けが可能な汎用性、実用性に優れた投入装置の提供を目的とする。
【0005】
上記課題を解決するために本発明の湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法は、以下の構成を有している。
請求項1に記載の湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法は、船上から海中へ湧昇流発生構造物構築用のブロックを投入するブロック投入方法であって、互いに離間した複数の前記ブロックの間を連結部材で連結するブロック連結工程と、前記連結部材で連結された前記複数のブロックを同時に海中に投入するブロック投入工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)ブロック連結工程により、複数のブロックの間が連結部材で連結されているので、ブロック投入工程によって複数のブロックを同時に海中に投入した際に、連結された個々のブロックが、海水の抵抗や海流の影響により大きく回転、揺動することを防止でき、目的位置から離間した場所へ流されることを防止し、ブロックが広範囲に分散することがなく、目的とする位置近傍に精度よく着地させることができる。
(2)ブロック連結工程で連結された複数のブロックが、互いに離間していることにより、個々のブロックが、ある程度の運動の自由度を持ちながらも、互いの動きを規制して海中を落下するので、着地位置精度を向上させることができる。
(3)ブロック投入工程により、連結部材で連結された複数のブロックを同時に海中に投入することができるので、作業時間を短縮することができ実用性、施工性に優れる。
【0006】
ここで、湧昇流発生構造物構築用のブロックとしては、石炭灰コンクリートブロック等が好適に用いられる。ブロックは略立方体状に形成されるが、中央部に貫通孔を設けることにより、ワイヤロープ等を挿通してクレーンによる吊り下げ等を行うことができ取扱い性に優れる。また、連結部材による連結作業も容易に行うことができ施工性に優れる。さらに、軽量化を図って搬送性を向上させることができる。
連結部材の材質及び太さは、ブロックの重量にもよるが、ブロックが海底に着地するまで、その間を繋ぎ止めることができるだけの強度があればよい。マニラ麻製のものやナイロン,ビニロン,ポリエチレン等の合成繊維製のもの等が好適に用いられる。
【0007】
ブロックを連結部材で連結する際に、各々のブロックを離間させる距離は、ブロックの一辺の長さの0.5倍〜1.5倍が好ましい。ブロックを離間させる距離が、ブロックの一辺の長さの0.5倍より短くなるにつれ、個々のブロックの回動や揺動などの運動の自由度が低下し、複数のブロックが一塊となって運動するため、連結の効果が不十分となる傾向があり、1.5倍より長くなるにつれ、個々のブロックがバラバラに運動し、海水の抵抗や海流の影響によって大きく回転、揺動し易くなり、連結の効果が不十分となる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0008】
請求項2に記載の湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法は、船上から海中へ湧昇流発生構造物構築用のブロックを投入するブロック投入方法であって、前記ブロックの略中央に形設された貫通孔に案内部材を挿通する案内部材挿通工程と、前記案内部材が挿通された前記ブロックを前記案内部材に沿って海中に投入するブロック投入工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)案内部材挿通工程により、ブロックの貫通孔に案内部材が挿通されているので、ブロック投入工程によってブロックを海中に投入した際に、案内部材によって案内されたブロックは、海水の抵抗や海流の影響によって案内部材を中心に回動したり或いは案内部材と共に揺動したりするが、大きく転動することがなく、案内部材に沿うように動きを規制されながら海中を落下し、目的とする位置近傍に精度よく着地することができる。
【0009】
ここで、ブロックは請求項1と同様である。ブロックを海中に投入する際に、案内部材は貫通孔の縁等で擦られて摩耗するので、案内部材としては、耐久性、耐摩耗性に優れるものが好ましく、金属製のワイヤなどが好適に用いられる。
案内部材の海中側の末端には、錘をつけることが好ましい。これにより、海水の流れの影響を受け難く、ブロックの落下途中に揺動などが発生しても、最終的に案内部材によって、ほぼ目的の位置にブロックを着地させることができ信頼性に優れる。錘としてはブロックの貫通孔に挿通することができるものであればよく、金属製のチェーンや円錐状,角錐状の錘等が好適に用いられる。円錐状や角錐状の錘を用いる場合は、案内部材との間をチェーン等で連結すればよい。
【0010】
予め、複数のブロックの貫通孔に案内部材を挿通した後、それらのブロックを並べたり、積み上げたりしておくことにより、複数のブロックを連続的に海中に投入することができ、施工性に優れる。また、案内部材の上流側の端部をウィンチなどで巻き取るようにした場合、案内部材の回収を容易に行うことができると共に、海底の深さや湧昇流発生構造物の高さに合わせて簡便に案内部材の末端位置を調整することができ、施工性に優れる。特に、ブロック投入工程の後工程として案内部材巻き取り工程により、海底に積み上がられたブロックの高さよりも高い位置まで案内部材の末端位置を上昇させるようにした場合、新たに投入されるブロックと案内部材が絡むのを防止でき、信頼性に優れる。
【0011】
請求項3に記載の投入装置は、湧昇流発生構造物構築用のブロックが載置されるブロック載置部と、前記ブロック載置部に連設され前記ブロック載置部の一端側を上方に傾動させる傾動駆動部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)湧昇流発生構造物構築用のブロックが載置されるブロック載置部と、ブロック載置部に連設されブロック載置部の一端側を上方に傾動させる傾動駆動部と、を有するので、予めブロック載置部に1乃至複数のブロックを載置し、傾動駆動部によってブロック載置部を傾動させるだけで、ブロック載置部の他端側から1乃至複数のブロックを同時に海中に投入することができ施工性に優れる。
【0012】
ここで、ブロック載置部には、請求項1で説明した連結部材で連結された複数のブロックや請求項2で説明した貫通孔に案内部材が挿通されたブロックを載置して投入作業を行うことができる。
この投入装置は、船の甲板に設置してブロックの投入作業を行うことができるので、既存の船にも容易に取り付けることができ、設備導入が容易で、汎用性に優れる。船首や船尾又は船側等の甲板の縁部に配置することで、容易に投入作業を行うことができる。投入装置を搭載した船を移動させながら投入作業を行うことにより、任意の位置でブロックの投入を行うことができ、細かな位置決めが可能で、所望の形状の湧昇流発生構造物を精度よく構築することができる。
ブロック載置部の横幅は、同時に海中に投入するブロックの数に応じて、決定することができる。また、一台の投入装置で複数のブロックの投入を行う以外に、複数の投入装置を横に並べて、同時或いは連続的に複数のブロックの投入作業を行うこともでき、容易に施工時間の短縮を図ることができる。
【0013】
傾動駆動部としては、油圧シリンダ等の伸縮機構が好適に用いられる。ブロック載置部の一端側(上流側)に伸縮機構を連設し、ブロック載置部の他端側(下流側)に回転軸を設けることにより、伸縮機構を伸縮させて回転軸周りにブロック載置部を傾動させることができる。
ブロック載置部へのブロックの載置は、クレーンによって行うことができる。また、投入装置の上流側にローラコンベア等を連設した場合、複数のブロックを連続的に投入装置に供給することができ、施工時間を短縮することができる。
尚、傾動駆動部は、ブロック載置部の両側やブロック載置部の下面の両側或いは中央などに配設することが好ましい。これにより、ブロック載置部へブロックを載置する際の作業性に優れる。特に、ブロック載置部の上流側にローラコンベア等を連設した場合、傾動駆動部が邪魔になることがなく、確実にブロックを供給することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の投入装置であって、前記ブロック載置部の幅方向の少なくとも一部に配設された搬送ローラを備えた構成を有している。
この構成により、請求項3の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)ブロック載置部の幅方向の少なくとも一部に配設された搬送ローラを備えているので、ブロック載置部を傾動させるだけで、重量のあるブロックをブロック載置部の上流側から下流側に向かって速やかに移動させることができ、投入作業の確実性に優れる。
【0015】
ここで、搬送ローラは、各々が独立して回転可能な複数のローラをブロック載置部の上流側から下流側に並べて配置することにより形成される。搬送ローラは、一列乃至複数列設けることができ、ブロックの底面の幅全体に接触するようにしてもよいし、ブロックの底面の幅方向の両端部や中央部などに部分的に接触するようにしてもよい。ブロックの底面に凹凸が形成されている場合は、凸部の幅と位置に合わせて搬送ローラを配置することにより、無駄なく確実にブロックを支持して搬送することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の投入装置であって、前記ブロック載置部の他端側に回動自在に配設され、前記ブロック載置部に載置される前記ブロックの端面に当接するストッパ部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3又は4の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)ブロック載置部の他端側に回動自在に配設され、ブロック載置部に載置されるブロックの端面に当接するストッパ部を備えているので、ブロック載置部を所定の角度に傾動させるまで、ブロック載置部上にブロックを保持することができると共に、任意のタイミングでストッパ部を解除してブロックの形状や重量などに応じた最適な投入角度で投入作業を行うことができ、汎用性、実用性に優れる。
(2)ストッパ部を解除するタイミングにより、ブロックを投入するタイミングを調整することができるので、波による船の揺動などの影響を低減することができ、投入条件を略一定に保つことができ、投入作業の繰り返し安定性に優れる。
【0017】
ここで、ストッパ部は、ブロック載置部の下流側でブロックの端面の幅方向の少なくとも一部に当接するものであればよく、1つのブロック載置部に対して一列乃至複数、設けることができる。ストッパ部を駆動するストッパ駆動部は、ストッパ部を回動させることができるものであればよい。ストッパ部が配設された回動軸を正逆回転可能なモータで直接、回動させてもよいし、ストッパ部に連結されたアーム部にピストンシリンダ等の伸縮機構を連設し、伸縮機構を前後方向に伸縮させることにより、ストッパ部を回動させてもよい。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)ブロック連結工程において、連結部材で連結された複数のブロックを、ブロック投入工程によって同時に海中に投入するので、互いに離間して連結された個々のブロックが、ある程度の自由度を持って運動しながらも、互いの動きを規制して、海水の抵抗や海流の影響によって大きく回転、揺動することがなく、目的位置から離間した場所へ流されることを防止でき、着地位置精度の信頼性に優れた湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を提供することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)案内部材挿通工程において、貫通孔に案内部材が挿通されたブロックを、ブロック投入工程によって海中に投入するので、ブロックが案内部材に沿うように動きを規制されながら海中を落下して、大きく転動することを防止でき、海水の流れの影響を受け難く、着地位置精度の信頼性に優れた湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を提供することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)傾動駆動部によってブロック載置部を傾動させるだけで、ブロック載置部に載置した1乃至複数の湧昇流発生構造物構築用のブロックを、同時に海中に投入することができる施工性に優れた投入装置を提供することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)ブロック載置部の幅方向の少なくとも一部に搬送ローラが配設されていることにより、ブロック載置部を傾動させるだけで、重量のあるブロックをブロック載置部の上流側から下流側に向かって速やかに移動させることができる投入作業の確実性、省力性に優れた投入装置を提供することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項3又は4の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)ブロック載置部の他端側に回動自在に配設されたストッパ部により、ブロック載置部を所定の角度に傾動させるまで、ブロック載置部上にブロックを保持することができるので、ストッパ部を解除するタイミングにより、ブロックの投入角度やブロックを投入するタイミングを簡便に調整することができ、投入条件を制御してブロックを目的の位置近傍に着地させることができる汎用性、信頼性に優れた投入装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法及びそれに用いる投入装置について、以下図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の正面図であり、図2は実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の側面図であり、図3は図1におけるA−A線矢視断面図である。
図1乃至3中、1は船10の船首や船尾又は船側等の甲板の縁部に設置され実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置、2は湧昇流発生構造物構築用のブロック15が載置される投入装置1のブロック載置部、2aはブロック載置部2の下流側でブロック載置部2を傾動自在に軸支する回転軸、2bはブロック載置部2の補強部、3はブロック載置部2の幅方向に1つのブロック15に対して2列ずつ配設された搬送ローラ、3aはブロック載置部2の下流側の先端に配設された先端ローラ、4はブロック載置部2の上流側の両側に立設された傾動固定部4aに連設されブロック載置部2を傾動させる油圧シリンダを用いた傾動駆動部、5はブロック載置部2の下流側に回動自在に配設されブロック載置部2に載置されるブロック15の端面に当接するストッパ部、15は石炭灰コンクリートブロックで形成された湧昇流発生構造物構築用のブロックである。
【0024】
投入装置1は、船10の甲板に設置してブロック15の投入作業を行うことができるので、既存の船10にも容易に取り付けることができる。
ブロック載置部2の横幅は、同時に海中に投入するブロック15の数に応じて、決定することができる。本実施の形態では、同時に2個のブロック15が投入できるようにしたが、ブロック15の数は1個でもよいし、3個以上でもよい。また、一台の投入装置1で複数のブロック15の投入を行う以外に、複数の投入装置1を横に並べて、同時或いは連続的に複数のブロック15の投入作業を行うこともでき、容易に施工時間の短縮を図ることができる。
【0025】
搬送ローラ3は、各々が独立して回転できるようにブロック載置部2の上流側から下流側に並べて配置した。本実施の形態では、ブロック15の底面に形成される凸部の幅と位置に合わせて2列ずつ合計4列の搬送ローラ3を配置した。尚、搬送ローラ3はブロック15の形状に応じて、底面の幅全体に接触するようにしたり、底面の幅方向の中央部などに部分的に接触するようにしたりしてもよく、その長さや位置を適宜、選択できる。
ブロック載置部2の下流側の先端には他の搬送ローラ3よりも大型で強度のある先端ローラ3aを配設した。これにより、傾動駆動部4によりブロック載置部2を傾動させ、ブロック15を海中に投入する最後の段階で、ブロック15の重量を確実に支持することができ、ブロック15をスムーズに落下させることができ投入作業の安定性に優れる。
【0026】
次に、ストッパ部の詳細について説明する。
図4は図1におけるB−B線矢視断面図である。
図4中、5aはストッパ部5の下端側を回動自在に軸支する回動軸、5bはストッパ部5に連結された略L字型のアーム部、5cはアーム部5bの一端側に配設され後述するストッパ駆動部6が連結される連結軸、6は一端がブロック載置部2の補強部2bに配設された固定軸2cに回動自在に固定され他端がアーム部5bの連結軸5cに回動自在に連結されて伸縮によりストッパ部5を回動させるピストンシリンダを用いたストッパ駆動部である。
ストッパ部5は、ブロック載置部2の下流側でブロック15の端面の幅方向の略中央部に当接するように配設した。これにより、両側の搬送ローラ3と干渉することなくストッパ部5を回動させることができ、確実にブロック15を保持することができる。尚、ストッパ部5は搬送ローラ3と干渉しない範囲で、1つのブロック載置部2に対して一列乃至複数列、設けることができる。
本実施の形態では、ピストンシリンダを用いたストッパ駆動部6を前後方向に伸縮させることにより、アーム部5bを介してストッパ部5を回動させたが、ストッパ駆動部6はストッパ部5を回動させることができるものであればよく、ストッパ部5が配設された回動軸5aを正逆回転可能なモータで直接、回動させるようにしてもよい。
【0027】
次に、実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の動作について説明する。
図5は実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の傾動状態を示す側面図である。
ブロック15はブロック載置部2の搬送ローラ3上に載置される(ブロック載置工程)。
傾動駆動部4を伸張させることにより、ブロック載置部2の上流側が持ち上がり、回転軸2aを中心としてブロック載置部2が傾動する。このとき、ブロック15の下流側の端面にストッパ部5が当接していることにより、ブロック15を保持したまま、所望の角度まで傾けることができる(ブロック載置部傾動工程)。
予め設定した投入角度までブロック載置部2を傾けた後に、ストッパ部5を矢印方向に回動させてストッパを解除することにより、ブロック15が搬送ローラ3上を移動し、海中に投入される(ストッパ部解除工程)。
【0028】
次に、実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法について説明する。
図6は実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を示す要部模式正面図であり、図7は実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を示す要部模式側面図である。
図6及び7中、15aは略立法体状のブロック15の中央に形成された貫通孔、16は貫通孔15aに挿通され2つのブロック15の間を離間させて連結するロープ状の連結部材、20はブロック15が投入され湧昇流発生構造が構築される海である。
【0029】
まず、ブロック連結工程において、複数のブロック15の間を連結部材16で連結する。本実施の形態では、ブロック15が2個の場合について説明するが、3個以上の場合でも同様である。
連結部材16の材質及び太さは、ブロック15の重量にもよるが、ブロック15が海底に着地するまで、その間を繋ぎ止めることができるだけの強度があればよい。マニラ麻製のものやナイロン,ビニロン,ポリエチレン等の合成繊維製のもの等が好適に用いられる。
ブロック15を連結部材16で連結する際に、各々のブロック15を離間させる距離は、ブロック15の一辺の長さの0.5倍〜1.5倍にした。ブロック15を離間させる距離が、ブロック15の一辺の長さの0.5倍より短くなるにつれ、個々のブロック15の回動や揺動などの運動の自由度が低下し、複数のブロック15が一塊となって運動するため、連結の効果が不十分となる傾向があり、1.5倍より長くなるにつれ、個々のブロック15がバラバラに運動し、海水の抵抗や海流の影響により大きく回動、揺動し易くなり、連結の効果が不十分となる傾向があることがわかったためである。
尚、ブロック連結工程は、ブロック15を投入装置1のブロック載置部2に載置する前後のいずれで行ってもよい。ブロック載置部2へのブロック15の載置は、クレーンによって行うことができるが、投入装置1の上流側にローラコンベア等を連設してもよい。これにより、複数のブロック15を連続的に投入装置1に供給することができ、施工時間を短縮することができる。
次に、図7に示すようにブロック投入工程において、連結部材16で連結された複数のブロック15を同時に海中に投入する。尚、ブロック投入工程における投入装置1の動作は前述の通りである。
【0030】
以上のように実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置によれば、以下の作用を有する。
(1)ブロック15が載置されるブロック載置部2と、ブロック載置部2に連設されブロック載置部2の一端側を上方に傾動させる傾動駆動部4と、を有するので、予めブロック載置部2に複数のブロック15を載置し、傾動駆動部4によってブロック載置部2を傾動させるだけで、ブロック載置部2の他端側から複数のブロック15を同時に海中に投入することができ施工性に優れる。
(2)ブロック載置部2の幅方向の少なくとも一部に配設された搬送ローラ3を備えているので、ブロック載置部2を傾動させるだけで、重量のあるブロック15をブロック載置部2の上流側から下流側に向かって速やかに移動させることができ、投入作業の確実性に優れる。
(3)ブロック載置部2の他端側に回動自在に配設され、ブロック載置部2に載置されるブロック15の端面に当接するストッパ部5を備えているので、ブロック載置部2を所定の角度に傾動させるまで、ブロック載置部2上にブロック15を保持することができると共に、任意のタイミングでストッパ部5を解除してブロック15の形状や重量などに応じた最適な投入角度で投入作業を行うことができ、汎用性、実用性に優れる。
(4)ストッパ部5を解除するタイミングにより、ブロック15を投入するタイミングを調整することができるので、波による船10の揺動などの影響を低減することができ、投入条件を略一定に保つことができ、投入作業の繰り返し安定性に優れる。
【0031】
以上のように実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法によれば、以下の作用を有する。
(1)ブロック連結工程により、複数のブロック15の間が連結部材16で連結されているので、ブロック投入工程によって複数のブロック15を同時に海中に投入した際に、連結された個々のブロック15が、大きく回転、揺動することを防止でき、海水の抵抗や海流の影響によってブロック15が流されることがなく、目的とする位置近傍に精度よく着地させることができる。
(2)ブロック連結工程で連結された複数のブロック15が、互いに離間していることにより、個々のブロック15が、ある程度の運動の自由度を持ちながらも、互いの動きを規制して海中を落下するので、着地位置精度を向上させることができる。
(3)ブロック投入工程により、連結部材16で連結された複数のブロック15を同時に海中に投入することができるので、作業時間を短縮することができ実用性、施工性に優れる。
【0032】
(実施の形態2)
実施の形態2における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法について説明する。
図8は実施の形態2における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を示す要部模式側面図である。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図8中、11は船10に配設され後述する案内部材17を巻き取るためのウィンチ、17は湧昇流発生構造物構築用のブロック15の略中央に形設された貫通孔15aに挿通されブロック15を海中で案内する金属製のワイヤなどの案内部材、18は案内部材17の先端に錘として連結された金属製のチェーンである。
案内部材17としては、貫通孔15aに挿通してブロック15を誘導できるものであればよいが、ブロック15を海中に投入する際に、案内部材17が貫通孔15aの縁等で擦られて摩耗するのを防止できる耐久性、耐摩耗性に優れたものが好ましい。また、案内部材17の先端に連結する錘は、ブロック15の貫通孔15aに挿通することができるものであればよく、チェーン16以外に円錐状や角錐状等の形状に形成された錘を用いてもよい。
【0033】
まず、案内部材挿通工程において、貫通孔15aに案内部材17を挿通し、案内部材17に連結されたチェーン18の末端側を海底付近まで垂らす。
次に、ブロック投入工程において、実施の形態1と同様に投入装置1を動作させ、海中へのブロック15の投入を行う。ブロック15は案内部材17に誘導され目的とする位置近傍に着地する。
予め、複数のブロック15の貫通孔15aに案内部材17を挿通した後、それらのブロック15を並べたり、積み上げたりしておけば、複数のブロック15を連続的に海中に投入することができ、施工性に優れる。特に、投入装置1の上流側にローラコンベア等を連設し、その上に複数のブロック15を並べておけば、連続的に投入装置1にブロック15を供給することができ、施工時間を短縮することができる。
【0034】
また、ウィンチ11により、案内部材15の回収を容易に行うことができると共に、海底の深さや湧昇流発生構造物の高さに合わせて簡便に案内部材15の末端位置を調整することができ、施工性に優れる。特に、ブロック投入工程の後工程として、海底に積み上がられたブロック15の高さよりも高い位置まで案内部材16の末端位置を上昇させる案内部材巻き取り工程を有する場合、新たに投入されるブロック15と案内部材16が絡むのを防止でき、信頼性に優れる。
尚、投入装置1に複数のブロック15が載置できる場合、各々のブロック15の貫通孔15aにそれぞれ別々の案内部材17を挿通し、同時に投入作業を行うことができる。このとき、複数のブロック15を実施の形態1と同様に連結部材16で連結してもよい。その場合、案内部材17による案内は、複数のブロック15の内の少なくともいずれか1つに対して行えばよい。
【0035】
以上のように実施の形態2における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法によれば、以下の作用を有する。
(1)案内部材挿通工程により、ブロック15の貫通孔15aに案内部材17が挿通されているので、ブロック投入工程によってブロック15を海中に投入した際に、案内部材17によって案内されたブロック15が、海水の抵抗や海流の影響によって大きく転動することを防止でき、目的とする位置近傍に精度よく着地させることができる。
(2)案内部材挿通工程で貫通孔15aに案内部材17が挿通されたブロック15は、案内部材17を中心に回動したり或いは案内部材17と共に揺動したりするが、案内部材17に沿うように動きを規制されながら海中を落下するので、海水の流れの影響を受け難く、着地位置精度を向上させることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実際に湧昇流発生構造物の構築に用いるブロックは、一辺の長さ1.6m、重量6tの石炭灰コンクリートブロックであり、施工場所の水深は89mが想定される。
そこで、縮尺モデルを用いて実験を行った。
施工場所の水深89mと、実験に用いる水槽の水深7mの比から、7/89モデルのブロック及び投入装置を作製し、実施例として実施の形態1及び実施の形態2と同様の投入方法で投入を行った。また、比較例として、ブロック単独での投入も行った。
【0037】
(比較例1)ブロックを1つずつ投入角度8°で水槽に投入した(計104個)。
(実施例1)紐状の連結部材で連結した2個のブロックを投入角度8°で水槽に投入した(計60回、120個)。
(実施例2)紐状の連結部材で連結した2個のブロックを投入角度10°で水槽に投入した(計45回、90個)。
(実施例3)ブロックの貫通孔にワイヤを挿通し、投入角度10°で水槽に投入した(計40個)。
【0038】
それぞれについて、投入位置と着地位置との位置ずれを測定した結果を以下に示す。
図9は比較例1における着地位置ずれの測定結果を示す図であり、図10は実施例1における着地位置ずれの測定結果を示す図であり、図11は実施例2における着地位置ずれの測定結果を示す図であり、図12は実施例3における着地位置ずれの測定結果を示す図である。
図9により、比較例1の投入方法では、着地位置が広範囲に渡って略扇状に分散することがわかった。
図10により、実施例1の投入方法(実施の形態1の2個連結に相当)では、落下時の揺動が制御され着地位置ずれ量が比較例1の半分程度に抑えられることがわかった。
図11により、実施例2の投入方法(実施の形態1の2個連結に相当)では、実施例1とほぼ同等の着地位置ずれ量となり、投入角度の違いによる有意差は見られなかった。
図12により、実施例3の投入方法(実施の形態2に相当)では、実施例1、2よりもさらに狭い範囲(投入位置近傍)に着地位置が集中し、着地位置ずれ量の改善効果が見られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、湧昇流発生構造物構築用のブロックを海中に投入する際に、個々のブロックが海水の抵抗や海流の影響などにより流されるのを規制することにより、ブロックの分散範囲を低減することができ、目的の位置に精度よく着地させて所望の形状の湧昇流発生構造物を精度よく構築することが可能な施工性、信頼性、汎用性に優れた湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法の提供及び、簡単な構成でブロックを船上から海中へ投入することができ投入作業性に優れ、既存の船への取り付けが可能な汎用性、実用性に優れた投入装置の提供を行うことができ、湧昇流発生構造物構築の施工性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の正面図
【図2】実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の側面図
【図3】図1におけるA−A線矢視断面図
【図4】図1におけるB−B線矢視断面図
【図5】実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法に用いる投入装置の傾動状態を示す側面図
【図6】実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を示す要部模式正面図
【図7】実施の形態1における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を示す要部模式側面図
【図8】実施の形態2における湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法を示す要部模式側面図
【図9】比較例1における着地位置ずれの測定結果を示す図
【図10】実施例1における着地位置ずれの測定結果を示す図
【図11】実施例2における着地位置ずれの測定結果を示す図
【図12】実施例3における着地位置ずれの測定結果を示す図
【符号の説明】
【0041】
1 投入装置
2 ブロック載置部
2a 回転軸
2b 補強部
2c 固定軸
3 搬送ローラ
3a 先端ローラ
4 傾動駆動部
4a 傾動固定部
5 ストッパ部
5a 回動軸
5b アーム部
5c 連結軸
6 ストッパ駆動部
10 船
15 ブロック
15a 貫通孔
16 連結部材
17 案内部材
18 チェーン
20 海
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船上から海中へ湧昇流発生構造物構築用のブロックを投入するブロック投入方法であって、互いに離間した複数の前記ブロックの間を連結部材で連結するブロック連結工程と、前記連結部材で連結された前記複数のブロックを同時に海中に投入するブロック投入工程と、を備えたことを特徴とする湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法。
【請求項2】
船上から海中へ湧昇流発生構造物構築用のブロックを投入するブロック投入方法であって、前記ブロックの略中央に形設された貫通孔に案内部材を挿通する案内部材挿通工程と、前記案内部材が挿通された前記ブロックを前記案内部材に沿って海中に投入するブロック投入工程と、を備えたことを特徴とする湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法。
【請求項3】
湧昇流発生構造物構築用のブロックが載置されるブロック載置部と、前記ブロック載置部に連設され前記ブロック載置部の一端側を上方に傾動させる傾動駆動部と、を備えた投入装置。
【請求項4】
前記ブロック載置部の幅方向の少なくとも一部に配設された搬送ローラを備えたことを特徴とする請求項3に記載の投入装置。
【請求項5】
前記ブロック載置部の他端側に回動自在に配設され、前記ブロック載置部に載置される前記ブロックの端面に当接するストッパ部を備えたことを特徴とする請求項3又は4に記載の投入装置。
【請求項1】
船上から海中へ湧昇流発生構造物構築用のブロックを投入するブロック投入方法であって、互いに離間した複数の前記ブロックの間を連結部材で連結するブロック連結工程と、前記連結部材で連結された前記複数のブロックを同時に海中に投入するブロック投入工程と、を備えたことを特徴とする湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法。
【請求項2】
船上から海中へ湧昇流発生構造物構築用のブロックを投入するブロック投入方法であって、前記ブロックの略中央に形設された貫通孔に案内部材を挿通する案内部材挿通工程と、前記案内部材が挿通された前記ブロックを前記案内部材に沿って海中に投入するブロック投入工程と、を備えたことを特徴とする湧昇流発生構造物構築用のブロック投入方法。
【請求項3】
湧昇流発生構造物構築用のブロックが載置されるブロック載置部と、前記ブロック載置部に連設され前記ブロック載置部の一端側を上方に傾動させる傾動駆動部と、を備えた投入装置。
【請求項4】
前記ブロック載置部の幅方向の少なくとも一部に配設された搬送ローラを備えたことを特徴とする請求項3に記載の投入装置。
【請求項5】
前記ブロック載置部の他端側に回動自在に配設され、前記ブロック載置部に載置される前記ブロックの端面に当接するストッパ部を備えたことを特徴とする請求項3又は4に記載の投入装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−162321(P2007−162321A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359526(P2005−359526)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(305061678)三曳マリン株式会社 (1)
【出願人】(305061689)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(305061678)三曳マリン株式会社 (1)
【出願人】(305061689)
【Fターム(参考)】
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